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特許7613430健康管理システム、健康管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】健康管理システム、健康管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20250107BHJP
【FI】
G16H20/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022126833
(22)【出願日】2022-08-09
(65)【公開番号】P2024024185
(43)【公開日】2024-02-22
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中島 一誠
(72)【発明者】
【氏名】宮川 透
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 英男
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕介
(72)【発明者】
【氏名】薛 冰
(72)【発明者】
【氏名】森 勇太
(72)【発明者】
【氏名】本間 崇史
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-043644(JP,A)
【文献】特開2020-106965(JP,A)
【文献】特開2021-176073(JP,A)
【文献】特開2020-146345(JP,A)
【文献】特開2006-130026(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113516773(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データに基づき、前記通行者の移動の様子を判定する第1判定部と、
前記第1判定部での判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出する算出部と、
前記算出部で算出された前記指標を表示する表示部と、
を備える健康管理システム。
【請求項2】
前記表示部は、前記所定区域毎に算出された前記指標を、ランキング形式で表示する、
請求項1に記載の健康管理システム。
【請求項3】
前記表示部は、前記所定区域における屋外に配設された表示装置を含む、
請求項1又は2に記載の健康管理システム。
【請求項4】
前記第1判定部は、前記通行者の移動の様子を判定するとともに、前記画像データに含まれる顔画像のデータに基づき前記通行者の健康状態を判定する、
請求項1又は2に記載の健康管理システム。
【請求項5】
前記算出部は、前記第1判定部での判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の通行速度の統計値を算出し、
前記表示部は、前記指標としてあるいは前記指標の一部として、前記統計値を表示する、
請求項1又は2に記載の健康管理システム。
【請求項6】
前記算出部は、前記統計値に基づき通行速度の目標値を決定し、
前記表示部は、前記指標としてあるいは前記指標の一部として、前記統計値及び前記目標値を表示する、
請求項5に記載の健康管理システム。
【請求項7】
前記画像データに基づき、前記通行者を前記所定区域内に居住する居住者であるか否かを判定し、前記居住者である場合に前記居住者の実年齢を判定する居住者判定部を備え、
前記算出部は、前記居住者についての前記第1判定部での判定結果に基づき前記所定区域内に存在し且つ居住する人全体についての健康年齢と実年齢との差異の統計値である第1統計値を算出し、前記居住者以外についての前記第1判定部での判定結果に基づき前記所定区域内に存在し且つ居住しない人全体についての健康年齢である非居住者健康年齢を算出し、前記指標としてあるいは前記指標の一部として、前記第1統計値及び前記非居住者健康年齢に基づき、前記所定区域内に存在する人全体についての健康年齢と実年齢との差異の統計値を算出する、
請求項1又は2に記載の健康管理システム。
【請求項8】
前記通行者が携帯する端末装置から前記通行者の健康状態の判定に用いる被判定データを取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記被判定データに基づき前記通行者の健康状態を判定する第2判定部と、
を備え、
前記算出部は、前記第1判定部での判定結果及び前記第2判定部での判定結果に基づき、前記指標を算出する、
請求項1又は2に記載の健康管理システム。
【請求項9】
前記所定区域毎に、前記算出部で算出された前記指標に基づき、前記所定区域での生活に関わる予め定められた情報を変更するための変更指示を生成する生成部を備える、
請求項1又は2に記載の健康管理システム。
【請求項10】
前記生成部は、前記所定区域に居住する居住者の属性毎に、前記変更指示を生成する、
請求項9に記載の健康管理システム。
【請求項11】
前記所定区域毎に付与するインセンティブを、前記算出部で算出された前記指標に基づき算出するインセンティブ算出部を備える、
請求項1又は2に記載の健康管理システム。
【請求項12】
コンピュータが、所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データに基づき、前記通行者の移動の様子を判定し、
前記コンピュータが、その判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出し、
前記コンピュータが、算出した前記指標を、前記コンピュータの外部に接続された又は前記コンピュータに備えられた表示装置に表示させる制御を行う、
健康管理方法。
【請求項13】
コンピュータに、
所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データに基づき、前記通行者の移動の様子を判定し、
その判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出し、
算出した前記指標を、前記コンピュータの外部に接続された又は前記コンピュータに備えられた表示装置に表示させる、
処理を、実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、健康管理システム、健康管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、標的の生体情報を取得し、上記標的と同じ属性の集団の生体情報の集合分布における上記標的の位置を特定し、上記標的と別の属性の集団の生体情報の集合分布における上記位置に対応する生体情報を特定し、特定した生態情報を入力として用い、予測モデルを用いて上記標的の健康状態を推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-166441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、標的である個人又は予め定められた人の集団についての健康状態を推定することはできるが、個人又は予め定められた集団を特定してその個人の生体情報又はその集団の生体情報を取得しなければならない。よって、特許文献1に記載の技術では、例えば地方公共団体などの所定区域に出入りする人々も含め、所定区域内に存在する(居る)人々全体の健康状態を推定することはできず、また所定区域内に存在する人々全体の健康状態を向上させることもできない。
【0005】
本開示は、上記に示す課題を鑑みてなされたものであり、所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルを向上させることが可能な健康管理システム、健康管理方法、及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる健康管理システムは、所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データに基づき、前記通行者の移動の様子を判定する第1判定部と、前記第1判定部での判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出する算出部と、前記算出部で算出された前記指標を表示する表示部と、を備えるものである。前記健康管理システムでは、所定区域内に存在する人々についての所定区域全体の健康状態を示す情報を表示することができるため、所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルを向上させることができる。
【0007】
前記表示部は、前記所定区域毎に算出された前記指標を、ランキング形式で表示するようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、他の所定区域との健康状態の比較ができるため、より所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0008】
前記表示部は、前記所定区域における屋外に配設された表示装置を含むようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、所定区域の健康状態を屋外で確認することができるため、確認した時点からの屋外での人々の行動を変えることができ、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0009】
前記第1判定部は、前記通行者の移動の様子を判定するとともに、前記画像データに含まれる顔画像のデータに基づき前記通行者の健康状態を判定するようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、より多元的に通行者の健康状態を判定することができるため、表示させる所定区域全体の健康状態を示す情報をより正確な情報とすることができる。
【0010】
前記算出部は、前記第1判定部での判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の通行速度の統計値を算出し、前記表示部は、前記指標としてあるいは前記指標の一部として、前記統計値を表示するようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、表示させる所定区域全体の健康状態を示す情報をより人々に分かり易い情報とすることができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0011】
ここで、前記算出部は、前記統計値に基づき通行速度の目標値を決定し、前記表示部は、前記指標としてあるいは前記指標の一部として、前記統計値及び前記目標値を表示するようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、所定区域内の人々に目標意識を持たせることができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0012】
前記健康管理システムは、前記画像データに基づき、前記通行者を前記所定区域内に居住する居住者であるか否かを判定し、前記居住者である場合に前記居住者の実年齢を判定する居住者判定部を備え、前記算出部は、前記居住者についての前記第1判定部での判定結果に基づき前記所定区域内に存在し且つ居住する人全体についての健康年齢と実年齢との差異の統計値である第1統計値を算出し、前記居住者以外についての前記第1判定部での判定結果に基づき前記所定区域内に存在し且つ居住しない人全体についての健康年齢である非居住者健康年齢を算出し、前記指標としてあるいは前記指標の一部として、前記第1統計値及び前記非居住者健康年齢に基づき、前記所定区域内に存在する人全体についての健康年齢と実年齢との差異の統計値を算出するようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、居住者についての或る程度正確な健康年齢と実年齢との差異を用いて所定区域内に存在する人全体についての健康年齢と実年齢との差異を算出することができるだけでなく、その算出結果に基づき、所定区域内の人々に目標意識を持たせることができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0013】
前記健康管理システムは、前記通行者が携帯する端末装置から前記通行者の健康状態の判定に用いる被判定データを取得する取得部と、前記取得部で取得された前記被判定データに基づき前記通行者の健康状態を判定する第2判定部と、を備え、前記算出部は、前記第1判定部での判定結果及び前記第2判定部での判定結果に基づき、前記指標を算出するようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、より多元的に通行者の健康状態を判定することができるため、表示させる所定区域全体の健康状態を示す情報をより正確な情報とすることができる。
【0014】
前記健康管理システムは、前記所定区域毎に、前記算出部で算出された前記指標に基づき、前記所定区域での生活に関わる予め定められた情報を変更するための変更指示を生成する生成部を備えるようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、所定区域内において生活に係わる予め定められた情報を変更することができ、変更後の情報に基づき人々が行動することができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0015】
ここで、前記生成部は、前記所定区域に居住する居住者の属性毎に、前記変更指示を生成するようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、所定区域内において生活に係わる予め定められた情報を居住者の属性毎に変更することができ、変更後の情報に基づき居住者が行動することができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0016】
前記健康管理システムは、前記所定区域毎に付与するインセンティブを、前記算出部で算出された前記指標に基づき算出するインセンティブ算出部を備えるようにしてもよい。これにより、前記健康管理システムでは、所定区域毎に算出されたインセンティブを、各所定区域について付与することができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0017】
本開示にかかる健康管理方法は、コンピュータが、所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データに基づき、前記通行者の移動の様子を判定し、前記コンピュータが、その判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出し、前記コンピュータが、算出した前記指標を、前記コンピュータの外部に接続された又は前記コンピュータに備えられた表示装置に表示させる制御を行う、ものである。前記健康管理方法では、所定区域内に存在する人々についての所定区域全体の健康状態を示す情報を表示させることができるため、所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルを向上させることができる。
【0018】
本開示にかかるプログラムは、コンピュータに、所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データに基づき、前記通行者の移動の様子を判定し、その判定結果に基づき、前記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出し、算出した前記指標を、前記コンピュータの外部に接続された又は前記コンピュータに備えられた表示装置に表示させる、処理を、実行させるためのプログラムである。前記プログラムでは、所定区域内に存在する人々についての所定区域全体の健康状態を示す情報を表示させることができるため、所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルを向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルを向上させることが可能な健康管理システム、健康管理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る健康管理システムの一構成例を示すブロック図である。
図2図1の健康管理システムにおける処理の一例を説明するためのフロー図である。
図3図1の健康管理システムのより具体的な構成例を示すブロック図である。
図4図3の健康管理システムにおけるカメラ及び表示装置の配置例を示す概略上面図である。
図5図3の健康管理システムにおいて表示装置に表示される表示画像の一例を示す概略図である。
図6図3の健康管理システムにおいて表示装置に表示される表示画像の他の例を示す概略図である。
図7図1の健康管理システムのより具体的な他の構成例を示すブロック図である。
図8図7の健康管理システムにおいて表示装置に表示される表示画像の一例を示す概略図である。
図9図3又は図7の健康管理システムにおいて利用される学習モデルを生成する学習システムの一構成例を示すブロック図である。
図10図9の学習システムで用いられる教師データの一例を示す図である。
図11】装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。
【0022】
<実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る健康管理システムの一構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る健康管理システム1は、第1判定部1a、算出部1b、及び表示部1cを備えることができる。
【0023】
第1判定部1aは、所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データに基づき、その通行者の移動の様子を判定する。この画像データは、所定区域内に設置されたカメラから通行者を撮影したデータとして取得されることができる。このような画像データの取得のために、健康管理システム1は、図示しない画像取得部を備えることができる。この画像取得部は通信部を備えることができる。上記画像取得部及びカメラは、通行者をカメラで撮影してその画像データを取得することから、通行者を監視する監視部に相当する。カメラは、撮像装置である。
【0024】
ここで、所定区域とは、予め定めた区域であればよく、例えば1つの地方公共団体、隣接する複数の地方公共団体、1つの商店街等の商業区域、会社の敷地又は建物など、様々な地理的な区域が挙げられる。所定区域は、通行者を管理する区域となる。よって、例えば会社の敷地又は建物を所定区域と設定する場合でも、通行者は社員に限らず訪問者も含めることになる。また、例えば、所定区域の一つを第1の地方公共団体(例えば東京都)とし所定区域の他の一つを第1の地方公共団体に隣接する第2の地方公共団体(例えば埼玉県)とした場合において、第2の地方公共団体を住居とするも第1の地方公共団体を訪れている人が居た場合、次のようになる。即ち、その人は第1の地方公共団体で通行者としてその移動の様子が判定され、後述の算出時にも第1の地方公共団体内に存在する通行者としてカウントされることになる。
【0025】
また、カメラの設置場所は、所定区域として会社の建物を例示していることからも分かるように、屋外だけに限らず、屋内も含めてもよい。例えば、カメラは、所定区域に入るゲートや所定区域内のその他の様々な場所に配置した1又は複数のセンシングエリアに設置されることができる。各設置場所におけるセンシングエリアはセンシングゾーンと称することもできる。また、例えば通行者の移動の様子は健康状態の管理に用いることから、このセンシングゾーンはヘルスケアゾーンと称することもできる。このヘルスケアゾーンは、ユーザがそのゾーンを歩行等で通過するだけで健康状態を示す各種データを取得するゾーンとして設置されることができる。ヘルスケアゾーンは、カメラやその他の情報の取得に必要な各種センサと、カメラや他のセンサを支持するポール又はゲート等の支持体と、カメラで撮像した撮像データ(画像データ)や他のセンサによる計測結果を送信する通信部と、を備えることができる。ヘルスケアゾーンは、カメラの設置場所として説明したように、所定区域のうち例えば所定区域の入口など人が通過する可能性が高い場所に少なくとも設置しておくことができ、またその場所から連続的に例えば一定間隔を空けて設置しておくこともでき、バスの停留所に設置しておくこともできる。また、カメラは防犯カメラとして利用することで、所定区域のセキュリティを向上させることもできる。
【0026】
また、通行者の移動の様子とは通行者の通行の様子を指す。通行者の移動とは、歩行者の歩行や走行、自転車に載って移動している人の走行など、運動を伴う通行を指すことができる。よって、通行者の移動には、基本的に自動車や自動二輪車等の運転による移動を除くことができるが、例えば顔画像から移動の様子を判定することもできるため、そのような判定を行う場合には自動車や自動二輪車等の運転による移動も含めることができる。
【0027】
算出部1bは、第1判定部1aでの判定結果に基づき、上記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出する。算出部1bは、指標として、例えば歩行の様子、歩容、健康年齢などの統計値を、統計演算により、あるいは学習モデルを用いるなどして算出することができる。ここで、健康年齢とは、一般的に健康診断により測定される各種測定値に基づき算出される年齢を指すが、ここでの健康年齢はそれに合わせるように画像データから得られる情報から推測された年齢とすることができ、その定義は問わない。
【0028】
換言すれば、第1判定部1aでは、算出部1bでのこのような指標の算出を可能とする値、例えば各通行者についての歩行の様子、歩容、健康年齢などの値を、判定結果として得ることができる。算出部1bは、指標を推測値として算出すること、つまり推測することもできる。なお、この集団健康状態は、上記所定区域内の健康状態を指すため、区域健康状態と称することもできる。また、健康管理システム1は、このような算出を行うため健康状態算出システムと称することもできる。
【0029】
表示部1cは、算出部1bで算出された指標を表示する。表示部1cは、1又は複数の表示装置と、それらの表示装置への表示を制御する表示制御部と、を備えることができる。表示部1cは、指標を可視化すればよいが、例えば先週と今週の比較などの以前の指標との比較結果を表示することもできる。また、指標としては、今日、今週、今月などの所定期間での全体の健康年齢を示す値を算出して表示させることもできる。また、天気予報における天気の表示方法と同様に、マップ上に各所定区域の指標を表示させてもよい。
【0030】
また、上述した第1判定部1a、算出部1b、及び表示制御部は、健康管理システム1の全体を制御する制御部として具備されることができる。この制御部は、例えば、集積回路(Integrated Circuit)によって実現されることができ、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、作業用メモリ、及び不揮発性の記憶装置などによって実現されることができる。この記憶装置にプロセッサによって実行される制御用のプログラムを格納しておき、プロセッサがそのプログラムを作業用メモリに読み出して実行することで、第1判定部1aでの判定機能、算出部1bでの算出機能、及び表示制御部での表示制御機能を果たすことができる。
【0031】
次に、図2を参照しながら、健康管理システム1で実行される健康管理方法の一例について説明する。図2は健康管理システム1における処理の一例を説明するためのフロー図である。
【0032】
この健康管理方法では、まず、第1判定部1aが所定区域内に設置されたカメラで通行者を撮影した画像データを入力し、その画像データに基づき、通行者の移動の様子を判定する(ステップS1)。次いで、算出部1bがその判定結果に基づき、上記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出する(ステップS2)。次いで、表示部1cが算出された指標を表示し(ステップS3)、処理を終了する。
【0033】
なお、この健康管理方法はコンピュータが主体となって実行することができ、ステップS3については、このコンピュータが、外部に接続された又はそのコンピュータに備えられた表示装置に、算出した指標を表示させる制御を行うことになる。上述の制御用のプログラムは、コンピュータに、このような健康管理方法で示される処理を実行させるためのプログラムを含むことができる。
【0034】
以上に説明したように、健康管理システム1では、例えば地方公共団体などの所定区域内に出入りする人々も含め、所定区域内に存在する人々についての、つまり所定区域内に画像データ取得時点で居る人々についての、所定区域全体としての健康状態を把握することができる。そして、健康管理システム1では、把握した所定区域全体の健康状態を示す情報を表示することができる。よって、健康管理システム1によれば、所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルを向上させることができる。なお、健康レベルは、健康状態を示すレベルを指す。
【0035】
次に、健康管理システム1のより具体的な構成例について、図3図6を参照しながら説明する。図3は、図1の健康管理システムのより具体的な構成例を示すブロック図である。図4は、図3の健康管理システムにおけるカメラ及び表示装置の配置例を示す概略上面図である。図5図3の健康管理システムにおいて表示装置に表示される表示画像の一例を示す概略図で、図6図3の健康管理システムにおいて表示装置に表示される表示画像の他の例を示す概略図である。
【0036】
図3に示す健康管理システム2は、健康管理装置10と、複数の表示装置20a,20b,・・・と、複数のカメラ30a,30b,・・・と、を備えることができる。無論、カメラ30a等は健康管理システム1の一例の構成要素に含めないこともできる。なお、以下では、表示装置20a,20b,・・・について個々を区別しない場合には表示装置20と称して説明を行う。同様に、カメラ30a,30b,・・・について個々に区別しない場合にはカメラ30と称して説明を行う。
【0037】
健康管理装置10は、健康管理装置10の全体を制御する制御部11、記憶装置で構成される記憶部12、及び、外部装置との通信を行う通信インターフェース等で構成される通信部13を備えることができる。健康管理装置10は、例えばコンピュータを含んで構成することができる。健康管理装置10は単体で構成することができるが、その機能を分散した分散システムとして構成することもできる。
【0038】
制御部11は、第1判定部1a及び算出部1bを備えるとともに、表示制御部における通信のためのインターフェース以外の機能を備えるものとする。なお、表示制御部における通信のためのインターフェースの機能は、通信部13が担う。通信部13は、画像取得部の一例としても機能し、カメラ30で取得された画像データの、カメラ30からの受信を行う。
【0039】
制御部11は、例えば、プロセッサ、作業用メモリ、及び不揮発性の記憶装置などによって実現されることができる。この記憶装置にプロセッサによって実行される制御用のプログラムを格納しておき、プロセッサがそのプログラムを作業用メモリに読み出して実行することで、制御部11の機能を果たすことができる。なお、記憶部12は、この記憶装置の一部の記憶領域を利用することができる。この制御用のプログラムには、第1判定部1aにおける判定機能を実現するためのプログラムと、算出部1bにおける算出機能を実現するためのプログラムと、表示制御部における表示制御機能を実現するためのプログラムと、を含むことができる。その場合、プロセッサがそのプログラムを作業用メモリに読み出して実行することで、それらの機能を果たすことができる。なお、制御用のプログラムに含まれない機能はハードウェア構成により実現されることができる。
【0040】
制御部11は、所定区域内に設置されたカメラ30で通行者を撮影(撮像)した画像データをカメラ30から通信部13を介して受信し、それらの画像データに基づき、その通行者の移動の様子を判定する。カメラ30で撮像されカメラ30から受信される画像データは、静止画像データ、あるいは所定間隔で撮像された一連の静止画像データ、あるいは動画像データとすることができる。移動の様子とは、上述したように、例えば歩行の様子、歩容、健康年齢などとすることができる。このうち歩行の様子、歩容の判定結果は、それぞれ標準的な歩行の様子、歩容からの差を示す値などとして、得ることができる。
【0041】
制御部11は、通行者の移動の判定結果に基づき、上記所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を算出する。制御部11は、指標として、例えば歩行の様子、歩容、健康年齢などの統計値を、記憶部12に記憶された学習モデル12aを用いて算出することができる。学習モデル12aは、判定結果を入力し、上記指標を出力するように機械学習されたモデルであり、そのアルゴリズム等は問わない。
【0042】
あるいは、制御部11は、所定区域内に設置されたカメラ30で通行者を撮影した画像データをカメラ30から通信部13を介して受信し、記憶部12に記憶しておいた学習モデルを用いて、それらの画像データから上記指標を算出することもできる。この場合の学習モデルは、学習モデル12aとは異なり、画像データを入力し、上記指標を出力するように機械学習されたモデルである。この学習モデルのアルゴリズム等は問わない。
【0043】
そして、制御部11は、算出された指標を表示装置20に表示させる制御を行う。表示装置20では、指標を可視化できればよいが、例えば先週と今週の比較などの以前の指標との比較結果を表示させてもよい。また、指標としては、今日、今週、今月などの所定期間での全体の健康年齢を示す値を算出して表示させることもできる。また、天気予報における天気の表示方法と同様に、マップ上に各所定区域の指標を表示させてもよい。
【0044】
このような指標の算出及び表示のタイミングは、例えば、1日などの所定期間について取得された画像データから処理を行うことができる。この場合、制御部11は、重複する人を除外するために、画像データ間で顔認証処理を行うことができる。そして、制御部11は、所定期間中に複数回撮影された通行者の画像データのうち、最も古いデータ又は最も新しいデータなどを選択するか、あるいは統計をとってその通行者の移動の様子を最も表現する画像データを選択するなどの処理を行い、その結果の画像データを学習モデル12aへの入力として用いることができる。
【0045】
記憶部12は、上述した学習モデル12aを記憶し、その他、制御部11における制御に必要な設定値などを記憶する。学習モデル12aは、通行者の移動の判定結果を入力し、各所定区域それぞれについて、所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を出力する学習モデルであり、そのアルゴリズム等は問わない。また、入力パラメータもこれらに限ったものではない。
【0046】
学習モデル12aは、例えば次のようにして得ることができる。即ち、各通行者の移動の判定結果と、そのときの各通行者についての健康年齢等を統計処理して得た統計値(指標)を示す正解データとを含むデータセットを、未学習の学習モデルに入力して機械学習を行うことで、学習モデル12aを得ることができる。例えば判定のタイミング及び所定区域の少なくとも一方が互いに異なる複数のデータセットを学習に用いることができる。このような統計値に限らず、通行者の指標は、例えばモデル作成者等が決定したものを使用することができる。学習モデル12aは、過学習にならない程度の多くのタイミングや所定区域についてのデータセットを学習させることで、正確に集団健康状態を示す指標を判定できるモデルとすることができる。なお、このような学習を行うシステムについては後述する。
【0047】
通信部13は、カメラ30との有線ネットワークを介した通信を行い、カメラ30で撮影された画像データを制御部11へ渡すこと、並びに、表示装置20との有線ネットワークを介した通信を行い、制御部11からの制御により表示画像を表示装置20へ出力する。なお、いずれのネットワークも無線ネットワークであってもよく、また通信部13におけるカメラ30や表示装置20との通信の方式も問わない。
【0048】
カメラ30は、所定区域内に設置されたカメラであり、撮像された画像データを、有線ネットワークを介して健康管理装置10へ送信する。送信のタイミングは、例えば所定間隔であってもよいし、人物検知機能を備えておけば、人物を撮像できたタイミングであってもよい。カメラ30はその送信のために、通信インターフェースを内蔵又は接続しておくことができる。
【0049】
ここでは、図4に示す領域を所定区域とし、そこに複数のカメラ30が設けられている例を挙げる。図4に示す領域には、車線(車道)51~53及び歩道54,55を備えた幹線道路と、車道56,57及び歩道58,59を備え幹線道路を横断する1本目の中小道と、車道60,61及び歩道62,63を備え幹線道路の末端において幹線道路とともにT字路を構成する2本目の中小道とを備える。その他、図4で示すこの領域には、1本目の中小道の車道56,57を横断する2つの横断歩道50が設けられ、1本目の中小道に沿って幹線道路の車道51~53の上を歩行で横断できるように歩道橋64,65が設けられている。また、図4では、図示する領域内に、ユーザU1,U2、自動車M1、及び、自律移動バス等の自律移動車M2が存在する状態を示している。但し、人や自動車等は常に移動しているため、ここではある一瞬の状態を図示しているに過ぎない。
【0050】
図4に示す領域に設けられるカメラ30としては、この所定区域の出入り口に該当する歩道54,55のそれぞれにおいてカメラ30を含むセンサ類が設けられたセンシングゾーン30a,30fが設けられており、その他、歩道54においてカメラ30b,30cが、歩道55においてカメラ30d,30eが設けられている。センシングゾーンは、その図示を省略しているが、歩道58,59,62,63における上記領域の出入り口にも設けられることができる。カメラ30b,30c、カメラ30d,30eは、例えばそれぞれ歩道54、歩道55に設けられたポールに設置されることができる。センシングゾーン30a,30fは歩道54の両端を跨ぐアーチにセンサ類を設置したものとすることができるが、カメラ30b等と同様にポールにセンサ類を設置したものとすることもできる。
【0051】
健康管理システム2に設けられる表示装置20の少なくとも1つは、所定区域における屋外に配設された、デジタルサイネージ等の表示装置とすることができる。図4の例では、歩道54に設けられたデジタルサイネージ20j、歩道55に設けられたデジタルサイネージ20k、及び車道51用のデジタルサイネージ20pが表示装置20として設置されている。なお、運転中は余計な情報を提供しないことが望ましいとも言えるため、このうちデジタルサイネージ20pには、算出された指標の表示を行わなくてもよい。このような屋外での表示を採用することで、健康管理システム2では、所定区域の健康状態を屋外で確認することができるため、確認した時点からの屋外での人々の行動を変えることができ、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0052】
表示対象の表示装置20を指定するために、図示しないが、記憶部12には、表示装置20の位置を示す位置情報、あるいは表示装置20が設置された所定区域を示す情報が記憶されている。これにより、所定区域に対応する表示装置20にその所定区域について算出された指標を表示させる指示を行うことができる。なお、位置情報は、緯度経度を示す情報、あるいはマップデータ上の座標を示す情報など、位置が特定される情報であればよい。
【0053】
また、制御部11は、表示装置20に対し、所定区域毎に算出された指標をランキング形式で表示するように制御することができる。例えば、図5に示すように、表示装置20には、所定区域を隣接するA~E市のそれぞれとし、算出された健康年齢をランキング形式で示す表示画像を表示させることができる。また、図5では、各市の位置関係も分かり易くするために各市の地図上に健康年齢を表示させた例も挙げている。無論、各市の地図上には市の名称も表示させることもできる。また、時系列でのランキングの上下動を示す矢印などの情報を同時に表示させることもできる。
【0054】
このようなランキング形式の表示を採用することにより、健康管理システム2では、他の所定区域との健康状態の比較ができ、所定区域同士を競わせることができるため、より所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0055】
また、制御部11は、表示装置20に対し、隣接する所定区域など、特定の所定区域の指標と対象となる所定区域の指標とを比較可能に表示するように制御することができる。例えば、図6に示すように、表示装置20には、当地区と当地区に隣接する隣接地区とについて算出された健康年齢の月毎の変化を示す表示画像を表示させることができる。
【0056】
このような比較形式の表示を採用することでも、健康管理システム2では、他の所定区域との健康状態の比較ができ、所定区域同士を競わせることができるため、より所定区域内に存在する人々の健康意識を高め、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0057】
また、制御部11は、第1判定部1aの機能として、通行者の移動の様子を判定するとともに、画像データに含まれる顔画像のデータに基づき通行者の健康状態を判定するようにしてもよい。顔画像からの健康状態の判定方法は問わない。例えば、顔色が土色に近い人は健康年齢を高く判定すること、おでこや目尻の皺が多い人は健康年齢を高く判定すること、ほうれい線が深いほど健康年齢を高く判定することなど、様々な判定基準に基づき判定を行うことができる。
【0058】
また、制御部11は、顔画像のデータに含まれる顔の表情のデータから、健康状態の一種としてストレスレベル等の心理状態を判定することもできる。なお、撮影時の角度の問題から顔画像が得られない通行者が存在することも想定されるが、最終的に必要な情報は指標であって統計処理を施せば済むため、その場合には顔画像が得られた通行者についてのみ心理状態を判定しておけばよい。また、ストレスレベルは、ユーザのストレスの度合い(ストレス度)を示す指標であればよく、予め定めた複数のレベルのうちの1つのレベルとして、ストレスレベルを判定することができる。ストレスの度合いとは、例えば、ストレス過多状態であるのか、平常心であるのかなどを示す度合いとすることができる。ストレス過多状態とは、焦りやいらだちがある状態を指すことができる。
【0059】
これにより、健康管理システム2では、より多元的に通行者の健康状態を判定することができるため、表示させる所定区域全体の健康状態を示す情報をより正確な情報とすることができる。
【0060】
また、制御部11は、算出部1bの機能として、移動の様子を判定した判定結果に基づき、指標としてあるいは指標の一部として、所定区域内に存在する人全体の通行速度の統計値を算出するようにしてもよい。通行速度は、例えば、移動の様子として判定した判定結果として、各通行者について[画像データから特定した通行者の位置の変化量]、[上記変化量に対応するカメラ画像の取得間隔]を取得し、各通行者について[画像データから特定した通行者の位置の変化量]/[上記変化量に対応するカメラ画像の取得間隔]で算出されることができる。そして、制御部11は、各通行者について算出されたこの値を所定区域内に存在する人全体について統計処理し、通行速度の統計値を得ることができる。通行速度は歩行者の歩行速度と自転車での走行速度とを区別して算出されることもできる。無論、通行速度の算出にも学習モデル12aを用いることができる。この場合、表示装置20には、指標としてあるいは指標の一部として、算出された通行速度の統計値が表示されることになる。
【0061】
このように通行速度を可視化して所定区域内で提示することにより、健康管理システム2では、表示させる所定区域全体の健康状態を示す情報をより人々に分かり易い情報とすることができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。つまり、健康管理システム2では、通行速度を可視化して所定区域内で提示することで、所定区域全体の平均通行速度が向上し健康レベルを向上させることができる。
【0062】
ここで、制御部11は、算出した統計値に基づき通行速度の目標値を決定し、表示装置20に、指標としてあるいは指標の一部として、統計値だけでなく決定した目標値も表示させるようにしてもよい。これにより、健康管理システム2では、所定区域内の人々に目標意識を持たせることができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0063】
通行速度以外の指標としては、例えば画像データに基づき人の姿勢や体格から骨格を認識し、歩幅と歩行速度を算出し、骨格、歩幅、及び歩行速度に基づき、指標の一部として歩行能力を算出し、歩行能力の統計値を算出することもできる。なお、このような骨格認識にも、学習モデルを用いることができる。
【0064】
次に、健康管理システム1のより具体的な他の構成例について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、図1の健康管理システムのより具体的な他の構成例を示すブロック図である。図8は、図7の健康管理システムにおいて表示装置に表示される表示画像の一例を示す概略図である。
【0065】
図7に示す健康管理システム3は、健康管理装置10aと、複数の表示装置20と、複数のカメラ30と、対象管理システム21と、を備えることができる。無論、カメラ30a、対象管理システム21等は健康管理システム1の一例の構成要素に含めないこともできる。表示装置20及びカメラ30については図3の構成例で説明した通りである。
【0066】
健康管理装置10aは、複数の表示装置20及び対象管理システム21を制御する装置であり、例えばコンピュータを含んで構成することができる。なお、健康管理装置10aは、対象管理システム21を制御するため対象管理システム制御装置を備えると言える。健康管理装置10aは単体で構成することができるが、その機能を分散した分散システムとして構成することもできる。また、ここでは1つの対象管理システム21が健康管理システム3に含まれる例を挙げているが、制御対象の対象管理システムの数も問わない。
【0067】
対象管理システム21は、少なくともその所定区域で使用できる、商品購入サービスで利用可能なポイントを管理するポイント管理システムなど、様々なインセンティブとなる対象を管理するシステムとすることができる。なお、商品購入サービスの種類や、付与されるポイントの値なども問わない。無論、便宜上、1つの対象管理システム21として説明するが、インセンティブとなる対象毎に、別個のシステムとして構築されることができる。
【0068】
また、健康管理システム3は、健康管理システム1の一例の構成要素として、健康管理装置10aにおける制御に使用する情報を得るためのセンサ群を備えることができる。図3に示すように、このセンサ群は、例えば、複数のカメラ30のほかに、各ユーザが装着したウェアラブルデバイス41a,41b,・・・を備えることもできる。また、健康管理システム3は、ウェアラブルデバイス41a,41b,・・・で計測した情報を健康管理装置10aに送信する端末装置40a,40b,・・・を備えることもでき、端末装置40a,40b,・・・は指標の表示のために用いられることもできる。無論、カメラ30a等やウェアラブルデバイス41a等や端末装置40a等は健康管理システム1の一例の構成要素に含めないこともできる。
【0069】
なお、以下では、端末装置40a,40b,・・・、ウェアラブルデバイス41a,41b,・・・について個々に区別しない場合には、それぞれ端末装置40、ウェアラブルデバイス41と称して説明を行う。
【0070】
カメラ30で取得された画像データに基づき通行者のストレスレベル等の心理状態を判定する例を挙げたが、ウェアラブルデバイス41で計測されたバイタル情報を用いても心理状態の判定は可能である。ウェアラブルデバイス41は、健康管理装置10aでユーザのストレスレベル等の心理状態や他種の健康状態を判定するために、そのユーザのバイタル情報を計測する計測機器(計測装置)の一例である。ウェアラブルデバイス41は、スマートウォッチ、スマートリング、身体に埋め込むICチップなどとすることができるが、これに限ったものではない。
【0071】
また、ウェアラブルデバイス41で計測されるバイタル情報は、例えば、脈拍あるいは心拍数、呼吸(数)、血圧、体温などのうち、1又は複数を示す情報とすることができる。なお、計測されるバイタル情報は、心電図を示す情報など、これに限ったものではない。また、バイタル情報は、同じユーザであっても、例えばトイレを我慢している最中、ランニング中、通常の歩行中などで値が変化する情報である。
【0072】
ウェアラブルデバイス41は、取得したバイタル情報を、直接的又は間接的に健康管理装置10aへ送信する。換言すれば、ウェアラブルデバイス41はその送信のために、通信インターフェースを内蔵又は接続しておくことができる。なお、ウェアラブルデバイス41がストレスレベルを計測し、健康管理装置10aへ送信するように構成することもできる。
【0073】
単純な例では、ウェアラブルデバイス41は、例えば予め定められた間隔などで自発的に、バイタル情報を健康管理装置10aへ送信するように構成しておくことができる。なお、この送信は直接的であっても間接的であってもよい。この場合、健康管理装置10aは、バイタル情報を収集して管理する機能を、サーバ装置(図示せず)などとして備えることができる。また、この場合、ウェアラブルデバイス41又はウェアラブルデバイス41と接続可能な携帯端末装置等の端末装置40において、事前にバイタル情報の健康管理装置10aへの送信を許可しておくとよい。なお、このような自発的に送信する例では、健康管理装置10aからウェアラブルデバイス41を指定した状態でのバイタル情報送信要求を送る必要がない。なお、ウェアラブルデバイス41から直接又は間接的に送信されるバイタル情報には、ユーザを示す情報を含むことができ、後述の居住者判定部がこの情報に基づき居住者であるか否か等を判定することもできる。
【0074】
送信が直接的、間接的のいずれであるかに拘わらず、またバイタル情報送信要求の要否に拘わらず、バイタル情報は、健康管理装置10aの通信部13で受信され、制御部11へ渡される。この例のように、健康管理装置10aは、通行者が携帯する端末装置の一例であるウェアラブルデバイス41から通行者の健康状態の判定に用いるバイタル情報等の被判定データを取得する取得部を備えることができる。図3では、通信部13及びその取得を制御する制御部11が、この取得部の例となる。
【0075】
ウェアラブルデバイス41がバイタル情報を間接的に送信する例を挙げる。ウェアラブルデバイス41が、それを装着したユーザが使用する端末装置40へバイタル情報を短距離無線通信等によって送信し、その端末装置40が健康管理装置10aへバイタル情報を送信する。なお、端末装置40は、例えば、スマートフォン等の携帯電話機、タブレット端末、モバイルPC(Personal Computer)などとすることができる。また、上記の及び後述する短距離無線通信の方式は問わず、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)、ZigBee(登録商標)など様々な方式が採用できる。
【0076】
また、端末装置40は、例えば具備されたカメラで撮影した顔画像データから心理状態等の健康状態の判定に用いる被判定データを生成し、健康管理装置10aに送信することもできる。この場合、ウェアラブルデバイス41が無くても被判定データを得ることができる。但し、健康管理装置10aは、顔画像データ及びバイタル情報の双方を被判定データとして取得することで、通行者の健康状態をより正確に推測することができる。
【0077】
また、被判定データの送信は、カメラ30に、ウェアラブルデバイス41又は端末装置40と短距離無線通信が可能な通信インターフェースを内蔵又は接続しておき、その通信インターフェースを介して実行されることもできる。
【0078】
そして、ウェアラブルデバイス41又は端末装置40は、この通信インターフェースとの無線通信可能エリアに入った段階で自動的に被判定データの送信を行うように構成しておくことができる。このような構成では、健康管理装置10aから、ウェアラブルデバイス41又は端末装置40を指定した状態での被判定データ送信要求を送る必要がない。また、この場合にも、ウェアラブルデバイス41又は端末装置40において、事前に被判定データの健康管理装置10aへの送信を許可しておくとよい。
【0079】
あるいは、ウェアラブルデバイス41又は端末装置40は、定期的に健康管理システム3の外部のサーバ装置(図示せず)に被判定データを位置情報とともに送信し、そのサーバ装置が常に最新の被判定データ及び位置情報を管理しておくこともできる。この場合、サーバ装置は、健康管理装置10aから被判定データ送信要求を受信した場合に、位置情報とともに被判定データを返信するように構成することができる。これにより、健康管理装置10aでは、その位置情報が示す所定区域に居る通行者の被判定データとしてその被判定データを利用することができる。
【0080】
あるいは、健康管理装置10aは、被判定データ送信要求をウェアラブルデバイス41又は端末装置40の位置情報に従ったブロードキャストでの通知により送信し、その送信への応答としてウェアラブルデバイス41又は端末装置40が、予め取得しておいた被判定データを返信するようにしてもよい。この場合、ウェアラブルデバイス41又は端末装置40のユーザが位置情報に基づく情報の提供を許容している場合にのみ、所定区域に入った段階で被判定データを送信するようにしてもよい。
【0081】
そして、健康管理装置10aは、ウェアラブルデバイス41又は端末装置40で取得された被判定データに基づき通行者の健康状態を判定する第2判定部を備えることができる。この第2判定部も制御部11の機能として実現させることができる。第2判定部は、被判定データを取得可能な各通行者について、被判定データを入力し、その通行者の健康状態を出力する学習モデルを用いて、各通行者の健康状態を判定することもできる。この学習モデルのアルゴリズム等は問わない。
【0082】
また、端末装置40は、指標の表示に利用することもできる。つまり、健康管理システム3に設けられる表示装置20の少なくとも1つは、通行者が使用する端末装置40とすることもできる。この場合、制御部11は、画像データに基づき顔認証処理及び歩容認証処理のいずれか一方を実行するなどして、画像データに含まれる人物を特定し、その人物に予め対応付けられた端末装置に対し、通信部13を介して表示画像を送信するなどにより、端末装置への表示も可能となる。その場合、その個人についての判定結果を示す情報なども所定区域全体の情報とともに表示させてもよい。なお、このような対応付けは、例えば所定区域の居住者についてのみ行っておくことが現実的であり、その場合に所定区域への訪問者の端末装置への表示は行わなければよい。
【0083】
あるいは、個人を特定しなくても、通信部13が表示画像をブロードバンド送信するように構成しておき、端末装置40がそれを受信した場合に表示させるように構成しておいてもよい。
【0084】
このようにして得られた被判定データは、次のようにして、集団健康状態を示す指標を算出する際に利用することができる。
【0085】
記憶部12に記憶された学習モデル12cは、通行者の移動の判定結果(以下、第1判定結果)と被判定データに基づく通行者の健康状態の判定結果(以下、第2判定結果)とを入力し、各所定区域それぞれについて、所定区域内に存在する人全体の健康状態である集団健康状態を示す指標を出力する学習モデルであり、そのアルゴリズム等は問わない。また、入力パラメータもこれらに限ったものではない。
【0086】
学習モデル12cは、例えば次のようにして得ることができる。即ち、第1判定結果と第2判定結果と、そのときの各通行者についての健康年齢等を統計処理して得た統計値(指標)を示す正解データとを含むデータセットを、未学習の学習モデルに入力して機械学習を行うことで、学習モデル12cを得ることができる。例えば判定のタイミング及び所定区域の少なくとも一方が互いに異なる複数のデータセットを学習に用いることができる。このような統計値に限らず、通行者の指標は、例えばモデル作成者等が決定したものを使用することができる。学習モデル12cは、過学習にならない程度の多くのタイミングや所定区域についてのデータセットを学習させることで、正確に集団健康状態を示す指標を判定できるモデルとすることができる。なお、このような学習を行うシステムについては後述する。
【0087】
そして、このような学習モデル12cを用いて、制御部11は、第1判定結果及び第2判定結果に基づき、集団健康状態を示す指標を算出するように構成することができる。但し、学習モデル12cを用いずに、制御部11が、第1判定結果及び第2判定結果に基づき、集団健康状態を示す指標を算出するように構成することもできる。
【0088】
このように、健康管理装置10aは、第1判定結果だけでなく第2判定結果も用いて指標を算出するように構成することで、より多元的に通行者の健康状態を判定することができるため、表示させる所定区域全体の健康状態を示す情報をより正確な情報とすることができる。
【0089】
また、健康管理装置10aは、カメラ30から受信した画像データに基づき、通行者が所定領域に居住する居住者であるか否かを判定し、居住者である場合にその実年齢を判定する居住者判定部を備えることができる。健康管理装置10aは、上記居住者判定部として、人物情報DB12bと、人物情報DB12bを参照しながら通行者が居住者か否かを判定する機能と居住者の実年齢を判定する機能とを備えることができ、これらの機能は制御部11にもたせることができる。
【0090】
上記居住者判定部は、例えば顔認証処理及び歩容認証処理の少なくとも一方により居住者であるか否かの判定や居住者の実年齢の判定を行うことができる。そのため、人物情報DB12bは、所定区域に居住する各ユーザについて、顔画像データ及び歩容データの少なくとも一方と、実年齢情報あるいは実年齢情報を含む氏名又はID等の個人特定情報とを格納したDBとすることができる。また、個人特定情報は、氏名又はIDの代わりに又は氏名又はIDとともに、ウェアラブルデバイス41を特定するID等の情報、あるいはウェアラブルデバイス41に接続可能な端末装置40を特定するID等の情報を含むことができる。
【0091】
但し、人物情報DB12bは、個人特定情報を含まなくてもよい。制御部11が、画像データと、顔画像データ及び歩容データの少なくとも一方との比較により、居住者であるか否かを判定することができ、居住者である場合に実年齢を特定することが可能であるためである。なお、人物情報DB12bは、通行者が居住者であるか否か等を判定するために参照されるデータベース(DB)であり、上記居住者判定部を備えない構成においては記憶させておく必要がない。
【0092】
居住者の判定に顔認証処理を利用する場合、ユーザの顔を撮像できるような、位置、撮影方向、撮像倍率等の条件に合致するようにカメラ30が設置され、撮像を実行するようにしておくとよい。居住者の判定に歩容認証処理を利用する場合、カメラ30がこのような条件に合致するように設置される必要はなく、ユーザの歩く姿が撮像できる(つまりユーザの全体を撮像できる)ような、位置、撮像方向、撮像倍率等の条件に合致するようにカメラ30が設置されていればよい。
【0093】
上記居住者判定部は、例えば、カメラ30で得られた撮像データから人の存在を検知し、検知できた場合に上述のような比較処理を実行するとよい。つまり、上記居住者判定部は、カメラ30の撮影範囲に人が侵入してきた場合に、上述のような比較処理を実行するとよい。
【0094】
また、上記居住者判定部は、学習モデルを用いて居住者か否か及び居住者の実年齢の判定を行うように構成することもできる。即ち、人物情報DB12bの代わりに、顔画像データ及び所定区域の居住者の全体を撮像した画像データの少なくとも一方を入力し、実年齢情報を含むユーザ又はウェアラブルデバイス41又は端末装置40を示す情報を出力する学習モデルを、記憶部12に記憶させておくこともできる。運用時において、制御部11は、この学習モデルにカメラ30で撮像された画像データを入力し、実年齢情報を含むユーザ又はウェアラブルデバイス41又は端末装置40を示す情報を得ることができ、居住者であった場合の実年齢情報を得ることができる。なお、学習段階では、各個人が用いる携帯端末装置で機械学習を実行し、健康管理装置10aにその結果としての学習モデル又は学習した係数等を送信するようにしておくことでも、健康管理装置10aでその個人用の学習モデルを用いて居住者か否かの判定及び居住者である場合の実年齢の判定が可能である。
【0095】
そして、制御部11は、居住者についての移動の様子の判定結果に基づき、所定区域内に存在し且つ居住する人全体についての健康年齢と実年齢との差異の統計値である第1統計値を算出することもできる。個々の通行者の健康年齢は、例えば、歩行速度、歩容(歩行パターン)、歩行姿勢などに基づき、あるいは顔画像データの解析により得られる白髪、表情(顔の老け具合)、ストレスレベルなどにも基づき、推定されることができる。実年齢は、居住者と判定された実年齢情報を利用することができる。第1統計値は、各通行者の実年齢に対する健康年齢を、全ての居住者について統計処理することで得ることができる。そして、制御部11は、居住者以外についての移動の様子の判定結果に基づき、所定区域内に存在し且つ居住しない人全体についての健康年齢である非居住者健康年齢を算出する。非居住者健康年齢も居住者の健康年齢と同様に歩行速度、表情などから推定することができる。
【0096】
さらに、制御部11は、指標としてあるいは指標の一部として、第1統計値及び非居住者健康年齢に基づき、所定区域内に存在する人全体についての健康年齢と実年齢との差異の統計値を算出することができる。このように、制御部11は、居住者についての実年齢情報を参考に、居住者、非居住者の全体についての健康年齢と実年齢との差異の統計値を推定するようにしてもよい。
【0097】
また、健康年齢と実年齢との差異の統計値は、学習モデルを用いて算出することもできる。例えば、居住者について、移動の様子の判定結果(歩行の様子や、ストレスレベル等の健康状態)を入力し、顔画像等が示す健康年齢と実年齢との差異を出力する教師有り学習モデルを用い、居住者及び非居住者についての移動の様子の判定結果を入力し、健康年齢と実年齢との差異を全ての通行者について算出し、それらの統計値を算出することができる。あるいは、居住者について、移動の様子の判定結果(歩行の様子、ストレスレベル等)を入力し、顔画像等が示す健康年齢と実年齢との差異の統計値を出力する教師有り学習モデルを用い、居住者及び非居住者についての移動の様子の判定結果を入力し、全ての通行者についての統計値を算出することができる。また、健康年齢と実年齢との差異の統計値は、学習モデル12aの出力パラメータの一部とするように学習モデル12aを構築することで、学習モデル12aを用いて算出することもできる。
【0098】
このようにして健康年齢と実年齢との差異の統計値を算出するように構成することで、健康管理システム3では、居住者についての或る程度正確な健康年齢と実年齢との差異を用いて所定区域内に存在する人全体についての健康年齢と実年齢との差異を算出することができる。さらに、このような構成の健康管理システム3では、その算出結果に基づき、所定区域内の人々に目標意識を持たせることができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0099】
また、健康管理システム3は、所定区域毎に付与するインセンティブを、算出された指標に基づき算出するインセンティブ算出部を備えるようにしてもよい。さらに、健康管理システム3は、対象管理システム21に対し、通信部13を介して、算出したインセンティブを付与する指示を行う付与部を備えるようにしてもよい。このインセンティブ算出部は制御部11の一機能として搭載することができ、この付与部も制御部11の一機能として搭載することができる。記憶部12に記憶された管理システム情報12dは、このようなインセンティブの算出時及び付与の指示時に参照されることができる。
【0100】
管理システム情報12dは、対象管理システム21のIP(Internet Protocol)アドレス等の接続先と、インセンティブ付与を行う場合の付与値と、を含むことができる。管理システム情報12dは、管理者等により変更可能とすることができる。つまり、制御部11は、管理システム情報12dを変更する設定を行う設定部(図示せず)を備えることもできる。
【0101】
この付与部は、例えば算出された健康年齢等の指標が所定の基準(例えば全ての所定区域についての平均値や中央値でもよい)より高いことを示していた場合に、その所定区域に対してインセンティブの付与を実行してもよい。インセンティブは、例えば、付与対象となった所定区域について、少なくともその所定区域で使用できるポイントや電子マネーを付与することや、その所定区域における国からの補助金をアップすることなどにより、付与されることができる。また、インセンティブは、その所定区域が加入する保険の料金を下げること(料金を割り引くこと)、あるいは、その所定区域における健康推進活動の原資を増やすことなどにより、付与されることができる。いずれの例でも、上記の付与部は、付与対象先に対応する対象管理システム21へ付与の指示を行えばよい。
【0102】
このような構成により、健康管理システム3では、所定区域毎に算出されたインセンティブを、各所定区域について付与することができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0103】
また、健康管理装置10aは、所定区域毎に、算出部1bの機能により算出された指標に基づき、所定区域での生活に関わる予め定められた情報を変更するための変更指示を生成する生成部を備えるようにしてもよい。所定区域での生活とは、所定区域での衣食住のいずれか1又は複数を指すことができる。変更指示先やどのような変更を行うかを示す情報は、例えば記憶部12に記憶させておくことができる。
【0104】
変更指示先は、例えば、予め定められた施設、店舗、料金管理システム等とすることができ、その場合の変更指示は、公共施設、タクシー、バスの利用料金、飲食店での飲食代金など、衣食住に関する料金を全体的に割り引くか割高にする指示とすることができる。制御部11は、例えば、健康レベルが所定値より低い又は過去より所定値低い場合、或る店舗に、ラーメンの代金を一定金額だけ上げ、ソバの代金を一定金額だけ安くするような指示を通知し、図8で例示するように、その店舗の表示装置21aにその指示を反映させたメニュー画像を表示させることができる。
【0105】
また、変更指示先は、例えば予め定められた移動装置(エレベータ、エスカレータ(階段状の昇降装置)、水平型エスカレータ等であってもよく、変更指示は、その移動装置の移動速度を変更する指示であってもよい。例えば、制御部11は、健康レベルが所定値より低い又は過去より所定値低い場合、移動装置にあまり載らないように、移動装置の移動速度を遅くし、通行者の利用したい気持ちを無くすことができる。このように、不便さを増やすように制御することで、運動負荷を増やすように誘導することができる。
【0106】
このような生成部を備えることにより、健康管理システム3では、所定区域内において生活に係わる予め定められた情報を変更することができ、変更後の情報に基づき人々が行動することができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0107】
また、上記の生成部は、所定区域に居住する居住者の属性毎に、変更指示を生成するようにしてもよい。ここでいう居住者は、基本的に、カメラ30で通行者として撮影された居住者に限ることはなく、一般的な居住者が利用する店舗や施設に対する変更指示とすることができる。また、属性とは、例えば、健常者、杖あり、老人、障害者などによって区別される属性や、通行者の性別、年齢、歩行能力などによって区別される属性などとすることができる。なお、属性はカメラ30で取得した画像データから判定することができるが、端末装置40等との通信により得られた個人特定情報から判定することもできる。また、制御部11は、算出された指標に応じて、ある属性の居住者に限り、端末装置40のナビゲーションのルート設定時に、遠回りルートを優先的に表示させることもできる。
【0108】
このような生成部を備えることにより、健康管理システム3では、所定区域内において生活に係わる予め定められた情報を居住者の属性毎に変更することができ、変更後の情報に基づき居住者が行動することができるため、所定区域内に存在する人々全体の健康レベルをより向上させることができる。
【0109】
最後に、図9及び図10を参照しながら、上述した様々な学習モデルを生成する学習システムの構成例について説明する。図9は、図3の健康管理システム2又は図7の健康管理システム3において利用される学習モデルを生成する学習システムの一構成例を示すブロック図である。図10は、図9の学習システムで用いられる教師データの一例を示す図である。
【0110】
図9に示す学習システム80は、制御部81、入力部82、及び記憶部83を備えることができる。学習システム80は、例えば、AI(Artificial Intelligence)学習用のPC等のコンピュータを利用して構築することができる。但し、学習システム80は、単体の装置で構成しても複数の装置に機能を分散して構成してもよい。
【0111】
制御部81は、学習システム80の全体を制御する。制御部81は、例えば、集積回路によって実現されることができ、例えばプロセッサ、作業用メモリ、及び不揮発性の記憶装置などによって実現されることができる。この記憶装置にプロセッサによって実行される制御用のプログラムを格納しておき、プロセッサがそのプログラムを作業用メモリに読み出して実行することで、制御部81の機能を果たすことができる。この制御用のプログラムには、学習を実行する学習プログラムを含むことができる。なお、この記憶装置は、記憶部83を利用することもできる。
【0112】
入力部82は、データの入力操作を行うインターフェース、及び、外部の装置から通信によりデータを入力する通信インターフェースの少なくとも一方などで構成することができる。入力部82は、学習に必要な教師データ84のデータセットを入力し、学習時に参照できるように記憶部83に記憶する。記憶部83は、この教師データ84を格納しておくことができ、未学習モデルとしての学習モデル85を格納しておくことができる。
【0113】
学習システム80による処理は、制御部81が、未学習モデルとしての学習モデル85を教師データ84に基づき機械学習させて、学習モデル85を学習済みモデルとすればよい。また、学習済みモデルとしての学習モデル85は、再学習が必要な場合には新たに用意されたデータセットに基づき再学習させることができる。
【0114】
学習モデル12aを生成する場合の教師データ84は、例えば上述したように、各通行者の移動の判定結果と、そのときの各通行者についての健康年齢等を統計処理して得た統計値(指標)を示す正解データとを含むデータセットとすることができる。例えば判定のタイミング及び所定区域の少なくとも一方が互いに異なる複数のデータセットを学習に用いることができる。
【0115】
また、学習モデル12cを生成する場合の教師データ84は、例えば上述したように、第1判定結果と第2判定結果と、そのときの各通行者についての健康年齢等を統計処理して得た統計値(指標)を示す正解データとを含むデータセットとすることができる。学習モデル12cを生成する場合の教師データ84は、より具体例を挙げると、図10で例示するようなデータセットとすることができる。図10に例示するデータセットは、第1判定結果として得られた各通行者の通行速度と第2判定結果として得られた各通行者のストレスレベルとを説明変数として含み、所定区域内に存在する人全体の健康年齢を目的変数として含む。なお、図10では、便宜上、説明変数として1人の通行者の通行速度とストレスレベルのみを図示しているが、通行者として最大考え得る人数についての通行速度とストレスレベルとを説明変数とすればよい。
【0116】
また、制御部11が、所定区域内に設置されたカメラ30で通行者を撮影した画像データから指標を出力する学習モデルを用いて、指標を算出する場合、その学習モデルを生成する場合の教師データ84は、例えば、説明変数をカメラ30で取得された画像データ(又はそれを構成する画素群)、目的変数を所定区域内に存在する人全体の健康年齢とすることができる。その他の学習モデルを生成する場合にも、そのアルゴリズム、教師データ等が異なるだけで、同様の学習システムが利用可能である。
【0117】
<他の実施の形態>
上述した実施の形態に係る健康管理システムは、上述した構成例に限らず、また上述した処理例を実行する構成に限らず、その機能が果たせればよい。
【0118】
また、上記の実施の形態で説明した健康管理システムを構成する各装置は、いずれも次のようなハードウェア構成を備えることができる。図11は、装置に含まれるハードウェア構成の一例を示す図である。
【0119】
図11に示す装置100は、上記実施の形態に係る健康管理システムにおける各装置であり、プロセッサ101、メモリ102、及び通信インターフェース(I/F)103を備える。プロセッサ101は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサとも称されるMPU(Micro Processor Unit)などであってもよい。プロセッサ101は、複数のプロセッサを含んでもよい。
【0120】
各装置における各部位の機能は、プロセッサ101がメモリ102に記憶されたプログラムを読み込んで通信I/F103と協働しながら実行することにより実現されることができる。なお、通信I/F103は装置によって無線通信I/F及び有線通信I/Fの少なくとも一方が設けられることになる。その他、各装置は、その装置に応じて必要な、例えばセンサ、入出力装置などとのI/Fを含むことができる。
【0121】
上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0122】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、上記実施の形態におけるそれぞれの例を適宜組み合わせて実施されることを含む。
【符号の説明】
【0123】
1、2、3 健康管理システム
1a 第1判定部
1b 算出部
1c 表示部
10、10a 健康管理装置
11 制御部
12 記憶部
12a、12c 学習モデル
12b 人物情報DB
12d 管理システム情報
13 通信部
20a、20b、20 表示装置
20j、20k、20p デジタルサイネージ
21 対象管理システム
30a、30f カメラ(センシングゾーン)
30b、30c、30d、30e カメラ
40、40a、40b 端末装置
41、41a、41b ウェアラブルデバイス
50 横断歩道
51、52、53、56、57、60、61 車線(車道)
54、55、58、59、62、63 歩道
64、65 歩道橋
80 学習システム
81 制御部
82 入力部
83 記憶部
84 教師データ
85 学習モデル
100 装置
101 プロセッサ
102 メモリ
103 通信インターフェース
B1 自転車
M1 自動車
M2 自律移動体(自律移動バス)
U1、U2 ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11