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特許7613382ポリエステル樹脂組成物およびその成形品
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  • 特許-ポリエステル樹脂組成物およびその成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20250107BHJP
   C08G 59/08 20060101ALI20250107BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20250107BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250107BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20250107BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20250107BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20250107BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C08L67/02
C08G59/08
C08J5/18 CFD
C08K3/013
C08K5/52
C08K7/04
C08L63/00 A
C08L69/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021573866
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 CN2020102916
(87)【国際公開番号】W WO2021013115
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】201910660370.0
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯 先文
(72)【発明者】
【氏名】許 峻睿
(72)【発明者】
【氏名】張 楽臻
(72)【発明者】
【氏名】加藤 公哉
(72)【発明者】
【氏名】大田 健史
(72)【発明者】
【氏名】大眉 有紀年
(72)【発明者】
【氏名】朱 文博
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-022616(JP,A)
【文献】特開2015-103072(JP,A)
【文献】特開2018-031007(JP,A)
【文献】特開2013-155278(JP,A)
【文献】特開2010-024396(JP,A)
【文献】特開2001-026656(JP,A)
【文献】特開2018-123215(JP,A)
【文献】特開2010-070626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08G 59/08
C08J 5/18
C08K 3/013
C08K 5/52
C08K 7/04
C08L 63/00
C08L 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下(A)~(C)を配合して得られることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部、
(B)ポリカーボネート、およびシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/エチレンテレフタレートの共重合体から選ばれる少なくとも1種の非晶性樹脂15~100重量部、
(C)下記一般式(1)で表されるグリシジルエーテル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂0.010~5.0重量部。
【化1】
上記一般式(1)中、Xは上記一般式(2)または(3)で表される二価の基を表す。上記一般式(1)および(3)中、R、R、RおよびRは同じであっても異なってもよく、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数1~8のアルキルエーテル基のいずれかである。Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基または炭素数6~10のアリール基のいずれかである。上記一般式(1)中、nは0より大きく10以下の値を表す。上記一般式(1)および(3)中、a、c、dはそれぞれ独立に0~4の整数を表し、bは0~3の整数を表す。
また、ポリエステル樹脂組成物を、窒素ガス雰囲気下で示差走査熱量計を用いて、20℃/minの降温速度で、溶融状態から20℃まで降温し、その後20℃/minの昇温速度で昇温し、その昇温過程中に出現する吸熱ピークの温度が210℃以上、221℃以下である。
【請求項2】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(C)エポキシ樹脂の含有量が、0.05~3重量部である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(D)充填材を含む請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
(D)充填材がガラス繊維、または炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(D)充填材の含有量が1~150重量部である請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
さらに(E)エステル交換防止剤を含む請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
(E)エステル交換防止剤が、下記一般式(4)で表される請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【化2】
一般式(4)中、Rは炭素数1~30のアルキル基であり、mは1または2である。
【請求項8】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(E)エステル交換防止剤の含有量が0.025~0.5重量部である請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
さらに(F)核剤を含む請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
(F)核剤が、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、タルク、マイカ、炭化ケイ素、エチレンビスラウリル酸アミド、およびソルビトール系誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項11】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(F)核剤の含有量が0.05~5重量部である請求項に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項12】
ポリエステル樹脂組成物を、成形温度260℃、金型温度80℃で成形し、得られた厚み1mmの成形片の分光光度計による波長940nmでの透過率が48%以上である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~1いずれかに記載のポリエステル樹脂組成物から製造された成形品。
【請求項14】
レーザー溶着用透過材である請求項1に記載の成形品。
【請求項15】
レーザーを透過する成形品部位の厚さが3mm以下である請求項1記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー材料の領域に関し、特にポリエステル樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂は、その耐熱性、耐薬品性、電気特性、機械特性、成形性などの各種優れた特性から、機械部品、電気通信部品、自動車部品などの分野で広く利用されている。自動車部品等の分野では、特に近年、様々な自動車電装部品おける用途が広く注目されている。ただし、これらの部品は気密性を確保する必要がある場合があるが、従来のねじ止め、接着剤接合、加熱板溶接、超音波溶接などの接合方法はすべて工程時間が長いこと、および設計自由度が不十分である等の問題がある。
【0003】
レーザー溶着は、外部加熱溶着技術であり、積層樹脂成形体にレーザー光を照射し、照射面を透過させて、他方の面に吸収させることにより溶融溶着する工程方法であり、この方法は3次元的な接合、非接触加工、溶接スパッタがないという要件を実現することができる。そのため、工程が早く、設計自由度が大きくなり、かつ結合強度が高い特徴が広く注目されている。同時に、上記レーザー溶着プロセスから、溶着材料のレーザー透過率は、その中の重要なパラメーターであることがわかる。レーザー溶着により、PBT樹脂を接合する場合、樹脂のレーザー透過率が低すぎると、溶着面の吸熱が不十分となり易く、最終的には溶着ができなくなる。しかしながら、透過率の不足を補うために、レーザー光の強度を増加させ、溶着面の吸熱を高くすると、容易に材料は過熱され、分解され炭化する。従って、溶着材料のレーザー透過率を如何に効果的に改善するかは、本領域において常に注目される課題であった。
【0004】
既存のレーザー溶着用樹脂材料の透過率改良技術においては、特許文献1(日本特許特開2010-70626号公報)には、レーザー透過性、耐冷熱性、耐熱性および機械強度に優れ、樹脂製品のレーザー溶着に極めて有効なポリエステル樹脂が開示されている。具体的方法として、(A)ポリブチレンテレフタレート(PBT)系樹脂29~84重量%、(B)テレフタル酸残基と1,4-シクロヘキサンジメタノール残基で形成される繰り返し単位が25mol%以上を占めるポリエステル樹脂、およびポリカーボネート樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の樹脂5~60重量%、(C)強化繊維10~50重量%、(D)ポリアルキルメタクリレートとブチルアクリレートのブロックコポリマー1~20重量%で構成されたレーザー溶着に適したポリエステル樹脂組成物である。しかしながら、この特許文献のポリエステル樹脂組成物では、PBT樹脂と非晶性樹脂との相溶性が不十分であり、レーザー透過率は高いとは言えない。
【0005】
特許文献2(日本特許特開2007-186584号公報)には、優れたレーザー溶着性を有するポリエステル樹脂組成物と、レーザー溶着により強固に接合された成形品が開示されている。解決法は、(a)ポリエステル樹脂組成物100重量部に対して、(b)強化充填材0~100重量部、および(c)エポキシ化合物0.1~100重量部が添加されたレーザー溶着用ポリエステル樹脂組成物である。組成物中にエポキシ樹脂が添加されているが、本発明で採用する特別な構造のエポキシ樹脂を添加することにより、PBT樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の相溶性を向上できることについては言及されておらず、ポリエステル樹脂組成物の透過率は不十分である。
【0006】
特許文献3(中国特許出願公開番号CN1863870A)に、特定の組成物、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリカーボネート樹脂、および可塑剤を組み合わせた組成物は、透過率の均一性を改良し、成形品の異なる部分の透過率の差を減少させる効果があるが、大幅に透過率を向上させることはできなかった(波長940nmのレーザー光条件下の透過率は20-34%)。
【0007】
また、特許文献4(日本特許公開番号JP2005-336409)に、少なくともポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートを配合してなるポリマーアロイにおいて、相構造を制御することにより、成形品をレーザー溶着部品の透過材として有効活用できることが開示されているが、PBT樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との相溶性の向上については言及されておらず、この技術による透過率向上レベルに限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-70626号公報
【文献】特開2007-186584号公報
【文献】中国特許出願公開第1863870号明細書
【文献】特開2005-336409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
優れたレーザー透過率を有し、各種自動車電装部品(各種コントロールユニット、各種センサー等)、コネクター、スイッチ部品、リレー部品などに使用することができるポリエステル樹脂組成物およびその成形品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来のレーザー透過率が不十分であるという上記問題を解決するために、鋭意検討した結果、少なくとも、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)非晶性性樹脂、および(C)特殊構造のエポキシ樹脂を配合して得られ、融点を210℃~221℃に調整することにより得られるポリエステル樹脂組成物が、高いレーザー透過率を有することを発見した。また、本発明のポリエステル樹脂組成物から製造される成形品は、レーザー出力が小さい場合や成形品の厚みが大きい場合でも、レーザー光を透過することができる。そのため、レーザー溶着部品のレーザー透過材として適しており、レーザー吸収材と強固に接合することができる。
【0011】
すなわち本発明の技術的解決手段は、以下の通りである。
1.少なくとも以下(A)~(C)を配合して得られることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。。
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部、
(B)非晶性樹脂15~100重量部、
(C)トリスフェノールメタン型、テトラキスフェノールエタン型、ノボラック型、およびナフタレン型から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂0.010~5.0重量部。
また、ポリエステル樹脂組成物を、窒素ガス雰囲気下で示差走査熱量計を用いて、20℃/minの降温速度で、溶融状態から20℃まで降温し、その後20℃/minの昇温速度で昇温し、その昇温過程中に出現する吸熱ピークの温度が210℃以上、221℃以下である。
2.(B)非晶性樹脂が、ポリカーボネート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を含む非晶性ポリエステル、アクリロニトリル/スチレン共重合体から選ばれる少なくとも1種である、上記1に記載のポリエステル樹脂組成物。
3.(C)エポキシ樹脂がグリシジルエーテルまたはグリシジルエステル構造を有する上記1に記載のポリエステル樹脂組成物。
4.(C)エポキシ樹脂が、下記一般式(1)で表されるグリシジルエーテル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂である上記3に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0012】
【化1】
【0013】
(上記一般式(1)中、Xは上記一般式(2)または(3)で表される二価の基を表す。上記一般式(1)および(3)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数1~8のアルキルエーテル基のいずれかである。Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基または炭素数6~10のアリール基のいずれかである。上記一般式(1)中、nは0より大きく10以下の値を表す。上記一般式(1)および(3)中、a、c、dはそれぞれ独立に0~4の整数を表し、bは0~3の整数を表す。)
5.(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(C)エポキシ樹脂の含有量が、0.05~3重量部である上記1に記載のポリエステル樹脂組成物。
6.さらに、(D)充填材を含む上記1に記載のポリエステル樹脂組成物。
7.(D)充填材がガラス繊維、または炭素繊維から選ばれる少なくとも1種である、上記6に記載のポリエステル樹脂組成物。
8.(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(D)充填材の含有量が1~150重量部である上記6に記載のポリエステル樹脂組成物。
9.さらに(E)エステル交換防止剤を含む上記1に記載のポリエステル樹脂組成物。
10.(E)エステル交換防止剤が、下記一般式(4)で表される上記9に記載のポリエステル樹脂組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
(上記一般式(4)中、Rは炭素数1~30のアルキル基であり、mは1または2である。)
11.(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(E)エステル交換防止剤の含有量が0.025~0.5重量部である上記9に記載のポリエステル樹脂組成物。
12.さらに(F)核剤を含む上記1に記載のポリエステル樹脂組成物。
13.(F)核剤が、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、タルク、マイカ、炭化ケイ素、エチレンビスラウリル酸アミド、およびソルビトール系誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である上記12に記載のポリエステル樹脂組成物。
14.(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(F)核剤の含有量が0.05~5重量部である上記12に記載のポリエステル樹脂組成物。
15.ポリエステル樹脂組成物を、成形温度260℃、金型温度80℃で成形し、得られた厚み1mmの成形片の波長940nmの条件での分光光度計の透過率が48%以上である上記1に記載のポリエステル樹脂組成物。
16.上記1~15いずれかに記載のポリエステル樹脂組成物から製造された成形品。。
17.レーザー溶着用透過材である上記16に記載の成形品。
18.レーザーを透過する成形品部位の厚さが3mm以下である上記16記載の成形品。
【0016】
該ポリエステル樹脂組成物は、優れたレーザー光透過率を有し、各種自動車用電装部品(各種制御ユニット、各種センサー等)、コネクター類、スイッチ部品、リレー部品などに使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のポリエステル樹脂組成物およびその成形品は、優れたレーザー透過率を有し、各種自動車電装部品(各種コントロールユニット、各種センサー等)、コネクター、スイッチ部品、リレー部品などに使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、透過率評価用試験片の平面図(A)と側面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0020】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
本発明のポリエステル樹脂組成物中のマトリックス樹脂である(A)ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂としては、ブチレンテレフタレートを主成分とするホモポリエステルまたはコポリエステル等が挙げられる。
【0021】
コポリエステル中の共重合性単量体としては、テレフタル酸以外のジカルボン酸、1,4-ブタンジオール以外のジオール、オキシカルボン酸、またはラクトンなどが挙げられる。 共重合性単量体は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。その中で共重合性単量体は全単量体に対して30mol%以下であることが好ましい。
【0022】
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸(例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸)、脂環式ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルメタンジカルボン酸、または4,4’-ジフェニルケトンジカルボン酸などのC 8~16ジカルボン酸)が挙げられる。また、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸を併用してもよい。
【0023】
1,4-ブタンジオール以外のジオールとしては、脂肪族アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、またはデカンジオールなどのC2-12のアルカンジオール、好ましくはC2-10アルカンジオール)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのオキシアルキレン単位を有するグリコール)、芳香族ジオール(例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオールなどのC6-C14の芳香族ジオール、ビフェノール、ビスフェノール類、キシリレングリコール)などが挙げられる。また、必要に応じて、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、またはペンタエリスリトールを混合して使用することができる。
【0024】
オキシカルボン酸としては、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酪酸、グリコール酸、またはオキシカプロン酸などのオキシカルボン酸およびそれらの誘導体が含まれる。
【0025】
ラクトンとしては、例えば、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン等の炭素数3~12のラクトンが挙げられる。
【0026】
成形性とレーザー透過率を両立する観点から、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、o-クロロフェノール溶媒を用いて25℃で測定した固有粘度が0.36~3.0dl/gの範囲にあるものが好ましい。0.42~2.0dl/gの範囲がより好ましい。また、固有粘度の異なるポリブチレンテレフタレート樹脂を2種以上含有してもよく、それらの固有粘度は前記範囲内であることが好ましい。
【0027】
また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、(B)非晶性樹脂との相溶性と、レーザー透過率を高くする観点から、カルボキシル基含有量が50mol/ton以下であることが好ましい。ここで、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂のカルボキシル含有量は、o-クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定することにより求めることができる。
【0028】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体、1,4-ブタンジオール、必要に応じて添加される共重合性モノマーを用いて、慣例の方法(例えば、エステル交換、直接エステル化法)を通して、重合することにより製造できる。
【0029】
(B)非晶性樹脂
本発明のポリエステル樹脂組成物中の(B)非晶性樹脂は、スチレンホモポリマー/コポリマー、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の芳香族ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、またはシクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を含む非晶ポリエステル等が挙げられる。
【0030】
スチレンホモポリマー/コポリマーとしては、ポリスチレン、ポリクロロスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、スチレン/クロロスチレン共重合体、スチレン/プロピレン共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/塩化ビニル共重合体、スチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体(例えば、スチレン/アクリル酸メチル共重合体、スチレン/アクリル酸エチル共重合体、またはスチレン/アクリル酸ブチル共重合体、スチレン/アクリル酸オクチル共重合体、スチレン/アクリル酸フェニル共重合体)、スチレン/メタクリレート共重合体(例えば、スチレン/メチルメタクリレート共重合体、スチレン/エチルメタクリレート共重合体、スチレン/ブチルメタクリレート共重合体、またはスチレン/メタクリル酸フェニルエステル共重合体)、スチレン/α-クロロメタクリレート共重合体、またはスチレン/アクリロニトリル/アクリレート共重合体が挙げられる。
【0031】
ここで、ポリカーボネートは、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルアルカン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、または1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンから選択される1種以上のジヒドロキシ化合物を主原料として製造して得られる。その中で、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を主原料として製造して得られるポリカーボネートが好ましい。
【0032】
また、ビスフェノールA以外のその他のジヒドロキシ化合物、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルアルカンあるいは4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテルもビスフェノールAと同時に使用することができ、その他のジヒドロキシ化合物の使用量は、ジヒドロキシ化合物の総量に対し、10モル%以下であることが好ましい。
【0033】
これらポリカーボネートの重合度は、特に限定されず、(B)ポリカーボネートと(A)ポリブチレンテレフタレートとの相溶性を向上させ、成形性を改善する観点から、(B)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10000~50000が好ましい。15000以上がより好ましく、18000以上がさらに好ましい。一方、40000以下がより好ましく、35000以下がさらに好ましい。
【0034】
ここで、粘度平均分子量(Mv)とは、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、更にSchnellの粘度式、すなわち、[η]=1.23×10-4×(Mv)0.83から算出される値を意味する。ここで、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[c](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
[η]=limηsp/c(c→0)。
【0035】
シクロヘキサンジメチレンテレフタレート単位を含む非晶ポリエステルとは、テレフタル酸を主とするジカルボン酸と、1,4-シクロヘキサンジメタノールとその他のジオールを重合して得られるポリエステルを表す。その他のジオールとしては、脂肪族アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、またはデカンジオールなどのC2-12のアルカンジオール、好ましくはC2-10アルカンジオール)、ポリオキシアルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのオキシアルキレン単位を有するグリコール)、脂環族ジオール(例えば、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、スピログリコール、1,3-シクロブタンジオール、、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、スピログリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール)、芳香族ジオール(例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオールなどのC6-C14の芳香族ジオール、ビフェノール、ビスフェノール類、キシリレングリコール)などが挙げられる。
【0036】
ここで、その他のジオール単位(I)と1,4-シクロヘキサンジメタノール単位(II)のモル比[(I)/(II)]は1/99~99/1である。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性向上の観点から、[(I)/(II)]が80/20より小さいことが好ましい。75/25より小さいことがより好ましく、50/50よりも小さいことがさらに好ましい。一方、25/75より大きいことが好ましく、30/70より大きいことがさらに好ましい。
【0037】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂との相溶性を考慮すると、(B)非晶性樹脂としては、ポリカーボネート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレートを含む非晶ポリエステル、スチレン-アクリロニトリル共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0038】
本発明では、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(B)非晶性樹脂の含有量は15~100重量部である。この範囲にすることで、レーザー透過率と成形加工性を向上させることができる。20重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましい。一方、90重量部以下が好ましく、80重量部以下がさらに好ましい。
【0039】
(C)エポキシ樹脂
本発明のポリエステル樹脂組成物は、トリスフェノールメタン型、テトラキスフェノールエタン型、ノボラック型、ナフタレン型から選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。その中で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)非晶性樹脂の相溶性向上を考慮すると、(C)エポキシ樹脂は、グリシジルエーテル構造またはグリシジルエステル構造を有することが好ましい。
【0040】
本発明において、ノボラック型エポキシ樹脂としては、下記構造式(1)のグリシジルエーテル構造含有ノボラック型エポキシ樹脂を例示することができる。
【0041】
【化3】
【0042】
上記一般式(1)中、Xは炭素原子数1~8のアルキル基、アリール基、アラルキル基、脂環式炭化水素基で表される二価の基を表わし、複数を含んでも良い。R、およびRは同じであっても異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、または炭素原子数1~8のアルキルエーテル基のいずれかである。Rは水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基または炭素原子数6~10のアリール基のいずれかである。上記一般式(1)中、nは0より大きく20以下の値を表す。a、は0~4の整数を表し、bは0~3の整数を表す。
【0043】
その中で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基との反応性が高く、揮発性が低いという観点から、(C)エポキシ樹脂は室温(25℃)で固体であることが好ましい。従って、上記構造式(1)で表されるグリシジルエーテル構造を含むノボラック型エポキシ樹脂は、以下の構造がより好ましい。
【0044】
【化4】
【0045】
(その中で、Xは式(2)または式(3)で表される二価の基を表す。上記式(1)および(3)中、R、R、RおよびRは、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数1~8のアルキルエーテル基のいずれかである。Rは水素原子、炭素数1~8のアルキル基または炭素数6~10のアリール基のいずれかである。上記一般式(1)中、nは0より大きく10以下の値を表す。上記一般式(1)および(3)中、a、c、dはそれぞれ独立に0~4の整数を表し、bは0~3の整数を表す。)
【0046】
また、トリフェノール系メタン型は下記構造式5で表される構造を示し、テトラフェノール系エタン型は下記構造式6で表される構造を示し、ナフタレン型エポキシ樹脂は下記構造式7、8で表される構造を示す。
【0047】
【化5】
【0048】
上記エポキシ化合物のエポキシ価は100~1000g/eqであることが好ましい。この範囲にすることで、溶融加工時のガス発生を抑制するとともに、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基と効率的に反応させることができる。より好ましくは200g/eq以上である。一方、500g/eq以下がより好ましく、400g/eq以下がさらに好ましい。
【0049】
本発明では、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、(C)エポキシ樹脂の含有量は0.010重量部以上、5.0重量部以下である。0.010重量部以上にすることで、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)非晶性樹脂の相溶性を改善し、透過率を向上させることができる。また、(C)エポキシ樹脂5.0重量部以下とすることで、ポリエステル樹脂組成物中の(C)エポキシ樹脂の分散性を良好にし、透過率を向上させることができる。0.050重量部以上がより好ましく、0.10重量部以上がさらに好ましく、0.40重量部以上が最も好ましい。一方、3.0重量部以下が好ましく、1.5重量部以下がさらに好ましい。
【0050】
(D)充填材
本発明のポリエステル樹脂組成物には、さらに(D)充填材を添加することができる。(D)充填材としては、従来技術で用いられる樹脂の充填材を用いることができる。例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、金属繊維、ガラスフレーク、ウォラストナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、合成雲母、アスベスト、グラファイト、アルミノシリケート、アルミナ、 シリカ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化ケイ素または珪灰石などが挙げられる。充填材は、中空充填材であってもよく、さらにこれらの充填材を2種以上併用してもよい。 充填剤の平均粒径は、特に限定されないが、ポリエステル樹脂組成物の外観をより良好にするためには、0.001~20μmであることが好ましい。
【0051】
特に、低成形収縮率と高流動性を総合的に考慮すると、性能の優れたポリエステル樹脂組成物を得るためには、充填材はガラス繊維または炭素繊維の少なくとも一方であることが好ましい。ガラス繊維は特に限定されず、従来技術において使用されているガラス繊維であってもよい。 ガラス繊維は、一定長のチョップドストランド、粗砂、または粉砕繊維のような形状の繊維であってもよい。一般的には、5~15μmの平均直径を有するガラス繊維を使用するのが好ましい。 チョップドストランドを使用する場合、長さは特に限定されないが、押出混練に適した標準的な3mm長の繊維を使用することが好ましい。また、本発明において、繊維状充填材の断面形状は、特に限定されず、円形状、または扁平状の繊維のいずれか1種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明のポリエステル樹脂組成物の剛性と靭性のバランスを考慮すると、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(D)充填材の含有量は、1-150重量部が好ましい。10重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましい。一方、100重量部以下がより好ましく、80重量部以下がさらに好ましい。
【0053】
(E)エステル交換防止剤
本発明のポリエステル樹脂組成物には、さらに(E)エステル交換防止剤を添加することができる。(E)エステル交換防止剤としては、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に含まれるエステル交換反応触媒を失活する化合物であれば特に制限なく用いることができ、ホスファイト系化合物、ホスフェート系化合物が好ましく用いられる。
【0054】
ホスファイト系化合物としては、好ましくは、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラ(C12-C15アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)テトラトリデシルジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2-tert-ブチルフェニル)フェニルホスファイト、ビス(2,4,6-トリ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、またはテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスファイト等の化合物中の1種または多種が挙げられる。
【0055】
これ以外に、ホスフェート系化合物としては、好ましくは、下記一般式(4)に示した化合物が挙げられる。
【0056】
【化6】
【0057】
(式(4)中、Rは炭素原子数1~30のアルキル基であり、mは1または2である。)
【0058】
さらに、メチルアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、ジブトキシエチルアシッドホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジ-2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ジイソデシルアシッドホスフェート、イソトリデシルアシッドホスフェート、ジイソトリデシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、ジテトラコシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ジオレイルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェートなどのホスフェート化合物が好ましい。さらにホスフェート系化合物として好ましくは、ステアリルアシッドホスフェートまたはジステアリルアシッドホスフェートである。これらホスフェート化合物は単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。また、上記ホスフェート系化合物は、亜鉛またはアルミニウムなどと形成される金属塩も用いることができる。
【0059】
エステル交換反応の触媒の失活に対して、ホスファイト系化合物よりも、ホスフェート系化合物を使用する方が失活速度は速いため、ホスフェート系化合物が好ましく用いられる。
【0060】
(E)エステル交換防止剤は過剰に添加すると、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂を分解する可能性があるので、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(E)エステル交換防止剤の含有量は0.025~0.5重量部が好ましい。0.03重量部以上がより好ましく、0.1重量部以上がさらに好ましい。一方、0.3重量部以下がより好ましく、0.25重量部以下がさらに好ましい。
【0061】
(F)核剤
本発明のポリエステル樹脂組成物中の結晶化促進剤として用いられる(F)結晶核剤としては、ポリマーの結晶化核剤として一般的に用いられているものが満足いくものであり、無機結晶核剤および有機結晶核剤のうちのいずれか1つ以上を用いることができる。
【0062】
無機結晶核剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、タルク、マイカ、または炭化ケイ素等が挙げられる。
【0063】
また、有機結晶核剤としては、脂肪族カルボン酸アミド、ソルビトール系誘導体などが挙げられる。ここで脂肪族カルボン酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、リシノール酸アミド、またはヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪族モノカルボン酸アミド類、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-オレイルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、N-メチロールステアリン酸アミド、またはN-メチロールベヘニン酸アミドのようなN-置換脂肪族モノカルボン酸アミド類、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスデカン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、へキサメチレンビスステアリン酸アミド、へキサメチレンビスベヘニン酸アミド、へキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、またはm-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪族ビスカルボン酸アミド類、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド、またはN,N’-ジステアリルテレフ夕ル酸アミドなどのN-置換脂肪族カルボン酸ビスアミド類、N-ブチル-N’-ステアリル尿素、N-プロピル-N’-ステアリル尿素、N-ステアリル-N’-ステアリル尿素、N-フェニル-N’-ステアリル尿素、キシリレンビスステアリル尿素、トルイレンビスステアリル尿素、ヘキサメチレンビスステアリル尿素、ジフェニルメタンビスステアリル尿素、またはジフェニルメタンビスラウリル尿素のようなN-置換尿素類が挙げられる。
【0064】
ソルビトール系誘導体としては、ビスベンジリデンソルビトール、ビス(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-クロルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p-ブロムベンジリデン)ソルビトール、または前記ソルビトール誘導体を化学修飾したソルビトール誘導体などが挙げられる。
【0065】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の結晶化促進効果を考慮すると、(F)核剤としては、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、タルク、マイカ、炭化ケイ素、エチレンビスラウリン酸アミド、またはソルビトール誘導体かが好ましい。また、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(F)核剤の含有量は0.05~5重量部であることが好ましい。この範囲にすることで、結晶化促進効果を維持し、レーザー透過率を向上させることができる。(F)核剤の含有量は0.1重量部以上の含有量がより好ましい。一方、3重量部以下がより好ましく、2重量部以下の含有量がさらに好ましい。
【0066】
(G)その他添加剤
本発明のポリエステル樹脂組成物は、(A)~(F)成分に加えて、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、またはマスターバッチ等の添加剤をさらに含有してもよい。
【0067】
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤または硫黄系酸化防止剤の少なくとも1種であることが好ましい。耐熱性および熱安定性を考慮すると、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することが好ましい。
【0068】
ここで、フェノール系酸化防止剤としては、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-ジ-t-ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート] ]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、またはイソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
【0069】
ここで硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、、ジトリデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトール(3-ラウリルチオプロピオネート)、または2-メルカプトベンゾイミダゾールなどが挙げられる。
【0070】
これら酸化防止剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせると相乗的な効果が得られることがあるので、多種を併用して使用してもよい。
【0071】
酸化防止剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)非晶性樹脂の合計100重量部に対して、0.01~3重量部であることが好ましい。この範囲にすることで、酸化防止効果を維持し、溶融加工時のガス発生を抑制することができる。より好ましくは、0.05重量部以上、さらに好ましくは0.1重量部以上である。一方、2重量部以下がより好ましく、1重量部以下がさらに好ましい。
【0072】
離型剤は、特に制限はなく、通常の熱可塑性樹脂に使用されている任意の離型剤を使用することができる。 具体例としては、脂肪酸、脂肪酸金属塩、ヒドロキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分ケン化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸ポリオールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、または変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0073】
脂肪酸としては、炭素原子数が6~40の脂肪酸が好ましく、具体的にはオレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、アラキドン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0074】
脂肪酸金属塩としては、炭素数6~40の脂肪酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、具体的には、ステアリン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、またはモンタン酸カルシウム等が挙げられる。
【0075】
ヒドロキシ脂肪酸としては、1,2-ヒドロキシ脂肪酸などが挙げられる。
【0076】
脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、アジピン酸エステル、ベヘン酸エステル、アラキドン酸エステル、モンタン酸エステル、およびイソステアリン酸、またはポリマー酸エステルなどが挙げられる。
【0077】
脂肪族部分ケン化エステルとしては、例えば、部分ケン化モンタン酸エステルなどが挙げられる。
【0078】
パラフィンとしては、炭素原子数が18以上であることが好ましく、流動パラフィン、天然パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、またはワセリンなどが挙げられる。
【0079】
低分子量ポリオレフィンとしては、重量平均分子量5000以下のものが好ましく、具体的には、ポリエチレンワックス、マレイン酸変性ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、塩素化ポリエチレンワックス、またはポリプロピレンワックス等が挙げられる。
【0080】
脂肪酸アミドとしては、炭素原子数が6以上のものが好ましく、具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、またはベヘン酸アミド等が挙げられる。
【0081】
アルキレンビス脂肪酸アミドとしては、炭素原子数が6以上のものが好ましく、具体的には、メチレンビスステアラミド、エチレンビスステアラミド、またはN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ステアラミドなどが挙げられる。
【0082】
脂肪族ケトンとしては、高級脂肪族ケトンなどが挙げられる。
【0083】
脂肪酸低級アルコールエステルとしては、炭素原子数が6以上のものが好ましく、具体的には、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、ベヘン酸エチル、ライスワックス等が挙げられる。
【0084】
脂肪酸ポリオールエステルとしては、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールアジペートステアレート、ジペンタエリスリトールアジペートステアレート、またはソルビタンモノベヘネートなどが挙げられる。
【0085】
脂肪酸ポリグリコールエステルとしては、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、またはポリプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0086】
変性ポリシロキサンとしては、メチルスチリル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、高級脂肪酸アルコキシ変性ポリシロキサン、高級脂肪酸含有ポリシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリシロキサン、メタクリル酸変性ポリシロキサン、またはフッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0087】
難燃剤としては、臭素系難燃剤が挙げられ、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモジフェニルエーテル、テトラブロモフタル酸無水物、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス-テトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモベンゼン、1,1-スルホニル[3,5-ジブロモ-4]-(2,3-ジブロモプロポキシ)]ベンゼン、ポリジブロモフェニレンオキシド、テトラブロモビスフェノール-S、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、トリブロモネオペンチルアルコール、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリエチレン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノール-A-エポキシドオリゴマーまたはポリマーや臭素化フェノールノボラックエポキシドなどの臭素化エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノール-A-カーボネートオリゴマーまたはポリマーなどの臭素化エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2-ヒドロキシジエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノール-A-ビス(アリルエーテル)、テトラブロモシクロオクタン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、オクタブロモトリメチルフェニルインダン、ジブロモネオペンチルグリコール、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、ジブロモトリシルグリシジルエーテル、またはN,N’-エチリデン-ビス-テトラブロモベンズイミドなどが挙げられる。本発明において、上記難燃剤は塩素系難燃剤も挙げられ、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、ペルクロロシクロペンタデカン、または無水テトラクロロフタル酸などが挙げられる。
【0088】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、示差走査熱量計を用いて、窒素ガス雰囲気下、20℃/minの降温速度で、溶融状態から20℃まで降温し、その後20℃/minの昇温速度で昇温し、その昇温過程中に出現する吸熱ピークの温度(融点)が210℃以上、221℃以下である。この範囲に吸熱ピーク温度を制御することで、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と(B)非晶性樹脂の相溶性が向上し、透過率が高くなるとともに、耐熱性に優れるポリエステル樹脂組成物を得ることができる。吸熱ピーク温度は、220℃以下が好ましく、219℃以下がより好ましい。一方、215℃以上が好ましく、217℃以上がより好ましい。
【0089】
本発明のポリエステル樹脂組成物の製造方法としては、主成分(A)、(B)、(C)および、必要に応じて添加される(E)、(F)を、一軸または二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキサーのようなすでに知られた溶融混錬機で溶融混錬する方法で得ることができる。
【0090】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、射出成形、押出成形等により成形品を得ることができる。
【0091】
射出成形する場合、金型温度は40℃以上、250℃以下が好ましい。(A)ポリエチレンテレフタレート樹脂のガラス転移温度以上、および融点以下の温度範囲で固化する観点から、成形効率が高く、成形品の外観を良好にするためには、60℃以上、140℃以下の範囲であることが好ましい。
【0092】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、成形温度260℃、金型温度80℃で成形して得られる厚み1mmの成形品の波長940nm条件下での分光光度計により測定した透過率が48%以上であることが好ましい。本発明の成形品は、レーザー透過率が高いので、レーザー溶着透過材として使用することができる。ここで、透過率とは、検出器として積分球を用いた分光光度計により測定された値を示す。
【0093】
成形品の厚みは特に限定しないが、レーザー透過率を高くする観点から、レーザーを透過する成形品部位の厚みは3mm以下であることが好ましい。
【実施例
【0094】
以下の実施例において本発明を説明するが、これらの実施例の目的は、本発明を説明するためだけに提供するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例で使用した原料および試験装置は以下の通りである。
【0095】
1. ポリエステル樹脂組成物の原料
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT):東レ株式会社 固有粘度:0.76dl/g、カルボキシ末端基濃度:15mol/tonのポリブチレンテレフタレート樹脂
(B)非晶性樹脂
ポリカーボネート(PC):三菱エンジニアリングプラスチック株式会社S1000
シクロヘキサンジメチレンテレフタレート/エチレンテレフタレートの共重合体(PCTG):イーストマンEastarEB062
(C)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:DIC株式会社 HP-7200H(芳香族グリシジルエーテル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ価280g/eq)
エポキシ樹脂2:DIC株式会社 HP4700(芳香族グリシジルエーテル構造を有するナフタレン型エポキシ樹脂、エポキシ価160g/eq)
エポキシ樹脂3:Hexion Cardura E10P(バーサティック酸グリシジルエステル、エポキシ価244g/eq)
エポキシ樹脂4:三菱化学会部式会社JER1009(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ価2950g/eq)
(D)充填材
ガラス繊維:日本電気硝子株式会社 T187
(E)エステル交換防止剤
エステル交換防止剤:株式会社ADEKA AX-71(ジステアリルアシッドホスフェートとステアリルアシッドホスフェートの混合体)
(F)核剤
核剤1:竹原化学工業株式会社 Hightron(タルク)
核剤2:广州市欧穎化工有限公司 EBL(エチレンビスラウリル酸アミド)
【0096】
2.実施例と比較例で得られたポリエステル樹脂組成物の性能試験
(1)透過率測定
島津製作所製の紫外近赤外分光光度計(UV-3100)を使用し、透過性評価を行った。また、積分球を検出器として用いた。レーザー透過性は、1mm厚のサンプルの近赤外線940nm波長領域の光線透過率を測定した。表中に、透過光量と入射光量との比を百分率で表示した。近赤外940nm波長域の透過率を測定し、10nm毎に透過率を測定して近赤外940nm波長域の透過率の最大値と最小値を求めた。 測定は5回行い、上限値と下限値の平均値を求めた。
【0097】
(2)融点(Tm)測定
TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSC250)を用いて、各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物5~7mgを正確に秤量し、窒素雰囲気下、20℃/minの昇温速度で、20℃から昇温を開始したときに現れる吸熱ピーク(T0)の温度よりも30℃高い温度まで昇温し、この温度で2min保持、その後、20℃/minの降温速度で20℃まで降温し、20℃で2min保持、再度20℃/minの昇温速度でT0よりも30℃高い温度に昇温し、融点Tmを求めた。Tmは二回目の昇温過程中の吸熱ピークに対応する温度である。
【0098】
実施例1-7
原料は表1に示した。日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45.5)を用いて、溶融混練した。押出機は、13個の加熱ゾーンがあり、計量器を備えた供給装置を2つ、真空排気設備を有している。ガラス繊維以外の原料を混合した後、押出機のメインフィーダーから投入、ガラス繊維は押出機のサイドフィーダーから投入した。押出機の温度は100℃~260℃に設定し、溶融混練し、冷却、ペレット化を経由して、粒状のポリエステル樹脂組成物を得た。この粒状物を130℃のオーブンで3hr乾燥した後、日精樹脂工業株式会社製NEX50型射出成形機を用いて、成形温度260℃、金型温度80℃の条件で透過性評価サンプル(金型サイズは長さ80mm、幅80mm、厚み1mm)を射出成形した。上記透過率、融点測定方法によって、測定を行った。測定結果を表1に示した。
【0099】


比較例1-6、8-10
製造方法は実施例1と同様、原料は表2に示した通りである。上記透過率、融点試験方法に従って試験した結果を表2に示した。
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
実施例1-7と比較例1-4の比較から、本発明の特定の成分で構成された(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(B)非晶性樹脂、および(C)エポキシ樹脂を満たし、および組成物の融点(DSCで規定された測定条件下)が210℃以上、221℃以下の範囲を満たすと、樹脂組成物の透過率(>48%)は、上記の条件を同時に満足しない樹脂組成物よりもはるかに高いことがわかる。
【0103】
実施例1と比較例5、8の比較から、(C)特定のエポキシ樹脂の含有量が多すぎる、または少なすぎる場合は、ポリエステル樹脂組成物の透過率は悪いことがわかる。
【0104】
実施例4、比較例9、比較例10の比較から、エポキシ樹脂(HP-7200H0を添加したポリエステル樹脂組成物の透過率は、エポキシ樹脂(Cardura E10P)、エポキシ樹脂(JER1009)を添加したポリエステル樹脂組成物よりも高い。本発明においては、特定の構造を有するエポキシ樹脂を添加することにより、高い透過率を達成できることがわかる。
【0106】
また、実施例3と実施例4の比較から、核剤の添加有無、核剤の種類は、ポリエスエル樹脂組成物中の(A)と(B)の相溶性、および透過率に影響することがわかる。
図1