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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両用ホイールカバー
(51)【国際特許分類】
   B60B 7/04 20060101AFI20250107BHJP
   B60B 19/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60B7/04 C
B60B19/00 K
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022033855
(22)【出願日】2022-03-04
(65)【公開番号】P2023129081
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 和俊
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-173801(JP,U)
【文献】実開平02-034301(JP,U)
【文献】特表2017-524601(JP,A)
【文献】実開昭56-065258(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0043616(US,A1)
【文献】特開2010-202171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 1/00-11/10
B60B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪のホイールに取り付けられ、前記ホイールの回転時に前記ホイールと一体で回転する本体部材と、
前記本体部材よりも車輪外側に配置され、前記本体部材に対して前記ホイールの回転軸方向に移動可能な補助部材と、
前記本体部材と前記補助部材との間において前記ホイールの回転中心から径方向外側にずれて配置され、前記ホイールの回転時に作用する遠心力により径方向外方に移動するウェイト部材と、
を備え、
前記本体部材及び前記補助部材の少なくとも何れか一方は、
前記回転中心側から径方向外方に延在し、前記ウェイト部材を案内するガイド部を有し、
前記補助部材は、
径方向に延在し、径方向一端部で前記本体部材に支持され、前記遠心力の大きさに応じた径方向位置で前記ウェイト部材に接し、前記ウェイト部材の径方向への移動に応じて径方向他端部が前記回転軸方向に移動するシャッタ部を有する、車両用ホイールカバー。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記回転中心を基点にして放射状に配置されるように複数箇所設けられ、
前記ウェイト部材は、複数箇所の前記ガイド部に対応して複数設けられている、請求項1に記載された車両用ホイールカバー。
【請求項3】
前記シャッタ部は、前記回転中心回りに並んで複数設けられており、
複数の前記シャッタ部それぞれの前記径方向他端部は、互いに異なる前記ウェイト部材の移動により前記回転軸方向に移動する、請求項2に記載された車両用ホイールカバー。
【請求項4】
前記補助部材を前記本体部材側に付勢する付勢力を発生する付勢部材を備える、請求項1乃至3の何れか一項に記載された車両用ホイールカバー。
【請求項5】
前記補助部材は、前記本体部材に前記付勢部材を介して支持され、前記回転軸方向に移動可能な可動体を有し、
前記シャッタ部は、前記径方向他端部で前記可動体に支持されている、請求項4に記載された車両用ホイールカバー。
【請求項6】
前記本体部材及び前記補助部材の少なくとも何れか一方は、前記ホイールの非回転時に前記ウェイト部材を所定径方向位置に保持するストッパ部を有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載された車両用ホイールカバー。
【請求項7】
前記シャッタ部は、径方向外端部で前記本体部材に支持され、前記ホイールの非回転時に径方向内側から径方向外側にかけて車輪外側に傾斜し、前記ホイールの回転時に前記遠心力が大きくなるほど傾斜角度が小さくなるように前記本体部材に対して揺動する、請求項1乃至6の何れか一項に記載された車両用ホイールカバー。
【請求項8】
前記シャッタ部は、径方向内端部で前記本体部材に支持され、前記ホイールの非回転時に径方向内側から径方向外側にかけて車輪内側に傾斜し、前記ホイールの回転時に前記遠心力が大きくなるほど傾斜角度が小さくなるように前記本体部材に対して揺動する、請求項1乃至6の何れか一項に記載された車両用ホイールカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪のホイールに取り付けられる車両用ホイールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪のホイールに取り付けられるホイールカバーが知られている(例えば、特許文献1)。このホイールカバーは、開口部が設けられたカバー本体を備えている。開口部は、ホイールの非回転時に開放されて、ブレーキ装置で発生する熱を外部に放出する役割を有している。また、上記のホイールカバーは、ホイールの回転時に作用する遠心力を利用してカバー本体の開口部を閉じる。これにより、車両走行中において開口部での気流の乱れを防止して空気抵抗を低減することができる。上記のホイールカバーは、カバー本体の開口部を開閉するシャッタ部を有している。シャッタ部は、カバー本体の回転中心からずれた位置にカバー本体に連結された一端部を有し、その一端部を支点にして回動することでカバー本体部の開口部を開閉する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-202171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1記載の車両用ホイールカバーの構造では、シャッタ部がカバー本体に軸支された状態で回動してそのカバー本体の開口部を開閉するので、シャッタ部がカバー本体の開口部を隙間なく閉じるうえで、カバー本体及びシャッタ部の少なくとも一方の形状を回転軸方向に突出させた形状とすることが必要である。しかし、この構造では、車両が走行している状態でもホイールカバーの表面に凹凸が形成されたまま残るので、車両走行時すなわちホイールの回転時に気流の乱れを有効に抑止できず空気抵抗の低減が十分でない。
【0005】
一方、ホイールの回転時において気流の乱れを防止するうえでは、ホイールカバーの外表面を凹凸の無い平面に形成することが考えられる。しかしながら、ホイールカバーの外表面が平面である構造が不変であると、ホイールの非回転時すなわち車両停車時にホイールカバーのデザイン性が損なわれて商品性が低下するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、ホイールの非回転時にデザイン性を確保しつつホイールの回転時に空気抵抗の低減を図ることが可能な車両用ホイールカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車輪のホイールに取り付けられ、前記ホイールの回転時に前記ホイールと一体で回転する本体部材と、前記本体部材よりも車輪外側に配置され、前記本体部材に対して前記ホイールの回転軸方向に移動可能な補助部材と、前記本体部材と前記補助部材との間において前記ホイールの回転中心から径方向外側にずれて配置され、前記ホイールの回転時に作用する遠心力により径方向外方に移動するウェイト部材と、を備え、前記本体部材及び前記補助部材の少なくとも何れか一方は、前記回転中心側から径方向外方に延在し、前記ウェイト部材を案内するガイド部を有し、前記補助部材は、径方向に延在し、径方向一端部で前記本体部材に支持され、前記遠心力の大きさに応じた径方向位置で前記ウェイト部材に接し、前記ウェイト部材の径方向への移動に応じて径方向他端部が前記回転軸方向に移動するシャッタ部を有する、車両用ホイールカバーである。
【0008】
この構成によれば、ホイールの非回転時にデザイン性を確保しつつホイールの回転時に空気抵抗の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車輪のホイールに取り付けられる車両用ホイールカバーの車両停止時の斜視図である。
図2】実施形態の車両用ホイールカバーの車両走行時の斜視図である。
図3】実施形態の車輪の分解斜視図である。
図4】実施形態の車両用ホイールカバーが備えるウェイト部材の斜視図である。
図5】実施形態の車両用ホイールカバーが備える本体部材と補助部材とウェイト部材との位置関係を表した断面図である。
図6】実施形態の車両用ホイールカバーの車両停止時の断面図である。
図7】実施形態の車両用ホイールカバーの車両走行時の断面図である。
図8】実施形態の車両用ホイールカバーの車両停止時の要部の拡大断面図である。
図9】実施形態の車両用ホイールカバーの車両走行時の要部の拡大断面図である。
図10】本発明の一変形形態に係る車両用ホイールカバーの車両停止時の要部の拡大断面図である。
図11】変形形態の車両用ホイールカバーの車両走行時の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図11を用いて、本発明に係る車両用ホイールカバーの具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
一実施形態の車両用ホイールカバー1は、車輪2を構成するホイール3の車輪外側(具体的には、車輪2における車体外側(例えば、車幅方向外側)に表出する外面側)を覆うカバー部材である。以下、車両用ホイールカバー1を単にホイールカバー1と称す。車輪2は、図1図2、及び図3に示す如く、ホイール3と、タイヤ4と、ホイールカバー1と、を備えている。
【0012】
ホイール3は、ハブ5(図3参照)を介して車軸に連結されており、車軸と一体で回転する回転体である。ホイール3は、鋳造や鍛造により円筒状に形成されている。ホイール3は、アルミニウム又はスチールにより構成されている。ホイール3は、ディスク部3aと、リム部3bと、を有している。ホイール3のディスク部3aは、回転制動時における放熱性を確保するために、スポーク状やメッシュ状,ディッシュ状に形成されている。リム部3bは、ホイール3の外縁部をなす筒状の部位である。リム部3bの車輪外側端の回転軸方向位置は、ディスク部3aの車輪外側端の回転軸方向位置よりも車輪外側である。すなわち、ディスク部3aの車輪外側端は、リム部3bの車輪外側端よりも車輪内側に位置している。
【0013】
尚、ホイール3は、何れの構造タイプであってもよく、ディスク部3aとリム部3bとが一体化された1ピース構造、ディスク部3aとリム部3bとが別体で構成された2ピース構造、更にリム部3bがアウタとインナとで分割された3ピース構造などであってよい。また、ホイール3は、ハブ5に取り付けられたブレーキディスク6とブレーキ装置7(図3参照)との間の摩擦により回転制動される。
【0014】
タイヤ4は、ホイール3の外周部を覆うゴム製の部材である。タイヤ4は、円筒状に形成されている。タイヤ4は、ホイール3のリム部3bに取り付けられている。タイヤ4は、車軸及びホイール3と一体で回転する。
【0015】
ホイールカバー1は、ホイール3の車輪外側の表面を覆う。ホイールカバー1は、車輪2のデザイン性を向上させる目的や車輪2の空力特性を向上させる目的で設けられる。ホイールカバー1は、ホイール3に取り付けられている。ホイールカバー1は、全体として円盤状に形成されている。
【0016】
尚、ホイールカバー1は、ホイール3に対して着脱可能であってよく、ホイール3とは別体で形成されていてよい。また、ホイールカバー1は、デザイン性や空力特性を考慮した形状に形成されていてよい。例えば、ホイールカバー1は、デザイン性向上のために彫りの深い立体形状に形成されていてよい。また、ホイールカバー1は、例えばホイール3の回転軸方向に貫通する貫通孔を有していてよい。この貫通孔は、例えば、ホイール3の回転中心から径方向に延在していてよい。
【0017】
ホイールカバー1は、図4図9に示す如く、本体部材10と、補助部材20と、ウェイト部材30と、付勢部材40と、を備えている。
【0018】
本体部材10は、ホイールカバー1の本体をなすカバー本体である。本体部材10は、全体として円盤状(詳細にはすり鉢状)に形成されている。本体部材10は、ホイール3に取り付けられており、ホイール3の回転時にホイール3と一体で回転する。本体部材10は、中央基部11と、リム部12と、連結部13と、を有している。本体部材10の中央基部11とリム部12と連結部13とは、互いに一体に形成されている。
【0019】
中央基部11は、ホイール3の回転中心を含む回転中心近傍に配置される円盤状の部位である。中央基部11は、ホイール3のディスク部3aよりも車輪外側においてそのディスク部3aの車輪外側の面に接して又は近接して配置されている。尚、中央基部11は、ディスク部3aの車輪外側の面に取り付けられるものであってもよい。
【0020】
リム部12は、本体部材10の外縁部をなす環状の部位である。リム部12の車輪外側端の回転軸方向位置は、中央基部11の車輪外側端の回転軸方向位置よりも車輪外側である。すなわち、中央基部11の車輪外側端は、リム部12の車輪外側端よりも車輪内側に位置している。
【0021】
連結部13は、中央基部11とリム部12とを連結する部位である。連結部13は、中央基部11とリム部12との間に介在して設けられている。連結部13は、径方向内側(すなわち、中央基部11との連結側)から径方向外側(すなわち、リム部12との連結側)にかけて車輪外側に傾斜している。尚、連結部13は、径方向内側から径方向外側にかけて直線状に延びていてもよいが湾曲状に延びていてもよい。連結部13は、例えば、ホイール3の回転中心を基点にして放射状に配置される複数本のスポークにより構成され、ホイール3の回転中心C回りに互いに隙間を空けて配置される複数の扇状片により構成され、或いは、ホイール3の回転中心C回りを囲む円錐状の傾斜面により構成されている。
【0022】
補助部材20は、本体部材10に対してホイール3の回転軸方向に移動可能な部材である。補助部材20は、本体部材10よりも車輪外側に配置されている。補助部材20は、車輪外側の形状が変化することにより車両走行中におけるホイールカバー1の空力特性を向上させる役割を有している。補助部材20は、本体部材10に支持されている。補助部材20は、可動体21と、シャッタ部22と、ヒンジ23と、ヒンジ24と、揺動吸収部25と、を有している。
【0023】
可動体21は、ホイール3の回転軸方向に移動可能な移動体である。可動体21は、例えば円盤状などの板状又は円柱状などの柱状に形成されている。可動体21は、本体部材10の中央基部11近傍に配置されており、ホイール3の回転中心C上で中央基部11よりも車輪外側に配置されている。可動体21は、中央基部11に付勢部材40を介して移動可能に支持されている。可動体21は、中央基部11に対向しながら中央基部11よりも車輪外側において回転軸方向に移動することができる。
【0024】
シャッタ部22は、ウェイト部材30に遠心力が作用したときに本体部材10に対して揺動する駆動部位である。シャッタ部22は、遠心力により揺動したときに、付勢部材40の付勢力に抗して可動体21を回転軸方向の外方Oに移動させる。また、シャッタ部22は、遠心力が消滅したときに、付勢部材40の付勢力により可動体21が回転軸方向の内方Iに移動するのに伴って元に戻るように揺動する。シャッタ部22は、板状に形成されており、径方向に延在すると共に周方向に延在している。
【0025】
シャッタ部22は、径方向外端部で本体部材10のリム部12に支持されている。シャッタ部22は、リム部12に対してヒンジ23を介して揺動可能である。また、シャッタ部22は、径方向内端部で可動体21に支持されている。シャッタ部22は、可動体21に対してヒンジ24を介して揺動可能である。シャッタ部22の揺動は、リム部12側である径方向外端部を支点として、可動体21側である径方向内端部を回転軸方向の外方Oに略直線的に移動させる揺動である。シャッタ部22は、複数設けられている。複数のシャッタ部22は、回転中心C回りに並んで配置されている。各シャッタ部22は、扇状に形成されている。
【0026】
シャッタ部22は、ホイール3の非回転時は、径方向内側から径方向外側にかけて車輪外側に傾斜している(図8に示す如く傾斜角度θ=θa)。また、シャッタ部22は、ホイール3の回転時は、後述のウェイト部材30の遠心力が大きくなるほど傾斜角度θ(<θa)が小さくなるようにリム部12及び可動体21それぞれに対して揺動する。尚、シャッタ部22の揺動は、ウェイト部材30の遠心力が所定上限値以上であるときに傾斜角度θがゼロに固定される(すなわち、シャッタ部22が鉛直面をなす)ように行われてよい。
【0027】
尚、回転中心C回りに隣接する二つのシャッタ部22同士の間には、ホイール3の非回転時において、ホイール回転時での互いの干渉を防止するための隙間が形成されていてよい。この隙間は、径方向に延在しており、例えば、径方向内側の部位ほど大きくなる幅を有していてよい。
【0028】
揺動吸収部25は、シャッタ部22の揺動前後に生じるヒンジ23とヒンジ24との径方向における相対距離(すなわち、シャッタ部22の径方向長さ)の変化を吸収する部位である。揺動吸収部25は、シャッタ部22ごとに対応して設けられている。揺動吸収部25は、孔部25aと、径方向移動部25bと、を有している。
【0029】
孔部25aは、可動体21に設けられた孔である。孔部25aは、可動体21の径方向外面に開口し、その開口から径方向内方に延びている。孔部25aは、可動体21において回転中心C回りに複数箇所設けられている。孔部25aは、所定角度間隔で配置されている。孔部25aの深さは、シャッタ部22の揺動時に径方向移動部25bの径方向内端が孔底面に接することの無いように設定されている。
【0030】
径方向移動部25bは、板状に形成されており、孔部25aに挿通されている。径方向移動部25bは、径方向外端部でヒンジ24を介してシャッタ部22の径方向内側を支持している。また、径方向移動部25bの径方向内端部は、孔部25aにフリーな状態で挿入されている。径方向移動部25bは、可動体21と一体で回転軸方向に移動すると共に、可動体21に対して径方向に移動することができる。
【0031】
ウェイト部材30は、ホイール3の回転時に遠心力が作用するマス部材である。ウェイト部材30は、本体部材10と補助部材20との間(具体的には、本体部材10の連結部13と補助部材20のシャッタ部22のシャッタ部22との間)に配置されており、ホイール3の回転中心Cから径方向外側にずれて配置されている。ウェイト部材30は、所定重量を有しており、遠心力により回転中心C側から径方向外方に移動する。ウェイト部材30は、図3に示す如く、円筒状に形成されている。尚、ウェイト部材30は、遠心力により径方向外方に移動するものであればよく、球状や楔状などに形成されていてもよい。ウェイト部材30は、ホイール3の非回転時を含んでもよいが少なくともホイール3の回転時、連結部13とシャッタ部22とに回転軸方向で挟持される。
【0032】
連結部13は、図5に示す如く、ガイド部13aを有している。ガイド部13aは、遠心力により径方向外方に移動する場合を含め径方向に移動するウェイト部材30を案内する部位である。ガイド部13aは、連結部13の車輪外側の面に形成されており、ホイール3の回転中心Cから径方向外方に延在している。尚、ガイド部13aは、延長線が回転中心Cを通る状態で径方向に直線状に延びていてもよいし、延長線が回転中心Cを通ることなく僅かに傾斜しながら径方向に延びていてもよいし、更に、径方向に湾曲して延びていてもよい。
【0033】
ガイド部13aは、それぞれ連結部13の車輪外側の面から車輪外側に突出する二つの壁部により構成されている。ガイド部13aの二つの壁部は、平行な状態で径方向外方に突出している。ウェイト部材30は、ホイール3の非回転時はガイド部13aの径方向内端側の位置(すなわち、原位置)に位置している。ウェイト部材30は、ホイール3が回転した場合、その回転に伴う遠心力によりガイド部13aの二つの壁部と連結部13の車輪外側の面とに位置規制されながら径方向外方に移動する。
【0034】
本体部材10は、図8及び図9に示す如く、ストッパ部14を有している。ストッパ部14は、ホイール3の非回転時にウェイト部材30を原位置に保持する部位である。ストッパ部14は、例えば、連結部13の車輪外側の面に凹状に形成される窪みなどである。ストッパ部14は、ウェイト部材30に作用する遠心力が所定下限値に達するまでウェイト部材30の径方向移動を規制する。本体部材10におけるストッパ部14の位置は、ウェイト部材30の遠心力によりシャッタ部22が径方向外方に移動し始めるタイミングを空力特性上で効率の良いものとする位置に調整されている。
【0035】
尚、ストッパ部14は、本体部材10に設けられることに代えて或いは本体部材10に設けられると共に、補助部材20に設けられることとしてもよい。この場合、補助部材20は、例えばシャッタ部22の車輪内側の面に凹状に形成されるストッパ部を有する。
【0036】
ガイド部13aは、複数のシャッタ部22に対応して複数箇所設けられている。ガイド部13aは、ホイール3の回転中心C回りに並んで配列されており、回転中心Cを基点にして放射状に配置されている。また、ウェイト部材30は、複数箇所のガイド部13aに対応して複数設けられている。各ウェイト部材30は一つずつ、連結部13の車輪外側の面に接しかつ対応のシャッタ部22の車輪内側の面に接した状態で対応のガイド部13aに案内される。複数のウェイト部材30は、互いに略同じ質量を有しており、遠心力により互いに同じタイミングで互いに同じ径方向位置まで移動する。
【0037】
尚、一つのシャッタ部22に対してガイド部13aが二箇所以上設けられると共にウェイト部材30が二以上設けられてもよい。また、ウェイト部材30は、原位置では連結部13とシャッタ部22とに挟持されていなくてよく、遠心力が所定以上に大きくなったときに連結部13及びシャッタ部22の双方に接して挟持されることとしてもよい。また、ウェイト部材30は、連結部13又はシャッタ部22に設けられた突起部などにより、傾斜角度θが初期角度θaからゼロになった後、それ以上、径方向外方に移動しないように位置規制されてよい。
【0038】
ウェイト部材30が連結部13及びシャッタ部22それぞれに接する径方向位置は、ウェイト部材30に付与される遠心力の大きさに応じた位置であって、遠心力が大きくなるほど径方向外側の位置となる。上記の如く、ウェイト部材30は、本体部材10の連結部13と補助部材20のシャッタ部22とに回転軸方向で挟持されている。シャッタ部22は、本体部材10のリム部12に対して揺動可能である。このため、ウェイト部材30が原位置から径方向外側に移動すると、そのウェイト部材30の移動に伴ってシャッタ部22が本体部材10に対して車輪外側に押圧されてリム部12に対してヒンジ23を介して揺動する。
【0039】
シャッタ部22がリム部12に対して揺動すると、シャッタ部22の径方向内端部が回転軸方向の外方Oに移動し、シャッタ部22の径方向内端部の回転軸方向位置が車輪外側に変化する。この場合には、径方向移動部25bが可動体21に対して径方向内側に移動しながら、シャッタ部22が径方向移動部25bに対してヒンジ24を介して揺動する。
【0040】
付勢部材40は、補助部材20を本体部材10側に付勢する付勢力を発生するバネ要素である。付勢部材40は、例えばスプリングやバネであり或いはゴムや樹脂などの弾性体である。付勢部材40は、図8及び図9に示す如く、本体部材10と補助部材20との間に介在している。具体的には、付勢部材40は、ホイール3の回転中心上に配置されており、中央基部11と可動体21との間に介在している。付勢部材40は、可動体21(ひいては、シャッタ部22の径方向内側を含む。)をホイール3の回転軸方向の内方Iに付勢する。
【0041】
付勢部材40は、可動体21を本体部材10の中央基部11に近接した中立位置に保持すると共に、その中立位置から可動体21が回転軸方向の外方Oに移動した場合にその可動体21を内方Iすなわち中立位置に戻す付勢力を発生する。この付勢部材40が発生した付勢力は、可動体21を中立位置に戻すと同時に、シャッタ部22を傾斜角度θがゼロから初期角度θaに変化するように戻し、ウェイト部材30を原位置に戻す力となる。
【0042】
次に、ホイールカバー1の動作について説明する。
ホイール3が回転していない非回転時は、ウェイト部材30は、ガイド部13aの径方向内側である原位置に位置している。この場合、補助部材20は、図1図6、及び図8に示す如く、付勢部材40の付勢力により可動体21が本体部材10の中央基部11に近接して中立位置に保持された状態にある。かかる状態では、ホイールカバー1における車輪外側の形状が凹凸のある立体形状となる。このため、ホイール3の非回転時には、車輪2のデザイン性が確保される。
【0043】
そして、ホイール3が回転すると、ウェイト部材30に、その回転に応じた遠心力が作用する。この遠心力が付勢部材40の付勢力よりも大きくなると、ウェイト部材30は、ガイド部13aに案内されながら径方向外方に移動する。ウェイト部材30が原位置から遠心力により径方向外方に移動すると、そのウェイト部材30の径方向外方への移動に伴ってシャッタ部22が本体部材10の連結部13に対して車輪外側に押圧されてリム部12に対してヒンジ23を介して揺動する。この場合には、シャッタ部22の径方向内端部が回転軸方向の外方Oに移動し、径方向移動部25bが可動体21に対して径方向内側に移動しながら、シャッタ部22が径方向移動部25bに対してヒンジ24を介して揺動する。
【0044】
上記の如くシャッタ部22がヒンジ24を介して揺動すると、可動体21が付勢部材40の付勢力に抗して回転軸方向の外方Oに移動する。この場合、補助部材20は、図2図7、及び図9に示す如く、付勢部材40の付勢力に抗して可動体21が本体部材10の中央基部11から離れた位置に保持されるように変形する。かかる状態では、すべてのシャッタ部22が鉛直面をなすことによりホイールカバー1の車輪外側の形状が平面形状となり又は凹凸の段差が小さいものとなる。このため、ホイール3の回転時には、ホイール3の非回転時にホイールカバー1の車輪外側に生じていた凹凸のある立体形状が解消され又はその凹凸の段差が小さくなるので、気流の乱れが抑制される。
【0045】
また、ホイール3の回転が減速すると、ウェイト部材30に作用していた遠心力が小さくなり、やがて、ホイール3の回転が停止した場合にその遠心力がゼロになる。ウェイト部材30の遠心力が付勢部材40の付勢力よりも小さくなると、ウェイト部材30が径方向内方へ移動して戻される。ウェイト部材30が径方向内方に移動すると、補助部材20のシャッタ部22がウェイト部材30から車輪外側に押圧される力が小さくなる。この場合には、可動体21が付勢部材40の付勢力に抗して中立位置よりも外方O側に保持される状態が維持されなくなり、可動体21がその付勢部材40の付勢力により回転軸方向の内方Oに移動する。補助部材20は、付勢部材40の付勢力により可動体21が本体部材10の中央基部11に近接して中立位置に保持されるように変形する。
【0046】
具体的には、可動体21が回転軸方向の内方Oに移動すると、その移動に伴って径方向移動部25bが回転軸方向の内方Oに移動しかつ可動体21に対して径方向外側に移動しながら、シャッタ部22が径方向移動部25bに対してヒンジ24を介して揺動しかつリム部12に対してヒンジ23を介して揺動する。この場合には、シャッタ部22の径方向内端部が回転軸方向の内方Oに移動すると共に、ウェイト部材30がガイド部13aに案内されながら径方向内方に移動して原位置に戻る。かかる状態では、ホイールカバー1における車輪外側の形状が凹凸のある立体形状に戻り、ホイール3の非回転時において車輪2のデザイン性が確保される。
【0047】
従って、ホイールカバー1によれば、ホイール3の非回転時と回転時とで繰り返し補助部材20を変形させることで、ホイール3の非回転時すなわち車両停止時にデザイン性を確保しつつ、ホイール3の回転時すなわち車両走行時に空気抵抗の低減を図ることができる。これにより、車両の走行効率すなわち燃費性能や電力の消費効率を向上させることができる。
【0048】
また、ホイールカバー1によれば、ホイール3の非回転時と回転時とで繰り返し補助部材20を変形させるうえで、ウェイト部材30に作用する遠心力を用いるので、電気モータによる電力を用いることは不要である。このため、補助部材20を変形させるための構造の簡素化及び重量低減を図ることができると共に、その構造を安価に実現することができる。
【0049】
また、ホイールカバー1によれば、ホイール3の非回転時にウェイト部材30を原位置に保持するストッパ部14が設けられている。このため、ホイール3の非回転時において、風や振動などの外力でウェイト部材30が径方向外方に移動するのを抑えることができ、これにより、補助部材20の変形を抑えることができる。また、ストッパ部14は、ウェイト部材30の遠心力によりシャッタ部22が径方向外方に移動し始めるタイミングを空力特性上で効率の良いものとする位置に形成されている。このため、車両走行開始後におけるホイールカバー1での空気抵抗の低減を効率的なものとすることができる。
【0050】
ところで、上記の実施形態においては、付勢部材40が中央基部11と可動体21との間に介在してホイール3の回転中心上に配置されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、付勢部材40は、補助部材20を本体部材10側に付勢する付勢力を発生すればよく、ホイール3の回転中心上に配置されていなくてもよい。例えば、付勢部材40は、本体部材10の連結部13と補助部材20のシャッタ部22との間に介在していてもよい。
【0051】
また、上記の実施形態においては、補助部材20が、シャッタ部22とは別に、ホイール3の回転軸方向に移動する可動体21を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、シャッタ部22が可動体21の機能を兼用していてもよい。例えば、シャッタ部22の径方向内端部が、他の部材に支持されることなく付勢部材40の一端に支持され、付勢部材40がシャッタ部22の径方向内端部と本体部材10の中央基部11との間に介在するようにしてもよい。
【0052】
また、上記の実施形態においては、補助部材20のシャッタ部22がホイール3の非回転時に径方向内側から径方向外側にかけて車輪外側に傾斜している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、図10及び図11に示す如く、補助部材20のシャッタ部22がホイール3の非回転時に径方向内側から径方向外側にかけて車輪内側に傾斜する態様に適用することとしてもよい。
【0053】
この変形形態において、可動体21は、例えば円環状に形成されており、本体部材10のリム部12の径方向内側に配置されている。可動体21は、連結部13に付勢部材40を介して移動可能に支持されている。可動体21は、連結部13に対向しながら連結部13よりも車輪外側において回転軸方向に移動することができる。シャッタ部22は、径方向外端部で可動体21に支持されていると共に、径方向内端部で本体部材10の中央基部11に支持されている。シャッタ部22は、可動体21に対して揺動可能であると共に、中央基部11に対してヒンジ23を介して揺動可能である。
【0054】
シャッタ部22は、ホイール3の非回転時は径方向内側から径方向外側にかけて車輪内側に傾斜している(図8に示す如く傾斜角度θ=θb)。シャッタ部22は、ホイール3の回転時は、ウェイト部材30の遠心力が大きくなるほど傾斜角度θ(<θb)が小さくなるように可動体21及びリム部12それぞれに対して揺動する。
【0055】
本体部材10は、揺動吸収部15を有している。揺動吸収部15は、シャッタ部22の揺動前後に生じるシャッタ部22の径方向長さの変化を吸収する部位である。揺動吸収部15は、シャッタ部22ごとに対応して設けられている。揺動吸収部15は、孔部15aと、径方向移動部15bと、を有している。
【0056】
孔部15aは、中央基部11に設けられた孔である。孔部25aは、中央基部11の径方向外面に開口し、その開口から径方向内方に延びている。孔部15aは、中央基部11において回転中心C回りに複数箇所設けられている。孔部15aは、所定角度間隔で配置されている。孔部15aの深さは、シャッタ部22の揺動時に径方向移動部15bの径方向内端が孔底面に接することの無いように設定されている。径方向移動部15bは、板状に形成されており、孔部15aに挿通されている。径方向移動部15bは、径方向外端部でヒンジ23を介してシャッタ部22の径方向内側を支持している。また、径方向移動部15bの径方向内端部は、孔部15aにフリーな状態で挿入されている。径方向移動部15bは、回転軸方向に移動することができない一方、中央基部11に対して径方向に移動することができる。
【0057】
この変形形態においても、上記実施形態と同様に、補助部材20を変形させる動作を行うことができ、これにより、ホイール3の非回転時すなわち車両停止時にデザイン性を確保しつつ、ホイール3の回転時すなわち車両走行時に空気抵抗の低減を図ることができる。
【0058】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1:車両用ホイールカバー(ホイールカバー)、2:車輪、3:ホイール、10:本体部材、11:中央基部、12:リム部、13:連結部、13a:ガイド部、20:補助部材、21:可動体、22:シャッタ部、23,24:ヒンジ、25:揺動吸収部、30:ウェイト部材、40:付勢部材。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11