(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/591 20210101AFI20250107BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20250107BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20250107BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20250107BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20250107BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20250107BHJP
【FI】
H01M50/591 101
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M50/533
H01M50/586
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2022142505
(22)【出願日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高畑 周平
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200863(JP,A)
【文献】特開2013-157091(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/031492(JP,A1)
【文献】特開2014-182999(JP,A)
【文献】特開2018-49696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1集電体層、第1活物質層、第1固体電解質層、及び第2活物質層がこの順に積層された電極体を準備することと、
前記電極体の主面の少なくとも一縁部の少なくとも一部を互いに接触しながら回転する一対の弾性ローラーの間に挟み、かつ、前記一縁部のうち前記一対の弾性ローラーに挟まれている領域の側面に、前記第1集電体層及び前記第1活物質層を少なくとも覆う電気絶縁層を形成することと、を含む、全固体電池の製造方法。
【請求項2】
前記電気絶縁層を形成することは、
前記第1集電体層及び前記第1活物質層を少なくとも覆う光硬化性樹脂組成物を前記側面に塗布して、光硬化性塗膜を形成することと、
前記光硬化性塗膜に光照射を行って、前記電気絶縁層を形成することと、を含む、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項3】
前記電気絶縁層を形成することの後に、前記第2活物質層上に第2集電体層を積層することを含み、
前記第2集電体層は、前記一縁部から前記電極体の側方に延びる集電タブを有する、請求項1又は請求項2に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項4】
前記電気絶縁層は、前記側面のうち、前記集電タブの位置に対応する領域に少なくとも形成されている、請求項3に記載の全固体電池の製造方法。
【請求項5】
前記電極体は、第3活物質層、第2固体電解質層、第4活物質層、前記第1集電体層、前記第1活物質層、前記第1固体電解質層、及び前第2活物質層がこの順で積層されてなり、
前記電気絶縁層は、少なくとも前記第4活物質層、前記第1集電体層、及び前記第1活物質層を覆う、請求項1に記載の全固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧及び高容量の全固体電池として、複数の単位電池を積層した積層型の全固体電池が知られている。単位電池は、一般に、負極集電体層、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体層がこの順に積層されてなる。
【0003】
このような積層型の全固体電池においては、積層された各単位電池の集電タブを、正極タブ、負極タブごとに集束することにより、集電タブの占有スペースを縮小し、電池全体の体積エネルギーを高める工夫がなされている。しかしながら、正極集電体層の集電タブを集束するために折り曲げたときに、正極集電体層の集電タブが負極集電体層又は負極活物質層と電気的に接触し、短絡が発生するおそれがある。
【0004】
このような短絡の発生を防止するために、塗工装置を用いて、単位電池の所望の部位を絶縁体塗工液に浸漬して、絶縁部(以下、「電気絶縁層」ともいう。)を形成する積層型全固体電池の製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の製造方法では、塗工装置の動作等に時間を要するおそれがある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みたものである。本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、一方の集電体層の集電タブと、他方の集電体層又は活物質層との間の短絡の発生を防止するための電気絶縁層を効率良く安定して形成できる全固体電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 少なくとも第1集電体層、第1活物質層、第1固体電解質層、及び第2活物質層がこの順に積層された電極体を準備することと、
前記電極体の主面の少なくとも一縁部の少なくとも一部を互いに接触しながら回転する一対の弾性ローラーの間に挟み、かつ、前記一縁部のうち前記一対の弾性ローラーに挟まれている領域の側面に、前記第1集電体層及び前記第1活物質層を少なくとも覆う電気絶縁層を形成することと、を含む、全固体電池の製造方法。
<2> 前記電気絶縁層を形成することは、
前記第1集電体層及び前記第1活物質層を少なくとも覆う光硬化性樹脂組成物を前記側面に塗布して、光硬化性塗膜を形成することと、
前記光硬化性塗膜に光照射を行って、前記電気絶縁層を形成することと、を含む、前記 <1>に記載の全固体電池の製造方法。
<3> 前記電気絶縁層を形成することの後に、前記第2活物質層上に第2集電体層を積層することを含み、
前記第2集電体層は、前記一縁部から前記電極体の側方に延びる集電タブを有する、前記<1>又は<2>に記載の全固体電池の製造方法。
<4> 前記電気絶縁層は、前記側面のうち、前記集電タブの位置に対応する領域に少なくとも形成されている、前記<3>に記載の全固体電池の製造方法。
<5> 前記電極体は、第3活物質層、第2固体電解質層、第4活物質層、前記第1集電体層、前記第1活物質層、前記第1固体電解質層、及び前第2活物質層がこの順で積層されてなり、
前記電気絶縁層は、少なくとも前記第4活物質層、前記第1集電体層、及び前記第1活物質層を覆う、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の全固体電池の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、一方の集電体層の集電タブと、他方の集電体層又は活物質層との間の短絡の発生を防止するための電気絶縁層を効率良く安定して形成できる全固体電池の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る全固体電池の斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る全固体電池の製造方法を説明するための上面図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る全固体電池の製造方法を説明するための側面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る全固体電池の製造方法を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)本開示の全固体電池の製造方法(以下、単に「本開示の製造方法」ともいう。)は、少なくとも第1集電体層、第1活物質層、第1固体電解質層、及び第2活物質層がこの順に積層された電極体を準備すること(以下、「準備工程」ともいう。)と、前記電極体の主面の少なくとも一縁部の少なくとも一部(以下、「所定部」ともいう。)を互いに接触しながら回転する一対の弾性ローラーの間に挟み、かつ、前記一縁部のうち前記一対の弾性ローラーに挟まれている領域(以下、「サンドイッチ領域」ともいう。)の側面(以下、「被形成面」ともいう。)に、前記第1集電体層及び前記第1活物質層を少なくとも覆う電気絶縁層を形成すること(以下、「形成工程」ともいう。)と、を含む。
【0012】
「第2活物質層」とは、第1活物質層の極性(正極又は負極)が異なる活物質層を示す。「主面」とは、最も大きな面積を有する面を示し、通常、電極体の積層方向(以下、「積層方向」ともいう。)に直交する。「縁部」とは、電極体の積層方向からの平面視(以下、単に「平面視」ともいう。)において、電極体の縁(周端)の近傍の領域を含み、電極体の縁を含んでもよいし、含まなくてもよい。「弾性ローラー」とは、芯金と、芯金の外周面に積層された、弾性変形可能な弾性層とを有する。弾性層の硬度は、電極体より柔らかく、例えば、ショア硬度A5程度である。
【0013】
本開示の製造方法は、上記の構成を有するので、一方の集電体層の集電タブと、他方の集電体層又は活物質層との間の短絡の発生を防止するための電気絶縁層を効率良く安定して形成できる。
この効果は、以下の理由によると推測されるが、これに限定されない。
電気絶縁層を従来の方法(例えば、特許文献1)よりも効率良く形成するには、一対の搬送ローラーを用いて、電極体を搬送しながら電気絶縁層を形成することが有効である。電極体は、通常、その積層方向(すなわち、厚み方向)にうねりを有する。電気絶縁層を形成する装置(例えば、塗布ノズル)の位置(以下、「形成位置」ともいう。)は、通常、固定されている。そのため、電気絶縁層を安定して形成するには、被形成面の位置が形成位置に対してバラツキがないように、被形成面が形成位置に案内される必要がある。
しかしながら、一対の搬送ローラーが一対の金属ローラーである場合、電極体の一対の金属ローラーに挟まれている領域は平坦に矯正されにくいおそれがある。これは、第1要因及び第2要因に起因して、電極体と一対の金属ローラーとは、線接触になりやすいためと考えられる。第1要因は、電極体の破損の発生を防止するために、一対の金属ローラーは所定の間隔を空けて設置されることである。第2要因は、一対の金属ローラーの間隔は、回転する金属ローラーの振れ等に起因して変化するおそれがあることである。つまり、被形成面の位置は、形成位置に対してバラツキ易い。その結果、電極体に電気絶縁層を安定して形成できないおそれがある。
一方、本開示では、電極体の主面の少なくとも一縁部の少なくとも一部を互いに接触しながら回転する一対の弾性ローラーの間に挟む。これにより、電極体は、一対の弾性ローラーと面接触し、電極体の一対の弾性ローラーに挟まれている領域は平坦に矯正されやすい。そのため、被形成面の位置は、形成位置に対してバラツキにくい。その結果、本開示の製造方法は、電気絶縁層を効率良く安定して形成できると推測される。
【0014】
本開示の製造方法により得られる全固体電池は、積層型である。全固体電池は、少なくとも1つの単位全固体電池を有する。単位全固体電池は、正極活物質層、固体電解質層、及び負極活物質層を、この順で積層してなる。正極活物質層上には、集電タブを有する正極集電体層が積層されてもよく、負極活物質層上には、集電タブを有する負極集電体層が積層されてもよい。本開示では、電極体の主面の少なくとも一縁部の側面に電気絶縁層が形成されるため、短絡の発生は防止される。
【0015】
(1.1)準備工程
準備工程では、電極体を準備する。電極体に含まれる第1集電体層、第1活物質層、第1固体電解質層、及び第2活物質層の各々については後述する。
【0016】
電極体を準備する方法は、公知の電極体の製造方法(例えば、ウェットオンドライ方式の製造方法等、ウェットオンウェット方式の製造方法、積層プレス方式の製造方法等)であればよい。電極体を準備する方法は、特許文献1を参照することができる。
【0017】
第1集電体層は、第1集電タブを有してもよいし、第1集電タブを有しなくてもよい。第1集電体層が第1集電タブを有しない場合、本開示の製造方法は、形成工程の後に、第1接合工程を有してもよい。第1接合工程では、第1集電体層に第1集電タブを接合する。接合方法は、公知の方法であればよく、レーザー溶接等が挙げられる。
【0018】
電極体は、第2活物質層上に、第2集電体層が積層されていてもよいし、第2集電体層が積層されていなくてもよい。電極体が第2集電体層を有する場合、第2集電体層は、第2集電タブを有してもよいし、第2集電体層を有しなくてもよい。第2集電体層が第2集電タブを有しない場合、本開示の製造方法は、形成工程の後に、第2接合工程を有してもよい。第2接合工程では、第2集電体層に第2集電タブを接合する。接合方法は、第1接合工程の接合方法として例示した方法と同様である。
【0019】
電極体は、第3活物質層、第2固体電解質層、第4活物質層、第1集電体層、第1活物質層、第1固体電解質層、及び第2活物質層がこの順で積層された構成(以下、「両面構成」ともいう。)であってもよい。第3活物質層の極性は、第2活物質層の極性と同じである。第3活物質層の構成は、第2活物質層の構成と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第4活物質層の極性は、第1活物質層の極性と同じである。第4活物質層の構成は、第1活物質層の構成と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第2固体電解質層の構成は、第1固体電解質層の構成と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0020】
(1.2)形成工程
形成工程では、電極体の所定部を一対の弾性ローラーの間に挟み、かつ、電極体のサンドイッチ領域の側面に電気絶縁層を形成する。これにより、電極体が積層方向にうねりを有していても、電極体のサンドイッチ領域は平坦に矯正される。つまり、被形成面は、電極体の搬送方向に対して平坦になりやすい。その結果、電気絶縁層は所望の被形成面に安定して形成される。
【0021】
一対の弾性ローラーは、所定部を挟めばよく、弾性ローラーのサイズ等に応じて、電極体の主面の全面を挟んでもよいし、電極体の主面の一縁部の全体を挟んでもよい。一対の弾性ローラーの各々の弾性層の材質は、例えば、ポリウレタンゴム等が挙げられる。
【0022】
電気絶縁層は、第1集電体層及び第1活物質層を少なくとも覆えばよく、第1集電体層、第1活物質層、第1固体電解質層、及び第2活物質層を覆ってもよい。電極体が両面構成である場合、電気絶縁層は、第4活物質層、第1集電体層、及び第1活物質層を覆えばよく、第3活物質層、第2固体電解質層、第4活物質層、第1集電体層、第1活物質層、第1固体電解質層、及び第2活物質層を覆ってもよい。電気絶縁層は、電極体の主面の一縁部の少なくとも一部の側面に形成されればよく、電極体の主面の一縁部の全部の側面に形成されていてもよい。
【0023】
電気絶縁層の形成方法は、特に限定されず、第1方法、第2方法等が挙げられる。
第1方法は、前記第1集電体層及び前記第1活物質層を少なくとも覆う光硬化性樹脂組成物を前記側面に塗布して、光硬化性塗膜を形成すること(以下、「塗布工程」ともいう。)と、前記光硬化性塗膜に光照射を行って、前記電気絶縁層を形成すること(以下、「光照射工程」ともいう。)と、を含む。
第2方法は、前記第1集電体層及び前記第1活物質層を少なくとも覆う公知の電気絶縁性組成物を塗布して、電気絶縁性塗膜を形成することと、電気絶縁性塗膜を乾燥して、前記絶縁層を形成することとを含む。
【0024】
なかでも、電気絶縁層の形成方法は、第1方法が好ましい。これにより、電気絶縁層は所望の位置により安定して形成される。光硬化性樹脂組成物は、例えば、光重合性の炭素-炭素二重結合を複数個有する化合物(例えば、(メタ)アクリル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、フッ素系樹脂組成物、オレフィン系樹脂組成物等)を含有し、必要に応じて光重合開始剤(例えば、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイル系、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩等)等を含有してもよい。光硬化性樹脂組成物の塗布方法は、特に限定されず、ディスペンサを用いる方法、インクジェット装置を用いる法、スプレー塗布法等が挙げられる。光照射の光は、活性エネルギー線(例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線等)であればよく、光硬化性樹脂組成物の種類等に応じて適宜選択される。光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ、ブラックライト(波長:約365nm)、紫外線発光ダイオード(以下、「UV-LED」ともいう。)(波長:約375nm)、発光ダイオードランプ(波長:約405nm)等が挙げられる。
【0025】
(1.3)貼付工程
本開示の製造方法は、前記電気絶縁層を形成することの後に、前記第2活物質層上に第2集電体層を積層すること(以下、「貼付工程」ともいう。)を含み、前記第2集電体層は、前記一縁部から前記電極体の側方に延びる集電タブを有することが好ましい。これにより、電極体に電気絶縁層をより効率良く形成できる。
第2集電体層の積層方法は、特に限定されず、公知の接着剤(例えば、ホットメルト系接着剤等)を用いる方法等が挙げられる。
【0026】
本開示の製造方法が貼付工程を含む場合、電気絶縁層は、前記側面のうち、前記集電タブの位置に対応する領域に少なくとも形成されていることが好ましい。「集電タブの位置」とは、平面視において、集電タブの電極体の側方に延び出ている部位のうちの根元に領域を示す。これにより、得られる全固体電池において、短絡の発生は効率良く防止される。短絡の発生をより確実に防止する観点から、電気絶縁層は、電極体の主面の一縁部の全部の側面に形成されることが好ましい。
【0027】
(1.4)積層工程
本開示の製造方法は、複数の電極体を前記電極体の積層方向に積層すること(以下、「積層工程」ともいう。)を含んでもよい。これにより、複数の単位全固体電池を有する全固体電池が得られる。電極体の積層方法は、公知の方法(例えば、電極体を加熱しながら加圧する方法等)であればよい。
【0028】
(1.5)電極体の各層
第1集電体層が負極集電体層である場合、第1活物質層は負極活物質層、第2活物質層は正極活物質層、第2集電体層は正極集電体層である。電極体が両面構成であり、かつ第1集電体層が負極集電体層である場合、第3活物質層は正極活物質層、第4活物質層は負極活物質層である。
第1集電体層が正極集電体層である場合、第1活物質層は正極活物質層、第2活物質層は負極活物質層、第2集電体層は負極集電体層である。電極体が両面構成であり、かつ第1集電体層が正極集電体層である場合、第3活物質層は負極活物質層、第4活物質層は正極活物質層である。
【0029】
(1.5.1)集電体層
正極集電体層を構成する材料としては、例えば、ステンレス(SUS),Ni、Cr、Au、Pt、Al、Fe、Ti、Zn等が挙げられる。負極集電体層を構成する材料としては、例えば、SUS、Cu、Ni、Fe、Ti、Co、Zn等が挙げられる。
【0030】
(1.5.2)正極活物質層
正極活物質層は、正極活物質を含み、固体電解質、バインダー、及び導電材を更に含有してもよい。正極活物質としては、公知の正極活物質(例えば、コバルト酸リチウム等)であればよい。固体電解質としては、公知の固体電解質(例えば、硫化物系固体電解質等)であればよい。バインダーとしては、公知のバインダー(例えば、ポリフッ化ビニリデン等)であればよい。導電材としては、公知の導電材(例えば、カーボンナノファイバー等)であればよい。
【0031】
(1.5.3)負極活物質層
負極活物質層は、負極活物質を含み、固体電解質、バインダー、及び導電材を更に含有してもよい。負極活物質は、公知の負極活物質(例えば、グラファイト等)であればよい。固体電解質及びバインダーの各々は、正極活物質層に使用できるものとして上述した材料を適宜用いることができる。導電材としては、公知の導電材(例えば、アセチレンブラック等)が挙げられる。
【0032】
(1.5.4)固体電解質層
固体電解質層は、固体電解質を含み、バインダーを更に含有してもよい。固体電解質としては、正極活物質層に使用できるものとして上述した材料を用いることができる。バインダーは、公知のバインダー(例えば、ブタジエンゴム等)であればよい。
【0033】
(2)実施形態
以下、
図1~
図5を参照して、本開示の実施形態に係る全固体電池の製造方法について説明する。
図3~
図5中、符号「D1」は、一対の弾性ローラー910に挟まされた電極体11の搬送方向を示す。符号「D2」は、第1弾性ローラー911の回転方向を示す。符号「D3」は、第2弾性ローラー912の回転方向を示す。
【0034】
実施形態に係る全固体電池の製造方法は、準備工程と、形成工程と、貼付工程と、積層工程とを含む。準備工程、形成工程、貼付工程及び積層工程は、この順で実行される。これにより、全固体電池2が得られる。
【0035】
(2.1)全固体電池
全固体電池2は、
図1に示すように、複数の単位全固体電池1が積層されてなる。単位全固体電池1は、電気絶縁層付き電極体10と、電気絶縁層付き電極体10に積層された正極集電体層20と、を備える。電気絶縁層付き電極体10は、負極集電体タブ10Tを有する。正極集電体層20は、正極集電タブ20Tを有する。単位全固体電池1の形状は、平面視において、長方形である。
【0036】
単位全固体電池1の長手方向の正極集電タブ20T側をX軸正方向、その反対側をX軸負方向と規定する。単位全固体電池1の短手方向の正極集電タブ20T側をY軸正方向、その反対側をY軸負方向と規定する。単位全固体電池1の厚み方向の一方側をZ軸正方向、その反対側をZ軸負方向と規定する。
【0037】
電気絶縁層付き電極体10は、
図2に示すように、電極体11と、電気絶縁層12Cとを有する。電気絶縁層12Cは、電極体11の一側面(すなわち、X軸正方向側の側面)の全面に形成されている。電気絶縁層12Cの厚み(X方向の長さ)は、例えば、5μm~95μmである。電気絶縁層12Cの長さ(Y方向の長さ)は、例えば、65.2mm~69.2mmである。電気絶縁層12Cの幅(Z方向の長さ)は、例えば、140μm以下である。
電極体11は、正極活物質層114、固体電解質層113、負極活物質層112、負極集電体層111、負極活物質層112、固体電解質層113及び正極活物質層114がこの順にY方向に沿って積層されてなる。
【0038】
(2.2)準備工程
準備工程では、電極体11を準備する。電極体11を準備する方法は、公知の電極体の製造方法であればよい。
【0039】
(2.3)形成工程
形成工程では、電極体11の所定部を一対の弾性ローラー910の間に挟み、かつ、電極体11のサンドイッチ領域の側面S11に電気絶縁層12Cを形成する。
【0040】
形成工程は、
図3~
図5に示す電気絶縁層形成装置を用いて行われる。電気絶縁層形成装置は、一対の弾性ローラー910(
図5参照)と、一対の弾性ローラーの駆動装置(図示せず)と、ディスペンサ920と、貯蔵容器(図示せず)と、UV光源930と、搬送ステージ940と、を備える。
一対の弾性ローラー910は、第1弾性ローラー911と、第2弾性ローラー912とを有する。第1弾性ローラー911及び第2弾性ローラー912は、
図5に示すように、圧接領域Rが形成されるように、互いに接触して設置されている。
ディスペンサ920は、貯蔵容器に接続されている。貯蔵容器は、光硬化性樹脂組成物を貯蔵し、ディスペンサ920に光硬化性樹脂組成物を供給する。ディスペンサ920は、
図3及び
図5に示すように、一対の弾性ローラー910の一側面側で、かつ圧接領域RのY軸方向の略中央部に位置するように配置されている。
UV光源930は、UV-LEDである。UV光源930は、
図3に示すように、一対の弾性ローラー910の一側面側で、かつ圧接領域Rのディスペンサ920よりも搬送方向D1の下流側に配置されている。
搬送ステージ940は、例えば、ベルトコンベアである。搬送ステージ940は、
図4に示すように、一対の弾性ローラー910の一側面側に配置されている。搬送ステージ940は電極体11の一対の弾性ローラー910で挟まれていない部位を搬送方向D1に沿って搬送する。
【0041】
具体的に、電極体11の一縁部E11(
図4参照)の一部を一対の弾性ローラー910の間に挟む。一対の弾性ローラー910の間に挟まされた電極体11の一縁部E11の一部は、圧接領域Rにおいて、平坦に矯正される。次いで、ディペンサ920は、光硬化性樹脂組成物の液滴D(
図3参照)を吐出して、一縁部E11の一部の側面S11上に、光硬化性塗膜12U(
図3参照)を形成する。光硬化性塗膜12Uは、光硬化性樹脂組成物の未硬化物を示す。次いで、UV光源930は、光硬化性塗膜12Uに紫外線L(
図3参照)を照射して、光硬化性塗膜12Uを硬化させて、電気絶縁層12Cを形成する。電気絶縁層12Cは、光硬化性樹脂組成物の硬化物である。これにより、電気絶縁層付き電極体10が得られる。
【0042】
(2.4)貼付工程
貼付工程では、電気絶縁層付き電極体10に含まれる2つの正極活物質層114の少なくとも一方に、正極集電体層20を積層する。正極集電体層20の積層方法は、公知の接着剤を用いる方法であればよい。
【0043】
(2.5)積層工程
積層工程では、複数の単位全固体電池1を電極体11の積層方向(すなわち、Z方向)に積層する。これにより、全固体電池2が得られる。単位全固体電池1の積層方法は、公知の方法であればよい。
【0044】
(2.6)作用効果
実施形態に係る全固体電池の製造方法は、電極体11を準備することと、電極体11の主面の一縁部E11の少なくとも一部を一対の弾性ローラー910の間に挟み、かつ、一縁部E11のうち一対の弾性ローラー910に挟まれている領域の側面S11に、電気絶縁層12Cを形成することと、を含む。これにより、電極体11は、一対の弾性ローラー910と面接触し、電極体11の一対の弾性ローラー910に挟まれている領域は平坦に矯正されやすい。そのため、被形成面E11の位置は、ディスペンサ920の位置に対してバラツキにくい。その結果、実施形態に係る全固体電池の製造方法は、正極集電体層20の正極集電タブ20Tと、負極集電体層111又は負極活物質層112との間の短絡の発生を防止するための電気絶縁層12Cを効率良く安定して形成できる。