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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】燃料電池基盤の多重電源システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20250107BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20250107BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20250107BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20250107BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/10 101
H01M8/12 101
H01M8/0612
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023530580
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 KR2021017694
(87)【国際公開番号】W WO2022124661
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0173228
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521234939
【氏名又は名称】エフシーアイ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、タエ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ボ ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、イン ガブ
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-528416(JP,A)
【文献】特開2019-029051(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063517(WO,A1)
【文献】特開2018-116834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
B63H 21/17
B60L 58/30-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)と、
固体酸化物燃料電池(SOFC)と、
出港又は入港時の第1動作区間で、前記PEMFCを稼動し、前記PEMFCが生産した電気で船舶を駆動し、
航海時の第2動作区間で、前記PEMFCの稼働を中止し、前記SOFCが生産した電気で前記船舶を駆動する駆動制御システムと、
を含む、燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項2】
前記PEMFCは、水素タンクの水素を燃料として受け、
前記SOFCは、液化石油ガス、液化天然ガス、及びメタンのうちのいずれか一つを改質して得た水素を燃料として受ける、請求項1に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項3】
前記SOFCは、複数の単位電池モジュール(unit cell modules)からなり、前記単位電池モジュールの全体を燃料電池として用いる燃料電池モード、及び前記複数の単位電池モジュールのうちの一部は燃料電池として用い、他の一部は電解電池として用いるデュアルモードのうちの一つで稼動され、
前記駆動制御システムは、前記第1動作区間で、前記SOFCを燃料電池モードで稼動する、請求項2に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項4】
前記駆動制御システムは、
第3動作区間で、前記SOFCをデュアルモードで稼動し、前記SOFCで生産された水素で前記水素タンクを充填する、請求項3に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項5】
前記デュアルモードで、電解電池として動作する単位電池モジュールにエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)の電気が入力される、請求項4に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項6】
前記デュアルモードで、電解電池として動作する単位電池モジュールに蓄電池(super capacitor)の電気が入力される、請求項4に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項7】
前記駆動制御システムは、
前記第1動作区間で、前記PEMFCが生産した電気及びエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)の電気を一緒に用いて前記船舶を駆動する、請求項1に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項8】
前記SOFCは、燃料電池モード及び電解電池モードのうちの一つで稼動され、
前記駆動制御システムは、前記第1動作区間で、前記SOFCを燃料電池モードで稼動する、請求項2に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項9】
前記駆動制御システムは、
第3動作区間で、前記SOFCを電解電池モードで稼動し、前記SOFCで生産された水素で前記水素タンクを充填する、請求項8に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【請求項10】
前記駆動制御システムは、
前記第3動作区間で、エネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)の電気を用いて前記船舶を駆動する、請求項9に記載の燃料電池基盤の多重電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池基盤の多重電源システムに関するものであり、より詳しくは早い始動及び迅速な応答力を提供するポリマー電解質膜燃料電池及び高い発電効率を提供する固体酸化物燃料電池を要求状況に応じて交互に稼動する一方で、一部の不足な電力はエネルギー貯蔵システムや蓄電池のような2次電池から補完することで、単一燃料電池によって対応しにくい状況に柔軟に対処することができる燃料電池基盤の多重電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2000年代初盤から地球温暖化が国際的イシューとして注目されるのに伴い、国際海事機関(International Maritime Organization、IMO)は、船舶から排出される二酸化炭素を減らすための段階別目標値(Energy Efficiency Design Index、EEDI)を設定し、船舶の設計段階からEEDIを満たすように規制している。この規制によれば、2013年以後に建造される船舶からは必ずEEDIを守らなければならなく、国際海事機関は船舶から排出される温室ガス排出量を2030年まで40%、2050年まで50%に減縮する方案を推進している。
【0003】
船舶の二酸化炭素排出を低減することができる最良の方法の一つは二酸化炭素を根本的に排出しない水素またはアンモニア燃料を活用することであるが、アンモニアを燃料として使用する場合、毒性ガスが発生するので、船級規定上燃料として使用できない。
【0004】
水素を燃料として使用する燃料電池は燃料の化学反応によって発生する化学エネルギーを電気エネルギーに変換させる一種の発電装置であり、爆発過程がなくて振動が少なく、エネルギー変換段階が簡単であって発電効率が相対的に高く、汚染物質の排出がほとんどないという利点によって船舶用次世代エネルギー供給手段として脚光を浴びている。
【0005】
船舶に燃料電池を搭載するための先行技術として、韓国特許公開第10-2009-0019466号(公開日:2009.02.25)(特許文献1)が提案されたことがある。特許文献1は船舶用固体酸化物燃料電池発電システムの運営方法に関するものであり、固体酸化物燃料電池を用いて船舶の所要推進発電力を生成し、試錐過程の天然ガス及び固体酸化物燃料電池の発電過程中に発生した熱を用いて海水を電気分解し、このように生成された水素で再び固体酸化物燃料電池を稼動する技術を提示する。
【0006】
固体酸化物燃料電池は燃料の柔軟性が高く、高効率発電が可能であるが、燃料電池の始動及び停止に少なくない時間がかかり、系統の需要が可変的な場合、出力の迅速な対応が難しい欠点がある。
【0007】
したがって、船舶が航海区間で運航しているうちには固体酸化物燃料電池が適合であるが、港から出航するか港に入港する場合のように船舶をダイナミックに運航しなければならないときには、短時間内に爆発的な出力を要するかまたは所要出力の変動がひどくなるので、固体酸化物燃料電池のみでは対応しにくい問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第10-2009-0019466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題の一つは、短時間内に出力変動が大きい負荷を起動しなければならない状況と発電効率が優先視される状況とを同時に満たすエネルギー供給技術を提供することである。
【0010】
本発明が解決しようとする課題の他の一つは、前記エネルギー供給技術を運営しているうちに発生し得る緊急状況に備えた補完的エネルギー供給技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題を解決するために、ポリマー電解質膜燃料電池(PEMFC)と、固体酸化物燃料電池(SOFC)と、第1動作区間で、前記PEMFCを稼動し、前記PEMFCが生産した電気で負荷(load)を駆動し、第2動作区間で、前記PEMFCの稼働を中止し、前記SOFCが生産した電気で前記負荷を駆動する駆動制御システムと、を含む、燃料電池基盤の多重電源システムを一実施例として提案する。
【0012】
前記PEMFCは、水素タンクの水素を燃料として受け、前記SOFCは、液化石油ガス、液化天然ガス、及びメタンのうちのいずれか一つを改質して得た水素を燃料として受けることができる。
【0013】
前記SOFCは、複数の単位電池モジュール(unit cell modules)からなり、前記単位電池モジュールの全体を燃料電池として用いる燃料電池モード、及び前記複数の単位電池モジュールのうちの一部は燃料電池として用い、他の一部は電解電池として用いるデュアルモードのうちの一つで稼動され、前記駆動制御システムは、前記第1動作区間で、前記SOFCを燃料電池モードで稼動することができる。
【0014】
また、前記駆動制御システムは、第3動作区間で、前記SOFCをデュアルモードで稼動し、前記SOFCで生産された水素で前記水素タンクを充填することができる。
【0015】
前記デュアルモードで、電解電池として動作する単位電池モジュールにエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)または蓄電池(super capacitor)の電気が入力されることができる。
【0016】
前記駆動制御システムは、前記第1動作区間で、前記PEMFCが生産した電気及びエネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)の電気を一緒に用いて前記負荷を駆動することができる。
【0017】
前記SOFCは、燃料電池モード及び電解電池モードのうちの一つで稼動され、前記駆動制御システムは、前記第1動作区間で、前記SOFCを燃料電池モードで稼動することができる。
【0018】
前記駆動制御システムは、第3動作区間で、前記SOFCを電解電池モードで稼動し、前記SOFCで生産された水素で前記水素タンクを充填することができる。
【0019】
前記駆動制御システムは、前記第3動作区間で、エネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)の電気を用いて前記負荷を駆動することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施例によれば、短時間内に出力変動が大きい負荷を起動しなければならない状況と発電効率が優先視される状況とを同時に満たすエネルギー供給技術が提供される。
【0021】
本発明の実施例によれば、前記エネルギー供給技術を運営しているうちに発生し得る緊急状況に備えた補完的エネルギー供給技術が提供される。
【0022】
本発明の効果は以上で言及したものに限定されず、言及しなかった他の効果は下記の記載から当業者に明らかに理解可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施例による多重電源システムの構成図である。
図2図1の実施例による船舶用多重電源システムの動作過程を多様な観点で分析したフローチャートである。
図3】他の実施例による多重電源システムの構成図である。
図4図3の実施例による船舶用多重電源システムの動作過程を多様な観点で分析したフローチャートである。
図5】他の実施例による多重電源システムの構成図である。
図6図5の実施例による船舶用多重電源システムの動作過程を多様な観点で分析したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づき、発明を実施するための具体的な内容を詳細に説明する。
【0025】
本発明の実施例は、ポリマー電解質膜燃料電池及び固体酸化物燃料電池を一緒に備える多重電源システムに関するものである。
【0026】
ポリマー電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell、PEMFC)は始動時間が比較的短く、負荷の出力変化に早い応答速度を提供するが、触媒及び電解質の値段が高く、水素に含有されたCOによって長期運転の際に活性が低下することがあり、運転温度が相対的に低いので廃熱の活用ができない。
【0027】
固体酸化物燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、SOFC)は現存する燃料電池のうち最高の発電効率を有し、触媒及び電解質の値段が低く、炭化水素を直接燃料として使用することができるのでCOから安全であり、約600~1000℃の高温で動作するので廃熱を活用することができる。しかし、作動温度が低ければ十分な出力を得ることができないので、適正の稼働温度に上がるまで始動時間が長く、負荷の要求に迅速に対応することができない欠点を有する。
【0028】
このように、ポリマー電解質膜燃料電池と固体酸化物燃料電池とは互いに相反する利点及び欠点を有するので、ハイブリッド方式で運用することで、要求事項が互いに異なる複数の負荷に対応するかまたは負荷は一つであっても状況に応じて異なる動作条件を要求するときに円滑に対処することができる。
【0029】
以下で、理解を手伝うために、本発明の多重電源システムが電気推進モーターによって駆動される船舶に搭載された場合を実施例として説明することができる。ただ、本発明の多重電源システムは、例示した船舶の他にも、類似している動作環境を有する多様な技術分野、装置またはシステムに適用可能であるというのは本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に明らかである。
【0030】
<実施例1>
【0031】
実施例1は、負荷の動作特性によってポリマー電解質膜燃料電池と固体酸化物燃料電池とを前記負荷に選択的に連結する技術に関するものである。実施例1では、単一モジュールの固体酸化物燃料電池を用い、固体酸化物燃料電池は発電機としてのみ動作する。
【0032】
図1は実施例1による多重電源システムの構成を示す。
【0033】
図1に示すように、実施例1の多重電源システムは、ポリマー電解質膜燃料電池(以下、「PEMFC」という)100、固体酸化物燃料電池(以下、「SOFC」という)200、電力制御システム(Power Control System、以下、「PCS」という)300、及び駆動制御システム(Operating Control System)(図示せず)を含んでなり、エネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、以下、「ESS」という)400をさらに含むことができる。
【0034】
PEMFC100は高分子膜を電解質として使用する燃料電池であり、触媒が含まれた電極と電解質膜とを含んでなる。燃料極に供給された水素は水素イオン及び電子に分離され、分離された水素イオンは電解質膜を介して反対電極である空気極に移動し、分離された電子は導線に沿って移動することによって電流が流れる原理で電気を生産する。
【0035】
SOFC200はイオン伝導性セラミックを電解質として使用する燃料電池であり、酸素イオン伝導性電解質とその両面に位置する空気極(cathode)及び燃料極(anode)とを含んでなる。空気極及び燃料極にそれぞれ空気及び水素を供給すると、空気極では酸素の還元反応が起こって酸素イオンが生成され、電解質を介して燃料極に移動した酸素イオンはまた燃料極に供給された水素と反応して水を生成する。ここで、燃料極では電子が生成され、空気極では電子が消耗されるので、両電極を互いに連結すると電流が流れる原理で電気を生産する。SOFC200は純粋な水素を直接燃料として使用することもでき、液化天然ガス(LNG)、液化プロパンガス(LPG)、メタンガスなどの炭化水素燃料を改質して得た水素を燃料として使用することもできる。
【0036】
PCS300は電源端と負荷端との間に位置し、両側の電力特性を整合する。本実施例の多重電源システムで、PCS300は電源(power source)の機能を果たすPEMFC、SOFC、ESS、蓄電池(super capacitor)の電力特性を多重電源システムと連結された負荷(load)または電力系統(grid)の要求値に合うように変換する。
【0037】
負荷(load)の例としてDCモーターを想定し、PEMPC、SOFC及びESSのうちの少なくとも一つで前記DCモーターを駆動すると仮定するとき、PCS300はDC-DCコンバーターまたはDC-AC-DCコンバーターの役割を果たす。また、SOFCで生産された電気を電力系統(grid)に供給する場合、PCS300はDC-ACコンバーターまたは系統連携型インバーターの役割を果たす。
【0038】
駆動制御システム(図示せず)は、本実施例の多重電源システムを構成するそれぞれの要素、すなわち、PEMFC100、SOFC200、PCS300、ESS400、LPG/LNGの燃料タンク10、及び水素タンク20に連結されたコントロールバルブ(図示せず)などの動作を制御する。
【0039】
具体的には、第1動作区間で、駆動制御システムはPEMFC100を稼動し、PEMFC100が生産した電気で負荷(load)を駆動する。そして、第2動作区間で、PEMFC100の稼働を中止し、SOFC200が生産した電気で前記負荷を駆動する。
【0040】
第1動作区間で、駆動制御システムは、PEMFC100が生産した電気で負荷を駆動するのに十分でない場合、ESS400が出力する電気を一緒に用いて負荷を駆動することもできる。
【0041】
以下、実施例1の多重電源システムが船舶に搭載された場合を想定してその動作過程を詳細に説明する。
【0042】
第1動作区間は船舶が港から出港する出港段階または船舶が港に入港する入港段階と理解することができ、第2動作区間は航海段階に対応する。また、負荷(load)は船舶を推進する推進モーターと理解することができる。
【0043】
第1動作区間である出港/入港段階で、出港の際には停止状態にある重い船体を動かすために、プロペラシャフトに連結された推進モーターに対して短期間内に高出力が要求される。また、制限された空間の港から出港するために精密な操舵が行われる過程で推進モーターが順回転及び逆回転に頻繁に転換される状況が発生する。
【0044】
また、入港の際には、慣性によって前進する船体が入港施設に衝突しないように速度を減らすために急にプロペラを逆回転させる状況が発生する。このとき、プロペラシャフトに連結された推進モーターに対して短期間内に高出力が要求される。また、制限された空間の港に入港するために精密な操舵が行われる過程で推進モーターの順回転及び逆回転が頻繁に転換される状況が発生する。
【0045】
駆動制御システムは、出港/入港段階で、このような推進モーターの出力要求特性に合うようにPEMFC100を起動(ON)し、PEMFC100が生産した電気で推進モーターを駆動する。ここで、PEMFC100は、高圧の水素タンク20に貯蔵された水素を受けて電気を生産する。
【0046】
一方、第2動作区間である航海段階では、船体は急激な速度の変化なしにずっと巡航するので推進モーターに急激な出力変化は要求されず、その代わりに制限された燃料を効率的に使用するために発電効率がより重要になる。したがって、駆動制御システムは、PEMFC100の稼働を中止(OFF)し、SOFC200が生産した電気で推進モーターを駆動する。
【0047】
参考までに、船舶が港に停泊しているとき、SOFC200は停止状態にあることもでき、その前のある時点で起動された後、最小限の燃料のみを消耗しながら高温待機状態(hot standby status)で動作することもでき、定格電力を生産する正常状態(operating status)で動作することもできる。正常状態(operating status)で、SOFC200によって生産される電気は船体内部の各種の電気機器に供給されるか、電力系統(grid)に連結されて販売されるか、船舶内に配置されたESS400に貯蔵されるか、船舶の外部に配置された別途のESS(図示せず)に貯蔵されることができる。
【0048】
言い換えれば、停泊中に出港が決定されて第1動作モードが開始すると、SOFC200は停止状で起動するか、高温待機状態を維持するか、高温待機状態から正常状態に転換するか、または継続的に正常状態で動作する。次いで、第2動作モードが開始すると、SOFC200は正常状態で動作しながら、生産された電気を船体推進のための推進モーターに供給する。
【0049】
船舶用多重電源システムで、SOFC200は貨物として積んでいる液化天然ガス(LNG)、液化プロパンガス(LPG)、メタンなどの炭化水素燃料を改質した水素を燃料として受けることが好ましい。ただし、必ずしもこれに限定される必要はなく、高圧水素タンク20の水素を燃料として受けることもできる。
【0050】
実施例1による船舶用多重電源システムの駆動シナリオを図2に基づいてまとめると次のようである。
【0051】
図2は実施例1による船舶用多重電源システムの動作過程を多様な観点で分析したフローチャートである。
【0052】
電力活用の側面で見ると、停泊段階(Port)で多重電源システムは船体の各種の電気機器に電力を供給する船舶電気システム(ship electric system、SEC)として動作し、出港(Offshore)/航海(Ocean)/入港(Offshore)段階では、船舶電気システムと同時に船体を前進させるための推進動力(Propulsion)として動作する。そして、入港後の停泊(Port)段階では、また船舶電気システムとして動作する。
【0053】
動作モードの側面で見ると、実施例1のSOFC200は燃料電池モードのみを有するだけであるので、出港/航海/入港の全段階で燃料電池として動作する。
【0054】
使用燃料の側面で見ると、停泊段階(Port)では船舶電気システムとして動作するので、船体内の水素タンク20または港に配置された水素タンク(図示せず)の水素が使用され、出港段階(Offshore)ではPEMFCが推進モーターを起動するので、船体内の水素タンク20の水素が使用され、航海段階(Ocean)ではSOFCが推進モーターを起動するので、船積みされたLNG/LPG/メタンなどの炭化ガスが使用される。入港段階は、出港段階と同様に、PEMFCが推進モーターを起動するので、船体内の水素タンク20の水素が使用される。
【0055】
SOFCの動作の側面で見ると、SOFCは停泊段階(Port)で、停止(OFF)、高温待機状態(hot standby status)、及び正常状態(operating status)のうちのいずれか一つで動作することができるが、停泊中にも船舶内に電気は供給されなければならないので、正常状態で動作することが好ましい。このとき、正常状態でSOFCが生産した電気は船体のESS400または港のESS(図示せず)に貯蔵されるか(self-generation)、電力系統(grid)に連結されて販売されることができる(grid connection)。出港段階(Port)または航海段階(Ocean)では推進モーターを稼動し、船内電気を供給するためにひたすら発電機としてのみ動作する(self-generation)。
【0056】
<実施例2>
【0057】
実施例2は、負荷の動作特性によってPEMFC及びSOFCを前記負荷に選択的に連結する。ここで、単一モジュールのSOFCシステムが状況によってSOFCまたは固体酸化物形電解電池(Solid Oxide Electrolyzer cell、以下、「SOE」という)のうちいずれか一つとして動作する。
【0058】
図3は実施例2による多重電源システムの構成を示す。
【0059】
図3に示すように、実施例2の多重電源システムは、PEMFC100、SOFCシステム220、PCS300、及び駆動制御システム(Operating Control System)(図示せず)を含んでなり、ESS420及び蓄電池(Super capacitor)520をさらに含むことができる。
【0060】
PEMFC100及びPCS300は実施例1のそれと同様であるので、反復説明は省略する。
【0061】
SOFCシステム220は駆動制御システムの制御によってSOFCとして動作するかまたはSOEとして動作する。すなわち、SOFCシステム220は燃料電池モード及び電解電池モードのうちのいずれか一つで稼動される。
【0062】
燃料電池モードでSOFCとしての動作過程は実施例1のSOFC200と同様であるので、重複説明は省略する。
【0063】
電解電池モードでSOEとしての動作はSOFCの動作原理を逆に適用したものであり、空気極に水蒸気が流入し、燃料極に電気が印加されると、空気極と燃料極との間に電位差が発生することにより、空気極の水分子は水素及び酸素に分離される。その後、水素ガスは空気極の表面に拡散し、酸素イオンは電解質を介して燃料極に移動する。そして、移動した酸素イオンは酸化して酸素になり、燃料極を介して排出される。
【0064】
結局、SOFCシステム220をSOFCとして稼動しながら水素を注入すると電気が生産され、SOEとして稼動しながら電気を印加すると水素が生産される。
【0065】
駆動制御システム(図示せず)は、本実施例の多重電源システムを構成するそれぞれの要素、すなわち、PEMFC100、SOFCシステム220、PCS300、ESS420、蓄電池520、LPG/LNGの燃料タンク10、及び水素タンク20に連結されたコントロールバルブ(図示せず)などの動作を制御する。
【0066】
具体的には、第1動作区間で、駆動制御システムはPEMFC100を稼動し、PEMFC100が生産した電気で負荷(load)を駆動する。第1動作区間で、SOFCシステム220は燃料電池モードまたは電解電池モードのうちのいずれか一つとして動作することができる。第1動作区間で、駆動制御システムは、PEMFC100が生産した電気で負荷を駆動するのに十分でない場合、ESS420が出力する電気を一緒に用いて負荷を駆動することもできる。
【0067】
第2動作区間で、駆動制御システムはPEMFC100の稼働を中止し、SOFCシステム220を燃料電池モードで稼動する。そして、SOFCシステム220が生産した電気で負荷を駆動する。
【0068】
第3動作区間で、駆動制御システムはSOFCシステム220を電解電池モードで稼動し、SOFCシステム220が生産した水素で水素タンクを充填する。第3動作区間で、SOFCシステム220が電解電池モードで動作しているうち、駆動制御システムはESS420の電気を用いて負荷を駆動するか、またはSOFCシステム220に電解電池の駆動のための電気を供給することができる。また、駆動制御システムは、蓄電池520の電気をSOFCシステム220に供給して電解電池を駆動することもできる。
【0069】
以下、実施例2の多重電源システムが船舶に搭載された場合を想定し、その動作過程を詳細に説明すると次のようである。
【0070】
第1動作区間は船舶が港から出港する出港段階または船舶が港に入港する入港段階に対応し、第2動作区間は航海段階に対応し、第3動作区間は入港段階に対応する。また、負荷(load)は船舶を推進する推進モーターに対応する。
【0071】
第1動作区間である出港/入港段階で、駆動制御システムは、実施例1の説明と同様な理由でPEMFC100を起動(ON)し、PEMFC100が生産した電気で推進モーターを駆動する。ここで、PEMFC100は、高圧の水素タンク20に貯蔵された水素を受けて電気を生産する。出港/入港段階で、駆動制御システムはSOFCシステム220を電解電池モードで稼動することもでき、燃料電池モードで稼動することもできる。
【0072】
第2動作区間である航海段階で、駆動制御システムは、実施例1の説明と同様な理由でPEMFC100の稼働を中止(OFF)し、燃料電池モードのSOFCシステム220が生産した電気で推進モーターを駆動する。
【0073】
第3動作区間は入港段階と定義することができる。その名称にもかかわらず、入港段階は必ずしも港に入港する直前の段階のみを示すものではない。すなわち、入港段階は港との距離に関係なく海上で、ある事由によって船舶の運航をしばらく停止しなければならない場合及びESSを用いて低出力で徐々に運行しなければならない場合の両者を含む。
【0074】
第3動作区間である入港段階で、駆動制御システムはSOFCシステム220を燃料電池モードから電解電池モードに変更し、電解電池モードのSOFCシステム220で生成された水素で水素タンクを充填する。
【0075】
入港段階で、SOFCシステム220が電解電池モードで動作しているうち、駆動制御システムはESS420を用いて推進モーターを駆動し、電解電池の駆動のために蓄電池520の電気をSOFCシステム220に供給することができる。
【0076】
SOFCシステム220が電解電池モードで動作しているうち、もし船体を移動する必要がなければ、駆動制御システムは、電解電池の駆動のために、ESS420の電気をSOFCシステム220に供給する。
【0077】
参考までに、船舶が港に停泊しているとき、SOFCシステム220は燃料電池モードで、停止状態にあることもでき、最小限の燃料のみを消耗しながら高温待機状態(hot standby status)で動作することもでき、定格電力を生産する正常状態(operating status)で動作することもできる。
【0078】
したがって、停泊中に出港が決定されて第1動作モードが開始すると、SOFCシステム220は停止状で起動するか、高温待機状態を維持するか、高温待機状態から正常状態に転換するか、または継続的に正常状態で動作する。そして、第2動作モードが開始すると、SOFCシステム220は正常状態で動作しながら、生産された電気を船体推進のための推進モーターに供給する。
【0079】
他の例として、船舶が港に停泊しているとき、SOFCシステム220は電解電池モードで、停止状態にあることもでき、最小限の燃料のみを消耗しながら高温待機状態(hot standby status)で動作することもでき、水素を生産する正常状態(operating status)で動作することもできる。正常状態で、SOFCシステム220によって生産される水素は船体内の水素タンク20を充填するか、または船舶の外部に配置された別途の水素ステーション(図示せず)に貯蔵されることができる。
【0080】
そして、停泊中に出港が決定されて第1動作モードが開始すると、SOFCシステム220は停止状で起動するか、高温待機状態を維持するか、高温待機状態から正常状態に転換するか、または継続的に正常状態で動作する。そして、第2動作モードが開始すると、SOFCシステム220は正常状態で動作しながら、生産された電気を船体推進のための推進モーターに供給する。
【0081】
一方、実施例1と同様に、実施例2の船舶用多重電源システムで、SOFCシステム220は、貨物として積んでいる液化天然ガス(LNG)、液化プロパンガス(LPG)、メタンなどの炭化水素燃料を改質した水素を燃料として受けることが好ましい。ただし、必ずしもこれに限定される必要はなく、高圧水素タンク20の水素を燃料として受けることもできる。
【0082】
実施例2による船舶用多重電源システムの駆動シナリオを図4に基づいてまとめると次のようである。
【0083】
図4は実施例2による船舶用多重電源システムの動作過程を多様な観点で分析したフローチャートである。
【0084】
電力活用の側面で見ると、停泊段階(Port)で多重電源システムは船体の各種の電気機器に電力を供給する船舶電気システム(ship electric system、SEC)として動作し、出港(Offshore)/航海(Ocean)/入港(Offshore)段階では、船舶電気システムと同時に船体を前進させるための推進動力(Propulsion)として動作する。そして、入港後の停泊(Port)段階ではまた船舶電気システムとして動作する。
【0085】
動作モードの側面で見ると、SOFCシステム220は全段階で根本的にSOFCとして動作するが、港との距離に関係なく、海上で、ある事由によって船舶の運航をしばらく止める場合、ESSを用いて低出力で徐々に運行しなければならない場合などのように時点を特定しにくい状況で一時的にSOEとして動作することができる。
【0086】
使用燃料の側面で見ると、停泊段階(Port)では船舶電気システムとして動作するので、船体内の水素タンク20または港に配置された水素タンク(図示せず)の水素が使用され、出港段階(Offshore)ではPEMFCが推進モーターを起動するので船体内の水素タンク20の水素が使用され、航海段階(Ocean)ではSOFCが推進モーターを起動するので船積みされたLNG/LPG/メタンなどの炭化ガスが使用される。入港段階は、出港段階と同様に、PEMFCが推進モーターを起動するので船体内の水素タンク20の水素が使用される。
【0087】
SOFCの動作の側面で、SOFCは停泊段階(Port)で停止(OFF)、高温待機状態(hot standby status)、及び正常状態(operating status)のうちのいずれか一つで動作することができるが、停泊中にも船舶内に電気は供給されなければならないので、正常状態で動作することが好ましい。ここで、正常状態でSOFCが生産した電気は船体のESS400または港のESS(図示せず)に貯蔵されるか(self-generation)、電力系統(grid)に連結されて販売されることができる(grid connection)。出港段階(Port)または航海段階(Ocean)では推進モーターを稼動し、船内に電気を供給するために、ひたすら発電機としてのみ動作する(self-generation)。
【0088】
<実施例3>
【0089】
実施例3は、負荷の動作特性によってPEMFC及びSOFCを前記負荷に選択的に連結する。ここで、複数の単位電池モジュールから構成されたSOFCシステムが状況によってSOFC、SOEまたはSOFC+SOEのうちのいずれか一つとして動作する。
【0090】
図5は実施例3による多重電源システムの構成を示す。
【0091】
図5に示すように、実施例3の多重電源システムは、PEMFC100、SOFCシステム230、PCS300、及び駆動制御システム(図示せず)を含んでなり、ESS430及び蓄電池530をさらに含むことができる。
【0092】
PEMFC100及びPCS300は実施例1のそれと同様であるので、反復説明は省略する。
【0093】
実施例3で、SOFCシステム230は複数の単位電池モジュールを含む。それぞれの単位電池モジュールは駆動制御システムによって制御されるSOFCシステム230の可変制御モジュール(図示せず)によって制御され、前記可変制御モジュールのモード制御によって一部の単位電池モジュール231はSOFCとして動作し、他の一部の単位電池モジュール232はSOEとして動作することができる。また、前記可変制御モジュールの連結制御によって二つ以上の単位電池モジュールが直列に連結されるか、並列に連結されるか、または直列及び並列に連結されることができる。
【0094】
したがって、前記可変制御モジュールの制御によって、SOFCシステム230の全体はSOFCとして動作することもでき、SOEとして動作することもでき、SOFC及びSOEのデュアルとして同時に動作することもできる。すなわち、SOFCシステム230は、燃料電池モード、電解電池モード、及びデュアルモードのうちのいずれか一つで稼動される。また、単位電池モジュールの直列及び並列の組合せによってSOFC及びSOEの出力を可変的に調節することもできる。
【0095】
燃料電池モード及び電解電池モードでSOFCとしての動作過程はそれぞれ実施例1のSOFC200及び実施例2のSOFCシステム220と同様であるので、重複説明は省略する。
【0096】
駆動制御システム(図示せず)は、本実施例の多重電源システムを構成する各要素、すなわち、PEMFC100、SOFCシステム230、PCS300、ESS430、蓄電池530、LPG/LNGの燃料タンク10、及び水素タンク20に連結されたコントロールバルブ(図示せず)などの動作を制御する。
【0097】
具体的には、第1動作区間で、駆動制御システムはPEMFC100を稼動し、PEMFC100が生産した電気で負荷(load)を駆動する。第1動作区間で、SOFCシステム230は、燃料電池モード、電解電池モード、及びデュアルモードのうちのいずれか一つで動作することができる。また、第1動作区間で、駆動制御システムはPEMFC100が生産した電気で負荷を駆動するのに十分でない場合、ESS430が出力する電気を一緒に用いて負荷を駆動することもできる。
【0098】
第2動作区間で、駆動制御システムはPEMFC100の稼働を中止し、SOFCシステム230を燃料電池モードで稼動する。そして、SOFCシステム230が生産した電気で負荷を駆動する。
【0099】
第3動作区間で、駆動制御システムはSOFCシステム230をデュアルモードで稼動し、SOFCシステム230の一部のユニットモジュールが生産した電気で負荷を駆動する一方で、SOFCシステム230の他の一部のユニットモジュールが生産した水素で水素タンク20を充填する。駆動制御システムはESS430または蓄電池530の電気を電解電池の駆動のためにSOFCシステム230に供給することができる。
【0100】
以下、実施例3の多重電源システムが船舶に搭載された場合を想定し、その動作過程を詳細に説明すると次のようである。
【0101】
第1動作区間は船舶が港から出港する出港段階または船舶が港に入港する入港段階に対応し、第2動作区間は航海段階に対応し、第3動作区間は入港段階に対応する。また、負荷(load)は船舶を推進する推進モーターに対応する。
【0102】
第1動作区間である出港/入港段階で、駆動制御システムは、実施例1の説明と同様な理由でPEMFC100を起動(ON)し、PEMFC100が生産した電気で推進モーターを駆動する。ここで、PEMFC100は高圧の水素タンク20に貯蔵された水素を受けて電気を生産する。出港/入港段階で、駆動制御システムは、SOFCシステム230を燃料電池モード、電解電池モード、及びデュアルモードのうちのいずれか一つで稼動することができる。
【0103】
第2動作区間である航海段階で、駆動制御システムは実施例1の説明と同様な理由でPEMFC100の稼働を中止(OFF)し、燃料電池モードのSOFCシステム230が生産した電気で推進モーターを駆動する。
【0104】
第3動作区間である入港段階で、駆動制御システムはSOFCシステム230をデュアルモードに設定または変更し、SOFCシステム230の一部のユニットモジュールが生産した電気で負荷を駆動する一方で、SOFCシステム230の他の一部のユニットモジュールが生産した水素で水素タンク20を充填する。
【0105】
参考までに、船舶が港に停泊しているとき、SOFCシステム230は燃料電池モードで、停止状態にあることもでき、最小限の燃料のみを消耗しながら高温待機状態(hot standby status)で動作することもでき、定格電力を生産する正常状態(operating status)で動作することもできる。
【0106】
したがって、停泊中に出港が決定されて第1動作モードが開始すると、SOFCシステム230は停止状で起動するか、高温待機状態を維持するか、高温待機状態から正常状態に転換するか、または継続的に正常状態で動作する。そして、第2動作モードが開始すると、SOFCシステム230は正常状態で動作しながら、生産された電気を船体推進のための推進モーターに供給する。
【0107】
他の例で、船舶が港に停泊しているとき、SOFCシステム230は電解電池モードで、停止状態にあることもでき、最小限の燃料のみを消耗しながら高温待機状態(hot standby status)で動作することもでき、水素を生産する正常状態(operating status)で動作することもできる。正常状態で、SOFCシステム230によって生産される水素は船体内の水素タンク20を充填するか、または船舶の外部に配置された別途の水素ステーション(図示せず)に貯蔵されることができる。
【0108】
そして、停泊中に出港が決定されて第1動作モードが開始すると、SOFCシステム230は停止状で起動するか、高温待機状態を維持するか、高温待機状態から正常状態に転換するか、または継続的に正常状態で動作する。そして、第2動作モードが開始すると、SOFCシステム230は正常状態で動作しながら、生産された電気を船体推進のための推進モーターに供給する。
【0109】
他の例で、船舶が港に停泊しているとき、SOFCシステム230は、デュアルモードで、停止状態にあることもでき、最小限の燃料のみを消耗しながら高温待機状態(hot standby status)で動作することもでき、電気及び水素を生産する正常状態(operating status)で動作することもできる。
【0110】
そして、停泊中に出港が決定されて第1動作モードが開始すると、SOFCシステム230は停止状で起動するか、高温待機状態を維持するか、高温待機状態から正常状態に転換するか、または正常状態での動作を続ける。そして、第2動作モードが開始すると、SOFCシステム230は燃料電池モードの正常状態で動作しながら、生産された電気を船体推進のための推進モーターに供給する。
【0111】
一方、実施例1と同様に、実施例3の船舶用多重電源システムで、SOFCシステム230は貨物として積んでいる液化天然ガス(LNG)、液化プロパンガス(LPG)、メタンなどの炭化水素燃料を改質した水素を燃料として受けることが好ましい。ただし、必ずしもこれに限定される必要はなく、高圧水素タンク20の水素を燃料として受けることもできる。
【0112】
実施例3による船舶用多重電源システムの駆動シナリオを図6に基づいてまとめると次のようである。
【0113】
図6は実施例3による船舶用多重電源システムの動作過程を多様な観点で分析したフローチャートである。
【0114】
図6では、図2及び図4に比べて、航海段階がさらに二つの段階に細分される。航海段階1(Ocean1)は図2及び図4の航海段階と同一であり、航海段階2(Ocean2)は図4でSOFCシステムが電解電池モードで動作する任意の区間を示す。
【0115】
したがって、航海段階2(Ocean2)は港との距離に関係なく、海上で、ある事由によって船舶の運航をしばらく止める場合、ESSを用いて低出力で徐々に運行しなければならない場合、入港を準備しながら低出力で徐々に運行しなければならない場合などのように、任意の時点でSOFCシステム230の一部単位モジュールはSOFCとして動作させ、他の単位モジュールはSOEとして動作させる区間を意味する。
【0116】
電力活用の側面で見ると、停泊段階(Port)で、多重電源システムは船体の各種の電気機器に電力を供給する船舶電気システム(ship electric system、SEC)として動作し、出港(Offshore)/航海(Ocean)/入港(Offshore)段階では船舶電気システムと同時に船体を前進させるための推進動力(Propulsion)として動作する。そして、入港後の停泊(Port)段階では、再び船舶電気システムとして動作する。ただ、図4の例示とは違い、航海段階2(Ocean2)及び入港段階(Offshore)では、SOFCシステム230の一部の単位電池モジュールはSOEに転換されるので、SOFCによる推進動力は航海段階1(Ocean1)に比べて少し低くなることがある。
【0117】
動作モードの側面で見ると、SOFCシステム220は全段階で根本的にSOFCとして動作するが、航海段階2(Ocean2)及び/または入港段階(Offshore)では、SOFCシステム230の一部の単位電池モジュールはSOFCとして動作し、他の一部の単位電池モジュールはSOEとして動作する。複数の単位電池モジュールのうちSOFCとして動作する単位電池モジュールとSOEとして動作する単位電池モジュールの比は駆動制御システムによって決定される。
【0118】
使用燃料の側面で見ると、停泊段階(Port)では船舶電気システムとして動作するので船体内の水素タンク20または港に配置された水素タンク(図示せず)の水素が使用され、出港段階(Offshore)ではPEMFCが推進モーターを起動するので船体内の水素タンク20の水素が使用され、航海段階(Ocean)ではSOFCが推進モーターを起動するので船積みされたLNG/LPG/メタンなどの炭化ガスが使用される。入港段階は、出港段階と同様に、PEMFCが推進モーターを起動するので、船体内の水素タンク20の水素が使用される。
【0119】
SOFCの動作の側面で、SOFCは停泊段階(Port)で、停止(OFF)、高温待機状態(hot standby status)、及び正常状態(operating status)のうちのいずれか一つで動作することができるが、停泊中にも船舶内に電気は供給されなければならないので、正常状態で動作することが好ましい。ここで、正常状態でSOFCが生産した電気は船体のESS400または港のESS(図示せず)に貯蔵されるか(self-generation)、電力系統(grid)に連結されて販売されることができる(grid connection)。出港段階(Port)または航海段階(Ocean)では、推進モーターを稼動し、船内電気を供給するためにひたすら発電機としてのみ動作する(self-generation)。
【0120】
以上の本発明の実施例についての説明は構造的または機能的説明のための実施例に過ぎないので、本発明の権利範囲は本文で説明した実施例によって制限されるものと解釈されてはいけない。すなわち、実施例は多様な変更が可能であり、様々な形態を有することができるので、本発明の権利範囲は技術的思想を実現することができる均等物を含むものと理解されなければならない。また、本発明で提示した目的または効果は特定の実施例がこれを全部含まなければならないかまたはそのような効果のみを含まなければならないという意味ではない。
【0121】
本出願で使用される用語の意味は次のように理解されなければならない。すなわち、「第1」、「第2」などの用語は一構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、これら用語によって権利範囲が限定されてはいけない。
【0122】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されている」と言及されたときには、その他の構成要素に直接的に連結されることもできるが、中間に他の構成要素が存在することもできると理解されなければならない。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されている」と言及されたときには、中間に他の構成要素が存在しないものと理解されなければならない。また、構成要素との関係を説明する他の表現、すなわち、「~の間に」と「すぐ~の間に」または「~に隣り合う」と「~に直接隣り合う」なども同様に解釈されなければならない。
【0123】
単数の表現は、文脈上はっきりと他に指示しない限り、複数の表現を含むものと理解されなければならなく、「含む」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組合せが存在することを指定しようとするものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらの組合せなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0124】
各段階で識別符号(例えば、a、b、cなど)は説明の便宜のために使用するものであり、識別符号は各段階の順序を説明するものではなく、各段階は、文脈上はっきりと特定の順序を記載しない限り、記載された順序と異なることがあり得る。すなわち、各段階は記載された順序の通りに実施することもでき、実質的に同時に実施することもでき、逆順に実施することもできる。
【0125】
本明細書で説明する実施例及び添付の図面は本発明に含まれる技術的思想の一部を例示的に説明するものに過ぎない。したがって、本明細書で開示する実施例は本発明の技術的思想を限定するためのものではなく説明するためのものであるので、このような実施例によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の明細書及び図面に含まれた技術的思想の範囲内で当業者が容易に類推することができる変形例及び具体的な実施例はいずれも本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0126】
100 PEMFC
200 SOFC
220、230 SOFCシステム
300 PCS
400 ESS
図1
図2
図3
図4
図5
図6