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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】樹脂シート、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20250107BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20250107BHJP
   C08F 283/00 20060101ALI20250107BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20250107BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20250107BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C08G59/42
B32B27/38
C08F283/00
C08F293/00
C08G18/38 057
C08G18/38 076
C08J5/18 CFC
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020194273
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083041
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
(72)【発明者】
【氏名】方田 大遥
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-094513(JP,A)
【文献】特開平09-025324(JP,A)
【文献】特開2020-019853(JP,A)
【文献】特開2020-070316(JP,A)
【文献】特開平11-269247(JP,A)
【文献】特開2000-178338(JP,A)
【文献】特開2023-060417(JP,A)
【文献】特開2020-038942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/42
B32B 27/38
C08F 283/00
C08F 293/00
C08G 18/38
C08J 5/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン・アクリル複合樹脂、及び架橋剤を含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、
前記ウレタン・アクリル複合樹脂が、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結してなる樹脂であり、
前記(メタ)アクリルユニット(B)が、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)由来の構成単位と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)由来の構成単位(但し(b1)由来の構成単位を除く)と、を有し、
前記結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)が、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、
前記連鎖移動剤残基が、分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基とを有する化合物に由来するものである、樹脂シート。
【請求項2】
前記ウレタン・アクリル複合樹脂が、ウレタンユニット(A)を、ウレタン・アクリル複合樹脂の質量を基準として、30~70質量%の範囲で含む、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
電子デバイスの封止用である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
請求項1~いずれか1項に記載の樹脂シートと剥離材とを有する積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸部の被覆性に優れ、高い柔軟性と耐熱性を有する樹脂シート、及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転支援や低燃費化の観点から、電子制御技術が数多く取り入れられており、それに伴い、電子制御ユニットが大型化し搭載数も増加している。このため、車両重量の増加や設置スペースの不足が課題となっており、電子制御ユニットの小型化が望まれている。
【0003】
一方、電子制御ユニットに搭載されるICチップ等の電子部品を搭載した電子回路基板は、水や埃などの外部環境の変化から基板を保護する目的で、一般に封止樹脂によって封止されている。その封止方法としては、従来からポッティング法、ディッピング法、コーティング法、スプレー法など様々な手法が用いられているが、これらの方法では、厚塗りが必要で十分な小型化が困難であるという課題がある。また、封止層を薄膜化できたとしても、材料のロス発生や、煩雑な作業のため工程時間が長くなるという課題があった。
【0004】
この様な課題に対し、例えば特許文献1及び2には、エポキシ樹脂、硬化剤、無機フィラー、難燃剤からなる樹脂シートを熱により自重で軟化させて電子部品の凹凸を被覆し、そのまま硬化させ封止膜を形成する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では電子回路基板の封止工程を簡素化できるものの、流動性を抑制するために無機フィラーを高充填すると架橋形成が不十分となり耐熱性が失われ、無機フィラーの充填量を低減するとエポキシ樹脂の流動性が高すぎるため樹脂が凸部を十分に被覆できず、流動性と耐熱性との両立が困難である。また硬化後の塗膜が硬く脆いため、ヒートサイクルを繰り返すと、基板からの剥がれ、及びクラックの発生や、基板、電子部品、及び半田接合部に余分なストレスが加わることで、短絡、断線、電流漏れ等が起こり、機器の動作不良を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-246596号公報
【文献】特開2012-054363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、凹凸部の被覆性に優れ、高い柔軟性と耐熱性を有する、電子回路基板を簡便に封止できる樹脂シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、結晶性(メタ)アクリル単量体由来の構成単位と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体由来の構成単位とを有するウレタン・アクリル複合樹脂、及び架橋剤を含む樹脂組成物から形成される樹脂シートが、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
本発明の一態様に係る樹脂シートは、ウレタン・アクリル複合樹脂、及び架橋剤を含有する樹脂組成物から形成される樹脂シートであって、ウレタン・アクリル複合樹脂が、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結してなる樹脂であり、(メタ)アクリルユニット(B)が、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)由来の構成単位と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)由来の構成単位(但し(b1)由来の構成単位を除く)と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の他の一態様に係る樹脂シートは、上記結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)が、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであることを特徴とする。
【0011】
本発明の他の一態様に係る樹脂シートは、上記ウレタン・アクリル複合樹脂が、ウレタンユニット(A)を、ウレタン・アクリル複合樹脂の質量を基準として、30~70質量%の範囲で含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の他の一態様に係る樹脂シートは、電子デバイスの封止用であることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の一態様に係る積層体は、上記樹脂シートと剥離材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、凹凸部の被覆性に優れ、高い柔軟性と耐熱性を有する、電子回路基板を低温短時間で簡便に封止できる樹脂シートを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、ウレタンユニット(A)と(メタ)アクリルユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂、及び架橋剤を含有する樹脂組成物から形成され、(メタ)アクリルユニット(B)が、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)由来の構成単位と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)由来の構成単位(但し(b1)由来の構成単位を除く)とを有することを特徴とする。
このような構成とすることで、柔軟なウレタン部位と、自己集合性を有するアクリル部位とが、ミクロ相分離構造を形成し、硬化前であっても結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)の結晶化効果により常温で固体形状を保ち、一方で結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)の結晶化温度を20~40℃超えた比較的低い温度では、ウレタンユニット(A)由来の凝集力により一定の凝集力を保ちながらも、結晶化効果の解消により軟化して、速やかに凹凸に追従する。そして架橋後は、ウレタン部位による優れた伸長性及び密着性と、アクリル部位の架橋構造による優れた耐熱性とを発揮する。これにより、本発明の樹脂シートは、80℃1分間程度の低温短時間の条件において、凹凸部の被覆性に優れ、かつ高い柔軟性と耐熱性を発揮することができる。
したがって、本発明の樹脂シートは、各種電子回路基板、すなわち、リジット基板、FPC基板など各種基板の保護に好適に用いられる。
なお、本明細書における「連鎖移動剤残基」とは、連鎖移動剤に由来するものとして識別することのできる複合樹脂の部分構造を意味し、「結晶性」を有するとは、融点が30~100℃の範囲であり、且つ示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを意味する。
【0016】
<ウレタン・アクリル複合樹脂>
本発明におけるウレタン・アクリル複合樹脂は、ウレタンユニット(A)、及び、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)由来の構成単位と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)由来の構成単位(但し(b1)由来の構成単位を除く)と、を有する(メタ)アクリルユニット(B)が連鎖移動剤残基により連結した構造であればよく、その製造方法は制限されないが、好ましくは下記の方法で製造することができる。
まず、ポリオール、及びポリイソシアネートを反応させて得られる、両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを形成する(以下、工程1)。
次いで、連鎖移動剤を添加し、ウレタンプレポリマーの両末端に連鎖移動剤残基を有するウレタンユニット(A)を合成する(以下、工程2)。
その後、得られたウレタンユニット(A)が有する連鎖移動剤残基を用いて、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)由来の構成単位と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)由来の構成単位(但し(b1)由来の構成単位を除く)と、を含むエチレン性不飽和単量体を連鎖移動重合して、エチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)を形成する(以下、工程3)。
このようにして、ウレタンユニット(A)とエチレン性不飽和単量体の重合体ユニット(B)とが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂を得ることができる。
これらの反応は全て、溶媒を用いて行ってもよいし溶媒を使用せずに行ってもよい。また、溶媒を用いる場合は、反応の途中段階又は反応終了後に、減圧下又は常圧下で溶媒を除去してもよい。
【0017】
<ウレタンユニット(A)>
まず、ウレタン・アクリル複合樹脂のウレタンユニット(A)について以下に述べる。
本発明におけるウレタン・アクリル複合樹脂は、ポリオールとポリイソシアネートとを、無溶剤又は溶剤中で反応させて形成することができる。ウレタンユニットは柔軟であり、基材密着性に優れるため、優れた被覆性を発揮することができる。
【0018】
[ポリオール]
ウレタンユニット(A)を構成するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、植物油系ポリオール、アクリルポリオールを含むその他ポリオール、又はこれらの複合体が挙げられる。
これらポリオールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールは、水酸基とエーテル結合とを分子内に各々2つ以上有する化合物であればよく、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
また、ポリエーテルポリオールとしては、ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールあるいはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類等が挙げられる。
【0020】
さらにポリエーテルポリオールとしては、例えば、低分子ポリオール、脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類、アルカノールアミン類、又はビスフェノール類のような少なくとも2個以上の活性水素基を有する化合物を出発原料として、これに酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン、若しくはポリオキシテトラメチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオールが挙げられる。
【0021】
上記2個以上の活性水素基を有する化合物の内、低分子ポリオールとしては、2官能の低分子ポリオール、3官能以上の低分子ポリオールが挙げられる。
【0022】
上記2官能の低分子ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールB、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0023】
上記3官能の低分子ポリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ブタントリオール、トリメチロールブテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールノネン、トリメチロールデセン、トリメチロールウンデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、トリメチロールヘキセン、1,2,3-オクタントリオール、1,3,7-オクタントリオール、3,7-ジメチル-1,2,3-オクタントリオール、1,1,1-、1,1,1-トリメチロールデカン、1,2,10-デカントリオール、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-seA-ブタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ペンタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ノナン、1,1,1-トリメチロール-tert-トリデカン、1,1,1-トリメチロール-tert-ヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゼン-1,3,5-トリオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、スチルベン-3,4’、5-トリオール、シュークロース、イノシトール、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、サッカロース、セルロース、キシリトールが挙げられる。
【0024】
2個以上の活性水素基を有する化合物の内、脂肪族アミン化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパンが挙げられる。芳香族アミン化合物類としては、例えば、トルエンジアミン、ジフェニルメタンー4,4-ジアミンが挙げられる。アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミンが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールFが挙げられる。
【0025】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールと二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。
【0026】
二塩基酸成分としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸、及びそれらの無水物が挙げられる。
【0027】
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類等の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0028】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールと、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物と、の反応生成物が挙げられる。
上記ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。上記アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート等が挙げられる。上記ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0029】
(ポリオレフィン系ポリオール)
ポリオレフィン系ポリオールとしては、例えば、水酸基含有ポリブタジエン、水添した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水添した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレンが挙げられる。
【0030】
(植物油系ポリオール)
植物油系ポリオールとしては、例えば、植物由来のひまし油、ダイマー酸、又は大豆油を原料としたポリオールが挙げられる。
【0031】
これらのポリオールの数平均分子量は、好ましくは500以上、5,000未満であり、より好ましくは700以上、3,500未満である。
【0032】
さらに、ウレタン結合濃度の調節や各種官能基導入を目的として、上述の低分子ポリオール、脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類を併用することができる。
【0033】
[ポリイソシアネート]
ウレタンユニット(A)を構成するポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族、脂肪族、又は脂環式のポリイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアナート、p-テトラメチルキシレンジイソシアナート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0036】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが挙げられる。
【0037】
ポリオールとポリイソシアネートとの反応は、好ましくは無溶剤下で、公知のウレタン化反応を用いて行うことができ、ポリイソシアネートを過剰にすることで、両末端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを得ることができる。反応時のイソシアナト基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは1.05~2.00、より好ましくは1.10~1.50である。
ウレタン化反応では、反応性を調整する目的で触媒を用いてもよい。
【0038】
触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒等が使用できる。金属系触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、チタンエチルアセテート、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫が挙げられる。アミン系触媒としては、例えば、テトラメチルブタンジアミン等の3級アミンが挙げられる。触媒の配合量は、好ましくはポリオールの質量を基準として、0.05~1モル%の範囲である。
【0039】
<連鎖移動剤>
本発明における連鎖移動剤としては、特に制限されないが、好ましくはスルファニル基を有する連鎖移動剤である。スルファニル基を有する連鎖移動剤としては、分子内にイソシアナト基と反応し得る官能基とスルファニル基とをそれぞれ有するものが好適に用いられる。当該連鎖移動剤を用いると、ウレタンプレポリマーにおける末端イソシアナト基と、連鎖移動剤におけるイソシアナト基と反応しうる官能基とが反応し、両末端にスルファニル基を有するウレタンユニット(A)を形成することができる。連鎖移動剤は、公知の連鎖移動剤から単独又は2種以上を併用して用いることができる。
【0040】
上記イソシアナト基と反応しうる官能基としては、水酸基又はアミノ基が挙げられるが、反応性の観点から好ましくはアミノ基である。アミノ基はスルファニル基よりも反応性が高いため、ウレタンプレポリマーの末端イソシアナト基と優先的に反応してウレア結合を形成し、ウレタンユニット(A)の末端に効率的にスルファニル基を導入することができる。このような連鎖移動剤としてより好ましくは、分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基とを有する化合物である。
【0041】
分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基とを有する化合物としては、例えば、2-アミノエタンチオール、3-アミノプロピル-1-チオール、1-アミノプロピル-2-チオール、4-アミノ-1-ブタンチオール等のアミノアルカンチオール類;2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール等のアミノベンゼンチオール類が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアミノアルカンチオール類であり、より好ましくは2-アミノエタンチオールである。
【0042】
[ウレタンユニット(A)の含有量]
本発明におけるウレタン・アクリル複合樹脂は、ウレタンユニット(A)を、ウレタン・アクリル複合樹脂の質量を基準として、好ましくは30~70質量%の範囲で含むものであり、より好ましくは35~65質量%の範囲で含むものである。ウレタンユニット(A)の含有率が30~70質量%であると、凹凸被覆性と、硬化膜の柔軟性と耐熱性に優れるため好ましい。
【0043】
ウレタンユニット(A)の重量平均分子量は、特に制限されず、好ましくは3,000~200,000の範囲である。3,000以上であると接着力に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易となる。
【0044】
<(メタ)アクリルユニット(B)>
本発明における(メタ)アクリルユニット(B)は、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)由来の構成単位と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)由来の構成単位(但し(b1)由来の構成単位を除く)とを有するものであり、詳細には、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)と、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)(但し(b1)を除く)とを含むエチレン性不飽和単量体の重合体である。具体的には、工程2で得られた両末端に連鎖移動剤残基を有するウレタンユニット(A)、及び、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)と架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)(但し(b1)を除く)とを含むエチレン性不飽和単量体を、重合開始剤の存在下に重合させることで、ウレタンユニット(A)と、(メタ)アクリルユニット(B)とが、連鎖移動剤残基により連結したブロックポリマーであるウレタン・アクリル複合樹脂を得ることができる。
【0045】
結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)由来の構成単位により、(メタ)アクリルユニット(B)が室温で結晶化することで、ウレタン・アクリル複合樹脂の凝集力が高まり、未硬化時でもシート形状を保つことができる。一方で、結晶化温度を超えると凝集力が直ちに解消され、樹脂シートが軟化し、電子回路基板の凹凸に追従して被膜を形成する。さらに、架橋剤で(メタ)アクリルユニット(B)を架橋することで、得られる硬化膜は、防水性、防汚性、耐熱性を備えた強靭な膜となり、電子回路基板を封止することができる。
【0046】
[結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)]
結晶性(メタ)アクリル単量体としては、上述の「結晶性」を有する(メタ)アクリル単量体であれば特に制限されず、例えば、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを用いることができる。このような炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレートが挙げられる。結晶性の観点から、好ましくは、炭素数18以上の直鎖状アルキル基を有するものである。
【0047】
[結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)の含有率]
結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)の含有率は、(メタ)アクリルユニット(B)を構成する単量体の合計質量を基準として、好ましくは50~95質量%の範囲であり、より好ましくは55~90質量%の範囲である。結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)の含有率が50質量%以上であると、凹凸被覆性に優れ、95質量%以下であると、硬化膜の柔軟性と耐熱性に優れる。
【0048】
[架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)(但し(b1)を除く)]
架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)は、後述の架橋剤と反応し得る架橋性基を分子内に有するものであれば特に制限されない。そのような架橋性基としては、例えば、水酸基、エポキシ基、カルボキシ基、イソシアナト基及びそのブロック体が挙げられる。
【0049】
水酸基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート又はこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1~5)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-4,5-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ラクトン変性(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシルが挙げられる。
【0051】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、α-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、p-ビニル安息香酸が挙げられる。
【0052】
イソシアナト基を有する(メタ)アクリレート単量体及びそのブロック体としては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート、1,1-(ビス(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、m-(メタ)アクリロイルフェニルイソシアネート、α,α‐ジメチル‐4‐イソプロペニルベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0053】
[架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)の含有率]
架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)の含有率は、(メタ)アクリルユニット(B)を構成する単量体の合計質量を基準として、好ましくは5~35質量%の範囲である。架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)の含有率が5~35質量%であると、凹凸被覆性と、硬化膜の柔軟性と耐熱性に優れる。
【0054】
[その他単量体]
(メタ)アクリルユニット(B)形成に用いられる、単量体(b1)及び(b2)以外のその他単量体としては、単量体(b1)及び(b2)と共重合可能なものであれば特に制限されず、公知のエチレン性不飽和単量体から適宜選択することができる。
このようなその他エチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有する(メタ)アクリレート類;スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル等のビニル類;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジベンジル(メタ)アクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N-メチルN-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド等の窒素原子を有する(メタ)アクリレート類;が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
[重合開始剤]
重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物や有機過酸化物を用いることができる。
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサエート、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリルユニット(B)を形成するエチレン性不飽和単量体の合計質量を基準として、好ましくは0.001~15質量%である。0.001~15質量%の範囲であると、効果的に連鎖移動重合が進行するため好ましい。
【0057】
[(メタ)アクリルユニット(B)の重量平均分子量]
(メタ)アクリルユニット(B)の重量平均分子量は、特に制限されず、好ましくは2,000~200,000である。2,000以上であると凹凸被覆性に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0058】
[ウレタン・アクリル複合樹脂の重量平均分子量]
ウレタン・アクリル複合樹脂の重量平均分子量は、特に制限されず、好ましくは5,000~300,000の範囲であり、より好ましくは10,000~100,000の範囲である。5,000以上であると凹凸被覆性に優れ、300,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0059】
<溶媒>
ウレタン・アクリル複合樹脂を製造する際の反応は、溶媒を用いて行ってもよい。これらの溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオールとポリイソシアネートとの反応に用いてもよい溶媒としては、イソシアナト基と反応しないものであれば特に制限されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m-クレゾール、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
ウレタンプレポリマーと連鎖移動剤との反応に用いてもよい溶媒としては、上述の溶媒の他、エタノール、イソプロパノール、ターシャリーブタノール、ダイアセトンアルコール等のアルコール類を用いることができる。
【0060】
<架橋剤>
本発明の樹脂シートは、上述のウレタン・アクリル複合樹脂と架橋剤とを含有する樹脂組成物から形成される。(メタ)アクリル単量体(b2)由来の架橋性基と、架橋剤とが反応し硬化することで、柔軟性及び耐熱性に優れる硬化物を得ることができる。
架橋剤としては、上記架橋性基と反応しうる官能基を分子内に有するものであれば特に制限されず、このような官能基としては、例えば、エポキシ基、酸無水物基、フェノール基、イソシアネナト基及びそのブロック体、アミノ基、水酸基、又はカルボキシ基が挙げられる。架橋剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
エポキシ基を有する架橋剤としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'-テトラグリシジルアミノフェニルメタン、イソシアヌル酸トリグリシジル、トリグリシジル-p-アミノフェノールが挙げられる。
【0062】
酸無水物基を有する架橋剤としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸が挙げられる。
【0063】
フェノール基を有する架橋剤は、モノマー化合物であってよく、ポリマー化合物であってもよい。ポリマー化合物であるフェノール基を有する架橋剤は、単一のモノマーの重合体(ホモポリマー)であってよく、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、フェノール基を有する架橋剤は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
フェノール基を有する架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、4,4’,4”-トリヒドロキシトリフェニルメタン、ナフタレンジオール、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、カリックスアレーン、ノボラック型フェノール樹脂(例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ビスフェノールSノボラック樹脂、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、並びに、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物))、アラルキル型フェノール樹脂(例えば、ザイロック樹脂等のフェノールアラルキル樹脂及びナフトールアラルキル樹脂)、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミン等でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)のような多価フェノール化合物が挙げられる。
【0064】
イソシアナト基を有する架橋剤としては、例えば、上述の[ポリイソシアネート]の項における記載を援用できる。また、イソシアナト基を有する架橋剤としては、上記ポリイソシアネートのビウレット体、ヌレート体、アダクト体、その他縮合体等を用いてもよい。
ビウレット体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体が挙げられる。
ヌレート体としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのヌレート体が挙げられる。
アダクト体としては、例えば、トリメチロールプロパンのヘキサメチレンジイソシアネートアダクト体、トリメチロールプロパンのイソホロンジイソシアネートアダクト体、トルエンジイソシアネートのアダクト体が挙げられる。
その他の縮合体としては、イソシアナト基を有する化合物の多官能体、カルボジイミド変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体が挙げられ、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。
【0065】
イソシアネナト基のブロック体を有する架橋剤としては、上記のイソシアナト基を有する架橋剤を、公知のブロック化剤でブロックしたものが挙げられる。ブロック化剤としては、例えば、フェノール類、アルキルフェノール類、活性メチレン化合物類、オキシム類、ラクタム類、重亜硫酸塩類、イミダゾール類が挙げられる。
【0066】
アミノ基を有する架橋剤としては、例えば、上述の脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類の他、製品名でJEFFAMINE D-230、D-400、D-2000、T-403、T-3000(以上、HUNTSMAN社製)等の2官能以上のポリエーテルアミン類が挙げられる。
【0067】
水酸基を有する架橋剤としては、例えば、上述の(ポリエーテルポリオール)の項における「低分子ポリオール」の記載を援用できる。
【0068】
カルボキシ基を有する架橋剤としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、メチルフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、メチルノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0069】
架橋剤中の官能基と、ウレタン・アクリル複合樹脂中の架橋性基とのモル比(架橋剤中の官能基のモル数/ウレタン・アクリル複合樹脂中の架橋性基のモル数)は、好ましくは0.2~10.0であり、より好ましくは0.5~5.0である。モル比が0.2~10.0であると柔軟性に優れるため好ましい。
【0070】
<樹脂シート>
上述の樹脂組成物をシート状に成型することで本発明の樹脂シートを得ることができる。樹脂シートの製造方法に特に制限されず、例えば、ウレタン・アクリル複合樹脂、架橋剤、及び溶媒を均一に撹拌混合し、樹脂組成物を得た後、ドクターブレード等を用いて剥離フィルム上に塗工し、オーブンで乾燥した後、室温まで冷却して固化させることで製造することができる。オーブンの温度は、通常60℃~100℃の範囲であり、樹脂シートの厚みは、好ましくは100μm~3mmである。
【0071】
[フィラー]
本発明の樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、フィラーを含有してもよい。フィラーとしては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;フェライト等の金属粉末;ガラス繊維、金属繊維等の無機繊維;炭素繊維、アラミド繊維等の有機繊維;窒化アルミ、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、アルミナ、酸化マグネシウム、カーボンナノチューブ、膨張黒鉛等の伝熱性付与剤;ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラスファイバー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー等の無機ウィスカー;タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、モンモリロナイト、グラファイト、軽石、エボ粉、コットンフロック、コルク粉、硫酸バリウム、フッ素樹脂等の充填剤;が挙げられる。フィラーは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0072】
本発明の樹脂シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、硬化促進剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、結晶核剤、難燃化剤、加硫剤、加硫助剤、防菌・防カビ剤、分散剤、着色防止剤、発泡剤、防錆剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0073】
本発明の樹脂シートを用いることで、例えば、以下のようにして電子デバイスの封止を行うことができる。まず、樹脂シートを電子回路基板上に積層させ、60℃~100℃の雰囲気下で30~60秒加熱する。ここで直ちに軟化して自重で容易に電子部品の凹凸に追従し、被覆膜を形成する。次いで、80℃~120℃の雰囲気下で10~60分加熱し、硬化させて封止する。ただし、本発明の樹脂シートによる電子回路基板の封止方法は上記に制限されるものではない。
【0074】
本発明の樹脂シートは、このように封止工程を大幅に簡略化でき、かつ低温で封止できるため、耐熱温度の低い電子回路基板にも適応できる。また、優れた柔軟性と耐熱性を有しており、各種電子回路基板、すなわち、リジット基板、FPC基板などの各種基板の保護に好適に用いられる。
【実施例
【0075】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を表す。
【0076】
<重量平均分子量(Mw)>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、標準ポリスチレンによる換算値として求めた。測定は、GPC装置としてGPC-8020(東ソー社製)、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとしてTSKgelSuperHM-M(東ソー社製)を3本直列に連結し、流速0.6ml/分、注入量10μl、カラム温度40℃の条件で行った。
【0077】
<固形分濃度>
樹脂の固形分濃度は、JISK5601-1-2に準拠し、加熱温度150℃、加熱時間20分間で測定した時の加熱残分を用いた。
【0078】
本明細書における化合物の略称を以下に示す。
<ポリオール>
・T-5651:2官能ポリカーボネートポリオール、数平均分子量1,000、水酸基価113mgKOH/g、商品名「デュラノールT5651」、旭化成社製
・PTG-1000SN;2官能ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1,000、水酸基価112mgKOH/g、保土谷化学工業社製
112mgKOH/g、アデカ社製
<ポリイソシアネート>
・IPDI:イソホロンジイソシアネート
【0079】
<(メタ)アクリル単量体>
・SA:ステアリルアクリレート
・SMA:ステアリルメタクリレート
・VA:ベヘニルアクリレート
・AA:アクリル酸
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
・BMA:ブチルメタクリレート
【0080】
<架橋剤>
・jER630:p-アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、製品名「jER630」、三菱ケミカル社製、エポキシ当量94.3g/eq
・BL3370:脂肪族ブロックイソシアネート、製品名「デスモジュールBL3370」、住化バイエルウレタン社製、固形分濃度70%、NCO含有量8.9%
【0081】
<触媒>
・C11Z-CN:1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、製品名「キュアゾール C11Z-CN」、四国化成工業社製
・DBTDL:ジブチル錫ジラウリレート
【0082】
<ウレタン・アクリル複合樹脂の製造>
(製造例1)
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとして、T-5651を74.9部、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを25.1部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させてウレタンプレポリマーを得た。
次いで、80℃まで冷却し、溶媒としてメチルエチルケトンを11.0部、トルエンを31.7部、連鎖移動剤として2-アミノエタンチオールを5.5部、を加え、75℃で2時間反応させウレタンユニットを得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアナト基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。
次いで、結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)として、SAを135.4部、架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)として、AAを12.3部、その他エチレン性不飽和単量体としてBMAを98.5部と、反応容器内の溶媒の割合が40%となるようにトルエンを加え、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.08部を30分毎に13回分割して加え、重合開始剤の添加後にさらに2時間反応させて(メタ)アクリルユニットを形成した。
トルエンを添加して固形分濃度60%に調整し、製造例1のウレタン・アクリル複合樹脂溶液を得た。
【0083】
(製造例2~15、比較製造例1~2)
表1に示す化合物、及び配合組成に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、製造例2~15及び比較製造例1~2のウレタン・アクリル複合樹脂溶液をそれぞれ得た。
【0084】
得られたウレタン・アクリル複合樹脂の重量平均分子量、ウレタン・アクリル複合樹脂中のウレタンユニット(A)の含有率(%)、(メタ)アクリルユニット(B)中の結晶性(メタ)アクリル単量体(b1)の含有率(%)、(メタ)アクリルユニット(B)中の架橋性基を有する(メタ)アクリル単量体(b2)の含有率を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
(比較製造例3)ウレタン樹脂
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとしてT-5651を100.0部、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート14.9部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.01部を仕込み、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下90℃で5時間反応させ、さらにトルエン76.6部を加えて、比較用のウレタン樹脂溶液を得た。得られたウレタン樹脂の重量平均分子量は8,300、固形分濃度は60%であった。
【0087】
(比較製造例4)アクリル樹脂
窒素ガス導入管、撹拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、SAを137.3部、AAを19.6部、n-ブチルメタクリレートを39.2部、チオグリコール酸2-エチルヘキシル7.3部、トルエン136.0部を加え均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。ここに重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1部を30分毎に13回分割して加え、重合開始剤を全て添加した後、さらに2時間反応させ、比較用のアクリル樹脂溶液を得た。得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は8,900、固形分濃度は60%であった。
【0088】
(比較製造例5)
DER383J(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq、ダウ・ケミカル社製)20部、NC3300(ビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂、エポキシ当量285g/eq、日本化薬社製)80部、ジシアンジアミド4部、U-CAT3502T(芳香族ジメチルウレア、サンアプロ社製)4部、FB-959(球状シリカ、粒径25μm、電気化学工業社製)300部、H42M(水酸化アルミニウム(粒径1.5μm、昭和電工社製)20部、をニーダーに仕込み、75℃で1時間撹拌混合して、比較用の樹脂組成物を得た。
【0089】
(比較製造例6)
DER383J(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量190g/eq、ダウ・ケミカル社製)15部、NC3300(ビフェニル骨格含有多官能型エポキシ樹脂、エポキシ当量285g/eq、日本化薬社製)85部、ジシアンジアミド4部、U-CAT3502T(芳香族ジメチルウレア、サンアプロ社製)4部、FB-959(球状シリカ、粒径25μm、電気化学工業社製)10部、H42M(水酸化アルミニウム(粒径1.5μm、昭和電工社製)20部、をニーダーに仕込み、75℃で1時間撹拌混合して、比較用の樹脂組成物を得た。
【0090】
<樹脂シートの作製>
[実施例1]
製造例1で得られたウレタン・アクリル複合樹脂溶液を10.0部、架橋剤としてjER630を0.3部、触媒としてC11Z-CNを0.1部、テトラヒドロフラン2.4部、を室温で均一に撹拌混合し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を、乾燥後の厚みが300μmとなるように剥離フィルム上に塗布し、80℃の熱オーブンで5分間乾燥し、冷却後に剥離フィルムを除去して、樹脂シートを作製した。
【0091】
[実施例2~15及び比較例1~5]
表2に示す配合組成に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~15、及び比較例1~5の樹脂シートを作製した。なお、比較例1の樹脂シートは、粘性が高く、剥離フィルムの除去が困難であり、樹脂シートを作製できなかった。
【0092】
[比較例6~7]
表2に示す樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例6~7の樹脂シートを作製した。
【0093】
<樹脂シートの評価>
得られた樹脂シートについて、以下の試験を行った。判定結果を表2に記載した。樹脂シートを作製できなかった比較例1については、以下の評価を実施しなかった。
【0094】
[被覆性]
縦10mm、横10mm、厚み2mmのチップをFR-4基板上に設置したものを用意した。その上に、縦20mm、横20mmに切り出した樹脂シートをのせ、80℃の熱オーブンで1分間軟化させ、チップの凸角部の被覆性、及びチップ側面と基板との接点部分の被覆性を評価し、以下の基準で判定した。
【0095】
(凸角部の被覆性の評価基準)
○ :被覆部の厚みが20μm以上(良好)
△ :被覆部の厚みが20μm未満だが、チップが剥き出しの箇所はない(使用可)
× :チップが剥き出しの箇所がある(使用不可)
【0096】
(接点部分の被覆性の評価基準)
○ :接点部分が樹脂シートで完全に覆われている(良好)
△ :樹脂シートとの間に、僅かに空隙がある(使用可)
× :樹脂シートとの間に、空隙がある(使用不可)
【0097】
[柔軟性]
樹脂シートを5mm幅の短冊状に切り抜き、評価用の試験片を作製した。この試験片を用いて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断伸度(%)を測定し、以下の基準で判定した。
【0098】
(柔軟性の評価基準)
○ :破断伸度が、100%以上(良好)
△ :破断伸度が、50%以上、100%未満(使用可)
× :破断伸度が、50%未満(使用不可)
【0099】
[耐熱性]
上記被覆性評価後の試験片を、120℃の環境下で500時間静置した後、凸角部の被覆厚みを評価した。耐熱試験前後の厚み変化より、以下の基準で判定した。なお、耐熱試験前の凸角部の被覆性が×判定のものについては、耐熱性評価を実施しなかった。
【0100】
(耐熱性の評価基準)
○ :厚みの変化率が、20%未満(良好)
△ :厚みの変化率が、20%以上、35%未満(使用可)
× :厚みの変化率が、35%以上(使用不可)
【0101】
【表2】
【0102】
本発明の樹脂シートは、被覆性、柔軟性、耐熱性のいずれにおいても良好な結果が得られた。一方で、比較例の接着剤は、被覆性、柔軟性、耐熱性の一部又は全てが、実施例よりも劣る結果であった。