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特許7613315燃料電池用のセパレータ及び燃料電池の単セル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】燃料電池用のセパレータ及び燃料電池の単セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20250107BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20250107BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20250107BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20250107BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20250107BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/02
H01M8/0258
H01M8/0273
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021130768
(22)【出願日】2021-08-10
(65)【公開番号】P2023025487
(43)【公開日】2023-02-22
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/104226(WO,A1)
【文献】特開2019-160558(JP,A)
【文献】特開2021-015766(JP,A)
【文献】特開2018-125258(JP,A)
【文献】特開2006-114444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/0297
H01M 8/08-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の発電部に対向する対向面を有し、前記対向面には、反応ガスが流通する複数の溝流路が並んで設けられている燃料電池用のセパレータであって、
前記複数の溝流路、及び前記溝流路同士の間に位置するとともに前記発電部に向かって突出する複数のリブを有する基材と、
前記リブに接合されるとともに前記発電部に当接する当接部材と、を備えており、
前記当接部材は、
前記リブに接合されたベース部と、
前記ベース部から突出するとともに複数の前記溝流路の並び方向において互いに間隔をおいて設けられた一対の突部と、を有している、
燃料電池用のセパレータ。
【請求項2】
前記ベース部は、前記突部同士の間において前記発電部の面方向に延びるとともに前記発電部と対向する底面を有しており、
前記一対の突部は、前記並び方向において前記底面の端から立ち上がる内側面を有しており、
前記内側面は、前記発電部と前記セパレータとの対向方向において前記発電部に近づくほど前記並び方向において前記底面から離れるように傾斜している、
請求項1に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項3】
前記ベース部の前記底面から前記一対の突部の先端までの高さは、10μm以上、30μm以下であり、
前記底面に対する一対の前記内側面の傾斜角度は、1度以上、5度以下である、
請求項2に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項4】
前記当接部材は、前記対向面において前記リブの延在方向の全体にわたって設けられている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項5】
前記当接部材は、複数の前記リブの各々に設けられている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項6】
前記発電部は、前記発電部の外周に位置する枠部材によって保持されるものであり、
前記対向面を内側対向面とするとき、
前記枠部材に対向する外側対向面を有しており、
複数の前記溝流路及び複数の前記リブは、それぞれ前記外側対向面に延出された延出部を有しており、
前記当接部材は、前記延出部にも設けられている、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃料電池用のセパレータ。
【請求項7】
一対のセパレータと、
前記一対のセパレータに挟持されるとともに、前記一対のセパレータの各々に当接する一対のガス拡散層を有する発電部と、を備え、
前記一対のセパレータのうち少なくとも1つは、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のセパレータであり、
前記ベース部における前記突部同士の間の部分には、前記発電部が沈み込んでいる、
燃料電池の単セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用のセパレータ及び燃料電池の単セルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池が開示されている。この燃料電池は、膜電極ガス拡散層接合体(Membrane Electrode Gas Diffusion Layer Assembly 、以下、MEGA)と、MEGAの外周側に配置された樹脂フレーム部材とを備えている。
【0003】
また、燃料電池は、MEGA及び樹脂フレーム部材を挟持するアノード側及びカソード側のセパレータを備えている。
MEGAは、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly 、以下、MEA)と、MEAを挟持するアノード側及びカソード側のガス拡散層(Gas Diffusion Layer 、以下、GDL)とを備えている。
【0004】
セパレータは、MEGAに対して酸化ガスまたは燃料ガス(以下、反応ガス)を供給する複数の溝流路と、溝流路同士の間に位置するとともにGDLに当接する複数のリブとを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-188346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、こうした燃料電池においては、セパレータと隣接するGDLのうち溝流路と対向する部分が撓み変形し、同溝流路内に沈み込む場合がある。この場合、沈み込んだGDLは、溝流路を流れる反応ガスに対して抵抗となるため、反応ガスの圧力損失を増大させるおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、溝流路へのガス拡散層の沈み込みを抑制できる燃料電池用のセパレータ及び燃料電池の単セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための燃料電池用のセパレータは、燃料電池の発電部に対向する対向面を有し、前記対向面には、反応ガスが流通する複数の溝流路が並んで設けられている燃料電池用のセパレータであって、前記複数の溝流路、及び前記溝流路同士の間に位置するとともに前記発電部に向かって突出する複数のリブを有する基材と、前記リブに接合されるとともに前記発電部に当接する当接部材と、を備えており、前記当接部材は、前記リブに接合されたベース部と、前記ベース部から突出するとともに複数の前記溝流路の並び方向において互いに間隔をおいて設けられた一対の突部と、を有している。
【0009】
また、上記目的を達成するための燃料電池の単セルは、一対のセパレータと、前記一対のセパレータに挟持されるとともに、前記一対のセパレータの各々に当接する一対のガス拡散層を有する発電部と、を備え、前記一対のセパレータのうち少なくとも1つは、上記セパレータであり、前記ベース部における前記突部同士の間の部分には、前記発電部が沈み込んでいる。
【0010】
同構成によれば、燃料電池の単セルを製造すべく発電部とセパレータとを積層すると、当接部材の一対の突部が発電部のガス拡散層(以下、GDL)に食い込むとともに、当接部材において突部同士の間に形成される凹部内にGDLが沈み込むようになる。その結果、GDLのうち溝流路と対向する部分が張った状態となる。したがって、溝流路へのGDLの沈み込みを抑制できる。
【0011】
また、上記構成によれば、当接部材を設けることにより、セパレータの基材のリブの突出高さを当接部材の高さの分だけ小さくすることができる。したがって、セパレータの基材の成形、ひいてはセパレータの製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、燃料電池用のセパレータの一実施形態について、同燃料電池の単セルを示す分解斜視図である。
図2図2は、同実施形態のセパレータを示す平面図である。
図3図3は、図2の3-3線に沿った断面図である。
図4図4は、発電部をセパレータに積層した状態を示す断面図である。
図5図5は、当接部材の凹部内にGDLが沈み込んだ状態を示す断面図である。
図6図6は、当接部材の凹部内に枠部材が沈み込んだ状態を示す断面図である。
図7図7は、セパレータの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図6を参照して、燃料電池用のセパレータ及び燃料電池の単セルの一実施形態について説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示しているため、各構成の寸法比率が実際とは異なる場合がある。
【0014】
<燃料電池スタックの単セル90の全体構成>
図1に示すように、燃料電池スタックの単セル90は、膜電極接合体10(以下、MEA10)と、MEA10を保持する枠部材20と、MEA10及び枠部材20を挟持する一対のセパレータ30,50とを有している。
【0015】
単セル90は、全体として長方形板状である。
なお、以降では、セパレータ30、MEA10及び枠部材20、セパレータ50の積層方向を第1方向Xとして説明する。
【0016】
また、単セル90の長手方向であるとともに、第1方向Xと直交する方向を第2方向Yとして説明する。
また、第1方向X及び第2方向Yの双方に直交する方向を第3方向Zとして説明する。
【0017】
単セル90は、反応ガスまたは冷却媒体を単セル90内に導入するための導入孔91,93,95と、単セル90内の反応ガス及び冷却媒体を外部へ導出するための導出孔92,94,96とを有している。なお、本実施形態では、導入孔91及び導出孔92は、燃料ガスが流通する孔である。また、導入孔93及び導出孔94は、冷却媒体が流通する孔である。また、導入孔95及び導出孔96は、酸化剤ガスが流通する孔である。ここで、燃料ガスは、水素ガスである。また、冷却媒体は、冷却水である。また、酸化剤ガスは、空気である。
【0018】
導入孔91,93,95及び導出孔92,94,96は、第2方向Yに長い平面視長方形状であり、単セル90を第1方向Xに貫通している。導入孔91及び導出孔94,96は、第2方向Yにおける単セル90の一側(図1の左右方向における左側)に設けられている。導入孔91及び導出孔94,96は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる。導出孔92及び導入孔93,95は、第2方向Yにおける単セル90の他側(図1の右側)に設けられている。導出孔92及び導入孔93,95は、第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる。
【0019】
<MEA10>
図1に示すように、MEA10は、第2方向Yに長い平面視長方形状である。
MEA10は、図示しない固体高分子電解質膜(以下、電解質膜)と、電解質膜の両面に設けられた電極11A,11Bとを有している。なお、本実施形態では、第1方向Xにおける電解質膜(図示略)の一側(図1の上下方向における上側)の面に接合された電極が、カソード電極11Aである。また、第1方向Xにおける電解質膜の他側(図1の下側)の面に接合された電極が、アノード電極11Bである。
【0020】
電極11A,11Bは、電解質膜に接合された触媒層(図示略)と、触媒層に接合されたガス拡散層12(以下、GDL12)とを有している。
なお、MEA10が本発明に係る燃料電池の発電部に相当する。
【0021】
<枠部材20>
図1に示すように、枠部材20は、第2方向Yに長い長方形枠状である。
枠部材20は、例えば合成樹脂材料によりシート状に形成されている。
【0022】
枠部材20は、孔91,92,93,94,95,96を構成する貫通孔21,22,23,24,25,26を有している。
枠部材20は、中央に第2方向Yに長い平面視長方形状の開口部27を有している。開口部27の縁部には、第1方向Xの一側(図1の上側)からMEA10が接合されている。すなわち、枠部材20は、MEA10の外周側に位置している。
【0023】
<セパレータ30>
図1及び図2に示すように、セパレータ30は、第2方向Yに長い平面視長方形板状である。
【0024】
セパレータ30は、MEA10のアノード電極11B側に設けられている(図1参照)。
セパレータ30は、MEA10に対向する内側対向面30aと、枠部材20に対向する外側対向面30bとを有している。
【0025】
セパレータ30は、セパレータ30の本体を構成する基材30Aと、基材30Aとは別体にて形成される当接部材40とを備えている(図2参照)。
<基材30A>
基材30Aは、例えばチタンやステンレス鋼などの金属部材をプレス成形することにより形成されている。
【0026】
基材30Aは、孔91,92,93,94,95,96を構成する貫通孔31,32,33,34,35,36を有している。貫通孔31,34,36は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔21,24,26と対応した位置に設けられている。また、貫通孔32,33,35は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔22,23,25と対応した位置に設けられている。
【0027】
基材30Aは、燃料ガスが流通する複数の溝流路37と、溝流路37同士の間に位置する複数のリブ38とを有している。なお、図1には、基材30Aにおいて、複数の溝流路37及び複数のリブ38が形成された部分の外縁を簡略化して示している。
【0028】
図2に示すように、複数の溝流路37は、貫通孔31と貫通孔32とを連通する溝である。なお、本実施形態では、6つの溝流路37が第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる。
【0029】
溝流路37の溝幅、すなわち流路断面積は、溝流路37の延在方向の全体にわたって一定である。各溝流路37の溝幅は、互いに同一である。
各溝流路37は、内側対向面30aに設けられた波状部37aと、波状部37aから外側対向面30bに延出された延出部37bとを有している。
【0030】
波状部37aは、内側対向面30aの面方向において波状に延在している。波状部37aの波長λ及び振幅Aは、波状部37aの延在方向の全体にわたって一定である。また、波状部37aの波数は、3つである。なお、本実施形態では、各波状部37aは、同一の波形を有している。また、本実施形態では、複数の波状部37aのうち第3方向Zにおいて最も外側に位置する波状部37aは、内側対向面30aの外縁よりも外側に位置する部分を有している。
【0031】
延出部37bは、波状部37aの延在方向の両端からそれぞれ貫通孔31,32に向かって直線状に延在している。
図3に示すように、複数のリブ38は、第1方向Xの一側(図3の上下方向における上側)に突出している。
【0032】
図2に示すように、本実施形態では、5つのリブ38が第3方向Zにおいて互いに間隔をあけて並んでいる。
各リブ38は、内側対向面30aに設けられた波状部38aと、波状部38aから外側対向面30bに延出された延出部38bとを有している。なお、本実施形態では、複数の波状部38aのうち第3方向Zにおいて最も外側に位置する波状部38aは、内側対向面30aの外縁よりも外側に位置する部分を有している。
【0033】
図1及び図3に示すように、基材30Aは、第1方向Xにおいて対向面30a,30bとは反対側の面30cを有している。面30cには、冷却媒体が流通する複数の溝流路38Aと、溝流路38A同士の間に位置する複数のリブ37Aが設けられている。リブ37Aは、溝流路37の裏面により構成されている。また、溝流路38Aは、リブ38の裏面により構成されている。すなわち、リブ37A及び溝流路38Aは、対向面30a,30bの溝流路37及びリブ38と表裏一体の関係にある(図3参照)。なお、図1には、複数の溝流路38A及び複数のリブ37Aが形成された部分の外縁を簡略化して示している。
【0034】
複数の溝流路38Aは、貫通孔33と、貫通孔34とを連通する溝である。溝流路38A内では、冷却媒体が溝流路37を流れる燃料ガスと反対方向に流れる。
<当接部材40>
図3に示すように、当接部材40は、MEA10のGDL12に当接するものであり、基材30Aとは異なる導電性材料により形成されている。詳しくは、当接部材40は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂からなる結合材と、カーボン等の導電性粒子とを含む導電性材料により形成されている。
【0035】
当接部材40は、リブ38に接合されるベース部41と、ベース部41から突出する一対の突部42とを有している。
ベース部41は、突部42同士の間においてMEA10の面方向に延びるとともにMEA10に対向する底面41aと、第1方向Xにおいて底面41aとは反対側に位置するとともにリブ38の先端面38cと接合される接合面41bとを有している。
【0036】
ベース部41は、第3方向Zにおいてリブ38の先端面38cの全体を覆っている。当接部材40は、第3方向Zにおける接合面41bの両端が接着剤(図示略)によりリブ38の先端面38cに接着されることにより基材30A上に固定されている。
【0037】
一対の突部42は、第3方向Zにおいて互いに間隔をおいて設けられている。一対の突部42は、第3方向Zにおいて底面41aから立ち上がる内側面42aを有している。すなわち、当接部材40において突部42同士の間には、底面41a及び一対の内側面42aから構成される凹部43が形成されている。内側面42aは、第1方向XにおいてMEA10に近づくほど第3方向Zにおいて底面41aから離れるように傾斜している。
【0038】
ベース部41の底面41aから一対の突部42の先端までの高さHは、10μm以上、30μm以下の範囲内であることが好ましい。また、同高さHは、20μm以上、30μm以下であることが更に好ましい。本実施形態では、同高さHが20μm以上、30μm以下に設定されている。
【0039】
底面41aに対する一対の内側面42aの傾斜角度θは、1度以上、5度以下の範囲内であることが好ましい。また、同傾斜角度θは、2度以上、5度以下であることが更に好ましい。また、同傾斜角度θは、3度以上、5度以下であることが一層好ましい。また、同傾斜角度θは、4度以上、5度以下であることがより一層好ましい。本実施形態では、同傾斜角度θが4度以上、5度以下に設定されている。
【0040】
図2に示すように、当接部材40は、波状部38a及び延出部38bの双方に接着されている。詳しくは、当接部材40は、リブ38の延在方向の全体にわたって設けられている。
【0041】
また、当接部材40は、5つのリブ38の各々に設けられている。
<セパレータ50>
図1に示すように、セパレータ50は、第2方向Yに長い平面視長方形板状である。
【0042】
セパレータ50は、例えば、チタンやステンレス鋼などの金属部材をプレス成形することにより形成されている。
セパレータ50は、MEA10のカソード電極11A側に設けられている。セパレータ50は、MEA10に対向する対向面を含む第1面50aと、第1面50aとは反対側の第2面50bとを有している。
【0043】
セパレータ50は、孔91,92,93,94,95,96を構成する貫通孔51,52,53,54,55,56を有している。貫通孔51,54,56は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔21,24,26と対応した位置に設けられている。また、貫通孔52,53,55は、それぞれ第3方向Zにおいて枠部材20の貫通孔22,23,25と対応した位置に設けられている。
【0044】
図1に示すように、セパレータ50は、酸化剤ガスが流通する複数の溝流路57と、冷却媒体が流通する複数の溝流路58とを有している。なお、図1には、セパレータ50において、複数の溝流路57が形成された部分の外縁と、複数の溝流路58が形成された部分の外縁をそれぞれ簡略化して示している。
【0045】
複数の溝流路57は、貫通孔55と、貫通孔56とを連通する溝である。溝流路57内では、酸化剤ガスが溝流路37を流れる燃料ガスと反対方向に流れる。
複数の溝流路58は、貫通孔53と、貫通孔54とを連通する溝である。溝流路58内では、冷却媒体が溝流路57を流れる酸化剤ガスと同方向に流れる。
【0046】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、燃料電池の単セル90を製造すべくセパレータ30と、MEA10及び枠部材20とを積層する。このとき、セパレータ30の内側対向面30aにおいては、リブ38の波状部38aに接着された当接部材40の一対の突部42と、MEA10のGDL12とが当接した状態となる。これにより、図5に示すように、当接部材40の一対の突部42がMEA10のGDL12に食い込むとともに、当接部材40において突部42同士の間に形成される凹部43内にGDL12が沈み込むようになる。また、ベース部41の底面41aにGDL12が当接するようになる。その結果、GDL12のうち溝流路37と対向する部分が張った状態となる。なお、図4及び図5においては、MEA10のうちGDL12のみを示している。
【0047】
一方で、セパレータ30の外側対向面30bにおいては、リブ38の延出部38bに接着された当接部材40の一対の突部42と、枠部材20とが当接した状態となる。これにより、図6に示すように、当接部材40の一対の突部42が枠部材20に食い込むとともに、当接部材40において突部42同士の間に形成される凹部43内に枠部材20が沈み込むようになる。また、ベース部41の底面41aに枠部材20が当接するようになる。その結果、枠部材20のうち溝流路37と対向する部分が張った状態となる。
【0048】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)セパレータ30は、複数の溝流路37、及び溝流路37同士の間に位置するとともにMEA10に向かって突出する複数のリブ38を有する基材30Aと、リブ38に接合されるとともにMEA10に当接する当接部材40とを備えている。当接部材40は、リブ38に接合されたベース部41と、ベース部41から突出するとともに複数の溝流路37の並び方向である第3方向Zにおいて互いに間隔をおいて設けられた一対の突部42とを有している。
【0049】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。したがって、溝流路37へのGDL12の沈み込みを抑制できる。
また、上記構成によれば、当接部材40を設けることにより、基材30Aのリブ38の突出高さを当接部材40の高さの分だけ小さくすることができる。したがって、セパレータ30の基材30Aの成形、ひいてはセパレータ30の製造を容易にすることができる。
【0050】
(2)ベース部41は、突部42同士の間においてMEA10の面方向に延びるとともにMEA10と対向する底面41aを有している。一対の突部42は、第3方向Zにおいて底面41aの端から立ち上がる内側面42aを有している。内側面42aは、MEA10とセパレータ30との対向方向である第1方向XにおいてMEA10に近づくほど第3方向Zにおいて底面41aから離れるように傾斜している。
【0051】
こうした構成によれば、一対の突部42の内側面42aが底面41aに対して垂直に立ち上がる場合に比べて、GDL12が一対の内側面42aに沿って沈み込むようになる。その結果、GDL12のうち溝流路37と対向する部分がより張った状態となる。したがって、溝流路37へのGDL12の沈み込みをより抑制できる。
【0052】
(3)ベース部41の底面41aから一対の突部42の先端までの高さHは、20μm以上、30μm以下である。底面41aに対する一対の内側面42aの傾斜角度θは、4度以上、5度以下である。
【0053】
こうした構成によれば、(2)に係る発明の効果を好適に発揮することができるとともに、ベース部41の底面41aとGDL12との間に隙間が生じることを好適に抑制することができる。
【0054】
(4)当接部材40は、リブ38の延在方向の全体にわたって設けられている。
こうした構成によれば、リブ38の延在方向の全体にわたって溝流路37へのGDL12の沈み込みを抑制できる。また、リブ38の延在方向において配置される当接部材40の数を1つにすることが可能となる。このため、リブ38の延在方向において複数の当接部材40を設ける場合に比べて、セパレータ30の製造をより容易にすることができる。
【0055】
(5)当接部材40は、複数のリブ38の各々に設けられている。
こうした構成によれば、複数の溝流路37の各々について、溝流路37へのGDL12の沈み込みを抑制できる。
【0056】
(6)セパレータ30は、枠部材20に対向する外側対向面30bを有している。複数の溝流路37及び複数のリブ38は、それぞれ外側対向面30bに延出された延出部37b,38bを有している。当接部材40は、延出部38bにも設けられている。
【0057】
燃料電池においては、MEA10が、MEA10の外周に位置する枠部材20によって保持されている。こうした枠部材20が、合成樹脂材料により形成されていると、枠部材20のうち溝流路37と対向する部分が撓み変形し、同溝流路37内に沈み込む場合がある。この場合、沈み込んだ枠部材20は、GDL12と同様、溝流路37を流れる燃料ガスに対して抵抗となるため、燃料ガスの圧力損失を増大させるおそれがある。
【0058】
この点、上記構成によれば、上記発明の作用と同様な作用を奏することから、溝流路37への枠部材20の沈み込みを抑制できる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・導入孔91,93,95及び導出孔92,94,96の形状は、本実施形態で例示したように平面視長方形状に限定されない。例えば、導入孔91,93,95及び導出孔92,94,96の形状は、平面視正方形状や平面視長円形状であってもよい。
【0060】
・孔91,92,93,94,95,96における反応ガス及び冷却媒体の流れは、本実施形態で例示したものに限定されず、例えば孔96を酸化剤ガスの導入孔とし、孔95を酸化剤ガスの導出孔としてもよい。また、これに伴って孔94を冷却媒体の導入孔とし、孔93を冷却媒体の導出孔としてもよい。すなわち、溝流路57を流れる酸化剤ガスと、溝流路38A,58を流れる冷却媒体とが、溝流路37を流れる燃料ガスと同方向に流れるようにしてもよい。
【0061】
・溝流路37の数は、本実施形態で例示した6つに限定されず、5つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
・セパレータ30は、本実施形態で例示したように、波状部37aの各々が同一の形状を有するものに限定されない。すなわち、各溝流路37は、波状部37aの各々の波長λ及び振幅Aが波状部37aの延在方向の全体にわたって一定であるものに限定されず、例えば各波状部37aの3つの波の波長λ及び振幅Aがそれぞれ異なるものであってもよい。
【0062】
・各波状部37aの波数は、本実施形態で例示した3つに限定されず、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。
・溝流路37の各々の溝幅、すなわち流路断面積は、本発明に係る作用効果を奏するのであれば、溝流路37の延在方向の全体にわたって一定でなくてもよい。
【0063】
・セパレータ30は、本実施形態で例示したように、複数の波状部37aのうち第3方向Zにおいて最も外側に位置する波状部37aが内側対向面30aの外縁よりも外側に位置する部分を有しているものに限定されない。例えば、上記波状部37aが第3方向Zにおいて内側対向面30aの外縁と同一の位置にあってもよいし、同外縁よりも内側に位置するものであってもよい。また、これに伴って複数の波状部38aのうち第3方向Zにおいて最も外側に位置する波状部38aを内側対向面30aの外縁よりも内側に位置するようにしてもよい。
【0064】
・セパレータ30は、本実施形態で例示したように当接部材40がリブ38の各々に設けられるものに限定されず、少なくとも1つのリブ38に対して当接部材40が設けられるものであればよい。
【0065】
・当接部材40は、本実施形態で例示したように、リブ38の延在方向の全体にわたって設けられていなくてもよい。すなわち、図7に示すように、セパレータ30は、複数の当接部材40がリブ38の延在方向において互いに間隔をあけて設けられてもよい。また、セパレータ30は、当接部材40がリブ38の波状部38a及び延出部38bの双方に接着されるものに限定されず、当接部材40が波状部38a及び延出部38bのいずれか一方にのみ接着されるものであってもよい。いずれの場合であっても、リブ38のうち当接部材40を設けない部分の突出高さを当接部材40の高さの分だけ大きくするようにすればよい。
【0066】
・溝流路37は、本実施形態で例示したように、各々が内側対向面30aの面方向において波状に延在する波状部37aを有するものに限定されない。例えば、複数の溝流路37のうち少なくとも1つは、各々が内側対向面30aの面方向において直線状に延在するものであってもよい。
【0067】
・当接部材40の形状は、本実施形態で例示した形状に限定されず、以下のように変更することができる。すなわち、当接部材40の凹部43の形状は、本実施形態で例示したように底面41aがMEA10の面方向に延びるものに限定されず、例えば凹部43の形状を断面U字状としてもよい。また、当接部材40の内側面42aは、本実施形態で例示したように底面41aに対して傾斜するものに限定されず、例えば底面41aに対して垂直に立ち上がるようにしてもよい。
【0068】
・当接部材40は、本実施形態で例示したように、接着剤によりリブ38に接着されるものに限定されない。例えば、当接部材40と基材30Aとを熱プレスすることにより、当接部材40をリブ38に接合するようにしてもよい。
【0069】
・当接部材40を形成する導電性材料に含まれる結合材は、本実施形態で例示したエポキシ樹脂に限定されず、例えばフェノール樹脂を用いることもできる。また、結合材は、熱硬化性樹脂に限定されず、ポリプロピレン、ポリアミド、及びポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0070】
・基材30Aを成形型にインサートして射出成形することにより、リブ38に対して当接部材40を一体成形するようにしてもよい。
・セパレータ30の基材30Aは、金属部材をプレス成形することにより形成されるものに限定されず、例えば切削加工やエッチング加工により成形することもできる。
【0071】
・セパレータ30の基材30Aに用いる材料としては、チタンやステンレス鋼に限定されず、アルミニウムやカーボンを用いることもできる。
・本発明に係る燃料電池用のセパレータは、本実施形態で例示したようなMEA10のアノード電極11B側に接合されるセパレータ30に限定されず、カソード電極11A側に接合されるセパレータ50に対して適用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
θ…傾斜角度
λ…波長
A…振幅
H…高さ
X…第1方向
Y…第2方向
Z…第3方向
10…膜電極接合体、MEA
11A…カソード電極
11B…アノード電極
12…ガス拡散層、GDL
20…枠部材
21…貫通孔
22…貫通孔
23…貫通孔
24…貫通孔
25…貫通孔
26…貫通孔
27…開口部
30…セパレータ
30A…基材
30a…内側対向面
30b…外側対向面
30c…面
31…貫通孔
32…貫通孔
33…貫通孔
34…貫通孔
35…貫通孔
36…貫通孔
37…溝流路
37a…波状部
37b…延出部
37A…リブ
38…リブ
38a…波状部
38b…延出部
38c…先端面
38A…溝流路
40…当接部材
41…ベース部
41a…底面
41b…接合面
42…突部
42a…内側面
43…凹部
50…セパレータ
50a…第1面
50b…第2面
51…貫通孔
52…貫通孔
53…貫通孔
54…貫通孔
55…貫通孔
56…貫通孔
57…溝流路
58…溝流路
90…単セル
91…導入孔
92…導入孔
93…導入孔
94…導出孔
95…導出孔
96…導出孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7