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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-27
(45)【発行日】2025-01-14
(54)【発明の名称】電子機器および電子機器の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/26 20060101AFI20250106BHJP
   G06F 1/3212 20190101ALI20250106BHJP
   G06F 1/3287 20190101ALI20250106BHJP
【FI】
G06F1/26 306
G06F1/3212
G06F1/3287
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024069786
(22)【出願日】2024-04-23
【審査請求日】2024-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】山崎 誠仁
(72)【発明者】
【氏名】大澤 治武
(72)【発明者】
【氏名】牧 耕太郎
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-334475(JP,A)
【文献】特開2021-111094(JP,A)
【文献】特許第7562807(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26 - 1/3296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
外部機器が接続され、バッテリから供給される電力を前記外部機器に出力するコネクタと、
コントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が稼働状態からスリープ状態に遷移する第1のタイミングから、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が前記スリープ状態から休止状態に遷移する第2のタイミングまでの前記バッテリの残量の減少量としてOS(Operating System)によって予め設定された第1の基準値を前記第1の基準値よりも大きい第2の基準値に変更し、
前記第1のタイミングからの前記バッテリの残量の減少量が前記第2の基準値になったとき、前記コントローラは前記電子機器を前記休止状態に遷移させる
電子機器。
【請求項2】
前記電子機器が前記稼働状態または前記スリープ状態にある状態で前記電力を前記外部機器に出力する動作モードにおいて前記外部機器への前記電力の出力を停止するときの前記バッテリの残量を示す第3の基準値を記憶するメモリを備え、
前記コントローラは、前記電子機器が前記稼働状態から前記スリープ状態に遷移したときの前記バッテリの残量である第4の基準値を検出し、
前記第4の基準値は、前記第3の基準値よりも大きく、
前記コントローラは前記第4の基準値と前記第3の基準値との差を算出することにより前記第2の基準値を算出し、
前記第1の基準値を前記第2の基準値に変更した後、前記動作モードにおける前記バッテリの残量が減少し、前記第3の基準値になったとき、前記コントローラは前記外部機器への前記電力の出力を停止する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記外部機器がメディア転送プロトコル(MTP)デバイスである場合、前記コントローラは前記第1の基準値を前記第2の基準値に変更する
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
外部機器が接続され、バッテリから供給される電力を前記外部機器に出力するコネクタを備える電子機器の制御方法であって、
前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が稼働状態からスリープ状態に遷移する第1のタイミングから、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が前記スリープ状態から休止状態に遷移する第2のタイミングまでの前記バッテリの残量の減少量としてOS(Operating System)によって予め設定された第1の基準値を前記第1の基準値よりも大きい第2の基準値に変更するステップと、
前記第1のタイミングからの前記バッテリの残量の減少量が前記第2の基準値になったとき、前記電子機器を前記休止状態に遷移させるステップと、
を備える電子機器の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および電子機器の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの電源管理に関する標準規格の1つとしてACPI(Advanced Configuration and Power Interface)がある(例えば、特許文献1参照)。ACPIでは、装置の電源状態(S0からS5)が定義されている。ACPIで定義された一般的な電源状態は以下の通りである。S0ではコンピュータは稼働状態にあり、S1およびS2ではコンピュータはスタンバイ状態にある。S3ではコンピュータはスリープ状態にあり、S4ではコンピュータは休止状態にある。S5ではコンピュータはシャットダウン状態にある。また、スリープ状態としてモダンスタンバイ(以下、ModSと記載)と呼ばれる機能がコンピュータに実装される場合がある。
【0003】
AOU(Always on USB)と呼ばれる機能がコンピュータに搭載されている場合、コンピュータは、コンピュータが備えるバッテリからスマートフォンなどの外部機器にUSB(Universal Serial Bus)経由で電力を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-047293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
S4またはS5においてコンピュータが外部機器に給電中にバッテリの残量が所定量よりも少なくなったとき、バッテリの残量低下を避けるためにコンピュータはAOUによる電力供給を停止する。S4およびS5において、バッテリからコンピュータのエンベデッドコントローラへの電力供給は停止しない。そのため、エンベデッドコントローラがバッテリの状態を監視するコンピュータでは、エンベデッドコントローラはS4およびS5においてバッテリの残量を検出することができ、バッテリの残量が所定量よりも少なくなるまでAOUを継続することができる。
【0006】
しかしながら、S4およびS5において、バッテリからコンピュータのCPU(Central Processing Unit)への電力供給は停止する。CPUがバッテリの状態を監視するコンピュータでは、S4およびS5においてCPUはバッテリの残量を検出することができない。そのため、そのようなコンピュータではS4およびS5においてAOUによる電力供給を実施することができない。
【0007】
バッテリがModSにおいて供給可能な電力量はOS(Operating System)によって設定される。例えば、その電力量はバッテリの容量の5%である。ModSにおけるバッテリの消費量が5%になったとき、コンピュータはModSからS4に遷移する。バッテリがModSにおいて供給可能な電力量が少ないため、CPUがバッテリの状態を監視するコンピュータではAOUにより供給できる電力が制限される。
【0008】
本発明は、スリープ状態においてバッテリから外部機器に供給される電力量を増加させることができる電子機器および電子機器の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、電子機器であって、外部機器が接続され、バッテリから供給される電力を前記外部機器に出力するコネクタと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が稼働状態からスリープ状態に遷移する第1のタイミングから、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が前記スリープ状態から休止状態に遷移する第2のタイミングまでの前記バッテリの残量の減少量としてOS(Operating System)によって予め設定された第1の基準値を前記第1の基準値よりも大きい第2の基準値に変更し、前記第1のタイミングからの前記バッテリの残量の減少量が前記第2の基準値になったとき、前記コントローラは前記電子機器を前記休止状態に遷移させる。
【0010】
本発明の一態様において、前記電子機器は、前記電子機器が前記稼働状態または前記スリープ状態にある状態で前記電力を前記外部機器に出力する動作モードにおいて前記外部機器への前記電力の出力を停止するときの前記バッテリの残量を示す第3の基準値を記憶するメモリを備え、前記コントローラは、前記電子機器が前記稼働状態から前記スリープ状態に遷移したときの前記バッテリの残量である第4の基準値を検出し、前記第4の基準値は、前記第3の基準値よりも大きく、前記コントローラは前記第4の基準値と前記第3の基準値との差を算出することにより前記第2の基準値を算出し、前記第1の基準値を前記第2の基準値に変更した後、前記動作モードにおける前記バッテリの残量が減少し、前記第3の基準値になったとき、前記コントローラは前記外部機器への前記電力の出力を停止してもよい。
【0011】
本発明の一態様において、前記外部機器がメディア転送プロトコル(MTP)デバイスである場合、前記コントローラは前記第1の基準値を前記第2の基準値に変更してもよい。
【0012】
本発明の一態様は、外部機器が接続され、バッテリから供給される電力を前記外部機器に出力するコネクタを備える電子機器の制御方法であって、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が稼働状態からスリープ状態に遷移する第1のタイミングから、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が前記スリープ状態から休止状態に遷移する第2のタイミングまでの前記バッテリの残量の減少量としてOS(Operating System)によって予め設定された第1の基準値を前記第1の基準値よりも大きい第2の基準値に変更するステップと、前記第1のタイミングからの前記バッテリの残量の減少量が前記第2の基準値になったとき、前記電子機器を前記休止状態に遷移させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記態様によれば、スリープ状態においてバッテリから外部機器に供給される電力量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態による電子機器のハードウェア構成例を示す図である。
図2】実施形態による電子機器の機能構成例を示す図である。
図3】実施形態による電子機器の電源状態を示す図である。
図4】実施形態による電子機器の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1を参照し、実施形態による電子機器10のハードウェア構成例について説明する。図1は、電子機器10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
電子機器10は、CPU11と、メインメモリ12と、ビデオサブシステム13と、表示部14と、チップセット21と、BIOSメモリ22と、記憶媒体23と、オーディオシステム24と、WLANカード25と、USBコネクタ26と、エンベデッドコントローラ31と、入力部32と、電源回路33と、バッテリ34とを備える。
【0018】
CPU11は、プログラム制御により種々の演算処理を実行し、電子機器10全体を制御している。例えば、CPU11は、OS(Operating System)およびBIOS(Basic Input Output System)のプログラムに基づく処理を実行する。CPU11は、プロセッサの一例である。
【0019】
メインメモリ12は、CPU11の実行プログラムの読み込み領域として、または、実行プログラムの処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップで構成される。この実行プログラムには、OS、周辺機器類をハードウェア操作するための各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリケーションプログラム等が含まれる。
【0020】
ビデオサブシステム13は、画像表示に関連する機能を実現するためのサブシステムであり、ビデオコントローラを含む。ビデオコントローラは、CPU11からの描画命令を処理し、処理した描画情報をビデオメモリに書き込むとともに、ビデオメモリからこの描画情報を読み出して、表示部14に描画データ(表示データ)として出力する。
【0021】
表示部14は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、ビデオサブシステム13から出力された描画データ(表示データ)に基づく表示画面を表示する。
【0022】
チップセット21は、USB(Universal Serial Bus)、シリアルATA(AT Attachment)、SPI(Serial Peripheral Interface)バス、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、PCI-Expressバス、およびLPC(Low Pin Count)バスなどのコントローラを備えており複数のデバイスが接続される。例えば、複数のデバイスとして、後述するBIOSメモリ22と、記憶媒体23と、オーディオシステム24と、WLANカード25と、USBコネクタ26と、エンベデッドコントローラ31とが含まれる。
【0023】
BIOSメモリ22は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)またはフラッシュROMなどの電気的に書き換え可能な不揮発性メモリで構成される。BIOSメモリ22は、BIOS、およびエンベデッドコントローラ31などを制御するためのシステムファームウェアなどを記憶する。BIOSメモリ22は、サブメモリの一例である。
【0024】
記憶媒体23は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、などを含む。例えば、記憶媒体23は、OS、各種ドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリケーションプログラム、および各種データを記憶する。
【0025】
オーディオシステム24は、不図示のマイクおよびスピーカが接続され、音データの記録、再生、出力を行う。なお、マイクおよびスピーカは、一例として、電子機器10に内蔵されている。
【0026】
WLAN(Wireless Local Area Network)カード25は、ワイヤレス(無線)LANにより、ネットワークに接続して、データ通信を行う。WLANカード25は、例えば、ネットワークからのデータを受信した際に、データを受信したことを示すイベントトリガを発生する。USBコネクタ26は、USBを利用した周辺機器類を接続するためのコネクタである。
【0027】
入力部32は、電子機器10に備えられる入力デバイス(入力機器)を一括して示す。入力部32は、キーボードおよびマウスなどを含む。入力部32は、ユーザの操作により入力された入力情報をエンベデッドコントローラ31へ出力する。
【0028】
電源回路33は、例えば、DC/DCコンバータ、充放電ユニット、AC/DCアダプタなどを含む。例えば、電源回路33は、ACアダプタ(不図示)などの外部電源またはバッテリ34から供給される直流電圧を、電子機器10を動作させるために必要な複数の電圧に変換する。また、電源回路33は、エンベデッドコントローラ31からの制御に基づいて、電子機器10の各部に電力を供給する。
【0029】
バッテリ34は、例えば、リチウムイオンバッテリ等の二次電池である。電子機器10に外部電源から電力が供給されている場合に、バッテリ34は電源回路33を介して充電される。電子機器10に外部電源から電力が供給されていない場合に、バッテリ34は電源回路33を介して、蓄積した電力を電子機器10の動作電力として出力する。
【0030】
エンベデッドコントローラ31は、電子機器10のシステムの状態に関わらず、各種デバイス(周辺装置およびセンサ等)を監視および制御するワンチップマイコン(One-Chip Microcomputer)である。エンベデッドコントローラ31は、不図示のCPU、ROM、RAM、複数チャネルのA/D入力端子、D/A出力端子、タイマ、およびデジタル入出力端子を備える。エンベデッドコントローラ31のデジタル入出力端子には、入力部32および電源回路33などが接続されており、エンベデッドコントローラ31は、これらの動作を制御する。また、エンベデッドコントローラ31は、チップセット21経由でCPU11のクロック周波数の変更等の制御を行う。
【0031】
電子機器10は、クラムシェル型のパーソナルコンピュータ、タブレット端末、またはスマートフォンなどのような携帯型機器のように筐体に表示デバイスが一体的に取り付けられてもよい。あるいは、電子機器10は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータのように、装置本体と表示デバイスとが分離していてもよい。本実施形態による電子機器は、CPUを備える機器全般に適用可能である。
【0032】
図2を参照し、電子機器10の機能構成例について説明する。図2は、外部機器への電力供給に関する電子機器10の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
電子機器10は、制御部100と、記憶部110と、USBコネクタ26と、電源回路33と、バッテリ34と、スイッチ35とを備える。制御部100の機能は、CPU11、エンベデッドコントローラ31、またはCPU11とエンベデッドコントローラ31との組み合わせにより実現される。
【0034】
記憶部110は、制御部100により実行されるプログラム、制御部100により使用されるデータ、および制御部100により生成されるデータなどを記憶する。記憶部110の機能は、メインメモリ12、記憶媒体23、またはメインメモリ12と記憶媒体23との組み合わせにより実現される。
【0035】
外部機器40がUSBコネクタ26に接続される。電子機器10に外部電源から電力が供給されてなく、外部機器40がUSBコネクタ26に接続されている場合、制御部100はバッテリ34から外部機器40への電力供給を制御する。電源回路33は、バッテリ34から出力された電力をスイッチ35に出力する。スイッチ35は、電源回路33から出力された電力を、USBコネクタ26を経由して外部機器40に出力する。
【0036】
制御部100は、バッテリ34の残量に応じて電子機器10の電源状態を制御する。電子機器10は、S0(稼働状態)またはModS(スリープ状態)においてバッテリ34から外部機器40に電力を出力するAOUの機能を有する。制御部100は、スイッチ35の状態を制御することにより、バッテリ34から外部機器40への電力供給を制御する。電子機器10がS0(稼働状態)またはModS(スリープ状態)にあるとき、制御部100はスイッチ35をオンにし、AOUによりバッテリ34から外部機器40への電力供給を実施する。電子機器10がModSからS4(休止状態)に遷移したとき、制御部100はスイッチ35をオフにし、AOUによる電力供給を停止する。
【0037】
図3を参照し、電子機器10の電源状態の変化を説明する。図3は、電子機器10の電源状態を模式的に示す。バッテリ34の残量と対応する電源状態が図3に示されている。
【0038】
状態PS1は、制御部100が従来技術における制御を実行したと仮定した場合における電子機器10の電源状態を示す。状態PS2は、制御部100が実施形態における制御を実行する場合における電子機器10の電源状態を示す。
【0039】
図3における横方向は、バッテリ34の残量と対応する。例えば、バッテリ34の残量はRSOC(Relative State of Charge)で表される。RSOCは、バッテリ34の残容量RM(Remaining Capacity)とバッテリ34の満充電容量FCC(Full Charge Capacity)との比(RM/FCC)である。
【0040】
まず、状態PS1について説明する。状態PS1においてRSOCが100%であるとき、電子機器10はS0にある。このとき、AOUによる電力供給が可能である。状態PS1において予め設定されたイベントが発生したとき、制御部100は電子機器10をS0からModSに遷移させる。例えば、電子機器10がクラムシェル型のパーソナルコンピュータである場合、ユーザが蓋を閉じたとき、イベントが発生する。あるいは、ユーザがパワーボタンを押したとき、イベントが発生する。例えば、イベントが発生したときのRSOCは80%である。状態PS1においてModSにおけるRSOCの減少量がOSによって予め設定された基準値(例えば、FCCの5%)になったとき、制御部100は電子機器10をModSからS4に遷移させる。
【0041】
制御部100がCPU11で構成される場合、制御部100はS4において休止状態にある。そのため、制御部100はバッテリ34の残量を検出できない。状態PS1では、電子機器10がModSからS4に遷移したとき、制御部100はAOUによる電力供給を停止する。状態PS1では、図3に示すRSOCの範囲R1においてAOUによる電力供給が可能である。
【0042】
次に、状態PS2について説明する。OSは、ModSにおけるRSOCの減少量の基準値(例えば、FCCの5%)を予め設定する。その基準値は、電子機器10がS0からModSに遷移するタイミングから、電子機器10がModSからS4に遷移するタイミングまでのバッテリ34の残量の減少量を示す。記憶部110は、その基準値を記憶する。制御部100は、例えばModSに割り当てられているstandby budgetを変更することにより、その基準値をその基準値よりも大きい値に変更する。
【0043】
記憶部110は、電子機器10がAOUによる電力供給を停止するときのRSOCの基準値(例えば、15%)を記憶する。電子機器10がS0からModSに遷移したとき、制御部100はバッテリ34の残量を検出する。制御部100は、検出した残量と、記憶部110に記憶されている基準値とに基づいて、ModSにおけるRSOCの減少量の基準値を変更する。例えば、制御部100は、検出した残量(例えば、80%)と、記憶部110に記憶されている基準値(例えば、15%)との差を算出し、ModSにおけるRSOCの減少量の基準値をその差の値(例えば、65%)に変更する。
【0044】
状態PS2においてRSOCが100%であるとき、電子機器10はS0にある。このとき、AOUによる電力供給が可能である。状態PS2において予め設定されたイベントが発生したとき、制御部100は電子機器10をS0からModSに遷移させる。例えば、このときのRSOCは80%である。
【0045】
状態PS2においてModSにおけるRSOCの減少量が制御部100によって変更された基準値(例えば、65%)になったとき、制御部100は電子機器10をModSからS4に遷移させる。このとき、RSOCは、AOUによる電力供給を停止するためのRSOCの基準値(例えば、15%)と同じである。そのため、制御部100はAOUによる電力供給を停止する。状態PS2では、図3に示すRSOCの範囲R2においてAOUによる電力供給が可能である。範囲R2は範囲R1よりも広い。つまり、状態PS2では状態PS1よりもAOUにより外部機器40に多くの電力を供給することができる。
【0046】
図4を参照し、電源状態の制御における電子機器10の動作を説明する。図4は、電源状態を制御するために電子機器10が実行する処理の例を示す。OSは、電子機器10の電源状態に関する基準値を予め設定する。記憶部110は、OSによって設定された基準値を記憶する。
【0047】
(ステップS100)
制御部100は、USBコネクタ26の状態を監視し、外部機器40がUSBコネクタ26に接続されたか否かを判定する。外部機器40がUSBコネクタ26に接続されていなければ、制御部100はステップS100における判定を繰り返す。
【0048】
(ステップS101)
外部機器40がUSBコネクタ26に接続されていれば、制御部100は、外部機器40の種類を示す情報を外部機器40から取得する。制御部100は、その情報に基づいて、外部機器40がメディア転送プロトコル(MTP)デバイスであるか否かを判定する。スマートフォンまたはタブレット端末などはMTPデバイスである。マウスまたはキーボードのようなヒューマン・インタフェース・デバイス(HID)はMTPデバイスではない。外部機器40がMTPデバイスでなければ、図4に示す処理が終了する。この場合、従来技術における制御と同様の制御が実行される。なお、外部機器40がUSBコネクタ26に接続されている状態で電子機器10がModSにあるとき、制御部100は電子機器10をModSからS0に遷移させる。電子機器10がS0にある状態でステップS101は実行される。
【0049】
(ステップS102)
外部機器40がMTPデバイスであれば、制御部100は、電子機器10がS0からModSに遷移するときのバッテリ34の残量の基準値(例えば、80%)を記憶部110から読み出す。また、制御部100は、AOUによる電力供給を停止するときのバッテリ34の残量(例えば、15%)の基準値を記憶部110から読み出す。制御部100は、2つの基準値の差(例えば、65%)を算出する。制御部100は、ModSにおけるバッテリ34の残量の減少量としてOSによって予め設定された基準値の初期値(例えば、5%)を、上記のように算出した差に変更する。
【0050】
(ステップS103)
制御部100は、S0におけるバッテリ34の残量を検出する。
【0051】
(ステップS104)
制御部100は、予め設定されたイベントが発生したか否かを判定することにより、電子機器10をS0からModSに遷移させるか否かを判定する。
【0052】
(ステップS110)
予め設定されたイベントが発生していない場合、制御部100は電子機器10をS0からModSに遷移させないと判定する。制御部100は、USBコネクタ26の状態を監視し、外部機器40がUSBコネクタ26から取り外されたか否かを判定する。外部機器40がUSBコネクタ26から取り外されていない場合、ステップS103が実行される。
【0053】
(ステップS105)
予め設定されたイベントが発生した場合、制御部100は電子機器10をS0からModSに遷移させる。制御部100は、ステップS103において検出されたバッテリ34の残量を基準値として記憶部110に格納する。この基準値は、電子機器10がS0からModSに遷移したときのバッテリ34の残量を示す。
【0054】
(ステップS106)
制御部100は、ModSにおけるバッテリ34の残量を検出する。
【0055】
(ステップS107)
制御部100は、電子機器10がS0からModSに遷移したときのバッテリ34の残量の基準値(例えば、80%)を記憶部110から読み出す。制御部100は、基準値からステップS106において検出されたバッテリ34の残量を減算することによりModSにおけるバッテリ34の残量の減少量を算出する。制御部100は、ModSにおけるバッテリ34の残量の減少量の基準値(例えば、65%)を記憶部110から読み出す。制御部100は、算出された減少量と基準値とを比較し、電子機器10をModSからS4に遷移させるか否かを判定する。
【0056】
(ステップS111)
ModSにおけるバッテリ34の残量の減少量が基準値よりも小さい場合、制御部100は電子機器10をModSからS4に遷移させないと判定する。制御部100は、USBコネクタ26の状態を監視し、外部機器40がUSBコネクタ26から取り外されたか否かを判定する。外部機器40がUSBコネクタ26から取り外されていない場合、ステップS106が実行される。
【0057】
(ステップS108)
ModSにおけるバッテリ34の残量の減少量が基準値に達した場合、制御部100は電子機器10をModSからS4に遷移させる。
【0058】
(ステップS109)
電子機器10がModSからS4に遷移したとき、バッテリ34の残量は、AOUによる電力供給を停止するときのバッテリ34の残量(例えば、15%)の基準値よりも小さい。そのため、制御部100はAOUによる電力供給を停止する。
【0059】
ステップS108およびステップS109が実行される順番は上記の順番と異なってもよい。つまり、ステップS109が実行された後、ステップS108が実行されてもよい。
【0060】
(ステップS112)
外部機器40がUSBコネクタ26から取り外された場合、制御部100は、ModSにおけるバッテリ34の残量の減少量の基準値(例えば、65%)を初期値(例えば、5%)に変更する。その後、MTPデバイスである外部機器40がUSBコネクタ26に接続されたとき、上記の処理に従って、ModSにおけるバッテリ34の残量の減少量の基準値が変更される。MTPデバイスではない外部機器40がUSBコネクタ26に接続されたとき、ModSにおけるバッテリ34の残量の減少量の基準値は変更されない。外部機器40がMTPデバイスではない場合には、ModSにおけるバッテリ34の消費量が制限される。
【0061】
上記のように、外部機器40がUSBコネクタ26に接続され、USBコネクタ26は、バッテリ34から供給される電力を外部機器40に出力する。制御部100(コントローラ)は、外部機器40がUSBコネクタ26に接続されている状態で電子機器10がS0(稼働状態)からModS(スリープ状態)に遷移する第1のタイミングから、外部機器40がUSBコネクタ26に接続されている状態で電子機器10がModSからS4(休止状態)に遷移する第2のタイミングまでのバッテリ34の残量の減少量としてOSによって予め設定された第1の基準値(例えば、5%)を第1の基準値よりも大きい第2の基準値(例えば、65%)に変更する。第1のタイミングからのバッテリ34の残量の減少量が第2の基準値になったとき、制御部100は電子機器10をS4に遷移させる。これにより、電子機器10は、スリープ状態においてバッテリ34から外部機器40に供給される電力量を増加させることができる。制御部100がCPU11で構成される場合と、制御部100がエンベデッドコントローラ31で構成される場合とのいずれにおいても上記の動作が可能である。
【0062】
記憶部110(メモリ)は、電子機器10がS0またはModSにある状態で電力を外部機器40に出力する動作モード(AOU)において外部機器40への電力の出力を停止するときのバッテリ34の残量を示す第3の基準値(例えば、15%)を記憶する。制御部100は、電子機器10がS0からModSに遷移したときのバッテリ34の残量である第4の基準値を検出する。第4の基準値は、第3の基準値よりも大きい。制御部100は、第4の基準値と第3の基準値との差を算出することにより第2の基準値を算出する。第1の基準値を第2の基準値に変更した後、AOUにおけるバッテリ34の残量が減少し、第3の基準値になったとき、制御部100は外部機器40への電力の出力を停止する。これにより、電子機器10は、AOUによりバッテリ34から外部機器40に供給される電力量を増加させることができる。
【0063】
外部機器40がMTPデバイスである場合、制御部100は第1の基準値を第2の基準値に変更する。これにより、電子機器10は、スリープ状態においてバッテリ34からMTPデバイスに供給される電力量を増加させることができる。
【0064】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0065】
10 電子機器、11 CPU、12 メインメモリ、13 ビデオサブシステム、14 表示部、21 チップセット、22 BIOSメモリ、23 記憶媒体、24 オーディオシステム、25 WLANカード、25 WLANカード、26 USBコネクタ、31 エンベデッドコントローラ、32 入力部、33 電源回路、34 バッテリ、35 スイッチ、100 制御部、110 記憶部
【要約】
【課題】スリープ状態においてバッテリから外部機器に供給される電力量を増加させる。
【解決手段】電子機器は、外部機器が接続され、バッテリから供給される電力を前記外部機器に出力するコネクタと、コントローラと、を備え、前記コントローラは、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が稼働状態からスリープ状態に遷移する第1のタイミングから、前記外部機器が前記コネクタに接続されている状態で前記電子機器が前記スリープ状態から休止状態に遷移する第2のタイミングまでの前記バッテリの残量の減少量としてOSによって予め設定された第1の基準値を前記第1の基準値よりも大きい第2の基準値に変更し、前記第1のタイミングからの前記バッテリの残量の減少量が前記第2の基準値になったとき、前記コントローラは前記電子機器を前記休止状態に遷移させる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4