IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社広電の特許一覧

<>
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図1
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図2
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図3
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図4
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図5
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図6
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図7
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図8
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図9
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図10
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図11
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図12
  • 特許-面状採暖具および面状採暖システム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】面状採暖具および面状採暖システム
(51)【国際特許分類】
   F24D 19/02 20060101AFI20250107BHJP
   F24D 13/02 20060101ALI20250107BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
F24D19/02 C
F24D13/02 G
F24D13/02 F
F24D13/02 E
E04F15/18 X
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021088570
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2021191992
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020096080
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】396016973
【氏名又は名称】株式会社広電
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】石川 広
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237978(JP,A)
【文献】特開2002-267194(JP,A)
【文献】特開2006-313053(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0099387(KR,A)
【文献】特開2007-280695(JP,A)
【文献】特開平10-274420(JP,A)
【文献】特開2012-141120(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107327092(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 19/02
F24D 13/02
E04F 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTCヒータで構成される発熱部と、
前記発熱部に電流を供給するための電源接続部と、
前記電源接続部から供給された電源を他の面状採暖具に出力する電源出力部と、
前記電源接続部から前記電源出力部への通電を制御する制御部と、
前記発熱部を支持する略矩形状の基台部と、を備え、
前記電源出力部は、前記基台部の4辺にそれぞれ設けられ、前記発熱部と電気的に接続されており、かつ、それぞれ互いに電気的に接続されていることを特徴とする面状採暖具。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電源接続部から前記電源出力部へ電流を遅延させることを特徴とする請求項1に記載の面状採暖具。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電源接続部から前記電源出力部へ電流を、一定時間が経過するまで、または前記発熱部のPTCヒータの温度が一定温度以上になるまで、または前記発熱部のPTCヒータに流れる電流が一定以下になるまでの少なくともいずれか1つの要件を満たすまで遅延させることを特徴とする請求項1または2に記載の面状採暖具。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電源接続部から電源が供給されてから前記電源出力部に対して時間の経過に応じて徐々に電圧を増やすように電源を供給することを特徴とする請求項1に記載の面状採暖具。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電源接続部から電源が供給されてから前記電源出力部に対して時間の経過に応じて段階的に電圧を増やすように電源を供給することを特徴とする請求項4に記載の面状採暖具。
【請求項6】
前記電源接続部は、前記基台部の一つの辺に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の面状採暖具。
【請求項7】
複数の面状採暖具が接続された面状採暖システムであって、
前記複数の面状採暖具のうち一つの面状採暖具は、
PTCヒータで構成される発熱部と、
外部電源と接続されると共に前記発熱部に電流を供給するための電源接続部と、
前記電源接続部から供給された電源を他の面状採暖具に出力する電源出力部と、
前記電源接続部から前記電源出力部への通電を制御する制御部と、を備え
前記他の面状採暖具は、
PTCヒータで構成される発熱部を備え、前記電源接続部および前記制御部を備えていないことを特徴とする面状採暖システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状採暖具および面状採暖システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PTCヒータは、温度の上昇に伴い、電流が流れにくくなるため、簡単な構造で異常な加熱の防止ができ、特許文献1のようなPTCヒータを用いた採暖具である床暖房パネルが製造されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平4-129021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PTCヒータを用いた採暖具は、その特性上、それ以外の採暖具よりも突入電流が大きい。そのため、PTCヒータで構成された大面積の採暖具は、面積に比例して突入電流も大きくなり、電源をオンにしたときに、その面積に応じた突入電流により回路に過電流が流れ、ブレーカーの遮断等を引き起こす問題があった。
【0005】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、突入電流を抑えたPTCヒータによる面状採暖具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、PTCヒータで構成される発熱部と、前記発熱部に電流を供給するための電源接続部と、前記電源接続部から供給された電源を他の面状採暖具に出力する電源出力部と、前記電源接続部から前記電源出力部への通電を制御する制御部と、前記発熱部を支持する略矩形状の基台部と、を備え、前記電源出力部は、前記基台部の4辺にそれぞれ設けられ、前記発熱部と電気的に接続されており、かつ、それぞれ互いに電気的に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、突入電流を抑えたPTCヒータによる面状採暖具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の面状採暖具の構成を模式的に示す分解斜視図である。
図2】面状採暖具の平面図およびI-I’断面図である。
図3】発熱部の消費電流と温度との関係を示すグラフである。
図4】面状採暖具の内部構造およびシステムの構成を示す機能図である。
図5】面状採暖具の動作を示すフローチャートである。
図6】面状採暖具のシステムの消費電流と時間との関係を示すグラフである。
図7】第2の実施形態の面状採暖システムの構成を模式的に示す斜視図である。
図8】面状採暖具の分解斜視図である。
図9】上部ケースの構成を示す斜視図である。
図10】上部ケースの構成を示す底面図である。
図11】面状採暖具の機能構成の一例を示す図である。
図12】立ち上がり時間を説明するためのグラフである。
図13】面状採暖具の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態に係る面状採暖具について図面を参照して説明する。なお、説明を容易にするために、各図には必要に応じて、上側をUp、下側をLo、右側をRi、左側をLe、前側をFr、後側をRrとして示している。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る面状採暖具100の構成を模式的に示す分解斜視図である。図2(a)は、面状採暖具100の平面図である。図2(b)は面状採暖具100の平面図である図2(a)のI-I’線での断面図である。本実施形態の面状採暖具100は、電気カーペットであるものとする。
【0011】
面状採暖具100は、発熱部110と、電源接続部120と、電源出力部130と、制御部140と、外装部150と、を備える。
【0012】
発熱部110は、フィルムヒータで電流を熱に変換する。発熱部110は、上側から見て略矩形状である。発熱部110は、外装部150の中の2層に仕切られた上層に配置される。発熱部110は、PTCフィルムヒータ111と断熱材112で構成されている。
【0013】
PTCフィルムヒータ111は、電流を熱に変換する。PTCフィルムヒータ111は上側から見て略矩形状であり、例えば、1辺が44cmの正方形で1.0cm以下の厚さである。PTCフィルムヒータ111は、断熱材112の上に配置され、断熱材112とは、接着剤にて接合する。PTCフィルムヒータ111は、電気的に電源接続部120と接続されている。
【0014】
図3は面状採暖具100の発熱部110の消費電流と温度との関係を示すグラフである。
PTCフィルムヒータ111は、フィルムヒータのうち、図3のように、温度の上昇に伴い、電気抵抗が大きくなることで、電流が流れにくくなるというPTC特性を有している。よって、温度が最も低いときに消費電流は最も大きくなる。つまり、発熱開始時の消費電流である突入電流が、最も消費電流が大きい。
また、PTCフィルムヒータ111が発熱する熱量は、温度上昇に伴い、流れる電流に比例して、徐々に小さくなり、発熱する熱量と外気への熱の放射量がほぼ等しい状態で飽和する飽和状態となる。つまり、一定の温度以上となるような発熱をせず、一定の消費電流となる。
また、本実施形態ではフィルムヒータを用いたが、PTCヒータであるならば、別の種類でもよい。例えば、フィン状や棒状を用いてもよい。
【0015】
断熱材112は、PTCフィルムヒータ111で発生した熱の放射方向を調整する。
断熱材112は、発熱部110と同様に上から見て略矩形状である。また、PTCフィルムヒータ111の下に配置され、PTCフィルムヒータ111とは、接着剤にて接合する。
【0016】
電源接続部120は、電源から面状採暖具100に電力を供給する。電源接続部120は、差込プラグ121と、電源ケーブル122と、電源供給部123と、で構成される。電源接続部120は、例えば、ケーブル状で3.0mの長さである。
【0017】
差込プラグ121は、電源に接続され、面状採暖具100に電力を供給するためのコネクタである。差込プラグ121は、電源ケーブル122と接続される。差込プラグ121は、従来公知の構成が適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
電源ケーブル122は、電源より取得した電気を面状採暖具100に伝送する。図1および図2(a)では、電源ケーブル122の一部を隠れ線で図示している。電源ケーブル122は、差込プラグ121と電源供給部123との間に配置され、それぞれの部材を接続する。電源ケーブル122は、従来公知の構成が適用できるため、詳細な説明は省略する。また、電源ケーブル122は、何れの部位でも撓むことができるような可撓性を有している。
【0019】
電源供給部123は、電源接続部120と、発熱部110と制御部140を接続する。
図1および図2(a)では、電源供給部123を隠れ線で図示している。電源供給部123は、電源ケーブル122の両端のうち、差込プラグ121が接続されている側と逆側に接続される。本実施形態では、電源供給部123は、電源出力部130、制御部140と一体で構成されるが、別体で構成してもよい。
【0020】
電源出力部130は、他の面状採暖具100等に対して、電源を出力する機能を有する。図1および図2(a)では、電源出力部130を隠れ線で図示している。電源出力部130は、他の面状採暖具100等の差込プラグ121を接続するためのプラグ受けを有し、電気的に接続できる。
電源出力部130は、上記機能を果たす従来公知の構成が適用できるため、詳細な説明は省略する。本実施形態では、電源出力部130は、電源供給部123、制御部140と一体で構成されるが、別体で構成してもよい。
【0021】
制御部140は、電源接続部120から電源出力部130への通電を制御する。
図1および図2(a)では、制御部140を隠れ線で図示している。制御部140は、遅延部141と、遅延制御部142とを有する。制御部140は、電源接続部120、電源出力部130と電気的に接続する。本実施形態では、制御部140は、電源供給部123、電源出力部130と一体で構成されるが、別体で構成してもよい。
【0022】
図4は面状採暖具100の内部構造およびシステムの構成を示す機能図である。制御部140の内部構造について図4を参照して説明する。
制御部140は、電源接続部120と、電源出力部130と電気的に接続されており、面状採暖具100単体では閉回路となっている。例えば、図4では、面状採暖具100#1、#2、#3は、それぞれ別の面状採暖具100であり、それぞれの採暖具ごとに閉回路である。面状採暖具100において、制御部140が存在しない場合、電源接続部120と、電源出力部130とは、直接接続される。つまり、他の面状採暖具100を接続すると、例えば、面状採暖具100#1に、面状採暖具100#2を接続した場合、全体として閉回路が拡張し、発熱部110を構成するPTCフィルムヒータの面積も2倍となり、単体の場合と比較して、突入電流が大きくなる。そのため、面状採暖具100の接続を繰り返すことで、面状採暖具100の接続数に比例して、突入電流も大きくなり、発熱部110が飽和したときの消費電流との差も大きくなる。そのため、面状採暖具100の飽和時の消費電流ならば、過電流とならないが、突入電流の場合は、接続されている台数よりも小さい台数で過電流となる可能性がある。
【0023】
このような過電流を抑制するため、制御部140を電源接続部120と電源出力部130の間に配置することで、一定要件を満たすまで、電源接続部120から電源出力部130への電流を遅延するようにする。これにより、多数の機器が接続された場合でも面状採暖具100は、機器単体ごとに突入電流が発生することで、突入電流を抑えることができる。
【0024】
遅延部141は、電源接続部120で取得した電流を遅延制御部142が一定要件を満たしたと判定するまで遅延させる。遅延部141は、電源接続部120と、電源出力部130と、遅延制御部142と、電気的に接続されている。遅延部141は、リレー回路から構成されているが、他の種類の回路、機械的構造であってもよい。遅延部141は、上記機能を果たす従来公知のリレー回路の構成が適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
遅延制御部142は、制御部140が一定要件を満たしたかどうか判定し、一定の要件を満たす場合、遅延部141による電源接続部120から電源出力部130への電流の遅延を解除する。ここで、一定要件とは、遅延部141が電流を遅延させ始めてから一定時間が経過した場合、発熱部110のPTCフィルムヒータ111の温度が一定以上である場合、発熱部110のPTCフィルムヒータ111に流れる電流が一定以下である場合の
等のいずれか一つを満たす場合である。
【0026】
まず、遅延制御部142の要件のうち、遅延部141が電流を遅延させ始めてから一定時間が経過した場合の要件について説明する。
PTCフィルムヒータ111は、電流を流し始めると、PTCフィルムヒータ111の発熱する熱量と外気への熱の放射量がほぼ等しい状態である飽和状態に達するまで温度が上昇する。また、飽和状態の温度は、PTCフィルムヒータ111ごとに一定である。そのため、同じ種類のPTCフィルムヒータ111の飽和状態の温度は、同じ温度である。つまり、PTCフィルムヒータ111は、電流を流し始めてから一定の温度に達するまでの時間についても一定である。
【0027】
よって、遅延制御部142は、遅延部141に電流が流れ始めてから一定時間c1の経過が確認できれば、遅延部141が電源接続部120から電源出力部130への電流の遅延を解除しても、PTCフィルムヒータ111が十分に発熱されており、そのPTC特性により、消費電流が突入電流と比較して小さく、面状採暖具100同士を直列に接続した状態、つまり、数珠状に接続した接続先の面状採暖具100の開始による突入電流を足しても過電流は発生しない。このとき、遅延制御部142は一定時間c1を計測するためのタイマー機能を有する。
【0028】
次に、遅延制御部142の要件のうち、発熱部110のPTCフィルムヒータ111の温度が一定温度以上である場合の要件について説明する。
PTCフィルムヒータ111は、PTC特性を有する。そのため、PTCフィルムヒータ111が発熱による温度上昇により、PTCフィルムヒータ111の抵抗値は上昇する。ただし、電圧は一定のままである。ここで、一般的に、電流は電圧と抵抗値に反比例するため、PTCフィルムヒータ111の温度が上昇すると、逆に消費電流は小さくなる。
【0029】
つまり、PTCフィルムヒータ111が飽和状態の温度に近い温度である一定温度c2以上であるならば、遅延部141が電源接続部120から電源出力部130への電流の遅延を解除しても、そのPTC特性により、消費電流が突入電流と比較して小さく、数珠状に接続した接続先の面状採暖具100の開始による突入電流を足しても過電流は発生しない。このとき、遅延制御部142はPTCフィルムヒータ111の温度を計測するための温度センサー機能を有する。
【0030】
次に、遅延制御部142の要件のうち、発熱部110のPTCフィルムヒータ111に流れる電流が一定以下の要件について説明する。
発熱部110のPTCフィルムヒータ111に流れる電流が一定量c3以下であるならば、当然、数珠状に接続した接続先の面状採暖具100の開始による突入電流を足しても過電流は発生しない。このとき、遅延制御部142はPTCフィルムヒータ111に流れる電流を計測するための電流計の機能を有する。
【0031】
外装部150は、発熱部110と、電源接続部120と、電源出力部130と、制御部140と、を収納し、面状採暖具100の外装として機能する。外装部150は、表布部151と、上部ケース152と、下部ケース153と、で構成される。外装部150は、上側から見て略直方体状であるが、他の形状であってもよい。
【0032】
表布部151は、外装部150の表面側を構成する部材である。表布部151は、外装部150上に使用者が載ったときに使用者と接触する部分である。表布部151は、上部ケース152の上に敷かれている。表布部151は、上から見て略矩形状である。表布部151は、上部ケース152の上に配置され、上部ケース152とは、特に接合をしていないが、接着剤等の方法で接合してもよい。
【0033】
上部ケース152と、下部ケース153は、組み合わせることで、内部に発熱部110と、電源接続部120と、電源出力部130と、制御部140と、を収納するケースとなる。具体的には、蓋のない箱状である下部ケース153に蓋となる上部ケース152を組み合わせてケースとする身蓋箱状である。上部ケース152は上に表布部151を配置する。また、上部ケース152と、下部ケース153は、側面に組み合わせると重なり合う位置にそれぞれ孔を有する。本実施形態では、電源接続部120を構成する電源供給部123が外装部150の内部にある。そのため、上記の孔を通じて、電源接続部120は、外装部150より延伸させて外部の電源に接続する必要がある。また、孔は図1のように側面の全てに有していてもよいし、側面のいずれか一つにあるだけでもよい。
【0034】
また、下部ケース153は、図2(b)のように、上層と下層の2層に仕切られており、上層に発熱部110、下層に電源接続部120、電源出力部130、制御部140が配置されるが、別の場所に配置してもよい。
【0035】
図5は、実施形態の面状採暖具100の動作を示すフローチャートである。
以下、面状採暖具100の処理について図5のフローチャートを参照して説明する。図5のフローチャートは、面状採暖具100がコンセント等で電流を供給され、電源スイッチの状態をオンにし、通電状態となることで開始される。また、以下の処理はいずれの場合であっても面状採暖具100がコンセント等を抜く、または電源スイッチをオフにする等により電源の供給が停止し、通電状態を解除することで終了する。また、本フローチャートでは、面状採暖具100は、単体の状態または、電源出力部130に別の面状採暖具100を1台接続した状態であるとする。
【0036】
S101では、制御部140は、電源接続部120が電源から電流を発熱部110に流し、面状採暖具100を発熱させる。
【0037】
S102では、制御部140は、電源接続部120から電源出力部130に流れる電流を遅延させる。制御部140は、電源接続部120から電流を遅延部141に流す。遅延部141は、制御部140の遅延制御部142により一定要件を満たしたと判定されるまで電流を電源出力部130に流さず、電流を遅延させる。
【0038】
S103では、制御部140は、面状採暖具100の電源接続部120から電源出力部130に流れる電流を遅延解除させる要件を満たすかどうか判定する。
ここで、遅延解除とは、制御部140が電源接続部120から電源出力部130に電流を流すことをいう。
制御部140は、一定時間の経過、一定温度以上の発熱、一定以下の電流のいずれかの要件を満たすとき、電源接続部120から電源出力部130に流れる電流の遅延を解除する。このとき、面状採暖具100の消費電流は、突入電流と比較して十分に小さいため、面状採暖具100に別の面状採暖具100が接続されていても、別の面状採暖具100の突入電流を足しても過電流とならない。遅延解除の要件を満たすならばS104に進み、満たさないならばS103の処理を再度繰り返す。
【0039】
S104では、制御部140は、電源接続部120から電源出力部130に流れる電流の遅延を解除する。制御部140が、遅延を解除することで、電流が電源接続部120から電源出力部130に流れる。また、面状採暖具100に別の面状採暖具100が接続されていたならば、別の面状採暖具100に電流が流れ、同様の処理をする。また、本フローチャートでは、面状採暖具100は機器単体または、面状採暖具100に別の面状採暖具100を1台接続した状態で説明したが、それ以上に接続した場合であっても同様の処理を繰り返す。
【0040】
次に、面状採暖具100に他の面状採暖具100が複数接続するシステムについて説明する。
図6は、面状採暖具100のシステムの消費電流と時間との関係を示すグラフである。
制御部140は、一定要件を満たした場合、電源接続部120から電源出力部130への電流の遅延を解除するが、ここでは、遅延を解除する要件が、遅延部141が電流を遅延させ始めてから一定時間が経過した場合として説明する。
【0041】
面状採暖具100は、図4のように、その電源出力部130に同種類で別の面状採暖具100の電源接続部120を接続することを繰り返すことで、数珠状に接続できる。また、各面状採暖具100は、電源接続部120から電源出力部130へ流れる電流を遅延させ、遅延解除要件を満たした場合、それぞれ電源接続部120から電源出力部130への電流の遅延を解除する。
【0042】
例えば、図4の面状採暖具100#1は、面状採暖具100#2が電源出力部130に接続されている。面状採暖具100#1は、電源に接続すると、発熱部110が発熱を開始する。また、制御部140により、電源接続部120から電源出力部130への電流は、遅延する。
【0043】
制御部140が遅延開始から一定時間が経過したことを判定すると、制御部140は、電源出力部130への遅延を解除し、電源出力部130に電流が流れる。電源出力部130には、面状採暖具100#2の電源接続部120が接続されており、面状採暖具100#2の発熱部110が、発熱を開始する。
また、面状採暖具100#2の制御部140は、電源接続部120から電源出力部130への電流を遅延させる。面状採暖具100#2の制御部140が、同様に、遅延開始から一定時間が経過したことを判定すると、面状採暖具100#2の制御部140は、面状採暖具100#1の場合と同様に、電源出力部130への電流の遅延を解除する。そして、面状採暖具100#2の電源出力部130には、面状採暖具100#3の電源接続部120が接続されており、面状採暖具100#3の発熱部110が、発熱を開始する。本実施形態では、3台の接続となっているが、以降、数珠状の最後に接続された面状採暖具100まで同様に動作する。
【0044】
このとき、面状採暖具100の突入電流をa、PTCフィルムヒータ111が、発熱する熱量と外気への熱の放射量がほぼ等しい状態で飽和したときの消費電流をbとする。また、飽和した時の電流bはPTC特性より突入電流aよりも小さい。
電源接続部120から電源出力部130へ流れる電流を遅延させ始めてから、遅延解除の要件を満たすまでの一定の時間をtとして、面状採暖具100#1を開始すると、その直後の消費電流は突入電流であるためaである。そして、遅延開始から時間tが経過すると、制御部140が電源接続部120から電源出力部130への遅延を解除し、電源出力部130に接続されている面状採暖具100#2に通電が開始される。このとき、面状採暖具100#1の消費電流は、PTCフィルムヒータ111の飽和時の消費電流bであり、面状採暖具100#1と#2の消費電流の合計はa+bである。つまり、面状採暖具100#1と#2を同時に開始した場合の消費電流、2台分の突入電流2aよりも小さい。
【0045】
面状採暖具100#2に通電が開始されると、面状採暖具100#2の電源接続部120から電源出力部130へ流れる電流を遅延が開始される。面状採暖具100#1と同様に、面状採暖具100#2の電源接続部120から電源出力部130へ流れる電流の遅延開始から時間t(面状採暖具100#1の遅延開始から2t)が経過すると、面状採暖具100#2の制御部140が電源接続部120から電源出力部130への遅延を解除し、面状採暖具100#2の電源出力部130に接続されている面状採暖具100#3に通電
が開始される。このとき、面状採暖具100#2単体の消費電流は、PTCフィルムヒータ111の温度上昇が飽和しているため、飽和時の消費電流bであり、面状採暖具100#1と#2の消費電流の合計は2bである。また、面状採暖具100#1~#3までの消費電流の合計はa+2bである。つまり、面状採暖具100#1~#3を同時に開始した場合の消費電流、つまり3台分の突入電流3aよりも小さい。
【0046】
ここで、過電流となる基準電流がa+2bより大きく、3aより小さい間にあるとすると、面状採暖具100を3台同時に開始すると、突入電流は3aであるため、過電流が流れる。しかし、本実施形態のように面状採暖具100を接続して、#1から順次開始した場合、3台同時に稼働したとしても、消費電流は、最大でも面状採暖具100#3を開始した時に発生する、面状採暖具100#1と#2の飽和時の消費電流と面状採暖具100#3単体の突入電流aの合計であるa+2bであり過電流となる基準を超えない。
【0047】
このように、本実施形態の面状採暖具100によれば、PTCフィルムヒータで構成される発熱部110と、前記発熱部に電流を出力するための電源接続部120と、前記電源接続部120から供給された電源を他の面状採暖具に出力する電源出力部130と、前記電源接続部から前記電源出力部への通電を制御する制御部140と、を備える。
制御部140は、一定要件を満たすまで、電源接続部120から電源出力部130への電流を遅延するようにする。電源出力部130は、消費電流が突入電流よりも小さい状態で、接続された別の面状採暖具100に対して電流を出力することで、複数の面状採暖具100を同時に開始した場合、または、複数の面状採暖具100の合計出力と同出力の面状採暖具の突入電流よりも突入電流を抑えることができる。
【0048】
本実施形態では、電源出力部130は発熱部110が覆う空間の中央に配置されているが、それ以外の位置に配置してもよい。例えば、下部ケース153の左前方部分への配置や、外装部150の外部に配置する等の外周以外の部分への配置である。
【0049】
本実施形態では、外装部150はその側面全てに孔を有していたが、いずれかの側面のみであってもよい。
また、電源出力部130と、制御部140は一体となって配置されているが、それぞれの部材ごとに別の位置に配置されていてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、電源接続部120から電源出力部130への通電の制御方法として電流を遅延させているが、それ以外の方法であってもよい。
【0051】
本実施形態では、面状採暖具100を3台数珠状に接続した場合について説明したが、電源の出力によっては、3台以外の接続、例えば4台以上の接続や、単体、2台での接続であってもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る面状採暖システム20の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
本実施形態の面状採暖システム20は、複数の面状採暖具200を面方向に接続することで使用者の所望する任意の大きさに増設することができる。面状採暖システム20は、外部から電源が供給される親ユニットとしての面状採暖具200aと、面状採暖具200aを含む他の面状採暖具を通して電源が供給される子ユニットとしての面状採暖具200bとの2種類から構成される。図7に示す面状採暖システム20は、1つの面状採暖具200aと、5つの面状採暖具200bとを有しており、左右方向に沿って3つ、前後方向に沿って2つが接続されている。なお、親ユニットと子ユニットとを区別する必要がない場合には単に面状採暖具200として説明する。
【0053】
面状採暖具200aと面状採暖具200bは、互いに外形が同一サイズである。また、面状採暖具200a、200bは、上側から見て略矩形状であって、左右方向の長さと前後方向の長さとが同一の正方形である。したがって、使用者が面状採暖具200a、200bを他の面状採暖具200a、200bに接続する場合に、縦横の向きを気にすることなく接続することができる。本実施形態の面状採暖具200a、200bは左右方向の長さと前後方向の長さが略200mmであるが、左右方向の長さと前後方向の長さは150mm~600mmの範囲であってもよく、寸法は限定されない。
【0054】
図8は、面状採暖具200aの分解斜視図である。
面状採暖具200aは、発熱部210、圧力スイッチ部220、基台部230、面状部240を備える。面状部240、発熱部210、圧力スイッチ部220は、上側から順に積層された積層体260として構成される。
【0055】
面状部240は、発熱部210と圧力スイッチ部220とを上側から覆う敷物部として機能する。面状部240は、上側から見て略矩形状である。面状部240は、例えばフェルト等を用いた単一の層で構成してもよく、複数の層で構成してもよい。複数の層で構成する場合には、面状部240は使用者が接触する表面部と、表面部の下面で使用者に弾力性を与えるクッション部とから構成することができる。表面部には、模様を施すことができるようにシート状のポリ塩化ビニル(PVC)等を用いることができる。また、面状部240は、上端の4辺からそれぞれ下側に向かって折り返されており、発熱部210および圧力スイッチ部220を側方から覆う。また、面状部240は、下端の4辺から中央側に向かって折り返されており、発熱部210および圧力スイッチ部220の一部を下側からも覆う。このように、面状部240は、発熱部210と圧力スイッチ部220とを一体化するように包み込んでいる。
【0056】
発熱部210は、圧力スイッチ部220の状態に応じて発熱する。発熱部210は、上側から見て略矩形状である。発熱部210は、面状部240と圧力スイッチ部220との間に配置される。発熱部210は、PTCヒータとしてのPTCフィルムヒータ211と、断熱材212とを有する。PTCフィルムヒータ211は、電流を熱に変換する。断熱材212は、PTCフィルムヒータ211で発生した熱の放射方向を調整する。このように発熱部210にPTCフィルムヒータ211を用いることで、発熱部210は飽和状態を維持するために、発熱部210の温度をコントロールするための温度制御部を別途、設ける必要がない。
なお、本実施形態ではPTCフィルムヒータを用いたがこの場合に限られず、例えば、フィン状や棒状のPTCヒータを用いてもよい。
【0057】
圧力スイッチ部220は、面状採暖具200aの使用状態および不使用状態を検知する。ここで、使用状態とは、面状採暖具200aの面状部240上に使用者が載ることで、圧力スイッチ部220が圧力を検知した状態をいう。一方、不使用状態とは、面状採暖具200aの面状部240上に使用者が載らないことで、圧力スイッチ部220が圧力を検知しない状態をいう。すなわち、圧力スイッチ部220は、圧力を検知することで、面状採暖具200aの使用状態を検知できる。また、圧力スイッチ部220は、圧力を検知しないことで、面状採暖具200aの不使用状態を検知できる。
【0058】
圧力スイッチ部220は、上側から見て略矩形状である。圧力スイッチ部220は、発熱部210の下側に配置される。圧力スイッチ部220は、シートスイッチ部221と、シート取付部222とを有する。シートスイッチ部221は、面状採暖具200aの面状部240上にかかる圧力を検知する。シート取付部222は、シートスイッチ部221の下側に位置して、シートスイッチ部221が基台部230に接しないように保護する。
【0059】
基台部230は、床面に接地して、上側から面状部240、発熱部210、圧力スイッチ部220の順に積層された積層体260と、面状部240上に載った使用者とを支持する。積層体260は、基台部230に対して離脱可能に取り付けられる。また、基台部230は、上側から見て略矩形状であって、全体が略直方体であり、内部に後述する各部品を収納する空間が形成される。基台部230は、上部ケース231と、下部ケース241とを有する。
【0060】
図9は、上下に反転させた状態の上部ケース231の構成の一例を示す斜視図である。図10は、上部ケース231を下側から見た底面図である。
上部ケース231は、基台部230の上側に位置する。上部ケース231は、上面部232と、4つの側面部233a~233dとを有する。上部ケース231の中央には基板234が取り付けられている。基板234は、外縁に複数の端子台235a~235cが固定される。親ユニットとしての面状採暖具200aは、側面部233aに外部電源と接続する電源接続部236が取り付けられる。図7に示すように、電源接続部236に電源コード201が差し込まれることで、電源コード201を介して外部電源から面状採暖具200aに電源が供給される。電源接続部236に繋がる2芯のケーブルは、基板234に固定された端子台235aの端子に繋がるように配線される。なお、子ユニットとしての面状採暖具200bは、他の面状採暖具200から電源が入力されることから電源接続部236を有していない。
【0061】
また、親ユニットおよび子ユニットの面状採暖具200a、200bは、共通して基台部230の4辺それぞれの辺に電源入出力部237a~237dを有する。具体的に、電源入出力部237a~237dは、上部ケース231の側面部233a~233dのそれぞれ幅方向の中央に切り欠かれた位置に取り付けられる。電源入出力部237a~237dは、他の面状採暖具200から電源を入力したり他の面状採暖具200に対して電源を出力したりするための部位である。電源入出力部237a~237dは、それぞれ幅方向に離れた位置に一対の電極238(第1の電極238、第2の電極238)を有する。一対の電極238は、それぞれ上部ケース231の内側から外側に向かうにしたがって下側になるように斜めに突出するバネ性を有する板金部材である。一対の電極238に繋がる2芯のケーブルは、それぞれ基板234に固定された端子台235a、235bの端子に繋がるように配線される。
【0062】
図10に示すように、基板234には電源入出力部237a~237dがそれぞれ互いに電気的に接続するように回路パターン239が形成される。親ユニットとしての面状採暖具200aでは、外部電源から電源接続部236に供給された電源が回路パターン239を介して4つの電源入出力部237a~237dに供給される。なお、親ユニットとしての面状採暖具200aの電源入出力部237a~237dは、電源接続部236に供給された電源を主に他の面状採暖具200bに対して出力することから電源出力部として機能する。一方、子ユニットとしての面状採暖具200bでは、他の面状採暖具200から、例えば電源入出力部237aを通じて入力された電源は回路パターン239を介して3つの電源入出力部237b~237dに供給される。
なお、複数の面状採暖具200を接続させた場合、電源入出力部237a~237dは隣り合う面状採暖具200の電源入出力部237a~237dとの間で隣接するように位置する。
【0063】
また、上部ケース231の上面部232は、PTCフィルムヒータ211に繋がるケーブルおよびシートスイッチ部221に繋がるケーブルを基台部230内に導くための貫通孔244を有する。PTCフィルムヒータ211に繋がるケーブルおよびシートスイッチ部221に繋がるケーブルは貫通孔244を挿通した後、それぞれ基板234に固定された端子台235b、235cの端子に繋がるように配線される。
【0064】
下部ケース241は、基台部230の下側に位置する。図8に示すように、下部ケース241は、底面部242と、4つの側面部243a~243dとを有する。側面部243a~243dは、それぞれ幅方向の中央に底面部242の中心側に向かって凹んだ凹部を有する。
【0065】
また、面状採暖システム20は、電源入出力部237a~237dを通じて他の面状採暖具200から電源を入力したり他の面状採暖具200に対して電源を出力したりするための接続部材250を有する。接続部材250を隣り合う面状採暖具200同士の2つの電源入出力部237a~237d間に跨るように配置することで、隣接する電源入出力部237a~237d同士が接続部材250を介して電気的に接続される。図8および図9に示すように、接続部材250は、隣り合う面状採暖具200同士の2つの電源入出力部237a~237d間に跨るように位置することで、電源入出力部237a~237dに対して上下に重なり合い、上部ケース231の側面部233a~233dの幅方向の中央の切り欠きに入り込むと共に、下部ケース241の幅方向の中央の凹部に入り込む。接続部材250は、上面の幅方向に離れた位置に一対の電極251を有する。電極251は、例えば、板金部材やスクリーン印刷した電極が用いられる。接続部材250を隣り合う面状採暖具200同士の2つの電源入出力部237a~237d間に跨るように配置することで、一対の電極251のうち一方の電極251が、隣接する一方の電源入出力部237a~237dの第1の電極238と、隣接する他方の電源入出力部237a~237dの第1の電極238に接地する。また、一対の電極251のうち他方の電極251が、隣接する一方の電源入出力部237a~237dの第2の電極238と、隣接する他方の電源入出力部237a~237dの第2の電極238に接地する。したがって、面状採暖具200を増設するごとに接続部材250を介して面状採暖具200同士を電気的に接続することで、増設した面状採暖具200に電源を供給することができる。
【0066】
図7に示す面状採暖システム20の例では、面状採暖具200の4辺のうち2辺で他の面状採暖具200が隣り合う場合には該2辺で接続部材250を介して他の面状採暖具200と電気的に接続する。また、面状採暖具200の4辺のうち3辺で他の面状採暖具200が隣り合う場合には該3辺で接続部材250を介して他の面状採暖具200と電気的に接続する。同様に、面状採暖具200の4辺で他の面状採暖具200が隣り合う場合には4辺で接続部材250を介して他の面状採暖具200と電気的に接続する。このように、隣り合う全ての面状採暖具200との間で接続部材250を介して電気的に接続することで、増設された面状採暖具200は電気的に接続された他の面状採暖具200を通して複数の経路から電源が入力される。したがって、面状採暖具200は、接続されている一つの面状採暖具200が故障することで電源を出力することができない状態であっても他の面状採暖具200を通じた経路から電源が入力されるので、他の面状採暖具200を通じて入力された電源を用いて発熱部210を発熱させたり、他の面状採暖具200に電源を出力させたりすることができる。
【0067】
図11(a)は親ユニットとしての面状採暖具200aの機能構成の一例を示す図であり、図11(b)は子ユニットとしての面状採暖具200bの機能構成の一例を示す図である。なお、図11のうち上述した構成と同一の構成については、同一符号を付して適宜、説明を省略する。なお、面状採暖具200a、200bはそれぞれ単体で閉回路になっている。
図11(a)に示すように、親ユニットとしての面状採暖具200aは、発熱部210、圧力スイッチ部220、電源接続部236、電源入出力部237a~237d、発熱制御部261、電源制御部262を有する。
【0068】
発熱部210は、発熱制御部261および電源制御部262を介して電源接続部236に電気的に接続されており、電源接続部236に供給された電源からの電流が流れることで熱に変換する。圧力スイッチ部220は、発熱制御部261に電気的に接続される。電源接続部236は、電源制御部262を介して電源入出力部237a~237dに電気的に接続される。電源入出力部237a~237dは、それぞれ互いに電気的に接続されている。
【0069】
発熱制御部261は、圧力スイッチ部220の状態に応じて発熱部210の発熱を制御する。発熱制御部261は、圧力スイッチ部220と、発熱部210に電気的に接続されており、圧力スイッチ部220と発熱部210との間に位置する。また、発熱制御部261は、電源制御部262を介して電源接続部236と電気的に接続される。
ここで、発熱制御部261は、圧力スイッチ部220から圧力を検知している状態であるか、圧力を検知していない状態であるかの情報を取得する。発熱制御部261は、圧力スイッチ部220が圧力を検知している場合には、電源接続部236に供給されている電源からの電流を発熱部210に対して流すように許容する。一方、発熱制御部261は、圧力スイッチ部220が圧力を検知していない場合には、電源接続部236から供給されている電源からの電流を発熱部210に対して流さないように停止する。
【0070】
したがって、面状採暖具200aが使用されていない場合には、発熱部210に電流が流れずに発熱部210は発熱しないことから省電力化を図ることができる。なお、発熱部210に電流が流れない場合であっても、電源接続部236から供給されている電源は、電源制御部262を介して電源入出力部237a~237dに供給されることから電源入出力部237a~237dから他の面状採暖具200に電源を出力することができる。すなわち、電源入出力部237a~237dは、圧力スイッチ部220により使用状態が検知されているか否かにかかわらず、電源を出力することができる。
発熱部210にPTCヒータを用いているので、発熱制御部261は発熱部210の温度を制御する必要がなく単に発熱部210に電流を流すか否かを制御するだけでよいために発熱制御部261の構成を簡素化することができる。本実施形態の発熱制御部261はサイリスタを用いているが、別の素子や回路であってもよい。また、本実施形態の発熱制御部261は、基台部230の基板234に実装されるが、基板234以外に実装されていてもよい。
【0071】
電源制御部262は、電源接続部236から電源入出力部237a~237dへの通電を制御する。電源制御部262は、電源接続部236と、電源入出力部237a~237dに電気的に接続されており、電源接続部236と電源入出力部237a~237dとの間に位置する。ここで、電源制御部262が存在せず、かつ、発熱制御部261が電流を発熱部210に対して流すように許容している場合には、電源接続部236と発熱部210とが直接接続される。更に、面状採暖具200aの他に一つの面状採暖具200bが接続され、面状採暖具200aの電源入出力部237a~237dと他の面状採暖具200bの電源入出力部237a~237dとが電気的に接続されると、全体として閉回路が拡張し、発熱部210を構成するPTCフィルムヒータの面積も2倍となり、単体の場合と比較して、突入電流が大きくなる。そのため、面状採暖具200の接続を繰り返すことで、面状採暖具200の接続数に比例して、突入電流も大きくなり、発熱部210が飽和したときの消費電流との差も大きくなる。そのため、面状採暖具200の飽和時の消費電流ならば、過電流とならないが、突入電流の場合は、接続されている台数よりも小さい台数で過電流となる可能性がある。
【0072】
このような過電流を抑制するため、電源制御部262は、電源接続部236から電源が供給されてから電源入出力部237a~237dに電源を供給するまでに立ち上がり時間Tを設定して、電源入出力部237a~237dに対して電源を緩やかに供給する。これにより、多数の子ユニットとしての面状採暖具200bが接続された場合でも親ユニットとしての面状採暖具100aにより制限された電源が面状採暖具200bに入力されることで、突入電流を抑えることができる。
【0073】
図12は、立ち上がり時間Tを説明するためのグラフであり、横軸が時間を示し、縦軸が電圧を示している。ここでは、電源接続部236に交流電圧100[V]の電源が供給されているものとする。電源制御部262は、時間0[t]で電源接続部236から電源が供給された場合であっても直ぐに電源入出力部237a~237dに対して最大の電圧値を出力せずに、0[V]から時間の経過に応じて徐々に電圧を増やしていき、立ち上がり時間Tで最大の電圧値になるように出力する。立ち上がり時間Tは、例えば、30秒間~30分間等の間で予め定められた時間であるが、具体的な時間は限定されない。
なお、図12では、0[V]から最大の電圧値まで時間の経過に応じて連続的に電圧を増やす場合について図示しているが、時間の経過に応じて段階的に電圧を増やすようにしてもよい。具体的には、0[t]~T×1/2[t]までをa1[V]とし、T×1/2[t]~T[t]までをa2[V](a2>a1)とし、T[t]以降で最大値になるように段階的に増やすことができる。
【0074】
電源制御部262は、交流電流の周期毎にオン時間とオフ時間との割合を変化させて出力電圧を制御する位相制御を用いて、オン時間の割合を連続的あるいは段階的に増やすことで、時間の経過に応じて徐々に電圧を増やすことができる。本実施形態の電源制御部262はサイリスタを用いているが、別の素子や回路であってもよい。また、本実施形態の電源制御部262は、基台部230の基板234に実装されるが、基板234以外に実装されていてもよい。
【0075】
一方、図11(b)に示すように、子ユニットとしての面状採暖具200bは、発熱部210、圧力スイッチ部220、電源入出力部237a~237d、発熱制御部261を有する。子ユニットとしての面状採暖具200bは、親ユニットとしての面状採暖具200aとは異なり、電源接続部236および電源制御部262を有していない。したがって、子ユニットとしての面状採暖具200bは、親ユニットとしての面状採暖具200aよりも製造コストを削減することができる。
【0076】
発熱部210は、発熱制御部261を介して電源入出力部237a~237dに電気的に接続されており、電源入出力部237a~237dの少なくとも何れか一つに入力された電源からの電流が流れることで熱に変換する。圧力スイッチ部220は、発熱制御部261に電気的に接続される。電源入出力部237a~237dは、それぞれ互いに電気的に接続されており、少なくとも何れか一つに入力された電源を、接続された他の面状採暖具200bに出力するために他の電源入出力部237a~237dに供給する。
発熱制御部261による制御は、親ユニットとしての面状採暖具200aと同様であるために説明を省略する。
【0077】
図13は、面状採暖具200の動作を示すフローチャートである。
まず、面状採暖具200aの処理について図13のフローチャートを参照して説明する。図13のフローチャートは、面状採暖具200aの電源接続部236に電源コード201が差し込まれ、電源コード201を介して外部電源から面状採暖具200aに電源が供給されることで開始される。また、電源コード201が取り外されて面状採暖具200aに電源が供給されなくなることで終了する。また、本フローチャートでは、面状採暖具200aは、単体の状態または、電源入出力部237a~237dの何れか一つに他の面状採暖具200bを1台接続した状態であるとする。
【0078】
S201では、電源制御部262は、電源接続部236から供給された電源を電源入出力部237a~237d、および、発熱部210に対して徐々に供給する。したがって、他の面状採暖具200bが接続されている場合でも突入電流を抑えることができる。
【0079】
S202では、発熱制御部261は、面状採暖具200aが使用状態であるか否かを判定する。具体的に、発熱制御部261は、圧力スイッチ部220が圧力を検知している状態である場合に面状採暖具200aが使用状態であると判定し、圧力スイッチ部220が圧力を検知していない状態である場合には面状採暖具200aが不使用状態であると判定する。面状採暖具200aが使用状態である場合にはS203に進み、不使用状態である場合にはS204に進む。
【0080】
S203では、発熱制御部261は、電源接続部236に供給されている電源からの電流を発熱部210に対して流すように許容する。したがって、面状採暖具200aの発熱部210が発熱するので、面状採暖具200aに載っている使用者を暖めることができる。
S204では、発熱制御部261は、電源接続部236から供給されている電源からの電流を発熱部210に対して流さないように停止する。したがって、面状採暖具200aの発熱部210の発熱が停止するので、不要な発熱を抑制することができ省電力化を図ることができる。なお、発熱制御部261は、S203の場合よりも小さい電流を流してS203の場合よりも発熱部210が発熱しないようにしてもよい。
以降、発熱制御部261は、電源コード201が取り外されるまでS202~S204までの処理を繰り返して行う。
【0081】
次に、面状採暖具200bの処理について図13のフローチャートを参照して説明する。
面状採暖具200bの処理は、図13のフローチャートのうちS201を除いたS202~S204の処理を繰り返し行う。以下では、面状採暖具200aの処理と異なる処理を中心にして説明する。なお、電源入出力部237a~237dのうち少なくとも何れか一つから入力されている電源は、他の面状採暖具200が接続された電源入出力部237a~237dからそれぞれ出力される。
S202では、発熱制御部261は、面状採暖具200bが使用状態であるか否かを判定する。面状採暖具200bが使用状態である場合にはS203に進み、不使用状態である場合にはS204に進む。
【0082】
S203では、発熱制御部261は、電源入出力部237a~237dのうち少なくとも何れか一つから入力されている電源からの電流を発熱部210に対して流すように許容する。したがって、面状採暖具200bの発熱部210が発熱するので、面状採暖具200bに載っている使用者を暖めることができる。
S204では、発熱制御部261は、電源入出力部237a~237dのうち少なくとも何れか一つから入力されている電源からの電流を発熱部210に対して流さないように停止する。したがって、面状採暖具200bの発熱部210の発熱が停止するので、不要な発熱を抑制することができ省電力化を図ることができる。なお、発熱制御部261は、S203の場合よりも小さい電流を流してS203の場合よりも発熱部210が発熱しないようにしてもよい。
以降、発熱制御部261は、親ユニットしての面状採暖具200aの電源コード201が取り外されるまでS202~S204までの処理を繰り返して行う。
【0083】
このように、本実施形態の面状採暖具200a、200bは、圧力スイッチ部220、および、発熱部210としてのPTCヒータを支持する矩形状の基台部230と、基台部230の4辺にそれぞれ設けられ、PTCヒータと電気的に接続されていると共に、他の面状採暖具200a、200bとの間で電源を出力または入力するための複数の電源入出力部237a~237dと、を備え、複数の電源入出力部237a~237dは、それぞれ互いに電気的に接続されている。したがって、複数の面状採暖具200a、200bを接続した場合であっても、不使用状態の面状採暖具200a、200bを発熱させないようにすることができる。
【0084】
また、本実施形態の面状採暖具200aの電源制御部262は、電源接続部236から電源が供給されてから電源入出力部237a~237dに対して時間の経過に応じて徐々に電圧を増やすように電源を供給する。したがって、複数の面状採暖具200a、200bが接続されている場合でも突入電流を抑えることができる。
【0085】
なお、本実施形態の面状採暖具200aは、電源制御部262を有する場合について説明したが、この場合に限られず、電源制御部262を有していなくてもよい。電源制御部262がない場合であっても、発熱制御部261は使用状態である場合のみ電流を発熱部210に対して流すように許容することで、使用状態ではない面状採暖具200a、200bの発熱部210に対して電流を流さないために、突入電流を抑えることができる。
【0086】
また、本実施形態の面状採暖具200a、200bは、圧力スイッチ部220および発熱制御部261を有する場合について説明したが、この場合に限られず、圧力スイッチ部220および発熱制御部261を有していなくてもよい。この場合には、面状採暖具200a、200bが使用状態であるか否かにかかわらず発熱部210に電流が流れることで発熱部210がいつでも発熱しているために、使用者が何れの面状採暖具200a、200bの面状部240に載っても使用者を暖めることができる。
【0087】
また、本実施形態の面状採暖具200aは、基台部230の4辺それぞれの辺に電源入出力部237a~237dを有する場合について説明したが、この場合に限られず、4辺のうち電源接続部236が設けられている辺には電源入出力部を有していなくてもよい。
また、本実施形態の面状採暖システム20は、面状採暖具200aと面状採暖具200bとが異なる構成である場合について説明したが、この場合に限られず、全てが面状採暖具200aと同一の構成であってもよい。
【0088】
以上、本発明を種々の実施形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、実施形態および変形例を適宜、組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
100:面状採暖具 110:発熱部 111:PTCフィルムヒータ 112:断熱部 120:電源接続部 121:差込プラグ 122:電源ケーブル 123:電源供給部 130:電源出力部 140:制御部 141:遅延部 142:遅延制御部 150:外装部 151:表布部 152:上部ケース 153:下部ケース 20:面状採暖システム 200:面状採暖具 200a、200b:面状採暖具 210:発熱部 220:圧力スイッチ部 230:基台部 236:電源接続部 237a~237d:電源入出力部 261:発熱制御部 262:電源制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13