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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】画像検査装置、及び画像検査プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20250107BHJP
【FI】
G06T7/00 610C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020198468
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086454
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 里奈
(72)【発明者】
【氏名】浜 大悟
【審査官】菊池 伸郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-330024(JP,A)
【文献】特開2019-164033(JP,A)
【文献】特許第6379410(JP,B1)
【文献】特開2019-100911(JP,A)
【文献】特開2005-208847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
G06T 1/00
H04N 1/04 - 1/207
H04N 1/387 - 1/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
印刷画像を読み取った読み取り画像と前記印刷画像の本来の形状を示す基準画像を、それぞれ同じ形状の複数の領域に分割し、
領域内における前記基準画像の輪郭線の向きに応じて、分割した前記基準画像の領域の各々に対して領域の移動方向を設定し、
前記読み取り画像と前記基準画像の対応する領域毎に、前記基準画像の領域を領域に設定された移動方向に移動して、前記読み取り画像と前記基準画像のずれを検査する
画像検査装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、領域内における前記基準画像のすべての輪郭線の向きが一方向に向いている場合、領域の移動方向を前記一方向と交差する方向に設定する
請求項記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、領域内における前記基準画像に輪郭線が含まれない場合、領域の移動方向を何れの方向にも対応付けないように設定し、
前記読み取り画像と前記基準画像のずれの検査に対して、輪郭線が含まれない前記基準画像の領域を用いないようにする
請求項又は請求項記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記基準画像の領域を予め定めた大きさよりも拡張し、拡張した領域の範囲が前記基準画像の他の領域と重複するように前記基準画像を複数の領域に分割する
請求項1~請求項の何れか1項に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、分割した前記基準画像の領域の拡張量を、前記読み取り画像と前記基準画像のずれの傾向を記録した履歴情報を用いて設定する
請求項記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記基準画像における各々の領域の大きさを、領域の位置に対応した前記基準画像の複雑度に応じて変化させる
請求項1~請求項の何れか1項に記載の画像検査装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、領域の位置に対応した前記基準画像の複雑度を、領域の位置に対応した前記基準画像の輪郭線の数によって設定する
請求項記載の画像検査装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記基準画像と加工前の前記読み取り画像との一致度よりも、前記基準画像と加工後の前記読み取り画像との一致度が高くなるように、前記読み取り画像と前記基準画像を複数の領域に分割する前に前記読み取り画像に対して拡大、縮小、及び回転の少なくとも1つの加工を行う
請求項1~請求項の何れか1項に記載の画像検査装置。
【請求項9】
コンピュータに、
印刷画像を読み取った読み取り画像と前記印刷画像の本来の形状を示す基準画像を、それぞれ同じ形状の複数の領域に分割し、
領域内における前記基準画像の輪郭線の向きに応じて、分割した前記基準画像の領域の各々に対して領域の移動方向を設定し、
前記読み取り画像と前記基準画像の対応する領域毎に、前記基準画像の領域を領域に設定された移動方向に移動して、前記読み取り画像と前記基準画像のずれを検査する処理を実行させる
画像検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置、及び画像検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、画像形成装置によって用紙に形成された画像を読み取った読み取り画像を元の基準画像と照合することで検査を行う画像検査装置であって、上記画像全体を複数のブロックに分割して、画像周辺部の複数の領域で第1の位置合わせを行い、その結果に基づいて読み取り画像の各ブロック位置ずれ量を算出し、そのずれ量に応じてずらした読み取り画像のブロックと、基準画像のブロック同士とを更に微小にずらしながら位置合わせを行い、比較照合する検査比較手段を備えた画像検査装置において、上記検査比較手段が、上記画像の中で所定のブロックを選択し、選択したブロックの位置ずれ量を再計算することにより第2の位置合わせを行い、その結果に基づいて上記読み取り画像の各ブロックの位置ずれ量を補正する画像検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-186562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置によって用紙に形成された画像をスキャナー等の光学機器で読み取った読み取り画像は、例えば用紙の位置ずれにより、画像形成装置への入力画像であり当該読み取り画像の元となった基準画像に対してその位置がずれることがある。
【0005】
従来、読み取り画像と基準画像との間にずれが生じているか否かを検査する場合、読み取り画像と基準画像を複数の領域に分割し、各々の領域毎に基準画像の領域をあらゆる方向に移動させながら、対応する読み取り画像の領域に含まれる画像と基準画像の領域に含まれる画像が最も一致する位置を検出して、基準画像の移動量から読み取り画像と基準画像のずれを算出する。
【0006】
しかしながら、こうした検査方法の場合、基準画像の領域を試行錯誤的に移動させながら、対応する読み取り画像の領域に含まれる画像と基準画像の領域に含まれる画像が最も重なり合う位置を検出する必要があるため、検査が終了するまでに時間を要する。
【0007】
本発明は、画像の検査対象である読み取り画像と基準画像を分割した各々の領域毎に、領域の移動方向を設定することなく領域を移動させて読み取り画像と基準画像のずれを検査する場合と比較して、検査に要する時間を短縮することができる画像検査装置、及び画像検査プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る画像検査装置はプロセッサを備え、前記プロセッサは、印刷画像を読み取った読み取り画像と前記印刷画像の本来の形状を示す基準画像を、それぞれ同じ形状の複数の領域に分割し、領域内における前記基準画像の特徴に応じて、分割した前記基準画像の領域の各々に対して領域の移動方向を設定し、前記読み取り画像と前記基準画像の対応する領域毎に、前記基準画像の領域を領域に設定された移動方向に移動して、前記読み取り画像と前記基準画像のずれを検査する。
【0009】
第2態様に係る画像検査装置は、第1態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、領域内における前記基準画像の輪郭線の向きに応じて、分割した前記基準画像の領域の各々に領域の移動方向を設定する。
【0010】
第3態様に係る画像検査装置は、第2態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、領域内における前記基準画像のすべての輪郭線の向きが一方向に向いている場合、領域の移動方向を前記一方向と交差する方向に設定する。
【0011】
第4態様に係る画像検査装置は、第2態様又は第3態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、領域内における前記基準画像に輪郭線が含まれない場合、領域の移動方向を何れの方向にも対応付けないように設定し、前記読み取り画像と前記基準画像のずれの検査に対して、輪郭線が含まれない前記基準画像の領域を用いないようにする。
【0012】
第5態様に係る画像検査装置は、第1態様~第4態様の何れかの態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、前記基準画像の領域を予め定めた大きさよりも拡張し、拡張した領域の範囲が前記基準画像の他の領域と重複するように前記基準画像を複数の領域に分割する。
【0013】
第6態様に係る画像検査装置は、第5態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、分割した前記基準画像の領域の拡張量を、前記読み取り画像と前記基準画像のずれの傾向を記録した履歴情報を用いて設定する。
【0014】
第7態様に係る画像検査装置は、第1態様~第6態様の何れかの態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、前記基準画像における各々の領域の大きさを、領域の位置に対応した前記基準画像の複雑度に応じて変化させる。
【0015】
第8態様に係る画像検査装置は、第7態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、領域の位置に対応した前記基準画像の複雑度を、領域の位置に対応した前記基準画像の輪郭線の数によって設定する。
【0016】
第9態様に係る画像検査装置は、第1態様~第8態様の何れかの態様に係る画像検査装置において、前記プロセッサが、前記基準画像と加工前の前記読み取り画像との一致度よりも、前記基準画像と加工後の前記読み取り画像との一致度が高くなるように、前記読み取り画像と前記基準画像を複数の領域に分割する前に前記読み取り画像に対して拡大、縮小、及び回転の少なくとも1つの加工を行う。
【0017】
第10態様に係る画像検査プログラムは、コンピュータに、印刷画像を読み取った読み取り画像と前記印刷画像の本来の形状を示す基準画像を、それぞれ同じ形状の複数の領域に分割し、領域内における前記基準画像の特徴に応じて、分割した前記基準画像の領域の各々に対して領域の移動方向を設定し、前記読み取り画像と前記基準画像の対応する領域毎に、前記基準画像の領域を領域に設定された移動方向に移動して、前記読み取り画像と前記基準画像のずれを検査する処理を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0018】
第1態様、及び第10態様によれば、画像の検査対象である読み取り画像と基準画像を分割した各々の領域毎に、領域の移動方向を設定することなく領域を移動させて読み取り画像と基準画像のずれを検査する場合と比較して、検査に要する時間を短縮することができる、という効果を有する。
【0019】
第2態様によれば、基準画像の領域に含まれる画像の特徴から、領域毎に移動方向を設定することができる、という効果を有する。
【0020】
第3態様によれば、基準画像の領域に含まれる画像の輪郭線の向きから領域の移動方向を設定することができる、という効果を有する。
【0021】
第4態様によれば、基準画像のすべての領域について対応する読み取り画像の領域とのずれを算出する場合と比較して、検査に要する時間を短縮することができると共に、検査精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0022】
第5態様によれば、基準画像の領域を予め定めた大きさに固定して読み取り画像のずれを検査する場合と比較して、検査精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0023】
第6態様によれば、基準画像の各々の領域における拡張量を同じ値に設定する場合と比較して、検査精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0024】
第7態様によれば、基準画像の各々の領域の大きさを同じ大きさに分割する場合と比較して、検査精度を向上させることができる、という効果を有する。
【0025】
第8態様によれば、基準画像の内容から基準画像の位置に応じた領域の大きさを設定することができる、という効果を有する。
【0026】
第9態様によれば、読み取り画像と基準画像を分割する前に読み取り画像の大きさに関する加工を行わない場合と比較して、検査精度を向上させることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】画像検査装置の機能構成例を示す図である。
図2】読み取り画像の一例を示す図である。
図3】基準画像の一例を示す図である。
図4】分割された読み取り画像と基準画像の一例を示す図である。
図5】基準画像ブロックの移動方向の一例を示す図である。
図6】画像検査装置の電気系統の要部構成例を示す図である。
図7】検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】読み取り画像と基準画像の分割例を示す図である。
図9】基準画像ブロックをカテゴリーに分類する分類例を示す図である。
図10】基準画像ブロックの拡張例を示す図である。
図11】基準画像を異なる大きさの基準画像ブロックに分割した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素及び同じ処理には全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を省略する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る画像検査装置10の機能構成例を示す図である。画像検査装置10は、読み取り画像2と基準画像4のずれを比較して、基準画像4に対する読み取り画像2のずれが許容範囲に収まっているかを検査する。読み取り画像2とは、図示しない画像形成装置によって用紙に印刷された印刷画像、すなわち印刷物をスキャナー等の光学機器で読み取った画像であり、図2に読み取り画像2の一例を示す。また、基準画像4とは、図示しない画像形成装置で印刷された印刷画像の原画像、すなわち読み取り画像2の本来の形状を示す画像である。図3に、図2に示した読み取り画像2に対する基準画像4の一例を示す。
【0030】
なお、読み取り画像2及び基準画像4の各画素の位置は、例えば各々の画像の左上の頂点を原点とするX軸及びY軸で構成された2次元座標で表される。Y軸は読み取り画像2及び基準画像4の縦方向に沿った軸であり、X軸は読み取り画像2及び基準画像4の横方向に沿った軸である。したがって、読み取り画像2及び基準画像4の縦方向を「Y軸方向」と表し、読み取り画像2及び基準画像4の横方向を「X軸方向」と表すことにする。
【0031】
基準画像4に対する読み取り画像2のずれが許容範囲に収まっていない場合には、読み取り画像2に対応した印刷物は不良品であるため、当該印刷物を出荷しないようにする等の処置が行われる。
【0032】
そのため、画像検査装置10は、読み取り画像2を入力として、基準画像4に対する読み取り画像2のずれが許容範囲に収まっているか否かを含んだ検査結果を出力する。
【0033】
こうした画像検査装置10は、入力部11、分割部12、移動方向設定部13、検査部14、及び出力部15の各機能部と、基準画像4を格納するデータ格納DB16を含む。
【0034】
入力部11は、検査対象となる読み取り画像2を受け付け、受け付けた読み取り画像2を分割部12に通知する。
【0035】
分割部12は、入力部11から読み取り画像2を受け付けると、データ格納DB16から読み取り画像2の原画像である基準画像4を取得する。その上で、分割部12は、読み取り画像2と基準画像4を複数の領域に分割する。以降では、分割された複数の領域の各々を「ブロック」という。
【0036】
図4は、分割部12でブロックに分割された読み取り画像2と基準画像4の一例を示す図であり、図4(A)はブロックに分割された基準画像4の一例を示し、図4(B)はブロックに分割された読み取り画像2の一例を示す。
【0037】
分割部12で分割されたブロックの形状や大きさに制約はないが、ここでは一例として、読み取り画像2及び基準画像4はX軸方向及びY軸方向に沿ってそれぞれ格子状に分割されるものとして説明を行う。格子状に分割された各々のブロックの形状は矩形であり、各々のブロックの大きさは同じである。また、ブロックは予め定められた大きさに分割される。
【0038】
なお、基準画像4の各々のブロックを「基準画像ブロック400」と表し、読み取り画像2の各々のブロックを「読み取り画像ブロック200」と表すことにする。読み取り画像2と基準画像4を重ねた場合に同じ位置ある読み取り画像ブロック200と基準画像ブロック400を、「基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200」のように表す。
【0039】
分割部12は、読み取り画像2及び基準画像4を複数のブロックに分割した後、分割が終了したことを移動方向設定部13に通知する。
【0040】
移動方向設定部13は、分割部12からブロックへの分割が終了したとの通知を受け付けると、基準画像ブロック400内の画像、すなわち基準画像ブロック400のブロック画像の特徴に応じて、各々の基準画像ブロック400に対して基準画像ブロック400の移動方向を設定する。
【0041】
移動方向設定部13は、基準画像ブロック400の中心からみて360度何れの方向に対しても基準画像ブロック400が移動できるように基準画像ブロック400の移動方向を設定するのではなく、移動してもよい特定の方向を基準画像ブロック400の移動方向として基準画像ブロック400に設定する。すなわち、基準画像ブロック400の移動方向は制約を受ける。
【0042】
図5は、基準画像ブロック400に対して設定した移動方向の一例を示す図である。図5に示す例では、基準画像ブロック400に対してX軸方向及びY軸方向に沿って移動方向が設定されている。この場合、基準画像ブロック400はX軸方向及びY軸方向に沿った方向には移動できるが、例えばX軸方向との成す角度が45度となる方向には移動できない。
【0043】
移動方向設定部13は、基準画像4から分割された各々の基準画像ブロック400に対して移動方向を設定した後、検査部14に移動方向設定の終了を通知する。
【0044】
検査部14は、移動方向設定部13から移動方向設定の終了を受け付けた場合、例えば基準画像ブロック400毎に基準画像ブロック400の頂点と、当該基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200の頂点とが一致するように基準画像ブロック400と読み取り画像ブロック200を重ね合わせる。このように、基準画像ブロック400と読み取り画像ブロック200の少なくとも1つの頂点が一致するように重ね合わせた位置を、「基準位置」という。
【0045】
検査部14は、この状態から基準画像ブロック400を移動方向設定部13で設定された移動方向に移動させながら、基準画像ブロック400のブロック画像と、読み取り画像ブロック200のブロック画像とが最も重なり合う位置(以降「照合位置」という)を検出する。
【0046】
検査部14は、基準位置から照合位置までの基準画像ブロック400の移動量を画素数で表し、例えば各々の基準画像ブロック400における移動量の平均値が予め定めた基準閾値以上である場合に、読み取り画像2と基準画像4との間にずれが存在すると判定して検査結果を「不合格」に設定する。一方、検査部14は、各々の基準画像ブロック400における移動量の平均値が予め定めた基準閾値未満である場合に、読み取り画像2と基準画像4との間にずれは存在しないと判定して検査結果を「合格」に設定する。検査部14は、読み取り画像2に対する検査結果を出力部15に通知する。
【0047】
出力部15は、検査部14から検査結果を受け付けた場合、受け付けた検査結果を出力する。これにより、読み取り画像2に対応した印刷物が良品であるのか、それとも不良品であるのかが特定される。本実施形態に係る「出力」とは、検査結果を認識可能な状態にならしめることを指し、検査結果を表示する形態の他、検査結果を用紙等の記録媒体に印字する形態、検査結果を音声で通知する形態、検査結果を記憶装置に記憶する形態、及び検査結果を画像検査装置10以外の他の装置(以降、「外部装置」という)に図示しない通信回線を通じて送信する形態が含まれる。
【0048】
データ格納DB16は、基準画像4を格納する。「DB」とは、データベース(Database)の略称であり、基準画像4の記憶、基準画像4の取り出し、及び基準画像4の削除といった基準画像4の管理機能を提供する。
【0049】
こうした画像検査装置10は、例えばコンピュータ20を用いて構成される。
【0050】
図6は、コンピュータ20を用いて画像検査装置10を構成した場合における画像検査装置10の電気系統の要部構成例を示す図である。
【0051】
コンピュータ20は、図1に示した画像検査装置10の各機能部の処理を担うプロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)21、画像検査プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)22、CPU21の一時的な作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)23、不揮発性メモリ24、及び入出力インターフェース(I/O)25を備える。CPU21、ROM22、RAM23、不揮発性メモリ24、及びI/O25はバス26を介して各々接続されている。
【0052】
不揮発性メモリ24は、不揮発性メモリ24に供給される電力が遮断されたとしても、記憶した情報が維持される記憶装置の一例であり、例えば半導体メモリが用いられるがハードディスクを用いてもよい。不揮発性メモリ24は、必ずしもコンピュータ20に内蔵されている必要はなく、例えばメモリカードのようにコンピュータ20に着脱される記憶装置であってもよい。不揮発性メモリ24には、データ格納DB16が構築される。
【0053】
I/O25には、例えば通信ユニット27、入力ユニット28、及び出力ユニット29が接続される。
【0054】
通信ユニット27は図示しない通信回線に接続され、図示しない接続回線に接続される外部装置と通信を行う通信プロトコルを備える。図示しない通信回線には、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)といった公知の通信回線が含まれる。図示しない通信回線は有線であっても無線であってもよい。
【0055】
入力ユニット28は、ユーザからの指示を受け付けてCPU21に通知する装置であり、例えばボタン、タッチパネル、キーボード、ポインティングデバイス、及びマウスが用いられる。画像検査装置10はユーザからの指示を音声で受け付けてもよく、この場合、入力ユニット28としてマイクが用いられる。
【0056】
出力ユニット29は、CPU21によって処理された情報を出力する装置であり、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、及び映像をスクリーンに投影するプロジェクタのような表示デバイスや、スピーカー、文字及び図形を記録媒体に形成する画像形成ユニット、並びに、情報を記憶する記憶デバイスが含まれる。
【0057】
なお、画像検査装置10は、I/O25に接続される図6に例示したすべてのユニットを必ずしも備える必要はなく、状況に応じて必要となるユニットをI/O25に接続すればよい。例えば、画像検査装置10がオフラインで動作する場合、必ずしも通信ユニット27は必要でない。
【0058】
次に、画像検査装置10の動作について詳細に説明する。
【0059】
図7は、画像検査装置10が読み取り画像2を受け付けた場合に、CPU21によって実行される検査処理の流れの一例を示すフローチャートである。検査処理を規定する画像検査プログラムは、例えば画像検査装置10のROM22に予め記憶されている。画像検査装置10のCPU21は、ROM22に記憶される画像検査プログラムを読み込み、検査処理を実行する。
【0060】
ステップS10において、CPU21は、受け付けた読み取り画像2に対応した基準画像4を不揮発性メモリ24から取得する。具体的には、CPU21は、読み取り画像2に付加されている画像IDを参照して、読み取り画像2に対応した基準画像4を不揮発性メモリ24から取得すればよい。
【0061】
なお、CPU21は、不揮発性メモリ24から基準画像4を取得するのではなく、図示しない通信回線を通じて外部装置から基準画像4を取得してもよい。
【0062】
ステップS20において、CPU21は、読み取り画像2及びステップS10で取得した基準画像4を、それぞれ図4に示したような読み取り画像ブロック200と基準画像ブロック400に分割する。
【0063】
図8は、読み取り画像2と基準画像4の分割例を示す図である。図8(A)は図3に示した基準画像4の分割例であり、図8(B)は図2に示した読み取り画像2の分割例である。図8の例では、各々の基準画像ブロック400及び読み取り画像ブロック200が、それぞれ隣り合う基準画像ブロック400及び読み取り画像ブロック200と重複しないように予め定めた大きさで格子状に分割されている。
【0064】
ステップS30において、CPU21は、ステップS20で分割した複数の基準画像ブロック400の中から、まだ選択していない何れか1つの基準画像ブロック400を選択する。説明の便宜上、選択された基準画像ブロック400を「選択基準画像ブロック400」ということにする。
【0065】
ステップS40において、CPU21は、選択基準画像ブロック400からブロック画像のエッジ情報を抽出する。「エッジ」とは、画素値によって表される画素の色情報が隣り合う画素の間で予め定めた閾値以上変化するような境界に位置する画素の集合のことであり、「輪郭線」とも呼ばれる。画素の色情報には、色相、彩度、及び明度の少なくとも1つが用いられる。したがって、線の他、色や明度の境界もエッジとして抽出される。
【0066】
例えば図8(A)において、選択基準画像ブロック400として基準画像ブロック400Aが選択されている場合、基準画像ブロック400AからはX軸方向に沿ったエッジが抽出される。選択基準画像ブロック400として基準画像ブロック400Bが選択されている場合、基準画像ブロック400Bのブロック画像は何れも同じ濃度の塗りつぶしであるためエッジは抽出されない。選択基準画像ブロック400として基準画像ブロック400Cが選択されている場合、基準画像ブロック400Cからは曲線や直線で表されたエッジが抽出される。選択基準画像ブロック400として基準画像ブロック400Dが選択されている場合、基準画像ブロック400DからはY軸方向に沿ったエッジが抽出される。
【0067】
ステップS50において、CPU21は、ステップS40で抽出したエッジ情報に基づいて選択基準画像ブロック400におけるブロック画像のエッジの向きを特定し、選択基準画像ブロック400をエッジの向きに応じたカテゴリーに分類する。
【0068】
図9は、エッジの向きに応じて基準画像ブロック400をカテゴリーに分類する分類例を示す図である。本実施形態では、エッジの向きに応じて基準画像ブロック400を4つのカテゴリーに分類する。
【0069】
具体的には、CPU21は、エッジなしのカテゴリー(「カテゴリー0」という)、エッジの向きがX軸方向成分、及びY軸方向成分からなるカテゴリー(「カテゴリー1」という)、エッジの向きがY軸方向成分のみのカテゴリー(「カテゴリー2」という)、並びに、エッジの向きがX軸方向成分のみのカテゴリー(「カテゴリー3」という)の4つのカテゴリーに基準画像ブロック400を分類する。
【0070】
基準画像ブロック400Bからはエッジが抽出されていないため、CPU21は、基準画像ブロック400Bをカテゴリー0に分類する。
【0071】
基準画像ブロック400Cからは曲線や直線で表されたエッジが抽出されている。曲線はY軸方向成分もX軸方向成分も含むため、CPU21は、基準画像ブロック400Cをカテゴリー1に分類する。
【0072】
基準画像ブロック400DからはY軸方向に沿ったエッジが抽出されているため、CPU21は、基準画像ブロック400Dをカテゴリー2に分類する。
【0073】
基準画像ブロック400AからはX軸方向に沿ったエッジが抽出されているため、CPU21は、基準画像ブロック400Aをカテゴリー3に分類する。
【0074】
ステップS60において、CPU21は、基準画像4から分割された基準画像ブロック400のうち、まだステップS30で選択していない未選択の基準画像ブロック400が存在するか否かを判定する。未選択の基準画像ブロック400が存在する場合にはステップS30に移行して、未選択の基準画像ブロック400の中から何れか1つの基準画像ブロック400を選択する。ステップS60の判定処理で未選択の基準画像ブロック400は存在しないと判定されるまでステップS30~S60の各処理を繰り返し実行することで、CPU21は、基準画像4から分割されたすべての基準画像ブロック400をカテゴリーに分類する。
【0075】
ステップS60の判定処理で未選択の基準画像ブロック400は存在しないと判定された場合、ステップS70に移行する。
【0076】
ステップS70において、CPU21は、エッジの向きに応じて分類したカテゴリー毎に基準画像ブロック400の移動方向を設定する。
【0077】
例えばカテゴリー3に含まれる基準画像ブロック400はX軸方向に沿ったエッジしか含まないため、基準画像ブロック400をX軸方向に移動させても、基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200との間で照合位置を検出することは困難である。
【0078】
したがって、エッジの向きと交差する方向、具体的にはエッジの向きと直交する方向を基準画像ブロック400の移動方向に設定すればよい。すなわち、CPU21は、カテゴリー3に含まれる各々の基準画像ブロック400の移動方向をY軸方向に設定する。
【0079】
同様の理由から、カテゴリー2に含まれる基準画像ブロック400はY軸方向に沿ったエッジしか含まないため、CPU21は、カテゴリー2に含まれる各々の基準画像ブロック400の移動方向を、Y軸と直交するX軸方向に設定する。
【0080】
カテゴリー1に含まれる基準画像ブロック400はX軸方向及びY軸方向に沿ったそれぞれのエッジを含むため、CPU21は、カテゴリー1に含まれる各々の基準画像ブロック400の移動方向を、X軸方向及びY軸方向に設定する。
【0081】
カテゴリー0に含まれる基準画像ブロック400のようにエッジを含まない基準画像ブロック400の場合、そもそも照合位置を検出するための目印となる情報が存在しない。したがって、基準画像ブロック400を何れの方向に移動させても照合位置を検出することは困難である。したがって、CPU21は、カテゴリー0に含まれる各々の基準画像ブロック400に対しては、何れの方向にも移動方向を設定しないようにする。
【0082】
すなわち、基準画像ブロック400に対して設定する移動方向は、あらゆる移動方向の中で最も照合位置を検出しやすい移動方向に制約される。
【0083】
ステップS80において、CPU21は、カテゴリーに分類した基準画像ブロック400の中から、何れか1つの基準画像ブロック400を選択する。
【0084】
ステップS90において、CPU21は、選択基準画像ブロック400にエッジが含まれていないか否か、すなわち選択基準画像ブロック400がカテゴリー0に分類されている基準画像ブロック400であるか否かを判定する。選択基準画像ブロック400にエッジが含まれる場合にはステップS100に移行する。
【0085】
ステップS100において、CPU21は、選択基準画像ブロック400を選択基準画像ブロック400に設定されている移動方向に移動して、選択基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200との照合位置を検出し、選択基準画像ブロック400の移動量から選択基準画像ブロック400と読み取り画像ブロック200とのずれを算出する。照合位置の検出にはパターン認識等の公知の手法を用いればよい。
【0086】
例えば選択基準画像ブロック400がカテゴリー1に分類されている場合、CPU21は、選択基準画像ブロック400をX軸方向及びY軸方向に移動して、対応する読み取り画像ブロック200とのずれを算出する。
【0087】
選択基準画像ブロック400がカテゴリー2に分類されている場合、CPU21は、選択基準画像ブロック400をX軸方向に移動して、対応する読み取り画像ブロック200とのずれを算出する。
【0088】
選択基準画像ブロック400がカテゴリー3に分類されている場合、CPU21は、選択基準画像ブロック400をY軸方向に移動して、対応する読み取り画像ブロック200とのずれを算出する。
【0089】
具体的には、選択基準画像ブロック400が図8(A)の基準画像ブロック400Aの場合、CPU21は、基準画像ブロック400Aに対応する読み取り画像ブロック200である図8(B)に示した読み取り画像ブロック200Aに対して、基準画像ブロック400Aを基準位置からY軸方向に移動し、読み取り画像ブロック200Aとのずれを算出する。
【0090】
選択基準画像ブロック400が図8(A)の基準画像ブロック400Cの場合、CPU21は、基準画像ブロック400Cに対応する読み取り画像ブロック200である図8(B)に示した読み取り画像ブロック200Cに対して、基準画像ブロック400Cを基準位置からX軸方向及びY軸方向に移動し、読み取り画像ブロック200Cとのずれを算出する。
【0091】
選択基準画像ブロック400が図8(A)の基準画像ブロック400Dの場合、CPU21は、基準画像ブロック400Dに対応する読み取り画像ブロック200である図8(B)に示した読み取り画像ブロック200Dに対して、基準画像ブロック400Dを基準位置からX軸方向に移動し、読み取り画像ブロック200Dとのずれを算出する。
【0092】
ステップS110において、CPU21はステップS100で算出した、選択基準画像ブロック400と選択基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200とのずれをRAM23に記憶する。
【0093】
一方、ステップS90の判定処理で選択基準画像ブロック400にエッジが含まれていないと判定された場合、当該選択基準画像ブロック400を用いて対応する読み取り画像ブロック200とのずれを算出することは、エッジが含まれる基準画像ブロック400を用いて対応する読み取り画像ブロック200とのずれを算出する場合と比較して困難になる。
【0094】
したがって、CPU21は、ステップS100及びS110の各処理を実行することなく、ステップS120に移行する。
【0095】
エッジが含まれない基準画像ブロック400を用いて、基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200とのずれを算出しようとした場合、基準画像ブロック400には照合位置を検出するための目印となる情報が存在しないため、エッジを含む基準画像ブロック400を用いて照合位置を検出する場合と比較して照合位置を検出することが困難になる。また、この場合、仮に何らかの公知の手法を用いて照合位置が検出できたとしても、得られた照合位置の検出精度は低くなる。
【0096】
したがって、基準画像ブロック400と読み取り画像ブロック200とのずれの検査にエッジが含まれない基準画像ブロック400を用いないようにすることで、検査時間の短縮及び検査精度の向上が図られる。
【0097】
ステップS120において、CPU21は、カテゴリー分類後の基準画像ブロック400のうち、まだステップS80で選択していない未選択の基準画像ブロック400が存在するか否かを判定する。未選択の基準画像ブロック400が存在する場合にはステップS80に移行して、カテゴリー分類後の未選択の基準画像ブロック400の中から何れか1つの基準画像ブロック400を選択する。ステップS120の判定処理で未選択の基準画像ブロック400は存在しないと判定されるまでステップS80~S120の各処理を繰り返し実行することで、各々の基準画像ブロック400に関して、基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200とのずれが算出される。
【0098】
一方、ステップS120の判定処理で未選択の基準画像ブロック400は存在しないと判定された場合にはステップS130に移行する。
【0099】
ステップS130において、CPU21は、例えばステップS110で基準画像ブロック400毎にRAM23に記憶した、基準画像ブロック400と基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200とのずれの平均値が基準閾値未満である場合には検査結果を「合格」に設定し、当該ずれの平均値が基準閾値以上である場合には検査結果を「不合格」に設定する。そして、CPU21は、読み取り画像2に対応した印刷物の検査結果を出力し、図7に示した検査処理を終了する。
【0100】
このように本実施形態に係る画像検査装置10によれば、基準画像ブロック400に含まれるエッジの向きから基準画像ブロック400の移動方向を設定し、設定した移動方向にのみ基準画像ブロック400を移動させながら照合位置を検出して、基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200とのずれを算出する。したがって、基準画像ブロック400の移動方向を設定することなく、基準画像ブロック400をあらゆる方向に移動させながら照合位置を検出する場合と比較して、検査に要する時間が短縮することになる。
【0101】
なお、上記に示した検査処理では、基準画像ブロック400をエッジの向きに応じて4つのカテゴリーに分類したが、分類するカテゴリーの数に制約はない。例えばX軸方向に対して斜め45度となる方向の成分のみからなるエッジをカテゴリー4に分類するというように、カテゴリーを細分化してもよい。カテゴリー4に分類される基準画像ブロック400の移動方向も他のカテゴリーに分類される基準画像ブロック400と同様に、エッジの向きと直交する方向に設定すればよい。したがって、この場合にはCPU21は、X軸に対して45度の斜め方向に基準画像ブロック400を移動させ、基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200との照合位置を検出することになる。
【0102】
更に言えば、CPU21は、基準画像ブロック400をカテゴリーに分類しなくても、基準画像ブロック400に含まれるエッジの向きと直交する方向をその基準画像ブロック400の移動方向に設定して、設定した移動方向を基準画像ブロック400に対応付けてもよい。
【0103】
また、上記に示した検査処理では、図8(A)の基準画像ブロック400Bはエッジを含まないため、基準画像ブロック400Bと読み取り画像ブロック200Bとのずれは算出されないことになる。しかしながら、読み取り画像2にずれが生じていれば、図8(B)に示したように読み取り画像ブロック200Bにはエッジが含まれることがある。
【0104】
図7のステップS20では、CPU21は、隣り合う基準画像ブロック400と重複しないように基準画像4を分割したが、図10に示すように、基準画像ブロック400Bを予め定めた大きさよりも拡張してやれば、拡張した基準画像ブロック400B(「基準画像ブロック400BB」という)にブロック画像のエッジが含まれ、読み取り画像ブロック200Bとのずれが算出可能になる場合がある。
【0105】
したがって、CPU21は図7のステップS20において、基準画像4を読み取り画像2のずれの度合いに応じて予め定めた大きさよりも拡張した基準画像ブロック400に分割してもよい。
【0106】
CPU21は、基準画像ブロック400の大きさを拡張するか否かの判定、及び、基準画像ブロック400の大きさを拡張すると判定した場合の基準画像ブロック400の拡張量を、これまでの読み取り画像2と基準画像4とのずれの傾向を記録した履歴情報を用いて決定する。例えば同じ種類の複数の印刷物に対する各々の読み取り画像2と基準画像4とのずれの平均値が3画素ある場合、CPU21は、基準画像4を予め定めた大きさよりX軸方向及びY軸方向にそれぞれ3画素拡大した基準画像ブロック400に分割する。拡張したそれぞれの基準画像ブロック400は、拡張した範囲、すなわち3画素分だけ隣り合う基準画像ブロック400と重複することになる。
【0107】
更に、CPU21は、特定の基準画像ブロック400に対してのみ、予め定めた大きさよりも拡張した大きさに分割してもよい。例えば予め定めた大きさに分割するとエッジが含まれない基準画像ブロック400を、何れかのエッジが含まれる大きさまで拡張してもよい。
【0108】
また、CPU21は、基準画像4を予め定めた大きさよりも縮小した基準画像ブロック400に分割してもよい。基準画像ブロック400を予め定めた大きさよりも縮小することで、基準画像ブロック400を予め定めた大きさに分割するよりも1つあたりの基準画像ブロック400に含まれる情報量が少なくなる。したがって、予め定めた大きさの基準画像ブロック400のままで照合位置の検出を行う場合よりも、照合位置の検出が行いやすくなることがある。
【0109】
更に、CPU21は、図7のステップS20において、基準画像4を予め定めた同じ大きさの基準画像ブロック400に分割するのではなく、各々の基準画像ブロック400の大きさを、その基準画像ブロック400の位置における基準画像4の複雑度に応じて変化させてもよい。
【0110】
例えば基準画像4が複雑な箇所ほどエッジが入り組み、読み取り画像ブロック200と基準画像ブロック400との照合位置を検出することが困難になる。したがって、CPU21は、図7のステップS20において、基準画像4が複雑な箇所ほど、その箇所を含む基準画像ブロック400の大きさを小さくすることで、読み取り画像ブロック200と基準画像ブロック400との照合位置の検出を行いやすくする。読み取り画像ブロック200と基準画像ブロック400との照合位置が検出しやすいということは、読み取り画像2と基準画像4とのずれの検査精度の向上につながる。
【0111】
なお、CPU21は、基準画像4の各位置における複雑度を、例えば基準画像4の各位置におけるエッジの数によって設定するが、基準画像4の各位置におけるエッジの数ではなく、例えばエッジの向きのばらつき、すなわち分散値によって設定してもよい。エッジの向きのばらつきが大きい箇所ほど基準画像4が複雑な箇所と考えられるため、CPU21は、当該箇所を含む基準画像ブロック400の大きさが予め定めた大きさより小さくなるように基準画像4を分割する。
【0112】
図11は、図3に示した基準画像4を基準画像4の複雑度に応じて異なる大きさの基準画像ブロック400に分割した一例を示す図である。図11に示すように、含まれるエッジの数が多い位置にある基準画像ブロック400ほど、その大きさが小さく分割される。
【0113】
また、CPU21は、図7のステップS20において、受け付けた読み取り画像2をそのまま読み取り画像ブロック200に分割したが、できるだけ読み取り画像2と基準画像4が重複するように大まかな位置合わせを行った後に読み取り画像2と基準画像4を分割した方が、位置合わせを行う前の読み取り画像2と基準画像4との一致度よりも、読み取り画像2と基準画像4との一致度の方が高くなる。これにより、ステップS100で行う基準画像ブロック400と、基準画像ブロック400に対応する読み取り画像ブロック200とのずれの算出が行いやすくなる。
【0114】
したがって、CPU21は、読み取り画像2が基準画像4にできるだけ一致するように読み取り画像2に対してアフィン変換を行ってから、読み取り画像2と基準画像4をそれぞれ読み取り画像ブロック200と基準画像ブロック400に分割することが好ましい。なお、アフィン変換とは、読み取り画像2に対して拡大、縮小、及び回転といった加工を行う変化であり、読み取り画像2と基準画像4の線形的なずれが補正される。
【0115】
アフィン変換によって、読み取り画像2と基準画像4の線形的なずれが補正されることから、基準画像ブロック400毎に対応する読み取り画像ブロック200に対して基準画像ブロック400を移動させて照合位置を検出することで得られるずれは、読み取り画像2と基準画像4の非線形的なずれということになる。
【0116】
以上、実施形態を用いて画像検査装置10の一態様について説明したが、開示した画像検査装置10の形態は一例であり、画像検査装置10の形態は実施形態に記載の範囲に限定されない。本開示の要旨を逸脱しない範囲で実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も開示の技術的範囲に含まれる。例えば、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、図7に示した検査処理の順序を変更してもよい。
【0117】
また、上記の実施形態において、一例として検査処理をソフトウェアで実現する形態について説明した。しかしながら、図7に示したフローチャートと同等の処理をハードウェアで処理させるようにしてもよい。この場合、検査処理をソフトウェアで実現した場合と比較して処理の高速化が図られる。
【0118】
上記の実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU)や、専用のプロセッサ(例えば GPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0119】
また、上記の実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記の実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0120】
上記の実施形態では、画像検査装置10のROM22に画像検査プログラムが記憶されている例について説明したが、画像検査プログラムの記憶先はROM22に限定されない。本開示の画像検査プログラムは、コンピュータ20で読み取り可能な記憶媒体に記録された形態で提供することも可能である。例えば画像検査プログラムをCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)及びDVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)のような光ディスクに記録した形態で提供してもよい。また、画像検査プログラムを、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカードのような可搬型の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。ROM22、不揮発性メモリ24、CD-ROM、DVD-ROM、USB、及びメモリカードは非一時的(non-transitory)記憶媒体の一例である。
【0121】
更に、画像検査装置10は、通信ユニット27を通じて外部装置から画像検査プログラムをダウンロードし、ダウンロードした画像検査プログラムを、例えば不揮発性メモリ24に記憶してもよい。この場合、画像検査装置10のCPU21は、外部装置からダウンロードした画像検査プログラムを読み込んで検査処理を実行する。
【符号の説明】
【0122】
2 ・・・ 読み取り画像、4 ・・・ 基準画像、10 ・・・ 画像検査装置、11 ・・・ 入力部、12 ・・・ 分割部、13 ・・・ 移動方向設定部、14 ・・・ 検査部、15 ・・・ 出力部、16 ・・・ データ格納DB、20 ・・・ コンピュータ、21 ・・・ CPU、22 ・・・ ROM、23 ・・・ RAM、24 ・・・ 不揮発性メモリ、25 ・・・ I/O、26 ・・・ バス、27 ・・・ 通信ユニット、28 ・・・ 入力ユニット、29 ・・・ 出力ユニット、200(200A、200B、200C、200D) ・・・ 読み取り画像ブロック、400(400A、400B、400C、400D、400BB) ・・・ 基準画像ブロック(選択基準画像ブロック)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11