(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20250107BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20250107BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250107BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20250107BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20250107BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20250107BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20250107BHJP
C09J 153/00 20060101ALN20250107BHJP
【FI】
C08L53/00
C08F293/00
C08L63/00 C
C08K3/013
B32B27/20 Z
B32B27/28
B32B27/34
C09J153/00
(21)【出願番号】P 2020194271
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】方田 大遥
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/030079(WO,A1)
【文献】特開2020-084100(JP,A)
【文献】特開2010-155975(JP,A)
【文献】国際公開第2006/132165(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08F293/00
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)と、が連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)、及びフィラー(E)を含有する硬化性組成物であって、
前記ポリイミドユニット(A)が、シロキサン骨格を有する構成単位を、ポリイミドユニット(A)の質量を基準として、20~60質量%の範囲で含み、
前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有する、硬化性組成物。
【請求項2】
前記ブロックポリマー(C)が、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を、ブロックポリマー(C)の質量を基準として、10~50質量%の範囲で含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)を、エチレン性不飽和単量体の合計質量を基準として、2.5~45質量%の範囲で含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ブロックポリマー(C)の質量を基準として、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)を、50~200質量%の範囲で含む、請求項1~3いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記フィラー(E)が、熱伝導フィラーである、請求項1~4いずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~
5いずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
基材上に、請求項
6に記載の硬化物からなる層を有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着強度と柔軟性に優れる、硬化性組成物、硬化物、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体構造やパワーデバイス等の半導体分野で、効率化、小型化、軽量化の観点から接着接合が注目されている。これらの分野では、使用環境における熱的負荷が大きいことから、さらなる耐熱向上が求められている。また、同分野では、電子部品の発熱を逃がすために放熱性の高い冷却システムが求められている。
【0003】
このような課題に対し、例えば、特許文献1及び特許文献2には、放熱性を有する熱伝導性接着剤が記載され、高い熱伝導率を実現するために、酸化アルミニウムや窒化ホウ素のような熱伝導性フィラーを、接着剤の固形分中に80質量%程度という高い配合比で含む組成物が開示されている。
【0004】
特許文献3には、柔軟なシリコーン系樹脂と熱伝導性フィラーとを含む熱伝導性シートが、柔軟性と高い熱伝導率とを両立することが記載されている。
【0005】
特許文献4には、柔軟なポリシロキサン骨格を有する有機溶剤可溶性ポリイミドと、エポキシ化合物を併用した樹脂組成物が開示され、これらを併用することで、一定の接着力と柔軟性を両立することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-177581号公報
【文献】特開2015-006980号公報
【文献】特開2010-120980号公報
【文献】国際公開第2018/030079号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1及び特許文献2に記載の接着剤は、エポキシ樹脂を使用しているため、高温環境下で長期間晒されると接着層が劣化して固脆くなる。これにより、温度環境の変化が著しい用途に用いた場合、接着剤層にクラックが生じ、接着力が低下するという課題がある。
特許文献3に記載の熱伝導性シートは、シリコーン系樹脂を用いており、エポキシ樹脂と比較すると接着強度が十分ではなく、使用可能な用途が限られるという課題がある。
特許文献4に記載の樹脂組成物は、エポキシ化合物との架橋性を高めて耐熱性を得るために、側鎖に架橋点を有する有機溶剤可溶性ポリイミドを使用しており、架橋により柔軟なポリイミドの主鎖の運動が抑制されるため、得られる柔軟性には制限がある。そのため、線膨張係数の異なる基材を用いた場合、冷熱サイクル試験により、接着力が劣化するという課題がある。
したがって、本発明の課題は、高い配合比でフィラーを含む場合であっても、高い接着強度を有し、冷熱サイクル性に優れ、且つ高温環境下においても接着強度を維持可能な優れた耐熱性を有する、硬化性組成物、その硬化物、及び硬化物からなる層を備える積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す実施形態により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の一態様に係る硬化性組成物は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)と、が連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)、及びフィラー(E)を含有する硬化性組成物であって、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の一態様に係る硬化性組成物は、ブロックポリマー(C)が、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を、ブロックポリマー(C)の質量を基準として、10~50質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の一態様に係る硬化性組成物は、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)を、エチレン性不飽和単量体の合計質量を基準として、2.5~45質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の一態様に係る硬化性組成物は、ブロックポリマー(C)の質量を基準として、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)を、50~200質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の一態様に係る硬化性組成物は、フィラー(E)が、熱伝導フィラーであることを特徴とする。
【0014】
本発明の他の一態様に係る硬化性組成物は、ポリイミドユニット(A)が、シロキサン骨格を有する構成単位を、ポリイミドユニット(A)の質量を基準として、20~60質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の他の一態様に係る硬化物は、上記硬化性組成物を硬化してなることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の一態様に係る積層体、基材上に、上記硬化物からなる層を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、高い配合比でフィラーを含む場合であっても、高い接着強度を有し、冷熱サイクル性に優れ、且つ高温環境下においても接着強度を維持可能な優れた耐熱性を有する、硬化性組成物、その硬化物、及び硬化物からなる層を備える積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の硬化性組成物は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)と、が連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)、及びフィラー(E)を含有し、前記エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有することを特徴とする。
ブロックポリマー(C)が、柔軟なポリイミドユニット(A)と、分子内にカルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とを備えることで、得られる硬化性組成物は、フィラーを高い配合比で含む場合においても、高い接着強度、柔軟性だけでなく、優れた耐熱性を発揮する。
また、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連結された構造を有していることで、各々を単独で混合する場合と比べて、ユニット同士の相溶性に優れ、透明性の高い樹脂膜が得られる。そして、このような樹脂膜を硬化して得られる硬化物は、フィラーを高い配合比で含む場合においても、優れた接着強度、柔軟性、耐熱性を発揮する。
また、ブロックポリマー(C)と、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)と、を組み合わせることにより、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)が形成する強靭な架橋構造に、ブロックポリマー(C)中のエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)が強固に組み込まれた硬化膜が得られる。このようにして得られた硬化膜は、相分離構造を形成しており、ポリイミドユニット(A)由来の柔軟性と、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)由来の高い膜強度とを両立する。
また、高温環境下では、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)に由来する架橋構造は熱により硬くなるが、耐熱性の高いポリイミドユニット(A)は硬度の変化が少なく柔軟性を維持できる。
さらに、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)との架橋構造は、架橋点が複数存在するため強固であり、ブロックポリマー(C)と分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)との熱による分離が抑制され、柔軟性を維持できる。
これにより、本発明の硬化性組成物は、高い配合比でフィラーを含む場合であっても、高い接着強度を有し、且つ高温環境下においても接着強度を維持可能な優れた耐熱性を発揮する。
以下に本発明について詳細に説明する。
【0019】
<ブロックポリマー(C)>
本発明におけるブロックポリマー(C)は、ポリイミドユニット(A)とエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結した構造を有していればよく、その製造方法は制限されないが、好ましくは下記の方法で製造することができる。
まず、ジアミンと過剰の酸二無水物とを溶剤中で反応させてポリアミック酸を形成し、さらに高温に熱して脱水環化しイミド化させ、両末端に酸無水物を有するポリイミドユニット(A)を形成する(以下、工程1)。
次いで、連鎖移動剤を添加し、ポリイミドユニット(A)の両末端に連鎖移動剤残基を有するプレポリマーを合成する(以下、工程2)。
その後、得られたプレポリマーが有する連鎖移動剤残基を用いて、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)を含むエチレン性不飽和単量体を、重合開始剤存在下に連鎖移動重合して、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を形成する(以下、工程3)。
このようにして、ポリイミドユニット(A)と、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有するエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが、連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)を得ることができる。
【0020】
<ポリイミドユニット(A)>
本発明におけるブロックポリマー(C)は、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)と、が連鎖移動剤残基により連結した構造を有しており、前記ポリイミドユニット(A)は、ジアミンと過剰の酸二無水物とを溶剤中で反応させてポリアミック酸を形成し、さらに高温に熱して脱水環化しイミド化させることで形成することができる。
【0021】
<ジアミン>
ポリイミドユニットを構成するジアミンとしては、例えば、
ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチル-ジアミノジシクロヘキシルメタン、テトラメチル-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ジアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビス(アミノメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;
2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等のビスアミノフェノキシフェニルプロパン類;
3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル等のジアミノジフェニルエーテル類;
p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類;
3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド等のジアミノジフェニルスルフィド類;
3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン等のジアミノジフェニルスルホン類;
3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン等のジアミノベンゾフェノン類;
3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン等のジアミノジフェニルメタン類;
2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン等のジアミノフェニルプロパン類;
2,2-ジ(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のジアミノフェニルヘキサフルオロプロパン類;
1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン等のジアミノフェニルフェニルエタン類;
1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等のビスアミノフェノキシベンゼン類;
1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン等のビスアミノベンゾイルベンゼン類;
1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン等のビスアミノジメチルベンゼン類;
1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン等のビスアミノジトリフルオロメチルベンジルベンゼン類;
2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル等のアミノフェノキシビフェニル類;
ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン等のアミノフェノキシフェニルケトン類;
ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド等のアミノフェノキシフェニルスルフィド類;
ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン等のアミノフェノキシフェニルスルホン類;
ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル等のアミノフェノキシフェニルエーテル類;
2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のアミノフェノキシフェニルプロパン類;
その他のジアミンとして、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)3,3,3,’3,’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)3,3,3,’3,’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(2-アミノメトキシ)エチル]エ-テル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロポキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス[2-(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2-ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコ-ルビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコ-ルビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコ-ルビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンが挙げられる。
【0022】
また、上記ジアミンとして、オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導されるダイマージアミンを用いることができる。ダイマージアミンの市販品としては、例えば、バーサミン551(BASFジャパン社製)、バーサミン552(コグニクスジャパン社製;バーサミン551の水添物)、PRIAMINE 1075、PRIAMINE 1074(クローダジャパン社製)が挙げられる。
【0023】
また、上記ジアミンとして、α,ω-ビス(2-アミノエチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(4-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(5-アミノペンチル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(2-アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス[3-(4-アミノフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン等のシロキサン骨格を有するジアミン(以下、ジアミノポリシロキサン類とも言う)を用いることができる。シロキサン骨格を有するジアミンの市販品としては、例えば、KF-8010、X-22-161A、X-22-161B(信越化学工業社製)が挙げられる。
【0024】
また、上記ジアミンとして、ポリオキシプロピレンジアミンを用いることができる。ポリオキシプロピレンジアミンの市販品としては、例えば、ジェファーミンD-230、ジェファーミンD-400、ジェファーミンD-2000、ジェファーミンD-4000(いずれもHUNTSMAN社製)が挙げられる。
【0025】
これらジアミンは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミドユニット(A)は、好ましくは、芳香環を有するジアミンに由来する構成単位、及びシロキサン骨格を有するジアミンに由来する構成単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を有するものであり、より好ましくは、シロキサン骨格を有するジアミンに由来する構成単位を有するものであり、さらに好ましくは、芳香環を有するジアミンに由来する構成単位と、シロキサン骨格を有するジアミンに由来する構成単位とを有するものである。
【0026】
<酸二無水物>
酸二無水物としては、特に制限されず、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物類;1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシ-2-シクロペンタン酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシ-2-ノルボルナン酢酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物類;1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物類等が挙げられる。
【0027】
また、上記酸二無水物として、両末端型カルボン酸無水物変性ポリシロキサン等のシロキサン骨格を有する酸二無水物を用いることができる。両末端型カルボン酸無水物変性ポリシロキサンの市販品として、例えば、X-22-168AS、X-22-168A、X-22-168B、X-22-168-P5-B(いずれも信越化学工業社製)が挙げられる。
【0028】
これら酸二無水物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリイミドユニット(A)は、好ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物類、及びシロキサン骨格を有する酸二無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位を有するものであり、より好ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物類に由来する構成単位を有するものであり、さらに好ましくは、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物に由来する構成単位を有するものである。
【0029】
ポリイミドユニット(A)は、ポリイミドユニット(A)の質量を基準として、シロキサン骨格を有する構成単位を、好ましくは20~60質量%の範囲で含み、より好ましくは、35~45質量%の範囲で含むものである。シロキサン骨格を有する構成単位が30~70質量%の範囲であると、耐熱性と柔軟性に優れるため好ましい。
【0030】
上記ジアミンと酸二無水物とを、-20~150℃、好ましくは-5~100℃の任意の温度で混合することで、容易にポリアミック酸を形成することができる。
ポリアミック酸を脱水環化しイミド化する方法としては、公知の熱的イミド化法や化学的イミド化法を利用できる。熱的イミド化法では、例えば、150~250℃の高温で脱水しながら加熱処理することで容易にイミド化することができる。化学的イミド化法では、例えば、ピリジン又はトリエチルアミン等の塩基と無水酢酸を、原料のジアミンに対して各々2~10モル当量を加え0~50℃で環化反応を行うことでイミド化することができる。
【0031】
<ポリイミドユニット(A)の数平均分子量>
ポリイミドユニット(A)の数平均分子量は、好ましくは20,000~200,000の範囲である。20,000以上であると、得られる硬化物の破断強度に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0032】
<連鎖移動剤>
上述で得られたポリイミドユニット(A)の両末端の酸無水物基と、連鎖移動剤とを反応させることで、両末端に連鎖移動剤残基を有するプレポリマーを得ることができる。
連鎖移動剤は、特に制限されないが、酸無水物基と反応しうる官能基とスルファニル基とを有するものが好ましい。当該連鎖移動剤を用いると、ポリイミドユニット(A)における末端酸無水物基と、連鎖移動剤における酸無水物基と反応しうる官能基とが反応し、両末端にスルファニル基を有するプレポリマーが形成される。ポリイミドユニットと、連鎖移動剤との反応は、20~120℃の任意の温度で混合することで容易に進行し、連鎖移動剤は、公知の連鎖移動剤から単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0033】
上記酸無水物基と反応しうる官能基としては、アミノ基又は水酸基等が挙げられ、アミノ基の水素原子は、アルキル基やアリール基等の有機残基で置換されていてもよい。このような置換アミノ基としては、例えば、N-アルキルアミノ基、N-アリールアミノ基のようなモノ置換アミノ基が挙げられる。水酸基としては、一級水酸基、二級水酸基又は三級水酸基が挙げられる。
酸無水物基と反応しうる官能基は、酸無水物基との反応性が良好であることから、好ましくはアミノ基である。アミノ基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤を用いることで、プレポリマーの末端に効率的にスルファニル基を導入することができるため好ましい。
【0034】
このような分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基を含有する連鎖移動剤としては、例えば、2-アミノエタンチオール、3-アミノプロピル-1-チオール、1-アミノプロピル-2-チオール、4-アミノ-1-ブタンチオール等のアミノアルカンチオール類;2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール等のアミノベンゼンチオール類;が挙げられる。中でも、好ましくはアミノアルカンチオール類であり、より好ましくは2-アミノエタンチオールである。
【0035】
<エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)>
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)は、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有するものであり、分子内にカルボキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体(b1)を含むエチレン性不飽和単量体を、重合開始剤の存在下に重合させて得られる構造体である。
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)を用いると、後述する分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)と反応した際に、より耐熱性と柔軟性に優れる硬化物が得られるため好ましい。
具体的には、工程2で得られた両末端に連鎖移動剤残基を有するプレポリマーと、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)を含むエチレン性不飽和単量体と、を重合開始剤の存在下に重合させることで、ポリイミドユニット(A)と、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが、連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマー(C)を得ることができる。
【0036】
<カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)>
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)は、分子内にカルボキシ基を1つ以上有するエチレン性不飽和単量体であればよく、公知のものを使用することができる。
このような単量体(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、α-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、p-ビニル安息香酸が挙げられ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)として好ましくは、(メタ)アクリル酸である。
【0037】
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)の含有率は、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体の合計質量を基準として、好ましくは2.5~45質量%の範囲である、より好ましくは5~30質量%の範囲である。2.5~45質量%の範囲であると、耐熱性と柔軟性に優れるため好ましい。
【0038】
<その他エチレン性不飽和単量体>
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を構成するエチレン性不飽和単量体は、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)以外の、その他エチレン性不飽和単量体を含んでいてもよい。
その他エチレン性不飽和単量体としては、特に制限されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート類;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート又はこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1~5)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和単量体類;
グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシルジエーテル、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3-エチル-3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、4-メチル-4,5-エポキシペンチル(メタ)アクリレート、5-メチル-5,6-エポキシヘキシル(メタ)アクリレート、α-エチルアクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、クロトニルグリシジルエーテル、(イソ)クロトン酸グリシジルエーテル、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、N-(3,5-ジメチル-4-グリシジル)ベンジルアクリルアミド、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,4-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,5-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,6-ジグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,4-トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,5-トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,3,6-トリグリシジルオキシメチルスチレン、3,4,5-トリグリシジルオキシメチルスチレン、2,4,6-トリグリシジルオキシメチルスチレン等のエポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体類;
(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、m-(メタ)アクリロイルフェニルイソシアネート、α,α‐ジメチル‐4‐イソプロペニルベンジルイソシアネート等のイソシアネート基を有するエチレン性不飽和単量体類;
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N-メチルN-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、桂皮酸アミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体類;
スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、等のビニル類;
エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するビニルエーテル類;が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の含有量は、ブロックポリマー(C)の質量を基準として、10~50質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは20~40質量%の範囲である。10~50質量%の範囲であると、耐熱性に優れるため好ましい。
【0040】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物や有機過酸化物を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アゾ系化合物としては、特に制限されず、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が挙げられる。
有機過酸化物としては、特に制限されず、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサエート、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドが挙げられる。
【0041】
重合開始剤の配合量は、エチレン性不飽和単量体全量を基準として、好ましくは、0.001~15質量%である。0.001~15質量%の範囲であると、効果的に連鎖移動重合が進行するため好ましい。
【0042】
<エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の数平均分子量>
エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)の数平均分子量は、好ましくは2,000~200,000の範囲である。2,000以上であると、得られる硬化物の破断強度に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0043】
<ブロックポリマー(C)の数平均分子量>
ブロックポリマー(C)の数平均分子量は、好ましくは、5,000~300,000の範囲である。5,000以上であると、得られる硬化物の破断強度に優れ、300,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0044】
<溶剤>
ブロックポリマー(C)を製造する際に使用できる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アニソール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
ポリイミドユニット(A)の合成に使用できる溶剤として、好ましくは高沸点溶剤であり、かつアミノ基とスルファニル基とを有する連鎖移動剤と反応しない溶剤である。このような溶剤としては、例えば、キシレン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
【0046】
<分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)>
本発明の硬化性組成物は、さらに分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)を含む。ブロックポリマー(C)が有する、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)由来のカルボキシ基と、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)のエポキシ基とが反応し硬化することで、耐熱性、接着性に優れる硬化物を得ることができる。このような分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有しない化合物とに大別される。
【0047】
上記芳香環を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、又はビスフェノールS型等のビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物;ジシクロペンタジエンジオキシド、又はジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ化合物等のジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物;1-グリシジルナフタレン、2-グリシジルナフタレン、1,2-ジグリシジルナフタレン、1,5-ジグリシジルナフタレン、1,6-ジグリシジルナフタレン、1,7-ジグリシジルナフタレン、2,7-ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、又は1,2,5,6-テトラグリシジルナフタレン等のナフタレン骨格を有するエポキシ化合物;9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、又は9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するエポキシ化合物;4,4’-ジグリシジルビフェニル、又は4,4’-ジグリシジル-3,3’,5,5‘-テトラメチルビフェニル等のビフェニル骨格を有するエポキシ化合物;が挙げられる。
【0048】
上記芳香環を有しないエポキシ化合物としては、例えば、脂環式エポキシ化合物、脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式グリシジルエーテル型エポキシ化合物、脂環式グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン系、複素環系等の含窒素エポキシ化合物、シロキサン系エポキシ化合物が挙げられる。
これらの分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明の硬化性組成物は、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)を、ブロックポリマー(C)の質量を基準として、好ましくは50~200質量%の範囲で含むものであり、より好ましくは、75~150質量%の範囲で含むものである。50~200質量%の範囲であると、耐熱性と接着性に優れるため好ましい。
【0050】
<硬化促進剤>
本発明の硬化性組成物は、硬化速度や硬化物の物性等を調整するために、硬化促進剤を含むことが好ましい。硬化促進剤は特に限定されず、適宜選択できる。硬化促進剤の具体例としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2 種以上を混合して用いてもよい。
上記硬化促進剤は、硬化性組成物を硬化してなる硬化物の絶縁性及び接着性の観点から、好ましくはイミダゾール系硬化促進剤を含むものである。イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが挙げられる。
硬化促進剤の配合量は、フィラー(E)を除く硬化性組成物に含まれる固形分質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%の範囲である。
【0051】
<フィラー(E)>
本発明の硬化性組成物は、さらに、フィラー(E)を含む。フィラー(E)は特に制限されず、所望する機能に応じて適宜選択でき、例えば、粒子状や繊維状のフィラーを用いることができる。フィラー(E)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
フィラー(E)の構成材料は、例えば、銀、金、銅、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素(典型的には二酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン酸ドープ酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂、ホウ酸亜鉛等の、水和金属化合物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム等の窒化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;カーボンブラック、カーボンチューブ(典型的にはカーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;ガラス等の無機材料;ポリスチレン、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ゴム等のポリマー;が挙げられる。また、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子;を用いてもよい。
【0053】
繊維状フィラーとしては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。通常、硬化性組成物への含有量を比較的多くしても、硬化膜の平滑性を損ないにくいことから、フィラー(E)として好ましくは、粒子状フィラーである。粒子の形状は特に限定されず、バルク状、針形状、板形状、層状であってもよい。バルク形状には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。粒子の構造は特に制限されず、例えば、緻密構造、多孔質構造、中空構造等であり得る。
【0054】
本発明の硬化性組成物が、熱伝導性を有する硬化性組成物である場合は、フィラー(E)として熱伝導性フィラーを用いる。
熱伝導フィラーとしては、公知の熱伝導フィラーを使用することができ、このような熱伝導性フィラーの構成材料として好ましくは、銀、金、銅、ニッケル、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素等が挙げられる。
フィラー(E)は、硬化性組成物を構成するブロックポリマー(C)等の樹脂成分に対する分散性に優れる観点から、好ましくは窒化ホウ素及びアルミナからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは窒化ホウ素である。
【0055】
フィラーの平均粒径は特に限定されないが、通常、レーザー回折散乱法により算出した平均粒子径(D50)が100μm以下のものを用いる。フィラーの平均粒径は、好ましくは0.1μm以上50μm以下であり、より好ましくは1μm以上50μm以下である。
【0056】
硬化性組成物におけるフィラー(E)の含有量は特に限定されず、所望する機能や要求性能に応じて決定できる。フィラー(E)の含有量は、硬化性組成物に含まれる固形分質量を基準として、5質量%以上であってよく、10質量%以上でもよく、33質量%以上でもよい。
フィラーが熱伝導性フィラーである場合、熱伝導性フィラーの含有率は、硬化性組成物に含まれる固形分質量を基準として、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上である。接着性の低下を抑制する観点から、熱伝導性フィラーの含有量は、通常、硬化性組成物に含まれる固形分質量を基準として、90質量%以下であることが適当であり、好ましくは85質量%以下である。
【0057】
<その他成分>
硬化性組成物は、さらに、シランカップリング剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤及び着色剤等の公知の添加剤を含むことができる。このような添加剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;3―メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、硬化性組成物中のブロックポリマー(C)の質量を基準として、好ましくは0.05~10質量%である。
【0059】
<硬化物、積層体>
本発明の硬化物は、上述の硬化性組成物を硬化してなるものであり、粘接着剤、粘接着シート、コーティング剤、フィルム基材、エラストマー、医療材料、光学材料等の分野において有用である。中でも、高い接着強度と柔軟性とを有し、且つ耐熱性に優れる観点から、接着シートとして好適に用いられる。
硬化物の形成方法は特に制限されず、例えば、溶剤等を用いて塗布方法に適した粘度に調整した硬化性組成物を、基材上に塗布した後、例えば50℃~200℃の温度に加熱して溶剤を除去し、次いで20℃~200℃の温度で硬化させることにより得ることができる。
【0060】
本発明の積層体は、基材上に、上述の硬化物からなる層を備えるものである。積層体の製造方法は特に制限されず、例えば、硬化性組成物を第1の基材上に塗布した後、溶剤等の揮発分をオーブンで乾燥させて未硬化の樹脂層を形成し、該樹脂層に第2の基材を重ね、必要に応じて熱圧着等を行い軟化させて密着させつつ樹脂層を硬化させて製造することができる。また、本発明の積層体は、予めシート状に成型した、硬化性組成物を乾燥させてなる未硬化の樹脂層を、2つの基材の間に挟み、熱圧着等により軟化させて密着させつつ硬化させて製造することができる。硬化後の層の厚みは、好ましくは0.1μm~300mmである。
【0061】
基材としては、特に制限されず、例えば、アルミニウムや銅等の金属、ポリエチレン、ポリロピレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー等の熱可塑性ポリマー、加硫ゴム等の熱硬化性ポリマー、尿素-ホルムアルデヒドフォーム、メラミン樹脂、木材、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、液晶ポリマー(LCP)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のスーパーエンジニアリングプラスチック、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック及びその他の繊維強化プラスチックが挙げられる。
本発明の積層体が、2つ以上の基材を備える場合、複数の基材は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
【0062】
本発明の積層体は、優れた接着力、及び耐熱性を有しており、パワーデバイス、自動車の分野の構造部材として有用である。
【実施例】
【0063】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を表す。
【0064】
<固形分濃度>
樹脂の固形分濃度は、JISK5601-1-2に準拠し、加熱温度150℃、加熱時間20分で測定した時の加熱残分を用いた。
【0065】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)>
樹脂の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した分子量が既知のポリスチレンによる換算値を用いた。測定は、GPC装置としてGPC-8020(東ソー社製)、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃の条件で行った。
【0066】
<酸価>
酸価の測定は以下の手順で行った。まず、樹脂溶液1gをトルエン40mLに溶解させた後、メターノール20mL、イオン交換水1mLを加え、酸価測定用サンプルを調製した。次いで、京都電子工業社製自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-20B」を接続したものを使用し、滴定試薬としては0.02mol/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液を用いて電位差滴定を行い、樹脂の固形分濃度から固形樹脂1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0067】
本明細書における略号を以下に示す。
BPADA:4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物
X-22-168AS:テトラカルボン酸二無水物変性ポリシロキサン、製品名「X-22-168AS」、信越化学工業社製
BAPP:2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン
KF-8010:ジアミノポリシロキサン、製品名「KF-8010」、信越化学工業社製
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
AIBN:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル
MMA:メチルメタクリレート
St:スチレン
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
【0068】
jER828US:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、製品名「jER828US」、三菱ケミカル社製
jER157S70:ビスフェノールAノボラック型固形エポキシ樹脂、製品名「jER157S70」、三菱ケミカル社製
jER630:p-アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、製品名「jER630」、三菱ケミカル社製
C11Z-CN:1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、製品名「キュアゾール C11Z-CN」、四国化成工業社製
AGG50:平均粒子径15~30μmの造粒窒化ホウ素、製品名「Agglomerates50」、スリーエムジャパン社製
AO-509:平均粒子径10μmである球状アルミナ、製品名「アドマファイン AO-509」、アドマテックス社製
C20:平均粒子径2.3μmであるベーマイト粒子、製品名「ベーマイト C20」、大明化学工業社製
【0069】
<ブロックポリマーの製造>
(製造例1)ブロックポリマー(C-1)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、BPADAを100.0部、BAPPを38.3部、KF-8010を80.1部、DMFを510部仕込み、窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器を150℃に加熱し、酸価が5mgKOH/g未満になるまで反応させて、ポリイミドユニットを得た。
次いで、80℃まで冷却し、2-アミノエタンチオールを0.89部加え、80℃で5時間反応させることで、ポリイミドプレポリマーを得た。
次いで、室温に戻した上記ポリイミドプレポリマーにMMAを84.6部、MAAを9.4部、DMFを221部加え均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。そこに重合開始剤としてAIBN0.1部を30分ごとに13回分割して加え、重合開始剤添加後にさらに2時間反応させてエチレン性不飽和単量体の重合体ユニットを形成し、固形分濃度が30%となるようにDMFを加え、ブロックポリマー(C-1)溶液を得た。ブロックポリマー(C-1)の数平均分子量(Mn)は50,000、重量平均分子量(Mw)、は98,000であった。
【0070】
(製造例2~38)ブロックポリマー(C-2)~(C-38)溶液
表1又は表2に示す配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、ブロックポリマー(C-2)~(C-38)溶液を得た。
【0071】
(比較製造例1)比較用樹脂(H-1)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、BPADAを100.0部、BAPPを38.3部、KF-8010を80.1部、DMFを510部仕込み、窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器を150℃に加熱し、酸価が5mgKOH/g未満になるまで反応させた後、固形分濃度が30%となるようにDMFを加え、ポリイミドユニットである比較用樹脂(H-1)溶液を得た。
【0072】
(比較製造例2)比較用樹脂(H-2)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、MMA135.0部、MAA15.0部、DMF350部を加え均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。そこに重合開始剤としてAIBN0.1部を30分ごとに13回分割して加え、重合開始剤添加後にさらに2時間反応させた。固形分濃度が30%となるようにDMFを加え、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニットである比較用樹脂(H-2)溶液を得た。
【0073】
(比較製造例3)比較用樹脂(H-3)溶液
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、BPADAを100.0部、BAPPを38.3部、KF-8010を80.1部、DMFを510部仕込み、窒素ガスで置換した。撹拌しながら反応容器を150℃に加熱し、酸価が5mgKOH/g未満になるまで反応させて、ポリイミドユニットを得た。
次いで、80℃まで冷却し、2-アミノエタンチオールを0.89部加え、80℃で5時間反応させることで、ポリイミドプレポリマーを得た。
次いで、室温に戻した上記ポリイミドプレポリマーにMMAを94.0部、DMFを221部加え均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。そこに重合開始剤としてAIBN0.1部を30分ごとに13回分割して加え、重合開始剤添加後にさらに2時間反応させてエチレン性不飽和単量体の重合体ユニットを形成し、固形分濃度が30%となるようにDMFを加え、ポリイミドユニットと、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(b1)に由来する構成単位を有しないエチレン性不飽和単量体の重合体ユニットと、が連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマーである比較用樹脂(H-3)溶液を得た。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
<硬化性組成物の製造>
[実施例1]
固形分濃度を30%にしたブロックポリマー(C-1)溶液333.3部(ブロックポリマーとして100.0部)、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物(D)としてJER828USを100.0部、硬化触媒としてC11Z-CNを3.6部、フィラー(E)としてAGG50を690.0部加えて、ホモディスパー型撹拌機を用いて混錬した。混錬の際、ホモディスパー型撹拌機が回転し難い場合は適宜溶剤(DMF)で希釈した。
得られた混錬液を剥離フィルム(PET-38 GS、リンテック社製)上に、乾燥後の厚みが200μmとなるようにドクターブレードを用いて塗布し、100℃減圧下で乾燥し、剥離フィルムを剥がして、シート状の硬化性組成物を得た。
【0078】
[実施例2~46、比較例1~6]
表4~7に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~46、比較例1~6のシート状の硬化性組成物を得た。比較例2と比較例5は、フィラー(E)が分散しなかったため、硬化性組成物を得ることができなかった。
【0079】
<硬化性組成物の評価>
得られたシート状の硬化性組成物(以下、シートとも言う)を用いて以下の評価を行った。結果を表4~7に示す。
【0080】
[接着試験]
得られたシートを10.0mm×25.0mmのサイズに切り出し、切り出したシートを2枚の銅基材(寸法:2.0mm×25mm×100mm)の間に挟み、プレス機を用いて180℃、プレス圧5MPaの条件下で1時間プレスして接着させ、試験片を得た。試験片を温度23℃、相対湿度50%の条件下、引張試験機を使用して引っ張り、2枚の銅基材間のせん断接着力(MPa)を測定し、以下の基準で判定した。せん断接着力の数値が大きいものほど優れており、実用レベルはB以上である。
(評価基準)
S:せん断接着力が10.0MPa以上(非常に良好)
A:せん断接着力が7.0MPa以上、10.0MPa未満(良好)
B:せん断接着力が4.0MPa以上、7.0MPa未満(使用可能)
C:せん断接着力が4.0MPa未満(使用不可)
【0081】
[冷熱サイクル試験]
得られたシートを10.0mm×25.0mmのサイズに切り出し、切り出したシートを銅基材(寸法:2.0mm×25mm×100mm)とアルミニウム基材(寸法:2.0mm×25mm×100mm)との間に挟み、プレス機を用いて180℃、プレス圧5MPaの条件下で1時間プレスして接着させ、試験片を得た。試験片を冷熱サイクル試験機(タバイ・エスペック社製)内に静置し、-40℃で15分間、150℃で15分間を1サイクルとして1000サイクル実施した。冷熱試験後の試験片を温度23℃、相対湿度50%の条件下、引張試験機を使用して引っ張り、銅基材とアルミニウム基材との間のせん断接着力(MPa)を測定し、以下の基準で判定した。せん断接着力の数値が大きいものほど優れており、実用レベルはB以上である。
(評価基準)
S:せん断接着力が5.0MPa以上(非常に良好)
A:せん断接着力が3.5MPa以上、5.0MPa未満(良好)
B:せん断接着力が2.0MPa以上、3.5MPa未満(使用可能)
C:せん断接着力が2.0MPa未満(使用不可)
【0082】
[耐熱試験]
得られたシートを5mm幅の短冊状に切り取って試験片とし、180℃のオーブンに1000時間静置した。180℃1000時間の耐熱性試験前後の試験片について、DVA-200/L2(アイティー計測制御株式会社)を用いて、動的粘弾性を測定した。動的粘弾性の測定条件は以下のとおりである。tanδピークトップの温度を用いて、耐熱性試験前後におけるtanδピークトップの温度変化(℃)を算出し、以下の基準で判定した。耐熱性試験前後でtanδの温度が変化していない、若しくは温度変化が小さいほど優れており、実用レベルはB以上である。
≪動的粘弾性の測定条件≫
測定モード: 引張モード
周波数:10Hz
温度範囲:-80℃~測定限界まで
昇温条件:10℃/min
(評価基準)
S:tanδピークトップの温度変化が20℃未満(非常に良好)
A:tanδピークトップの温度変化が20℃以上、35℃未満(良好)
B:tanδピークトップの温度変化が35℃以上、50℃未満(使用可能)
C:tanδピークトップの温度変化が50℃以上(使用不可)
【0083】
[熱伝導試験]
得られたシートを、10mm角に切り出してグラファイトスプレーにて黒化処理した後、キセノンフラッシュ法(NETZSCH社製)を用いて熱拡散率を評価した。この値と、アルキメデス法で測定した密度と、DSC(PerkinElmer社製)で測定した比熱との積から、硬化物の熱伝導率を求めた。熱伝導率の値が大きいものほど優れており、実用レベルはB以上である。
(耐熱性の評価基準)
S:熱伝導率が10W/m・K以上(非常に良好)
A:熱伝導率が6W/m・K以上、10W/m・K未満(良好)
B:熱伝導率が2W/m・K以上、6W/m・K未満(使用可能)
C:熱伝導率が2W/m・K未満(使用不可)
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
表4~表7の評価結果によれば、本発明の硬化性組成物は、高い配合比でフィラーを含む場合において、高い接着強度を有し、柔軟性に優れるため良好な冷熱サイクル性を示した。さらに、本発明の硬化性組成物は、高温環境下においても接着強度を維持可能な優れた耐熱性を有していた。また本発明の硬化性組成物は、熱伝導性フィラーを高い配合比で含むことができ、優れた熱伝導性を示した。