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特許7613745電解コンデンサ用の電解液及び電解コンデンサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電解コンデンサ用の電解液及び電解コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/035 20060101AFI20250107BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20250107BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/145
H01G9/15
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021526138
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 JP2020023052
(87)【国際公開番号】W WO2020250982
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2019109812
(32)【優先日】2019-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236953
【氏名又は名称】富山薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋本 啓太
(72)【発明者】
【氏名】石田 晃浩
(72)【発明者】
【氏名】佐野 信
(72)【発明者】
【氏名】原部 実成
(72)【発明者】
【氏名】永山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】浦本 昌英
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-245041(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159243(WO,A1)
【文献】特開昭55-052214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/035
H01G 9/14
H01G 9/145
H01G 9/15
H01G 11/58
H01M 10/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に誘電体酸化被膜層を有する陽極箔、陰極箔、及び固体電解質層を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に含浸された電解液と、を有する電解コンデンサ用の電解液であり、
前記電解液が、下記の(a)及び/又は(b)の化合物を含有する有機溶媒からなり、下記5‐スルホサリチル酸又は4‐スルホサリチル酸の含有量が、3~40質量部であることを特徴とする電解コンデンサ用の電解液。
(a)5‐スルホサリチル酸又は4‐スルホサリチル酸、及びホウ酸
(b)5‐スルホサリチル酸又は4‐スルホサリチル酸、及びホウ酸の複合化合物
【請求項2】
更に、アンモニア、又は1~4級アミンを含有する請求項に記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項3】
前記有機溶媒が、ポリアルキレングリコール、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール又はベンジルアルコールである請求項1又は2に記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項4】
前記ホウ酸の含有量が、前記5‐スルホサリチル酸又は4‐スルホサリチル酸の1モルに対して、0.1モル以上である請求項1~のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項5】
前記5‐スルホサリチル酸又は4‐スルホサリチル酸及びホウ酸の複合化合物の含有量が、0.05質量部以上である請求項1~のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項6】
水分含有量が0.5質量%以下である請求項1~のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項7】
pHが、2~6である請求項1~のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項8】
更に、ニトロ化合物からなる添加物を含有する請求項1~のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項9】
前記固体電解質層が、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、又はそれらの誘導体の層である、請求項1~のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【請求項10】
請求項1~のいずれかに記載の電解液を使用する電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過酷な環境下でも、長期にわたって低いESRなどの高性能を維持できる電解コンデンサ用の電解液及びこの電解液を用いた電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、AV機器や車載用の電装機器などにおいては、高信頼化の要望がますます高まっている、そこで使用される電解コンデンサ用においても、小型、大容量、高周波領域における等価直列抵抗(以下、ESRともいう。)などの性能の向上が必要になっている。
【0003】
特に、電子機器の高周波化に伴い、電解コンデンサにおいても、高周波領域での等価直列抵抗(以下、ESRという)特性に優れた大容量の電解コンデンサが求められてきている。最近では、このような高周波領域におけるESRを低減するために、電解質として従来の駆動用電解液よりも電気伝導度の高い導電性ポリマー等の固体電解質又は固体電解質と電解液とを備えた電解コンデンサが検討され製品化されている。
【0004】
具体的には、ポリピロール、ポリチフェン、ポリアニリンなどの導電性ポリマーからなる固体電解質とともに、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸、サリチル酸などのアンモニウム塩、アミン塩や、サリチル酸とほう酸の複合化合物であるボロジサリチル酸のアンモニウム、アミン塩などを含有し、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、エチレングリコールなどの有機溶媒からなる電解液を含む電解コンデンサが使用されている。かかる電解コンデンサは、大容量を有し、かつ漏れ電流も小さいことから、高特性を有する電解コンデンサとして知られている(特許文献1~3参照)。
【0005】
また、特許文献4には、固体電解質層と電解液を備えた電解コンデンサであり、固体電解質層がπ共役系導電性高分子と第1スルホン酸とを含み、電解液が溶媒と第2スルホン酸とを含む酸成分とを含む電解コンデンサが知られている。この電解コンデンサの電解液には、電極の腐食を抑制しつつ、ESRを安定化させるために、上記酸成分が、第2スルホン酸とともに、カルボン酸、ホウ酸、ホスホン酸などの第三成分を含ませていてもよいことが開示され、この第三成分としてカルボン酸が好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5052746号公報
【文献】特開2015-165550号公報
【文献】特許第5305569号公報
【文献】国際公開(WO)2017/159243号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、車載用の電装機器などに使用される電解コンデンサおいては、最高使用温度が85~150℃となどの過酷な高温環境下において、しかも、長期にわたって、低いESRなどの高性能を維持できる特性が求められている。
本発明は、特に、車載用のAV機器や電装機器などにおける、最高使用温度が85~150℃となどの過酷な高温環境下においても、長期にわたって、低いESRを維持できる電解コンデンサ用の電解液及びこの電解液を用いた電解コンデンサの提供を目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、種々研究を重ねたところ、固体電解質層と電解液を備えた電解コンデンサであって、電解液が、下記の(a)及び/又は(b)の化合物を含有する場合に、過酷な高温環境下でも低いESRを維持できるという上記目的を達成し得ることを見出した。
(a)スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸、及びホウ素化合物。
(b)スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸及びホウ素化合物の複合化合物。
一方で、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸を含有する場合も、ホウ素化合物の代わりにカルボン酸化合物を含有する電解液、或いは、
ホウ素化合物を含有する場合も、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸の代わりに、例えば、ヒドロキシ基を有せずスルホ基のみを有する芳香族カルボン酸を含有する電解液では、上記の目的がほとんど達成されないことから上記の結果が得られることは予想外のことである。
【0009】
本発明は、上記の知見に基づくものであり、下記の態様を有する。
(1)表面に誘電体酸化被膜層を有する陽極箔、陰極箔、及び固体電解質層を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に含浸された電解液と、を有する電解コンデンサ用の電解液であり、
前記電解液が、下記の(a)及び/又は(b)の化合物を含有する有機溶媒からなることを特徴とする電解コンデンサ用の電解液。
(a)スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸、及びホウ素化合物
(b)スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸及びホウ素化合物の複合化合物
【0010】
(2)前記スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸が5-スルホサリチル酸である、上記(1)に記載の電解コンデンサ用の電解液。
(3)前記ホウ素化合物がホウ酸である上記(1)又は(2)に記載の電解コンデンサ用の電解液。
(4)更に、アンモニア、又は1~4級アミンを含有する上記(1)~(3)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
(5)前記有機溶媒が、ポリアルキレングリコール、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール又はベンジルアルコールである、上記(1)~(4)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【0011】
(6)前記スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸の含有量が、0.1質量部以上である上記(1)~(5)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
(7)前記ホウ素化合物の含有量が、前記スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸の1モルに対して、0.1モル以上である上記(1)~(6)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
(8)前記スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸及びホウ素化合物の複合化合物の含有量が、0.05質量部以上である上記(1)~(7)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
(9)水分含有量が0.5質量%以下である上記(1)~(8)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
(10)pHが、2~6である上記(1)~(9)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
(11)更に、ニトロ化合物からなる添加物を含有する上記(1)~(10)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
【0012】
(12)前記固体電解質層が、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、又はそれらの誘導体の層である、上記(1)~(11)のいずれかに記載の電解コンデンサ用の電解液。
(13)上記(1)~(12)のいずれかに記載の電解液を使用する電解コンデンサ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電解液によれば、最高使用温度が85~150℃となどの過酷な高温環境下においても、長期にわたって、大きい容量を維持することができ、かつ低いESRを維持できる電解コンデンサ用の電解液が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<電解コンデンサ>
本発明の電解液は、表面に誘電性酸化被膜層を有する陽極及び陰極、固体電解質を有するコンデンサ素子と、該コンデンサ素子に含浸された電解液と、を有する電解コンデンサに使用される。
本発明で使用する固体電解質は、ドーパント成分をドープした導電性ポリマーである。導電性ポリマーとしては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン又はそれらの誘導体が用いられる。
【0015】
本発明で使用する固体電解質層は、上記ドーパント成分の存在下で導電性ポリマーのモノマーを化学酸化重合又は電解酸化重合することによって得ることができる。もしくは、化学酸化重合によって微粒子状に形成された導電性ポリマーを水等の溶媒に分散した分散液又は溶解した溶液を接触させることで得ることができる。また、上記化学酸化重合又は電解酸化重合は、上記ドーパント成分及び導電性ポリマーのモノマーの一部又は全てを、化学酸化ドープが起こりうる官能基を有するモノマーに置き換えても良い。
【0016】
導電性ポリマーのモノマーは、具体的には、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、プロピル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、プロピル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、3,4-エチレンジオキシフラン、メチル-3,4-エチレンジオキシフラン、エチル-3,4-エチレンジオキシフラン、プロピル-3,4-エチレンジオキシフラン、3,4-プロピレンジオキシフラン、メチル-3,4-プロピレンジオキシフラン、エチル-3,4-プロピレンジオキシフラン、プロピル-3,4-プロピレンジオキシフラン、3,4-エチレンジチアチオフェン、メチル-3,4-エチレンジチアチオフェン、エチル-3,4-エチレンジチアチオフェン、プロピル-3,4-エチレンジチアチオフェン、3,4-プロピレンジチアチオフェン、メチル-3,4-プロピレンジチアチオフェン、エチル-3,4-プロピレンジチアチオフェン、プロピル-3,4-プロピレンジチアチオフェン等が挙げられる。
上記のなかでも、電解コンデンサのESRが低い点が優れる、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-エチレンジオキシチオフェンが特に好ましい。
【0017】
上記ドーパント成分としては、高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基を有していればよく、硫酸エステル基、リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。これらの中でも、ドープ効果の点より、硫酸エステル基、カルボキシル基、スルホ基がより好ましく、スルホ基が特に好ましい。
ドーパント成分として、具体的には、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、又はこれらの金属塩等が挙げられる。これらは単独の重合体であっても、2種類以上の共重合体であってもよい。これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0018】
上記化学酸化ドープが起こりうる官能基を有するモノマーの例としては6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸ナトリウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸リチウム、6-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)ヘキサン-1-スルホン酸カリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸ナトリウム、8-(2,3-ジヒドロ-チエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)オクタン-1-スルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-エチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-プロピル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸カリウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸アンモニウム、3-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]-1-メチル-1-プロパンスルホン酸トリエチルアンモニウム等が挙げられる。
【0019】
上記分散媒としては、水又は有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、セロソルブ類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等を用いることができる。
【0020】
本発明の導電性ポリマー分散液又は溶液には、高沸点有機溶媒を含有させてもよい。高沸点有機溶媒の中でも、特に沸点が150~250℃である高沸点有機溶媒が好ましい。該高沸点有機溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中でも特にエチレングリコール又はγ-ブチロラクトンが、表面が均一な導電性ポリマーを含有する固体電解質層を形成できる点でより好ましい。
【0021】
導電性ポリマー分散液又は溶液における有機溶媒の含有量は、1~20質量%が好ましく、5~15質量%が特に好ましい。有機溶媒の含有量が1質量%未満の場合、表面が均一な導電性ポリマーを含有する固体電解質層を形成する効果に若干劣る問題があり、20質量%超の場合、乾燥工程に時間を要する問題がある。
また、導電性ポリマー分散液又は溶液には、成膜性、膜強度を調整するために、バインダ樹脂、界面活性剤、アルカリ化合物を含有させてもよい。導電性ポリマー分散液は、導電性ポリマーが分散媒に分散しているものであり、導電性ポリマーの一部が分散媒に溶解していてもよい。
【0022】
電解コンデンサに用いる陽極及び陰極としては、弁作用金属が好ましく、具体的には、アルミニウム、タンタル、ニオブ 及びチタンからなる群より選ばれる1種が挙げられ、なかでも、アルミニウムが好ましい。弁作用金属は、通常、焼結体又は箔の形状で用いられる。
電解コンデンサは、用いる陽極及び陰極の形状により、チップ型又は巻回型とすることができる。
【0023】
本発明の電解コンデンサでは、固体電解質の形成は、導電性ポリマーの分散液又は溶液にコンデンサ素子を浸漬などの手段により接触させ、溶媒を乾燥することにより形成させてもよいし、コンデンサ素子を導電性ポリマーのモノマー溶液に浸漬し、次いで、化学重合や電解重合により形成してもよい。
【0024】
(電解液)
本発明における電解液は、電解質と有機溶媒を含有するが、電解質は、下記の(a)及び/又は(b)を含有する。
(a)スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸、及びホウ素化合物
(b)スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸及びホウ素化合物の複合化合物。
スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸としては、好ましくは1~4、より好ましくは1又は2、特に好ましくは1つの環構造を有する芳香族カルボン酸の芳香環に、スルホ基とヒドロキシ基とを有する化合物が挙げられる。
芳香環の有するスルホ基とヒドロキシ基の数は、それぞれ独立に、好ましくは1~4であり、より好ましくは1又は2、特に好ましくは1つである。
【0025】
スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸の好ましい具体例としては、5-スルホサリチル酸、4-スルホサリチル酸、3-スルホサリチル酸、6-スルホサリチル酸、3-ヒドロキシ-4-スルホ安息香酸、3-ヒドロキシ-5-スルホ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ-5-スルホ安息香酸、2-ヒドロキシ-4-メチル-5-スルホ安息香酸、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホ安息香酸、3-ヒドロキシ-7-スルホ-2-ナフタレンカルボン酸、3-ヒドロキシ-6-スルホ-2-ナフタレンカルボン酸、3-ヒドロキシ-5-スルホ-2-ナフタレンカルボン酸、3-ヒドロキシ-8-スルホ-2-ナフタレンカルボン酸、1-ヒドロキシ-4-スルホ-2-ナフタレンカルボン酸、1-ヒドロキシ-6-スルホ-2-ナフタレンカルボン酸、1-ヒドロキシ-7-スルホ-2-ナフタレンカルボン酸、2-ヒドロキシ-4-スルホ-1-ナフタレンカルボン酸、2-ヒドロキシ-6-スルホ-1-ナフタレンカルボン酸、2-ヒドロキシ-7-スルホ-1-ナフタレンカルボン酸などが挙げられる。なかでも、5-スルホサリチル酸が好ましい。
【0026】
本発明における電解液に含有されるホウ素化合物としては、ホウ酸、ボロン酸類(メチルボロン酸、エチルボロン酸、ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、シクロペンチルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、4-tert-ブチルフェニルボロン酸、4-エトキシフェニルボロン酸、2-ナフタレンボロン酸、2-アントラセンボロン酸等)、ホウ酸エステル類(ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル等)、ボロン酸エステル類(アリルボロン酸ピナコール等)などが挙げられる。なかでも、特性が優れるホウ酸が好ましい。
【0027】
本発明におけるにおける電解液には、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸とホウ素化合物に加えて、好ましくは、アンモニア、又は1~4級アミン、アミジン化合物が含有される。かかる1~4級アミンとしては、3級アミンが好ましい。
3級アミンとしては、トリアルキルアミン類(トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルn-プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、メチルエチルn-プロピルアミン、メチルエチルイソプロピルアミン、ジエチルn-プロピルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、トリn-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリn-ブチルアミン、トリtert-ブチルアミンなど)、フェニル基含有アミン(ジメチルフェニルアミン、メチルエチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミンなど)が挙げられる。
【0028】
なかでも、トリアルキルアミンであり、更に好ましくは、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン及びトリエチルアミンからなる群より選ばれる1種以上を含むものである。
【0029】
電解液に用いる有機溶媒は、プロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を用いることができ、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)、ポリアルキレングリコール類(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)などが挙げられる。
【0030】
非プロトン性の極性溶媒としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、アミド系(N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、スルホラン系(スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等)、鎖状スルホン系(ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン)、環状アミド系(N-メチル-2-ピロリドン等)、カーボネイト類(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2-イミダゾリジノン系〔1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ(n-プロピル)-2-イミダゾリジノン等)、1,3,4-トリアルキル-2-イミダゾリジノン(1,3,4-トリメチル-2-イミダゾリジノン等)〕等が挙げられる。
【0031】
電解液に用いる有機溶媒は、上記のなかでも、コンデンサの容量発現が高い理由からスルホラン、γ-ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ベンジルアルコール及びグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。特には、γ-ブチロラクトン又はエチレングリコール又はポリエチレングリコールが好ましい。
【0032】
本発明の電解液におけるスルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸の含有量は、0.1~40質量%が好ましく、1~20質量%がより好ましく、3~10質量%が特に好ましい。該含有量が0.1質量%未満の場合、十分な電気特性が得られにくく、一方、40質量%超の場合、高温環境下において低いESRの維持率が悪くなる。
また、ホウ素化合物の含有量は、前記スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸の1モルに対して、0.1モル以上の比率が好ましく、0.25~1モルがより好ましく、0.4~0.6モルが特に好ましい。該含有量が上記カルボン酸の1モルに対して0.1モル未満の比率の場合、十分な電気特性が得られにくく、一方、1モル超の場合、高温環境下において低いESRの維持率が得られにくい。
【0033】
本発明の電解液は、上記した有機溶媒に対して、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸、ホウ素化合物、好ましくは、更に、アンモニア、又は1~4級アミンを、それぞれが上記した含有量になるように、同時に又は継時的に添加することより製造される。これらを添加する場合、必要に応じて、攪拌しながら、また、必要に応じて加温しながら行うことができる。これらの攪拌や加温は、適宜の条件で行うことができ、例えば、加温は、35~120℃で行うことができる。
【0034】
また、本発明の電解液は、予め、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸とホウ素化合物と反応させ、その反応物を上記した有機溶媒に対して添加することによっても、更には、予め、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸とホウ素化合物とアンモニア、又は1~4級アミンとを反応させ、その反応物を上記した有機溶媒に対して添加することによっても製造できる。
【0035】
スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸、及びホウ素化合物を予め反応させずに添加する場合、或いは、予め反応させて添加する場合の上記のいずれにおいても、かかる芳香族カルボン酸とホウ素化合物とは相互に反応性を有するために、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸とホウ素化合物とが反応し、電解液中には、かかる芳香族カルボン酸とホウ素化合物とが反応した複合化合物が形成されうる。
例えば、上記芳香族カルボン酸が、ヒドロキシ基とカルボキシル基とを芳香環上の隣接位に有する芳香族カルボン酸であり、ホウ素化合物がホウ酸である場合、両者が反応することにより、得られる電解液中には、下記式で表されるアニオン構造を有する複合化合物が少なくとも一時的若しくは部分的に形成されることになる。
【0036】
【化1】
上記式中、nは1~4であり、nが1の場合、Rはスルホ基を表し、nが2~4の場合、Rの少なくとも1つはスルホ基であり、他は同一であっても異なっていてもよいが、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、又はスルホ基を表わす。
【0037】
本発明の電解液にスルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸及びホウ素化合物の複合化合物が含有される場合、かかる複合化合物の含有量は、0.05~40質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1.5~10質量%が特に好ましい。該含有量が0.05質量%未満の場合、十分な電気特性が得られにくく、一方、40質量%超の場合、高温環境下において低いESRの維持率が悪くなる。
【0038】
本発明の電解液では、そこに含まれる水分量が、好ましくは1質量%以下の場合には、リフローはんだ付け場合など、例えば、200℃以上の熱がかかったときでも内圧上昇を抑えることができる点で優れた特性が得ることができる。含有水分量は、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が特に好ましい。
更に、本発明の電解液は、その有するpHが、好ましくは2~6の場合には、低いESRを維持できる点で優れた特性が得ることができることが判明した。その理由は定かではないが、pHは、2.5~5.5がより好ましく、3~5が特に好ましい。
【0039】
<他の含有物質>
本発明の電解液には、電解コンデンサの寿命性能や抵抗性能などの特性を改善する目的で、上記以外の物質を添加することができる。かかる添加物質は、特に限定されるものではない。例えば、以下のものが挙げられる。
リン系化合物(リン酸エステルなど)、多糖類(マンニット、ソルビットなど)、ホウ酸と多糖類(マンニット、ソルビットなど)との錯化合物、ホウ酸と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリンなど)との錯化合物、ニトロ化合物(o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール、p-ニトロベンジルアルコールなど)が挙げられる。
【0040】
また、電解液には酸化防止剤を添加することができ、その酸化防止剤としてはフェノール化合物、アミン化合物、アゾ化合物、シラン化合物、キノン化合物、カルボン酸化合物などが挙げられる。
【実施例
【0041】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内での変更が可能である。
(導電性ポリマー分散液の調製)
ドーパント成分である、ポリスチレンスルホン酸(重量平均分子量:50,000)の20質量%水溶液12.2gを、水187.5gに混合して10分間攪拌した。次に、モノマーとしての3,4-エチレンジオキシチオフェン2.04gを投入してさらに15分間攪拌しモノマー溶液を調製した。得られたモノマー溶液は、薄い黄色を呈していた。
【0042】
上記モノマー溶液に含まれるポリスチレンスルホン酸の量は、モノマー溶液に含まれる3,4-エチレンジオキシチオフェン100質量部に対して119質量部であった。モノマー溶液を攪拌しながら、酸化剤としての硫酸鉄(III)0.012gと、過硫酸アンモニウム4.46gを滴下して、室温下で15時間攪拌して化学酸化重合を行った。このときモノマー溶液は、薄い黄色から濃紺色へ変化した。次いで、得られた反応液に対して、両性イオン交換樹脂(オルガノ社商品名:MB-1、イオン交換形:-H、-OH)を50.1g投入して、2時間攪拌した。これにより、反応溶液のpHは1.15から1.83に変化した。これにより、1.3質量%のポリスチレンスルホン酸がドーピングされたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)を含有する導電性ポリマー分散液を調製した。
【0043】
(コンデンサ素子の作製)
表面をエッチング処理した後に化成処理を行って酸化皮膜層を形成し、リード端子を取り付けたアルミニウム陽極箔と、表面をエッチング処理しリード端子を取り付けたアルミニウム陰極箔とをセルロース繊維からなるセパレータ(厚み0.05mm)を介して巻回して、コンデンサ素子を作製した。
【0044】
(実施例1)
上記で得られたコンデンサ素子を、上記導電性ポリマー分散液に浸漬し、コンデンサ素子を引き上げた後溶媒を蒸発させることにより、導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した。
次いで、表1に記載した量の各成分を50℃で攪拌しながら混合して電解液を製造し、この電解液をこのコンデンサ素子に含浸した。次いで、コンデンサ素子を有底筒状のアルミニウムケースに挿入し、開口端部に封口ゴムを装着して、カーリング加工することにより封止した。その後、105℃の条件でエージング処理を施し、アルミニウム電解コンデンサを作製した。
この電解コンデンサの定格電圧は35Vであり、封止後の外形寸法は、直径10mm、高さ10mmを有する円筒形であった。
【0045】
(実施例2~7、比較例1~4)
表1に示される量の各成分を95℃で攪拌しながら混合して得られる電解液を使用した以外は実施例1と同様に実施することにより、実施例2~7、及び比較例1~6の電解コンデンサを作製した。
なお、表1には、実施例1~7、比較例1~6のそれぞれの電解コンデンサで使用した電解液のpH及び含有水分量を示した。
【0046】
(コンデンサ試験)
作製した電解コンデンサを150℃雰囲気下で定格電圧の負荷試験を行い、ESR(100kHz)の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
上記実施例1~7、比較例1~4の各電解液を液体クロマトグラフィー質量分析法(LC‐MS)により分析したところ、各電解液において検出された化合物は以下の通りであった。なお、以下では、それぞれ、5‐スルホサリチル酸を5‐Ssa、4‐スルホサリチル酸を4‐Ssa、スルホフタル酸をSpa、サリチル酸をSa、フタル酸をPa、4‐ニトロフェノールをNpと表記した。
<LC-MS>
カラム:シリカC18M 4E、昭和電工社製
移動相:5mMギ酸アンモニウム水溶液/アセトニトリル=80/20(V/V)
検出器:ACQUITY QDa検出器、日本ウォーターズ社製
イオン化法:ESI Negative
【0050】
実施例1の電解液
m/z:217(5‐Ssa - H),221(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - 2H)2-,443(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - H)
実施例2の電解液
m/z:217(5‐Ssa - H),221(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - 2H)2-,443(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - H)
実施例3の電解液
m/z:217(5‐Ssa - H),221(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - 2H)2-,443(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - H)
実施例4の電解液
m/z:217(5‐Ssa - H),221(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - 2H)2-,443(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - H)
実施例5の電解液
m/z:138(Np - H),217(5‐Ssa - H),221(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - 2H)2-,443(2(5‐Ssa) + B(OH) - 3HO - H)
実施例6の電解液
m/z:217(4‐Ssa - H),221(2(4‐Ssa) + B(OH) - 3HO - 2H)2-,443(2(4‐Ssa) + B(OH) - 3HO - H)
【0051】
比較例1の電解液
m/z:217(5‐Ssa - H)
比較例2の電解液
検出なし
比較例3の電解液
m/z:217(5‐Ssa - H)
比較例4の電解液
m/z:137(Sa - H),283(2Sa + B(OH) - 3HO - H)
比較例5の電解液
m/z:245(Spa - H)
比較例6の電解液
m/z:165(Pa - H),217(5‐Ssa - H)
【0052】
表1、表2に見られるように、実施例1~7の電解コンデンサは、比較例1~3の電解コンデンサに比べて、150℃の高温条件においても低いESRを維持できる点で優れていることがわかる。一方、スルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸の代わりに、スルホ基を有しない芳香族カルボン酸を用いた比較例4、ヒドロキシ基を有しない4‐スルホフタル酸を用いた比較例5、及びホウ素化合物の代わりにフタル酸を用いた比較例6では、いずれも、低いESRを維持できていないことがわかる。
また、上記LC‐MSの結果より、実施例1~7の電解液では、電解液中に含有されるスルホ基とヒドロキシ基とを有する芳香族カルボン酸、及びホウ素化合物のうち少なくとも一部は複合化合物を形成していることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の電解液は、AV機器、携帯電話、ノートパソコンなどの各種民生用機器用電源、車載用の電装機器、産業機器などにおいて多用される電解コンデンサにおける電解液として広く使用される。
なお、2019年6月12日に出願された日本特許出願2019-109812号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。