(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】誘電体組成物及びこれを含む積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20250107BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20250107BHJP
C04B 35/468 20060101ALI20250107BHJP
C04B 35/49 20060101ALI20250107BHJP
C04B 35/465 20060101ALI20250107BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/12 090
H01G4/12 180
H01G4/30 201L
C04B35/468 200
C04B35/49
C04B35/465
H01B3/12 303
(21)【出願番号】P 2020107353
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0077574
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハム、テ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ベイク、スン イン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ヒュン スーン
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-210685(JP,A)
【文献】特開2009-203089(JP,A)
【文献】特開2011-162397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0162858(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0287535(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0086407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/12
C04B 35/468
C04B 35/49
C04B 35/465
H01B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABO
3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分と、第1副成分と、を含み、
前記第1副成分は、前記主成分100モルに対して、希土類元素:
0.9モル以上、Nb:
0.05モル以上、及びMg:
0.467モル以上
0.7モル以下を含み、前記希土類元素とNbの含量の和が1.5モル以下である、誘電体組成物。
【請求項2】
前記希土類元素は、DyまたはDyよりもイオン半径が小さい希土類元素である、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記誘電体組成物は、前記主成分100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つを含む酸化物または炭酸塩である0.1~2.0モルの第2副成分を含む、請求項1
または2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.001~0.5モルの第3副成分を含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
前記主成分はBaTiO
3であり、前記希土類元素はDyである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は誘電体組成物を含み、
前記誘電体組成物は、ABO
3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分と、第1副成分と、を含み、
前記第1副成分は、前記主成分100モルに対して、希土類元素:
0.9モル以上、Nb:
0.05モル以上、及びMg:
0.467モル以上
0.7モル以下を含み、前記希土類元素とNbの含量の和が1.5モル以下である、積層型電子部品。
【請求項7】
前記希土類元素は、DyまたはDyよりもイオン半径が小さい希土類元素である、請求項
6に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体組成物は、前記主成分100モルに対して、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つを含む酸化物または炭酸塩である0.1~2.0モルの第2副成分を含む、請求項
6または7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体組成物は、前記主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.001~0.5モルの第3副成分を含む、請求項
6から
8のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層の平均厚さは0.41μm以下である、請求項
6から
9のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記内部電極の平均厚さは0.41μm以下である、請求項
6から
10のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記積層型電子部品のサイズは1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下である、請求項
6から
11のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記誘電体層は、複数の結晶粒と、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界と、を含み、前記Nbは前記複数の結晶粒及び結晶粒界に含まれる、請求項
6から
12のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層は、複数の結晶粒と、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界と、を含み、前記結晶粒の平均粒径は200nm以下である、請求項
6から
13のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物及びこれを含む積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品のうちの1つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマディスプレイパネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの種々の電子製品のプリント回路基板に取り付けられ、電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサーである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、且つ実装が容易であるという利点を有するため、種々の電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器の小型化、高出力化に伴い、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させる必要がある。現在、誘電体層の厚さは、約0.6μmのレベルにまで達している状態であり、薄層化が進みつつある。
【0005】
しかし、誘電体層の厚さが薄くなるほど、信頼性が低下し、絶縁抵抗、破壊電圧などの特性が低下するという問題がある。
【0006】
このような問題を解決するためには、積層セラミックキャパシタの構造的な側面だけではなく、特に、誘電体組成の側面においても、高い信頼性を確保することができる新しい方法が必要な状況である。
【0007】
現在のレベルで、信頼性レベルを一層高めることができる誘電体組成が確保されれば、さらに薄層化された積層セラミックキャパシタを製作することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一目的は、信頼性に優れた誘電体組成物及びこれを含む積層型電子部品を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、絶縁抵抗に優れた誘電体組成物及びこれを含む積層型電子部品を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、破壊電圧が高い誘電体組成物及びこれを含む積層型電子部品を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面は、ABO3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分と、第1副成分と、を含み、上記第1副成分は、上記主成分100モルに対して、希土類元素:0.1モル以上、Nb: 0.02モル以上、及びMg:0.25モル以上0.9モル以下を含み、上記希土類元素とNbの含量の和が1.5モル以下である誘電体組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の側面は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は誘電体組成物を含み、上記誘電体組成物は、ABO3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分と、第1副成分と、を含み、上記第1副成分は、上記主成分100モルに対して、希土類元素:0.1モル以上、Nb:0.02モル以上、及びMg:0.25モル以上0.9モル以下を含み、上記希土類元素とNbの含量の和が1.5モル以下である積層型電子部品を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の様々な効果の一効果として、誘電体組成物及びこれを含む積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0015】
但し、本発明の多様で且つ有益な利点と効果は、上述の内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'の断面を概略的に示した断面図である。
【
図3】
図1のII-II'の断面を概略的に示した断面図である。
【
図4】試験番号1~3に対する苛酷信頼性評価(Halt)の結果グラフである。
【
図5】試験番号4~6に対するI-V curveである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがある。
【0018】
なお、本発明を明確に説明すべく、図面において説明と関係ない部分は省略し、様々な層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内において機能が同一である構成要素に対しては同一の参照符号を用いて説明する。
【0019】
さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0020】
図面において、X方向は、第2方向、L方向、または長さ方向、Y方向は、第3方向、W方向、または幅方向、Z方向は、第1方向、積層方向、T方向、または厚さ方向と定義されることができる。
【0021】
誘電体組成物
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、ABO3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分と、第1副成分と、を含み、上記第1副成分は、上記主成分100モルに対して、希土類元素:0.1モル以上、Nb:0.02モル以上、及びMg:0.25モル以上0.9モル以下を含み、上記希土類元素とNbの含量の和が1.5モル以下である。
【0022】
ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する主成分は、酸素があるべきサイトが欠損する酸素空孔(oxygen vacancy)が発生する可能性がある。例えば、還元雰囲気で焼成を行う場合、酸素空孔(oxygen vacancy)が発生することがあり、脱バインダーなどによりカーボンがABO3の酸素と結合してCO2の形で蒸発する場合に、酸素空孔(oxygen vacancy)が発生する可能性がある。
【0023】
すなわち、Oは-2価の電荷(charge)を表すが、酸素があるべきサイトが欠損していると、+2価の電荷を有する酸素空孔が発生し、印加された電界により酸素空孔が移動すると、信頼性が低下する。また、酸素空孔が多いほど、そして温度と電圧が高くかかるほど、移動速度と移動量が増加し、信頼性がさらに悪化するようになる。
【0024】
かかる酸素空孔の問題を解決するために、一般に、希土類元素を添加することで酸素空孔の濃度を減らし、信頼性を向上させる方法が知られている。
【0025】
しかし、ABO3構造において、A-サイト(A-site)に固溶可能な添加剤の含量は制限的であり、希土類元素を添加するだけでは、酸素空孔の濃度を効果的に減らしにくいか、過度な半導体化により絶縁抵抗が低下する恐れがある。
【0026】
そこで、本発明は、ABO3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分を含む誘電体組成物に、第1副成分として、希土類元素、Nb、及びMgを適正量添加することで、信頼性を向上させる。
【0027】
以下では、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分について詳細に説明する。
【0028】
a)主成分
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、ABO3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分を含む。
【0029】
ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する主成分のより具体的な例としては、BaTiO3、SrTiO3、(Ba1-xCax)(Ti1-yCay)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5)、及びBa(Ti1-yZry)O3(ここで、0<y≦0.5)からなる群から選択される1つ以上であることができる。
【0030】
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、常温誘電率が2000以上であることができる。
【0031】
上記主成分は、特に制限されるものではないが、主成分粉末の平均粒径は40nm以上200nm以下であることができる。
【0032】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、上記主成分100モルに対して、希土類元素:0.1モル以上、Nb:0.02モル以上、及びMg:0.25モル以上0.9モル以下を含み、上記希土類元素とNbの含量の和が1.5モル以下である第1副成分を含む。
【0033】
希土類元素は、ABO3構造のA-サイト(A-site)を置換してドナー(donor)の役割を果たすことで、酸素空孔の濃度を減らし、信頼性を向上させる。また、希土類元素は、結晶粒界で電子の流れを防ぐ障壁として作用し、リーク電流の増加を抑制する役割を果たす。上記希土類元素の含量が、上記主成分100モルに対して0.1モル未満である場合には、上述の効果が不十分であり得る。
【0034】
一般に、ABO3構造において、A-サイト(A-site)に固溶可能な添加剤の含量は制限的であるため、希土類元素を添加するだけでは、酸素空孔の濃度を効果的に減らしにくいか、過度な半導体化により絶縁抵抗が低下し得る。
【0035】
ABO3構造において、A-サイト(A-site)に固溶可能な添加剤の含量よりは、B-サイト(B-site)に固溶可能な添加剤の含量が高いため、本発明では、希土類元素とともに、ABO3構造のB-サイト(B-site)を置換してドナー(donor)の役割を果たすNbを添加することで、信頼性を向上させる。Nbの含量が上記主成分100モルに対して0.02モル未満である場合には、上述の効果が不十分であり得る。
【0036】
また、Nbは、誘電体の結晶粒だけでなく、結晶粒界にも配置されることにより、積層セラミックキャパシタの絶縁抵抗の低下を防止し、信頼性を向上させることができる。
【0037】
希土類元素及びNbの含量の和が増加するほど、信頼性向上の点からは有利であるが、一定量以上になると半導体化され、絶縁体の特性を低下させ、焼結性を低下させる。したがって、希土類元素及びNbの含量の和は、主成分100モルに対して1.5モル以下であることが好ましい。
【0038】
Mgは、ABO3構造のB-サイト(B-site)を置換してアクセプタ(acceptor)の役割を果たし、電子濃度を減らす役割を果たすことができる。
【0039】
Mgは、NbとABO3構造のB-サイト(B-site)を競争的に置換するため、その含量を適切に調節する必要がある。
【0040】
Mgの含量が上記主成分100モルに対して0.25モル以上0.9モル以下である場合に、n型化による信頼性の改善効果を極大化することができ、Mgの含量が0.9モルを超える場合には、破壊電圧(BDV)が低くなる恐れがあって好ましくない。さらに好ましいMgの含量の範囲は、主成分100モルに対して0.25モル以上0.7モル以下であることができる。
【0041】
一方、希土類元素は特に限定されず、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテニウム(Lu)のうち1つ以上であることができる。
【0042】
但し、Dyに比べてイオン半径がより大きい希土類元素、例えば、ランタン(La)、サマリウム(Sm)などを用いる場合、Baサイトをより効果的に置換することができるため、酸素空孔欠陥濃度の減少においてはより効果的であるが、過度な半導体化により絶縁抵抗が急激に低下する恐れがある。したがって、上記希土類元素は、DyまたはDyよりもイオン半径が小さい元素であることがより好ましい。Dyよりもイオン半径が小さい希土類元素としては、例えば、Ho、Y、Er、Ybなどが挙げられる。
【0043】
また、酸素空孔欠陥濃度の減少及び絶縁抵抗の確保の両方を考慮すると、上記ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する主成分をBaTiO3とし、上記希土類元素をDyとすることがさらに好ましい。
【0044】
b)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つ以上を含む酸化物もしくは炭酸塩を含むことができる。
【0045】
上記第2副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも1つ以上を含む酸化物もしくは炭酸塩は、上記主成分100モルに対して、0.1~2.0モルの含量で含まれることができる。
【0046】
上記第2副成分は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を下げ、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0047】
上記第2副成分の含量及び後述の第3副成分の含量は、上記主成分100モルに対して含まれる量であって、特に、各副成分が含む金属イオンのモルとして定義されることができる。
【0048】
上記第2副成分の含量が0.1モル未満である場合には、焼成温度が高くなり、高温耐電圧特性がやや低下するおそれがある。
【0049】
上記第2副成分の含量が2.0モル以上である場合には、高温耐電圧特性及び常温比抵抗が低下するおそれがある。
【0050】
特に、本発明の一実施形態による誘電体組成物は、上記主成分100モルに対して、0.1~2.0モルの含量を有する第2副成分を含むことができ、これにより、低温焼成が可能であるとともに、高い高温耐電圧特性を得ることができる。
【0051】
c)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物は、第3副成分として、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物を含むことができる。
【0052】
上記誘電体組成物は、上記主成分100モルに対して、Si及びAlのうち少なくとも1つを含む酸化物、またはSiを含むガラス(Glass)化合物である0.001~0.5モルの第3副成分をさらに含むことができる。
【0053】
上記第3副成分の含量は、ガラス、酸化物、または炭酸塩のような添加形態を区別せず、第3副成分に含まれているSi及びAlのうち少なくとも1つ以上の元素の含量を基準とすることができる。
【0054】
上記第3副成分は、誘電体組成物が適用された積層セラミックキャパシタの焼成温度を下げ、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たす。
【0055】
上記主成分100モルに対して、上記第3副成分の含量が0.5モルを超える場合には、焼結性及び緻密度の低下、二次相の生成などの問題があり得るため好ましくない。
【0056】
特に、本発明の一実施形態によると、上記誘電体組成物が、0.5モル以下の含量でAlを含むことで、Alがアクセプタとして作用し、電子濃度を却って減らすことができるため、信頼性の改善において効果的である。
【0057】
積層型電子部品
図1は本発明の一実施形態による積層型電子部品概略的に示した斜視図である。
【0058】
図2は
図1のI-I'の断面を概略的に示した断面図である。
【0059】
図3は
図1のII-II'の断面を概略的に示した断面図である。
【0060】
図1から
図3を参照すると、本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、本体110上に配置され、内部電極121、122と連結される外部電極131、132と、を含み、誘電体層111は誘電体組成物を含み、上記誘電体組成物は、ABO
3(Aは、Ba、Sr、及びCaのうち少なくとも1つであり、Bは、Ti、Zr、及びHfのうち少なくとも1つである)で表されるペロブスカイト構造を有する主成分と、第1副成分と、を含み、上記第1副成分は、上記主成分100モルに対して、希土類元素:0.1モル以上、Nb:0.02モル以上、及びMg:0.25モル以上0.9モル以下を含み、上記希土類元素とNbの含量の和が1.5モル以下である。
【0061】
以下では、上述の誘電体組成物で説明した内容と重複される部分は、重複説明を避けるために省略する。また、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、上述の誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用可能である。
【0062】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0063】
本体110の具体的な形状は特に制限されないが、図面に示すように、本体110は、六面体状またはこれに類似した形状からなることができる。また、本体110は、焼成過程で本体110に含まれるセラミック粉末の収縮により、完全な直線を有する六面体形ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0064】
本体110は、第1方向(Z方向)に互いに対向する第1及び第2面1、2と、上記第1及び第2面1、2と連結されて第2方向(X方向)に互いに対向する第3及び第4面3、4と、第1及び第2面1、2と連結され、且つ第3及び第4面3、4と連結されて第3方向(Y方向)に互いに対向する第5及び第6面5、6と、を有することができる。
【0065】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認が困難なほど一体化することができる。
【0066】
誘電体層111は、上述の誘電体組成物を用いて形成されることができる。
【0067】
誘電体層111は、複数の結晶粒と、隣接した結晶粒の間に配置された結晶粒界と、を含むことができる。
【0068】
この際、誘電体組成物に含まれているNbは、上記複数の結晶粒及び結晶粒界に含まれることができる。Nbが結晶粒だけでなく、結晶粒界にも配置されることにより、積層セラミックキャパシタの絶縁抵抗の低下を防止し、信頼性を向上させることができる。
【0069】
また、上記結晶粒の平均粒径は200nm以下であることができ、この場合、本発明による信頼性及び絶縁抵抗の向上効果がより顕著になることができる。
【0070】
一方、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0071】
また、上記容量形成部Aは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層することで形成されることができる。
【0072】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層することで形成されることができ、基本的には物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0073】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0074】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0075】
また、上記容量形成部Aの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0076】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と、第5面5に配置されたマージン部115と、を含む。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0077】
マージン部114、115は、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0078】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0079】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上に、マージン部が形成されるべき部分を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することによって形成されたものであることができる。
【0080】
また、内部電極121、122による段差を抑えるために、積層後に内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に、幅方向に積層することでマージン部114、115が形成されてもよい。
【0081】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層される。
【0082】
内部電極121、122は第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0083】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4と離隔して第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3と離隔して第4面4を介して露出することができる。
【0084】
この際、第1及び第2内部電極121、122は、その間に配置された誘電体層111により互いに電気的に分離されることができる。
【0085】
本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成することで形成されることができる。内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を用いることができる。
【0086】
例えば、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用の導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷することで形成されることができる。
【0087】
上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0088】
一方、積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させる必要がある。しかし、誘電体層及び内部電極の厚さが薄くなるほど、信頼性が低下し、絶縁抵抗、破壊電圧などの特性が低下する可能性がある。
【0089】
したがって、誘電体層及び内部電極の厚さが薄くなるほど、本発明による信頼性の向上効果が増加することができる。
【0090】
特に、内部電極121、122の厚さte及び誘電体層111の厚さtdが0.41μm以下である場合、本発明による信頼性及び絶縁抵抗の向上効果が顕著になることができる。
【0091】
内部電極121、122の厚さteは、第1及び第2内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0092】
内部電極121、122の厚さteは、本体110の第3及び第1方向の断面(W-T断面)に対して、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)により画像をスキャンして測定することができる。
【0093】
例えば、本体110の第2方向(L方向)の中央部で切断した第3及び第1方向の断面(W-T断面)を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の内部電極121、122において、第3方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0094】
上記等間隔の30個の地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Aで測定されることができる。
【0095】
誘電体層111の厚さtdは、上記第1内部電極121と第2内部電極122との間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0096】
内部電極の厚さteと同様に、誘電体層111の厚さtdも、本体110の第3及び第1方向の断面(W-T断面)に対して、走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)により画像をスキャンして測定することができる。
【0097】
例えば、本体110の第2方向(L方向)の中央部で切断した第3及び第1方向の断面(W-T断面)を走査型電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)によりスキャンした画像から抽出された任意の誘電体層111において、第3方向に等間隔の30個の地点でその厚さを測定し、平均値を測定することができる。
【0098】
上記等間隔の30個の地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Aで測定されることができる。
【0099】
また、カバー部112、113の厚さは、特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtpは20μm以下であることができる。
【0100】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結される。
【0101】
図2に示す形態のように、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0102】
本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的によって変わり得る。
【0103】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば如何なる物質を用いて形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらには、多層構造を有することができる。
【0104】
例えば、外部電極131、132は、本体110上に配置される電極層131a、132aと、電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bと、を含むことができる。
【0105】
電極層131a、132aについてのより具体的な例としては、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0106】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式により形成されてもよい。
【0107】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を用いることができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0108】
めっき層131b、132bのより具体的な例としては、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形態であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含んでもよい。
【0109】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0110】
但し、小型化及び高容量化をともに達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、積層数を増加させなければならないため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品において、本発明による信頼性及び絶縁抵抗の向上効果がより顕著になることができる。
【0111】
したがって、本体の第3面と第4面との間の距離をL、上記第5面と第6面との間の距離をWと定義したときに、上記Lは1.0mm以下、上記Wは0.5mm以下であることができる。すなわち、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品であることができる。
【0112】
(実施例)
本発明の実施例は、主成分であるチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末に、Dy、Nb、Mgなどの添加剤、バインダー及びエタノールなどの有機溶媒を添加し、湿式混合して誘電体スラリーを準備した後、上記誘電体スラリーをキャリアフィルム上に塗布及び乾燥することでセラミックグリーンシートを準備する。これにより、誘電体層を形成することができる。
【0113】
上記セラミックグリーンシートは、セラミック粉末、バインダー、溶剤を混合してスラリーを製造し、ドクターブレード法により、上記スラリーを数μmの厚さを有するシート(sheet)状に製作することができる。
【0114】
次に、ニッケル粒子の平均サイズが0.1~0.2μmであり、40~50重量部のニッケル粉末を含む内部電極用の導電性ペーストを準備することができる。
【0115】
上記グリーンシート上に、上記内部電極用導電性ペーストをスクリーン印刷法により塗布して内部電極を形成した後、内部電極パターンが配置されたグリーンシートを積層して積層体を形成してから、上記積層体を圧着及び切断した。
【0116】
その後、切断された積層体を加熱してバインダーを除去した後、高温の還元雰囲気で焼成してセラミック本体を形成した。
【0117】
上記焼成過程では、還元雰囲気(0.1%のH2/99.9%のN2、H2O/H2/N2雰囲気)で、1100~1200℃の温度で2時間焼成した後、1000℃の窒素(N2)雰囲気下において再酸化を3時間行って熱処理した。
【0118】
次に、焼成されたセラミック本体に対して、銅(Cu)ペーストを用いてターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。
【0119】
また、セラミック本体110の内部の誘電体層111と内部電極121、122は、焼成後の平均厚さが0.4μm以下となるように製作した。
【0120】
(実施例1)
先ず、Dy及びNbの含量の和が信頼性に与える影響を確認するために、上述の製作過程を経て、上記主成分100モルに対して、Dy及びNbの含量の和が1.5モル(試験番号1)、1.8モル(試験番号2)、2.1モル(試験番号3)となるように試験番号1~3を製作した。
【0121】
上記のように完成されたプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)の試験片である試験番号1~3に対して、苛酷信頼性評価(Halt)を行った。
【0122】
図4は試験番号1~3に対する苛酷信頼性評価(Halt)の結果グラフである。苛酷信頼性評価では、125℃で、基準電圧の1.5倍を12時間印加し、絶縁抵抗の変化を測定した。
【0123】
図4(a)は、試験番号1の場合であって、Dy及びNbの含量の和が、主成分100モルに対して1.5モルとなるように添加したものであり、苛酷信頼性評価において不良がなく、信頼性に優れていることが分かる。
【0124】
試験番号1は、公称容量(Nominal Capacity)が101%、破壊電圧(BDV)が63Vと、容量及びBDVにおける信頼性評価においても優れていることが分かる。
【0125】
図4(b)は、Dy及びNbの含量の和が、主成分100モルに対して1.8モルとなるように添加した試験番号2の場合であり、
図4(c)は、Dy及びNbの含量の和が、主成分中のTi100モルに対して2.1モルとなるように添加した試験番号3の場合である。
【0126】
試験番号2及び3は、何れも苛酷信頼性評価において不良が多数発生しており、信頼性の低下が確認された。
【0127】
また、試験番号2は、公称容量(Nominal Capacity)が90%、破壊電圧(BDV)が58V、試験番号3は、公称容量(Nominal Capacity)が82%、破壊電圧(BDV)が47Vと、何れも基準に達していないことが分かる。
【0128】
このような結果から、Dy及びNbの含量の和が、主成分中のTi100モルに対して1.5モルを超える場合、信頼性が低下し、焼結性が不足して容量を確保しにくいことが確認できる。
【0129】
(実施例2)
Mgの含量の変化による電気的特性を確認するために、上述の製作過程を経て、主成分中のTi100モルに対して、Dy、Nb、及びMgが下記表1に記載の含量を有するように試験番号4~6を製作した。
【0130】
上記のように完成されたプロトタイプの積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)の試験片である試験番号4~6に対して、容量、DF(損失係数、Dissipation Factor)、BDV(破壊電圧、Breaking Down Voltage)を測定し、下記表1に記載した。
【0131】
図5は、試験番号4~6に対するI-V Curveであって、
図5(a)は試験番号4に対するI-V Curveであり、
図5(b)は試験番号5に対するI-V Curveであり、
図5(c)は試験番号6に対するI-V Curveである。
【0132】
【0133】
上記の表1、
図5(a)及び
図5(b)から確認できるように、試験番号4及び5は、Mgの含量が、主成分100モルに対して0.25モル以上0.9モル以下を満たす場合であり、容量、損失係数、及びBDV特性がすべてにおいて優れていることが確認された。また、試験番号4及び5が、Mgが添加されていない試験番号1~3に比べて高いBDV値を有することが分かる。
【0134】
しかし、Mgを過量添加した試験番号6は、上記の表1及び
図5(c)から確認できるように、Mgの含量が主成分100モルに対して0.9モルを超えて、BDVが急激に低くなることが分かる。また、容量も、Mgの含量が主成分100モルに対して0.7モルである試験番号5より低いことが分かる。
【0135】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態及び添付図面により限定されず、添付の特許請求の範囲により限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0136】
100 積層型電子部品
110 本体
121、122 内部電極
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
131、132 外部電極