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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/66 20250101AFI20250107BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652S
H01L29/78 652P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023554964
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032127
(87)【国際公開番号】W WO2023062951
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021168523
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】森谷 友博
【審査官】戸川 匠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/155566(WO,A1)
【文献】特開2019-087730(JP,A)
【文献】特開2020-177955(JP,A)
【文献】特開2021-093496(JP,A)
【文献】特開2020-136539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板に、主電流が流れる活性領域と、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、前記活性領域と前記終端領域との間に設けられた中間領域と、を有する炭化珪素半導体装置であって、
前記半導体基板の内部に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記活性領域から前記中間領域にわたって、前記半導体基板の第1主面と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電型の第2半導体領域と、
前記活性領域において前記半導体基板の第1主面と前記第2半導体領域との間に選択的に設けられた第1導電型の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間の領域に接して設けられ、かつ前記半導体基板の第1主面を覆うゲート絶縁膜と、
前記第2半導体領域の、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間の領域の上に前記ゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記中間領域において前記半導体基板の第1主面と前記第2半導体領域との間に設けられた、前記第2半導体領域よりも不純物濃度の高い第2導電型の第4半導体領域と、
前記中間領域において前記半導体基板の第1主面の前記ゲート絶縁膜の上に設けられたフィールド酸化膜と、
前記フィールド酸化膜の上に設けられ、前記活性領域の周囲を囲み、内側の端部で前記ゲート電極に連結され、かつ深さ方向に前記フィールド酸化膜および前記ゲート絶縁膜を介して前記第4半導体領域に対向するゲートポリシリコン配線層と、
前記ゲート電極および前記ゲートポリシリコン配線層を覆う層間絶縁膜と、
深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通して前記半導体基板の第1主面を露出する第1コンタクトホールと、
前記第1コンタクトホールを介して前記第2半導体領域、前記第3半導体領域および前記第4半導体領域に電気的に接続された第1電極と、
前記半導体基板の第2主面に設けられた第2電極と、
を備え、
前記ゲートポリシリコン配線層は、前記フィールド酸化膜の内側の端部よりも内側へ延在し、内側の部分で深さ方向に前記ゲート絶縁膜のみを介して前記第4半導体領域に対向し、
前記フィールド酸化膜の内側の端部は、前記第1コンタクトホールから外側に21μm以下の距離の範囲内に離れて位置することを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記フィールド酸化膜の内側の端部は、前記第1コンタクトホールから外側に5μm以上10μm以下の距離の範囲内に離れて位置することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の第1主面に設けられ、前記第1電極と同じ電位に固定される第3電極をさらに備え、
前記第3電極は、深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通する第2コンタクトホールを介して前記半導体基板の内部の所定領域と電気的に接続され、
前記フィールド酸化膜の端部は、前記第2コンタクトホールから21μm以下の距離の範囲内に離れて位置することを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート電極は、前記半導体基板の第1主面に平行な方向に直線状に延在して前記活性領域から前記中間領域に達し、長手方向の端部で前記ゲートポリシリコン配線層に連結されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
深さ方向に前記半導体基板の第1主面から前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達し、かつ前記半導体基板の第1主面に平行な方向に直線状に延在して前記活性領域から前記中間領域に達するトレンチを備え、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記トレンチの内部に設けられ、前記トレンチの長手方向の端部で前記ゲートポリシリコン配線層に連結されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素(SiC)を半導体材料とする炭化珪素半導体装置として、SiC-MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)が公知である。SiC-MOSFETでは、活性領域とエッジ終端領域との間の中間領域において半導体基板のおもて面上に活性領域からゲート絶縁膜が延在し、このゲート絶縁膜上にフィールド酸化膜を介してゲートランナーが設けられている。
【0003】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図13は、従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトの一部を示す平面図である。図13には、活性領域201のコーナー部(頂点)201a付近を示す。図14,15は、それぞれ図13の切断線AA-AA’および切断線BB-BB’における断面構造を示す断面図である。図13~15に示す従来の炭化珪素半導体装置230は、炭化珪素からなる半導体基板(半導体チップ)210に、活性領域201と、活性領域201の周囲を囲むエッジ終端領域202と、を備えたトレンチゲート構造の縦型SiC-MOSFETである。
【0004】
半導体基板210は、炭化珪素からなるn+型出発基板211上にn-型ドリフト領域232およびp型ベース領域234となる各エピタキシャル層212,213をこの順にエピタキシャル成長させてなる。半導体基板210は、p型エピタキシャル層213側の主面をおもて面とし、n+型出発基板211側の主面を裏面とする。活性領域201には、MOSFETの同一構造の複数の単位セル(素子の構成単位)が互いに隣接して配置される。活性領域201は、略矩形状の平面形状を有し、半導体基板210の略中央(チップ中央)に設けられている。
【0005】
活性領域201は、後述するゲートトレンチ237の長手方向(後述する第1方向X)において後述するコンタクトホール240a,240bの長手方向の端部よりも内側(チップ中央側)の領域である。活性領域201は、ゲートトレンチ237の短手方向(後述する第2方向Y)において最も外側のコンタクトホール240bの外側(半導体基板210の端部(チップ端部)側)の側壁よりも内側の領域である。コンタクトホール240a,240bの長手方向の端部とは、コンタクトホール240a,240bの側壁を形成する絶縁層(層間絶縁膜240およびゲート絶縁膜238)の側面である。
【0006】
活性領域201において半導体基板210のおもて面側に、一般的なトレンチゲート構造が設けられている。トレンチゲート構造は、p型ベース領域234、n+型ソース領域235、p++型コンタクト領域236、ゲートトレンチ237、ゲート絶縁膜238およびゲート電極239で構成される。ゲートトレンチ237は、半導体基板210のおもて面に平行な第1方向X(長手方向)に直線状に延在して活性領域201内で終端する。ゲートトレンチ237は、半導体基板210のおもて面に平行な方向でかつ第1方向Xと直交する第2方向Y(短手方向)に互いに隣り合うストライプ状に複数配置される。
【0007】
ゲートトレンチ237が第2方向Yに互いに隣り合うように配置されることで、同一構造の複数の単位セルが第2方向Yに隣接して配置される。ゲート絶縁膜238は、ゲートトレンチ237の内壁に沿って設けられるとともに、ゲートトレンチ237の内壁から半導体基板210のおもて面上に延在している。ゲート絶縁膜238は、半導体基板210のおもて面上を活性領域201からチップ端部まで達する。ゲート電極239は、ゲートトレンチ237の内部においてゲート絶縁膜238上に、ゲートトレンチ237の内部を埋め込むように設けられている。
【0008】
ゲート電極239は、ゲートトレンチ237の長手方向の端部において後述するゲートポリシリコン(poly-Si)配線層262に連結されている。層間絶縁膜240は、ゲート電極239、ゲートポリシリコン配線層262およびフィールド酸化膜261を覆うように、半導体基板210のおもて面の全域にわたって、半導体基板210のおもて面のゲート絶縁膜238上に設けられている。活性領域201には、深さ方向Zに層間絶縁膜240およびゲート絶縁膜238を貫通して半導体基板210のおもて面に達するコンタクトホール240a,240bが設けられている。
【0009】
活性領域201のコンタクトホール240a,240bは、第1方向Xにストライプ状に延在する。活性領域201の最も外側のコンタクトホール240bは、最も外側のゲートトレンチ237よりも第2方向Yに外側に設けられている。活性領域201の最も外側のコンタクトホール240bの全域に、後述するp++型コンタクト延在部236aが露出される。活性領域201の他のコンタクトホール240aは、互いに隣り合うゲートトレンチ237間に設けられ、n+型ソース領域235およびp++型コンタクト領域236を露出し、かつ長手方向(第1方向X)の端部でp++型コンタクト延在部236aを露出する。
【0010】
活性領域201とエッジ終端領域202との間の中間領域203は、活性領域201に隣接して、活性領域201の周囲を略矩形状に囲む。中間領域203において半導体基板210のおもて面の表面領域に、深さ方向Zに後述するゲートポリシリコン配線層262の全面に対向するように、p++型コンタクト延在部236aが設けられている。p++型コンタクト延在部236aは、p++型コンタクト領域236の中間領域203に延在する部分である。p++型コンタクト延在部236aは、半導体基板210のおもて面とp型ベース延在部234aとの間の全域に設けられている。
【0011】
p型ベース延在部234aは、p型ベース領域234の中間領域203に延在する部分である。p型ベース延在部234aおよびp++型コンタクト延在部236aは、活性領域201の周囲を囲み、内側にゲートトレンチ237まで延在する。p++型コンタクト延在部236aは、活性領域201の最も外側のコンタクトホール240bの全域に露出される。p型ベース延在部234aとn-型ドリフト領域232との間に、p+型延在部252aが設けられている。p+型延在部252aは、ゲートトレンチ237と離れて配置されて、活性領域201の周囲を囲む。
【0012】
中間領域203において半導体基板210のおもて面のゲート絶縁膜238上には、フィールド酸化膜261を介して、ゲートランナーとなるゲートポリシリコン配線層262およびゲート金属配線層263がこの順に積層されている。フィールド酸化膜261およびゲートポリシリコン配線層262は、半導体基板210のおもて面上のゲート絶縁膜238と層間絶縁膜240との間に設けられている。フィールド酸化膜261の内側の端部261aは、活性領域201の外周の全周にわたって、活性領域201と中間領域203との境界(コンタクトホール240a,240bの長手方向の端部およびコンタクトホール240bの外側の側壁)から外側に32μm~54μm程度の距離w201で離れて位置する。
【0013】
これによって、フィールド酸化膜261の内側の端部261aで後述する絶縁層260の表面に形成される段差264は、第1方向Xおよび第1,2方向X,Yに対して斜めの方向に活性領域201のコンタクトホール240a,240bの長手方向の端部から外側に上記距離w201だけ離れ、第2方向Yに活性領域201の最も外側のコンタクトホール240bの外側の側壁から外側に上記距離w201だけ離れる。絶縁層260の表面の段差264から活性領域201と中間領域203との境界までの距離w201は、活性領域201のコーナー部201aで第1,2方向X,Yに対して斜めの方向に最大となる。
【0014】
活性領域201よりも外側において半導体基板210のおもて面上には、ゲート絶縁膜238およびフィールド酸化膜261をこの順に積層してなる相対的に厚さの厚い部分と、この部分よりも内側のゲート絶縁膜238のみからなる相対的に厚さの薄い部分と、を有する絶縁層260が配置される。この絶縁層260内での厚さ差により、絶縁層260の表面には、フィールド酸化膜261の内側の端部261aよりも内側でドレイン電極243側に凹んだ段差264が形成されている。ゲートポリシリコン配線層262は、フィールド酸化膜261上に設けられ、活性領域201の周囲を囲む。
【0015】
また、ゲートポリシリコン配線層262は、フィールド酸化膜261上から当該フィールド酸化膜261の内側の端部261aの上記段差264を経て内側へ延在し、中間領域203における半導体基板210のおもて面のゲート絶縁膜238上で終端している。このため、絶縁層260の、半導体基板210のおもて面とゲートポリシリコン配線層262との間の部分は、内側の部分で相対的に厚さが薄くなっている。ゲート金属配線層263は、活性領域201の周囲を囲む。ゲート金属配線層263は、層間絶縁膜240のコンタクトホール240cを介してゲートポリシリコン配線層262に接する。
【0016】
符号231,241,242,223,224は、それぞれn+型ドレイン領域、ソース電極、パッシベーション膜、n+型チャネルストッパ領域およびp+型領域である。符号233は、n型電流拡散領域である。符号233aは、n型電流拡散領域の中間領域203に延在する部分である。符号251,252は、ゲートトレンチ237の底面のゲート絶縁膜238の電界緩和のためのp+型領域である。p+型延在部252aは、p+型領域の中間領域203に延在する部分である。符号221,222は、それぞれエッジ終端領域202の耐圧構造220を構成するp-型領域およびp--型領域である。
【0017】
従来の縦型SiC-MOSFETとして、活性領域のコーナー部に、p型ベース領域よりも不純物濃度の高いp+型領域を設けて、オンからオフへのスイッチング過渡期にエッジ終端領域で発生する変位電流を当該p+型領域からソース電極に引き抜く構造とした装置が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照。)。下記特許文献1,2では、オンからオフへのスイッチング過渡期にエッジ終端領域で発生する変位電流を活性領域のコーナー部のp+型領域からソース電極へ引き抜く構造とすることで、活性領域のコーナー部付近でゲート絶縁膜およびフィールド酸化膜に高電界がかかることを抑制している。
【0018】
また、従来の別の縦型SiC-MOSFETとして、メインMOSFETの主電流が流れないメイン無効領域の、電流センスとなるセンスMOSFETを配置したセンス有効領域を除く領域に低ライフタイム領域を設けた装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)下記特許文献3では、MOSFETの寄生ダイオードのターンオフ時にメイン無効領域からセンス有効領域に変位電流が流れ込むことを低ライフタイム領域によって抑制して、メイン無効領域の、センス有効領域を除く領域の全域にメインMOSFETのp型ベース領域を配置した構造とすることで、半導体基板のおもて面内で電界を均一にして、フィールド酸化膜に局所的に電界が集中することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】特開2018-206873号公報
【文献】特開2017-005278号公報
【文献】特開2020-191420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上述した従来の炭化珪素半導体装置230(SiC-MOSFET:図13~15参照)では、次の問題が生じる。MOSFETのオンからオフへのスイッチング過渡期に生じる急峻なdV/dt(単位時間あたりのドレイン・ソース間の電圧変化)により、エッジ終端領域202のn-型ドリフト領域232で変位電流(正孔電流)が発生し活性領域201へ向かって流れる。この変位電流は、エッジ終端領域202のn-型ドリフト領域232から中間領域203のp+型延在部252aおよびp型ベース延在部234aを経てp++型コンタクト延在部236aへ流れ込み、活性領域201のコンタクトホール240aの長手方向の端部および活性領域201の最も外側のコンタクトホール240b全域からソース電極241へ引き抜かれる。
【0021】
このとき、半導体基板210の温度が低いほど半導体基板210内のキャリアが減少し、キャリアの減少分だけ、p++型コンタクト延在部236aが高抵抗となって(図12参照)、変位電流をソース電極241に引き抜く時間が長くなり、中間領域203における半導体基板210のおもて面側の電位が高くなる。また、dV/dtが大きくなるほど、変位電流が大きくなり、変位電流の経路長に占める比率の大きいp++型コンタクト延在部236aの電位が高くなる。これらの電位上昇により、p++型コンタクト延在部236a上の絶縁層260に高電界がかかり、絶縁層260の厚さの薄い部分(ゲート絶縁膜238のみからなる部分)のうち、変位電流の始点側となる段差264の箇所で、ゲート絶縁膜238を通過して半導体基板210からゲートポリシリコン配線層262へ向かうゲートリーク電流が発生し、ゲート絶縁膜238が絶縁破壊する。
【0022】
炭化珪素を半導体材料とした場合、シリコン(Si)を半導体材料とした場合と比べてp型領域の抵抗が高く、中間領域203のp型領域(p+型延在部252a、p型ベース延在部234aおよびp++型コンタクト延在部236a)での電圧降下が大きくなる。このため、中間領域203のp型領域上の絶縁層260にかかる電界が高くなり、スイッチング過渡期に、絶縁層260のうちゲート絶縁膜238のみで構成された厚さの薄い部分が絶縁破壊しやすい。また、MOSFETはユニポーラ素子であるため、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)と比べて遮断速度(スイッチング速度)が速いことで、スイッチング過渡期に発生するdV/dtが急峻になりやすく、絶縁層260のうちゲート絶縁膜238のみで構成された厚さの薄い部分が劣化しやすい。
【0023】
EMS(Emission Micro Scope:エミッション顕微鏡)による発光像から、活性領域201のコーナー部201aにおける絶縁層260の表面の段差264、および、ゲートランナーを構成するゲートポリシリコン配線層262がゲートパッド(不図示)やゲート抵抗測定用電極パッド(不図示)に沿って内側に略直角に湾曲する箇所が変位電流の集中箇所(発光箇所)であることが本発明者により確認された。そして、この変位電流の集中箇所(図13には活性領域201のコーナー部201aにおける絶縁層260の表面の段差264での変位電流の集中箇所200を黒点で示す)でゲート絶縁膜238の劣化が生じることが確認された。また、従来の炭化珪素半導体装置230を搭載した製品では、-55℃程度の低い温度環境下で変位電流によるゲート絶縁膜238の絶縁破壊が生じることが本発明者により確認されている(図11参照)。
【0024】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、動作環境の温度適用範囲が広く、信頼性の高い炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、炭化珪素からなる半導体基板に、主電流が流れる活性領域と、前記活性領域の周囲を囲む終端領域と、を有する炭化珪素半導体装置であって、次の特徴を有する。前記半導体基板の内部に、第1導電型の第1半導体領域が設けられている。前記活性領域から前記活性領域と前記終端領域との間の中間領域にわたって、前記半導体基板の第1主面と前記第1半導体領域との間に、第2導電型の第2半導体領域が設けられている。前記活性領域において前記半導体基板の第1主面と前記第2半導体領域との間に、第1導電型の第3半導体領域が選択的に設けられている。ゲート絶縁膜は、前記第2半導体領域の、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間の領域に接して設けられ、かつ前記半導体基板の第1主面を覆う。ゲート電極は、前記第2半導体領域の、前記第1半導体領域と前記第3半導体領域との間の領域の上に前記ゲート絶縁膜を介して設けられている。前記中間領域において前記半導体基板の第1主面と前記第2半導体領域との間に、第2導電型の第4半導体領域が設けられている。前記第4半導体領域は、前記第2半導体領域よりも不純物濃度が高い。
【0026】
前記中間領域において前記半導体基板の第1主面の前記ゲート絶縁膜の上に、フィールド酸化膜が設けられている。前記フィールド酸化膜の上に、ゲートポリシリコン配線層が設けられている。前記ゲートポリシリコン配線層は、前記活性領域の周囲を囲み、内側の端部で前記ゲート電極に連結され、かつ深さ方向に前記フィールド酸化膜および前記ゲート絶縁膜を介して前記第4半導体領域に対向する。層間絶縁膜は、前記ゲート電極および前記ゲートポリシリコン配線層を覆う。第1コンタクトホールは、深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通して前記半導体基板の第1主面を露出する。第1電極は、前記第1コンタクトホールを介して前記第2半導体領域、前記第3半導体領域および前記第4半導体領域に電気的に接続されている。第2電極は、前記半導体基板の第2主面に設けられている。前記ゲートポリシリコン配線層は、前記フィールド酸化膜の内側の端部よりも内側へ延在し、内側の部分で深さ方向に前記ゲート絶縁膜のみを介して前記第4半導体領域に対向している。前記フィールド酸化膜の内側の端部は、前記第1コンタクトホールから外側に21μm以下の距離の範囲内に離れて位置する。
【0027】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記フィールド酸化膜の内側の端部は、前記第1コンタクトホールから外側に5μm以上10μm以下の距離の範囲内に離れて位置することを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板の第1主面に設けられ、前記第1電極と同じ電位に固定される第3電極をさらに備え、前記第3電極は、深さ方向に前記層間絶縁膜を貫通する第2コンタクトホールを介して前記半導体基板の内部の所定領域と電気的に接続されている。前記フィールド酸化膜の端部は、前記第2コンタクトホールから21μm以下の距離の範囲内に離れて位置することを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記ゲート電極は、前記半導体基板の第1主面に平行な方向に直線状に延在して前記活性領域から前記中間領域に達し、長手方向の端部で前記ゲートポリシリコン配線層に連結されていることを特徴とする。
【0030】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、深さ方向に前記半導体基板の第1主面から前記第3半導体領域および前記第2半導体領域を貫通して前記第1半導体領域に達し、かつ前記半導体基板の第1主面に平行な方向に直線状に延在して前記活性領域から前記中間領域に達するトレンチを備える。前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁膜を介して前記トレンチの内部に設けられ、前記トレンチの長手方向の端部で前記ゲートポリシリコン配線層に連結されていることを特徴とする。
【0031】
上述した発明によれば、オンからオフへのスイッチング過渡期に終端領域に生じる変位電流が中間領域の第2半導体領域を通って活性領域の第1コンタクトホールから第1電極へ引き抜かれるときに、中間領域の第2半導体領域での電圧降下を小さくすることができる。これにより、中間領域の第2半導体領域とゲートポリシリコン配線層との間の絶縁層にかかる電界強度を低くすることができるため、当該絶縁層にゲート絶縁膜のみからなる厚さの薄い部分が存在しても、当該厚さの薄い部分でのゲート絶縁膜の劣化が抑制される。
【0032】
また、上述した発明によれば、中間領域の第2半導体領域での電圧降下が小さくなることで、半導体基板の温度がマイナスになる温度環境下で、半導体基板内のキャリアが減少して中間領域の第2半導体領域が高抵抗となったとしても、中間領域における半導体基板のおもて面側での電位上昇が抑制される。これによって、中間領域の第2半導体領域とゲートポリシリコン配線層との間の絶縁層にかかる電界強度を低くすることができるため、当該絶縁層の絶縁破壊を抑制することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、動作環境の温度適用範囲が広く、信頼性の高い半導体装置を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図2A図2Aは、図1の活性領域のコーナー部付近を拡大して示す平面図である。
図2B図2Bは、図1の活性領域のゲートパッド付近を拡大して示す平面図である。
図3図3は、図2Aの切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
図4図4は、図2Aの切断線B-B’における断面構造を示す断面図である。
図5図5は、図2Aの切断線C-C’における断面構造を示す断面図である。
図6図6は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図7図7は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図8図8は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図9図9は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図10図10は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態の一部を半導体基板のおもて面側から見た平面図である。
図11図11は、実験例1の絶縁層の表面の段差からコンタクトまでの距離の動作環境温度依存性を示す特性図である。
図12図12は、実施例2のp型領域の抵抗値の温度依存性を示す特性図である。
図13図13は、従来の炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトの一部を示す平面図である。
図14図14は、図13の切断線AA-AA’における断面構造を示す断面図である。
図15図15は、図13の切断線BB-BB’における断面構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
(実施の形態)
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造について説明する。図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。図1において、粗い破線は、活性領域1と中間領域3との境界と、中間領域3とエッジ終端領域2の境界と、である、細かい破線はn+型チャネルストッパ領域23の内周である。図1では、ゲートランナー67の配置を明確にするために、図2Bと異なる寸法でゲートランナー67およびゲートパッド65を図示するが、これらの寸法や平面形状は適宜設定される。n+型チャネルストッパ領域23の外周は、略矩形状の平面形状の半導体基板10の外周である。図2Aは、図1の活性領域1のコーナー部(頂点)1a付近を拡大して示す平面図である。図2Bは、図1の活性領域のゲートパッド付近を拡大して示す平面図である。
【0037】
図2A,2Bには、ゲートトレンチ37,ゲート絶縁膜38およびゲート電極39をまとめて1本の太線で示し、活性領域1のコンタクトホール(第1コンタクトホール)40a,40b,40cをハッチングで示す。フィールド酸化膜61の内周(内側の端部61a)を粗い破線で示し、ゲートポリシリコン配線層62の内周および外周を細かい破線で示す。フィールド酸化膜61の外周は半導体基板10の外周である。符号41aはソース電極41の外周であり、符号63a,63bはそれぞれゲート金属配線層63の内周および外周である。図3~5は、それぞれ図2Aの切断線A-A’、切断線B-B’および切断線C-C’における断面構造を示す断面図である。
【0038】
図1,2A,2B,3~5に示す実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置30は、炭化珪素(SiC)からなる半導体基板(半導体チップ)10に活性領域1およびエッジ終端領域2を備えたトレンチゲート構造の縦型SiC-MOSFETである。活性領域1は、MOSFETのオン時に主電流(ドリフト電流)が流れる領域であり、MOSFETの同一構造の複数の単位セル(素子の構成単位)が互いに隣接して配置される。活性領域1は、略矩形状の平面形状を有し、半導体基板10の略中央(チップ中央)に配置されている。活性領域1のコーナー部(頂点)1aにおいて、後述するソース電極41、ゲートポリシリコン配線層62およびゲート金属配線層63は、面取りされて略円弧状となっていてもよい。
【0039】
活性領域1は、後述する第1方向X(後述するゲートトレンチ37の長手方向)において後述するコンタクトホール40a,40bの長手方向の端部よりも内側(チップ中央側)の領域である。活性領域1は、後述する第2方向Y(ゲートトレンチ37の短手方向)において最も外側のコンタクトホール40bの外側(半導体基板10の端部(チップ端部)側)の側壁よりも内側の領域である。活性領域1のコンタクトホール40a,40bの長手方向の端部とは、当該コンタクトホール40a,40bの側壁を形成する絶縁層(層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜38)の側面である。
【0040】
活性領域1において半導体基板10のおもて面上に、ソース電極(第1電極)41が設けられている。ソース電極41は、活性領域1の略全域を覆う。ソース電極41は、後述する中間領域3に延在して、深さ方向Zに層間絶縁膜40を介して後述するゲートポリシリコン配線層62と対向してもよい。ソース電極41の、後述するパッシベーション膜42(図3~5参照)の開口部に露出する部分がソースパッド(電極パッド)として機能する。図1には、後述する略矩形状の平面形状のゲートパッド65の3辺を囲むように内側に凹んだ凹部を有する略矩形状の平面形状で活性領域1、ソース電極41およびソースパッドを示すが、これら各部の平面形状は適宜設定される。
【0041】
活性領域1とエッジ終端領域2との間の中間領域3は、活性領域1に隣接し、活性領域1の周囲を囲む。中間領域3とエッジ終端領域2との境界は、耐圧構造の内側の端部(図3~5では後述するFLR構造20を構成する最も内側のp-型領域21の内側の端部)である。中間領域3には、ゲートパッド(電極パッド)65、ゲート抵抗66およびゲートランナー67が配置されている。ゲートパッド65は、ゲートポリシリコン配線層68aおよびゲート金属配線層69で構成されている。ゲートパッド65は、例えば、コーナー部が面取りされた略矩形状の平面形状であってもよい。
【0042】
ゲートパッド65は、ゲートランナー67と離れて、ゲートランナー67よりも外側に配置されている。ゲート抵抗66は、例えば、ゲートポリシリコン配線層68bで構成されている。ゲート抵抗66は、ゲートパッド65とゲートランナー67との間に配置され、ゲートパッド65とゲートランナー67とを電気的に接続する。具体的には、ゲート抵抗66を構成するゲートポリシリコン配線層68bは、ゲートパッド65を構成するゲートポリシリコン配線層68aと、ゲートランナー67を構成する後述するゲートポリシリコン配線層62と、を連結する。
【0043】
ゲートランナー67は、ゲートポリシリコン配線層62およびゲート金属配線層63で構成されている。ゲートポリシリコン配線層62は、活性領域1のコンタクトホール40a,40bを離れて配置され、活性領域1の周囲を囲む。ゲート金属配線層63は、ソース電極41と離れて配置され、ソース電極41の周囲を囲む。ゲートランナー67は、活性領域1とゲートパッド65との間をゲートパッド65に沿って内側に略直角に湾曲し、ゲートパッド65の3辺を囲むように延在している。すなわち、ゲートランナー67は、ゲートパッド65に対向する部分で内側に凹んだ平面形状となっている。
【0044】
中間領域3に、ゲート抵抗測定用電極パッド(電極パッド:不図示)が配置されてもよい。ゲート抵抗測定用電極パッドは、ゲートパッド65と同様に、ゲートランナー67よりも外側に配置され、ゲート抵抗(不図示)を介してゲートランナー67に電気的に接続される。このため、ゲートランナー67は、活性領域1とゲート抵抗測定用電極パッドとの間においても、活性領域1とゲートパッド65との間の部分と同様に、ゲート抵抗測定用電極パッドに沿って内側に略直角に湾曲し、ゲート抵抗測定用電極パッドの3辺を囲むように内側に凹んだ平面形状で延在している。
【0045】
このようにゲートパッド65付近およびゲート抵抗測定用電極パッド付近においても、活性領域1のコーナー部1aと同様に、ゲートポリシリコン配線層62の内角が略直角になる箇所1bが存在する。エッジ終端領域2は、活性領域1とチップ端部との間の領域であり、中間領域3を介して活性領域1の周囲を囲み、半導体基板10のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する。耐圧とは、pn接合でアバランシェ降伏を起こし、ソース-ドレイン間の電流を増加してもそれ以上ソース-ドレイン間の電圧が増加しない限界の電圧である。
【0046】
エッジ終端領域2には、接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造や、フィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)構造などの耐圧構造が配置される。この耐圧構造により、エッジ終端領域2の電界が緩和または分散される。エッジ終端領域2に、フローティング(浮遊)電位の金属電極であるフィールドプレート(FP:Field Plate)を配置して、後述する絶縁層60および層間絶縁膜40に経時的に蓄積される電荷を放出させる構造としてもよい。
【0047】
半導体基板10は、炭化珪素からなるn+型出発基板11のおもて面上にn-型ドリフト領域(第1半導体領域)32およびp型ベース領域(第2半導体領域)34となる各エピタキシャル層12,13をこの順にエピタキシャル成長させてなる。半導体基板10は、p型エピタキシャル層13側の主面をおもて面(第1主面)とし、n+型出発基板11側の主面を裏面(第2主面)とする。n+型出発基板11は、n+型ドレイン領域31である。p型エピタキシャル層13の、エッジ終端領域2の部分は除去され、半導体基板10のおもて面に段差14が形成されている。
【0048】
半導体基板10のおもて面は、段差14を境にして、活性領域1および中間領域3の部分(以下、第1面とする)10aよりもエッジ終端領域2の部分(以下、第2面とする)10bでn+型ドレイン領域31側に凹んでいる。半導体基板10のおもて面の第2面10bは、p型エピタキシャル層13の除去により露出されたn-型エピタキシャル層12の露出面である。半導体基板10のおもて面の第1面10aと第2面10bとをつなぐ部分(第3面:段差14のメサエッジ)10cには、p型エピタキシャル層13の除去により露出されたp型エピタキシャル層13の側面である。
【0049】
活性領域1において半導体基板10のおもて面の第1面10a側に、p型ベース領域34、n+型ソース領域(第3半導体領域)35、p++型コンタクト領域36、ゲートトレンチ37、ゲート絶縁膜38およびゲート電極39からなるトレンチゲート構造が設けられている。ゲートトレンチ37は、半導体基板10のおもて面に平行な第1方向X(長手方向)に直線状に中間領域3まで延在している。ゲートトレンチ37は、半導体基板10のおもて面に平行な方向でかつ第1方向Xと直交する第2方向Y(短手方向)に互いに隣り合うストライプ状に複数配置される。
【0050】
ゲートトレンチ37が第2方向Yに互いに隣り合うように配置されることで、同一構造の複数の単位セルが第2方向Yに隣接して配置される。互いに隣り合うゲートトレンチ37の端部同士を例えば円弧状の平面形状に連結して、当該互いに隣り合うゲートトレンチ37間の部分を囲む環状の平面形状となるようにゲートトレンチ37を配置してもよい(図2A,2B参照)。ゲートトレンチ37は、半導体基板10のおもて面の第1面10aからp型エピタキシャル層13を貫通してn-型エピタキシャル層12内に達する。ゲート絶縁膜38は、ゲートトレンチ37の内壁に沿って設けられている。
【0051】
また、ゲート絶縁膜38は、ゲートトレンチ37の内壁から半導体基板10のおもて面上に延在し、半導体基板10のおもて面上を活性領域1からチップ端部まで達する。ゲート電極39は、ゲートトレンチ37の内部においてゲート絶縁膜38上に、ゲートトレンチ37の内部を埋め込むように設けられている。ゲート電極39は、ゲートトレンチ37の長手方向の端部において後述するゲートポリシリコン配線層62に連結されている。p型ベース領域34、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36は、互いに隣り合うゲートトレンチ37間にそれぞれ選択的に設けられている。
【0052】
p型ベース領域34は、p型エピタキシャル層13の、n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36および後述するp++型コンタクト延在部36aを除く部分であり、ゲートトレンチ37の側壁でゲート絶縁膜38に接する。p型ベース領域34は、活性領域1から外側(チップ端部側)へ延在して、半導体基板10のおもて面の第3面10cに達する。p型ベース領域34は、活性領域1および中間領域3の全域に設けられている。p型ベース領域34の中間領域3に延在する部分(以下、p型ベース延在部(第2半導体領域)とする)34aは、活性領域1の周囲を略矩形状に囲む。
【0053】
+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36は、半導体基板10のおもて面の第1面10aとp型ベース領域34との間に、p型ベース領域34に接してそれぞれ選択的に設けられ、かつ半導体基板10のおもて面の第1面10aに露出されている。半導体基板10のおもて面の第1面10aに露出とは、半導体基板10のおもて面の第1面10aにおいてソース電極41に接することである。n+型ソース領域35は、ゲートトレンチ37の側壁でゲート絶縁膜38に接する。p++型コンタクト領域36は、n+型ソース領域35よりもゲートトレンチ37から離れて配置されている。
【0054】
+型ソース領域35(図4には不図示)およびp++型コンタクト領域36は、後述するコンタクトホール40aの長手方向の長さと略同じ長さで第1方向Xに直線状に延在する。略同じ長さとは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ長さであることを意味する。p++型コンタクト領域36は、長手方向(第1方向X)の端部でp++型コンタクト延在部(第4半導体領域)36aに連結される。p++型コンタクト領域36の不純物濃度は、例えば、1×1019/cm3以上1×1021/cm3以下程度であり、具体的には1×1020/cm3程度であってもよい。
【0055】
++型コンタクト領域36は設けなくてもよい。この場合、p++型コンタクト領域36に代えて、p型ベース領域34が半導体基板10のおもて面の第1面10aに達して露出される。なお、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36のパターンは、これに限らず様々に変更可能である。例えば、n+型ソース領域35をトレンチの長手方向に点在するp++型コンタクト領域36の周囲を囲むはしご状に配置してもよいし、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36をトレンチの長手方向に対して垂直な短手方向に延在するストライプ状に配置してもよい。
【0056】
p型ベース領域34とn+型ドレイン領域31との間に、n+型ドレイン領域31に接して、n-型ドリフト領域32が設けられている。n-型ドリフト領域32は、活性領域1からチップ端部まで延在する。p型ベース領域34とn-型ドリフト領域32との間において、ゲートトレンチ37の底面よりもn+型ドレイン領域31側に深い位置に、n型電流拡散領域33および第1,2p+型領域51,52がそれぞれ選択的に設けられていてもよい。n型電流拡散領域33および第1,2p+型領域51,52は、ゲートトレンチ37の長手方向の長さと略同じ長さで第1方向Xに直線状に延在している。
【0057】
n型電流拡散領域33は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。n型電流拡散領域33は、第2方向Yに第1,2p+型領域51,52およびゲート絶縁膜38に接する。n型電流拡散領域33は、上面(n+型ソース領域35側の端部)でp型ベース領域34に接する。n型電流拡散領域33は、後述するn型電流拡散延在部33aに連結される。n型電流拡散領域33を設けない場合、n-型ドリフト領域32が半導体基板10のおもて面側に延在してp型ベース領域34に接する。
【0058】
第1,2p+型領域51,52は、ゲートトレンチ37の底面のゲート絶縁膜38にかかる電界を緩和させる機能を有する。第1,2p+型領域51,52の深さ位置は適宜設定可能である。例えば、第1,2p+型領域51,52は、n型電流拡散領域33よりもn+型ドレイン領域31側に浅い深さ位置で終端して、略全体をn型電流拡散領域33に囲まれてもよい。または、第1,2p+型領域51,52は、深さ方向Zにn型電流拡散領域33と略同じ深さ位置か、もしくはn型電流拡散領域33よりもn+型ドレイン領域31側に深い位置に達して、n-型ドリフト領域32に接していてもよい。
【0059】
第1,2p+型領域51,52は、長手方向(第1方向X)の端部で後述するp+型延在部52aに連結されている(不図示)。第1p+型領域51は、p型ベース領域34と離れて設けられ、深さ方向Zにゲートトレンチ37の底面に対向する。第1p+型領域51は、ゲートトレンチ37の底面に達してもよい。第1p+型領域51は、第1,2p+型領域51,52間の所定箇所に他のp+型領域(不図示)を配置するか、または第1p+型領域51の一部を第2p+型領域52側へ延在させるか、によって第2p+型領域52に所定箇所で電気的に接続されていてもよい。
【0060】
第2p+型領域52は、互いに隣り合うゲートトレンチ37間に、第1p+型領域51およびゲートトレンチ37と離れて設けられている。第2p+型領域52の上面は、p型ベース領域34に接する。n-型エピタキシャル層12の、n型電流拡散領域33、第1,2p+型領域51,52、p+型延在部52a、後述するp-型領域21、後述するp--型領域22および後述するn+型チャネルストッパ領域23を除く部分がn-型ドリフト領域32である。n-型ドリフト領域32は、これらの領域とn+型ドレイン領域31との間に、これらの領域に接して設けられている。
【0061】
層間絶縁膜40は、ゲート電極39、後述するフィールド酸化膜61および後述するゲートポリシリコン(poly-Si)配線層62を覆うように、半導体基板10のおもて面の全域にわたって、半導体基板10のおもて面のゲート絶縁膜38上に設けられている。活性領域1には、深さ方向Zに層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜38を貫通して半導体基板10のおもて面に達するコンタクトホール40a,40bが設けられている。活性領域1のコンタクトホール40a,40bは、後述する絶縁層60の表面の段差64までの距離w1が後述する所定範囲内になるように第1方向Xにストライプ状に延在する。
【0062】
活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bは、最も外側のゲートトレンチ37よりも第2方向Yに外側に設けられている。活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bの全域に後述するp++型コンタクト延在部36aが露出される。最も外側のゲートトレンチ37よりも第2方向Yに外側にはn+型ソース領域35は設けられていない。活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bを除く他のコンタクトホール40aは、互いに隣り合うゲートトレンチ37間に設けられ、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36を露出し、かつ長手方向(第1方向X)の端部でp++型コンタクト延在部36aを露出する。
【0063】
中間領域3において半導体基板10のおもて面の第1面10aの表面領域には、深さ方向Zに後述するゲートポリシリコン配線層62に対向する位置に、p++型コンタクト延在部36aが設けられている。p++型コンタクト延在部36aは、p++型コンタクト領域36の中間領域3に延在する部分である。p++型コンタクト延在部36aは、半導体基板10のおもて面の第1面10aとp型ベース延在部34aとの間の全域に設けられ、中間領域3における半導体基板10のおもて面の第1,3面10a,10cに露出される。p型ベース延在部34aは、半導体基板10のおもて面の第3面10cに露出される。
【0064】
中間領域3およびエッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面の第1~3面10a~10cに露出とは、当該第1~3面10a~10c上のゲート絶縁膜38に接することである。p型ベース延在部34aおよびp++型コンタクト延在部36aは、活性領域1の周囲を囲み、中間領域3から内側にゲートトレンチ37まで延在する。p型ベース延在部34aおよびp++型コンタクト延在部36aは、第1方向Xに、互いに隣り合うゲートトレンチ37間まで延在してもよい。p++型コンタクト延在部36aは、活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bの全域に露出される。
【0065】
++型コンタクト延在部36aは、活性領域1のコンタクトホール40aの長手方向の端部に露出されてもよい。p++型コンタクト延在部36aは、MOSFETのオンからオフへのスイッチング過渡期にエッジ終端領域2のn-型ドリフト領域32に発生した変位電流(正孔電流)を活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bを介してソース電極41へ引き抜く機能を有する。p++型コンタクト領域36を設けない場合、p++型コンタクト延在部36aはp型ベース領域34に接する。p++型コンタクト延在部36aの不純物濃度は、例えば、1×1019/cm3以上1×1021/cm3以下程度であり、具体的には1×1020/cm3程度である。
【0066】
p型ベース延在部34aとn-型ドリフト領域32との間に、p+型延在部52aおよびn型電流拡散延在部33aがそれぞれ選択的に設けられていてもよい。p+型延在部52aおよびn型電流拡散延在部33aは、それぞれ第2p+型領域52およびn型電流拡散領域33の中間領域3に延在する部分である。p+型延在部52aは、ゲートトレンチ37と離れて配置され、活性領域1の周囲を囲む。p+型延在部52aは、段差14から外側へ半導体基板10のおもて面の第2面10bに露出する位置まで延在される。p+型延在部52aは、半導体基板10のおもて面の第3面10cに露出されてもよい。
【0067】
n型電流拡散延在部33aは、p+型延在部52aとゲートトレンチ37との間に配置され、活性領域1の周囲を囲み、中間領域3から内側にゲートトレンチ37まで延在する。n型電流拡散延在部33aは、第1方向Xに、互いに隣り合うゲートトレンチ37間まで延在してもよい。半導体基板10のおもて面の第3面10cと、p++型コンタクト延在部36a、p型ベース延在部34aおよびp+型延在部52aとの間に、これらの領域を連結するようにp+型領域24が設けられてもよい。p+型領域24は、段差14から外側へ半導体基板10のおもて面の第2面10bに露出する位置まで延在されてもよい。
【0068】
中間領域3およびエッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面の全面が、ゲート絶縁膜38、フィールド酸化膜61および層間絶縁膜40をこの順に積層した絶縁層で覆われている。中間領域3およびエッジ終端領域2における半導体基板10のおもて面の全面がゲート絶縁膜38に接する。中間領域3において半導体基板10のおもて面のゲート絶縁膜38上には、フィールド酸化膜61を介して、ゲートランナー67となるゲートポリシリコン配線層62およびゲート金属配線層63がこの順に積層されている。ゲートポリシリコン配線層62およびゲート金属配線層63は、活性領域1の周囲を囲む。
【0069】
フィールド酸化膜61およびゲートポリシリコン配線層62は、ゲート絶縁膜38と層間絶縁膜40との間に設けられている。フィールド酸化膜61の内側の端部61aは、活性領域1のコンタクトホール40a,40bの側壁(すなわち活性領域1と中間領域3との境界)から外側に離れて位置する。また、フィールド酸化膜61の内側の端部61aは、ゲートポリシリコン配線層62とゲート電極39との連結箇所62aよりも外側に位置する。ゲートトレンチ37の長手方向の端部において半導体基板10のおもて面上には、ゲート絶縁膜38のみを介してゲートポリシリコン配線層62が配置される。
【0070】
具体的には、フィールド酸化膜61の内側の端部61aは、活性領域1の外周のいずれの箇所においても、ゲートポリシリコン配線層62の直下に位置し、活性領域1のコンタクトホール40a,40bの側壁から外側に21μm以下程度の距離w1の範囲内で離れている。フィールド酸化膜61の内側の端部61aにおいて後述する絶縁層60の表面に形成される後述する段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1は、当該距離w1が最大となる活性領域1のコーナー部1aにおいても、最大で従来構造の同距離w201(図13~15)の半分程度の21μm程度である。
【0071】
絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1は、短いほど好ましく、例えば、プロセス限界である5μm以上程度で、かつ10μm以下程度であることがよい。当該距離w1を短くするほど、絶縁層60のうち相対的に厚さが薄い部分(絶縁層60のうちゲート絶縁膜38のみとなっている内側部分)の法線方向(チップ中央からチップ端部へ向かう方向)の長さを短くすることができ、MOSFETのオンからオフへのスイッチング過渡期に発生する変位電流によって絶縁層60にかかる電界の強度を低くすることができる。
【0072】
絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1とは、フィールド酸化膜61の内側の端部61aから第1方向Xに活性領域1のコンタクトホール40a,40bの長手方向の端部までの最短距離w11、フィールド酸化膜61の内側の端部61aから第2方向Yに活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bの外側の側壁までの最短距離w12、および、活性領域1のコーナー部1aにおいてフィールド酸化膜61の内側の端部61aから第1,2方向X,Yに対して斜めの方向に活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bの長手方向の端部までの最短距離w13である。
【0073】
半導体基板10のおもて面とゲートポリシリコン配線層62との間は、ゲート絶縁膜38およびフィールド酸化膜61をこの順に積層してなる絶縁層60である。絶縁層60は、中間領域3からチップ端部まで延在する。絶縁層60は、ゲート絶縁膜38およびフィールド酸化膜61をこの順に積層してなる相対的に厚さの厚い部分と、この部分よりも内側のゲート絶縁膜38のみからなる相対的に厚さの薄い部分と、を有する。この絶縁層60内での厚さ差により、絶縁層60の表面には、フィールド酸化膜61の内側の端部61aよりも内側でドレイン電極43側に凹んだ段差64が形成されている。段差64は、中間領域3の全周にわたって形成され、活性領域1の周囲を囲む。
【0074】
ゲートポリシリコン配線層62は、フィールド酸化膜61上に設けられ、かつフィールド酸化膜61上から当該フィールド酸化膜61の内側の端部61aの上記段差64を経て内側へ延在し、中間領域3における半導体基板10のおもて面のゲート絶縁膜38上で終端している。このため、中間領域3の全周にわたって、絶縁層60の、半導体基板10のおもて面とゲートポリシリコン配線層62との間の部分は、内側の部分で相対的に厚さが薄くなっている。ゲートポリシリコン配線層62は、深さ方向Zにゲートトレンチ37の長手方向の端部に対向し、ゲートトレンチ37の長手方向の端部においてゲート電極39に連結されている。
【0075】
ゲート金属配線層63は、層間絶縁膜40のコンタクトホール40cを介してゲートポリシリコン配線層62に接する。ゲートポリシリコン配線層62およびゲート金属配線層63で構成されるゲートランナー67とゲート抵抗66とを介して、ゲート電極39とゲートパッド65とが電気的に接続されている。ゲートパッド65は、例えば、ゲートランナー67と同様の積層構造を有し、絶縁層60上にゲートポリシリコン配線層68aおよびゲート金属配線層69をこの順に積層してなる。ゲートパッド65は、ゲートランナー67よりも外側に配置される(図2B参照)。
【0076】
ゲートパッド65は、半導体基板10のおもて面の段差14よりも内側に配置される。すなわち、図2Bの切断線D-D’における断面構造は、図3図2Aの切断線A-A’における断面構造)のうちの活性領域1からゲート金属配線層63までの断面構造と同じである。図2Bの切断線E-E’における断面構造は、図4図2Aの切断線B-B’における断面構造)のうちの活性領域1からゲート金属配線層63までの断面構造と同じである。図2Bの切断線F-F’における断面構造は、図5図2Aの切断線C-C’における断面構造)のうちの活性領域1からゲート金属配線層63までの断面構造と同じである。
【0077】
また、上述したようにゲートポリシリコン配線層62には、半導体基板10に平行な方向にゲートパッド65およびゲート抵抗測定用電極パッドにそれぞれ対向する部分には、活性領域1のコーナー部1aと同様に、内角が略直角になる箇所1b(図2B参照)が存在し、この箇所にも変位電流が集中しやすい。このため、このゲートポリシリコン配線層62の内角が略直角になる箇所1bにおいて絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1を21μm以下の範囲内に設定することで、変位電流の集中を抑制することがよい。
【0078】
ゲートポリシリコン配線層62が半導体基板10に平行な方向にゲートパッド65に対向する部分において、絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1とは、フィールド酸化膜61のゲートパッド65直下の部分の内側の端部61aから活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w21~w23(図2B参照)である。これらの距離w21~w23は、例えば、それぞれ上述したフィールド酸化膜61の他の部分の内側の端部61aから活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w11~w13と略同じ距離に設定される。略同じ距離とは、プロセスばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ長さであることを意味する。
【0079】
距離w21は、フィールド酸化膜61のゲートパッド65直下の部分の内側の端部61aから第1方向Xに活性領域1のコンタクトホール40a,40bの長手方向の最短端部までの距離である。距離w22は、フィールド酸化膜61のゲートパッド65直下の部分の内側の端部61aから第2方向Yに内側に隣り合うコンタクトホール40bの外側の側壁までの最短距離である。距離w23は、ゲートポリシリコン配線層62がゲートパッド65に沿って内側に湾曲することでその角度が内側で略直角になる箇所1bにおいて、フィールド酸化膜61の内側の端部61aから第1,2方向X,Yに対して斜めの方向に活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bの長手方向の端部までの最短距離である。
【0080】
ゲートポリシリコン配線層62が半導体基板10に平行な方向にゲート抵抗測定用電極パッドに対向する部分において、絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1とは、フィールド酸化膜61のゲート抵抗測定用電極パッド直下の部分の内側の端部61aから活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離(不図示)である。フィールド酸化膜61のゲート抵抗測定用電極パッド直下の部分の内側の端部61aから活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離とは、上記距離w21~w23の説明中のゲートパッド65をゲート抵抗測定用電極パッドと読み替えた距離である。
【0081】
エッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面の第2面10bを形成するn-型エピタキシャル層12の表面領域に、空間変調型のFLR構造20を構成する複数のp-型領域21および複数のp--型領域22がそれぞれ選択的に設けられ、その外側にFLR構造20と離れてn+型チャネルストッパ領域23が選択的に設けられている。フィールドプレート(FP)は設けられておらず、半導体基板10のおもて面の第2面10bの全面が絶縁層60で覆われている。空間変調型のFLR構造20とは、外側へ向かうほど単位体積当たりのp型不純物濃度を段階的に低くした耐圧構造である。
【0082】
具体的には、複数のp-型領域21は、互いに離れて配置され、活性領域1の周囲を同心状に囲む。外側に配置されたp-型領域21ほど、幅(法線方向の幅)が狭く、かつ内側に隣り合うp-型領域21との間隔が広い。最も内側のp--型領域22はすべてのp-型領域21の周囲を囲み、互いに隣り合うすべてのp-型領域21間に配置される。最も内側のp-型領域21および最も内側のp--型領域22は、法線方向にp+型延在部52aに隣接して、p+型領域24およびp+型延在部52aを介してp型ベース延在部34aに電気的に接続されるか、またはp型ベース延在部34aに直接接する。
【0083】
複数のp--型領域22は、互いに離れて配置され、活性領域1の周囲を同心状に囲む。外側に配置されたp--型領域22ほど、幅(法線方向の幅)が狭く、かつ内側に互いに隣り合うp--型領域22との間隔が広い。複数のp--型領域22は、最も内側のp--型領域22を除いて、p-型領域21よりも外側に配置される。n-型ドリフト領域32はすべてのp--型領域22の周囲を囲み、互いに隣り合うすべてのp--型領域22間に配置される。最も外側のp--型領域22は、法線方向にn-型ドリフト領域32を介してn+型チャネルストッパ領域23に対向する。
【0084】
複数のp-型領域21および複数のp--型領域22により電界集中点が複数個所に分散されることで、MOSFETのオフ時にエッジ終端領域2にかかる高電圧が負担され、エッジ終端領域2の所定耐圧が確保される。n+型チャネルストッパ領域23は、FLR構造20の外側に、FLR構造20と離れて設けられている。n+型チャネルストッパ領域23は、半導体基板10の端部に露出されている。n+型チャネルストッパ領域23は、MOSFETのオフ時にn-型ドリフト領域32内を活性領域1から外側へ広がる空乏層を抑制する機能を有する。チャネルストッパ電極(不図示)が設けられていない。チャネルストッパ領域23の導電型はp+型としてもよい。
【0085】
ソース電極41は、コンタクトホール40a,40bの内部において半導体基板10のおもて面にオーミック接触し、p型ベース領域34、n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36、p型ベース延在部34aおよびp++型コンタクト延在部36aに電気的に接続される。ソース電極41は、層間絶縁膜40上を外側へ延在して、深さ方向Zにゲートポリシリコン配線層62に対向する位置で終端してもよい。活性領域1においてソース電極41と層間絶縁膜40との間に、ソース電極41と層間絶縁膜40およびその下層との間の相互反応を防止するバリアメタル(不図示)を設けてもよい。
【0086】
パッシベーション膜42は、半導体基板10のおもて面の全面を覆う。パッシベーション膜42の異なる開口部に、それぞれソース電極41およびゲートパッド65が露出される。パッシベーション膜42は、例えばポリイミド(polyimide)膜である。エッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面にn-型エピタキシャル層が露出していればよく、半導体基板10のおもて面は段差14を設けずに活性領域1からチップ端部まで連続する平坦面としてもよい。ドレイン電極(第2電極)43は、半導体基板10の裏面(n+型出発基板11の裏面)全面にオーミック接触している。
【0087】
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置30(SiC-MOSFET)の動作について説明する。ソース電極41に対して正の電圧(順方向電圧)がドレイン電極43に印加された状態で、ゲート電極39にゲート閾値電圧以上の電圧が印加されると、p型ベース領域34のゲートトレンチ37に沿った部分にチャネル(n型の反転層)が形成される。それによって、n+型ドレイン領域31からチャネルを通ってn+型ソース領域35へ向かって電流(ドリフト電流)が流れ、MOSFETがオンする。
【0088】
一方、ソース-ドレイン間に順方向電圧が印加された状態で、ゲート電極39にゲート閾値電圧未満の電圧が印加されたときに、活性領域1において、第1,2p+型領域51,52およびp型ベース領域34と、n型電流拡散領域33およびn-型ドリフト領域32と、のpn接合(主接合)が逆バイアスされることで、電流が流れなくなるため、MOSFETはオフ状態を維持する。このとき、当該pn接合が逆バイアスされることで、当該pn接合から空乏層が広がり、活性領域1の所定耐圧が確保される。
【0089】
さらに、MOSFETのオフ時、活性領域1の上記pn接合から広がった空乏層は、エッジ終端領域2のp--型領域22とn-型ドリフト領域32とのpn接合によって、エッジ終端領域2を法線方向に外側(チップ端部側)へ向かって延びる。エッジ終端領域2を外側へ向かって空乏層が延びた分だけ、炭化珪素の絶縁破壊電界強度および空乏層幅に基づく所定耐圧を確保することができる。また、FLR構造20によってエッジ終端領域2の電界が分散されることで、エッジ終端領域2の耐圧を向上させることができる。
【0090】
また、MOSFETのオンからオフへのスイッチング過渡期に生じる急峻なdV/dt(単位時間あたりのドレイン・ソース間の電圧変化)により、エッジ終端領域2のn-型ドリフト領域32で変位電流(正孔電流)が発生し活性領域1へ向かって流れる。この変位電流は、エッジ終端領域2のn-型ドリフト領域32からp+型延在部52aおよびp型ベース延在部34aを経てp++型コンタクト延在部36aへ流れ込み、活性領域1のコンタクトホール40a,40bからソース電極41へ引き抜かれる。
【0091】
このとき、半導体基板10の温度が低いほど半導体基板10内のキャリアが減少し、キャリアの減少分だけ、p++型コンタクト延在部36aが高抵抗となって(図12参照)、変位電流をソース電極41に引き抜く時間が長くなり、中間領域3における半導体基板10のおもて面側の電位が高くなる。また、dV/dtが大きくなるほど、変位電流が大きくなるため、変位電流の経路長に占める比率の大きいp++型コンタクト延在部36aの電位が高くなる。本実施の形態においては、これらの電位上昇による絶縁層60の絶縁破壊を抑制することができる。
【0092】
その理由は、絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1を活性領域1の外周の全周にわたって21μm以下程度の範囲内にすることで、中間領域3のp型領域(p++型コンタクト延在部36a、p型ベース延在部34aおよびp+型延在部52a)での電圧降下が小さくなり、絶縁層60にかかる電界の強度が低くなるからである。これによって、活性領域1の外周のうち特に変位電流が集中しやすい活性領域1のコーナー部1a(図1参照)でのゲートリーク電流の発生を抑制して、絶縁層60(ゲート絶縁膜38)の絶縁破壊を防止することができる。
【0093】
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置30の製造方法について、図1,2A,2B,3~9を参照して説明する。図6~9は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図6~9には、(a)に活性領域1を示し、(b)に中間領域3およびエッジ終端領域2を示す。図10は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態の一部を半導体基板のおもて面側から見た平面図である。図10には、活性領域1と中間領域3との境界付近を拡大して示す。図10には、活性領域1のコンタクトホール40aの位置を破線で示し、ゲートトレンチ37の内部のゲート絶縁膜38を図示省略する。
【0094】
まず、炭化珪素からなるn+型出発基板(出発ウエハ)11を用意する。次に、n+型出発基板11のおもて面に、n-型ドリフト領域32となるn-型エピタキシャル層12をエピタキシャル成長させる。次に、フォトリソグラフィおよびアルミニウム(Al)等のp型不純物のイオン注入により、活性領域1においてn-型エピタキシャル層12の表面領域に、第1p+型領域51と、第2p+型領域52の下部(n+型ドレイン領域31側の部分)と、をそれぞれ選択的に形成する。このとき、第2p+型領域52の下部と同時に、中間領域3にp+型延在部52aの下部を形成する。
【0095】
また、フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、活性領域1においてn-型エピタキシャル層12の表面領域に、n型電流拡散領域33の下部を形成する。このとき、n型電流拡散領域33の下部と同時に、中間領域3にn型電流拡散延在部33aの下部を形成する。活性領域1および中間領域3におけるn-型エピタキシャル層12の、第1,2p+型領域51,52、p+型延在部52a、n型電流拡散領域33およびn型電流拡散延在部33aよりもn+型出発基板11側のイオン注入されずにそのままの不純物濃度で残る部分がn-型ドリフト領域32となる。
【0096】
次に、さらにエピタキシャル成長させてn-型エピタキシャル層12を所定厚さまで厚くする。次に、フォトリソグラフィおよびアルミニウム等のp型不純物のイオン注入により、n-型エピタキシャル層12の厚さを増した部分に、深さ方向Zに第2p+型領域52の下部に隣接するように、第2p+型領域52の上部(n+型ソース領域35側の部分)を選択的に形成する。また、フォトリソグラフィおよびn型不純物のイオン注入により、n-型エピタキシャル層12の厚さを増した部分に、深さ方向Zにn型電流拡散領域33の下部に隣接するように、n型電流拡散領域33の上部を形成する。
【0097】
このとき、第2p+型領域52の上部と同時に、深さ方向Zにp+型延在部52aの下部に隣接するように、p+型延在部52aの上部を形成する。n型電流拡散領域33の上部と同時に、深さ方向Zにn型電流拡散延在部33aの下部に隣接するように、n型電流拡散延在部33aの上部を形成する。n-型エピタキシャル層12の、最初にエピタキシャル成長させた部分と、厚さを増した部分と、にそれぞれ深さ方向Zに隣接するように形成された上部と下部とが連結されて、第2p+型領域52、n型電流拡散領域33、p+型延在部52aおよびn型電流拡散延在部33aがそれぞれ形成される。
【0098】
次に、n-型エピタキシャル層12上に、p型エピタキシャル層13をエピタキシャル成長させる。ここまでの工程で、n+型出発基板11上にエピタキシャル層12,13をこの順に積層した半導体基板(半導体ウエハ)10が完成する。次に、p型エピタキシャル層13のエッジ終端領域2側の部分をエッチングにより除去して、半導体基板10のおもて面に、活性領域1および中間領域3の部分(第1面10a)よりもエッジ終端領域2の部分(第2面10b)を低くした段差14を形成する。新たに半導体基板10のおもて面となった第2面10bに、n-型エピタキシャル層12が露出される。
【0099】
半導体基板10のおもて面の第1面10aと第2面10bとをつなぐ第3面10cは、例えば第1,2面10a,10bに対して鈍角(傾斜面)をなしていてもよいし、略直角(垂直面)をなしていてもよい。半導体基板10のおもて面の第3面10cには、p型エピタキシャル層13の側面が露出される。このp型エピタキシャル層13のエッジ終端領域2側の部分を除去して、新たに半導体基板10のおもて面となった第2面10bにn-型エピタキシャル層12を露出させるエッチングにより、p型エピタキシャル層13とともにn-型エピタキシャル層12の表面領域が若干除去されてもよい。
【0100】
次に、フォトリソグラフィおよび所定条件のイオン注入を繰り返し行って、p型エピタキシャル層13の表面領域に、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36をそれぞれ選択的に形成する。p++型コンタクト領域36を形成するためにイオン注入するp型不純物は例えばアルミニウム(Al)である。このとき、p++型コンタクト領域36と同時にp++型コンタクト延在部36aを形成する。p型エピタキシャル層13の、n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36およびp++型コンタクト延在部36aよりもn+型出発基板11側のイオン注入されずにそのままの不純物濃度で残る部分がp型ベース領域34およびp型ベース延在部34aとなる。
【0101】
また、フォトリソグラフィおよび所定条件のイオン注入を繰り返し行って、エッジ終端領域2において半導体基板10のおもて面の第2面10bに露出するn-型エピタキシャル層12の表面領域に、空間変調型のFLR構造20を構成するp-型領域21およびp--型領域22と、n+型チャネルストッパ領域23と、をそれぞれ選択的に形成する。中間領域3において半導体基板10のおもて面の第3面10cの表面領域にp+型領域24を形成してもよい。エッジ終端領域2におけるn-型エピタキシャル層12の、p-型領域21、p--型領域22およびn+型チャネルストッパ領域23よりもn+型出発基板11側のイオン注入されずにそのままの不純物濃度で残る部分がn-型ドリフト領域32となる。
【0102】
次に、エピタキシャル層12,13にイオン注入した不純物を活性化させるための熱処理(活性化アニール)を行う。この活性化アニールは、イオン注入によりすべての拡散領域(n型電流拡散領域33、n型電流拡散延在部33a、第1,2p+型領域51,52、p+型延在部52a、n+型ソース領域35、p++型コンタクト領域36、p++型コンタクト延在部36a、p-型領域21、p--型領域22、n+型チャネルストッパ領域23およびp+型領域24)を形成した後にまとめて1回行ってもよいし、イオン注入により拡散領域を形成するごとに行ってもよい。
【0103】
次に、図6に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、半導体基板10のおもて面からn+型ソース領域35およびp型ベース領域34を貫通して、n型電流拡散領域33の内部で終端し、深さ方向Zに第1p+型領域51に対向するゲートトレンチ37を形成する。ゲートトレンチ37は、第1方向Xに延在するストライプ状に複数形成する。ゲートトレンチ37の長手方向の端部は、中間領域3の内部で終端させる(図10参照)。次に、半導体基板10のおもて面の全面およびゲートトレンチ37の内壁(側壁および底面)に沿ってゲート絶縁膜38を形成する。
【0104】
次に、図7に示すように、半導体基板10のおもて面のゲート絶縁膜38上にフィールド酸化膜61を堆積して、ゲート絶縁膜38およびフィールド酸化膜61をこの順に積層してなる絶縁層60を形成する。次に、フォトリソグラフィおよび例えばウェットエッチングによりフィールド酸化膜61の活性領域1の部分を除去して、中間領域3およびエッジ終端領域2にのみ残す。これにより、絶縁層60の表面に、ゲート絶縁膜38およびフィールド酸化膜61が積層されて相対的に厚さの厚い部分と、ゲート絶縁膜38のみからなる相対的に厚さの薄い部分と、の厚さ差による段差64(図3~5参照)が生じる。
【0105】
また、フィールド酸化膜61は、ゲートトレンチ37の端部の少なくとも一部を覆わないように配置する。例えば、ゲートトレンチ37の端部全体をフィールド酸化膜61で覆わない状態としてもよいし(図10参照)、ゲートトレンチ37の端部のうち、互いに隣り合うゲートトレンチ37の端部同士を連結する連結部37aだけフィールド酸化膜61で覆ってもよい。また、上述したように、フィールド酸化膜61の内側の端部61aから後の工程で形成されるコンタクトホール40a,40bまでの距離w1は、21μm以下程度の範囲内にする。
【0106】
次に、図8に示すように、ゲートトレンチ37を埋め込むように、半導体基板10のおもて面の全面にポリシリコン層70を堆積する。次に、図9に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングによりポリシリコン層70を選択的に除去して、ポリシリコン層70のうち、ゲート電極39となる部分をゲートトレンチ37の内部に残すとともに、ゲートランナー67のゲートポリシリコン配線層62となる部分と、ゲートパッド65を構成するゲートポリシリコン配線層68aとなる部分と、ゲート抵抗66を構成するゲートポリシリコン配線層68bとなる部分と、を半導体基板10のおもて面の最表面に残す。このとき、ゲートポリシリコン配線層62は、ゲートトレンチ37の長手方向の端部を覆うように残す。
【0107】
ポリシリコン層70を堆積時、各ゲートトレンチ37の長手方向の端部の少なくとも一部がフィールド酸化膜61に覆われていない。例えば、ゲートトレンチ37の端部全体(図10の長さd1の部分)をフィールド酸化膜61で覆わない状態としてもよい。また、フィールド酸化膜61の内側の端部61aを長さd2だけ内側に延在させて、互いに隣り合うゲートトレンチ37の端部同士を連結する略円弧状の平面形状の連結部37aをフィールド酸化膜61で覆い、ゲートトレンチ37の端部の連結部37aよりも内側の部分(図10の長さd3の部分)だけフィールド酸化膜61で覆わない状態としてもよい。
【0108】
このように各ゲートトレンチ37の長手方向の端部の少なくとも一部をフィールド酸化膜61に覆われていない状態とすることで、ゲートトレンチ37の内部に埋め込むように半導体基板10のおもて面の全面に堆積したポリシリコン層70を選択的に除去するだけで、ゲートランナー67を構成するゲートポリシリコン配線層62と、ゲート電極39と、をゲートトレンチ37の長手方向の端部で互いに連結された状態にすることができる。これに加えて、ゲートランナー67を構成するゲートポリシリコン配線層62と、ゲートパッド65を構成するゲートポリシリコン配線層68aと、をゲート抵抗66を構成するゲートポリシリコン配線層68bで連結された状態にすることができる(図2B参照)。
【0109】
すなわち、フィールド酸化膜61の内側の端部61aは、ゲートポリシリコン配線層62とゲート電極39との連結箇所62aよりも外側に位置する。ゲートポリシリコン配線層62は、ゲート電極39との連結箇所62aにおいて、深さ方向Zにゲート絶縁膜38のみを介してp++型コンタクト延在部36aに対向する。例えば、仮に、ゲートポリシリコン配線層62とゲート電極39との連結箇所62aと、ゲートポリシリコン配線層62と、の間の全体にフィールド酸化膜61が存在している場合(図10においてフィールド酸化膜61が内側の端部61aを長さd1だけ内側に延在させた状態)を考える。
【0110】
この場合、ゲートポリシリコン配線層62とゲート電極39とを連結させるために、フィールド酸化膜61を深さ方向Zに貫通するコンタクトホールを形成することとなる。しかしながら、上述したようにフィールド酸化膜61の活性領域1の部分はウェットエッチングにより除去されるため、フィールド酸化膜61の活性領域1の部分の除去と同時に、ウェットエッチングによりフィールド酸化膜61に幅の狭いコンタクトホールを形成することはプロセス的に困難である。また、ドライエッチングによりフィールド酸化膜61にコンタクトホールを形成する場合にも別の問題が生じる。
【0111】
したがって、フィールド酸化膜61にコンタクトホールを形成する必要がないように、上述したようにフィールド酸化膜61の内側の端部61aの位置を調整し、各ゲートトレンチ37の長手方向の端部の少なくとも一部をフィールド酸化膜61に覆われていない状態とすることがよい。ゲートポリシリコン配線層62は、絶縁層60のフィールド酸化膜61上から、絶縁層60の表面の段差64(図3~5参照)を経て内側へ延在し、絶縁層60のゲート絶縁膜38のみを介してゲートトレンチ37の長手方向の端部の少なくとも一部に対向するように配置される。
【0112】
次に、半導体基板10のおもて面の全面に、ゲート電極39およびゲートポリシリコン配線層62,68a,68bを覆う層間絶縁膜40を形成する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、活性領域1に、深さ方向Zに層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜38を貫通して半導体基板10のおもて面に達するコンタクトホール40a,40bを形成する。活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bを除く他のコンタクトホール40aには、n+型ソース領域35およびp++型コンタクト領域36が露出される。活性領域1の最も外側のコンタクトホール40bには、p++型コンタクト延在部36aが露出される。
【0113】
また、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、中間領域3に、深さ方向Zに層間絶縁膜40を貫通して、ゲートポリシリコン配線層62に達するコンタクトホール40cと、ポリシリコン配線層68aに達するコンタクトホールと、を形成する。次に、熱処理により層間絶縁膜40を平坦化(リフロー)する。次に、コンタクトホールを埋め込むように半導体基板10のおもて面の全面に金属層を形成する。次に、当該金属層をパターニングして、ソース電極41、ゲートランナー67を構成するゲート金属配線層63、およびゲートパッド65を構成するゲート金属配線層69となる部分をそれぞれ残す。
【0114】
ソース電極41は、コンタクトホール40a,40bの内部において半導体基板10のおもて面にオーミック接触する。ソース電極41は、ゲート金属配線層63およびゲートパッド65を構成するゲート金属配線層と離して配置される。ゲートランナー67を構成するゲート金属配線層63は、コンタクトホール40cにおいてゲートポリシリコン配線層62に接する。ゲートパッド65を構成するゲート金属配線層69は、図示省略するコンタクトホールにおいてゲートポリシリコン配線層68aに接する。ゲート金属配線層63,69同士がゲート抵抗66を構成するポリシリコン配線層68b上で互いに連結されてもよい。
【0115】
また、半導体基板10の裏面にドレイン電極43を形成する。次に、半導体基板10のおもて面の全面にパッシベーション膜42を形成し、パッシベーション膜42によってソース電極41、ゲート金属配線層63およびゲートパッド65を構成するゲート金属配線層を覆う。次に、パッシベーション膜42を選択的に除去して形成した異なる開口部にそれぞれソース電極41(ソースパッド)およびゲートパッド65を露出させる。その後、半導体基板10(半導体ウエハ)をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、図1,2A,2B,3~5に示すMOSFET(炭化珪素半導体装置30)が完成する。
【0116】
以上、説明したように、実施の形態によれば、活性領域とエッジ終端領域との間の中間領域において半導体基板のおもて面上に、絶縁層を介して、ゲートランナーを構成するゲートポリシリコン配線層が配置される。当該絶縁層は、ゲート絶縁膜およびフィールド酸化膜をこの順に積層してなる。ゲートポリシリコン配線層の直下において半導体基板のおもて面の表面領域に、深さ方向に当該絶縁層に隣接してp++型コンタクト延在部が配置される。この絶縁層は、ゲートポリシリコン配線層とp++型コンタクト延在部との間において、ゲート絶縁膜およびフィールド酸化膜を積層してなる相対的に厚さの厚い部分と、この部分よりも内側のゲート絶縁膜のみからなる相対的に厚さの薄い部分と、を有し、これらの厚さ差による段差を表面に有する。
【0117】
この絶縁層の表面の段差から活性領域のコンタクトホールまでの距離は21μm以下程度の範囲内に設定される。これによって、MOSFETのオンからオフへのスイッチング過渡期にエッジ終端領域に生じる変位電流が中間領域のp型領域(p+型延在部、p型ベース延在部およびp++型コンタクト延在部)を通って活性領域のコンタクトホールからソース電極へ引き抜かれるときに、中間領域の当該p型領域での電圧降下を小さくすることができる。これにより、中間領域の当該p型領域とゲートポリシリコン配線層との間の絶縁層にかかる電界強度を低くすることができるため、当該絶縁層にゲート絶縁膜のみからなる相対的に厚さの薄い部分が存在しても、当該厚さの薄い部分での変位電流によるゲート絶縁膜の劣化を抑制することができ、絶縁層の絶縁破壊を抑制することができる。
【0118】
また、半導体基板の温度が低いほど半導体基板内のキャリアが減少し、キャリアの減少分だけp++型コンタクト延在部が高抵抗となって、変位電流による中間領域における半導体基板のおもて面側の電位が高くなる。従来構造(図13~15参照)では、マイナスの温度環境下でMOSFETを動作させると、中間領域における半導体基板のおもて面側での電位上昇により絶縁層が絶縁破壊してしまうが、実施の形態によれば、上述したように中間領域のp型領域での電圧降下が小さくなるため、マイナスの温度環境下でMOSFETを動作させても、中間領域における半導体基板のおもて面側での電位上昇を抑制することができ、絶縁層の絶縁破壊が生じない。このため、従来構造と比べて、MOSFETの動作環境の温度適用範囲が広く、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0119】
(実験例1)
絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1について検証した。図11は、実験例1の絶縁層の表面の段差からコンタクトまでの距離の動作環境温度依存性を示す特性図である。図11の横軸は、絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1である(図11には絶縁層の表面の段差からコンタクトまでの距離と記載)。図11の縦軸は、実験例1の動作時の半導体基板10の温度である。実験例1の動作初期の半導体基板10の温度は、実験例1の実験環境の温度と熱平衡状態にある。
【0120】
実験例1として、中間領域の半導体基板のおもて面とゲートポリシリコン配線層との間の絶縁層の表面の段差から活性領域のコンタクトホールまでの距離の異なる(具体的には21μm、27.5μm、33μm、35μmおよび54μm)複数の試料を用意した。これら実験例1の複数の試料のうち、絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1を21μmとした試料が実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置30(図1,2A,2B,3~5参照)に相当し、それ以外の試料が比較例の炭化珪素半導体装置230(図13~15参照)に相当する。
【0121】
これら実験例1の各試料に、複数の温度環境(評価温度)で、オンからオフへのスイッチング過渡期に、MOSFETの通常動作で想定される最大負荷となる20kV/μsでdV/dt(単位時間あたりのドレイン・ソース間の電圧変化)を生じさせて絶縁破壊が起きたか否かを確認した結果を図11に示す。実験例1の評価温度(=半導体基板10,210の温度)を-55℃、-40℃、-25℃、0℃および25℃(室温)とした。図11では、1回のdV/dtで絶縁破壊した試料を「絶縁破壊が起きた(×印)」とし、1回のdV/dtで絶縁破壊しなかった試料を「絶縁破壊が起きない(○印)」とした。
【0122】
図11に示す結果から、実験例1において、絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1を21μmとした試料は、いずれの評価温度(半導体基板10の初期の温度)においても絶縁層60の絶縁破壊が起きないことが確認された。一方、絶縁層260の表面の段差264から活性領域201のコンタクトホール240a,240bまでの距離w201を21μmよりも長くした他のすべての試料で、評価温度(半導体基板210の初期の温度)が低くなると、デバイス動作による半導体基板210の温度上昇前に、絶縁層260が絶縁破壊することが確認された。
【0123】
その理由は、評価温度が低くなるほど半導体基板10,210内のキャリアが減少して、キャリアの減少分だけp++型コンタクト延在部36a,236aが高抵抗となるが、絶縁層60の表面の段差64から活性領域1のコンタクトホール40a,40bまでの距離w1を21μm以下とすることで、他の試料と比べて、MOSFETのオンからオフへのスイッチング過渡期にdV/dtによりエッジ終端領域2に発生する変位電流を活性領域1のコンタクトホール40a,40bからソース電極41に引き抜く時間が短くなり、絶縁層60にかかる電界の強度が低くなるからである。
【0124】
(実験例2)
++型コンタクト延在部36aの抵抗値の温度依存性について検証した。図12は、実施例2のp型領域の抵抗値の温度依存性を示す特性図である。上述した実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置30(図1,2A,2B,3~5参照)(以下、実験例2とする)について、-50℃以下の温度環境(=半導体基板10の初期の温度)でデバイス動作を開始し、デバイス動作により半導体基板10の温度が上昇して所定温度となるごとに、p++型コンタクト延在部36aの抵抗値Rcntを測定した結果を図12に示す。実験例2の試料は、p++型コンタクト延在部36aを形成するためにp型エピタキシャル層13にイオン注入するアルミニウム(Al)のドーズ量の異なる2つを用意した。
【0125】
図12に示す結果から、アルミニウムのドーズ量に依らず、半導体基板10の温度が低くなるほど、p++型コンタクト延在部36aの抵抗値が高くなることが確認された。
【0126】
以上において本発明は、上述した各実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、ゲートランナーと同じ構造を有するゲートフィンガーを活性領域に配置して、ゲートフィンガーを介してゲートパッドとゲート電極とを電気的に接続する場合においても、ゲートランナーと同様に、ゲートフィンガーを構成するゲートポリシリコン配線層がゲート絶縁膜のみを介して半導体基板のおもて面上に配置される部分が生じるため、ゲートフィンガーと活性領域のコンタクトホール(ソース電極と半導体基板とのオーミック接触部(コンタクト)となるコンタクトホール)との間に本発明を適用可能である。
【0127】
また、メイン半導体素子となるMOSFETと同一の半導体基板に電流センスを配置する場合、メイン半導体素子のゲート電極と同様の構造で、ゲートランナーを構成するゲートポリシリコン配線層に電流センスのゲート電極が連結される。ゲートランナーを構成するゲートポリシリコン配線層は、電流センスと対向する部分で、電流センスのゲート絶縁膜のみを介して半導体基板のおもて面上に設けられる。このため、ゲートランナーを構成するゲートポリシリコン配線層と、電流センスのソースコンタクト(ソース電極と半導体基板との電気的接触部)が形成されるコンタクトホール(第2コンタクトホール)と、の間に本発明を適用可能である。
【0128】
ゲートランナーを構成するゲートポリシリコン配線層と、電流センスのソースコンタクトと、の間に本発明を適用することで、ゲートランナーと電流センスとの間での絶縁層の絶縁破壊を抑制することができる。電流センスは、メイン半導体素子と同一構造のMOSFETであり、メイン半導体素子に並列接続されてメイン半導体素子に流れる過電流(OC:Over Current)を検出する機能を有する。電流センスは、ゲートランナーの内側または外側のいずれに配置されてもよい。また、トレンチゲート構造に代えて、プレーナゲート構造とした場合においても本発明を適用可能である。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0130】
1 活性領域
2 エッジ終端領域
3 中間領域
10 半導体基板
10a~10c 半導体基板のおもて面の第1~3面
11 n+型出発基板
12 n-型エピタキシャル層
13 p型エピタキシャル層
14 半導体基板のおもて面の段差
20 空間変調型のFLR構造
21 空間変調型のFLR構造を構成するp-型領域
22 空間変調型のFLR構造を構成するp--型領域
23 n+型チャネルストッパ領域
24 半導体基板のおもて面の第3面のp+型領域
30 炭化珪素半導体装置
31 n+型ドレイン領域
32 n-型ドリフト領域
33 n型電流拡散領域
34 p型ベース領域
34a p型ベース延在部
35 n+型ソース領域
36 p++型コンタクト領域
36a p++型コンタクト延在部
37 ゲートトレンチ
37a 互いに隣り合うゲートトレンチの端部同士の連結部
38 ゲート絶縁膜
39 ゲート電極
40 層間絶縁膜
40a,40b,40c 層間絶縁膜のコンタクトホール
41 ソース電極
42 パッシベーション膜
43 ドレイン電極
51,52 ゲートトレンチ底面のゲート絶縁膜の電界緩和のためのp+型領域
52a p+型延在部
60 絶縁層
61 フィールド酸化膜
62,68a,68b ゲートポリシリコン配線層
63,69 ゲート金属配線層
64 中間領域のゲートポリシリコン配線層の下層の絶縁層の表面の段差
65 ゲートパッド
66 ゲート抵抗
67 ゲートランナー
w1 中間領域のゲートポリシリコン配線層の下層の絶縁層の表面の段差から活性領域のコンタクトホールまでの距離
X 半導体基板のおもて面に平行な第1方向
Y 半導体基板のおもて面に平行でかつ第1方向と直交する第2方向
Z 深さ方向
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15