(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】自動車の内装部品、構造体及び自動車の内装部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 3/10 20060101AFI20250107BHJP
B29C 51/10 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60N3/10 A
B29C51/10
(21)【出願番号】P 2019118369
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2018159971
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】松原 礼宗
(72)【発明者】
【氏名】田中 新一
(72)【発明者】
【氏名】南川 佑太
【合議体】
【審判長】一ノ瀬 覚
【審判官】横溝 顕範
【審判官】澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-200489(JP,A)
【文献】特開2016-113120(JP,A)
【文献】特開2010-52691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C31/02-31/06
B68G7/05-7/054
B60N2/00-3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、補強部と、ヒンジ部とを備え、
前記基部は、平板状のベース壁を有し、
前記ベース壁は
、表皮材が設けられるおもて面と
、裏面とを有し、
前記おもて面
は、前記おもて面に載置される物品の荷重を受ける面であり、
前記補強部は凹状に形成された板状部材であり、前記凹状により補強リブが構成され、前記補強リブが前記裏面に向かって突出して前記補強リブが前記裏面に接し、
前記基部と前記補強部とは、前記ヒンジ部を介して連結されていて、
前記補強リブと前記裏面との接触領域が、前記裏面の全体よりも小さい、
自動車の内装部品。
【請求項2】
請求項1に記載の
自動車の内装部品であって、
前記接触領域で前記補強リブと前記裏面とが溶着された、
自動車の内装部品。
【請求項3】
請求項2に記載の
自動車の内装部品であって、
前記基部、前記補強部及び前記ヒンジ部は、同一の発泡樹脂シートが成形されて構成された、
自動車の内装部品。
【請求項4】
請求項3に記載の
自動車の内装部品であって、
前記補強リブは、互いに離間して設けられた第1及び第2補強リブを含み、
前記接触領域は、第1及び第2接触領域を含み、
前記第1及び第2接触領域は、前記裏面において互いに離れて位置し、
前記裏面と前記第1補強リブとが前記第1接触領域で溶着し、前記裏面と前記第2補強リブとが前記第2接触領域で溶着した、
自動車の内装部品。
【請求項5】
基部と、補強部と、ヒンジ部とを備える構造体であって、
前記補強部は、前記基部を補強するように設けられ、
前記基部と前記補強部とは、前記ヒンジ部を介して連結され、
前記基部は、基部縁部を有し、
前記ヒンジ部は、前記基部縁部と前記補強部とを連結し、
前記補強部は、前記基部縁部に沿って延びるように設けられる板状部材であり、且つ、前記ヒンジ部を軸として前記基部側に折り曲げられ、
前記構造体は、樹脂成形体に表皮材が重ねられて構成され、
前記基部は、第1及び第2基部縁部を有し、
前記補強部は、第1及び第2補強部を有し、
前記ヒンジ部は、第1及び第2ヒンジ部を有し、
第1ヒンジ部は、第1基部縁部と第1補強部とを連結し、第2ヒンジ部は、第2基部縁部と第2補強部とを連結し、
第1及び第2補強部は、第1及び第2基部縁部に沿って延びるように設けられる板状部材であり、且つ、第1及び第2補強部は、第1補強部が前記基部と第2補強部との間に挟まれるように、第1及び第2ヒンジ部を軸として前記基部側に折り曲げられ、
第1補強部と第2補強部とが溶着され、第1補強部における前記表皮材には、第2補強部における前記樹脂成形体を構成する樹脂が染み込んでおり、
前記基部、前記補強部及び前記ヒンジ部は、同一の発泡樹脂シートが成形されて構成された、構造体。
【請求項6】
請求項1~請求項
4の何れか1つに記載の
自動車の内装部品であって、
前記ヒンジ部は、薄肉形成されている、
自動車の内装部品。
【請求項7】
成形工程と、回動工程とを備える、
自動車の内装部品の製造方法であって、
前記成形工程では、樹脂パリソンを成形することで、基部と補強部とヒンジ部とを有する成形体を形成し、前記ヒンジ部は、前記基部及び前記補強部を連結するように構成され、
前記基部は、平板状のベース壁を有し、
前記ベース壁は
、表皮材が設けられるおもて面と
、裏面とを有し、
前記おもて面
は、前記おもて面に載置される物品の荷重を受ける面であり、
前記補強部は凹状に形成された板状部材であり、前記凹状により補強リブが構成され、
前記回動工程では、前記ヒンジ部を軸として前記補強部を回動させ、
前記回動工程により前記補強リブが前記裏面と接し、
前記補強リブと前記裏面との接触領域が、前記裏面の全体よりも小さい、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及び構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の構造体の製造方法は、加熱して軟化状態とした発泡樹脂シートを分割金型のキャビティに配置し、その後、当該キャビティを減圧吸引することで発泡樹脂シートを二次発泡させて発泡樹脂シートを膨張させる、方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形による構造体の製造方法は、液状の溶融樹脂を高圧にして分割金型のキャビティに供給するため、キャビティの形状が入り組んだ場合であっても、溶融樹脂をキャビティ内に行き渡らせやすい。このため、射出成形による構造体の製造方法では、入り組んだ形状の構造体を製造しやすい。しかし、特許文献1の構造体の製造方法は1枚の発泡樹脂シートを分割金型で挟み込む構成を採用しているため、特許文献1の構造体の製造方法は、射出成形による構造体の製造方法と比較すると、成形できる構造体の形状の制約が大きくなる場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、製造方法に起因して形状に制約を受けることが抑制されている構造体と、構造体の形状の制約を抑制することができる構造体の製造方法と、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、基部と、補強部と、ヒンジ部とを備え、前記補強部は、前記基部を補強するように設けられ、次の構成(a)及び構成(b)のうちの少なくとも一方を備えている、構造体。構成(a):前記基部と前記補強部とは、前記ヒンジ部を介して連結されている。構成(b):前記補強部が、前記ヒンジ部を備えている。
【0007】
本発明によれば、構成(a)及び構成(b)のうちの少なくとも一方を備えているので、ヒンジ部を曲げることで、様々な形状の構造体を製造することができる。このため、本発明によれば、製造方法に起因して形状に制約を受けることが抑制される。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、構造体は、構成(a)を備えている。
好ましくは、前記基部は、ベース壁と、フランジ壁とを有し、前記フランジ壁は、前記ベース壁の縁部に形成され、前記ヒンジ部は、前記フランジ壁と前記補強部の端部とを連結している。
好ましくは、前記補強部は、補強リブを有し、前記補強リブが、前記ベース壁の裏面を支持している。
好ましくは、前記補強リブは、前記ベース壁の裏面へ向かって突出するように形成されている。
好ましくは、前記基部は、基部縁部を有し、前記ヒンジ部は、前記基部縁部と前記補強部とを連結し、前記補強部は、前記基部縁部に沿って延びるように設けられる板状部材であり、且つ、前記ヒンジ部を軸として前記基部側に折り曲げられている、構造体が提供される。
好ましくは、前記構造体は、樹脂成形体に表皮材が重ねられて構成され、前記基部は、第1及び第2基部縁部を有し、前記補強部は、第1及び第2補強部を有し、前記ヒンジ部は、第1及び第2ヒンジ部を有し、第1ヒンジ部は、第1基部縁部と第1補強部とを連結し、第2ヒンジ部は、第2基部縁部と第2補強部とを連結し、第1及び第2補強部は、第1及び第2基部縁部に沿って延びるように設けられる板状部材であり、且つ、第1及び第2補強部は、第1補強部が前記基部と第2補強部との間に挟まれるように、第1及び第2ヒンジ部を軸として前記基部側に折り曲げられ、第1補強部と第2補強部とが溶着され、第1補強部における前記表皮材には、第2補強部における前記樹脂成形体を構成する樹脂が染み込んでいる、構造体が提供される。
好ましくは、構造体は、構成(b)を備えている。
好ましくは、前記基部は、ベース壁と、フランジ壁とを有し、前記フランジ壁は、前記ベース壁の縁部に形成されている。
好ましくは、前記補強部は、延出部と、前記ヒンジ部と、補強リブとを有し、前記延出部は、前記フランジ壁に連結され、前記延出部と前記補強リブとは、前記ヒンジ部を介して連結され、前記補強リブは、前記基部の裏面を支持している。
好ましくは、前記補強リブは、平板状に構成されている。
好ましくは、前記延出部は、第1及び第2延出部を有し、前記ヒンジ部は、第1、第2、第3及び第4ヒンジ部を有し、前記補強リブの一端部は第1ヒンジ部を介して第1延出部に連結し、前記補強リブの他端部は第2ヒンジ部を介して第2延出部に連結し、第3及び第4ヒンジ部は、前記補強リブのうち、前記一端部と前記他端部との間の部分に設けられている。
好ましくは、前記補強リブと前記ベース壁とは溶着されている。
好ましくは、前記基部、前記補強部及び前記ヒンジ部は、同一の樹脂シートが成形されて構成され、前記ヒンジ部は、薄肉形成されている。
好ましくは、前記基部は、立設壁を更に有し、前記ベース壁は、第1縁部と第2縁部とを有し、前記フランジ壁は、第1縁部に形成され、前記立設壁は、第2縁部に形成されている。
実施形態にかかる構造体の製造方法は、成形工程と、回動工程とを備える、構造体の製造方法であって、前記成形工程では、樹脂パリソンを成形することで、基部と補強部とヒンジ部とを有する成形体を形成し、前記ヒンジ部は、前記基部及び前記補強部を連結するように構成され、前記回動工程では、前記ヒンジ部を軸として前記補強部の全体又は一部を回動させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは第1実施形態に係る構造体30の正面図であり、
図1Bは第1実施形態に係る構造体30の正面斜視図であり、
図1Cは
図1Aに示す構造体30を逆さにした状態における背面斜視図である。
【
図2】
図1Aに示す構造体30のA-A端面図である。
【
図3】
図3Aは構造体30のヒンジ部Hを曲げていない状態である構造体300の正面図であり、
図3Bは構造体300の正面斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る構造体30を製造するときに用いる、発泡成形機1と第1及び第2金型21、22とを示している。
【
図6】第1金型21と第2金型22との間に発泡樹脂シート23を垂下させるとともに、第1金型21と第2金型22との間に表皮材32を配置した状態を示している。
【
図7】発泡樹脂シート23及び表皮材32を第2金型22に賦形した状態を示している。
【
図8】
図8Aは第1及び第2金型21、22を閉じた状態を示し、
図8Bは
図8Aに示す領域Bの拡大図であり、
図8Cは発泡樹脂シート23を発泡させて発泡樹脂シート23を膨張させた状態を示している。
【
図9】閉じていた第1及び第2金型21、22を開いた状態を示している。
【
図11】
図11Aは構造体30Bの補強部50Bを曲げていない状態である構造体300Bの正面斜視図であり、
図11Bは
図11Aに示す構造体300Bを逆さにした状態における背面斜視図であり、
図11Cは
図11Bに示す領域Dの拡大図である。
【
図13】
図13Aは構造体300Cの補強部50Cを曲げていない状態である構造体300Cの背面斜視図であり、
図13Bは
図13Aに示す領域Fの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.構造体30
第1実施形態に係る構造体30は自動車の内装部品であり、構造体30にはおもて面43Bが形成され、自動車の搭乗者はおもて面43Bに例えば飲物の容器といった物品を置くことができる。このように、おもて面43Bは物品の荷重が加わる部分であるため、構造体30は、構造体30のうちおもて面43Bの形成領域を補強する構成(後述する補強部50)を備えている。
【0012】
図1A~
図2に示すように、構造体30は、基部40と、補強部50と、ヒンジ部Hと、を備えている。また、構造体30には突出部35が形成されている。突出部35は、構造体30の凹状の空間を、第1領域R1と第2領域R2とに分けている。また、
図2に示すように、構造体30は二層構造となっている。つまり、構造体30は、第1層としての樹脂成形体31と、第2層としての表皮材32とを備えている。樹脂成形体31は発泡樹脂で形成された成形体である。樹脂成形体31の発泡倍率は、特に限定されないが、例えば1.5~6倍である。なお、第1実施形態では、樹脂成形体31の構成樹脂が発泡樹脂である場合を一例として説明するが、発泡樹脂でなくてもよい。また、第1実施形態では、構造体30が表皮材32を備えている場合を一例として説明するが、表皮材32を備えていなくてもよい。
【0013】
1-1-1.基部40
図1A~
図2に示すように、基部40は、基部本体41と、フランジ壁42とを備えている。基部本体41は凹状に形成され、基部本体41の縁にはフランジ壁42が接続されている。基部本体41はベース壁43と立設壁44とを備えている。ベース壁43は板状部材であり、第1実施形態においてベース壁43は平板である。なお、ベース壁43は湾曲していてもよい。ベース壁43は補強部50によって支持されており、ベース壁43に荷重が加わった場合において、ベース壁43の変形が抑制される。ベース壁43は、第1縁部43Aと、第2縁部43aと、おもて面43Bと、裏面43Cとを有する。第1縁部43Aにはフランジ壁42が接続されている。おもて面43Bは裏面43Cの反対側に形成され、裏面43Cは補強部50に間隔をあけて対向している。裏面43Cは補強部50に支持される面である。立設壁44は板状部材であり、立設壁44はベース壁43から立ち上がるように延びている。第1実施形態において立設壁44は第2縁部43aに接続されている。立設壁44は突出部35を有する。立設壁44の縁にはフランジ壁42が接続されている。
【0014】
フランジ壁42は板状部材であり、第1実施形態においてフランジ壁42は環状に形成されている。フランジ壁42の内側縁はベース壁43及び立設壁44に接続されている。フランジ壁42の外側縁にはヒンジ部Hが形成されており、フランジ壁42外側縁はヒンジ部Hを介して補強部50に連結している。フランジ壁42には開口部42Aが形成されており、開口部42Aには、構造体30を自動車の車内部品に固定する固定部材(例えばボルト)が挿入される。
【0015】
1-1-2.補強部50及びヒンジ部H
図2、
図4A及び
図4Bに示すように、補強部50は、ヒンジ部Hを介して基部40に回動可能に接続されている。第1実施形態において、構造体30には、補強部50及びヒンジ部Hが2個ずつ設けられているが、個数は2個に限定されるものではなく、1個でもよいし、3個以上であってもよい。ヒンジ部Hは薄肉形成されている。具体的には、ヒンジ部Hの肉厚は補強部50の肉厚及び基部40の肉厚よりも薄くなっている。このため、ヒンジ部Hは、製造者又は製造装置が補強部50をベース壁43の裏面43Cへ向けて倒すように補強部50を曲げ加工可能に構成されている。
【0016】
補強部50は凹状に形成された板状部材である。補強部50は補強リブ51と固定部52とを有する。補強部50が曲げられた状態において、補強リブ51はベース壁43の裏面43Cに向かって突出するように形成されている。補強部50は基部40を補強するように設けられている。具体的には、第1実施形態において補強リブ51はベース壁43の裏面43Cに当接しており、これにより、ベース壁43は補強部50に支持され、その結果、基部40が補強部50によって補強される。なお、第1実施形態では補強リブ51はベース壁43に当接しているが、それに限定されるものではない。介在部材が補強リブ51とベース壁43との間に設けられ、補強リブ51がベース壁43に当接していなくてもよい。補強リブ51はベース壁43の裏面43Cに溶着されている。固定部52には開口部53が形成され、開口部53には、構造体30を自動車の車内部品に固定する固定部材(例えばボルト)が挿入される。
【0017】
1-1-3.表皮材32
図2に示すように、表皮材32は、樹脂成形体31の前面の全域に設けられている。表皮材32は、一例では、通気性を有する不織布で構成され、具体的にはナイロン繊維、セルロース繊維、アラミド繊維などを挙げることができるが、その例に限定されない。
【0018】
1-2.発泡成形機1の構成
図5に示すように、発泡成形機1は、樹脂供給装置2と、Tダイ18と、第1金型21と、第2金型22とを備える。樹脂供給装置2は、ホッパー12と、押出機13と、インジェクタ16と、アキュームレータ17を備える。押出機13とアキュームレータ17は、連結管25を介して連結される。アキュームレータ17とTダイ18は、連結管27を介して連結される。
【0019】
1-2-1.ホッパー12及び押出機13
ホッパー12は、原料樹脂11を押出機13のシリンダ13a内に投入するために用いられる。原料樹脂11の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。原料樹脂11は、ホッパー12からシリンダ13a内に投入された後、シリンダ13a内で加熱されることによって溶融されて溶融樹脂になる。また、シリンダ13a内に配置されたスクリューの回転によってシリンダ13aの先端に向けて搬送される。スクリューは、シリンダ13a内に配置され、その回転によって溶融樹脂を混練しながら搬送する。スクリューの基端にはギア装置が設けられており、ギア装置によってスクリューが回転駆動される。
【0020】
1-2-2.インジェクタ16
シリンダ13aには、シリンダ13a内に発泡剤を注入するためのインジェクタ16が設けられる。インジェクタ16から注入される発泡剤は、物理発泡剤、化学発泡剤、及びその混合物が挙げられるが、物理発泡剤が好ましい。物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、及びブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、更にはそれらの超臨界流体を用いることができる。超臨界流体としては、二酸化炭素、窒素などを用いて作ることが好ましく、窒素であれば臨界温度-149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上、二酸化炭素であれば臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。化学発泡剤としては、酸(例:クエン酸又はその塩)と塩基(例:重曹)との化学反応により炭酸ガスを発生させるものが挙げられる。化学発泡剤は、インジェクタ16から注入する代わりに、ホッパー12から投入してもよい。
【0021】
1-2-3.アキュームレータ17及びTダイ18
原料樹脂と発泡剤が溶融混練されてなる発泡樹脂は、シリンダ13aの樹脂押出口から押し出され、連結管25を通じてアキュームレータ17内に注入される。アキュームレータ17は、シリンダ17aとその内部で摺動可能なピストン17bを備えており、シリンダ17a内に発泡樹脂が貯留可能になっている。そして、シリンダ17a内に発泡樹脂が所定量貯留された後にピストン17bを移動させることによって、連結管27を通じて発泡樹脂をTダイ18内に設けられたスリットから押し出して垂下させて発泡樹脂シート23を形成する。
【0022】
1-2-4.第1及び第2金型21、22
発泡樹脂シート23は、第1及び第2金型21、22間に導かれる。第1金型21には凹状のキャビティcvが形成されている。第2金型22には凸状のコアcrが形成されている。第1及び第2金型21、22には、図示省略の多数の減圧吸引孔が設けられている。また、第1及び第2金型21、22には、キャビティcvを取り囲むように、ピンチオフ部21c、22cが形成されている。
【0023】
1-3.構造体30の製造方法
本第1実施形態に係る構造体30の製造方法は、配置工程と、成形工程と、切除工程と、回動工程と、溶着工程とを備える。
【0024】
1-3-1.配置工程
図6に示すように、配置工程では、溶融状態の発泡樹脂をTダイ18のスリットから押し出して形成した1枚の発泡樹脂シート23を、第1金型21と第2金型22との間に配置する。発泡樹脂シート23と第2金型22との間には、表皮材32が配置される。
【0025】
1-3-2.成形工程
成形工程では、樹脂パリソンを成形することで、基部40と補強部50とヒンジ部Hとを有する成形体を形成する。成形工程は、吸引工程と、型閉じ工程と、膨張工程とを備える。
図7に示すように、吸引工程では、第2金型22の減圧吸引孔から発泡樹脂シート23及び表皮材32を吸引する。これにより、発泡樹脂シート23及び表皮材32が、第2金型22のコアcrに沿った形状に賦形される。
【0026】
図8Aに示すように、型閉じ工程では、第1金型21と第2金型22とを近接させて、第1及び第2金型21、22を型閉じする。型閉じ工程が完了した状態において、ヒンジ部Hが形成される部分は、第1金型21と第2金型22との間の間隔が非常に狭められており、発泡樹脂シート23及び表皮材32は押し潰されている。これにより、構造体300には薄肉化されたヒンジ部Hが形成される。また、
図8Bに示すように、型閉じ工程が完了した状態において、ピンチオフ部21cとピンチオフ部22cとが接触し、第1金型21及び第2金型22には密閉空間Sが形成される。発泡樹脂シート23及び表皮材32のうち密閉空間S外にある部位はバリbrとなる。
図8Cに示すように、膨張工程では、第1及び第2金型21、22の減圧吸引孔から密閉空間Sを減圧する。これにより、発泡樹脂シート23を膨張させる。密閉空間Sが減圧されると、発泡樹脂シート23の発泡が促進されて発泡樹脂シート23が膨張する。
【0027】
1-3-3.切除工程
図9に示すように、第1及び第2金型21、22を型開きして、構造体300を第1及び第2金型21、22から取り出す。切除工程では、構造体300に形成されたバリbrを切除する。
【0028】
1-3-4.回動工程
図4Aに示す破線矢印のように、回動工程では、構造体300のヒンジ部Hを軸として構造体300の補強部50の全体を回動させる。具体的には、構造体300の補強部50をベース壁43の裏面43Cへ向けて倒すように構造体300の補強部50を曲げ加工する。これにより、構造体300を構造体30へ変形させることができる。なお、回動工程は、製造者が実施してもよいし、製造装置で実施してもよい。
このように、第1実施形態に係る構造体30の製造方法では、成形工程において構造体30を製造するのではなく、成形工程においては構造体300を製造する。つまり、1枚の発泡樹脂シート23を第1及び第2金型21、22で挟み込む方法によって構造体300を製造し、その次に、本回動工程において、構造体300を構造体30へ変形させる。
【0029】
1-3-5.溶着工程
溶着工程では、構造体30のベース壁43の裏面43Cと、構造体30の補強部50の補強リブ51とを溶着する。これにより、曲げ加工された補強部50が、ヒンジ部Hの弾性力により、元の状態すなわち曲げ加工される前の状態に戻ってしまうことを防止することができる。溶着工程では、超音波溶着を採用している。
【0030】
1-4.第1実施形態の効果
第1実施形態に係る構造体30は、ベース壁43の裏面側に補強部50が配置されている。このような構成の構造体は、射出成形による製造方法であれば、比較的容易に製造することができる。その一方で、第1実施形態に係る構造体30の製造方法のように、1枚の発泡樹脂シート23を第1及び第2金型21、22で挟み込む製造方法では、この構造体30のような構成を有する構造体を技術的に成形し難い。第1実施形態に係る構造体30は薄肉化されたヒンジ部Hを備えているので、補強部50をベース壁43の裏面43Cへ向けて倒したとしても、製造者は容易に構造体300の状態から構造体30の状態へ変形させることができる。つまり、第1実施形態に係る構造体300は薄肉化されたヒンジ部Hを備えているので、製造者は、構造体300を破損させることなく、補強部50をベース壁43の裏面43Cへ向けて倒すように補強部50を曲げ加工することができる。このように、第1実施形態に係る構造体30の構成は、製造方法に起因して形状に制約を受けることが抑制されている。また、第1実施形態に係る製造方法は、構造体の形状の制約を抑制することができる方法である。特に、第1実施形態に係る製造方法は、構造体30のように深絞り形状を有する構造体の裏面側に補強構造を設ける場合に有効である。
【0031】
1-5.第1実施形態の変形例1
第1実施形態の変形例1では第1実施形態と共通する部分については説明を適宜省略する。
図10A~
図11Cに示すように、変形例1に係る構造体30Bは、基部40と、補強部50Bとを備えている。第1実施形態の変形例1は補強部50Bがヒンジ部Hを備えた形態である。このため、変形例1の構造体30Bの回動工程では、ヒンジ部Hを軸として補強部50Bの一部が回動することになる。
【0032】
補強部50Bは、補強リブ51Bと、一対の延出部52Bと、ヒンジ部Hとを備えている。また、補強部50Bには、開口部53Bが形成され、開口部53Bには、構造体30Bを自動車の車内部品に固定する固定部材(例えばボルト)が挿入される。開口部53Bは補強リブ51B及び延出部52Bにそれぞれ形成されており、補強リブ51Bを折り曲げた状態において、補強リブ51Bの開口部53Bと延出部52Bの開口部53Bとが繋がっている。
【0033】
補強リブ51Bは板状部材であり、変形例1では補強リブ51Bが平板状に形成されている。なお、補強リブ51Bは湾曲していてもよい。補強リブ51Bはヒンジ部Hを介して延出部52Bに連結されている。補強リブ51Bがヒンジ部Hを軸として曲げられた状態において、補強リブ51Bは基部40の裏面に設けられており、補強リブ51Bは基部40の裏面を支持している。具体的には、補強リブ51Bは立設壁44に固定されており、その結果、補強リブ51Bは、立設壁44に接続されたベース壁43を支持している。なお、第1実施形態の変形例1では補強リブ51Bは立設壁44に当接しているが、それに限定されるものではない。介在部材が補強リブ51Bと立設壁44との間に設けられ、補強リブ51Bが立設壁44に当接していなくてもよい。また、補強リブ51Bは立設壁44に溶着されることで、補強リブ51Bが立設壁44に固定される。この溶着方法には、例えば超音波溶着を採用することができる。
【0034】
延出部52Bは板状部材であり、延出部52Bの一端部がフランジ壁42の外側縁に接続され、延出部52Bの他端部がヒンジ部Hを介して補強リブ51Bに連結している。延出部52Bはベース壁43に間隔をあけて設けられている。延出部52Bとフランジ壁42との接続部にはヒンジ部Hが設けられていないが、延出部52Bとフランジ壁42との接続部にヒンジ部Hを形成してもよい。この場合には、金型で成形した直後において、延出部52Bがフランジ壁42に平行に設けられることになる。
【0035】
ヒンジ部Hは薄肉形成されており、ヒンジ部Hの肉厚は、補強リブ51Bの肉厚、延出部52Bの肉厚、及び基部40の肉厚よりも薄くなっている。
【0036】
図11Cに示す破線矢印のように、製造者がヒンジ部Hを軸と補強リブ51Bを折り曲げることで、製造者は、
図11Aに示す構造体300Bを
図10Aに示す構造体30Bに変形させることができる。
【0037】
1-6.第1実施形態の変形例2
第1実施形態の変形例2においても、第1実施形態と共通する部分については説明を適宜省略する。
図12A~
図13Bに示すように、変形例2に係る構造体30Cは、基部40と、補強部50Cとを備えている。第1実施形態の変形例1と同様に、第1実施形態の変形例2も、補強部50Cがヒンジ部Hを備えた形態である。このため、変形例2の構造体30Cの回動工程では、ヒンジ部Hを軸として補強部50Cの一部が回動することになる。製造者は、回動工程を実施することで、構造体300Cを構造体30Cに変形させることができる。
【0038】
補強部50Cは、補強リブ51Cと、一対の延出部52Cと、ヒンジ部Hとを備えている。補強部50Cには、開口部53Cが形成され、開口部53Cには、構造体30Cを自動車の車内部品に固定する固定部材(例えばボルト)が挿入される。
【0039】
延出部52Cは変形例1で説明した延出部52Bと同様の構成である。第1実施形態の変形例2において、一対の延出部52Cのうちの一方を第1延出部52C1と称し、一対の延出部52Cのうちの他方を第2延出部52C2と称する。
【0040】
また、第1実施形態の変形例2において、ヒンジ部Hは、第1ヒンジ部h1と第2ヒンジ部h2と第3ヒンジ部h3と第4ヒンジ部h4とを有する。第1ヒンジ部h1、第2ヒンジ部h2、第3ヒンジ部h3及び第4ヒンジ部h4は、平行に延びている。第1ヒンジ部h1は補強リブ51Cの一端部に設けられ、第2ヒンジ部h2は補強リブ51Cの他端部に設けられている。また、第3ヒンジ部h3及び第4ヒンジ部h4は、補強リブ51Cのうちの一端部と他端部との間の部分に設けられている。
【0041】
補強リブ51Cは板状部材であり、補強リブ51Cは、一対の第1板状部c1と、第2板状部c2とを有する。第1延出部52C1と一方の第1板状部c1とは第1ヒンジ部h1を介して連結されており、第2延出部52C2と他方の第1板状部c1とは第2ヒンジ部h2を介して連結されている。また、一方の第1板状部c1と第2板状部c2とは第3ヒンジ部h3を介して連結されており、他方の第1板状部c1と第2板状部c2とは第4ヒンジ部h4を介して連結されている。
【0042】
補強リブ51Cがヒンジ部Hを軸として曲げられた状態において、補強リブ51Cは基部40の裏面に設けられており、補強リブ51Cは基部40の裏面を支持している。具体的には、第2板状部c2はベース壁43の裏面43Cに当接しており、これにより、ベース壁43は補強部50Cに支持され、その結果、基部40が補強部50Cによって補強される。第1実施形態の変形例2では第2板状部c2はベース壁43に当接しているが、それに限定されるものではない。介在部材が第2板状部c2とベース壁43との間に設けられ、第2板状部c2がベース壁43に当接していなくてもよい。第2板状部c2はベース壁43に溶着されることで、第2板状部c2がベース壁43に固定される。この溶着方法には、第1実施形態や第1実施形態の変形例1と同様に、超音波溶着を採用することができる。
【0043】
延出部52Cは板状部材であり、延出部52Cの一端部がフランジ壁42の外側縁に接続されている。第1延出部52C1の端部のうち第2延出部52C2に向かい合う端部には第1ヒンジ部h1が設けられ、第2延出部52C2の端部のうち第1延出部52C1に向かい合う端部には第2ヒンジ部h2が設けられている。延出部52Cはベース壁43に間隔をあけて設けられている。なお、延出部52Cとフランジ壁42との接続部にはヒンジ部Hが設けられていないが、延出部52Cとフランジ壁42との接続部にヒンジ部Hを形成してもよい。この場合には、金型で成形した直後の構造体30Cの延出部52Cは、フランジ壁42に平行に設けられることになる。
【0044】
ヒンジ部Hは薄肉形成されており、ヒンジ部Hの肉厚は、補強リブ51Cの肉厚、延出部52Cの肉厚、及び基部40の肉厚よりも薄くなっている。
【0045】
図13Bに示す破線矢印Ar1に示すように、製造者が、第1ヒンジ部h1を軸として第1延出部52C1から一方の第1板状部c1を折り曲げるとともに、第3ヒンジ部h3を軸として一方の第1板状部c1と第2板状部c2とを折り曲げる。次に、
図13Bに示す破線矢印Ar2に示すように、製造者が、第2ヒンジ部h2を軸として第2延出部52C2から他方の第1板状部c1を折り曲げるとともに、第4ヒンジ部h4を軸として他方の第1板状部c1と第2板状部c2とを折り曲げる。これにより、
図13Bに示す補強リブ51Cが、反転し、
図12Cに示す状態となる。つまり、製造者は、
図13Aに示す構造体300Cを
図12Bに示す構造体30Cに変形させることができる。なお、破線矢印Ar1及び破線矢印Ar2の動作順序は逆であってもよい。
【0046】
1-7.第1実施形態の変形例3
第1実施形態の変形例3においても、第1実施形態と共通する部分については説明を適宜省略する。
図14Aに示すように、変形例3に係る構造体30Dは、基部40と、補強部50Dとを備えている。変形例3は第1実施形態と同様に、補強部50Dがヒンジ部Hを介して基部40に回動可能(
図14Bの矢印Br参照)に接続されている。なお、補強部50Dが回動前の状態については、第1実施形態と同様であるため、省略する。
【0047】
変形例3における補強部50Dの補強リブ51Dの深さdp(高さ)が第1実施形態の補強部50の補強リブ51の深さ(高さ)よりも大きい点で、変形例3は第1実施形態と異なっている。
また、第1実施形態において、各補強リブ51の深さ(高さ)は同じであったが、本変形例3において、各補強リブ51Dの深さ(高さ)が異なっている。具体的には、
図14Bにおいて手前側に示される補強リブ51Dの深さ(高さ)の方が、
図14Bにおいて奥側に示される補強リブ51Dの深さ(高さ)よりも大きい。このように、構造体30Dが補強リブ51Dを複数有し、且つ、各補強リブ51Dの深さ(高さ)が異なる場合においても、第1実施形態で説明した成形工程において構造体30Dを成形可能であり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
ここで、深さdpが大きく設定されると、その分、成形工程において、発泡樹脂シートのうち補強部50Dを構成する部分が延ばされることになり、補強部50Dの補強リブ51Dが薄肉化しやすい。補強リブ51Dが薄肉化すると、補強部50Dの強度の低下を招く場合がある。そこで、変形例3においても、1-3-5.溶着工程で説明したように、ベース壁43の裏面43Cと、補強リブ51Dの底部50D1(
図14C参照)とを溶着する。変形例3でも、第1実施形態と同様に、溶着方法として超音波溶着を採用することができる。
【0049】
図15に示すように、裏面43Cと底部50D1とが溶着されるときにおいて、裏面43Cの樹脂成形体31(発泡樹脂)及び底部50D1の樹脂成形体31(発泡樹脂)が溶けるが、この溶けた樹脂成形体31は、底部50D1に設けられている表皮材32に染み込む。これにより、裏面43Cと底部50D1とがより強固に結合し、補強部50Dの強度の低下が回避される。換言すると、変形例3では、ベース壁43(裏面43C)と補強部50D(底部50D1)とは、底部50D1に設けられている表皮材32に発泡樹脂が染み込むように、溶着される。これにより、補強部50Dの深さdpが大きくても、補強部50Dの強度の低下が回避される。
【0050】
なお、製造者が裏面43Cと底部50D1とを溶着するときには、製造者は、超音波溶着用の工具を裏面43Cに設けられている表皮材32に押し当てるのではなく、補強部50Dに設けられている表皮材32に押し当てる。これにより、溶けた樹脂成形体31が、補強部50Dに設けられている表皮材32に染み込む。つまり、樹脂成形体31を構成する発泡樹脂は、本来的に表皮材32に染み込みにくいことから、超音波溶着用の工具が押し当てられている側の部分(底部50D1の表皮材32)には、溶けた発泡樹脂が優先的に染み込むが、その一方、超音波溶着用の工具が押し当てられていない側の部分(裏面43Cの表皮材32)には、溶けた発泡樹脂が染み込むことが回避される。裏面43Cの表皮材32は意匠面となるため、変形例3は構造体30Dの意匠性が損なわれることを回避することができる。
つまり、変形例3では、深さdpが大きくても補強部50Dの強度の低下を回避するとともに、構造体30Dの意匠性が損なわれることを回避することができる。
【0051】
2.第2実施形態
第2実施形態では、第1実施形態と共通する部分については説明を適宜省略する。第2実施形態に係る構造体30Eは、基部40Eの周縁を補強する構造を有する。
【0052】
2-1.構造体30E
図16Aに示すように、第2実施形態に係る構造体30Eは、板状部材である。構造体30Eは、基部40Eと、補強部50Eと、ヒンジ部Hと、を備えている。構造体30Eは樹脂成形体31に表皮材32が重ねられて構成されている。つまり、
図18A及び
図18Bに示すように、構造体30Eは、第1層としての樹脂成形体31と、第2層としての表皮材32とを備えている。基部40Eはおもて面43Bと裏面43Cとを有し、基部40Eの表皮材32はおもて面43Bを構成し、基部40Eの裏面43Cは裏面43Cを構成する。なお、構造体30Eの形状は適宜変更可能である。例えば、基部40Eの中央部には凹状部が形成され、構造体30Eが容器状に構成されていてもよい。
【0053】
2-1-1.基部40E
図16A及び
図17Aに示すように、基部40Eは、台形の板状部材である。基部40Eは4つの基部縁部40E1を有し、各基部縁部40E1には、ヒンジ部Hが設けられている。ヒンジ部Hは、基部40Eの各基部縁部40E1に沿うように延びるように設けられている。ここで、
図18Bに示すように、第1実施形態と同様に、ヒンジ部Hは薄肉形成されている。つまり、ヒンジ部Hの肉厚は補強部50Eの肉厚及び基部40Eの肉厚よりも薄くなっている。このため、ヒンジ部Hは、製造者又は製造装置が補強部50Eを基部40Eの裏面43Cへ向けて倒すように補強部50を曲げ加工可能に構成されている。
【0054】
2-1-2.補強部50E及びヒンジ部H
図18A及び
図18Bに示すように、補強部50Eは、ヒンジ部Hを介して基部40Eに回動可能に接続されている。第2実施形態では、構造体30Eは4つの補強部50Eを有し、補強部50Eは基部縁部40E1に沿って延びるように設けられている板状部材である。
図18Bに示すように、各ヒンジ部Hは、各基部縁部40E1と各補強部50Eとを連結している。ヒンジ部Hは薄肉形成されており、具体的には、ヒンジ部Hの肉厚は補強部50Eの肉厚及び基部40Eの肉厚よりも薄くなっている。このため、ヒンジ部Hは、製造者又は製造装置が補強部50Eを基部40Eの裏面43Cへ向けて倒すように補強部50を曲げ加工可能に構成されている。
【0055】
図16B、
図16C及び
図19に示すように、隣接する一対の補強部50Eは、一方の補強部50Eが基部40Eと他方の補強部50Eとの間に挟まれるように、各ヒンジ部Hを軸として基部40E側に折り曲げられている。ここで、隣接する一対の補強部50Eとは、基部40Eの周方向において隣接する2つの補強部50Eを指す。このため、隣接する一対の補強部50Eの長手方向の端部において、一方の補強部50Eと他方の補強部50Eとが重なっている。
【0056】
なお、隣接する一対の補強部50Eのうちの一方の補強部50Eが、第1補強部に対応し、他方の補強部50Eが第2補強部に対応する。また、この一方の補強部50Eに設けられているヒンジ部H及び基部縁部40E1が、第1ヒンジ及び第1基部縁部に対応し、この他方の補強部50Eに設けられているヒンジ部H及び基部縁部40E1が、第2ヒンジ及び第2基部縁部に対応する。
【0057】
2-1-3.表皮材32
表皮材32(
図18B参照)は、樹脂成形体31の前面の全域に設けられている。第1実施形態と同様に、第2実施形態においても、表皮材32は、一例では、通気性を有する不織布で構成され、具体的にはナイロン繊維、セルロース繊維、アラミド繊維などを挙げることができるが、その例に限定されない。
【0058】
2-2.構造体30Eの製造方法
第2実施形態に係る構造体30Eの製造方法は、配置工程と、成形工程と、切除工程と、回動工程と、溶着工程とを備える。第2実施形態の配置工程、成形工程及び切除工程は、第1実施形態の配置工程、成形工程及び切除工程と同様なので説明を省略する。
【0059】
2-2-1.回動工程
回動工程では、構造体300Eのヒンジ部Hを軸として構造体300Eの補強部50Eを回動させる。具体的には、構造体300Eの補強部50Eを基部40Eの裏面43Cへ向けて倒すように構造体300Eの補強部50Eを曲げ加工する。ここで、
図17Bの(1)に示すように、製造者又は製造装置は、基部40Eの上縁部に設けられた補強部50Eを最初に折り曲げ、次に、(2)に示すように、製造者又は製造装置は、基部40Eの左右の縁部に設けられた補強部50Eを折り曲げ、(3)に示すように、製造者又は製造装置は、基部40Eの下縁部に設けられた補強部50Eを折り曲げる。このように、各補強部50Eが基部40E側に折り曲げられる。これにより、基部40Eが補強部50Eによって補強され、また、製造者又は製造装置は、構造体300Eを構造体30Eへ変形させることができる。そして、補強部50Eがここで説明した(1)~(3)の順番に折り曲げられることで、後述する溶着工程で構造体30Eの強度が効果的に向上する。
【0060】
2-2-2.溶着工程
溶着工程では、各補強部50E同士が溶着される。第2実施形態においては、基部40Eの4つの角部のそれぞれにおいて、各補強部50E同士が溶着される。ここで、
図16B、
図16C及び
図19に示すように、一対の補強部50Eのうちの一方の補強部50E(下側の補強部50E)の長手方向の端部には、他方の補強部50E(上側の補強部50E)の長手方向の端部が重ねられている。この重なっている端部同士が溶着される。
図19において、製造者は、超音波溶着用の工具を他方の補強部50E(上側の補強部50E)に押し当て、一方の補強部50E(下側の補強部50E)と他方の補強部50E(上側の補強部50E)とを溶着する。ここで、
図19において、一方の補強部50E(下側の補強部50E)の表皮材32上には、他方の補強部50E(上側の補強部50E)の樹脂成形体31が配置されている。このため、他方の補強部50E(上側の補強部50E)の発泡成形体(発泡樹脂)が、一方の補強部50E(下側の補強部50E)の表皮材32に染み込む。これにより、一方の補強部50E(下側の補強部50E)及び他方の補強部50E(上側の補強部50E)が互いに強固に結合し、基部40Eが補強部50Eに更に強固に補強される。
【0061】
2-4.第2実施形態の効果
第2実施形態に係る構造体30Eは、板状部材である補強部50Eが、ヒンジ部Hを軸として基部40E側に折り曲げられているので、基部40Eが補強部50Eによって強固に補強される。また、
図19の矢印Arに示すように、構造体30Eの縁部には、表皮材32が配置されるので、構造体30Eの意匠性が向上する。つまり、構造体30Eの縁部において、発泡成形体(発泡樹脂)が露出することが回避されるので、構造体30Eの意匠性が向上する。
【0062】
第2実施形態に係る構造体30Eは、他方の補強部50E(上側の補強部50E)の発泡成形体(発泡樹脂)が、一方の補強部50E(下側の補強部50E)の表皮材32に染み込んでいる。このため、一方の補強部50E(下側の補強部50E)及び他方の補強部50E(上側の補強部50E)が互いに強固に結合し、その結果、基部40Eが、補強部50Eに更に強固に補強される。
【符号の説明】
【0063】
1 :発泡成形機
2 :樹脂供給装置
11 :原料樹脂
12 :ホッパー
13 :押出機
13a :シリンダ
16 :インジェクタ
17 :アキュームレータ
17a :シリンダ
17b :ピストン
18 :Tダイ
21 :第1金型
21c :ピンチオフ部
22 :第2金型
22c :ピンチオフ部
23 :発泡樹脂シート
25 :連結管
27 :連結管
30 :構造体
30B :構造体
30C :構造体
30D :構造体
30E :構造体
31 :樹脂成形体
32 :表皮材
35 :突出部
40 :基部
40E :基部
40E1 :基部縁部
41 :基部本体
42 :フランジ壁
42A :開口部
43 :ベース壁
43A :第1縁部
43B :おもて面
43C :裏面
43a :第2縁部
44 :立設壁
50 :補強部
50B :補強部
50C :補強部
50D :補強部
50D1 :底部
50E :補強部
51 :補強リブ
51B :補強リブ
51C :補強リブ
51D :補強リブ
52 :固定部
52B :延出部
52C :延出部
52C1 :第1延出部
52C2 :第2延出部
53 :開口部
53B :開口部
53C :開口部
300 :構造体
300B :構造体
300C :構造体
300E :構造体
H :ヒンジ部
R1 :第1領域
R2 :第2領域
S :密閉空間
br :バリ
c1 :第1板状部
c2 :第2板状部
cr :コア
cv :キャビティ
h1 :第1ヒンジ部
h2 :第2ヒンジ部
h3 :第3ヒンジ部
h4 :第4ヒンジ部