(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】プロセスのエッジテーブル表現
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0633 20230101AFI20250107BHJP
G06Q 10/10 20230101ALI20250107BHJP
【FI】
G06Q10/0633
G06Q10/10 310
(21)【出願番号】P 2021569962
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020053354
(87)【国際公開番号】W WO2021133448
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-09-14
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520262319
【氏名又は名称】ユーアイパス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】UiPath,Inc.
【住所又は居所原語表記】1 Vanderbilt Avenue, 60th Floor, New York, NY 10017, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】スチープンス,ローランド ヨハナス
(72)【発明者】
【氏名】ブリーゲン,ローランド
【審査官】野村 和史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0109789(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0138427(US,A1)
【文献】特開2010-044637(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103218692(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクティビティを含むプロセスのためのプロセス実行データを受信することと、
前記プロセス実行データに基づいて、前記プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成することであって、前記エッジテーブルの各行は、ソースイベントから目的イベントへの遷移を特定する、ことと、
前記エッジテーブルを出力することと、
を含
み、
前記プロセス実行データは、前記プロセスのイベントログを含み、
前記プロセス実行データに基づいて、前記プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成することは、
ケース識別子およびタイムスタンプに基づいて、前記イベントログをソートすることと、
前記ソートされたイベントログに基づいて、前記エッジテーブルに行を追加することと、
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記エッジテーブルに基づいて、1または複数のメトリックを計算すること、
をさらに含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記エッジテーブルに基づいて1または複数のメトリックを計算することは、
前記ソースイベントから前記目的イベントへの前記遷移に関連する1または複数のメトリックを計算すること
を含む、請求項
2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記エッジテーブルに基づいて1または複数のメトリックを計算することは、
前記目的イベントに関連する1または複数のメトリックを計算することを含む、請求項
2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記エッジテーブルに基づいて、前記プロセスの前記実行を階層的に表すプロセスグラフを生成すること、
をさらに含む、請求項1に記載の
コンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記プロセスは、ロボティックプロセスオートメーションプロセスである、請求項1に記載の
コンピュータ実装方法。
【請求項7】
コンピュータ命令を格納するメモリと、
前記コンピュータ命令を実行するように構成された少なくとも1つのプロセッサと、
を含む装置であって、
前記コンピュータ命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに以下の動作を実行させるように構成さ
れ、
複数のアクティビティを含むプロセスのためのプロセス実行データを受信すること、
前記プロセス実行データに基づいて、前記プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成することであって、前記エッジテーブルの各行は、ソースイベントから目的イベントへの遷移を特定すること、および
前記エッジテーブルを出力すること、
前記プロセス実行データは、前記プロセスのイベントログを含み、
前記プロセス実行データに基づいて、前記プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成することは、
ケース識別子およびタイムスタンプに基づいて、前記イベントログをソートすることと、
前記ソートされたイベントログに基づいて、前記エッジテーブルに行を追加することと、を含む、装置。
【請求項8】
前記動作は、
前記エッジテーブルに基づいて、1または複数のメトリックを計算することと、
をさらに含む、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記エッジテーブルに基づいて1または複数のメトリックを計算することは、
前記ソースイベントから前記目的イベントへの前記遷移に関連する1または複数のメトリックを計算することを含む、
請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
前記エッジテーブルに基づいて1または複数のメトリックを計算することは、
前記目的イベントに関連する1または複数のメトリックを計算することを含む、請求項
8に記載の装置。
【請求項11】
前記動作は、
前記エッジテーブルに基づいて、前記プロセスの前記実行を階層的に表すプロセスグラフを生成することをさらに含む、請求項
7に記載の装置。
【請求項12】
前記プロセスは、ロボティックプロセスオートメーションプロセスである、請求項
7に記載の装置。
【請求項13】
非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体上に格納されたコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、少なくとも1つのプロセッサに以下を含む動作を実行させるように構成さ
れ、
複数のアクティビティを含むプロセスのためのプロセス実行データを受信すること、
前記プロセス実行データに基づいて、前記プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成することであって、前記エッジテーブルの各行は、ソースイベントから目的イベントへの遷移を特定すること、および
前記エッジテーブルを出力すること、
前記プロセス実行データは、前記プロセスのイベントログを含み、
前記プロセス実行データに基づいて、前記プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成することは、
ケース識別子およびタイムスタンプに基づいて、前記イベントログをソートすることと、
前記ソートされたイベントログに基づいて、前記エッジテーブルに行を追加することと、
を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
前記動作は、
前記エッジテーブルに基づいて、1または複数のメトリックを計算することをさらに含む、請求項
13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記エッジテーブルに基づいて1または複数のメトリックを計算することは、
前記ソースイベントから前記目的イベントへの前記遷移に関連する1または複数のメトリックを計算することを含む、
請求項
14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記エッジテーブルに基づいて1または複数のメトリックを計算することは、
前記目的イベントに関連する1または複数のメトリックを計算することを含む、
請求項
14に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記動作は、
前記エッジテーブルに基づいて、前記プロセスの前記実行を階層的に表すプロセスグラフを生成することをさらに含む、
請求項
13に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記プロセスは、ロボティックプロセスオートメーションプロセスである、請求項
13に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2019年12月27日に出願された米国特許出願第16/728,686号の優先権を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
【0002】
本発明は概して、プロセスマイニング、より具体的には、プロセスマイニングのためのエッジテーブルにおけるプロセスの実行を表現することに関する。
【背景技術】
【0003】
プロセスマイニングでは、効率を向上させ、プロセスをよりよく理解するために、プロセスを分析して傾向、パターン、およびその他のプロセス分析手段を特定する。従来のプロセスマイニングは、実行されたアクティビティ、タイムスタンプ、およびケース識別子を表すイベントを記録するイベントログにデータマイニングアルゴリズムを適用することを含む。イベントログは通常、テーブルの各行(または記録)が単一のイベントに関連付けられたテーブルとして格納される。したがって、メトリックまたは他の表現は、イベントログに基づいてイベントに対して容易に計算され得る。しかし、イベントログは、プロセスのソースイベントから目的イベントへの遷移を反映していないため、イベントログからの遷移についてメトリックを簡単に計算することはできない。
【発明の概要】
【0004】
1または複数の実施形態によると、エッジテーブルでプロセスの実行を表現するシステムおよび方法が提供される。プロセスは、ロボティックプロセスオートメーションプロセスであり得る。
【0005】
複数のアクティビティを含むプロセスについてのプロセス実行データが受信される。プロセスの実行を表すエッジテーブルは、プロセス実行データに基づいて生成される。エッジテーブルの各行は、ソースイベントから目的イベントへの遷移を特定する。
【0006】
一実施形態では、プロセスの実行を階層的に表すプロセスグラフは、エッジテーブルに基づいて生成され得る。
【0007】
一実施形態では、1または複数のメトリックは、エッジテーブルに基づいて計算される。1または複数のメトリックは、ソースイベントから目的イベントへの遷移および/または目的イベントに関連付けられ得る。
【0008】
一実施形態では、プロセス実行データは、プロセスのイベントログを含む。エッジテーブルは、ケース識別子およびタイムスタンプに基づいてイベントログをソートし、ソートされたイベントログに基づいてエッジテーブルに行を追加することで生成される。
【0009】
本発明のこれらおよび他の利点は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照することにより、当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】文書処理のための例示的なプロセスを示す。
【0011】
【
図1B】請求書処理のための例示的なプロセスを示す。
【0012】
【
図2】本発明の一実施形態による、プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成する方法を示す。
【0013】
【
図3】本発明の一実施形態による、例示的なエッジテーブルを示す。
【0014】
【
図4】本発明の実施形態による、プロセスの実行の記録を階層的に表すプロセスグラフを示す。
【0015】
【
図5】本発明の実施形態による、コンピューティングシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(詳細な説明)
プロセスマイニングは、トレンド、パターン、およびその他のプロセス分析手段を特定するためのプロセスの分析を含む。本発明の実施形態によると、プロセスマイニングは、プロセスの実行を表すエッジテーブルに基づいて行われ得る。エッジテーブルの各行は、プロセスの実行のソースイベントから目的イベントへの遷移を特定する。したがって、遷移および/または目的イベントに関連するメトリックは、エッジテーブルから計算され得る。プロセスの一例は、
図1Aに文書処理のためのプロセス100として示されており、これはロボティックプロセスオートメーションRPAプロセスとして実装され得る。プロセスの別の例は、
図1Bに請求書処理のためのプロセス150として示されており、これはビジネスワークフローとして実装され得る。
【0017】
プロセス100は、
図1Aに、RPAロボットを用いて行われる自動文書処理のためのRPAワークフローとして示される。しかし、プロセス100は、例えばビジネスワークフローなど、ワークフローとしてモデル化され得る任意の適切なプロセスであってもよいことを理解されたい。プロセス100は、アクティビティ102~126を含む。
図1Aに示すように、プロセス100は、各アクティビティ102~126がノードとして表され、アクティビティ間の各遷移がノードを結ぶエッジとして表される有向グラフとしてモデル化される。アクティビティ間の遷移は、ソースアクティビティから目的アクティビティへのプロセス100の実行を表す。
【0018】
プロセス100は、開始アクティビティ102から始まり、アクティビティ104に進み、そこで電子メールが分類される。アクティビティ106では、分類が評価される。アクティビティ106で電子メールが請求として分類された場合、プロセス100は、アクティビティ108で請求を抽出し、アクティビティ110で請求を承認するユーザー入力を受信するように進む。ビジネスシステムは、アクティビティ112において請求の承認と共に更新される。アクティビティ106で電子メールが請求書として分類された場合、プロセス100は、進行してアクティビティ114において請求書を抽出し、アクティビティ416において抽出された請求書の信頼性を評価するように進む。アクティビティ116で信頼性が低い場合、アクティビティ118で請求書データを検証するためのユーザー入力が受信され、アクティビティ120およびアクティビティ122で請求書を検証するためのユーザー入力が受信される。アクティビティ116で信頼性が高ければ、プロセス100はアクティビティ124に直接進み、請求書を承認するためのユーザー入力を受信する。ビジネスシステムは、アクティビティ112で承認された請求書と共に更新される。プロセス100は、終了アクティビティ126で終了する。
【0019】
プロセス150は、ビジネスワークフローとして
図1Bに示される。プロセス150は、アクティビティ152~172を含み、各アクティビティ152~172がノードとして表され、アクティビティ間の各遷移がノードを結ぶエッジとして表される有向グラフとしてモデル化される。アクティビティ間の遷移は、ソースアクティビティから目的アクティビティへのプロセス150の実行を表す。
【0020】
プロセス150は、開始アクティビティ152から始まり、アクティビティ154に進み、そこで請求書が受信される。プロセス150は、従業員に報酬を支払うためにアクティビティ156に進み、プロセス150を終了させるために終了アクティビティ172に進むか、または受信した請求書を確認するためにアクティビティ158に進むかのいずれかである。請求書は、アクティビティ160で承認されるか、またはプロセス150は、アクティビティ162でデータを要求し、アクティビティ164で契約条件をチェックするか、またはアクティビティ166に直接進み、請求書の最終チェックを行い、アクティビティ168で請求書を承認するかのいずれかに進むだろう。請求書はアクティビティ170で支払われ、プロセス150は終了アクティビティ172で終了する。
【0021】
従来、プロセス(例えば、プロセス100または150)が実行されると、イベントログが生成される。イベントログは、典型的には、行と列とを有する表としてフォーマットされる。イベントログの各行(または記録)は、実行されたアクティビティを表すイベント、タイムスタンプ、ケース識別子(ID)、および場合によっては追加情報に関連付けられ、これらはそれぞれの列で特定される。そのような従来のイベントログは、各イベントについてメトリックを計算することを可能にするが、そのような従来のイベントログは、イベント間の遷移を反映しないため、特に
図1Aのプロセス100のアクティビティ108および114に関して示されるような並列性を含むプロセスの場合、そのような遷移についてメトリックを容易に計算することができない。並列イベントに関するメトリックは、イベントテーブルを用いて容易に計算することができず、(例えば、棒グラフ)などの付随するビジネスインテリジェンス(BI)チャートで使用することは困難である。
【0022】
本発明の実施形態は、プロセス(例えば、プロセス100または150)の実行を表すエッジテーブルを生成し、エッジテーブルの各行は、イベント間の遷移に関連付けられる。したがって、エッジテーブルの各行は、ソースイベントから目的イベントへの遷移の記録と、目的イベントの記録とを表し得る。有利なことに、本発明の実施形態によるエッジテーブルは、遷移および/または目的イベントに関連するメトリック(または他の表現)の計算を容易にし、それにより、遷移およびイベントの評価に単一のメトリックを使用することができる。さらに、本発明の実施形態によるエッジテーブルは、イベントログが(利用可能である状態であるのに)生成されない場合に、重要となり得る。
【0023】
図2は、1または複数の実施形態による、プロセスの実行を表すエッジテーブルを生成するための方法200を示す。方法200は、
図5のコンピュータ500など、任意の適切なコンピューティングデバイスによって実行され得る。
【0024】
ステップ202では、第1のアクティビティと第2のアクティビティとを含むプロセスについてのプロセス実行データを受信する。一実施形態では、プロセス実行データは、プロセスの実行のイベントログであり得る。しかし、プロセス実行データは、例えば、プロセスモデルまたは適合性チェックアルゴリズムの出力など、プロセスの実行を表す任意のデータを含み得ることを理解すべきである。
【0025】
ステップ204で、プロセスの実行を表すエッジテーブルは、プロセス実行データに基づいて生成される。エッジテーブルの各行は、ソースイベントから目的イベントへの遷移を特定する。エッジテーブルを生成するために、各遷移のプロセス実行データから、ソースイベントおよび目的イベントの属性が定義される。
【0026】
一実施形態では、例えば、プロセス実行データがプロセスの実行のイベントログである場合、まず、イベントログ内のすべてのイベントをそれらのケースIDに基づいてソートし、次に、同じケースIDを有する各イベントをタイムスタンプ(最も古いものから最も新しいものへ)でソートすることにより、エッジテーブルが生成され得る。次に、イベントログ内のそれぞれの各イベントについて、ソートされたイベントログに対して、以下のステップが1パスで順次実行される。まず、ソートされたイベントログについて、それぞれのイベントと同じケースIDを持つ先行イベントが存在しない場合には、ヌルのイベントをソースイベントとし、それぞれのイベントを目的イベントとする新しい行がエッジテーブルに追加される。これにより、あるケースの最初のイベントが目的イベントとしてリストアップされ得る。次に、ソートされたイベントログについて、それぞれのイベントと同じケースIDを持つ先行イベントが存在する場合、直前のイベントをソースイベントとし、それぞれのイベントを目的イベントとする新しい行がエッジテーブルに追加される。エッジテーブルに各新しい行が追加されるたびに、各イベントにイベントIDが割り当てられ、エッジテーブルの各行がソースイベントおよび目的イベントの属性を含むように、イベントIDを使用してイベントログ中のイベントに追加の属性が追加され得る。
【0027】
一実施形態では、例えば、プロセス実行データがビジネスプロセスモデリング表記法(BPMN:business process model and notation)プロセスモデルである場合、エッジテーブルは、プロセスモデル内の各エッジを、そのソースアクティビティとその目的アクティビティとの間の単一の遷移として格納することによって生成され得る。エッジテーブルは、ソースアクティビティに関連するノードおよび目的アクティビティに関連するノードのモデルノードタイプを特定する列を任意選択的に含み得る。モデルノードタイプは、ノードのセマンティクスを表し、以下のうちの1つであり得る。Activity、Andゲートウェイ、Xorゲートウェイ、Start、またはEnd。他のノードタイプも考えられる。ノードタイプは、マイニングアルゴリズムまたは直接入力から決定される)。モデルノードタイプをエッジテーブルに格納することにより、ノードタイプをプロセスグラフおよびBIチャートにおいて一様に再利用することが可能になる。
【0028】
図3は、1または複数の実施形態による、例示的なエッジテーブル300を示す。エッジテーブル300は、
図2のステップ204で生成され得る。
図3のエッジテーブル300は、プロセス100の実行を表しており、
図1Aを参照して説明されよう。エッジテーブル300は、列302および行304を含む。エッジテーブル300の各行304は、ソースイベントから目的イベントへの遷移を特定する。エッジテーブル300中の各列302は、各行304について、ソースイベントおよび目的イベントの様々な属性を特定するフィールドと関連付けられる。例えば、列302-Aは、ソースアクティビティを特定し、列302-Bは、目的アクティビティを特定し、列302-Cは、ソースアクティビティのタイムスタンプを特定し、列302-Dは、目的アクティビティのタイムスタンプを特定し、列302-Eは、ケースIDを特定する。エッジテーブル300は、例えば、名前またはサービスレベルアグリーメントなどの追加の属性を特定する追加の列302を含み得る。
【0029】
図3に示すように、行302-Aは、列302-Aでヌルのソースアクティビティを特定し、列302-Bで目的アクティビティとして開始アクティビティ102を特定し、列302-Cでソースアクティビティのタイムスタンプとしてヌルのタイムスタンプを特定し、列302-Dで目的アクティビティのタイムスタンプとして13:03:29のタイムスタンプを特定し、列302-Eで1のケースIDを特定する。行302-Aは、ヌルイベントから開始イベントへの遷移を特定することにより、開始イベントについてメトリックが計算され得る。行304-Bは、列302-Aのソースアクティビティとして開始アクティビティ102を特定し、列302-Bの目的アクティビティとして電子メールアクティビティ104を分類し、列302-Cのソースアクティビティのタイムスタンプとして13:03:29のタイムスタンプを特定し、列302-Dの目的アクティビティタイムスタンプとして13:05:11のタイムスタンプを特定し、列302-Eの1のケース識別子を特定する。イベント間の残りの遷移も、同様にエッジテーブル300で特定される。ヌルのアクティビティは、
図3に例示的に示されているが、他の実施形態も可能である。エッジテーブル300に示されるように、アクティビティ102~126の順序は、各行304の遷移関係によって暗黙的に提供される。
【0030】
図2のステップ206では、エッジテーブルに基づいて1または複数のメトリックが計算される。メトリックは、ソースイベントから目的イベントへの遷移に関連付けられ得かつ/または目的イベントに関連付けられ得る。メトリックは、任意の適切なメトリックを含んでもよい。一例では、メトリックは、エッジテーブル中の行または記録の数として計算されるイベントの数を含み得る。別の例では、メトリックは、エッジテーブルにおいて特定される一意のケースIDの数として計算されるケースの数を含み得る。別の例では、メトリックは、ケースIDの総数に対するエッジテーブルで特定された一意のケースIDの数の割合として計算されるケースの割合を含み得る。別の例では、メトリックは、すべてのアクティビティのスループット時間の平均として計算された平均スループット時間を含み得る。エッジテーブルに基づいて、他のメトリックが計算され得る。メトリックは、例外処理、並列処理、マルチインスタンスグラフ、コンフォーマンスチェック、カスタムキーパフォーマンスインジケーター、または任意の他のアプリケーションの視覚化に使用され得る。いくつかの実施形態では、計算されたメトリックは、属性としてエッジテーブル内に格納され得る。
【0031】
ステップ208では、エッジテーブルおよび/または1もしくは複数の計算されたメトリックが出力される。例えば、エッジテーブルおよび/または計算されたメトリックは、エッジテーブルおよび/または計算されたメトリックをコンピュータシステムのディスプレイデバイスに表示すること、エッジテーブルおよび/または計算されたメトリックをコンピュータシステムのメモリまたはストレージに格納すること、あるいはエッジテーブルおよび/または計算されたメトリックをリモートコンピュータシステムに送信することにより、出力され得る。
【0032】
有利なことに、本発明の実施形態によるエッジテーブルによれば、単一のテーブルを使用して、目的イベントとソースイベントから目的イベントへの遷移との両方に対して単一のメトリックを定義することを可能にする。一例として、エッジテーブルは、アクティビティ間に特定の順序がない(すなわち、アクティビティの実行が任意の順序で可能である)並列性の場合に、遷移に関するメトリックの計算を可能にする。イベントログはシーケンシャルであり、並列性の概念を捉えることはできない。
【0033】
一実施形態では、メトリックの計算を容易にするために、エッジテーブルに基づいて、方法200のプロセスの実行の記録を階層的に表すプロセスグラフが生成され得る。
図4は、1または複数の実施形態による、プロセスの実行の記録を階層的に表す例示的なプロセスグラフ400を示す。プロセスグラフ400中の各ノードは、ソースイベントから目的イベントへの遷移を特定する1組の記録を含む。
【0034】
プロセスグラフ400は、ルートレベル402、目的アクティビティレベル404、ソースアクティビティレベル406、および記録レベル408におけるメトリックの計算を容易にする。ルートレベル402は、すべての記録を含むルートノードを含む。プロセス全体にわたるメトリックは、ルートノードにおいて計算され得る。目的アクティビティレベル404は、それぞれが一意の目的アクティビティに関連するノードを含む。目的アクティビティレベル404の各ノードは、その関連する目的アクティビティのすべての記録を含む。目的アクティビティにおけるメトリックは、目的アクティビティレベル404のノードにおいて計算され得る。ソースアクティビティレベル406は、ソースアクティビティおよび目的アクティビティの一意の組み合わせにそれぞれ関連するノードを含む。ソースアクティビティレベル406における各ノードは、同じソースアクティビティを有するその親ノードからのすべての記録を含む。したがって、ソースアクティビティレベル406における各ノードは、その関連するソースアクティビティおよび目的アクティビティのすべてのレコードを含む。ソースアクティビティから目的アクティビティへの遷移のメトリックは、ソースアクティビティレベル406のノードにおいて計算され得る。記録レベル408は、エッジテーブルの個々の記録を表す。メトリックは記録レベル408において計算され得るが、メトリックは個々の遷移について計算されるであろう。
【0035】
プロセスグラフ400は、イベント間のソース/目的関係を定義するために、エッジテーブルを使用して生成され得る。詳細には、プロセスグラフ400は、エッジテーブルの各行(または記録)をその関連ノード(すなわち、ルートノード、同じ目的アクティビティを有する目的アクティビティレベルノード、および同じソースおよび目的アクティビティを有するソースアクティビティレベルノード)に配置することにより、エッジテーブルから生成され得る。
【0036】
メトリックは、プロセスグラフ400を用いて計算され得る。例えば、グラフメトリックは、ルートレベル402からプロセス全体について計算され得、アクティビティメトリックは、目的アクティビティレベル404で計算され得、かつ/または、遷移に関するメトリックは、ソースアクティビティレベル406で計算され得る。プロセスグラフ400の各ノードは、その親ノードおよびその子ノードにアクセスし得る。したがって、例えば、遷移のメトリックを計算する際には、そのエッジと同じ目的アクティビティを有するすべての記録のプロパティが使用され得る。例えば、ケース割合のメトリックは、ソースアクティビティレベル406のノードから決定された一意のケースIDの数を、ルートレベル402のルートノードから決定されたプロセス全体の一意のケースIDの総数で除算した値を計算し、その結果を割合に変換することにより、特定の遷移にわたるケースの割合を返す。
【0037】
一実施形態では、エッジテーブルのイベント間の遷移は、BIチャート中に直接表現され得る。エッジテーブルは、フィルタリングまたは拡張され得るため、その結果得られたエッジテーブルは、プロセスグラフおよび/またはBIチャートとして直接表示され得る。エッジテーブルは、BIシステム中の通常のテーブルとして動作し得、その結果、例えば、フィルタリング、選択、メトリックの計算、他のテーブルへの結合、新しい(派生)属性の追加などのすべてのBI機能が、エッジテーブル内の遷移時に利用可能となる。
【0038】
次に、本発明の様々な実施形態について説明する。一実施形態では、エッジテーブルは、別のイベントログの適合性をチェックするために使用され得る。適合性モデルは、例えば、BPMNモデルから生成またはインポートされ得る。一実施形態では、エッジテーブルは、イベントログの一部ではないアクティビティおよびトランジションを追加するために、例えば、プロセスの欠落部分を追加したり、または共通の開始および/もしくは終了アクティビティを追加したりするために使用され得る。
【0039】
一実施形態では、エッジテーブルは、プロセス計算を高速化するためのキャッシュとして使用され得る。一実施形態では、エッジテーブルは、イベントログと結合され得る。一実施形態では、エッジテーブルは、イベントログのすべての情報を含む。
【0040】
一実施形態では、エッジテーブルは、例えば、プロセスマイニングアルゴリズムを用いてイベントログからマイニングされるような、または入力データに直接エンコードされるような、並列性を直接表現し得る。並列性の情報は、BIチャートでも直接利用される。並列性を明示的にエンコードすることで、並列性を正しく考慮したメトリックを算出することができる。従来のプロセスマイニングでは、並列性は無視されることが多い。
【0041】
一実施形態では、エッジテーブルは遷移ごとに1つの行を持ち、モデルを表す。一実施形態では、エッジテーブルはイベントごとに1つの行を持ち、イベントログのすべての遷移を表す。
【0042】
図5は、本発明の実施形態による、
図2を参照して説明した方法を実行するように構成されたコンピューティングシステム500を例示するブロック図である。いくつかの実施形態では、コンピューティングシステム500は、本明細書に図示および/または記載された1または複数のコンピューティングシステムであり得る。コンピューティングシステム500は、情報を通信するためのバス502または他の通信機構と、情報を処理するためにバス502に結合されたプロセッサ(複数可)504とを含む。プロセッサ(複数可)504は、中央処理ユニット(CPU)、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)、それらの複数のインスタンス、および/またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、任意のタイプの汎用または特定用途向けのプロセッサであり得る。プロセッサ(複数可)504はまた、複数の処理コアを有してもよく、コアの少なくとも一部は、特定の機能を行うように構成され得る。いくつかの実施形態では、複数並列処理が使用されてもよい。
【0043】
コンピューティングシステム500は、プロセッサ(複数可)504によって実行される情報および命令を格納するメモリ506をさらに含む。メモリ506は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、キャッシュ、磁気ディスクもしくは光ディスクなどの静的記憶装置、または他のタイプの非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体、あるいはそれらのいずれかの組み合わせで構成され得る。非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体は、プロセッサ(複数可)504によりアクセス可能ないずれかの利用可能な媒体であってもよく、揮発性媒体、不揮発性媒体またはこれら両方を含み得る。また、媒体は、取り外し可能なもの、取り外し不可能なもの、またはこれら両方であり得る。
【0044】
さらに、コンピューティングシステム500は、現在存在するまたは将来実装される通信規格および/またはプロトコルに従って無線および/または有線接続を介して通信ネットワークへのアクセスを提供するために、トランシーバなどの通信装置508を含む。
【0045】
プロセッサ(複数可)504は、ユーザーに情報を表示するのに適したディスプレイ510にバス502を介してさらに結合されている。ディスプレイ510はまた、タッチディスプレイおよび/または任意の適切な触覚I/Oデバイスとして構成されてもよい。
【0046】
コンピュータマウス、タッチパッドなどのようなキーボード512およびカーソル制御装置514は、ユーザーがコンピューティングシステムとインターフェースをとることを可能にするために、バス502にさらに結合されている。しかしながら、特定の実施形態では、物理的なキーボードおよびマウスが存在しない場合があり、ユーザーは、ディスプレイ510および/またはタッチパッド(図示せず)のみを介してデバイスと対話することができる。任意の入力デバイスの種類および組み合わせが、設計の選択の問題として使用され得る。特定の実施形態では、物理的な入力装置および/またはディスプレイは存在しない。例えば、ユーザーは、コンピューティングシステム500と通信している別のコンピューティングシステムを介してリモートでコンピューティングシステム500と対話してもよいし、コンピューティングシステム500が自律的に動作してもよい。
【0047】
メモリ506は、プロセッサ(複数可)504により実行されたときに機能を提供するソフトウェアモジュールを格納する。モジュールは、コンピューティングシステム500のためのオペレーティングシステム516と、本明細書に記載されるプロセスの全部もしくは一部、またはその派生物を実行するように構成された1もしくは複数の追加機能モジュール518とを含む。
【0048】
当業者であれば、「システム」は、本発明の範囲から逸脱することなく、サーバー、組み込みコンピューティングシステム、パーソナルコンピュータ、コンソール、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、携帯電話、タブレットコンピューティングデバイス、量子コンピューティングシステム、または他のいずれかの適切なコンピューティングデバイス、またはデバイスの組み合わせとして具現化され得ることを理解するであろう。上述した機能を「システム」により実行されるものとして提示することは、本発明の範囲を限定することを何ら意図するものではなく、本発明の多くの実施形態の一例を提供することを意図するものである。実際、本明細書に開示された方法、システムおよび装置は、クラウドコンピューティングシステムを含むコンピューティング技術と整合性のある局所的様態および分散的様態で実装され得る。
【0049】
本明細書で説明するシステム特色のいくつかは、実装の独立性をより強調するために、モジュールとして提示されていることに留意すべきである。例えば、モジュールは、カスタムの非常に超大型集積(VLSI)回路またはゲートアレイ、ロジックチップ、トランジスタ、または他の個別部品のような既製の半導体を含むハードウェア回路として実装され得る。また、モジュールは、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジック装置、グラフィックス処理ユニットなどのプログラマブルハードウェア装置に実装され得る。モジュールはまた、様々なタイプのプロセッサにより実行されるためのソフトウェアに少なくとも部分的に実装され得る。例えば、実行可能コードの特定された単位は、例えば、オブジェクト、プロシージャ、または関数として編成され得るコンピュータ命令の1または複数の物理的または論理的なブロックを含み得る。それにもかかわらず、実行可能な特定されたモジュールは、物理的に一緒に配置される必要はなく、論理的に結合されたときにモジュールを含み、モジュールのために述べられた目的を達成するために、異なる場所に格納された別々の命令を含み得る。さらに、モジュールは、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュ装置、RAM、テープのようなコンピュータ読み取り可能な媒体、および/または本発明の範囲から逸脱することなくデータを格納するために使用される他のいずれかの非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納され得る。実際、実行可能コードのモジュールは、単一の命令であってもよいし、多数の命令であってもよいし、さらには、複数の異なるコードセグメント、異なるプログラム間、および複数のメモリ装置間に分散されていてもよい。同様に、操作データは、モジュール内で特定され、ここで示されてもよく、いずれかの適切なタイプのデータ構造体内でいずれかの適切な形態で具現化され、組織化され得る。操作データは、単一のデータセットとして収集されてもよいし、または異なる記憶装置にわたり異なる場所に分散されてもよく、単にシステムまたはネットワーク上の電子信号として少なくとも部分的に存在してもよい。
【0050】
上記は、単に開示の原則を例示しているに過ぎない。したがって、本明細書に明示的に記載または示されていないが、本開示の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々なアレンジを、当業者が考案することができることが理解されるであろう。さらに、本明細書に引用された全ての実施例および条件文言は、主として、本開示の原理および本発明者が技術の発展に貢献した概念を理解するための読者を助けるための教育的な目的のみを意図しており、そのような具体的に引用された実施例および条件に限定されないものとして解釈されるべきである。さらに、本開示の原理、態様、および実施形態、ならびにそれらの具体的な実施例を引用する本明細書の全ての記述は、それらの構造的および機能的等価物を包含することを意図する。さらに、このような等価物には、現在知られている等価物だけでなく、将来開発される等価物も含まれることが意図される。