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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】ベッド用水平揺動装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/043 20060101AFI20250107BHJP
   A47C 17/04 20060101ALI20250107BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61G7/043
A47C17/04 C
A61M21/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019114392
(22)【出願日】2019-06-20
(65)【公開番号】P2020054797
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-05-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2018186325
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518348919
【氏名又は名称】亀井 正通
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】亀井 正通
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】平城 俊雅
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/154770(WO,A1)
【文献】特開2017-124087(JP,A)
【文献】特開2017-56105(JP,A)
【文献】特開2016-97904(JP,A)
【文献】特開2007-37832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 7/00- 7/16
A47C 17/00-23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド本体とマットレスの間または床面とベッド本体との間に設置されるベッド用水平揺動装置であって、前記ベッド本体の平面形状に対応する単一の平板状の実質的に剛な揺動パネルと、前記揺動パネルを支持する支持装置と、前記揺動パネルを前記支持装置に対して水平方向に往復動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段による前記揺動パネルの往復動における振幅Dが0cm<D≦10cmの範囲内の特定の範囲内、振動数fが0Hz<f≦0.8Hzの範囲内の特定の範囲内で可変となるように設定されており、
前記揺動パネルは前記支持装置に対し、低摩擦材を用いたすべり面を介して支持されている、または、
前記揺動パネルは前記支持装置に対し複数のローラまたはボールローラを介して支持されている、または、
前記揺動パネルは前記支持装置の上面に沿って左右方向に延びる2条以上のガイドレール上を摺動するように支持されており、
前記揺動パネルの水平断面における外周部が前記支持装置の水平断面の外周部より外側に突出しており、前記駆動手段の少なくとも一部が前記揺動パネルの水平断面における外周部下面と前記支持装置の外周部との間に設置されて
いることを特徴とするベッド用水平揺動装置。
【請求項2】
請求項1記載のベッド用水平揺動装置において、前記駆動手段がリニアサーボモータであることを特徴とするベッド用水平揺動装置。
【請求項3】
請求項1記載のベッド用水平揺動装置において、前記駆動手段がボールネジと前記ボールネジに回転運動を与える回転型モータを備えたものであることを特徴とするベッド用水平揺動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベッド使用者の入眠を促進させることができる揺動式睡眠誘導ベッドおよびベッド用水平揺動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ベッドのマットレス部分に埋め込んだ振動装置により微振動を与える振動式ベッドや、ベッド自体を揺動させる揺動式ベッドが開発されている。
【0003】
特許文献1には、重症患者や長期体動制限を受けた患者の動けないことによる合併症を防止するための医療用ベッドとして、頭部側および脚部側にそれぞれ1台の伸縮駆動手段をベッドの長手方向中心に取り付けて縦方向で上下に回動するようにした縦揺れ型揺動ベッドが開示されている。
【0004】
特許文献2には、同様に医療用ベッドについて、マットレス装着用レストフレームの下側に装着されたモータの減速機の出力軸に、アームの上端が固着され、アームの先端部のローラが、モータの正逆転に伴い鉛直案内部材に沿って上下に案内されると、出力軸が左右に振り出され、レストフレームが揺動軸線を中心として静かにかつ緩やかに回動するようにした揺動式ベッドが開示されている。
【0005】
特許文献3には、人間の頭部の上下揺動を極力抑えながら、身体には、睡眠に必要な心地よい揺動を与えて睡眠を促進できるようにした、睡眠促進用揺動ベッドとして、ベッド基台と、ベッド基台に揺動可能に支持される揺動フレームと、揺動フレームに支持されるベッド床と、揺動フレームをベッド床と共に揺動駆動する揺動駆動手段とを備え、揺動フレームの揺動中心軸線がベッド床上に仰臥する使用者の身長方向に沿って延び、使用者の頭部を縦通するようにした睡眠促進用揺動ベッドが開示されている。
【0006】
特許文献4には、基台と、ベッド幅方向に往復動可能に支持された揺動体と、基台に取り付けられ揺動体を往復動させる駆動具と、就寝者を載せるベッド体とからなり、就寝者の腰部を載せる腰ベッド体部分をベッド幅方向に往復動させることを基本として、腰部を中心に、筋肉や関節に心地よい横揺れの刺激や運動を与え、快適な睡眠を提供するようにした揺動ベッドが開示されている。
【0007】
特許文献5には、ベッドに設けた振動板に、走行中の電車の振動等のような連続する微振動を発生する連続微振動発生器と、レールの継ぎ目で発生する振動等のようなレールの継ぎ目で発生する振動等のような概ね一定の周期で繰り返す単発的な振動を発生する間歇的単発振動発生器を設け、横たわった人体に連続微振動と間歇的単発振動とを複合して作用させ、良好な睡眠導入作用を図った睡眠誘導機能付きベッドが開示されている。
【0008】
特許文献6には、被介護者の安眠を妨げることなく、安全かつ静穏に被介護者等の体位を変換可能な医療用可動ベッドシステムについて、長手方向に沿って左右に分割されたベッドボトムの各部の傾斜角度を、リニアアクチュエータを用いて調整するようにした可動ベッドシステムが開示されている。
【0009】
特許文献7には、背起こし機能が付いたベッドの上に敷いて使用される揺動マットとして、可撓性を有する板状の第1部材と、第1部材上に配置された可撓性を有する板状の第2部材と、第2部材を往復移動させて第2部材を揺動させる駆動部とを備えた揺動マットが開示されている。揺動マットが設置されたベッドにて背起こしを行うと、ベッドの頭側が上昇して上半身部分が傾斜した状態となり、第1部材がベッドの傾斜と共に、上半身部分が傾斜した状態に臀部部分が湾曲し、第1部材が起き上がり、第1部材の傾斜に応じて第2部材も上半身部分が傾斜した状態に臀部部分が湾曲するというものである。
【0010】
特許文献8には、使用者が横たわった状態で、マッサージやリハビリを施術したり睡眠の誘導を促す揺動ベッドとして、設置場所に配置される固定部と、その上に配置された被揺動部と、被揺動部を往復移動させる揺動用駆動部と、固定部に対して被揺動部を揺動方向に沿って揺動させる第1滑り機構と、垂直面により被揺動部の横ずれを規制する第2滑り機構と、各駆動部を制御する制御部、各種のセンサ及び操作盤とを備えた人体用揺動装置が開示されている。
【0011】
非特許文献1には、入眠の援助や眠気と関連するリラクセーション効果の検証において、約0.33~0.67Hzのリズム刺激(約30回/分)を10分間行った場合と、リズム刺激を行わなかった場合の対照実験により、リズム刺激を行った場合に覚醒意識レベルが低下し、生理的・主観的にリラックスした反応が得られたとの実験結果が述べられている。また、母親が健康で情緒が安定しているときのリズミカルな鼓動は胎児に安心感を与える音と振動であるといわれている、手拍子などは心地よいといわれる「1/fゆらぎ」を示すとされているとの引用記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特許第3124453号公報
【文献】特許第3329787号公報
【文献】特許第4590238号公報
【文献】特許第5086696号公報
【文献】特開2004-024678号公報
【文献】特開2016-067429号公報
【文献】特開2017-124087号公報
【文献】特開2018-139766号公報
【非特許文献】
【0013】
【文献】廣井寿美他、10分間の周期的なリズム刺激が覚醒意識レベルに及ぼす影響、一般社団法人日本看護技術学会、日本看護技術学会誌、2010年、Vol.9、No.2、pp 29-38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1、2に記載される揺動ベッドは、医療用のベッドとして、例えば寝たきりの患者の床ずれや合併症を防止するために前後あるいは左右に回転できるようにしたものであり、睡眠を誘導するためのものではない。
【0015】
特許文献3に記載される揺動ベッドは睡眠促進用揺動ベッドとされているが、人体の軸を中心に左右に回動し、ベッドが左右に傾斜するものであり、必ずしも安眠できる構造ではない。
【0016】
また、特許文献3の睡眠促進用揺動ベッドに用いられる揺動駆動手段の場合、ブレーキモータ、偏心板、偏心軸、連結棒、揺動アーム、揺動フレームを設置するためのスペースが大きく、ベッド全体が大型化する他、下部のベッド基台と上部のベッド床との間に大きな隙間空間が生じるといった問題がある。
【0017】
特許文献4に記載される揺動ベッドは、腰部を中心に回転中心からの偏心量が1~10mmで、偏心手段の回転数が400~800rpmである横揺れの刺激や運動により、血行促進、マッサージ効果などを与え、快適な睡眠を提供するというもので、バイブレータ的な微振動・高周波数によるマッサージ効果があるとしても、不眠症などで悩む人の睡眠誘導効果は期待しがたい。
【0018】
特許文献5に記載される睡眠誘導機能付きベッドは、電車の振動を模した振動を与える連続微振動発生器とレールの継ぎ目で発生する振動を模した間歇的単発振動発生器を併用するものであるが、振動発生器により身体のどの部分にどのように低周波数の振動が加わるのかおよびその効果が明確ではない。
【0019】
特許文献6に記載される可動ベッドシステムは、医療・介護用としての用途において、リニアアクチュエータを用いてベッド上の患者や被介護者の体位を安全かつ静穏に側臥位に変換可能とするものであり、使用者の睡眠の誘導を促すことを目的としたものではない。
【0020】
特許文献7に記載される揺動マットは背起こし機能が付いたベッドの上に敷いて使用されるマットを対象としたものであり、また可撓性を有することを前提としている。
【0021】
特許文献8に記載される揺動ベッドは、ベッドの前後方向に揺動させ構造において、被揺動部の横ずれを規制する手段を設けたものであるが、前後方向以外の揺動は考慮されていない。
【0022】
本発明は、睡眠誘導するための揺動式ベッドとして、回転や高周波数のバイブレータ的な振動ではなく実質的に水平面内での主として横方向のゆっくりした揺動により、不眠症などで悩む人が、効率よく入眠できる睡眠誘導ベッドを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の揺動式睡眠誘導ベッドの第1の形態は、平板状の実質的に剛な揺動パネルと、前記揺動パネルを支持する支持装置と、前記揺動パネルを前記支持装置に対して水平方向に往復動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段による前記揺動パネルの往復動における振幅Dが0cm<D≦10cmの範囲内の特定の範囲内、振動数fが0Hz<f≦0.8Hzの範囲内の特定の範囲内で可変となるように設定されている水平揺動装置を、ベッド本体とマットレスの間に介在させてあることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の揺動式睡眠誘導ベッドの第2の形態は、平板状の実質的に剛な揺動パネルと、前記揺動パネルを支持する支持装置と、前記揺動パネルを前記支持装置に対して水平方向に往復動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段による前記揺動パネルの往復動における振幅Dが0cm<D≦10cmの範囲内の特定の範囲内、振動数fが0Hz<f≦0.8Hzの範囲内の特定の範囲内で可変となるように設定されている水平揺動装置を、床面とベッド本体との間に介在させてあることを特徴とするものである。
【0025】
上記第1の形態は、ベッド本体を構成するベッドボトムあるいはベッドフレームなどとその上に設置されるマットレスに分かれており、ベッド本体とマットレスの間に水平揺動装置を挟み込むことができる場合である。
【0026】
ベッド本体とマットレスの間に介在させてあるというのは、水平揺動装置が取り外し自由な場合と、水平揺動装置がベッド内に内蔵されている場合を含む意味である。なお、水平揺動装置が取り外し自由な場合も、その部分をカバー部材などで覆い、水平揺動装置が露出しないようにするのが望ましい。また、カバー部材は揺動に追従して変形できるものが好ましい。
【0027】
上記第2の形態は、ベッド本体とその上部に設置されるマットレスなどが一体の場合や、ベッド本体とマットレスが分かれていても、間に水平揺動装置を挟み込むことが困難な場合や、水平揺動装置を挟み込むことでベッドボトムなどベッド本体の機能が一部損なわれてしまう場合などに適用される。この場合、支持装置には床面に設置するための脚部を設けてもよい。脚部を設けることで、床面との間に空間を形成することができる。脚部の形状は特に限定されず、ベッド本体の形状に応じて、棒状の脚部に限らずブロック状の脚部でもよい。
【0028】
第2の形態についても、水平揺動装置が取り外し自由な場合と、水平揺動装置がベッドの下部に内蔵されている場合を含む。水平揺動装置が取り外し自由な場合も、その部分をカバー部材などで覆い、水平揺動装置が露出しないようにするのが望ましい。カバー部材は揺動に追従して変形できるものが好ましい。
【0029】
振幅Dが0cm<D≦10cmの範囲内の特定の範囲内というのは、例えば設計によって、1.5cm≦D≦8cm、2cm≦D≦6cmというように、この範囲内で種々の設計が可能であることを意味する。同様に、振動数fが0Hz<f≦0.8Hzの範囲内の特定の範囲内というのは、例えば設計によって、0.1Hz≦f≦0.7Hz、0.15Hz≦f≦0.6Hzというように、この範囲内で種々の設計が可能であることを意味する。
【0030】
なお、振幅Dは片振幅であり、1周期Tの間に全体で2D変位することになる。また、振動の幅の端から端(2Dの距離)の移動時間はT/2=1/2f秒となる。
【0031】
この特定の範囲内で、使用者のごとの身体特性や、その日の体調、気分などに応じて、水平揺動装置の駆動手段あるいは付随する動力伝達機構の動作をスイッチやダイヤルの切り替えで調整できるようにすればよい。また、タイマー装置の設定などで一定時間経過後、自動的に止めるようにすることができる。
【0032】
本発明の揺動式睡眠誘導ベッドは、従来のベッドに横たわった使用者の身体を中心に左右あるいは前後に回転したり、高周波数のバイブレータ的な振動を与える振動発生装置による刺激を加えるものとは異なり、原則的には使用者がベッド上に横たわった状態で、ほぼ水平な面内でゆっくり、通常は横たわった使用者の身体の左右方向にゆっくり揺動するものであり、人の呼吸や心拍程度の周波数オーダーの刺激の少ない静かな揺動により、自然に効率よく睡眠を誘導するようにしたものである。
【0033】
なお、揺動の方向は必ずしも左右方向に限定されず、左右方向と縦方向の2方向に揺動する構成としてもよい。また、昇降機構や回転機構(水平面内の回転の場合と横たわった使用者の身体方向を軸とする回転の一方または両者)を、さらに追加、併用した構造とすることもできる。昇降機構による上下運動や回転機構による回転運動を水平方向の揺動と同期させることで、水平方向のみの場合と異なる刺激による導眠効果が期待でき、使用者が任意に動作を選択できるようにする。
【0034】
揺動パネルの往復動における振幅D(片振幅)は最大で10cm程度が安全で快適な睡眠を与える上での限界と考えられ、好ましくは1.5cm≦D≦8cm程度の範囲内で振幅を調整できるようにするとよい。振幅が小さすぎると揺動の効果が小さく、大きすぎると振動数との関係で加速度分の力が加わり安静な状態が保てなくなるためである。また、D=8cmあるいはD=10cm程度であれば、駆動機構との関係でも設計が比較的容易であり、またベッド周辺の物体との接触なども問題となりにくい。
【0035】
揺動パネルの往復動における振動数fは、振幅との関係もあるが最大で0.8Hz程度が安全で快適な睡眠を与える上での限界と考えられ、好ましくは0.1Hz≦f≦0.7Hz程度の範囲内で振動数を調整できるようにするとよい。振動数が小さすぎると揺動の効果が小さく、大きすぎると振動数との関係で加速度分の力が加わり安静な状態が保てなくなるためである。
【0036】
例えば、0.15Hzは1分間に9往復(9T)であるから片側への移動(振動の半周期)のタイミングが成人の通常時の呼吸数程度であり、0.6Hzは1分間に36往復であるから片側への移動(振動の半周期)のタイミングが1分間に72回となり、安静状態の鼓動程度となる。非特許文献1の実験での0.33~0.67Hzのリズム刺激による覚醒意識レベル低下、リラックス効果や母親が健康で情緒が安定しているときのリズミカルな鼓動が胎児与えるに安心感、手拍子の心地よさの記載などからも好ましい範囲と考えることができる。
【0037】
すなわち、非特許文献1の実験は本発明における揺動のような往復動ではなく、インパクトのタイミングなので、刺激のタイミングとしては本発明の揺動による刺激のタイミング(例えば、0.15Hz×2~0.6Hz×2)と近いものとなっている。
【0038】
本発明の揺動式睡眠誘導ベッドに用いる駆動手段としては、リニアサーボモータ(リニアアクチュエータ、シャフトモータなどを含む)、あるいはボールネジとボールネジに回転運動を与える回転型モータを備えたものなどが適する。
【0039】
リニアサーボモータやボールネジの場合、揺動パネルの水平方向の揺動をコンパクトな機構による直線往復動で実現することができ、振幅や振動数の可変制御も容易である。また、複数のリニアサーボモータあるいはボールネジを配置する場合も、それらを同期させて制御することが容易である。
【0040】
これらの駆動手段は、上下に位置する支持装置と揺動パネルに挟まれる位置に設けてもよいし、揺動パネルの外周部を支持装置の外周部より外側に突出させ、支持装置の側部など支持装置の外周部と揺動パネルの下面との間に設置してもよい。
【0041】
揺動パネルの水平断面における外周部が支持装置の水平断面の外周部より外側に突出するようにし、駆動手段の少なくとも一部が揺動パネルの水平断面における外周部下面と前記支持装置の外周部との間に設置される構成とすれば、揺動時に揺動パネルの上に設置されるマットレスあるいは布団などが支持装置と干渉することが避けられ、また駆動装置の納まりがコンパクトになる。
【0042】
また、本発明の揺動式睡眠誘導ベッドにおいて、揺動パネルは支持装置に対し、低摩擦材を用いたすべり面を介して支持するようにしてもよい。具体的には建物の免震装置などで用いられているすべり支承などと同様に、例えば支持装置の上面にステンレス板、揺動パネルの下面にフッ素樹脂製のシートまたはパネルを取り付けた構造などを適用することができる。
【0043】
すべり面を介在させることで、揺動パネルと支持装置の接触面でも摩擦抵抗が小さくなるため、出力の小さいコンパクトな駆動装置で揺動させることができる。一方、すべり面の接触面積を大きくとることで、揺動パネルおよび支持装置に加わる鉛直力(ベッドや人体の荷重など)を安定して支持することができる。
【0044】
その他、揺動パネルと支持装置の接触面における摩擦抵抗を小さくする手段としては、一方向のローラあるいは全方向に機能するボールローラを複数介して揺動パネルを支持する構造としてもよいが、すべり面の場合に比べ、接触面積が小さくなる欠点がある。
【0045】
その他、揺動パネルと支持装置の接触面における摩擦抵抗を小さくする手段としては、一方向のローラあるいは全方向に機能するボールローラを複数介して揺動パネルを支持する構造としてもよいが、すべり面の場合に比べ、接触面積が小さくなる欠点がある。
【0046】
また、支持装置の上面に沿って左右方向に延びる2条以上のガイドレールを設け、揺動パネルがガイドレールに沿って摺動するようにしてもよい。
【0047】
本発明において、揺動パネルを平板状の実質的に剛な揺動パネルとしたのは、可撓性を有するパネルなど、変形しやすいパネルでは、支持装置に対する揺動パネルの往復動に支障をきたし、スムーズな揺動が困難となる恐れがあるためである。
【0048】
具体的には、金属パネルのほか、ポリカーボネートなどの強化プラスチックあるいは強化ガラスなどを利用することができる。これらは厳密な意味での剛なパネルではないが、できるだけ変形しにくい厚さや構造とする。また、揺動パネルは平板に限らず、軽量化のために格子状あるいは穴あき平板状としたものや、薄板に補剛リブを設けて変形しにくくしたものなどでもよい。
【発明の効果】
【0049】
本発明の揺動式睡眠誘導ベッドは、従来のベッドに横たわった使用者の身体を中心に左右あるいは前後に回転したり、高周波数のバイブレータ的な振動を与える振動発生装置による刺激を加えるものとは異なり、原則的には使用者がベッド上に横たわった状態で、ほぼ水平な面内でゆっくり、通常は横たわった使用者の身体の左右方向にゆっくり揺動するものであり、人の呼吸や心拍程度の周波数オーダーの刺激の少ない静かな揺動により、自然に効率よく睡眠を誘導することができる。
【0050】
駆動手段として、リニアサーボモータ、あるいはボールネジとボールネジに回転運動を与える回転型モータを備えたものなどを用いれば、揺動パネルの水平方向の揺動をコンパクトな機構による直線往復動で実現することができ、振幅や振動数の可変制御も容易である。
【0051】
リニアサーボモータやボールネジを用いた駆動機構の場合、機械音がほとんど生じないため、安眠を妨げることがなく、また振幅や振動数の調整が正確であり、安定した制御が可能である。
【0052】
揺動パネルは支持装置に対し、低摩擦材を用いたすべり面を介して支持するようにすれば、揺動パネルと支持装置の接触面でも摩擦抵抗が小さくなるため、出力の小さいコンパクトな駆動装置で揺動させることができる。その場合、駆動手段を支持装置の外側に配置すれば、水平揺動装置の高さを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】本発明のベッドの一実施形態を示したもので、(a)は立面図、(b)はそのA-A断面図である。
図2】本発明のベッドの他の実施形態を示したもので、(a)は立面図、(b)はそのB-B断面図である。
図3】本発明のベッドのさらに他の実施形態を示す立面図である。
図4】本発明のベッドのさらに他の実施形態として、支持装置の上面にボールローラを設ける場合の概略平面図である。
図5】本発明のベッドのさらに他の実施形態として、支持装置の上面にガイドレールを設ける場合の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を添付した図面に基づいて説明する。
【0055】
図1は本発明のベッドの一実施形態を示したものである。本実施形態では、脚部4を有するベッド本体(ベッドボトム)2の上面に水平揺動装置11を介して、マットレス3を設置している。
【0056】
本実施形態における水平揺動装置11は、ベッド本体2の上面に取り付けられる支持装置12の上面に駆動装置としての複数(図では6個)のリニアサーボモータ14が設けられ、駆動装置14の上面に水平な揺動パネル13が取り付けられている。
【0057】
図1(b)は図1(a)のA-A断面を示したものであり、水平揺動装置11の平板状の支持装置12に据付け板15を介してリニアサーボモータ14を取り付けている。リニアサーボモータ14は、据付け板15に固定されたブラケット16で両端が支持される2本のシャフト17に沿ってタンデム配置の可動子18が左右に移動するようになっており、可動子18の上面に揺動パネル13が固定される。
【0058】
このような構成により、各リニアサーボモータ14を同期させて駆動することで、揺動パネル13およびその上に設置されるマットレス3が、所定の振幅D、所定の振動数fで揺動することになる。
【0059】
製造において使用するリニアサーボモータ14の選択により、振幅Dを例えば1.5cm≦D≦8cmの範囲で、振動数fを例えば0.1Hz≦f≦0.7Hzの範囲内で調整できるように設定する。使用者は設定範囲内で、自身の身体特性や、体調、気分などに応じて、リモコンのスイッチボタンあるいはダイヤル操作などにより調整する。
【0060】
なお、図では作図上、水平揺動装置11が露出しているが、実際には水平揺動装置11は、カバー部材で覆うなどして、外部から見えないように、またほこりなどが入らないようにすることが望ましい。
【0061】
図2は本発明のベッドの他の実施形態を示したものである。本実施形態も、脚部4を有するベッド本体(ベッドボトム)2の上面に水平揺動装置11を介して、マットレス3を設置したものである。
【0062】
本実施形態における水平揺動装置11は、平断面が揺動パネル13より小さい支持装置12の上面にすべり面20を介して揺動パネル13を設置した構造となっている。
【0063】
図2(b)は図2(a)のB-B断面を示したものであり、揺動パネル13の外周部から垂下させた複数(図では4箇所)の垂下部材19と支持装置12の外周側面との間に、駆動装置としてのリニアサーボモータ14が設置されている。
【0064】
すべり面20は、例えば支持装置12の上面にステンレス板、揺動パネル13の下面にフッ素樹脂製のシートまたはパネルを貼り付けた構造などとすることができる。すべり面20を介在させることで、揺動パネル13と支持装置12の接触面における摩擦抵抗が小さくなるため、コンパクトな駆動装置で揺動させることができる。
【0065】
一方、ベッドや人体の荷重などの鉛直荷重は、すべり面のある程度広い面積で受けるため安定した構造となる。
【0066】
リニアサーボモータ14は、図2(a)に破線で示すように、ブラケット16で両端が支持されるシャフト17に沿ってタンデム配置の可動子18が左右に移動するようになっており、可動子18に揺動パネル13から垂下した垂下部材19が固定される。
【0067】
このような構成により、各リニアサーボモータ14を同期させて駆動することで、支持装置12にすべり面20を介して設置された揺動パネル13およびその上に設置されるマットレス3が、所定の振幅D、所定の振動数fで揺動することになる。
【0068】
製造において使用するリニアサーボモータ14の選択により、振幅Dを例えば1.5cm≦D≦8cmの範囲で、振動数fを例えば0.1Hz≦f≦0.7Hzの範囲内で調整できるように設定する。使用者は設定範囲内で、自身の身体特性や、体調、気分などに応じて、リモコンのスイッチボタンあるいはダイヤル操作などにより調整する。
【0069】
なお、図では作図上、水平揺動装置11が露出しているが、実際には水平揺動装置11は、カバー部材で覆うなどして、外部から見えないように、またほこりなどが入らないようにすることが望ましい。
【0070】
図3は本発明のベッドのさらに他の実施形態を示したものである。本実施形態では、水平揺動装置11を、床面とベッド本体2との間に介在させてあり、マットレス3は通常のベッドと同様、ベッド本体2の上面に設置される。なお、本実施形態では、水平揺動装置11の下面に脚部5を設けている。
【0071】
水平揺動装置11の構成は、図2の実施形態と同じである。すなわち、平断面が揺動パネル13より小さい支持装置12の上面にすべり面20を介して揺動パネル13を設置した構造となっており、揺動パネル13の外周部から垂下させた複数の垂下部材19と支持装置12の外周側面との間に、駆動装置としてのリニアサーボモータ14が設けられている。
【0072】
すべり面20は、例えば支持装置12の上面にステンレス板、揺動パネル13の下面にフッ素樹脂製のシートまたはパネルを貼り付けた構造などとすることができる。すべり面20を介在させることで、揺動パネル13と支持装置12の接触面における摩擦抵抗が小さくなるため、コンパクトな駆動装置で揺動させることができる。
【0073】
一方、ベッドや人体の荷重などの鉛直荷重は、すべり面のある程度広い面積で受けるため安定した構造となる。
【0074】
リニアサーボモータ14は、図3に破線で示すように、ブラケット16で両端が支持されるシャフト17に沿ってタンデム配置の可動子18が左右に移動するようになっており、可動子18に揺動パネル13から垂下した垂下部材19が固定される。
【0075】
このような構成により、各リニアサーボモータ14を同期させて駆動することで、支持装置12にすべり面20を介して設置された揺動パネル13およびその上に設置されるベッド本体2がマットレス3とともに、所定の振幅D、所定の振動数fで揺動することになる。
【0076】
図4は、本発明のベッドのさらに他の実施形態として、支持装置2の上面にボールローラ31を設けた場合の概略平面を部分的に示したものである。
すなわち、揺動パネル(図示せず)を支持装置2に対し複数のローラまたはボールローラ31を介して支持することで、揺動パネルと支持装置2の接触面における摩擦抵抗が小さくなるようにしたものである。駆動装置等は前述した実施形態のものと同様のものを使用することができる。
【0077】
図5は、本発明のベッドのさらに他の実施形態として、支持装置2の上面に2条以上のガイドレール41を設け、揺動パネル(図示せず)がガイドレール41に沿って摺動するようにし他場合の概略平面を部分的に示したものである。この場合も駆動装置等は前述した実施形態のものと同様のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…揺動式ベッド、2…ベッド本体、2a…脚部、3…マットレス、4…脚部、5…脚部、
11…水平揺動装置、12…支持装置、13…揺動パネル、14…リニアサーボモータ(駆動装置)、15…据付け板、16…ブラケット、17…シャフト、18…可動子、19…垂下部材、20…すべり面、
31…ボールローラ、41…ガイドレール
図1
図2
図3
図4
図5