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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両、制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20250107BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20250107BHJP
   G06Q 50/40 20240101ALI20250107BHJP
   G05D 1/00 20240101ALI20250107BHJP
【FI】
G08G1/09 V
G01C21/26 C
G06Q50/40
G05D1/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022135385
(22)【出願日】2022-08-26
(65)【公開番号】P2024031683
(43)【公開日】2024-03-07
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰造
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 清人
(72)【発明者】
【氏名】角間 大輔
(72)【発明者】
【氏名】増井 拓良
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】余 淑芬
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕己
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0146494(US,A1)
【文献】特開2018-124236(JP,A)
【文献】特開2018-081623(JP,A)
【文献】特開2011-180100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0380134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G08G 1/00-99/00
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G06Q 50/40
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成された車両であって、
乗車位置となる第1乗車スペースと第2乗車スペースとを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有し、
前記車両は、
走行ルートを取得することと、
前記走行ルートについて、走行方向に対して左側と右側のうち前記車両から見た景観が良い側を特定することと、
前記第1乗車スペースに乗車する乗客と前記第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれの属性情報に基づいて、前記第1乗車スペースと前記第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースを特定することと、
前記走行ルートを走行するときの前記前進方向と後退方向を、前記優遇スペースが前記車両から見た景観が良い側となるように決定することと、
を行うように構成されている
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記車両から見た景観が良い側を特定することは、
前記走行ルートの周辺の一定範囲に位置する1又は複数の景勝地の各々について、景観の良さを示す景観スコアを取得することと、
前記1又は複数の景勝地のうち前記左側に位置する景勝地の前記景観スコアと、前記1又は複数の景勝地のうち前記右側に位置する景勝地の前記景観スコアと、の比較により前記車両から見た景観が良い側を特定することと、
を含む
ことを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両であって、
前記属性情報は、過去の乗車状況を含み、
前記優遇スペースを特定することは、前記第1乗車スペースに乗車する乗客と前記第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれについて、過去に前記走行ルートと同等の走行ルートにおいて特定された優遇スペースに乗車したことがある乗客が少ないほど、前記優遇度を高いとすることを含む
ことを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の車両であって、
前記属性情報は、年齢の情報を含み、
前記優遇スペースを特定することは、前記第1乗車スペースに乗車する乗客と前記第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれについて、子供が多いほど、前記優遇度を高いとすることを含む
ことを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の車両であって、
前記属性情報は、支払った乗車料金の情報を含み、
前記優遇スペースを特定することは、前記第1乗車スペースに乗車する乗客と前記第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれについて、前記支払った乗車料金の合計が高いほど、前記優遇度を高いとすることを含む
ことを特徴とする車両。
【請求項6】
前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成された車両の制御をコンピュータにより実行する制御方法であって、
前記車両は、乗車位置となる第1乗車スペースと第2乗車スペースとを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有しており、
前記制御方法は、
走行ルートを取得することと、
前記走行ルートについて、走行方向に対して左側と右側のうち前記車両から見た景観が良い側を特定することと、
前記第1乗車スペースに乗車する乗客と前記第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれの属性情報に基づいて、前記第1乗車スペースと前記第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースを特定することと、
前記走行ルートを走行するときの前記前進方向と後退方向を、前記優遇スペースが前記車両から見た景観が良い側となるように決定することと、
を含む
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成された車両の制御をコンピュータに実行させる制御プログラムであって、
前記車両は、乗車位置となる第1乗車スペースと第2乗車スペースとを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有しており、
前記制御プログラムは、
走行ルートを取得する処理と、
前記走行ルートについて、走行方向に対して左側と右側のうち前記車両から見た景観が良い側を特定する処理と、
前記第1乗車スペースに乗車する乗客と前記第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれの属性情報に基づいて、前記第1乗車スペースと前記第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースを特定する処理と、
前記走行ルートを走行するときの前記前進方向と後退方向を、前記優遇スペースが前記車両から見た景観が良い側となるように決定する処理と、
を前記コンピュータに実行させるように構成されている
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走行ルートに従って走行する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザのニーズ、嗜好、または、特性を含むユーザ属性に対応する施設を特定することと、特定された施設から未訪問の施設の情報をユーザに出力することと、を実行する制御部を備える情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020―134953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術を車両に適用することで、ユーザの要求や属性に応じた車両の目的地(施設)の情報をユーザに出力することができる。
【0005】
ところで、目的地に至るまでの走行ルートの周辺に景勝地が位置しているような場合等では、車両に乗車する乗客は、車両が走行ルートを走行している間において車両の外の景観を楽しみたいと考えることがある。しかしながら、観光バス等の複数の乗客が乗車する車両では、それぞれの乗客は、乗車位置によって、景観を良く楽しむことができる場合とあまり楽しむことができない場合が想定される。一方で、乗車する乗客の状況によっては、一部の乗客について、景観を良く楽しむことができるように優遇したいと考える場合がある。
【0006】
本開示の1つの目的は、上記の課題を鑑み、車両が走行ルートを走行している間において、優遇される乗客が景観をより良く楽しむことができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の観点は、前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成された車両に関する。
【0008】
第1の観点に係る車両は、乗車位置となる第1乗車スペースと第2乗車スペースとを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有し、走行ルートを取得することと、走行ルートについて、走行方向に対して左側と右側のうち車両から見た景観が良い側を特定することと、第1乗車スペースと第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれの属性情報に基づいて、第1乗車スペースと第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースを特定することと、走行ルートを走行するときの前進方向と後退方向を、優遇スペースが車両から見た景観が良い側となるように決定することと、を行うように構成されていることを特徴とする。
【0009】
本開示の第2の観点は、前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成された車両の制御をコンピュータにより実行する制御方法に関する。ここで、車両は、乗車位置となる第1乗車スペースと第2乗車スペースとを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有している。
【0010】
第2の観点に係る制御方法は、走行ルートを取得することと、走行ルートについて、走行方向に対して左側と右側のうち車両から見た景観が良い側を特定することと、第1乗車スペースと第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれの属性情報に基づいて、第1乗車スペースと第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースを特定することと、走行ルートを走行するときの前進方向と後退方向を、優遇スペースが車両から見た景観が良い側となるように決定することと、を含むことを特徴とする。
【0011】
本開示の第3の観点は、前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成された車両の制御をコンピュータに実行させる制御プログラムに関する。こで、車両は、乗車位置となる第1乗車スペースと第2乗車スペースとを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有している。
【0012】
第3の開示に係る制御プログラムは、走行ルートを取得する処理と、走行ルートについて、走行方向に対して左側と右側のうち車両から見た景観が良い側を特定する処理と、第1乗車スペースと第2乗車スペースに乗車する乗客それぞれの属性情報に基づいて、第1乗車スペースと第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースを特定する処理と、走行ルートを走行するときの前進方向と後退方向を、優遇スペースが車両から見た景観が良い側となるように決定する処理と、をコンピュータに実行させるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、車両は、前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成され、乗車位置となる第1乗車スペースと第2乗車スペースとを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有している。また本開示によれば、走行ルートについて車両から見た景観が良い側と、第1乗車スペースと第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースと、が特定される。そして、優遇スペースが車両から見た景観が良い側となるように車両の前進方向と後退方向が決定される。これにより、優遇度が高い乗客は、車両が走行ルートを走行している間において、景観をより良く楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る車両の外観を示す概念図である。
図2】本実施形態に係る車両における前進方向と後退方向の切り換えについて説明するための概念図である。
図3】車両から見た景観が良い側について説明するための概念図である。
図4】第2乗車スペースが優遇スペースとして特定される場合に決定される車両の前進方向と後退方向の例を示す概念図である。
図5】本実施形態に係る車両の構成を示すブロック図である。
図6図5に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
図7】車両の前進方向と後退方向の切り換えに係る処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本実施形態について説明する。
【0016】
1.概要
図1は、本実施形態に係る車両1の概観を示す概念図である。特に、図1の(A)は、車両1の外観を示し、図1の(B)は、車両1の車内のレイアウトを示している。
【0017】
車両1は、乗客の乗車位置となる第1乗車スペース11及び第2乗車スペース12と、乗務員の乗車位置となる乗務員スペース40と、を有している。ここで図1の(B)に示すように、車両1は、第1乗車スペース11と第2乗車スペース12とを、前後方向に対して左右の一方と他方とにそれぞれ有している。
【0018】
図1の(B)では、第1乗車スペース11及び第2乗車スペース12に座席が配置されている。つまり、図1に示す車両1に乗車する乗客は、第1乗車スペース11又は第2乗車スペース12に配置された座席に座ることとなる。ただし、本実施形態に係る車両1は、乗客が第1乗車スペース11又は第2乗車スペース12に立ち乗りを行うことができるように構成されていても良い。例えば、第1乗車スペース11及び第2乗車スペース12は、座席を配置しない立ち乗り用のスペースを一部に有していても良い。あるいは、第1乗車スペース11及び第2乗車スペース12は、全部が立ち乗り用のスペースであっても良い。
【0019】
また車両1は、乗客が車両1の外を眺めることのできる第1車窓部31と第2車窓部32とを、第1乗車スペース11の側と第2乗車スペース12の側とにそれぞれ有している。つまり、第1乗車スペース11に乗車する乗客は、主に第1車窓部31から車両1の外を眺めることが想定され、第2乗車スペース12に乗車する乗客は、主に第2車窓部32から車両1の外を眺めることが想定される。
【0020】
本実施形態に係る車両1は、生成又は取得する走行ルートに従って走行する。典型的には、車両1は、自動運転車両である。この場合、車両1は、生成又は取得する走行ルートに従って走行するように走行制御が行われる。ただし、車両1は、乗務員により運転が行われる車両であっても良い。例えば、乗務員スペース40には、乗務員が車両1を運転するための運転装置(ペダル、ステアリング等)が配置されていて良い。この場合、乗務員は、車両1が生成又は取得する走行ルートに従って走行するように、車両1の運転を行うこととなる。
【0021】
本実施形態に係る車両1は、さらに前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成されている。図2は、車両1における前進方向と後退方向の切り換えを示す概念図である。図2は、車両1について、前進方向と後退方向が相互に切り換えられた2つのパターンを示している。図面左方のパターンでは、第1乗車スペース11が車両1の前進方向に対して左側となり、第2乗車スペース12が車両1の前進方向に対して右側となる。一方で、図面左方のパターンでは、第2乗車スペース12が車両1の前進方向に対して左側となり、第1乗車スペース11が車両1の前進方向に対して右側となる。このように、車両1の前進方向と後退方向が切り替わることで、第1乗車スペース11及び第2乗車スペース12は、前進方向に対する左右が入れ替わることとなる。
【0022】
なお、前進方向と後退方向を相互に切り換え可能な構成は、好適な構成を採用して良い。例えば、車両1は、動力伝達機構、ステアリング機構、及びブレーキ機構が前後方向に対して対称となるように構成される。また例えば、車両1は、動力伝達機構、ステアリング機構、及びブレーキ機構を、前進方向と後退方向に係る2つのパターンそれぞれに対応して別個に備えるように構成される。
【0023】
本実施形態に係る車両1において、前進方向と後退方向の切り換えは、制御装置により制御される。つまり、制御装置により、車両1の前進方向と後退方向が決定される。制御装置は、典型的には、車両1に備えられる。ただし、制御装置は、車両1の外部の装置であって、通信により車両1を制御しても良い。以下、制御装置による車両1の前進方向と後退方向の切り換えに係る制御方法について説明する。
【0024】
まず、制御装置は、車両1の走行ルートについて、走行方向に対して左側と右側のうち車両1から見た景観が良い側を特定する。ここで、制御装置は、車両1から見た景観が良い側を、走行ルートの周辺に位置する景勝地から特定することができる。
【0025】
図3を参照して、車両1から見た景観が良い側について説明する。図3は、走行ルート2及び走行ルート2の周辺の一定範囲について、(A)と(B)の2つの例を示している。図3において、走行方向は、走行ルート2の矢印の方向である。
【0026】
図3の(A)は、走行ルート2の周辺に位置する景勝地3が1つの場合である。この場合、制御装置は、走行方向に対して景勝地3が位置する側を、車両1から見た景観が良い側として特定すれば良い。図3の(A)では、走行方向に対して左側が、車両1から見た景観が良い側として特定される。
【0027】
図3の(B)は、走行ルート2の周辺に位置する景勝地3が複数存在する場合である。図3の(B)では、走行ルート2の周辺に、3つの景勝地3a、3b、及び3cが位置している場合を示している。この場合、制御装置は、走行ルート2の周辺に位置する複数の景勝地3の各々について、景観の良さを示す景観スコアを取得する。図3の(B)では、景勝地3a、3b、及び3cの景観スコアは、20、40、50である。
【0028】
そして、制御装置は、走行方向に対して左側に位置する景勝地3の景観スコアと、走行方向に対して右側に位置する景勝地3の景観スコアと、の比較により車両1から見た景観が良い側を特定する。例えば、制御装置は、景観スコアの合計が大きい一方を、車両1から見た景観が良い側とする。この場合、図3の(B)において、制御装置は、走行方向に対して右側を車両1から見た景観が良い側とする。また例えば、制御装置は、最も高い景観スコアの景勝地3が位置する一方を、車両1から見た景観が良い側としても良い。この場合、図3の(B)において、制御装置は、走行方向に対して左側を車両1から見た景観が良い側とする。
【0029】
なお、景観スコアは、複数の景勝地3の各々についてあらかじめ管理された値であって良い。例えば、複数の景勝地3の各々についての景観スコアは、データベースとして管理される。特に、データベースは、時間や時期によって景観が異なる景勝地3について、時間や時期に応じた景観スコアを管理するように構成されていても良い。この場合、制御装置は、時間や時期に応じた景観スコアを取得する。さらに、データベースは、乗客の属性に応じた景観スコアを管理するように構成されていても良い。例えば、データベースは、各々の景勝地3について、年齢層、性別、外国人か否か、によって異なる景観スコアを管理するように構成されていても良い。この場合、制御装置は、景勝地3について、乗車する乗客毎に景観スコアを取得し、取得した景観スコアの合計を景勝地3の景観スコアとする。また、制御装置は、走行ルート2と景勝地3との位置関係に応じて、景観スコアを補正するように構成されていても良い。例えば、制御装置は、走行ルート2との距離が遠いほど、景観スコアを小さくするように構成されていても良い。
【0030】
次に、制御装置は、第1乗車スペース11に乗車する乗客と第2乗車スペース12に乗車する乗客それぞれの属性情報に基づいて、第1乗車スペース11と第2乗車スペース12のうち乗車する乗客の優遇度が高い一方の乗車スペース(以下、「優遇スペース」とも称する。)を特定する。ここで、乗車する乗客は、車両1に実際に乗車している乗客であっても良いし、車両1が走行ルート2を走行する際に乗車予定の乗客であっても良い。
【0031】
制御装置は、乗車する乗客の優遇度を、例えば次のように与えることができる。
【0032】
1つの例は、属性情報において、乗客の数を指標とすることである。制御装置は、第1乗車スペース11に乗車する乗客と第2乗車スペース12に乗車する乗客それぞれについて、乗客の数が多いほど優遇度を高いとすることができる。このように優遇度を与えることで、乗客が多く乗車する一方が、優遇スペースとして特定されやすくなるようにすることができる。
【0033】
他の1つの例は、属性情報において、乗客の過去の乗車状況を指標とすることである。制御装置は、第1乗車スペース11に乗車する乗客と第2乗車スペース12に乗車する乗客それぞれについて、過去に走行ルート2と同等の走行ルートにおいて特定された優遇スペースに乗車したことのある乗客が少ないほど、優遇度を高いとすることができる。このように優遇度を与えることで、走行ルート2の周辺に位置する景勝地3を初めて眺めることとなる乗客が多く乗車する一方が、優遇スペースとして特定されやすくなるようにすることができる。
【0034】
他の1つの例は、属性情報において、乗客の年齢を指標とすることである。制御装置は、第1乗車スペース11に乗車する乗客と第2乗車スペース12に乗車する乗客それぞれについて、子供が多いほど、優遇度を高いとすることができる。ここで、制御装置は、所定の年齢以下(例えば、12才以下)となる乗客を子供とみなすように構成されていて良い。このように優遇度を与えることで、子供が多く乗車する一方が、優遇スペースとして特定されやすくなるようにすることができる。
【0035】
他の1つの例は、属性情報において、支払った乗車料金を指標とすることである。制御装置は、第1乗車スペース11に乗車する乗客と第2乗車スペース12に乗車する乗客それぞれについて、支払った乗車料金の合計が高いほど、優遇度を高いとすることができる。このように優遇度を与えることで、高い乗車料金を支払った乗客が多く乗車する一方が、優遇スペースとして特定されやすくなるようにすることができる。
【0036】
このように、制御装置は、乗車する乗客の優遇度を与えることができる。ただし、制御装置は、上記の1つの指標から優遇スペースを特定するように構成されていても良いし、複数の指標の組み合わせから優遇スペースを特定するように構成されていても良い。
【0037】
次に、制御装置は、車両1が走行ルート2を走行するときの前進方向と後退方向を、優遇スペースが車両1から見た景観が良い側となるように決定する。図4に、制御装置により決定される車両1の前進方向と後退方向の例を示す。図4は、第2乗車スペース12が優遇スペースとして特定される場合について、(A)と(B)の2つのパターンを示している。
【0038】
図4の(A)では、走行ルート2の周辺に位置する景勝地3が走行方向に対して右側に位置し、走行方向に対して右側が車両1から見た景観が良い側として特定される。この場合、図4の(A)に示すように、制御装置は、第2乗車スペース12(優遇スペース)が走行方向に対して右側となるように車両1の前進方向と後退方向を決定する。
【0039】
図4の(B)では、走行ルート2の周辺に位置する景勝地3が走行方向に対して左側に位置し、走行方向に対して左側が車両1から見た景観が良い側として特定される。この場合、図4の(B)に示すように、制御装置は、第2乗車スペース12(優遇スペース)が走行方向に対して左側となるように車両1の前進方向と後退方向を決定する。
【0040】
図4の(A)と(B)のいずれにおいても、第2乗車スペース12(優遇スペース)に乗車する乗客は、車両1が走行ルート2を走行する際に、より景観を楽しむことができる。なお、車両1は、前進方向と後退方向に応じて、座席が回転されるように構成されていても良い。例えば、車両1は、乗客の向きが車両1の前進方向となるように座席が回転されるように構成される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る車両1は、走行ルートに従って走行し、前進方向と後退方向を相互に切り換え可能に構成される。また本実施形態に係る車両1によれば、走行ルートについて車両1から見た景観が良い側と、第1乗車スペースと第2乗車スペースのうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースと、が特定される。そして、優遇スペースが車両1から見た景観が良い側となるように車両1の前進方向と後退方向が決定される。これにより、優遇度が高い乗客は、車両1が走行ルートを走行している間において、景観をより良く楽しむことができる。
【0042】
なお、制御装置は、目的地に至るまでの走行ルートを複数の走行ルートに区分して、区分された複数の走行ルートそれぞれについて前進方向と後退方向を決定することができるように構成されていても良い。この場合、車両1の前進方向と後退方向は、目的地に至るまでの走行ルートを走行する途中で切り換わることが想定される。このように構成することで、目的地に至るまでの走行ルートの途中で車両1から見た景観が良い側が変わるような場合においても、優遇度が高い乗客に景観をより良く楽しませることができる。
【0043】
また車両1は、優遇スペースではない他方の乗車スペースに乗車する乗客に、車両1から見た景観が良い側の映像を映すことができるように構成されていても良い。例えば、車両1は、車両1の左右の景色を撮像するカメラと、カメラにより撮像された映像を映す表示装置と、を備えるように構成される。
【0044】
2.構成
以下、図面を参照して、本実施形態に係る車両1の構成について説明する。以下の説明において、車両1は、自動運転車両であるとする。
【0045】
図5は、本実施形態に係る車両1の構成を示すブロック図である。車両1は、制御装置100と、センサ200と、通信装置300と、アクチュエータ400と、を備えている。
【0046】
センサ200は、車両1の運転環境を検出する。例えば、センサ200は、車両1の周囲環境(先行車、白線、障害物等)を検出するセンサや、車両1の走行状態(車速、加速度、ヨーレート等)を検出するセンサを含んでいる。車両1の周囲環境を検出するセンサとして、カメラ、ミリ波レーダー、LiDAR等が例示される。車両1の走行状態を検出するセンサとして、車輪速センサ、Gセンサ、ジャイロセンサ等が例示される。センサ200が検出する情報は、制御装置100に伝達される。
【0047】
通信装置300は、車両1の外部の装置と通信して情報を送受信する。特に、通信装置300は、データサーバ20と通信を行う装置を含んでいる。ここで、データサーバ20は、典型的には、インターネットを介してアクセス可能なコンピュータである。またデータサーバ20は、地図データベース21と、景観スコアデータベース22と、属性情報データベース23と、を記憶している。地図データベース21は、地図情報を管理する。地図データベース21が管理する地図情報は、少なくとも地図上の景勝地3の位置の情報を含んでいる。景観スコアデータベース22は、複数の景勝地3の各々について、景観スコアを管理する。属性情報データベース23は、車両1に乗車する乗客の属性情報を管理する。
【0048】
通信装置300が受信する情報は、制御装置100に伝達される。つまり、通信装置300により、制御装置100は、地図データベース21、景観スコアデータベース22、及び属性情報データベース23に接続することができるように構成されている。
【0049】
制御装置100は、取得する情報に基づいて、種々の処理を実行する。典型的には、制御装置100は、車載ネットワークに接続するコンピュータである。制御装置100は、自動運転制御処理P101と、切り換え制御処理P102と、を実行するように構成されている。
【0050】
自動運転制御処理P101は、自動運転機能に係る処理である。自動運転制御処理P101は、少なくとも車両1の走行ルート2を生成する処理と生成された走行ルート2に従って車両1を走行させるための制御信号を生成する処理と、を含んでいる。自動運転制御処理P101の実行により生成された制御信号は、アクチュエータ400に伝達される。
【0051】
切り換え制御処理P102は、車両1の前進方向と後退方向の切り換えに係る処理である。切り替え制御処理P102の実行により、車両1の前進方向と後退方向が決定され、決定された前進方向と後退方向に切り換えるための制御信号が生成される。切り替え制御処理P102の実行により生成された制御信号は、アクチュエータ400に伝達される。
【0052】
アクチュエータ400は、制御装置100から伝達される制御信号に従って動作する。アクチュエータ400は、走行制御部410と切り換え制御部420を含んでいる。
【0053】
走行制御部410は、車両1の走行制御に係るアクチュエータである。走行制御部410として、動力装置(内燃機関、電気モータ等)の動作に関わるアクチュエータ、ブレーキ機構の動作に関わるアクチュエータ、ステアリング機構の動作に関わるアクチュエータ等が例示される。走行制御部410が、自動運転制御処理P101の実行により生成された制御信号に従って動作することにより、車両1の自動運転が実現される。
【0054】
切り換え制御部420は、車両1の前進方向と後退方向の切り換えに係るアクチュエータである。切り替え制御部420として、動力の伝達方向を切り替えるアクチュエータ、動作させる機構を切り替えるアクチュエータ等が例示される。切り替え制御部420が、切り替え制御処理P102の実行により生成された制御信号に従って動作することにより、車両1の前進方向と後退方向の切り換えが実現される。
【0055】
図6は、制御装置100の構成を示すブロック図である。制御装置100は、メモリ110と、プロセッサ120と、を備えている。
【0056】
メモリ110は、プロセッサ120と結合し、プロセッサ120により実行可能な複数のインストラクション112と、処理の実行に必要な種々のデータ113と、を格納している。ここで、複数のインストラクション112は、コンピュータプログラム111(制御プログラム)により与えられる。また種々のデータ113として、センサ200の検出情報、通信装置300が受信する地図データベース21や景観スコアデータベース22に係る情報、自動運転制御処理P101の実行により生成された走行ルートの情報等が例示される。
【0057】
複数のインストラクション112は、プロセッサ120に自動運転制御処理P101及び切り換え制御処理P102を実行させるように構成されている。つまり、複数のインストラクション112に従ってプロセッサ120が動作することにより、自動運転制御処理P101及び切り換え制御処理P102の実行が実現される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る車両1を構成することができる。なお、本実施形態に係る車両1は、地図データベース21、景観スコアデータベース22、又は属性情報データベース23を、制御装置100のメモリ110に格納するデータ113として保持するように構成することも可能である。
【0059】
3.切り替え制御処理
以下、制御装置100が実行する切り換え制御処理P102について説明する。
【0060】
図7は、切り替え制御処理P102の一例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、例えば、自動運転制御処理P101の実行により走行ルート2が生成されたときに開始する。
【0061】
ステップS100で、制御装置100は、自動運転制御処理P101の実行により生成された走行ルート2を取得する。ステップS100の後、処理はステップS200に進む。
【0062】
ステップS200で、制御装置100は、地図データベース21に接続し、ステップS100において取得した走行ルート2の周辺の一定範囲に位置する景勝地3を取得する。ステップS200の後、処理はステップS300に進む。
【0063】
ステップS300で、制御装置100は、景観スコアデータベース22に接続し、ステップS200において取得した景勝地3の景観スコアを取得する。ステップS300の後、処理はステップS400に進む。なお、ステップS200において取得した景勝地3が1つである場合、制御装置100は、ステップS300をスキップしても良い。
【0064】
ステップS400で、制御装置100は、走行ルート2の走行方向に対して左側に位置する景勝地3の景観スコアと、走行方向に対して右側に位置する景勝地3の景観スコアと、の比較により車両1から見た景観が良い側を特定する。ステップS400の後、処理はステップS500に進む。なお、ステップS200において取得した景勝地3が1つである場合、ステップS400で、制御装置100は、走行ルート2の走行方向に対して景勝地3が位置する側を、車両1から見た景観が良い側とするように構成されていて良い。
【0065】
ステップS500で、制御装置100は、属性情報データベース23に接続し、車両1に乗車する乗客の属性情報を取得する。ステップS400の後、処理はステップS500に進む。
【0066】
ステップS600で、制御装置100は、ステップS500において取得した属性情報に基づいて、第1乗車スペース11と第2乗車スペース12のうち乗車する乗客の優遇度が高い優遇スペースを特定する。ステップS600の後、処理はステップS700に進む。
【0067】
ステップS700で、制御装置100は、ステップS600において特定した優遇スペースがステップS400において特定した車両1から見た景観が良い側となるように、車両1の前進方向と後退方向を決定する。ステップS700の後、処理はステップS800に進む。
【0068】
ステップS800で、制御装置100は、ステップS700において決定した前進方向と後退方向となるように制御信号を生成する。ステップS800の後、処理は終了する。なお、ステップS700において決定した前進方向と後退方向が車両1の現在の前進方向と後退方向に一致する場合は、制御装置100は、ステップS800をスキップしても良い。
【0069】
このように制御装置100により切り換え制御処理P102が実行される。またこのように、制御装置100により車両1の前進方向と後退方向を切り替える制御方法が実現される。
【符号の説明】
【0070】
1 車両
2 走行ルート
3 景勝地
11 第1乗車スペース
12 第2乗車スペース
20 データサーバ
100 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7