(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 16/00 20060101AFI20250107BHJP
H02K 7/08 20060101ALI20250107BHJP
F16D 3/06 20060101ALI20250107BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H02K16/00
H02K7/08 B
F16D3/06 A
F16C17/02 Z
(21)【出願番号】P 2021046892
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 和則
(72)【発明者】
【氏名】平尾 基裕
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-061926(JP,A)
【文献】特開2006-105309(JP,A)
【文献】実開昭55-161945(JP,U)
【文献】特開平11-018351(JP,A)
【文献】特開2015-169252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 16/00
H02K 7/08
F16D 3/06
F16C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ステータと前記第1ステータに対して中心軸の軸回り方向に回転可能な第1ロータとを有する第1モータ部と、
第2ステータと前記第2ステータに対して回転可能で前記第1ロータの前記中心軸と同軸に配置される第2ロータとを有する第2モータ部と、
搭載物が取り付けられる出力軸と、前記出力軸に対して前記中心軸の軸線方向の一方側に隣接して設けられ且つ外周面が平滑な軸部と、
前記軸部に対して前記軸線方向の一方側に位置し且つ前記軸線方向に沿って延びるスプライン溝部と、
前記スプライン溝部に対して前記軸線方向の一方側に位置する雄ねじ部と、を有する軸部材と、
前記軸部材の前記スプライン溝部と係合して当該スプライン溝部に沿って前記軸部材を前記軸線方向に案内させ、且つ、前記第1ロータと共に回転して前記軸部材を前記中心軸の軸回り方向に回転可能なスプライン外筒と、
前記軸部材の前記雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が設けられ、前記第2ロータと共に回転して前記軸部材を前記中心軸の軸線方向に移動可能にするナット部材と、
前記軸部材における前記軸部の外周側に位置する筒状の筐体と、
前記筐体の内周に設けられる筒状の無給油ブッシュと、を備え、
前記出力軸は、前記軸部材における前記軸線方向の他方側の端部に位置し、
前記第1モータ部及び前記第2モータ部が駆動していない状態で、前記無給油ブッシュの内周面は、前記軸部の外周面に対して径方向に離隔している、
アクチュエータ。
【請求項2】
前記無給油ブッシュにおける
前記軸線方向の他方側の端は、前記筐体の内周における
前記軸線方向の他方側の端と前記軸線方向で同一位置である、
請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記無給油ブッシュにおける
前記軸線方向の一方側の端は、前記筐体の内周における
前記軸線方向の一方側の端よりも
前記軸線方向の他方側に位置する、
請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記無給油ブッシュにおける
前記軸線方向の一方側の端は、
前記軸部が最も
前記軸線方向の他方側に位置した状態で、
前記
スプライン溝部における
前記軸線方向の一方側の端と前記軸線方向で同一位置である、
請求項3に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
回転運動と直動運動を行うアクチュエータが知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のアクチュエータは、ボールねじ及びボールスプラインを有し、ボールねじのネジ軸とボールスプラインのシャフトとが連結された軸部材が用いられる。この構成では、ボールねじのナットが回転することで軸部材が直動運動を行い、ボールスプラインのスプライン外筒が回転することで軸部材が回転運動を行う。従って、当該アクチュエータは、出力軸に搭載物を取り付けた状態で、搭載物を回転させたり、軸方向に直線移動させたりすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重量がより大きい搭載物を取り付けることが可能なアクチュエータが望まれている。
【0005】
本開示は、前記の課題に鑑みてなされたものであって、重量がより大きい搭載物を取り付けることが可能なアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本開示の一態様のアクチュエータは、第1ステータと前記第1ステータに対して中心軸の軸回り方向に回転可能な第1ロータとを有する第1モータ部と、第2ステータと前記第2ステータに対して回転可能で前記第1ロータの前記中心軸と同軸に配置される第2ロータとを有する第2モータ部と、前記中心軸の軸線方向に沿って延びるスプライン溝部と、前記スプライン溝部とは前記軸線方向の異なる位置にある雄ねじ部と、前記スプライン溝部および前記雄ねじ部よりも前記軸線方向の出力軸側に位置し且つ外周面が平滑な軸部と、を有する軸部材と、前記軸部材の前記スプライン溝部と係合して当該スプライン溝部に沿って前記軸部材を前記軸線方向に案内させ、且つ、前記第1ロータと共に回転して前記軸部材を前記中心軸の軸回り方向に回転可能なスプライン外筒と、前記軸部材の前記雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部が設けられ、前記第2ロータと共に回転して前記軸部材を前記中心軸の軸線方向に移動可能にするナット部材と、前記軸部材における前記軸部の外周側に位置する筒状の筐体と、前記筐体の内周に設けられる筒状の無給油ブッシュと、を備え、前記第1モータ部及び前記第2モータ部が駆動していない状態で、前記無給油ブッシュの内周面は、前記軸部の外周面に対して径方向に離隔している。
【0007】
従って、重量がより大きい搭載物を取り付けることが可能なアクチュエータを提供することが可能となる。以下に詳細に説明する。軸部材の軸部に、中心軸に対して傾くように力が加わる場合、軸部が弾性変形によって傾く。例えば、出力軸に取り付けた搭載物を中心軸AXの軸回り方向に回転させると、出力軸にモーメントが作用し、モーメントによる力が軸部材の軸部に印加される。すると、軸部の外周面が無給油ブッシュの内周面に接するため、軸部は無給油ブッシュを介して筐体によって支えられる。これにより、ボールスプラインや軸受などにかかる荷重負担を全体的に軽減させることができる。以上より、出力軸に、重量がより大きい搭載物を取り付けることが可能となる。
【0008】
前記アクチュエータの望ましい態様として、前記無給油ブッシュにおける出力軸側の端は、前記筐体の内周における出力軸側の端と前記軸線方向で同一位置である。
【0009】
軸部材の軸部が中心軸に対して傾く場合、軸部の出力軸側の端が最も傾き量が大きくなる。よって、軸部の出力軸側の端を無給油ブッシュで支持することが好ましい。また、筐体の軸線方向の長さを小さくした方がアクチュエータをより小型化することができる。以上より、無給油ブッシュにおける出力軸側の端は、筐体の内周における出力軸側の端と軸線方向で同一位置にすることにより、軸部の出力軸側の端を無給油ブッシュで支持し、且つ、アクチュエータをより小型化することができる。
【0010】
前記アクチュエータの望ましい態様として、前記無給油ブッシュにおける出力軸側と反対側の端は、前記筐体の内周における出力軸側と反対側の端よりも出力軸側に位置する。
【0011】
従って、無給油ブッシュにおける出力軸側と反対側の端を、筐体の内周における出力軸側と反対側の端と軸線方向で同一位置にする場合に対して、無給油ブッシュをより小さくすることが可能となる。
【0012】
前記アクチュエータの望ましい態様として、前記無給油ブッシュにおける出力軸側と反対側の端は、前記軸部が最も前記出力軸側に位置した状態で、前記軸部における出力軸側と反対側の端と前記軸線方向で同一位置である。
【0013】
従って、無給油ブッシュの軸線方向の長さをより大きく設定することができるため、軸部が無給油ブッシュで受ける力がより分散され、軸部をより強固に支えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、重量がより大きい搭載物を取り付けることが可能なアクチュエータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態のアクチュエータの断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態のアクチュエータの断面図であり、軸部材が上限に位置している状態を示す図である。
【
図4】
図4は、変形例のアクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0017】
図1は、実施形態のアクチュエータの断面図である。
図2は、
図1の一部を拡大した断面図である。
図3は、実施形態のアクチュエータの断面図であり、軸部材が上限に位置している状態を示す図である。
【0018】
図1に示すように、アクチュエータ1は、例えば、ピックアンドプレース装置として用いられる。アクチュエータ1は、取付部材70と、第1スプラインハウジング80と、第2スプラインハウジング(筐体)81と、第1モータ部M1と、第2モータ部M2と、軸部材SFと、スプライン外筒61と、ナット部材51と、を備える。
【0019】
以下、Z方向であって、第1モータ部M1から取付部材70に向けた方向を上方とし、取付部材70から第1モータ部M1に向けた方向を下方として説明する。また、軸部材SFの中心軸AXの軸線方向は、Z方向(上下方向)と同一とする。なお、取付部材70は、出力軸とも称せられるため、上側を出力軸側、下側を出力軸側の反対側と称する。
【0020】
図1に示すように、第1モータ部M1は、第1ステータ10と、第1ロータ20と、第1モータ部ハウジング40と、第1回転検出部101と、を有する。
【0021】
第1ステータ10の径方向内側には、第1ステータ保持体11が配置される。第1ステータ10は、第1ステータ保持体11に固定される。第1ロータ20は、第1ステータ10の外周側に配置される。第1ロータ20は、中心軸AXを中心として回転する。第1ロータ20は、第1ロータブラケット21と、第1ロータブラケット21の径方向内側に固定され永久磁石を有する第1ロータコア22とを有する。第1ロータブラケット21は、中心軸AXを中心とする筒状に形成されている。また、第1ロータブラケット21は、第1軸受31の外輪を支持する外輪押さえ21aを有する。
【0022】
第1ステータ10及び第1ロータ20は、中心軸AXを中心として同軸に配置されている。第1ロータ20は、第1ステータ10及び第1ステータ保持体11の径方向外側に配置され、第1ステータ10に対して相対回転する。換言すると、第1ロータ20は、第1軸受31を介して、第1ステータ10及び第1ステータ保持体11に回転可能に支持される。第1ステータ保持体11は、ボルトを介して第1モータ部ハウジング40に固定されている。第1ステータ10は、中心軸AXの周りに筒状に設けられている。
【0023】
第1モータ部ハウジング40は、例えば円筒状に形成され、第1モータ部M1を収容する。第1モータ部ハウジング40の上端は開口しており、当該開口部には第1蓋部材111が設けられる。第1蓋部材111は、ボルトを介して第1ロータブラケット21の外輪押さえ21aに固定される。第1蓋部材111の径方向中央部には貫通孔が設けられ、貫通孔はスプライン外筒61で覆われる。
【0024】
図1に示すように、スプライン外筒61の下端部には、径方向に広がるフランジ62が設けられる。フランジ62が第1蓋部材111と支持部材113との間に挟まれた状態で、ボルトを介して固定される。即ち、フランジ62、第1蓋部材111および支持部材113には貫通孔が設けられ、ボルトが貫通孔に貫通する。そして、ボルトが第1蓋部材111の貫通孔に噛み合うことにより、フランジ62、第1蓋部材111および支持部材113が一体に固定される。また、第1モータ部ハウジング40の上端には、径方向外側に広がる取付用フランジ40aが設けられる。取付用フランジ40aは、固定台STの上面に載置され、ボルトを介して固定台STに固定される。第1蓋部材111の外周端と第1モータ部ハウジング40の内周端との間には、微小な隙間が形成され、第1蓋部材111が第1モータ部ハウジング40に対して回転可能となる。
【0025】
第1回転検出部101は、例えば、レゾルバである。第1回転検出部101は、第1モータ部M1の回転状態を検出する。第1回転検出部101は、第1軸受31の上側に配置される。
【0026】
図1に示すように、第2モータ部M2は、第1モータ部M1に対して中心軸AXの軸線方向に並んで配置される。第2モータ部M2は、第2ステータ10Aと、第2ロータ20Aと、第2モータ部ハウジング40Aと、第2回転検出部101Aと、を有する。第1モータ部M1及び第2モータ部M2は、円筒状のダイレクトドライブモータである。
【0027】
第2ロータ20Aは、第2ステータ10Aの外周側に配置される。第2ロータ20Aは、中心軸AXを中心として回転する。即ち、第2ロータ20Aの中心軸は、第1ロータ20の中心軸AXと同軸である。第2ロータ20Aは、第2ロータブラケット21Aと、第2ロータブラケット21Aの径方向内側に固定され永久磁石を有する第2ロータコア22Aとを有する。第2ロータブラケット21Aは、中心軸AXを中心とする筒状に形成されている。第2ステータ10A及び第2ロータ20Aは、中心軸AXを中心として同軸に配置されている。
【0028】
第2ロータ20Aは、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aの径方向外側に配置され、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aに対して相対回転する。換言すると、第2ロータ20Aは、第2軸受32を介して、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aに回転可能に支持される。第2ステータ10Aは、第2ステータ10Aの径方向内側に配置された第2ステータ保持体11Aに固定されている。第2ステータ保持体11Aは、ボルトを介して第2モータ部ハウジング40Aに固定されている。第2ステータ10Aは、中心軸AXの周りに筒状に設けられている。
【0029】
第2モータ部ハウジング40Aは、例えば円筒状に形成され、第2モータ部M2を収容する。第2モータ部ハウジング40Aの上端は、開口しており、当該開口部には軸部材SFが貫通して設けられる。開口部の外周には、中心軸AXの軸回り方向に環状に延びる上底部40Aaが設けられる。上底部40Aaは、第1モータ部ハウジング40の下底部40bと当接し下底部40bにボルトを介して固定されている。第2モータ部ハウジング40Aの下底部40Abも開口しており、当該開口部は、ナット用ハウジング42及びストッパ用カバー44で覆われる。
【0030】
図1に示すように、ナット用ハウジング42は、上端フランジ42aと、上端フランジ42aの内周端から下方に延びる筒状に形成された筒状部42bと、筒状部42bの下端から内周側に延びる底部42cとを有する。上端フランジ42aは、第2モータ部ハウジング40Aの下底部40Abにボルトを介して固定されている。ストッパ用カバー44は、ナット用ハウジング42の底部42cにボルトを介して固定されている。底部42cには、貫通孔が設けられ、ネジ軸53の小径部532が貫通して設けられる。
【0031】
小径部532の下端には、ストッパ55がナット56によって取り付けられている。ストッパ55は、円環形状の部材である。ストッパ55は、ネジ軸53に挿入されている。ストッパ55のZ方向上側には、円環形状の緩衝部材55aが配置されている。緩衝部材55aは、例えば、弾性体のウレタンゴムである。軸部材SFが上昇して、緩衝部材55aを介してストッパ55がナット用ハウジング42の底部42cに当たることによって軸部材SFの上昇を規制することができる。ナット用ハウジング42の内方には、ナット部材51と、第2連結ブラケット45とが収容される。
【0032】
ナット部材51の内周側には、雌ねじ部が設けられる。雌ねじ部は、軸部材SFの雄ねじ部533と複数のボールを介して噛み合う。ナット部材51の径方向外側には、第2連結ブラケット45が配置される。ナット部材51の下端には、径方向外側に広がるフランジ部51aが形成される。フランジ部51aは、ボルトを介して第2連結ブラケット45に固定される。第2連結ブラケット45の上端には、径方向外側に広がるフランジ45aが設けられ、フランジ45aはボルトを介して第1連結ブラケット46に固定される。
【0033】
第1連結ブラケット46は、ボルトを介して第2ロータブラケット21Aに固定される。このように、ナット部材51と、第2連結ブラケット45と、第1連結ブラケット46と、第2ロータブラケット21Aとは、一体になって回転可能である。詳細には、ナット部材51、第2連結ブラケット45、第1連結ブラケット46及び第2ロータブラケット21Aは、第2軸受32を介して、第2ステータ10A及び第2ステータ保持体11Aに対して回転可能に支持される。
【0034】
第2回転検出部101Aは、例えば、レゾルバである。第2回転検出部101Aは、第2モータ部M2の回転状態を検出する。第2回転検出部101Aは、軸方向において連結部200に並んだ位置に配置される。
【0035】
次に、軸部材SFについて説明する。軸部材SFは、下方のネジ軸53と、上方のシャフト63と、を有する。
【0036】
図1に示すように、ネジ軸53は、連結部200からストッパ55まで延びている。ネジ軸53は、上方の大径部531と、下方の小径部532とを有する。ネジ軸53の大径部531の先端部(
図1の上端部)には、上方に突出する細径部531aが設けられる。細径部531aの外周には、雄ねじが設けられる。シャフト63の小径部632の下端部には、凹部632aが設けられる。凹部632aの内周には、細径部531aの雄ねじと噛み合う雌ねじが設けられる。凹部632aの内周の雌ねじは、細径部531aの雄ねじと噛み合っている。これにより、シャフト63の小径部632とネジ軸53の大径部531とが一体に連結される。即ち、シャフト63とネジ軸53とがねじ締結によって連結される。なお、大径部531の外周には雄ねじ部533が形成される。前述のように、ナット部材51の内周側には、雌ねじ部が設けられ、当該雌ねじ部は、軸部材SFの雄ねじ部533と複数のボールを介して噛み合う。従って、ナット部材51に対して軸部材SFの雄ねじ部533が回転すると、軸部材SFはZ方向(軸線方向)に直線移動する。
【0037】
シャフト63は、本構成における出力軸部となる取付部材70から中心軸AXの軸線方向に沿って連結部200まで延びている。連結部200は、第2回転検出部101Aと並ぶ位置に設けられる。シャフト63は、大径部631と、小径部632と、軸部634と、突出部635と、を有する。大径部631は、第1スプラインハウジング80から第1モータ部ハウジング40の下底部40bまで延びている。
【0038】
図1に示すように、大径部631の外周には、中心軸AXの軸線方向に延びるスプライン溝部633が周方向に間隔をおいて複数設けられる。スプライン外筒61の内周側には、図示しないが、スプライン溝部633に係合可能な複数の凸部を有するスプライン部が設けられる。このように、軸部材SFには、軸線方向に沿って延びるスプライン溝部633が設けられる。スプライン溝部633とスプライン部とが複数のボールを介して係合することで、スプライン部に沿って軸部材SFが軸線方向(Z方向)に案内されると共に、軸部材SFは第1ロータ20と共に回転することにより、軸部材SFが中心軸AXの軸回り方向に回転可能となる。小径部632は、大径部631の下端から連結部200まで延びている。また、軸部材SFにおけるスプライン溝部633の径D1は、雄ねじ部533の径D2よりも大きい。スプライン溝部633の径D1は、大径及び小径のうちの大径である。雄ねじ部533の径D2は、外径及び内径(谷径)のうちの外径である。
【0039】
また、
図1および
図2に示すように、軸部634は、大径部631の上端631aから取付部材70の連結部71の底面71fまで延びる。軸部634は、外周面634aと、上面634bと、を有する。ここで、スプライン溝部633は、上端633aまで形成される。従って、軸部634の外周面634aの部位のうち上端633aから上面634bまでの範囲は、中心軸AXの軸回りの周方向に沿って延びる平滑な円筒面である。軸部634の外径は、大径部631のスプライン溝部633の径D1よりも小さい。また、上面634bは、取付部材70の連結部71の底面71fに接している。
【0040】
突出部635は、軸部634の上側に設けられる。突出部635は、例えば、中心軸AXの軸回りの周方向に沿って延びる円柱である。
【0041】
図2に示すように、取付部材70は、シャフト63の先端(上端)の突出部635に連結される。具体的には、取付部材70は、連結部71と、筒状部72と、蓋部73とを有し、連結部71が、シャフト63の突出部635に連結される。連結部71は、連結部材74を挿入する凹部71bと、アーム部材90(
図3参照)を取り付ける取付面71cと、蓋部73を取り付ける蓋部取付面71dとを有する。
【0042】
凹部71bには、連結部材74が配置される。連結部材74は、対向する等しい傾斜のテーパ面が形成された凹状部材74a及び凸状部材74bを有する。凹状部材74aは、環状に形成され、凹部71bの内周に接して配置される。凸状部材74bは、環状に形成され、凹部71bの径方向内側に挿入される。凸状部材74bの内周は、突出部635の外周に接して配置される。連結部材74は、例えばボルト等の固定部材75により凸状部材74bが凹状部材74aの内側に圧入されて固定される。これにより、凹部71bの内周と凹状部材74aの外周との間、凹状部材74aのテーパ面と凸状部材74bのテーパ面との間、及び、凸状部材74bの内周と突出部635の外周との間が、互いに押し付け合った状態となる。そのため、凹部71b、凹状部材74a、凸状部材74b及び突出部635の間にそれぞれ摩擦力が生じる。この摩擦力により、取付部材70が突出部635に固定される。
【0043】
図2に示すように、取付面71cには、搭載物の一例であるアーム部材90(
図3参照)が取り付けられる。取付面71cには、アーム部材90を固定するための不図示の固定部材を挿入する挿入孔71eが設けられている。蓋部取付面71dには、蓋部73が取り付けられる。
【0044】
図2に示すように、筒状部72は、中心軸AXの軸回りの周方向に沿って延びる円筒状に形成される。筒状部72は、連結部71から下方に延びる。筒状部72は、軸部634の外周側に配置される。筒状部72は、下端部に切欠き72aを有する。切欠き72aは、内周面の下端が拡径された形状を有する。切欠き72aの下端には、径方向内側に突出する突起が設けられる。切欠き72aには、シール部77が配置される。シール部77は、第2スプラインハウジング(筐体)81と筒状部72との間に形成される隙間を封止する。シール部77としては、例えば断面視でU字状又はコ字状の部材をリング状に形成した構造等が挙げられる。シール部77は、例えば弾性変形可能な材料を用いて形成される。また、筒状部72と円筒部81bとの間に円筒状の隙間が形成される。この隙間により、シャフト63と外部との間にラビリンス構造が形成されるため、防塵性及び防水性が高められる。
【0045】
蓋部73は、ボルトにより連結部71の蓋部取付面71dに取り付けられる。蓋部73は、シャフト63の突出部635を外部から保護する。
【0046】
図1に示すように、第1スプラインハウジング80は、フランジ80aと、本体部80bと、筒状部80cと、屈曲部80dと、を有する。第1スプラインハウジング80は、中心軸AXの軸回りの周方向に沿った環状の形状を有する。
【0047】
図1に示すように、フランジ80aは、第1モータ部ハウジング40の取付用フランジ40aにボルトを介して固定されている。本体部80bは、フランジ80aの上側に設けられる。本体部80bの底面は、ウエーブワッシャー34、支持板35、軸受33、および支持部材112を介して第1蓋部材111で支持されている。換言すると、第1蓋部材111の上に支持部材112が配置され、支持部材112の上に軸受33が配置され、軸受33の上に支持板35が配置され、支持板35の上にウエーブワッシャー34が配置され、ウエーブワッシャー34の上に本体部80bが配置されている。また、ウエーブワッシャー34、支持板35、軸受33、および支持部材112は、第1スプラインハウジング80の内周側に配置される。
図2に示すように、筒状部80cには、径方向に貫通する貫通孔80eが設けられる。貫通孔80eは、閉塞用ボルト80fで閉塞される。閉塞用ボルト80fを貫通孔80eから取り外すと、第1スプラインハウジング80の内周側と外周側とが連通される。貫通孔80eは、エア供給部とも称せられる。屈曲部80dは、筒状部80cの上端から径方向内側に向けて屈曲する。屈曲部80dの上側に第2スプラインハウジング81が設けられる。
【0048】
図2に示すように、第2スプラインハウジング(筐体)81は、本体部81aと、円筒部81bとを備える。本体部81aは、第1スプラインハウジング80の屈曲部80dの上に設けられる。以下に具体的に説明する。本体部81aは、下面81h、81jを有する。下面81hは、下面81jよりも下側に位置する。下面81jに屈曲部80dの上面が接した状態で、本体部81aの端部81cがボルトを介して屈曲部80dに固定される。なお、本体部81aは、外周面81dを有する。中心軸AXを含む断面において、外周面81dは、上方に行くに従って外径が小さくなる傾斜面である。
【0049】
円筒部81bは、本体部81aの上側に設けられる。円筒部81bは、外周面81eと、内周面81f、81gと、上面81iと、を備える。内周面81gは、内周面81fよりも径方向外側に位置する。内周面81gと内周面81fとは、連結面81kを介して連結される。連結面81kは、径方向に延びる。
【0050】
円筒部81bの上端部の内周には、円筒状の無給油ブッシュ100が圧入されている。無給油ブッシュ100は、内周面100aと、外周面100bと、下面100cと、上面100dと、を備える。無給油ブッシュ100の外周面100bは、円筒部81bの内周面81gに接する。無給油ブッシュ100の下面100cは、円筒部81bの連結面81kに接する。中心軸AXを含む断面において、連結面81kの長さよりも無給油ブッシュ100の厚さが大きい。従って、円筒部81bの内周面81fよりも無給油ブッシュ100の内周面100aの方が径方向内側に位置する。無給油ブッシュ100の上面100dと円筒部81bの上面81iとは、高さ方向の位置が同一である。換言すると、無給油ブッシュ100の上面100dと円筒部81bの上面81iとは、面一である。なお、無給油ブッシュ100の内周面100aは、全周に亘って軸部634の外周面634aとの間に、僅かな隙間が形成されている。当該隙間は、円筒状である。しかし、軸部634が中心軸AXに対して所定角度以上傾くと、無給油ブッシュ100の内周面100aは、軸部634の外周面634aに接触する。
【0051】
次に、
図3を用いて、アーム部材90を取り付けたアクチュエータ1の動きを説明する。なお、
図3は、軸部材SFが最も上側(出力軸側)に位置した状態を示している。即ち、前述のようにナット部材51に対して軸部材SFの雄ねじ部533が回転すると、軸部材SFはZ方向(軸線方向)に直線移動するが、Z方向の上端に位置した場合を示す。
図3に示すように、アクチュエータ1には、アーム部材90などの搭載物が取り付けられる。即ち、アーム部材90は、搭載物の一例である。アーム部材90は、例えば、単一のアームのみを有する片持ちのアームである。アーム部材90は、取付部材70の上に固定される。アクチュエータ1は、アーム部材90をZ方向(直動方向、中心軸AXの軸線方向)に上下させ、アーム部材90をZ方向と直交する平面内で、中心軸AXの軸回り方向に回転させる。
【0052】
従って、例えば、アーム部材90の自重により、取付部材70にモーメントM(
図2参照)が作用しやすい。モーメントMは、アーム部材90をZ方向(直動方向、中心軸AXの軸線方向)に上下させると、大きくなることがある。また、モーメントMは、アーム部材90を中心軸AXの軸回り方向に回転させると、遠心力によりモーメントMが大きくなり、かかる方向が変化する。取付部材70は、突出部635に固定されているため、モーメントMによる力が突出部635を介して軸部材SF全体に印加される。すると、軸部634が中心軸AXの軸方向に対して傾く方向に弾性変形する。ここで、前述したように、軸部634が弾性変形した状態では、無給油ブッシュ100の内周面100aは、軸部634の外周面634aに接触する。
【0053】
以上説明したように、実施形態に係るアクチュエータ1は、第1ステータ10と第1ステータ10に対して中心軸AXの軸回り方向に回転可能な第1ロータ20とを有する第1モータ部M1と、第2ステータ10Aと第2ステータ10Aに対して回転可能で第1ロータ20の中心軸AXと同軸に配置される第2ロータ20Aとを有する第2モータ部M2と、中心軸AXの軸線方向に沿って延びるスプライン溝部633と、雄ねじ部533と、スプライン溝部633および雄ねじ部533よりも軸線方向の出力軸側に位置し且つ外周面634aが平滑な軸部634と、を有する軸部材SFと、軸部材SFのスプライン溝部633と係合してスプライン溝部633に沿って軸部材SFを軸線方向に案内させ、且つ、第1ロータ20と共に回転して軸部材SFを中心軸AXの軸回り方向に回転可能なスプライン外筒61と、軸部材SFの雄ねじ部533と噛み合う雌ねじ部が設けられ、第2ロータ20Aと共に回転して軸部材SFを中心軸AXの軸線方向に移動可能にするナット部材51と、軸部材SFにおける軸部634の外周側に位置する筒状の第2スプラインハウジング(筐体)81と、第2スプラインハウジング(筐体)81の内周に設けられる筒状の無給油ブッシュ100と、を備え、第1モータ部M1及び第2モータ部M2が駆動していない状態で、無給油ブッシュ100の内周面100aは、軸部634の外周面634aに対して径方向に離隔している。
【0054】
従って、重量がより大きい搭載物を取り付けることが可能なアクチュエータ1を提供することが可能となる。以下に詳細に説明する。
【0055】
軸部材SFの軸部634に、中心軸AXに対して傾くように力が加わる場合、軸部634が弾性変形によって傾く。例えば、搭載物の一例としてのアーム部材90を中心軸AXの軸回り方向に回転させると、出力軸である取付部材70にモーメントM(
図2参照)が作用する。取付部材70は、突出部635に固定されているため、モーメントMによる力が突出部635を介して軸部材SFの軸部634に印加される。すると、軸部634の外周面634aが無給油ブッシュ100の内周面100aに接するため、軸部634は無給油ブッシュ100を介して第2スプラインハウジング(筐体)81によって支えられる。これにより、ボールスプラインや軸受などにかかる荷重負担を全体的に軽減させることができる。従って、出力軸(取付部材70)に、重量がより大きい搭載物を取り付けることが可能となる。
【0056】
無給油ブッシュ100における出力軸側の端(上面100d)は、第2スプラインハウジング(筐体)81の内周における出力軸側の端(上面81i)と軸線方向で同一位置である。
【0057】
軸部材SFの軸部634が中心軸AXに対して傾く場合、軸部634の出力軸側の端が最も傾き量が大きくなる。よって、軸部634の出力軸側の端を無給油ブッシュ100で支持することが好ましい。また、第2スプラインハウジング(筐体)81の軸線方向の長さを小さくした方がアクチュエータ1をより小型化することができる。以上より、無給油ブッシュ100における出力軸側の端(上面100d)は、第2スプラインハウジング(筐体)81の内周における出力軸側の端(上面81i)と軸線方向で同一位置にすることにより、軸部634の出力軸側の端を無給油ブッシュ100で支持し、且つ、アクチュエータ1をより小型化することができる。
【0058】
無給油ブッシュ100における出力軸側と反対側の端(下面100c)は、第2スプラインハウジング(筐体)81の内周における出力軸側と反対側の端(下面81h)よりも出力軸側に位置する。従って、無給油ブッシュ100の下面100cを、第2スプラインハウジング(筐体)81の下面81hと軸線方向で同一位置にする場合に対して、無給油ブッシュ100をより小さくすることが可能となる。
【0059】
(変形例)
次いで、変形例に係るアクチュエータについて説明する。変形例に係るアクチュエータにおいては、実施形態の無給油ブッシュ100よりも軸線方向の長さがより大きい無給油ブッシュ100Aを適用する。
【0060】
図4は、変形例のアクチュエータの断面図である。
図4は、軸部634が最も上側(出力軸側)に位置した状態を示している。
【0061】
前述のように、スプライン溝部633は、上端633aまで形成される。従って、軸部634の外周面634aの部位のうち上端633aから上面634bまでの範囲は、中心軸AXの軸回りの周方向に沿って延びる平滑な円筒面である。即ち、この平滑な円筒面の下端は、スプライン溝部633の上端633aと同一位置である。
【0062】
変形例の第2スプラインハウジング(筐体)81Aの内周には、内周面81gと、内周面81fと、連結面81kと、を有する。内周面81gと内周面81fとは、連結面81kを介して連結される。無給油ブッシュ100Aは、内周面100Aaと、外周面100Abと、下面100Acと、上面100Adと、を備える。無給油ブッシュ100Aの下面100Acは、第2スプラインハウジング(筐体)81Aの連結面81kに接する。無給油ブッシュ100Aの下面100Acは、軸部634が最も上側(出力軸側)に位置した状態において、スプライン溝部633の上端633aと同一位置である。
【0063】
以上説明したように、変形例において、無給油ブッシュ100Aにおける出力軸側と反対側の端(下面100Ac)は、軸部634が最も上側(出力軸側)に位置した状態で、スプライン溝部633の上端633aと同一位置である。従って、無給油ブッシュ100Aの軸線方向の長さをより大きく設定することができるため、軸部634が無給油ブッシュ100Aで受ける力がより分散されるため、軸部634をより強固に支えることが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
10 第1ステータ
10A 第2ステータ
11 第1ステータ保持体
11A 第2ステータ保持体
20 第1ロータ
20A 第2ロータ
21 第1ロータブラケット
21a 外輪押さえ
21A 第2ロータブラケット
22 第1ロータコア
22A 第2ロータコア
31 第1軸受
32 第2軸受
33 軸受
34 ウエーブワッシャー
35 支持板
40 第1モータ部ハウジング
40a 取付用フランジ
40A 第2モータ部ハウジング
40Aa 上底部
40b 下底部
40Ab 下底部
42 ナット用ハウジング
42a 上端フランジ
42b 筒状部
42c 底部
44 ストッパ用カバー
45 第2連結ブラケット
45a フランジ
46 第1連結ブラケット
51 ナット部材
51a フランジ部
53 ネジ軸
55 ストッパ
55a 緩衝部材
56 ナット
61 スプライン外筒
62 フランジ
63 シャフト
70 取付部材
71 連結部
71b 凹部
71c 取付面
71d 蓋部取付面
72 筒状部
72a 切欠き
73 蓋部
74 連結部材
74a 凹状部材
74b 凸状部材
75 固定部材
77 シール部
80 第1スプラインハウジング
80a フランジ
80b 本体部
80c 筒状部
80d 屈曲部
81 第2スプラインハウジング(筐体)
81a 本体部
81b 円筒部
81h、81j 下面
81d 外周面
81e 外周面
81f、81g 内周面
81i 上面
81k 連結面
100、100A 無給油ブッシュ
100a、100Aa 内周面
100b、100Ab 外周面
100c、100Ac 下面
100d、100Ad 上面
101 第1回転検出部
101A 第2回転検出部
111 第1蓋部材
112 支持部材
113 支持部材
200 連結部
531 大径部
531a 細径部
532 小径部
533 雄ねじ部
631 大径部
632 小径部
632a 凹部
633 スプライン溝部
634 軸部
635 突出部
AX 中心軸
SF 軸部材
ST 固定台
M1 第1モータ部
M2 第2モータ部