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特許7612963インバータ装置、モータユニット、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】インバータ装置、モータユニット、および車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20250107BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020198976
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2021182847
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2020085235
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300052246
【氏名又は名称】ニデックエレシス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】金井 聰直
(72)【発明者】
【氏名】釜野 遼
(72)【発明者】
【氏名】内尾 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】勝田 椋也
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-217241(JP,A)
【文献】特開2014-023355(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057622(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/056286(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/130481(WO,A1)
【文献】特開2014-222974(JP,A)
【文献】特開2015-100120(JP,A)
【文献】国際公開第2014/199725(WO,A1)
【文献】特開平01-129499(JP,A)
【文献】特開2006-147796(JP,A)
【文献】特開2012-104595(JP,A)
【文献】特開2002-360889(JP,A)
【文献】特開平11-204980(JP,A)
【文献】特開2008-220166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0097292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ装置であって、
前記インバータ装置は、少なくとも2つの回路基板と、電子部品ユニットと、第1ハーネスと、磁性材料を含む第1コア部とを有し、
前記電子部品ユニットは、前記2つの回路基板の間に配置され、
前記第1コア部は、筒状をなし、軸方向に延びる第1貫通孔を有する本体部を備え、
前記第1ハーネスは、前記2つの回路基板同士を電気的に接続するとともに、前記第1コア部の前記第1貫通孔を通過しており、
前記第1コア部は、前記第1ハーネスが前記第1貫通孔を通過しているか否かを判定可能な判定構造を備える、インバータ装置。
【請求項2】
前記判定構造は、前記本体部の一端部から軸方向に沿って突出する板片部、前記本体部の一端部から他端部に向かって切り欠かれた切欠き部、又は、前記本体部を軸方向と直交する方向に貫通する窓部である請求項に記載のインバータ装置。
【請求項3】
前記板片部の幅は、前記第1貫通孔の幅より大きい請求項2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
前記第1コア部は、その軸方向端部の少なくとも一部が丸みを帯びている請求項1~のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項5】
さらに、第2ハーネスと、磁性材料を含む第2コア部とを有し、
前記第2コア部は、筒状をなし、軸方向に延びる第2貫通孔を有する本体部を備え、
前記第2ハーネスは、前記2つの回路基板のうちの他方の回路基板と外部電源とを電気的に接続するとともに、前記第2コア部の前記第2貫通孔を通過している請求項1~4のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項6】
前記電子部品ユニットは、前記2つの回路基板の内の一方の回路基板と対向する第1面と、前記2つの回路基板の内の他方の回路基板と対向する第2面とを備え、
前記第1コア部および前記第2コア部は、いずれも前記第2面に固定されている請求項に記載のインバータ装置。
【請求項7】
前記第1コア部および前記第2コア部の少なくとも一方は、さらに、前記本体部から軸方向と直交する方向に突出する固定部を備え、前記固定部を介して前記本体部が前記電子部品ユニットに固定されている請求項またはに記載のインバータ装置。
【請求項8】
前記第1コア部および前記第2コア部の少なくとも一方は、前記本体部の軸方向が前記一方の回路基板から前記他方の回路基板に向かう方向と直交する請求項のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項9】
前記第1コア部および前記第2コア部の少なくとも一方は、前記本体部の軸方向が前記一方の回路基板から前記他方の回路基板に向かう方向と平行である請求項のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項10】
さらに筐体と第2コア部固定部材を有し、
前記筐体は、前記回路基板と、前記電子部品ユニットと、前記第1ハーネスと、前記第2ハーネスと、前記第1コア部と、前記第2コア部とを少なくとも収容し、
前記第2コア部固定部材は、前記第2コア部を前記筐体へ固定する請求項5~9のいずれか1項に記載のインバータ装置。
【請求項11】
前記筐体は、筐体貫通孔を有し、前記筐体貫通孔の内径は、前記第2コア部の外径よりも大きい請求項10に記載のインバータ装置。
【請求項12】
さらに、第3ハーネスと、磁性材料を含む第3コア部とを有し、
前記第3コア部は、筒状をなし、軸方向に延びる第3貫通孔を備え、
前記第3ハーネスは、前記2つの回路基板のうちの他方の回路基板と外部装置とを電気的に接続するとともに、前記第3コア部の前記第3貫通孔を通過している請求項10または11に記載のインバータ装置。
【請求項13】
さらに、第3コア部固定部材を有し、
前記第3コア部固定部材は、前記第3コア部を前記筐体に固定する請求項12に記載のインバータ装置。
【請求項14】
請求項1~13のいずか1項に記載のインバータ装置を搭載したモータユニット。
【請求項15】
請求項14に記載のモータユニットを搭載した車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ装置、モータユニット、および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車の電気自動車化(EV化)に伴い、インバータ筐体の小型化、EV駆動用モータ周辺の必要部品点数の削減が望まれている。さらに、EVでは大電流を駆動用モータに入力するため、インバータにおける電磁界ノイズも増大する。そのため、ノイズ対策部材の適用が必要になる。
EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)対策としては、インバータに接続されたハーネスを束ねて、フェライトコアに挿通するのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。また、導電路、磁性体コアおよびシールド部を一体として固定した台座部を、電子部品が搭載された基板に取り付けた構成も開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、特許文献1および2では、いずれも、2つの回路基板同士を電気的に接続する導電路(ハーネス)がフェライトコアを通過するような構成ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-37526号公報
【文献】特開2019-140264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、2つの回路基板同士を電気的に接続するハーネスを用いた構成において、一方の回路基板周辺で発生する電磁界ノイズによる、他方の回路基板への影響を低減させることを課題とし、その目的は、2つの回路基板同士を電気的に接続するハーネスが磁性材料を含むコア部を通過しない構成と比較して、より効果的なEMC対策が可能なインバータ装置、モータユニット、および車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の例示的な発明は、インバータ装置であって、前記インバータ装置は、少なくとも2つの回路基板と、電子部品ユニットと、第1ハーネスと、磁性材料を含む第1コア部とを有し、前記電子部品ユニットは、前記2つの回路基板の間に配置され、前記第1コア部は、筒状をなし、軸方向に延びる第1貫通孔を有する本体部を備え、前記第1ハーネスは、前記2つの回路基板同士を電気的に接続するとともに、前記第1コア部の前記第1貫通孔を通過していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願の例示的な発明によれば、2つの回路基板同士を電気的に接続する第1ハーネスの途中に第1コア部を配置することで、一方の回路基板周辺で発生する電磁界ノイズによる、他方の回路基板への影響を低減させることが可能である。よって、インバータ装置全体のより効果的なEMC対策が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明のインバータ装置を搭載した車両の概略構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施形態のインバータ装置の分解斜視図である。
図3図3は、第1ハーネスが第1コア部を通過した状態を示す平面図((a)正常状態、(b)異常状態)である。
図4図4は、第1コア部に設けられた判定構造の他の構成例を模式的に示す図(平面図および正面図)である。
図5図5は、第1コア部の構成を模式的に示す図(平面図および正面図)である。
図6図6は、本発明の第1実施形態の第1コア部および第2コア部をコンデンサユニットに取り付けた状態を示す側面図である。
図7図7は、本発明の第1実施形態の第1コア部の他の配置状態を示す分解斜視図である。
図8図8は、第1コア部を模式的に示す斜視図である。
図9図9は、第1コア部の他の配置状態を示す平面図である。
図10図10は、本発明の第2実施形態のインバータ装置の分解斜視図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態のインバータ筐体の断面とコア固定クランプの拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る第1実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のインバータ装置を搭載した車両の概略構成図、図2は、図1に示すインバータ装置の分解斜視図、図3は、第1ハーネスが第1コア部を通過した状態を示す平面図((a)正常状態、(b)異常状態)である。
図2図7も同様)では、X軸と、X軸に直交するY軸と、X軸およびY軸に直交するZ軸とを規定して説明する。また、図2中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
【0009】
図1において電動モータ15は、例えば、三相交流モータであり、車両の駆動力源である。電動モータ15の回転軸は、減速機6とディファレンシャルギア7とに連結されている。これにより、電動モータ15の駆動力(トルク)は、これらの減速機6、ディファレンシャルギア7、ドライブシャフト(駆動軸)8を介して一対の車輪5a、5bに伝達される。
【0010】
インバータ制御装置10のインバータ部(本発明のインバータ装置)20は、電動モータ15に駆動電力を供給するパワーモジュールユニット13と、パワーモジュールユニット13に駆動信号を出力するパワーモジュール制御回路基板(一方の回路基板)12と、パワーモジュール制回路基板12に制御信号を出力するインバータ制御回路基板(他方の回路基板)11と、バッテリBTからの電圧を平滑するコンデンサユニット(電子部品ユニット)14とを備えている。
インバータ部20は、車両全体の制御を司る制御部Cからの制御信号により制御され、電動モータ15を駆動する。
【0011】
パワーモジュールユニット13は、パワースイッチング素子をU相、V相、W相毎に2個(上アームのパワースイッチング素子と下アームのパワースイッチング素子)、計6個のパワースイッチング素子を接続してなるブリッジ回路(電力変換回路)を有している。
なお、パワースイッチング素子としては、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等が挙げられる。
【0012】
パワーモジュールユニット13は、パワーモジュール制御回路基板12からの駆動信号(PWM制御信号)により、パワースイッチング素子のオン/オフを切り替える。これにより、パワーモジュールユニット13は、バッテリ(電源)BTからコンデンサユニット14を介して供給された直流電力を交流電力(三相交流電力)に変換して、電動モータ15に供給し、電動モータ15を駆動する。
【0013】
バッテリBTは、車両の動力源である電気エネルギーの供給元であり、例えば、複数の二次電池で構成されている。
インバータ部20には、バッテリBTとの接続部にコンデンサユニット14が配置されている。コンデンサユニット14は、高電位ライン(正極電位B+)と低電位ライン(負極電位B-(GND))との間に接続されている。このコンデンサユニット14は、バッテリBTからの入力電圧を平滑する機能を有し、大容量の平滑コンデンサ(フィルムコンデンサ)を備えている。
【0014】
図2に示すように、パワーモジュールユニット13、パワーモジュール制御回路基板12、コンデンサユニット14およびインバータ制御回路基板11が、Z軸方向に沿って、下側から順に配置されている。換言すれば、インバータ制御回路基板11とパワーモジュール制御回路基板12との間にコンデンサユニット14が配置され、パワーモジュール制御回路基板12のコンデンサユニット14と反対側にパワーモジュールユニット13が配置されている。
【0015】
また、インバータ部20は、インバータ制御回路基板11とパワーモジュール制御回路基板12とを電気的に接続する第1ハーネス100と、インバータ制御回路基板11と低圧電源(外部電源)とを電気的に接続する第2ハーネス200とを備えている。
低圧電源からの電流(電気信号)は、第2ハーネス200、インバータ制御回路基板11、第1ハーネス100、パワーモジュール制御回路基板12およびパワーモジュールユニット13の順で供給される。
【0016】
さらに、インバータ部20は、いずれも磁性材料を含む第1コア部1および第2コア部2を備えている。
かかる第1コア部1および第2コア部2は、それぞれ、それ自体が磁性材料で構成されてもよく、磁性材料で構成されるコアをケースに収納して構成されてもよい。
ここで、磁性材料としては、例えば、フェライト、マグネタイト、ヘマタイト等が挙げられる。また、ケースの構成材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステルのような樹脂材料、セラミックス材料等が挙げられる。
【0017】
本実施形態では、第1コア部1は、筒状をなし、軸方向に延びる第1貫通孔109を有する本体部101を備え、第2コア部2は、筒状をなし、軸方向に延びる第2貫通孔209を有する本体部201を備えている。ここで、筒状には、円筒状、楕円筒状、角筒状(例えば、正方形の四角筒状、長方形の四角筒状、三角筒状、五角筒状、六角筒状等)、異形筒状が含まれる。
そして、第1コア部1(本体部101)は、その第1貫通孔109に第1ハーネス100を通過させるように配置され、第2コア部2(本体部201)は、その第2貫通孔209に第2ハーネス200を通過させるように配置されている。
【0018】
かかる構成によれば、パワーモジュールユニット13およびパワーモジュール制御回路基板12で発生する電磁界ノイズによる外部電源への影響を低減させることができる。具体的には、パワーモジュール制御回路基板12とインバータ制御回路基板11とを電気的に接続する第1ハーネス100に第1コア部1を配置するので、パワーモジュールユニット13およびパワーモジュール制御回路基板12で発生した電磁界ノイズによる、インバータ制御回路基板11への影響を低減できる。
また、インバータ制御回路基板11と外部電源とを電気的に接続する第2ハーネス200に第2コア部2を配置するので、パワーモジュールユニット13およびパワーモジュール制御基板12からインバータ制御回路11へ流れこんだ電磁界ノイズによる、外部電源への影響を減衰させることができる。よって、さらに効果的なEMC対策が可能である。
上述の通り、第1コア部1と第2コア部2との併用により、効果的なEMC対策が可能であるが、第1コア部1と第2コア部2とのいずれか一方のみを採用すること、特に、第1コア部1を優先して採用することも可能である。
【0019】
図2に示す構成では、第1コア部1および第2コア部2のいずれもが、その本体部101、201の軸方向がパワーモジュール制御回路基板12からインバータ制御回路基板11に向かう方向(Z軸方向)と直交するように配置されている。換言すれば、第1コア部1および第2コア部2のいずれもが、その本体部101、201の軸方向がX軸方向と平行となるように配置されている。
かかる配置によれば、図示のように、本体部101、201の軸方向(X軸方向)の長さ(高さ)が軸方向と直交する方向(YまたはZ軸方向)への長さ(幅)高さより大きい場合でも、第1コア部1および第2コア部2をインバータ筐体内のスペースに容易かつ確実に収容することができる。また、軸方向への長さが大きい第1コア部1および第2コア部2は、電磁界ノイズを低減する能力も高いので、結果としてより効果的なEMC対策が可能となる。
【0020】
第1コア部1は、図3に示すように、本体部101の一端部から軸方向に沿って突出する板片部1011を備えている。かかる板片部1011を設けることにより、インバータ部20を平面視(上面視)すれば、第1ハーネス100が第1コア部1の第1貫通孔109を通過(貫通)しているか否かを判定することができる。
具体的には、図3(a)に示すように、第1ハーネス100が第1コア部1の第1貫通孔109を通過(貫通)している場合には、板片部1011の手前側に第1ハーネス100が観察され、正常状態と判定される。一方、図3(b)に示すように、第1ハーネス100が第1コア部1の第1貫通孔109を通過(貫通)していない場合には、板片部1011の手前側に第1ハーネス100が観察されず、異常状態と判定される。
板片部1011を採用すれば、正常状態および異常状態を目視で容易に判定することができるため、インバータ部20の組立作業の効率の向上を図ることができる。
また、この判定は、人による目視のみならず、カメラ等の撮像装置によっても可能である。
【0021】
かかる板片部1011は、第1ハーネス100が前記第1貫通孔109を通過しているか否かを判定可能な判定構造と言うことができる。この判定構造には、図4に示すような形状を採用することもできる。図4は、第1コア部に設けられた判定構造の他の構成例を模式的に示す平面図(a1~c1)および正面図(a2~c2)である。
図4(a)に示す板片部1011では、図4(a2)に示すように、その幅W1を第1貫通孔109の幅W2より大きく設定されている。かかる構成によれば、図4(a1)に示すように、第1ハーネス100が第1コア部1(本体部101)の第1貫通孔109を通過した直後に、90°屈曲するような場合でも正常状態および異常状態を正確に判定することができる。
また、かかる幅広の板片部1011を設けることにより、第1ハーネス100を第1貫通孔109に通過させる際のガイドとしても機能させることもできる。この場合、第1コア部1の第1ハーネス100への取り付け作業の容易性を向上することができる。
【0022】
図4(b)に示す判定構造は、本体部101の一端部から他端部に向かって(第1貫通孔109の軸方向に沿って)切り欠かれた切欠き部1012で構成されている。また、図4(c)に示す判定構造は、本体部101を軸方向と直交する方向に貫通する窓部1013で構成されている。
かかる構成では、第1ハーネス100が第1コア部1の第1貫通孔109を通過(貫通)している場合には、第1コア部1(本体部101)の平面視において、切欠き部1012または窓部1013の奥側に第1ハーネス100が観察され、正常状態と判定される。一方、第1ハーネス100が第1コア部1の第1貫通孔109を通過(貫通)していない場合には、第1コア部1(本体部101)の平面視において、切欠き部1012または窓部1013の奥側に第1ハーネス100が観察されず、異常状態と判定される。
なお、切欠き部1012の平面視形状は、矩形に限らず、半円形状、三角形状、台形状等であってもよく、窓部1013の平面視形状も、矩形に限らず、円形状、楕円形状、三角形状、五角形状、六角形状等であってもよい。
【0023】
また、図3または図4(a1)に示す板片部1011は、第1コア部1を平面視(上面視)したときの下面側に、図4(b)に示す切欠き部1012および図4(c)に示す窓部1013は、第1コア部1を平面視(上面視)したときの上面側に設けられているが、これらの位置に限定されない。
板片部1011、切欠き1012および窓部1013等の判定構造は、第1ハーネス100が第1貫通孔109を通過しているか否かを、第1コア部1の一方向から目視(または撮像装置による撮影)で観察することができれば、第1コア部1のいかなる位置に設けられていてもよい。
【0024】
第1コア部1および第2コア部2は、それぞれ、本体部101、201のみで構成され、例えば、コンデンサユニット14に接着剤層を介して固定されてもよいが、それらの少なくとも一方は、固定部を介して固定されるのが好ましい。
図5は、第1コア部の構成を模式的に示す平面図(a1)および正面図(a2)、図6は、第1コア部および第2コア部をコンデンサユニットに取り付けた状態を示す側面図である。
図5および図6に示す構成では、第1コア部1は、本体部101と、本体部101から軸方向と直交する方向に突出する固定部102とを備え、第2コア部2も、本体部202と、本体部101から軸方向と直交する方向に突出する固定部202とを備えている。
【0025】
また、固定部102(固定部202も同様)には、その厚さ方向に貫通して、ネジTを挿通可能な貫通孔1021が形成されている。
図6に示すように、コンデンサユニット14は、パワーモジュール制回路基板12と対向する下面(第1面)141と、インバータ制御回路基板11と対向する上面(第2面)142とを備えており、第1コア部1および第2コア部2は、いずれも固定部102、202を介して、ネジTにより上面142に固定されている。
かかる構成によれば、第1コア部1および第2コア部2を、固定部102、202を介してコンデンサユニット14に固定するため、振動に対する耐性を高めることができる。特に、コンデンサユニット14の上面142に、固定部102、202を介して固定することにより、固定部102、202を介さない場合よりも、インバータ筐体内のスペースを有効利用し易くなる。
【0026】
次に、第1コア部1の他の配置状態および他の構成例について説明する。なお、第1コア部1について代表的に説明するが、第2コア部2についても同様に構成することができる。
図7は、第1コア部の他の配置状態を示す分解斜視図、図8は、第1コア部を模式的に示す斜視図、図9は、第1コア部の他の配置状態を示す平面図である。
図7に示す例では、第1コア部1は、その本体部101の軸方向がパワーモジュール制御回路基板12からインバータ制御回路基板11に向かう方向(Z軸方向)に平行になるように配置されている。
かかる構成によれば、第1ハーネス100を大きく屈曲させることなく、第1貫通孔109を通過させることができるため、第1コア部1の第1ハーネス100への取り付け作業の容易性を向上することができるとともに、第1ハーネス100の断線を防止することもできる。また、第1ハーネス100が第1貫通孔109を通過しているか否かの判定もし易くなる。
【0027】
図8に示す例では、第1コア部1は、本体部101と固定部102とを繋ぐリブ103、104を備えている。これにより、第1コア部1の機械的強度をより向上することができる。
また、第1コア部1は、その全体として角部が丸みを帯びている、すなわち、R付けされている。かかる構成によれば、第1コア部1を第1ハーネス100に取り付ける際に、第1ハーネス100に傷が付くのを防止することができる。また、第1コア部1をコンデンサユニット14に取り付ける際やインバータ筐体内に収納する際に、コンデンサユニット14およびインバータ筐体に傷が付くのを防止することもできる。
なお、第1コア部1は、その軸方向端部の少なくとも一部(板片部1011の角部)のみが丸みを帯びるように構成してもよい。これによっても、第1コア部1を第1ハーネス100に取り付ける際に、第1ハーネス100に傷が付くのを十分に防止することができる。
【0028】
図9に示す例のように、第1コア部1は、本体部101の第1貫通孔109の中心線O1と、固定部102に形成された2つの貫通孔1021の中心を通る中心線O2とは、交差していてもよい。すなわち、中心線O1と中心線O2とは非平行であってもよい。かかる構成によれば、インバータ筐体16の形状に対応して、その内部のスペースを最大限に有効利用しつつ、インバータ筐体16内に正確に収納することができる。
【0029】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図10は第2実施形態の分解斜視図であって、インバータ筐体16は透過させて記載している。
図10に示すように、インバータ部20は、第1実施形態の第1コア部1と第2コア部2に加え、第3コア部3と第3ハーネス300をさらに備える。また、第2コア部と第3コア部とは、固定部材によりそれぞれインバータ筐体16の内壁に固定される。固定部材として例えばコアケースや接着剤、クランプなど用いることができる。具体的には、第2コア部2は第2コア固定クランプ203によりインバータ筐体16の内壁に固定され、第3コア部3は第3コア固定クランプ303によってインバータ筐体16の内壁に固定される。第1コア部は上述した第1実施形態の通りの構成をとるため、説明は省略する。なお、第2コア部と第3コア部の両方をインバータ筐体16の内壁に固定する必要はなく、いずれいか一方を固定してもよい。
【0030】
<第2コア部>
第2コア部2は、その第2貫通孔209に第2ハーネス200を通過させるように配置されている。第1実施形態では、第2コア部2は固定部202を介してコンデンサユニット14に固定されているが、第2実施形態では固定部202は無くともよい。第2コア部2は、第2コア固定クランプ203を介してインバータ筐体16の内壁に固定される。
【0031】
インバータ筐体16はその厚み方向に貫通する筐体貫通孔160(不図示)を有し、筐体貫通孔160の直径よりも、第2コア部2の外径は小さい。かかる構成によれば、第2ハーネス200を第2コア部2に挿通した状態で、筐体貫通孔160を介してインバータ筐体外部からインバータ筐体内部へ第2コア部2を収容することができる。すなわち、組立時の作業性が向上する。
【0032】
<第3コア部>
第3コア部3は、筒状をなし、軸方向に延びる第3貫通孔309を備え、その第3貫通孔309に第3ハーネス300を通過させるように配置されている。第3ハーネス300は、インバータ制御回路基板(他方の回路基板)と、外部装置とを電気的に接続するハーネスである。外部装置は、電動オイルポンプやレゾルバなどが例示される。
第3コア部3は、第3コア固定クランプ303を介してインバータ筐体16の内壁に固定される。
第1コア部1、第2コア部2、第3コア部3を各ハーネスに設けることによって、ノイズ対策効果を高めることができる。特に、第3ハーネス300は、外部装置とインバータ制御基板間の信号の送受信を行うハーネスであるため、第3コア部3を設けることで外部装置へのノイズの影響を低減できる。
【0033】
<インバータ筐体>
図11は、インバータ筐体16の断面と第2コア固定クランプ203の位置関係を表す拡大模式図である。
インバータ筐体16は、内壁において、その厚み方向に開口する2つの孔162、163を有する。すなわち、孔162、163は、インバータ筐体16の内壁側から他部材を挿通し収容することが可能な空間とも言える。さらに、孔162、163はネジ孔形状である。孔162と孔163、第2コア固定クランプ203と第3コア固定クランプ303は異なる部材であるが、インバータ筐体16との位置関係は同じであるため、図11ではひとまとめに記載している。
孔162、163の形状は一例であって、インバータ筐体16の内壁側から他部材を挿通可能な構成であればどのような構成でもよく、インバータ筐体16の厚み方向に貫通していてもしていなくともよく、形状はネジ孔に限らずスルーホールでも構わない。
【0034】
<コア固定クランプ>
第2コア固定クランプ203と、第3コア固定クランプ303は、樹脂製で、それぞれアーム部204、304、挿通部205、305を有する。
アーム部204、304は、それぞれ第2コア部2、第3コア部3を把持する。アーム部204、304は、例えば、筒状のコア部の周囲を径方向に囲んで把持する。アーム部の形状は、コア部を把持することができればいかなる構成でも構わない。例えば、アーム部は爪状であってコア部に爪を引っ掛けながら径方向に圧力をかけて固定する形状でも良い。
【0035】
挿通部205、305は、インバータ筐体16の内壁の孔(ネジ孔)162、163にそれぞれ挿通される。挿通部205、305は、内壁への挿通方向に直交する方向に突出する突起部206、306を有し、その突起部はネジ孔162、163内の溝に嵌合する。ネジ孔162、163内の溝の無い箇所の直径は、挿通部205、305の突起部がある箇所の外径よりも小さい。よって、挿通部205、305は、ネジ孔162、163へ、突起部の樹脂を変形させながら圧入する。
【0036】
ここで、固定部材を用いてインバータ筐体の内壁にコア部を固定することにより、車両走行時にインバータが振動した場合でも、コア部の移動を防ぐことができる。すなわち、コア部がハーネスやコア固定クランプ以外の部材と接触することによる損傷を防ぐことが可能である。さらに、コア部がハーネスやコア固定クランプ以外の部材と接触しないことで、他部材からの電磁波ノイズの影響を受けにくくなるため、コア部のノイズ低減効果の低下を防ぐ。
【0037】
インバータ筐体の内壁のネジ孔にコア固定クランプの挿通部を圧入して固定することにより、ネジ等の別部材を用いることなく、インバータ筐体にコア固定クランプを固定できる。よって組立時の作業性が向上する。
【0038】
ハーネスが貫通孔を通過したコア部をインバータ筐体に固定する構成により、ハーネスの固定とコア部の固定を同時に行うことができる。よってハーネス用固定部材は不要となり、部品点数を削減できる。
【0039】
第1ハーネスは、2つの基板間を接続するため、基板付近のコンデンサに固定されている方がハーネスの取り回しがスムーズになる。
第2ハーネスと第3ハーネスは外部電源もしくは外部装置と接続されるため、インバータ筐体に収容されている部材よりも、インバータ筐体に固定されている方が、ハーネスの取り回しがスムーズである。
また、第1コア部(第1ハーネス)はコンデンサユニットに固定され、第2コア部(第2ハーネス)と第3コア部(第3ハーネス)は筐体に固定されることにより、余分な取り回しなど無くハーネスを適切な場所に固定できる。すなわち、各ハーネスを最短ルートで配置することが可能となり、その分ノイズ低減効果が高まる。
【0040】
以上、本発明のインバータ装置について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明のインバータ装置は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
また、本発明のインバータ装置は、インバータ制御回路基板11およびパワーモジュール制御回路基板12以外の他の回路基板を有していてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 第1コア部
101 本体部
1011 板片部
1012 切欠き部
1013 窓部
102 固定部
1021 貫通孔
109 第1貫通孔
2 第2コア部
201 本体部
202 固定部
203 第2コア固定クランプ
204 アーム部
205 挿通部
206 突起部
209 第2貫通孔
3 第3コア部
303 第3コア固定クランプ
304 アーム部
305 挿通部
306 突起部
309 第3貫通孔
C 制御部
5a、5b 車輪
6 減速機
7 ディファレンシャルギア
8 ドライブシャフト
10 インバータ制御装置
11 インバータ制御回路基板
110 配線基板
111 電子部品
12 パワーモジュール制御回路基板
13 パワーモジュールユニット
14 コンデンサユニット
141 下面
142 上面
15 電動モータ
16 インバータ筐体
160 筐体貫通孔
162 孔(ネジ孔)
163 孔(ネジ孔)
20 インバータ部
100 第1ハーネス
200 第2ハーネス
300 第3ハーネス
BT バッテリ
T ネジ
O1、O2 中心線
W1、W2 幅

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11