(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20250107BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20250107BHJP
E04C 2/06 20060101ALI20250107BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
E04B5/43 H
E04B5/43 J
E04B5/43 A
E04B5/02 B
E04C2/06
E04C2/30 L
(21)【出願番号】P 2022147018
(22)【出願日】2022-09-15
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
(72)【発明者】
【氏名】畑 義行
(72)【発明者】
【氏名】小西 健夫
(72)【発明者】
【氏名】馬渕 克己
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-035137(JP,A)
【文献】特開2012-162938(JP,A)
【文献】特開2012-046938(JP,A)
【文献】特開2022-144899(JP,A)
【文献】特開2018-168677(JP,A)
【文献】特開2013-227739(JP,A)
【文献】特開2015-113694(JP,A)
【文献】特開2005-146697(JP,A)
【文献】特開2013-036211(JP,A)
【文献】特開2009-174163(JP,A)
【文献】三井住友建設株式会社,重量床衝撃音を低減させる工法「SST ボイドスラブ(R)」を適用 - 同調質量ダンパーによりスラブ厚を変えずに7dB低減を実現 ―”(タイトルの(R)は登録商標マークに置換),2022年04月19日,[2024年6月10日検索],インターネット<URL:https://www.smcon.co.jp/topics/assets/uploads/2022/04/release_20220419.pdf>
【文献】金沢工業大学,“同調質量ダンパーによりスラブ厚を変えずに床の衝撃音を低減。 開発した工法「SSTボイドスラブ(R)」を建築物に初めて適用。 建築学科 山岸研究室、三井住友建設株式会社、三昌フォームテック株式会社” (タイトルの(R)は登録商標マークに置換),2022年04月19日,[2024年6月10日検索],インターネット<URL:https://www.kanazawa-it.ac.jp/kitnews/2022/0419_voidslab.html?_ga=2.40507361.293783516.1718006540-407653328.1718006540>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00-5/48
E04C 2/06
E04C 2/14
E04C 2/22
E04C 2/30
E04F 15/18
E04F 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床構造であって、
所定の長手方向に延びる中空部を有する床パネルと、
前記中空部内に挿入された床用補強鋼材と、を備え、
前記床用補強鋼材は、
前記中空部内で前記長手方向に延びる補強鋼材本体と、
前記補強鋼材本体に固定された弾性部材と、前記長手方向に延びるとともに前記弾性部材に支持された錘部材とを有する動吸振器を含む動吸振装置と、を備え、
前記補強鋼材本体は、前記中空部の内面に固定されて
おり、
前記床パネルは、前記長手方向の一方の端面から前記長手方向の所定範囲に設定され、切欠き部の形成を許容する一方側端部領域を有し、
前記補強鋼材本体は、前記中空部内における前記長手方向の前記一方側端部領域以外の領域に設けられている、床構造。
【請求項2】
前記床パネルは、前記長手方向の他方の端面から前記長手方向の所定範囲に設定され、切欠き部の形成を許容する他方側端部領域を有し、
前記補強鋼材本体は、前記中空部内における前記長手方向の前記一方側端部領域及び前記他方側端部領域以外の領域に設けられている、請求項
1に記載の床構造。
【請求項3】
前記動吸振装置は、前記床パネルの前記長手方向の長さ寸法に対応した前記補強鋼材本体の前記長手方向の長さ寸法に応じて、1又は複数の前記動吸振器を含む、請求項1に記載の床構造。
【請求項4】
前記補強鋼材本体は、前記中空部内に挿入された状態で、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の床構造。
【請求項5】
前記補強鋼材本体は、前記長手方向に延びる軸を中心として内部空間を取り囲む周壁部を有し、
前記動吸振装置は、前記内部空間内の前記周壁部に設けられる、請求項1に記載の床構造。
【請求項6】
建物の床構造であって、
所定の長手方向に延びる中空部を有する床パネルと、
前記中空部内に挿入された床用補強鋼材と、を備え、
前記床用補強鋼材は、
前記中空部内で前記長手方向に延びる補強鋼材本体と、
前記補強鋼材本体に固定された弾性部材と、前記長手方向に延びるとともに前記弾性部材に支持された錘部材とを有する動吸振器を含む動吸振装置と、を備え、
前記補強鋼材本体は、前記中空部の内面に固定されており、前記長手方向に延びる軸を中心として内部空間を取り囲む周壁部を有し、
前記動吸振装置は、前記内部空間内の前記周壁部に設けられ、
前記補強鋼材本体は、
前記周壁部の前記長手方向と直交する上下方向に沿った高さ寸法が、前記中空部の前記上下方向に沿った高さ寸法よりも小さい値に設定され、
前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定された状態で、前記中空部の内面において前記中空部上面と対向する中空部下面との間に隙間が形成される
、床構造。
【請求項7】
建物の床構造であって、
所定の長手方向に延びる中空部を有する床パネルと、
前記中空部内に挿入された床用補強鋼材と、を備え、
前記床用補強鋼材は、
前記中空部内で前記長手方向に延びる補強鋼材本体と、
前記補強鋼材本体に固定された弾性部材と、前記長手方向に延びるとともに前記弾性部材に支持された錘部材とを有する動吸振器を含む動吸振装置と、を備え、
前記補強鋼材本体は、前記中空部の内面に固定されており、前記長手方向に延びる軸を中心として内部空間を取り囲む周壁部を有し、
前記動吸振装置は、前記内部空間内の前記周壁部に設けられ、
前記周壁部は、
前記内部空間を上から覆い、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定される上周壁片と、
前記内部空間を下から覆うとともに前記上周壁片に取り付けられ、前記弾性部材が固定される下周壁片と、を有する
、床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の床構造は、床梁と、床梁上に設けられた床パネルとを備える。このような床構造における振動を抑制するための技術が例えば特許文献1に開示される。特許文献1に開示される技術では、床梁に対してチューンドマスダンパーが設けられる。このチューンドマスダンパーは、床梁に固定される中空の剛性補強体と、剛性補強体の内側に粘弾性材を介して設けられたマスと、を備える。チューンドマスダンパーは、床梁の振動に対して慣性力に基づきマスが反対方向に動くことにより、床梁の振動を抑制可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、床構造では、床パネルとして、所定の長手方向に延びる中空部を有する床パネルを用いる場合がある。この場合、中空部を有する床パネルの振動を抑制することに加えて、例えば火災時を想定した耐火性能を向上させるために床パネルに加わる積載荷重に耐え得るように床パネルの強度が必要となる。しかしながら、特許文献1に開示される技術では、事務所用途など床パネルに要求される積載荷重に対する耐性については想定されておらず、床パネルの強度が不十分である虞がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空部を有する床パネルの振動を抑制するとともに、床パネルの強度を高めることが可能な床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第一の発明に係る床構造は、建物の床構造であって、所定の長手方向に延びる中空部を有する床パネルと、前記中空部内に挿入された床用補強鋼材と、を備える。前記床用補強鋼材は、前記中空部内で前記長手方向に延びる補強鋼材本体と、前記補強鋼材本体に固定された弾性部材と、前記長手方向に延びるとともに前記弾性部材に支持された錘部材とを有する動吸振器を含む動吸振装置と、を備える。前記補強鋼材本体は、前記中空部の内面に固定されている。
【0007】
第一の発明に係る床構造によれば、床パネルの中空部内に挿入された床用補強鋼材において、中空部の内面に補強鋼材本体が固定され、当該補強鋼材本体に対して動吸振器を含む動吸振装置が設けられる。この動吸振装置によって重量床衝撃音の決定周波数帯域の振動を抑制することができる。これにより、衝撃力が加わることによる床衝撃音を抑制することができる。しかも、補強鋼材本体は、中空部内で長手方向に延び、中空部の内面に固定されているので、補強鋼材本体の曲げ剛性を利用して中空部を有する床パネルの強度を高めることが可能となる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明に係る床構造において、前記床パネルは、前記長手方向の一方の端面から前記長手方向の所定範囲に設定され、切欠き部の形成を許容する一方側端部領域を有し、前記補強鋼材本体は、前記中空部内における前記長手方向の前記一方側端部領域以外の領域に設けられていてもよい。
【0009】
この態様では、補強鋼材本体は、床パネルの中空部内における長手方向の一方側端部領域以外の領域に設けられているので、床パネルの一方側端部領域には切欠き部の形成が可能である。床パネルの一方側端部領域における切欠き部の形成によって、建物において床構造に対して設けられる柱材と床パネルとの干渉の回避が可能である。
【0010】
第三の発明は、第二の発明に係る床構造において、前記床パネルは、前記長手方向の他方の端面から前記長手方向の所定範囲に設定され、切欠き部の形成を許容する他方側端部領域を有し、前記補強鋼材本体は、前記中空部内における前記長手方向の前記一方側端部領域及び前記他方側端部領域以外の領域に設けられていてもよい。
【0011】
この態様では、床パネルの長手方向において一方側端部領域及び他方側端部領域の両端部領域に切欠き部の形成が可能である。しかも、補強鋼材本体が中空部内における長手方向の一方側端部領域及び他方側端部領域以外の領域に設けられているので、床パネルにおける切欠き部の形成を許容しながら、補強鋼材本体による床パネルに対する最大限の補強が可能である。
【0012】
第四の発明は、第一から第三のいずれか一つの発明に係る床構造において、前記動吸振装置は、前記床パネルの前記長手方向の長さ寸法に対応した前記補強鋼材本体の前記長手方向の長さ寸法に応じて、1又は複数の前記動吸振器を含んでもよい。
【0013】
動吸振装置に含まれる動吸振器は、錘部材の長手方向の長さ寸法の違いに応じて固有振動数が異なる。このため、動吸振器の組み合わせに基づいて、動吸振装置の固有振動数を調整することができる。この場合、例えば、床パネルの長手方向の長さ寸法に対応した補強鋼材本体の長手方向の長さ寸法に応じて、補強鋼材本体に対して設けられる動吸振器の組み合わせを設定する。動吸振器の組み合わせに基づき固有振動数が調整された動吸振装置によって、長手方向の長さ寸法の異なる複数種の床パネルが複雑に組み合わさった床構成であっても、床衝撃音性能を決定づける帯域における制振性能を向上させることができる。このため、長手方向の長さ寸法の異なる複数種の床パネルのそれぞれに対応して、衝撃力が加わることによる床衝撃音を幅広く抑制することができる。
【0014】
第五の発明は、第一から第四のいずれか一つの発明に係る床構造において、前記補強鋼材本体は、前記中空部内に挿入された状態で、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定されてもよい。
【0015】
床構造は、火災時を想定した耐火性能を有することが要求される。この場合、床パネルに上方から所定の積載荷重が加えられた状態で下方から火炎に晒されたときに、床パネルの下面に亀裂などが生じて床パネルの強度が低下した場合でも、積載荷重に耐え得るのに十分な床パネルの強度が必要となる。そこで、補強鋼材本体は、床パネルの中空部内に挿入された状態で、中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定される。この場合、火災時などにおいて下方からの火炎によって床パネルの下面に亀裂などが生じて床パネルの強度が低下した場合でも、中空部上面に固定された補強鋼材本体によって所定の積載荷重に耐え得るための所定の床強度を保持することができる。
【0016】
第六の発明は、第一から第五のいずれか一つの発明に係る床構造において、前記補強鋼材本体は、前記長手方向に延びる軸を中心として内部空間を取り囲む周壁部を有し、前記動吸振装置は、前記内部空間内の前記周壁部に設けられてもよい。
【0017】
この態様では、補強鋼材本体は、内部空間を取り囲む周壁部を有することにより曲げ剛性が高まるので、床パネルの強度を高める効果が増大する。しかも、補強鋼材本体は、周壁部の内部空間内の周壁部に設けられた動吸振装置を保護する機能も有する。
【0018】
第七の発明は、第六の発明に係る床構造において、前記補強鋼材本体は、前記周壁部の前記長手方向と直交する上下方向に沿った高さ寸法が、前記中空部の前記上下方向に沿った高さ寸法よりも小さい値に設定されてもよい。この場合、前記補強鋼材本体は、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定された状態で、前記中空部の内面において前記中空部上面と対向する中空部下面との間に隙間が形成される。
【0019】
この態様では、周壁部の高さ寸法が中空部の高さ寸法よりも小さい値に設定されているので、補強鋼材本体は、中空部内において中空部上面に固定された状態で中空部下面との間に隙間が形成される。これにより、床パネルの下面が火炎に晒された状態において、床パネルの下面から上面への補強鋼材本体を経由した熱の伝達を抑制することができる。このため、下方からの火炎によって床パネルの上面にまで亀裂などが生じることを抑制しつつ、中空部上面に固定された補強鋼材本体によって床パネルの強度を高めることが可能となる。
【0020】
第八の発明は、第六又は第七の発明に係る床構造において、前記周壁部は、前記内部空間を上から覆い、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定される上周壁片と、前記内部空間を下から覆うとともに前記上周壁片に取り付けられ、前記弾性部材が固定される下周壁片と、を有していてもよい。
【0021】
この態様では、補強鋼材本体の周壁部は、上周壁片と、その上周壁片に取り付けられる下周壁片と、を有している。この場合、補強鋼材本体は、周壁部の上周壁片が中空部内の中空部上面に固定されることにより、中空部を有する床パネルの強度を高めることが可能となる。しかも、動吸振器の弾性部材が固定されるように動吸振装置を下周壁片に配置し、その後、下周壁片を上周壁片に取り付けることにより、周壁部の内部空間内に動吸振装置を簡単に設けることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、中空部を有する床パネルの振動を抑制するとともに、床パネルの強度を高めることが可能な床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る床構造の斜視図である。
【
図2】床構造において床パネルの中空部に床用補強鋼材が挿入された状態を示す断面図である。
【
図4】床用補強鋼材の動吸振装置に含まれる複数の動吸振器の断面図である。
【
図5】床パネルの中間領域の長さ寸法の違いに応じた床用補強鋼材における補強鋼材本体と動吸振器との組み合わせを示す断面図であって、第1~第3床パネルに対応した組み合わせを示す図である。
【
図6】床パネルの中間領域の長さ寸法の違いに応じた床用補強鋼材における補強鋼材本体と動吸振器との組み合わせを示す断面図であって、第4及び第5床パネルに対応した組み合わせを示す図である。
【
図7】床パネルの中間領域の長さ寸法の違いに応じた床用補強鋼材における補強鋼材本体と動吸振器との組み合わせを示す断面図であって、第6及び第7床パネルに対応した組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る床構造について、図面に基づいて説明する。なお、以下では、方向関係についてはXYZ直交座標軸を用いて説明する。X軸方向は水平面と平行な方向であり、Y軸方向は水平面上でX軸方向と直交する方向であり、Z軸方向はX、Y両方向に直交する上下方向である。
【0025】
図1には、本実施形態に係る床構造1が示されている。また、
図2には、床パネル21の中空部211に床用補強鋼材3が挿入された状態が示されており、
図3には、床用補強鋼材3の斜視図が示されている。床構造1は、例えば鉄骨造の建物の一部であって、一の階層の床を構成する。床構造1は、所定の長手方向D1に延びる中空部211を有する床パネル21を含む床体2と、中空部211内に挿入された床用補強鋼材3と、床パネル21を支持する複数の床梁6と、床梁6上に設けられた複数の防振材7と、を備える。
【0026】
図1の例では、複数の床梁6は、X軸方向に延び、Y軸方向に所定の間隔を隔てて互いに平行するように配置される。床梁6は、例えば、断面形状がH形のH形鋼によって構成される。この場合、床梁6は、一対のフランジ61と、両フランジ61同士を接続するウェブ62とを有する。床梁6は、一対のフランジ61がZ軸方向に並んだ状態でX軸方向に延びるように配置される。
【0027】
床体2の床パネル21は、互いに隣り合う2本の床梁6同士の間に跨るように配置された状態で各床梁6に下方側から支持される。床パネル21は、例えば、中空押出セメント板によって構成され、所定の長手方向D1に延びる少なくとも1つの中空部211を有している。床パネル21は、中空部211の長手方向D1に延びる矩形の平面形状を有する板状の部材である。床パネル21は、中空部211の長手方向D1がY軸方向と一致するように配置された状態で、
図1に示されるように2本の床梁6間に架け渡される。具体的には、床パネル21は、長手方向D1(Y軸方向)の各端部が各床梁6のフランジ61によって下方側から支持される。なお、長手方向D1に見た中空部211の形状は特に限定されるものではないが、例えば矩形状である。また、
図1の例では、床パネル21は、X軸方向に並ぶ6つの中空部211を有している。
【0028】
また、
図2に示されるように、床パネル21は、長手方向D1の両端のそれぞれに設けられた一対の端部領域21RAと、長手方向D1において一対の端部領域21RAの間の中間領域21RBと、を有している。一対の端部領域21RAは、床パネル21の長手方向D1の一方の端面から長手方向D1の所定範囲に設定された一方側端部領域と、床パネル21の長手方向D1の他方の端面から長手方向D1の所定範囲に設定された他方側端部領域と、を含む。中間領域21RBは、床パネル21において一対の端部領域21RA以外の領域となる。床パネル21において、一対の端部領域21RAは、床梁6によって支持されるとともに、
図1に示される床梁6上に立設される柱材8との干渉を回避するための切欠き部22の形成を許容する領域である。なお、一対の端部領域21RAのうちの一方側端部領域のみが、切欠き部22の形成を許容する領域とされてもよい。
【0029】
また、
図2に示されるように、床パネル21は、中間領域21RBにおいて中空部211と連通するとともにボルト9が挿通される複数のボルト孔212を有している。本実施形態では、複数のボルト孔212は、床パネル21の上面から中空部211まで延びる孔であり、床パネル21の長手方向D1において少なくとも両端にそれぞれ設けられる。なお、床パネル21の長手方向D1において両端の間の領域にボルト孔212が設けられていてもよい。また、複数のボルト孔212は、挿通されるボルト9の頭部が床パネル21の上面から上方に突出することを抑制可能に座ぐりが形成されていてもよい。
【0030】
複数の防振材7はそれぞれ、床梁6に対する床パネル21の相対移動に応じて弾性変形可能な部材である。防振材7は、例えば、ポリウレタンなどの合成樹脂やゴムによって構成される。複数の防振材7はそれぞれ、床梁6と床パネル21との間で弾性変形することにより、床パネル21から床梁6への振動の伝達を抑制する。防振材7の寸法や硬さ、配置位置、及び個数は、床パネル21から床梁6への振動の伝達を的確に抑制することが可能となるように、防振材7が受ける荷重(すなわち、防振材7の上に配置される床パネル21の重量及び床パネル21が受ける荷重)に基づいて設定される。
図1では、床梁6の一対のフランジ61のうちの上方側のフランジ61上において、複数の防振材7が配置される例が示されている。
【0031】
図1及び
図2に示されるように、床用補強鋼材3は、床パネル21の中空部211に挿入して用いられる構造体である。床パネル21が複数の中空部211を有する場合、1つ以上の中空部211に床用補強鋼材3が挿入される。例えば、
図1に示されるように、床パネル21がX軸方向に並ぶ6つの中空部211を有する場合、6つの中空部211の全てに床用補強鋼材3が挿入されてもよいし、6つの中空部211のうちの1つの中空部211に床用補強鋼材3が挿入されてもよいし、6つの中空部211のうちの2以上6未満の中空部211に床用補強鋼材3が挿入されてもよい。
【0032】
図2に加えて
図3を参照しながら、床用補強鋼材3を詳細に説明する。床用補強鋼材3は、補強鋼材本体4と、補強鋼材本体4に対して設けられる動吸振装置5と、を備える。
【0033】
補強鋼材本体4は、鋼材によって構成される。補強鋼材本体4は、床パネル21の中空部211内に挿入可能な断面形状を有し、中空部211内に挿入された状態で中空部211の内面に固定される。補強鋼材本体4は、中空部211の長手方向D1に延びる所定の長さを有するとともに、長手方向D1に対する所定の曲げ剛性を有する。補強鋼材本体4は、中空部211内で長手方向D1に延び、その長手方向D1の少なくとも両端部が中空部211の内面に固定されている。
【0034】
動吸振装置5は、補強鋼材本体4に固定された弾性部材511と、長手方向D1に延びるとともに弾性部材511に支持された錘部材512とを有する動吸振器51を含む。動吸振器51において、弾性部材511は、床パネル21の中空部211の内面に固定された補強鋼材本体4に対する錘部材512の相対移動に応じて弾性変形可能な部材である。弾性部材511は、例えば、ポリウレタンなどの合成樹脂やゴムによって構成される。錘部材512は、例えば、鋼材などによって構成される。動吸振装置5では、衝撃力の加わった床パネル21が振動する場合に、動吸振器51において、弾性部材511に支持された錘部材512が、床パネル21の振動に対して慣性力に基づき反対方向に動くことにより、床パネル21の振動を抑制可能である。なお、動吸振器51において、錘部材512に対する弾性部材511の配置数及び配置位置は特に限定されない。例えば、錘部材512の長手方向D1の両端のそれぞれの位置のみに弾性部材511が配置されてもよいし、錘部材512の長手方向D1の両端のそれぞれの位置と両端の間の1又は複数の位置とに弾性部材511が配置されてもよい。
【0035】
本実施形態に係る床構造1では、床パネル21の中空部211内に挿入された床用補強鋼材3において、中空部211の内面に補強鋼材本体4が固定され、当該補強鋼材本体4に対して動吸振器51を含む動吸振装置5が設けられる。この動吸振装置5によって床パネル21の固有振動数周辺での共振現象を抑制することができる。これにより、衝撃力が加わることによる床パネル21の振動を抑制することができる。このため、床構造1における指標となる周波数帯域(例えばオクターブバンド中心周波数63Hz)を有する床衝撃音(以下、「重量床衝撃音」という)の遮断性能を向上させることができる。
【0036】
しかも、補強鋼材本体4は、中空部211内で長手方向D1に延び、その長手方向D1の少なくとも両端部が中空部211の内面に固定されているので、補強鋼材本体4の曲げ剛性を利用して中空部211を有する床パネル21の強度を高めることが可能となる。
【0037】
図2に示されるように、補強鋼材本体4は、中空部211内における長手方向D1の一対の端部領域21RA以外の中間領域21RBに設けられている。これにより、床パネル21の一対の端部領域21RAには切欠き部22の形成が可能である。床パネル21の一対の端部領域21RAにおける切欠き部22の形成によって、
図1に示されるように、建物において床構造1に対して設けられる柱材8と床パネル21との干渉の回避が可能である。
【0038】
補強鋼材本体4は、床パネル21の中間領域21RBにおける長手方向D1の全域に亘って配置可能な長さを有していてもよい。この場合、補強鋼材本体4は、中空部211内における長手方向D1の一対の端部領域21RA以外の中間領域21RBの全領域に亘り延びている。これにより、床パネル21における一対の端部領域21RAに切欠き部22の形成を許容しながら、補強鋼材本体4による床パネル21に対する最大限の補強が可能である。なお、補強鋼材本体4は、中空部211内における長手方向D1の両端部間の全領域に亘り延びていてもよい。
【0039】
図2及び
図3に示されるように、補強鋼材本体4は、長手方向D1に延びる軸を中心として内部空間41Aを取り囲む周壁部41を有している。この場合、動吸振器51を含む動吸振装置5は、周壁部41によって取り囲まれる内部空間41A内に設けられる。補強鋼材本体4は、内部空間41Aを取り囲む周壁部41を有することにより曲げ剛性が高まるので、床パネル21の強度を高める効果が増大する。しかも、補強鋼材本体4は、周壁部41の内部空間41A内に設けられた動吸振装置5を保護する機能も有する。
【0040】
ここで、床構造1では、床パネル21に加わる積載荷重に耐え得るように床パネル21の強度が必要となる。例えば、床構造1は、火災時を想定した耐火性能を有することが要求される。この場合、床パネル21に上方から所定の積載荷重が加えられた状態で下方から火炎に晒されたときに、床パネル21の下面に亀裂などが生じて床パネル21の強度が低下した場合でも、積載荷重に耐え得るのに十分な床パネル21の強度が必要となる。
【0041】
そこで、補強鋼材本体4は、中空部211内に挿入された状態で、中空部211の内面において長手方向D1と直交する上下方向(Z軸方向)のうちの下方向を向く中空部上面2111に固定されることが望ましい。この場合、火災時などにおいて下方からの火炎によって床パネル21の下面に亀裂などが生じて床パネル21の強度が低下した場合でも、中空部上面2111に固定された周壁部41を有する補強鋼材本体4によって所定の積載荷重に耐え得るための所定の床強度を保持し、床パネル21の落下を防ぐことができる。
【0042】
また、
図2に示されるように、補強鋼材本体4は、周壁部41の上下方向(Z軸方向)に沿った高さ寸法H2が、中空部211の上下方向に沿った高さ寸法H1よりも小さい値に設定されることが望ましい。この場合、補強鋼材本体4は、中空部211内において中空部上面2111に固定された状態で、中空部211の内面において中空部上面2111と対向する中空部下面2112との間に隙間GPが形成される。これにより、床パネル21の下面が火炎に晒された状態において、床パネル21の下面から上面への補強鋼材本体4を経由した熱の伝達を抑制することができる。このため、下方からの火炎によって床パネル21の上面にまで亀裂などが生じることを抑制しつつ、中空部上面2111に固定された補強鋼材本体4によって床パネル21の強度を高めることが可能となる。
【0043】
また、補強鋼材本体4において、周壁部41は、内部空間41Aを上から覆う上周壁片411と、内部空間41Aを下から覆うとともに上周壁片411に取り付けられる下周壁片412と、を有している。上周壁片411は、中空部211内において中空部上面2111に固定される。下周壁片412は、動吸振装置5における動吸振器51の弾性部材511が固定される。補強鋼材本体4は、周壁部41の上周壁片411が中空部211内の中空部上面2111に固定されることにより、中空部211を有する床パネル21の強度を高めることが可能となる。しかも、動吸振器51の弾性部材511が固定されるように動吸振装置5を下周壁片412に配置し、その後、下周壁片412をビスSCなどによって上周壁片411に取り付けることにより、周壁部41の内部空間41A内に動吸振装置5を簡単に設けることができる。
【0044】
補強鋼材本体4の周壁部41において、上周壁片411は、長手方向D1に延び、中空部211内の中空部上面2111に固定される第1上板部4111と、長手方向D1に延び、第1上板部4111の両側端部のそれぞれに接続される一対の第2上板部4112と、を有する。一方、下周壁片412は、長手方向D1に延び、動吸振器51の弾性部材511が固定される第1下板部4121と、長手方向D1に延び、第1下板部4121の両側端部のそれぞれに接続される一対の第2下板部4122と、を有する。
【0045】
補強鋼材本体4は、上周壁片411の第1上板部4111に設けられ、床パネル21における複数のボルト孔212と連通可能な間隔を持って配置された複数の貫通孔411Aを有している。
図2に示されるように、補強鋼材本体4が床パネル21の中空部211に挿入された状態では、複数の貫通孔411Aが複数のボルト孔212と連通する。そして、中空部211に挿入された補強鋼材本体4の上周壁片411における第1上板部4111が中空部211内の中空部上面2111に当接した状態で、補強鋼材本体4が、各ボルト孔212及び各貫通孔411Aに上方から挿通されたボルト9によって中空部上面2111に固定される。
【0046】
補強鋼材本体4を中空部211内の中空部上面2111に固定する際の固定方法は、特に限定されるものではない。本実施形態では、
図2に示されるように、補強鋼材本体4には、ボルト9と螺合可能なねじ部を有するナット411Bが、上周壁片411の第1上板部4111における各貫通孔411Aと連通可能な位置に形成されている。この場合、補強鋼材本体4は、各ボルト孔212及び各貫通孔411Aに挿通されたボルト9がナット411Bのねじ部と螺合することによって中空部211内の中空部上面2111に固定される。
【0047】
次に、床構造1における床パネル21を含む床体2と床用補強鋼材3との関係性について、
図4~
図7を参照しながら説明する。
【0048】
図5~
図7に示されるように、床体2は、中間領域21RBの長手方向D1の長さ寸法であるパネル中間長さ寸法の異なる複数種の床パネル21として、第1~第7床パネル21A~21Gを含む。第1~第7床パネル21A~21Gは、長手方向D1において、パネル中間長さ寸法がそれぞれ異なる値に設定される一方、一対の端部領域21RAの長さ寸法であるパネル端部長さ寸法については同一に設定されている。第1~第7床パネル21A~21Gのそれぞれのパネル中間長さ寸法は、最小値として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの整数倍の値を加算した長さ寸法に設定される。
【0049】
具体的には、第1床パネル21Aは第1~第7床パネル21A~21Gの中で最も小さい床パネルであり、第1床パネル21Aのパネル中間長さ寸法は最小パネル中間長さ寸法LPSに設定される。第1床パネル21Aにおいては、中間領域21RBがパネル全体の50%を超える割合を占め、残りが一対の端部領域21RAとなる。すなわち、第1床パネル21Aのパネル中間長さ寸法で示される最小パネル中間長さ寸法LPSは、第1床パネル21Aの長手方向D1の全長の50%を超えて100%未満の値に設定される。例えば、最小パネル中間長さ寸法LPSは、第1床パネル21Aの長手方向D1の全長から一対の端部領域21RAの長さ寸法に相当するパネル端部長さ寸法の2倍の値を減算した値に設定される。最小パネル中間長さ寸法LPSは、第1床パネル21Aの長手方向D1の全長のおよそ70%に相当する。例えば第1床パネル21Aの全長が490mmであり、パネル端部長さ寸法が70mmの場合には、最小パネル中間長さ寸法LPSは、490mmから70mmの2倍の140mmを減算した350mmに設定される。
【0050】
また、基準寸法LSは、第1床パネル21Aの長手方向D1の長さ寸法に基づいて設定され、第1床パネル21Aのパネル端部長さ寸法よりも大きく、且つ、最小パネル中間長さ寸法LPSよりも小さい値に設定される。例えば、基準寸法LSは、第1床パネル21Aの長手方向D1の全長のおよそ50%の値に設定され、第1床パネル21Aの全長が490mmの場合には当該490mmのおよそ50%の250mmに設定される。
【0051】
第2床パネル21Bは、パネル中間長さ寸法として、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSを加算した値が設定される。第3床パネル21Cは、パネル中間長さ寸法として、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値が設定される。第4床パネル21Dは、パネル中間長さ寸法として、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの3倍の値を加算した値が設定される。第5床パネル21Eは、パネル中間長さ寸法として、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの4倍の値を加算した値が設定される。第6床パネル21Fは、パネル中間長さ寸法として、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの5倍の値を加算した値が設定される。第7床パネル21Gは、パネル中間長さ寸法として、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの6倍の値を加算した値が設定される。
【0052】
床体2がパネル中間長さ寸法の異なる複数種の第1~第7床パネル21A~21Gを含むことに対し、床用補強鋼材3は、
図5~
図7に示されるように、第1~第7床パネル21A~21Gと同数の複数の補強鋼材本体4として第1~第7補強鋼材本体4A~4Gを含む。第1~第7補強鋼材本体4A~4Gは、長手方向D1の長さ寸法である本体長さ寸法LBが互いに異なっている。第1~第7補強鋼材本体4A~4Gの本体長さ寸法LBは、それぞれ、第1~第7床パネル21A~21Gのパネル中間長さ寸法に対応して設定される。
【0053】
第1補強鋼材本体4Aは、第1床パネル21Aの中空部211に挿入されるものである。第1補強鋼材本体4Aの本体長さ寸法LBは、第1床パネル21Aのパネル中間長さ寸法として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSと同値である。第2補強鋼材本体4Bは、第2床パネル21Bの中空部211に挿入されるものである。第2補強鋼材本体4Bの本体長さ寸法LBは、第2床パネル21Bのパネル中間長さ寸法として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSを加算した値と同値である。第3補強鋼材本体4Cは、第3床パネル21Cの中空部211に挿入されるものである。第3補強鋼材本体4Cの本体長さ寸法LBは、第3床パネル21Cのパネル中間長さ寸法として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値と同値である。第4補強鋼材本体4Dは、第4床パネル21Dの中空部211に挿入されるものである。第4補強鋼材本体4Dの本体長さ寸法LBは、第4床パネル21Dのパネル中間長さ寸法として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの3倍の値を加算した値と同値である。第5補強鋼材本体4Eは、第5床パネル21Eの中空部211に挿入されるものである。第5補強鋼材本体4Eの本体長さ寸法LBは、第5床パネル21Eのパネル中間長さ寸法として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの4倍の値を加算した値と同値である。第6補強鋼材本体4Fは、第6床パネル21Fの中空部211に挿入されるものである。第6補強鋼材本体4Fの本体長さ寸法LBは、第6床パネル21Fのパネル中間長さ寸法として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの5倍の値を加算した値と同値である。第7補強鋼材本体4Gは、第7床パネル21Gの中空部211に挿入されるものである。第7補強鋼材本体4Gの本体長さ寸法LBは、第7床パネル21Gのパネル中間長さ寸法として設定された最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの6倍の値を加算した値と同値である。
【0054】
床用補強鋼材3が、第1~第7床パネル21A~21Gと同数であって、本体長さ寸法LBの異なる複数の第1~第7補強鋼材本体4A~4Gを含むことに対し、床用補強鋼材3の動吸振装置5は、
図4に示されるように、第1~第7補強鋼材本体4A~4Gの数よりも少ない所定数の動吸振器51として第1~第3動吸振器51A~51Cを含む。動吸振装置5において、第1~第3動吸振器51A~51Cは、錘部材512の長手方向D1の長さ寸法である錘長さ寸法LWの違いに応じて固有振動数が異なっている。
【0055】
第1~第3動吸振器51A~51Cにおける錘部材512の錘長さ寸法LWは、それぞれ、第1~第7補強鋼材本体4A~4Gにおいて本体長さ寸法LBが小さい第1~第3補強鋼材本体4A~4Cの本体長さ寸法LBに対応して設定される。第1動吸振器51Aの錘部材512の錘長さ寸法LWは、第1補強鋼材本体4Aの本体長さ寸法LBと同様に、最小パネル中間長さ寸法LPSと同値である。第2動吸振器51Bの錘部材512の錘長さ寸法LWは、第2補強鋼材本体4Bの本体長さ寸法LBと同様に、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSを加算した値と同値である。第3動吸振器51Cの錘部材512の錘長さ寸法LWは、第3補強鋼材本体4Cの本体長さ寸法LBと同様に、最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値と同値である。
【0056】
動吸振装置5に含まれる所定数の第1~第3動吸振器51A~51Cは、錘部材512の錘長さ寸法LWの違いと弾性部材511のばね定数に応じて固有振動数が異なっている。このため、動吸振装置5においては、所定数の第1~第3動吸振器51A~51Cの組み合わせに基づいて、動吸振装置5の固有振動数を調整することが可能である。そして、
図5~
図7に示されるように、動吸振装置5では、第1~第7床パネル21A~21Gにおける中間領域21RBの長さ寸法に対応した第1~第7補強鋼材本体4A~4Gの本体長さ寸法LBに応じて、第1~第7補強鋼材本体4A~4Gのそれぞれに対して設けられる第1~第3動吸振器51A~51Cの組み合わせが設定される。この際、第1~第7補強鋼材本体4A~4Gのそれぞれに対して設けられる第1~第3動吸振器51A~51Cの組み合わせは、動吸振装置5の固有振動数と対象とする床衝撃音の決定周波数に応じて設定される。
【0057】
すなわち、床構造1では、動吸振装置5は、第1~第7床パネル21A~21Gにおける中間領域21RBの長さ寸法に対応した第1~第7補強鋼材本体4A~4Gの本体長さ寸法LBに応じて、所定数の第1~第3動吸振器51A~51Cから選択された1又は複数の動吸振器51を含む。
【0058】
具体的には、
図5に示されるように、第1床パネル21Aの中空部211に挿入され、本体長さ寸法LBが最小パネル中間長さ寸法LPSと同値に設定された第1補強鋼材本体4Aに対しては、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSと同値の錘部材512を有する第1動吸振器51Aのみから成る動吸振装置5が設けられる。第2床パネル21Bの中空部211に挿入され、本体長さ寸法LBが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSを加算した値と同値に設定された第2補強鋼材本体4Bに対しては、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSを加算した値と同値の錘部材512を有する第2動吸振器51Bのみから成る動吸振装置5が設けられる。第3床パネル21Cの中空部211に挿入され、本体長さ寸法LBが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値と同値に設定された第3補強鋼材本体4Cに対しては、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値と同値の錘部材512を有する第3動吸振器51Cのみから成る動吸振装置5が設けられる。
【0059】
図6に示されるように、第4床パネル21Dの中空部211に挿入され、本体長さ寸法LBが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの3倍の値を加算した値と同値に設定された第4補強鋼材本体4Dに対しては、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSと同値の錘部材512を有する第1動吸振器51Aと、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSを加算した値と同値の錘部材512を有する第2動吸振器51Bとの組み合わせから成る動吸振装置5が設けられる。第5床パネル21Eの中空部211に挿入され、本体長さ寸法LBが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの4倍の値を加算した値と同値に設定された第5補強鋼材本体4Eに対しては、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSと同値の錘部材512を有する第1動吸振器51Aと、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値と同値の錘部材512を有する第3動吸振器51Cとの組み合わせから成る動吸振装置5が設けられる。
【0060】
図7に示されるように、第6床パネル21Fの中空部211に挿入され、本体長さ寸法LBが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの5倍の値を加算した値と同値に設定された第6補強鋼材本体4Fに対しては、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSを加算した値と同値の錘部材512を有する第2動吸振器51Bと、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値と同値の錘部材512を有する第3動吸振器51Cとの組み合わせから成る動吸振装置5が設けられる。第7床パネル21Gの中空部211に挿入され、本体長さ寸法LBが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの6倍の値を加算した値と同値に設定された第7補強鋼材本体4Gに対しては、錘長さ寸法LWが最小パネル中間長さ寸法LPSに基準寸法LSの2倍の値を加算した値と同値の錘部材512を有する第3動吸振器51Cの2つが組み合わされて成る動吸振装置5が設けられる。
【0061】
以上説明の通り、動吸振装置5の固有振動数と対象とする床衝撃音の決定周波数に応じるとともに、第1~第7床パネル21A~21Gにおける中間領域21RBの長さ寸法に対応した第1~第7補強鋼材本体4A~4Gの本体長さ寸法LBに応じて、第1~第7補強鋼材本体4A~4Gのそれぞれに対して設けられる第1~第3動吸振器51A~51Cの組み合わせが設定される。これにより、所定数の第1~第3動吸振器51A~51Cの組み合わせに基づき固有振動数が調整された動吸振装置5によって、中間領域21RBの長さ寸法の異なる複数種の第1~第7床パネル21A~21Gが複雑に組み合わさった床構成であっても床衝撃音性能を決定づける帯域における制振性能を向上させることができる。このため、中間領域21RBの長さ寸法の異なる複数種の第1~第7床パネル21A~21Gのそれぞれに対応して、衝撃力が加わることによる床衝撃音を幅広く抑制することができる。この結果、複数種の第1~第7床パネル21A~21Gのそれぞれに対応して、重量床衝撃音の遮断性能を向上させることができる。
【0062】
しかも、複数種の第1~第7床パネル21A~21Gのそれぞれの中空部211の内面に固定される第1~第7補強鋼材本体4A~4Gが、各床パネルの中間領域21RBの長さ寸法と同値の本体長さ寸法LBを有するとともに、長手方向D1に対する所定の曲げ剛性を有している。これにより、中空部211を有する複数種の第1~第7床パネル21A~21Gのそれぞれの強度を高めることが可能となる。
【0063】
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
【0064】
第一の発明に係る床構造は、建物の床構造であって、所定の長手方向に延びる中空部を有する床パネルと、前記中空部内に挿入された床用補強鋼材と、を備える。前記床用補強鋼材は、前記中空部内で前記長手方向に延びる補強鋼材本体と、前記補強鋼材本体に固定された弾性部材と、前記長手方向に延びるとともに前記弾性部材に支持された錘部材とを有する動吸振器を含む動吸振装置と、を備える。前記補強鋼材本体は、前記中空部の内面に固定されている。
【0065】
第二の発明は、第一の発明に係る床構造において、前記床パネルは、前記長手方向の一方の端面から前記長手方向の所定範囲に設定され、切欠き部の形成を許容する一方側端部領域を有し、前記補強鋼材本体は、前記中空部内における前記長手方向の前記一方側端部領域以外の領域に設けられていてもよい。
【0066】
第三の発明は、第二の発明に係る床構造において、前記床パネルは、前記長手方向の他方の端面から前記長手方向の所定範囲に設定され、切欠き部の形成を許容する他方側端部領域を有し、前記補強鋼材本体は、前記中空部内における前記長手方向の前記一方側端部領域及び前記他方側端部領域以外の領域に設けられていてもよい。
【0067】
第四の発明は、第一から第三のいずれか一つの発明に係る床構造において、前記動吸振装置は、前記床パネルの前記長手方向の長さ寸法に対応した前記補強鋼材本体の前記長手方向の長さ寸法に応じて、1又は複数の前記動吸振器を含んでもよい。
【0068】
第五の発明は、第一から第四のいずれか一つの発明に係る床構造において、前記補強鋼材本体は、前記中空部内に挿入された状態で、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定されてもよい。
【0069】
第六の発明は、第一から第五のいずれか一つの発明に係る床構造において、前記補強鋼材本体は、前記長手方向に延びる軸を中心として内部空間を取り囲む周壁部を有し、前記動吸振装置は、前記内部空間内の前記周壁部に設けられてもよい。
【0070】
第七の発明は、第六の発明に係る床構造において、前記補強鋼材本体は、前記周壁部の前記長手方向と直交する上下方向に沿った高さ寸法が、前記中空部の前記上下方向に沿った高さ寸法よりも小さい値に設定されてもよい。この場合、前記補強鋼材本体は、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定された状態で、前記中空部の内面において前記中空部上面と対向する中空部下面との間に隙間が形成される。
【0071】
第八の発明は、第六又は第七の発明に係る床構造において、前記周壁部は、前記内部空間を上から覆い、前記中空部の内面において下方向を向く中空部上面に固定される上周壁片と、前記内部空間を下から覆うとともに前記上周壁片に取り付けられ、前記弾性部材が固定される下周壁片と、を有していてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 床構造
2 床体
21 床パネル
211 中空部
2111 中空部上面
2112 中空部下面
22 切欠き部
3 床用補強鋼材
4 補強鋼材本体
41 周壁部
411 上周壁片
412 下周壁片
5 動吸振装置
51 動吸振器
511 弾性部材
512 錘部材