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特許7613684のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置、のり面崩壊発生確率推定装置、のり面崩壊発生確率推定モデル学習方法、のり面崩壊発生確率推定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置、のり面崩壊発生確率推定装置、のり面崩壊発生確率推定モデル学習方法、のり面崩壊発生確率推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20250107BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20250107BHJP
【FI】
E02D17/20 106
G06N20/00 130
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020214252
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100093
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-10-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 開催日:2019年12月26日 集会名:東北地域災害科学研究集会および講演会 令和元年度
(73)【特許権者】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510257765
【氏名又は名称】株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(72)【発明者】
【氏名】長尾 和之
(72)【発明者】
【氏名】澤野 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】風間 基樹
(72)【発明者】
【氏名】加村 晃良
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 奈津美
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-301840(JP,A)
【文献】特開2002-070029(JP,A)
【文献】特開2004-280773(JP,A)
【文献】特開2005-350972(JP,A)
【文献】特開2019-085712(JP,A)
【文献】特開2019-113913(JP,A)
【文献】特開2004-183340(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/45853(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-52398(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-134408(KR,A)
【文献】倉本和正 他5名,斜面要因を考慮した斜面毎の非線形がけ崩れ発生限界雨量線の設定方法とその崩壊予測精度,土木学会論文集,No.707/VI-55,[online],2002年06月30日,pp.67-81,[2024年8月15日検索], URL:http//library.jsce.or.jp/jsce/open/00037/2002/707-0067.pdf
【文献】高密度地形データを用いた斜面崩壊予測のための大縮尺地形分類マニュアル,国土交通省国土地理院ウェブサイト,[online],日本,国土交通省国土地理院,2018年05月15日,[2024年8月15日検索], URL:https://www.gsi.go.jp/chirijoho40046.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
G06N 20-00-20/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
のり面崩壊の予防保全のためののり面崩壊発生確率推定モデル学習装置であって、
のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得部と、
前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定部と、
前記のり面崩壊発生確率推定部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新部と、
を備え、
前記素因情報は、前記のり面の形状を示す地形情報と、前記のり面の地質を示す地質情報または前記のり面の土質を示す土質情報と、前記のり面に断層又は褶曲軸(しゅうきょくじく)があるのか否かを示す情報と、を含む、
のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置。
【請求項2】
のり面崩壊の予防保全のためののり面崩壊発生確率推定装置であって、
のり面に関する情報である素因情報と、前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データを取得する状況データ取得部と、
のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するのか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得部と、前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定部と、前記のり面崩壊発生確率推定部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新部と、を備え、前記素因情報は、前記のり面の形状を示す地形情報と、前記のり面の地質を示す地質情報または前記のり面の土質を示す土質情報と、前記のり面に断層又は褶曲軸(しゅうきょくじく)があるのか否かを示す情報と、を含む、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置によって得られた学習済みののり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データ取得部が取得した状況データが示すのり面ののり面崩壊発生確率を推定する推定部と、
を備える、のり面崩壊発生確率推定装置。
【請求項3】
のり面崩壊の予防保全のためののり面崩壊発生確率推定モデル学習方法であって、
のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得ステップと、
前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定ステップと、
前記のり面崩壊発生確率推定ステップの推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新ステップと、
を有し、
前記素因情報は、前記のり面の形状を示す地形情報と、前記のり面の地質を示す地質情報または前記のり面の土質を示す土質情報と、前記のり面に断層又は褶曲軸(しゅうきょくじく)があるのか否かを示す情報と、を含む、
のり面崩壊発生確率推定モデル学習方法。
【請求項4】
のり面崩壊の予防保全のためののり面崩壊発生確率推定方法であって、
のり面に関する情報である素因情報と、前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データを取得する状況データ取得ステップと、
のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するのか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得部と、前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定部と、前記のり面崩壊発生確率推定部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新部と、を備え、前記素因情報は、前記のり面の形状を示す地形情報と、前記のり面の地質を示す地質情報または前記のり面の土質を示す土質情報と、前記のり面に断層又は褶曲軸(しゅうきょくじく)があるのか否かを示す情報と、を含む、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置によって得られた学習済みののり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データ取得ステップにおいて取得された状況データが示すのり面ののり面崩壊発生確率を推定する推定ステップと、
を有する、
のり面崩壊発生確率推定方法。
【請求項5】
請求項1に記載ののり面崩壊発生確率推定モデル学習装置をコンピュータに機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置、のり面崩壊発生確率推定装置、のり面崩壊発生確率推定モデル学習方法、のり面崩壊発生確率推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路、鉄道および宅地等に面する人工的に手を加えられた斜面(以下のり面と称す)の崩壊は甚大な被害を及ぼすため危険である。そこで、のり面崩壊の発生の確率であるのり面崩壊発生確率を推定する技術に関心が多高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-216989号公報
【文献】特開2015-232537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、のり面崩壊の発生には多くの要因が重なっているため、推定が困難である。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、より高い精度でのり面崩壊発生確率を推定する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得部と、前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定部と、前記のり面崩壊発生確率推定部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新部と、を備える、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記ののり面崩壊発生確率推定モデル学習装置であって、前記素因情報は、前記のり面の形状を示す地形情報と、前記のり面の地質を示す地質情報または前記のり面の土質を示す土質情報と、崩壊性構造情報とを含む。
【0008】
本発明の一態様は、のり面に関する情報である素因情報と、前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データを取得する状況データ取得部と、のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するのか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得部と、前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定部と、前記のり面崩壊発生確率推定部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新部と、を備える、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置によって得られた学習済みののり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データ取得部が取得した状況データが示すのり面ののり面崩壊発生確率を推定する推定部と、を備える、のり面崩壊発生確率推定装置である。
【0009】
本発明の一態様は、のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得ステップと、前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定ステップと、前記のり面崩壊発生確率推定ステップの推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新ステップと、を有する、のり面崩壊発生確率推定モデル学習方法である。
【0010】
本発明の一態様は、のり面に関する情報である素因情報と、前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データを取得する状況データ取得ステップと、のり面に関する情報である素因情報と前記のり面に降る雨に関する情報である誘因情報とを含む状況データと、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するのか否かを示す正解ラベルと、を取得する学習データセット取得部と、前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定する機械学習モデルであるのり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データが示す状況において前記のり面ののり面崩壊発生確率を推定するのり面崩壊発生確率推定部と、前記のり面崩壊発生確率推定部の推定結果と前記正解ラベルとの違いに基づき、前記違いを小さくするように前記のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する更新部と、を備える、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置によって得られた学習済みののり面崩壊発生確率推定学習モデルを用いて、前記状況データ取得ステップにおいて取得された状況データが示すのり面ののり面崩壊発生確率を推定する推定ステップと、を有する、のり面崩壊発生確率推定方法である。
【0011】
本発明の一態様は、上記ののり面崩壊発生確率推定モデル学習装置をコンピュータに機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、より高い精度でのり面崩壊発生確率を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態ののり面崩壊発生確率推定システム100の概要を説明する説明図。
図2】実施形態における素因情報の一例を示す図。
図3】実施形態における状況データの一例を示す図。
図4】実施形態におけるのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1の構成の一例を示す図。
図5】実施形態における制御部11の機能構成の一例を示す図。
図6】実施形態ののり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図7】実施形態におけるのり面崩壊発生確率推定装置2のハードウェア構成の一例を示す図。
図8】実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図。
図9】実施形態におけるのり面崩壊発生確率推定装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャート。
図10】実施形態ののり面崩壊発生確率推定システム100を用いたのり面崩壊発生確率の推定の実験結果の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
図1は、実施形態ののり面崩壊発生確率推定システム100の概要を説明する説明図である。のり面崩壊発生確率推定システム100は、のり面崩壊発生確率を推定する機械学習のモデル(以下「のり面崩壊発生確率推定学習モデル」という。)を機械学習の方法により更新する。のり面崩壊とはのり面が崩れることを意味する。のり面は、切土の斜面や盛土の斜面等人工的に手の加えられた斜面である。
【0015】
なお、機械学習のモデル(以下「機械学習モデル」という。)は、実行される条件と順番と(以下「実行規則」という。)が予め定められた1又は複数の処理を含む集合である。以下説明の簡単のため、機械学習の方法による機械学習モデルの更新を学習という。また、機械学習モデルの更新とは、機械学習モデルにおけるパラメータの値を好適に調整することを意味する。また、機械学習モデルの実行とは、機械学習モデルが含む各処理を実行規則にしたがって実行すること意味する。
【0016】
のり面崩壊発生確率推定システム100は、学習済みののり面崩壊発生確率推定学習モデル(以下「のり面崩壊発生確率推定モデル」という。)を用いて、解析対象ののり面の解析対象の状況におけるのり面崩壊発生確率を推定する。解析対象の状況は、例えば解析対象ののり面に所定の条件を満たす雨が降っている状況である。
【0017】
のり面崩壊発生確率推定システム100は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1及びのり面崩壊発生確率推定装置2を備える。
【0018】
のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、学習用のデータセット(以下「学習データセット」という。)を用いた学習によりのり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する。なおデータセットはデータの集合を意味する。学習データセットは、状況データと正解ラベルを含む被害程度データとを含む。状況データはのり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習段階においてのり面崩壊発生確率推定学習モデルに入力される。
【0019】
状況データは少なくとも素因情報及び誘因情報と含む。素因情報は、地形情報、地質情報、土質情報、崩壊性構造情報等ののり面に関する情報である。すなわち、素因情報は、のり面に関する条件を示す情報である。
【0020】
地形情報は、のり面が崖錐地形であるのか、集水型傾斜であるのか、頭部開発行為のある尾根地形であるのか、頭部開発行為の無い尾根地形であるのか、等ののり面の形状を示す情報である。
【0021】
地質情報は、のり面の地質を示す情報である。土質情報は、のり面の土質を示す情報である。
【0022】
崩壊性構造情報は、のり面に断層又は褶曲軸(しゅうきょくじく)があるのか、のり面には断層も褶曲軸も無いのか等ののり面における崩壊性を有する構造の有無を示す情報である。
【0023】
素因情報は、例えば地形情報と、地質情報または土質を示す土質情報と、崩壊性構造情報とを含む情報であってもよい。
【0024】
誘因情報は、のり面に降る雨に関する情報である。この誘因情報から、崩壊発生から遡った累積雨量情報、降雨強度情報が抽出される。累積雨量とは所定の時間の間の総雨量である。所定の時間は、1時間であってもよいし、24時間であってもよいし、48時間であってもよいし、72時間であってもよいし、1週間であってもよい。このように、誘因情報は、より具体的には、のり面に降る雨に関する条件を示す情報である。
【0025】
このように状況データは、のり面が満たす条件と、のり面に降る雨が満たす条件とを少なくとも示す情報である。すなわち、状況データは、状況データが示すのり面に状況データが示す雨が降る状況を示す情報である。
【0026】
正解ラベルを含む被害程度データは、対象とするのり面の崩壊の発生があるか否かの正解ラベルと、崩壊した場合の被害程度とを示す。すなわち、正解ラベルは、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降った場合ののり面について、のり面崩壊が発生するか否かを示す。状況データは必ずしも過去の実際の事例のデータである必要はない。状況データは、シミュレーション等の数値計算により事前に推定又は決定されたデータであってもよい。正解ラベルを含む被害程度データもまた必ずしも過去の実際の事例のデータである必要は無く、シミュレーション等の数値計算により事前に推定又は決定されたデータであってもよい。
【0027】
のり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習の方法は、正解ラベルを含む被害程度データと少なくとも素因情報及び誘因情報を含む状況データとを含む学習データセットを用いた機械学習の方法であればどのような方法であってもよい。のり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習の方法は、例えば深層学習の方法である。
【0028】
のり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習の方法が深層学習の方法である場合、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、推定損失に基づき、推定損失を小さくするようにのり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する。推定損失は、のり面崩壊発生確率推定学習モデルの推定結果と正解ラベルとの違いである。
【0029】
のり面崩壊発生確率は、例えばのり面崩壊が発生する確率を「1」で表し、のり面崩壊が発生しない確率を「0」とした確率空間で表される。
【0030】
推定損失がのり面崩壊発生確率推定学習モデルの推定結果と正解ラベルとの違いであるため、のり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習に用いられる目的関数は、のり面崩壊発生確率推定学習モデルの推定結果と正解ラベルとの違いを表す関数である。
【0031】
のり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習の方法が深層学習である場合、のり面崩壊発生確率推定学習モデルは、例えば入力層と、複数の中間層と、出力層とを有するニューラルネットワークで表現される。中間層は例えば2層の中間層である。中間層の活性化関数は、例えばシグモイド関数である。出力層の関数は、例えばソフトマックス関数である。
【0032】
なおニューラルネットワークとは、電子回路、電気回路、光回路、集積回路等の回路であって機械学習モデルを表現する回路である。ニューラルネットワークのパラメータは、目的関数の値(すなわち損失)に基づいて好適に調整される。ネットワークのパラメータは、表現する機械学習モデルのパラメータである。またネットワークのパラメータは、ネットワークを構成する回路のパラメータである。
【0033】
のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、所定の終了条件(以下「学習終了条件」という。)が満たされるまでのり面崩壊発生確率推定学習モデルを学習する。学習終了条件は、例えば所定の数の学習データセットを用いた学習が行われたという条件である。学習終了条件が満たされたのり面崩壊発生確率推定学習モデルが、のり面崩壊発生確率推定モデルである。
【0034】
のり面崩壊発生確率推定装置2は、のり面崩壊発生確率推定モデルを用いて、入力された状況データが示す状況におけるのり面崩壊発生確率を推定する。なお、状況データが示す状況とは、状況データが示す条件を満たすのり面に状況データが示す条件を満たす雨が降る状況である。
【0035】
図2は、実施形態における素因情報の一例を示す図である。より具体的には、図2は、のり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習に際して、素因情報の1つとしてのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1に入力される可能性のある情報の例を示す表である。図2に示す例は、のり面崩壊発生確率の推定に際して、素因情報の1つとしてのり面崩壊発生確率推定装置2に入力される可能性のある情報の例でもある。
【0036】
図2の表において“項目”の列は、素因情報の1つとしてのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1又はのり面崩壊発生確率推定装置2に入力される可能性のある情報(以下「入力可能性素因情報」という。)の種類を示す。例えば図2において“項目”が“地形”の情報は、入力可能性素因情報が地形情報であることを示す。例えば図2において“項目”が“切土のり面地山の土質・地質”の情報は、入力可能性素因情報が地質情報又は土質情報であることを示す。例えば図2において“項目”が“崩壊性の構造”の情報は、入力可能性素因情報が崩壊性構造情報であることを示す。
【0037】
図2の表において“素因”の列は、“項目”の表す種類の入力可能性素因情報が示す具体的な内容の例を示す。図2の表では、“項目”が“切土のり面地山の土質・地質”の“素因”の例として“土砂”、“ローム”、“スレーキング性の岩”、“花崗岩(まさ土含む)”、“非スレーキング性の岩”が示されている。“土砂”は、のり面が段丘堆積物、扇状地堆積物および土砂でできていることを示す。“ローム”は、のり面がロームでできていることを示す。“スレーキング性の岩”は、のり面がスレーキング性の岩でできていることを示す。“花崗岩(まさ土含む)”は、のり面がまさ土を含む花崗岩でできていることを示す。“非スレーキング性の岩”は、のり面が非スレーキング性の岩でできていることを示す。
【0038】
図2の表において“配点”の値は、各入力可能性素因情報がコンピュータに入力される際の各入力可能性素因情報が推定結果に与える影響の強さを表す。例えば、図2において、“素因”が“土砂”である行の入力可能性素因情報は“配点”が35であるため、“配点”が25である“ローム”の行の入力可能性素因情報よりも、推定結果への影響が強い情報としてのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1又はのり面崩壊発生確率推定装置2に入力されることを示す。
【0039】
図2の表において“機械学習に用いた評点”は、“配点”を正規化した結果である。正規化は、所定の規則にしたがって“配点”の値を1対1に変換可能であればどのような処理であってもよい。正規化は、例えば図2の表の各行の“配点”の値の合計値で図2の表の各行の値を割り算する処理である。以下、“機械学習に用いた評点”のことを評点という。
【0040】
例えば図2のD101の行のデータは、D101の行のデータが地形情報に属する情報であり、D101の行のデータを有するのり面が崖錐地形であり、“配点”が35であり、“機械学習に用いた評点”が0.7であることを示す。
【0041】
図3は実施形態における状況データの一例を示す図である。図3に記載の表において“のり面番号”の列は、状況データが示す状況におけるのり面を示す識別子を示す。図3に記載の表において“地形”は地形情報の評点を示す。図3に記載の表において“土質・地質”は地質情報及び土質情報に付与された評価値を示す。
【0042】
図3に記載の表において“構造”は、崩壊性構造情報の評点を示す。図3に記載の表において“素因評価合計”は、図3の各行の“地形”、“土質・地質”、“構造”の3つの項目の最大評価値を1とした場合の値を示す。図3に記載の表において、“段数”は、のり面が小段で分割されている場合の数を示す。図3に記載の表において、“供用開始からの年数”は、使用年数を示す。図3に記載の表において、“最大時間雨量”は崩壊発生前1週間を開始時間とする1時間を1分ごとに区分けした崩壊発生までの各期間における総雨量のうち、最大の時間雨量を示す。図3において、“累積雨量”は、崩壊前累積雨量を示す。なお、“素因評価合計”、“段数”、“使用開始年数”はいずれも素因情報の一例である。
【0043】
図4は実施形態におけるのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1の構成の一例を示す図である。のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部11を備え、プログラムを実行する。のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、プログラムの実行によって制御部11、通信部12、入力部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0044】
より具体的には、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、プロセッサ91が記憶部14に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、制御部11、通信部12、入力部13、記憶部14及び出力部15を備える装置として機能する。
【0045】
制御部11は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が備える各機能部の動作を制御する。制御部11は、例えばのり面崩壊発生確率推定学習モデルの学習を行う。制御部11は、例えば学習の結果を記憶部14に記録する。制御部11は、例えば通信部12の動作を制御する。
【0046】
通信部12は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部12は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。通信部12の通信先の外部装置は、例えばのり面崩壊発生確率推定装置2である。通信部12は、例えばのり面崩壊発生確率推定装置2に、のり面崩壊発生確率推定モデルを送信する。外部装置は、例えば学習データセットの送信元の装置であってもよい。このような場合、通信部12は、学習データセットの送信元の装置との間の通信によって、学習データセットを受信する。
【0047】
入力部13は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部13は、これらの入力装置をのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部13は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部13には、例えば学習データセットが入力されてもよい。
【0048】
記憶部14は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの非一時的コンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部14はのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1に関する各種情報を記憶する。記憶部14は、例えばのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が備える各機能部の動作を制御するプログラムを予め記憶する。記憶部14は、例えば予めのり面崩壊発生確率推定学習モデルを記憶する。記憶部14は、例えば更新後ののり面崩壊発生確率推定学習モデルを記憶する。
【0049】
なお、学習データセットは、必ずしも通信部12だけに入力される必要もないし、入力部13だけに入力される必要もない。学習データセットが含む各情報は、通信部12と入力部13とのどちらから入力されてもよい。例えば状況データは通信部12に入力され、通信部12に入力された状況データに対応する正解ラベルは入力部13に入力されてもよい。また、学習データセットは必ずしも通信部12又は入力部13から取得される必要はなく、予め記憶部14が記憶済みであってもよい。
【0050】
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部15は、これらの表示装置をのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部15は、例えば入力部13に入力された情報を出力する。出力部15は、例えば通信部12又は入力部13に入力された学習データセットを表示してもよい。出力部15は、例えばのり面崩壊発生確率推定学習モデルの実行結果を表示してもよい。
【0051】
図5は、実施形態における制御部11の機能構成の一例を示す図である。制御部11は、通信制御部101、入力制御部102、出力制御部103、学習データセット取得部104、のり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部105、更新部106、終了判定部107及び記録部108を備える。
【0052】
通信制御部101は、通信部12の動作を制御する。通信制御部101の制御により通信部12は、学習済みののり面崩壊発生確率推定学習モデルを、のり面崩壊発生確率推定装置2に送信する。入力制御部102は、入力部13の動作を制御する。出力制御部103は、出力部15の動作を制御する。
【0053】
学習データセット取得部104は、通信部12又は入力部13に入力された学習データセットを取得する。学習データセット取得部104は、予め記憶部14に学習データセットが記録済みの場合には、記憶部14から学習データセットを読み出してもよい。
【0054】
のり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部105は、学習データセット取得部104が取得した学習データセットに含まれる状況データに対してのり面崩壊発生確率推定学習モデルを実行する。のり面崩壊発生確率推定学習モデルの実行により、のり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部105は、状況データが示す状況におけるのり面崩壊発生確率を推定する。
【0055】
更新部106は、のり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部105の推定結果と学習データセット取得部104が取得した学習データセットに含まれる正解ラベルとの違いである推定損失に基づき、のり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する。
【0056】
終了判定部107は、学習終了条件が満たされたか否かを判定する。記録部108は、各種情報を記憶部14に記録する。
【0057】
図6は、実施形態ののり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。通信部12又は入力部13に学習データセットが入力され、入力された学習データセットを学習データセット取得部104が取得する(ステップS101)。
【0058】
次にのり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部105がステップS101で取得された学習データセットが含む状況データに対してのり面崩壊発生確率推定学習モデルを実行する(ステップS102)。のり面崩壊発生確率推定学習モデルの実行によりのり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部105は、ステップS101で取得された状況データが示す状況におけるのり面崩壊発生確率を推定する。
【0059】
次に更新部106が、ステップS102で得られた推定結果とステップS101で得られた学習データセットに含まれる正解ラベルとの違いに基づき、違いを小さくするようにのり面崩壊発生確率推定学習モデルを更新する(ステップS103)。
【0060】
次に終了判定部107が、学習終了条件が満たされたか否かを判定する(ステップS104)。学習終了条件が満たされた場合(ステップS104:YES)、処理が終了する。一方、学習終了条件が満たされない場合(ステップS104:NO)、ステップS101の処理に戻る。
【0061】
図7は、実施形態におけるのり面崩壊発生確率推定装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。のり面崩壊発生確率推定装置2は、バスで接続されたCPU等のプロセッサ93とメモリ94とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。のり面崩壊発生確率推定装置2は、プログラムの実行によって制御部21、通信部22、入力部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0062】
より具体的には、のり面崩壊発生確率推定装置2は、プロセッサ93が記憶部24に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ94に記憶させる。プロセッサ93が、メモリ94に記憶させたプログラムを実行することによって、のり面崩壊発生確率推定装置2は、制御部21、通信部22、入力部23、記憶部24及び出力部25を備える装置として機能する。
【0063】
制御部21は、のり面崩壊発生確率推定装置2が備える各機能部の動作を制御する。制御部21は、例えばのり面崩壊発生確率推定モデルを実行する。制御部21は、例えばのり面崩壊発生確率推定モデルの実行結果を記憶部24に記録する。制御部21は、例えば通信部22の動作を制御する。
【0064】
通信部22は、のり面崩壊発生確率推定装置2を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部22は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。通信部22の通信先の外部装置は、例えばのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1である。通信部22は、例えばのり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1に、学習済みののり面崩壊発生確率推定学習モデル(すなわちのり面崩壊発生確率推定モデル)を送信する。
【0065】
外部装置は、例えば解析対象の状況データの送信元の装置であってもよい。このような場合、通信部22は、状況データの送信元の装置との間の通信によって、状況データを受信する。
【0066】
入力部23は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部23は、これらの入力装置をのり面崩壊発生確率推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部23は、のり面崩壊発生確率推定装置2に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部23には、例えば状況データが入力されてもよい。
【0067】
記憶部24は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの非一時的コンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部24はのり面崩壊発生確率推定装置2に関する各種情報を記憶する。記憶部24は、例えばのり面崩壊発生確率推定装置2が備える各機能部の動作を制御するプログラムを予め記憶する。記憶部24は、例えば予めのり面崩壊発生確率推定モデルを記憶する。記憶部24が記憶するのり面崩壊発生確率推定モデルは、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1によって得られた機械学習モデルである。記憶部24は、例えばのり面崩壊発生確率推定モデルによる推定結果を記憶する。
【0068】
なお、状況データは、必ずしも通信部22だけに入力される必要もないし、入力部23だけに入力される必要もない。状況データが含む各情報は、通信部22と入力部23とのどちらから入力されてもよい。また、状況データは必ずしも通信部22又は入力部23から取得される必要はなく、予め記憶部24が記憶済みであってもよい。
【0069】
出力部25は、各種情報を出力する。出力部25は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。出力部25は、これらの表示装置をのり面崩壊発生確率推定装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。出力部25は、例えば入力部23に入力された情報を出力する。出力部25は、例えば通信部22又は入力部23に入力された状況データを表示してもよい。出力部25は、例えばのり面崩壊発生確率推定モデルの実行結果を表示してもよい。
【0070】
図8は、実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図である。制御部21は、通信制御部201、入力制御部202、出力制御部203、状況データ取得部204、推定部205及び記録部206を備える。
【0071】
通信制御部201は、通信部22の動作を制御する。入力制御部202は、入力部23の動作を制御する。出力制御部203は、出力部25の動作を制御する。
【0072】
状況データ取得部204は、通信部22又は入力部23に入力された状況データを取得する。状況データ取得部204は、予め記憶部24に状況データが記録済みの場合には、記憶部24から状況データを読み出してもよい。
【0073】
推定部205は、状況データ取得部204が取得した状況データに対してのり面崩壊発生確率推定モデルを実行する。のり面崩壊発生確率推定モデルの実行により、推定部205は、状況データが示す状況におけるのり面崩壊発生確率を推定する。
【0074】
記録部206は、各種情報を記憶部24に記録する。
【0075】
図9は、実施形態におけるのり面崩壊発生確率推定装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。状況データ取得部204が状況データを取得する(ステップS201)。次に、推定部205が、のり面崩壊発生確率推定モデルの実行により、ステップS201で取得された状況データが示す状況におけるのり面崩壊発生確率を推定する(ステップS202)。
【0076】
(実験結果)
ここでのり面崩壊発生確率推定システム100を用いたのり面崩壊確率の推定の実験結果の例を説明する。図10を用いて説明する。図10において“TP”はTrue Positiveの意味であり、“FN”は、False Negative、“TN”はTrue Negativeの意味で、“FP”はFalse Positiveの意味である。
【0077】
図10は、実施形態ののり面崩壊発生確率推定システム100を用いたのり面崩壊発生確率の推定の実験結果の一例を示す図である。実験には東北地方の高速道路の約7000箇所ののり面のデータのうち約950箇所(のり面崩壊データ120箇所、非崩壊のり面データ830箇所)のデータが用いられた。のり面崩壊データとは、実際に崩壊したのり面から得られるデータを意味する。非崩壊のり面データとは、降雨を受けても実際に崩壊しなかったのり面から得られるデータを意味する。実験では、のり面崩壊発生確率推定システム100の推定したのり面崩壊発生確率が50%以上である場合に、推定対象がのり面崩壊の発生のデータであると分類された。また実験では、のり面崩壊発生確率推定システム100の推定したのり面崩壊発生確率が50%未満である場合に、推定対象がのり面崩壊の発生の無いデータであると分類された。
【0078】
図10は、19個ののり面崩壊が起きた事例のデータのうち14個について、のり面崩壊発生確率推定システム100は、のり面崩壊が起きた事例のデータであるという推定をしたことを示す。すなわち、図10は、のり面崩壊発生確率推定システム100は、74%の正解率であったことを示す。なお、実験においてのり面崩壊が起きた事例のデータの数は19であり、のり面崩壊が起きていない事例のデータの数は23であった。
【0079】
このように、図10は、のり面崩壊発生確率推定システム100が、適切な閾値が設定されることで、高い精度でのり面崩壊発生確率を推定できることを示す。
【0080】
(適用場面)
のり面崩壊発生確率推定システム100は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1を用いて予めのり面崩壊発生確率推定モデルを得ておけば、時々刻々と変化する累積降水量に対して、のり面ののり面崩壊発生確率の変化を推定することができる。そのため、のり面崩壊発生確率推定システム100は、降雨の状況の変化に応じたのり面の点検や対応の検討を可能にする。
【0081】
また、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が得たのり面崩壊発生確率推定モデルを用いれば、降雨時に崩壊しやすいのり面をシミュレーションにより推定することが可能である。例えば、シミュレーションでは疑似的な降雨パターンを用いられてもよい。そのため、のり面を点検や巡回する人は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が得たのり面崩壊発生確率推定モデルを用いて、事前に降水量とのり面崩壊発生確率の関係図を得ることができる。その結果、点検や巡回の効率や精度が上がる。
【0082】
のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が得たのり面崩壊発生確率推定モデルを用いれば、予めのり面崩壊発生確率を推定することができるため、のり面崩壊発生確率推定モデルを用いた疑似的な降雨を与えるシミュレーションにより、のり面の評価が可能である。そのため、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1が得たのり面崩壊発生確率推定モデルを用いれば、のり面の管理者は、予防保全の視点から各のり面について対策を行う順位付けが可能になる。
【0083】
このように構成された実施形態ののり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、素因情報及び誘因情報を用いた学習により、のり面崩壊発生確率推定モデルを得る。そのため、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1は、より高い精度でのり面崩壊発生確率を推定することを可能とする。
【0084】
また、このように構成された実施形態ののり面崩壊発生確率推定システム100は、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1を備える。そのため、のり面崩壊発生確率推定システム100はより高い精度でのり面崩壊発生確率を推定することが可能である。
【0085】
(変形例)
なお、通信部12及び通信部22は、各種情報を記憶するUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記憶装置に接続するためのインタフェースを含んで構成されてもよい。このような場合、通信部12及び通信部22は情報を接続先の外部記憶装置に出力してもよい。
【0086】
なお、学習データセットは、少なくとも状況データと正解ラベルとを含んでいれば、必ずしも状況データと被害程度データとを含む必要はない。
【0087】
なお、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1とのり面崩壊発生確率推定装置2とは、必ずしも異なる装置として実装される必要は無い。のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1とのり面崩壊発生確率推定装置2とは、例えば両者の機能を併せ持つ1つの装置として実装されてもよい。
【0088】
なお、のり面崩壊発生確率推定システム100は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いたシステムとして実装されてもよい。この場合、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1とのり面崩壊発生確率推定装置2が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
【0089】
なお、のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置1とのり面崩壊発生確率推定装置2との各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0090】
なお、のり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部は、のり面崩壊発生確率推定部の一例である。
【0091】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0092】
100…のり面崩壊発生確率推定システム、1…のり面崩壊発生確率推定モデル学習装置、2…のり面崩壊発生確率推定装置、11…制御部、12…通信部、13…入力部、14…記憶部、15…出力部、101…通信制御部、102…入力制御部、103…出力制御部、104…学習データセット取得部、105…のり面崩壊発生確率推定学習モデル実行部、106…更新部、107…終了判定部、108…記録部、21…制御部、22…通信部、23…入力部、24…記憶部、25…出力部、201…通信制御部、202…入力制御部、203…出力制御部、204…状況データ取得部、205…推定部、206…記録部、91…プロセッサ、92…メモリ、93…プロセッサ、94…メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10