(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】タガントを含む塗料およびその他の物質
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20250107BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20250107BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250107BHJP
C09D 5/33 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
C09D201/00
G01N21/64 Z
C09D7/61
C09D5/33
(21)【出願番号】P 2021534328
(86)(22)【出願日】2019-12-30
(86)【国際出願番号】 GB2019053705
(87)【国際公開番号】W WO2020136381
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521259091
【氏名又は名称】スティーブンス、ヘンリー ガイ
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス、ヘンリー ガイ
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-507982(JP,A)
【文献】特開2001-040343(JP,A)
【文献】国際公開第2009/071167(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0018252(US,A1)
【文献】特開2005-320425(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0266269(US,A1)
【文献】特開2013-079342(JP,A)
【文献】特開2002-346394(JP,A)
【文献】特開2001-004460(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0344376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
G01N 21/64
C09D 7/61
C09D 5/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、キャリア液、バインダー、1つまたは複数の添加剤、およびその1つまたは複数の添加剤に対応して選択された1つまたは複数の無機またはセラミックのタガントを含む塗料であって、タガントは塗料の0.1重量%までの量で提供され、1つまたは複数のタガントはキャリア液中に均一に分散して懸濁しており、1つまたは複数のタガントは懸濁状態を維持するのに適した粒径または粒径範囲を有し、基材上の塗料の認証のために1つまたは複数のタガントは1つの波長の赤外光または紫外光によって励起されて1つまたは複数の他の波長の赤外光を放出し、1つまたは複数のタガントの赤外光の発光波長またはスペクトルは塗料を認証する際に使用する塗料中の添加剤を示す塗料。
【請求項2】
複数の無機またはセラミックのタガントがあるシグネチャー比で存在し、塗料を認証するためのシグネチャー赤外光発光スペクトルを提供することを特徴とする請求項1に記載の塗料。
【請求項3】
前記複数の無機またはセラミックのタガントは、シグネチャー赤外光発光スペクトルを提供するために、複数のランタノイド元素を含むことを特徴とする請求項2に記載の塗料。
【請求項4】
タガントは可視光で励起しないものである請求項1~3のいずれかに記載の塗料。
【請求項5】
タガントは、塗料の0.005から0.05重量%の間である請求項1~4のいずれかに記載の塗料。
【請求項6】
タガントは、塗料の0.01から0.025重量%の間である請求項5に記載の塗料。
【請求項7】
1つまたは複数のタガントの粒径範囲は、0.9~3.3ミクロンであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の塗料。
【請求項8】
添加剤は、1つまたは複数の耐火性成分を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の塗料。
【請求項9】
添加剤は、1つまたは複数の抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌成分を含むことを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の塗料。
【請求項10】
少なくとも顔料および1つまたは複数の添加剤は、タガントが光を吸収および放出する波長の少なくとも一部に対して透明または実質的に半透明であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の塗料。
【請求項11】
1つまたは複数の抗菌成分は銀イオンを含むことを特徴とする請求項9または請求項9に従属する場合の請求項10のいずれかに記載の塗料。
【請求項12】
1つまたは複数の添加剤は、スリップしないまたは滑り止め成分または化合物を含むことを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の塗料。
【請求項13】
1つまたは複数のタガントは1つの波長の赤外光よって励起されて1つまたは複数の他の波長の赤外光を放出することを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の塗料。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載された塗料を含む容器。
【請求項15】
液体、1つまたは複数の添加剤、およびその1つまたは複数の添加剤に対応して選択される1つまたは複数の無機またはセラミックのタガントを含むワニスであって、1つまたは複数のタガントはワニスの0.1重量%までの量で提供され、1つまたは複数のタガントは液体中に均一に分散して懸濁しており、1つまたは複数のタガントは懸濁状態を維持するのに適した粒径または粒径範囲を有し、基材上の塗料の認証のために1つまたは複数のタガントは1つの波長の赤外光または紫外光によって励起され1つまたは複数の他の波長の赤外光を放出し、1つまたは複数のタガントの赤外光の発光波長またはスペクトルはワニスを認証する際に使用するワニス中の添加剤を示す、ワニス。
【請求項16】
塗料またはワニスに添加するためのタガント組成物であって、1つまたは複数の無機またはセラミックのタガント、1つまたは複数の添加剤、および分散剤を含み、1つまたは複数のタガントは1つまたは複数の添加剤に対応し、1つまたは複数のタガントは分散剤中に均一に分散して懸濁しており、1つまたは複数のタガントは懸濁状態を維持するのに適した粒径または粒径範囲を有し、基材上の塗料またはワニスの認証のために1つまたは複数のタガントは1つの波長の赤外光または紫外光によって励起されて1つまたは複数の他の波長で赤外光を発光し、1つまたは複数のタガントの赤外光の発光波長またはスペクトルは塗料またはワニスの一部としてタガント組成物を認証する際に使用するタガント組成物中の添加剤を示す、タガント組成物。
【請求項17】
タガントは複数の無機またはセラミックのタガントがあるシグネチャー比で存在し、塗料またはワニスを認証するためのシグネチャー赤外光発光スペクトルを提供する請求項
15に記載のワニスまたは請求項
16に記載のタガント組成物。
【請求項18】
複数の無機またはセラミックタガントは、シグネチャー赤外光発光スペクトルを提供するために複数のランタノイド元素を含む請求項
17に記載のワニスまたはタガント組成物。
【請求項19】
タガントは可視光で励起しないものである請求項
15、17、18のいずれかに記載のワニスまたは請求項
16から18のいずれかに記載のタガント組成物。
【請求項20】
添加剤は、1つまたは複数の耐火性成分を含むことを特徴とする請求項
15または17から19のいずれかに記載のワニスまたは請求項
16から19のいずれかに記載のタガント組成物。
【請求項21】
添加剤は、1つまたは複数の抗菌、抗ウイルスおよび/または抗真菌成分を含むことを特徴とする請求項
15、17から20のいずれかに記載のワニス、または請求項
16から20のいずれかに記載のタガント組成物。
【請求項22】
1つまたは複数の抗菌成分は銀イオンを含むことを特徴とする請求項
21に記載のワニスまたはタガント組成物。
【請求項23】
少なくとも1つまたは複数の添加剤は、タガントが光を吸収および放出する波長の少なくとも一部に対して透明または実質的に半透明であることを特徴とする請求項
15または17から22のいずれかに記載のワニスまたは請求項
16から22のいずれかに記載のタガント組成物。
【請求項24】
1つまたは複数のタガントの粒径範囲は、0.9~3.3ミクロンであることを特徴とする請求項
15または17から23のいずれかに記載のワニスまたは請求項
16から23のいずれかに記載のタガント組成物。
【請求項25】
1つまたは複数の添加剤は、スリップしないまたは滑り止め成分または化合物を含むことを特徴とする請求項
15、17から24のいずれかに記載のワニスまたは請求項
16から24のいずれかに記載のタガント組成物。
【請求項26】
1つまたは複数のタガントは1つの波長の赤外光よって励起されて1つまたは複数の他の波長の赤外光を放出することを特徴とする請求項
15、17から25のいずれかに記載のワニスまたは請求項
16から25のいずれかに記載のタガント組成物。
【請求項27】
請求項
15または17から26のいずれかに記載のワニスまたは請求項
16から26のいずれかに記載のタガント組成物を含む容器。
【請求項28】
塗料またはワニスを製造または修正する方法であって、
a) 顔料、キャリア液、およびバインダーを含む塗料、またはワニスを提供すること、
b) タガント組成物中の1つまたは複数のタガントは、塗料またはワニスの重量に対して0.1重量%までの量で提供される、請求項
16から26のいずれかに記載のタガント組成物または請求項
27に記載のタガント組成物の容器を提供すること、
c) 1つまたは複数のタガントは塗料またはワニス中に均一に分散して懸濁しており、1つまたは複数のタガントは懸濁状態を維持するのに適した粒径または粒径範囲を有するように、タガント組成物を塗料またはワニスに混合すること、
を含む方法。
【請求項29】
ステップ(c)が、塗料またはワニスが表面に塗布されるべき場所で実行される請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
塗料またはワニスを第1の容器に入れて提供し、タガント組成物を第1の容器よりも小さい第2の容器に入れて提供する請求項
28または29に記載の方法。
【請求項31】
基材上の塗料またはワニスの識別性を非破壊で認証する方法であって、
a) 塗料またはワニスに赤外光または紫外光を当て、その塗料またはワニスに存在する1つまたは複数の無機またはセラミックのタガントを励起すること、
b) 赤外光または紫外光の吸収後続いて塗料またはワニスから放出される赤外光があれば、それを検出すること、
c) 検出された赤外光を、塗料またはワニスの予想されるシグネチャーの発光波長またはスペクトルと比較して、請求項1~13のいずれかに記載の正しい塗料または請求項
15または17~26のいずれかに記載のワニスが塗布されたかどうか、もし塗布された場合には任意に、塗料とワニスが適切な厚さで基材に塗布されたかどうかを判断すること、
を含む方法。
【請求項32】
基材が非金属基材であることを特徴とする請求項
31に記載の方法。
【請求項33】
ステップ(c)は、検出された赤外光の強度を、基材上の塗料またはワニスの厚さを評価するための予想される強度値または範囲と比較することを含む
請求項31または32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
ステップ(a)から(c)は、基材上の塗料またはワニスに対して、またはその近傍に保持された携帯機器を用いて実行される請求項
31~33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
携帯機器は、赤外線を検出できるセンサーを含むことを特徴とする請求項
34に記載の方法。
【請求項36】
携帯機器は、複数の異なる塗料またはワニスを認証するために、複数のシグネチャー発光波長および/またはスペクトルがプログラムされていることを特徴とする請求項
34または35に記載の方法。
【請求項37】
携帯機器は、ステップ(a)において塗料またはワニスに光を向けるためのエミッタを含み、エミッタは赤外線エミッタまたは紫外線エミッタであることを特徴とする請求項
34~36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
ステップ(a)は塗料またはワニスに赤外光を向けることを含み、ステップ(b)は赤外光の吸収後続いて塗料またはワニスから放出される赤外光があればそれを検出することを含み、エミッタは赤外線エミッタであることを特徴とする請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
塗料またはワニスを現場外で認証するために、励起中または励起直後の塗料またはワニスの画像を記録することを含むことを特徴とする請求項
31~38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
記録された画像にタイムスタンプが適用される、または関連付けられることを特徴とする請求項
39に記載の方法。
【請求項41】
記録された画像に位置情報が適用される、または関連付けられることを特徴とする請求項
39または40に記載の方法。
【請求項42】
カメラが使用され画像を記録することを特徴とする請求項
39~41のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料中の添加剤を示すタガントを含む塗料またはワニス、タガントを含む塗料またはワニスの識別性を非破壊的に認証する方法、塗料またはワニスに添加するためのタガント組成物およびその方法、タガントを含むプラスチック、複合材料または建築部材、およびタガントを使用してリサイクルのために物品の混合物を分別する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特殊な塗料やコーティング剤は、装飾性だけでなく、様々な用途に適した機能的な特性を持つように開発されている。そのような塗料の例としては、火災の被害に耐えたり、火災の伝播を抑制したり、細菌の繁殖を抑制したり、汚れや風化に耐えられるように特別に設計された組成物や配合物が挙げられる。例えば、火災時の避難経路となる廊下や階段には、耐火性の塗料が好ましい。
【0003】
塗装の作業は、一般的に、塗料を入手して塗布するよろず屋や小さなチームに委託される。専門家用の塗料やコーティング材は、例えば家庭の部屋を飾るために使用される低価格のエマルジョンのような非専門家用の塗料に比べて、単位重量あたりの価格が比較的高い傾向にある。そのため、必要とされる耐火性などの特性を持つ塗料を使用せず、見た目が同じで安価な塗料を使用する場合がある。これは、例えば食品加工場で抗菌性のある塗料が使われていない場合には危険であり、例えば住宅街で非耐火性の塗料が使われている場合には大惨事になる可能性がある。
【0004】
また、十分な耐火性を持たせるためには複数の層(下塗り液、下塗り塗料、上塗り塗料)を塗布する必要があるため、例えば、安価な塗料に専門の塗料を混ぜてさらに進化させたり、表面層の塗料のみに専門の塗料を含ませたりする場合もある。
【0005】
本当の誤りの場合、間違ったタイプの専門家の塗料が使用されることがある。また、契約や下請けの過程で特定の塗料を使用することの重要性が失われ、実際に塗装を行う人が特定の色が必要だと思い込んでしまうなどのケースもある。
【0006】
正しい塗料が使用されているかどうかを現場で判断することはできない。その代わり、サンプルを採取して検査する必要があるが、その場合、塗料やコーティングによって提供される保護層に損傷を与えることになる。また、塗料が必要な厚さに塗布されているかどうか、つまり十分な数の塗料層が塗布されているかどうかを判断することもできない。なぜなら、業者を監視することは一般的に不可能だからである。
【0007】
より一般的には、建物の建設や改修に正しい建築部材が使用されているかどうかを簡単にチェックまたは確認することができないという問題がある。例えば、ロンドンのグレンフェルタワーの外壁に取り付けられた被覆材は、必要な火災安全基準を満たしていなかったが、このことが判明したのは、2017年に同ビルで多くの人命が失われた悲惨な火災が発生した後であった。2つの異なるグレードの被覆材(限定的な耐火性を持つものと、相対的に優れた耐火性を持つもの)の違いを簡単に識別することができなかったため、建物の外壁にどのような被覆材が使われているのかを簡単に識別する方法がなかった。被覆材が設置された後にこのようなチェックを行うのは時間がかかるし、高所での作業や、サンプルを回収して破壊検査を行う必要があるため、リスクがある。
【0008】
最近の建築部材には、プラスチックや複合材料が使われていることが多く、使用されている素材を正確に識別することが難しい場合がある。そのため、使用されている建築部材が必要な安全基準を満たしているかどうかを知ることは困難である。関連して、使用されているプラスチックや複合材料の種類を簡単に識別することが困難または不可能であるため、建築資材を容易にリサイクルすることも困難である。
【0009】
より一般的な意味で、プラスチックにリサイクル可能であることを示すリサイクルラベル(英国では、プラスチックパッケージに3つの矢印で形成された三角形の中に数字が入っているのが一般的)を付けることができる。しかし、この場合でも、消費者が手作業でシンボルを見つけ、読み取って、正しいリサイクルボックスに入れる必要がある。そのためには、消費者の努力と知識が必要である。また、手作業での分別ではどうしてもミスが生じてしまい、リサイクルプロセスの後半になってそのミスを識別し、修正することは困難である。そのため、リサイクル可能なプラスチックの一纏まりが汚染される可能性があり、いったんリサイクルプロセスを経ると、目的に合わないリサイクルプラスチックの一纏まりができてしまい、より多くの廃棄物が発生することになる。複数の異なる種類のプラスチックを自動的に分別してリサイクルする簡単な方法はない。
【0010】
本発明の目的は、上述の問題を軽減または実質的に回避することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明の第1の側面によれば、顔料、キャリア液、バインダー、1つまたは複数の添加剤、およびその1つまたは複数の添加剤に対応する1つまたは複数のタガントを含む塗料が提供され、タガントは塗料の重量に対して実質的に0.1重量%までの量で提供され、タガントは赤外線(IR)または紫外線(UV)の1つの波長で励起され、1つまたは複数の他の波長で発光し、タガントの発光波長またはスペクトルは塗料中の添加剤を示す。
【0012】
任意の特徴は、従属請求項2から12に示される。
【0013】
これにより、乾燥後に評価できる塗料が得られ、塗料が必要な属性を持っているかどうかを非破壊的に確認することができる。タガントは、保証標識または化合物と考えることができる。それは、特定の波長の光に反応するため、その存在によって塗料を検査する能力を与える。タガントの存在は、破壊的な試験を行わずに塗料を評価することができるため、火災避難経路や食品準備エリアなどの特定のエリアが目的に適合していると誤って署名されるリスクを大幅に軽減する。これにより、間違った塗料(または不十分な塗料)が誤って使用されたか、故意に使用されたかにかかわらず、誤りを追跡することができ、そのような誤りに責任を持つ個人または団体が責任を負うことができる。塗料は、例えば、壁のような物体や表面に、コーティングとして提供されてもよい。
【0014】
タガントは、複数の無機またはセラミックのタガントを含んでいてもよい。タガントは、適切な波長の光が照射されたときに発光するものであってもよい。
【0015】
複数のタガントは、あるシグネチャー比で提供されてもよい。特定の比率のタガントを使用することで、塗料の識別性を認証するために使用する署名または指紋の発光スペクトルが得られる。すなわち、正しい塗料が使用されたことを確認するためである。各タガントの相対的な比率は、スペクトルのピークの相対的な強度に影響を与えるため、シグネチャー発光スペクトルを偽造することは困難である。したがって、耐火性(または上述のような他の特性)を付与する添加剤が含まれていない塗料は、現実的には、認証をパスするために塗装前または塗装後に変更することはできない。
【0016】
複数のタガントは、シグネチャー発光スペクトルを提供するために、複数のランタノイド元素を含んでいてもよい。ただし、任意の適切な市販のタガントを使用してもよい。タガントは、以下のうちの1つまたは複数を含むように選択されてもよい。Y2O3:Eu3+;CeMgAl11O19:Tb3+;BaMgAl10O17:Eu;La0.60Ce0.27Tb0.13PO4;GdMgB5O10:Ce,Tb;(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+。これらは、多くの適切なタガントの例に過ぎない。
【0017】
タガントは、UV光を使って励起可能であってもよい。また、タガントは、波長840nm付近のIR光で励起されてもよい。ただし、励起に用いる波長は、タガントに応じて選択される。異なるランタノイドは、異なる波長で強く吸収されるため、複数の励起波長を用いることが好ましい場合もある。
【0018】
複数のランタノイド元素を使用することで、タガントの励起時に複雑な発光スペクトルが得られ、これも偽造を困難にする。タガント化合物の組み合わせやブレンドを使用してもよい。例えば、CeMgAl11O19:Tb3+、BaMgAl10O17:Eu、およびLa0.60Ce0.27Tb0.13PO4を組み合わせたカスタム品を使用してもよい。成分の比率は、スペクトルに影響を与え、特定の塗料や塗料のサブセットに合わせて選択される。
【0019】
タガントは、可視光を吸収したり、励起したりしないことが好ましい。入射した可視光は反射するだけであるべきである。そのため、タガントは、屋内の照明にさらされても蛍光またはリン光を発しないようにすべきであり、日光の下ではしないことが望ましい。タガントは、塗料メーカーの既存のカラーシステムに悪影響を与えないように、乾燥時の塗料の見かけの色に影響を与えてはならない。
【0020】
タガントは、塗料の重量に対して0.005重量%から0.05重量%の間で含まれていてもよい。タガントは、塗料の0.01重量%から0.025重量%の間で含まれていてもよい。言い換えれば、塗料の単位重量当たり、タガントの割合は、塗料全体のわずかな分量である。予想される発光スペクトルの強さはタガントの割合に影響されるため、非常に少ない量を使用すると、正しく偽造することが再び難しくなる。タガントの割合をコントロールすることは、塗料の他の特性(レオロジーや粘度など)に悪影響を与えないためにも有効であり、タガントは比較的高価であるため、使用量を制限することが好ましい。
【0021】
タガントは、キャリア液中に均一に分散し懸濁していてもよい。これは、例えば壁に塗布した場合、発光反応が壁全体で実質的に均一になるはずなので、認証時にどの部分をテストするかは問題にならないことを意味する(不純物がなく、塗料の厚さが均一であると仮定する)。
【0022】
タガントの添加量が少ないと、タガントを塗料中に均一に分散させるときに困難を生ずる。タガントの分散を助けるために、分散剤を使用することができる。分散剤は、例えば、顔料や添加剤の分散を助けるために使用されるもののような従来の分散剤であってもよい。
【0023】
タガントは、均質な分布を確保するために、懸濁状態を維持するのに適した粒径または粒径範囲を有していてもよい。粒径または粒径範囲は、他の塗料成分の粒径または粒径範囲よりも大きくないことが望ましく、タガントの存在によって塗料のレオロジーや表面仕上げが実質的に影響を受けないようにする。それは、また、タガントの懸濁状態を維持するためにさらに適合する必要を避けることができる。例えば、粒径範囲は0.9~3.3ミクロンである。
【0024】
添加剤は、1つまたは複数の耐火性および/または火災反応性の成分または化合物を含んでいてもよい。例えば、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)は、その難燃性のために含まれてもよい。タガントは、耐火性および/または火災反応性の成分が存在することを示すために、赤外線または紫外線の励起後に赤色または赤みを帯びた光(例えば620nm付近)を放出してもよい。塗料または添加剤は、膨張性成分を含んでいてもよい。
【0025】
添加剤(複数可)は、1つまたは複数の抗菌成分または化合物を含んでいてもよい。例えば、銀イオンが含まれていてもよい。タガントは、抗菌性化合物が存在することを示すために、赤外線または紫外線の励起後に緑色または緑色がかった光(例えば、530~550nm付近)を放出してもよい。
【0026】
添加剤は、1つまたは複数の抗ウイルス成分または化合物を含んでいてもよい。
【0027】
添加剤は、1つまたは複数の抗真菌成分または化合物を含んでいてもよい。
【0028】
添加剤は、1つまたは複数のスリップしないまたは滑り止め成分または化合物を含んでいてもよい。これは、塗料が歩道に塗布される場合に有用である。
【0029】
添加剤は、例えば1つまたは複数の界面活性剤や増粘剤などを含んでいてもよい。
【0030】
タガントは、火にさらされると分解することがあるが、非毒性のガスのみを放出するか、または人間に回復不能な害を与える量の毒性ガスを放出しないことが望ましい。好ましくは、タガントは環境にやさしいものである。タガントは、塗料の他の成分と反応すべきでない。タガントは、火災後に残留物を残し、調査員が必要な塗料が使用されたかどうかを確認することができる。言い換えれば、タガントは火災の前後において、正しい塗料が塗布されたかどうかを確認するための目印として機能する。これは特にセラミック製のタガントを使用した場合に当てはまる。
【0031】
少なくとも顔料と添加剤は、タガントが光を吸収し放出する波長の少なくとも一部に対して透明(または実質的に半透明)であってもよい。これは、塗料の表面下に位置する塗料層からの発光を過度に減衰させることを避けるためであり、これらの層からの発光は塗料の厚さを示すものであるからである。例えば、耐火性塗料の厚さは100~200ミクロン(μm)程度かもしれない。表面下の塗料層からの発光強度の増加を確実に測定する必要があるため、タガントの発光スペクトルの少なくとも一部が検出のために層を通過する必要がある。
【0032】
タガントは、光(IR光など)を吸収し、吸収した光よりも短い波長の光を放出するアップコンバージョン蛍光体またはコンポーネント(アップコンバータ)を含んでいてもよい。タガントは、使用時に光(UV光など)を吸収し、吸収した光よりも長い波長の光を放出するダウンコンバージョン蛍光体またはコンポーネント(ダウンコンバータ)を含んでいてもよい。タガントは、より安全な発光スペクトルを得るために、両方のコンポーネント、つまりアップコンバータとダウンコンバータの両方を含んでいてもよい。リン光による発光の場合、最初の励起とその後の発光との間に時間差があってもよい。
【0033】
本発明の第1の態様によれば、塗料を含む缶やブリキ缶などの容器が提供されてもよい。
【0034】
本発明の第2の態様によれば、基材(任意に非金属基材)上の塗料またはワニスの識別性を非破壊的に認証する方法であって、以下のステップを含む方法が提供される。
a) 塗料またはワニスに存在するならばタガント(つまり、塗料またはワニスに含まれると予想されるタガント)を励起するため、塗料またはワニスに光を照射するステップ、
b) 次いで塗料やワニスから放出される光がある場合はその光を検出するステップ、
c) 検出された光を塗料またはワニスの予想されるシグネチャーの発光波長またはスペクトルと比較して、正しい塗料ワニスが塗布されたかどうか、またそれが基材に正しく/適切に塗布されたかどうかを判断するステップ。
【0035】
任意の特徴は、従属請求項15から25に示されている。塗料は、本発明の第1の態様による塗料であってもよい。
【0036】
これにより、(i)正しい塗料やワニスが塗布されたかどうか、(ii)その塗料が要求された仕様を満たすために十分な厚さで塗布されたかどうかを確認する方法が提供される。その利点は、本発明の第1の態様と同様である。試験は現場で迅速かつ容易に行うことができ、塗料が認証に合格した場合には同時に終了(サインオフ)も可能である。タガントが検出されない場合、塗料は認証に失敗する。本方法は、建築物の品質チェックや管理プロセスの一環として(任意で繰り返し)使用することができる。これには、例えば、建設後の最初のサインオフのための検査や、年次検査などが含まれる。
【0037】
ステップ(c)では、検出された光の強度を、基材上の塗料の厚さを評価するために予想される強度値または範囲と比較することができる。塗料が厚ければ、通常、相対的により強い読み取り値が得られます。これを既知の検量線と比較することで、非侵襲的に塗料の厚さを確認することができる。測定値が低すぎる場合は、塗膜の厚さが十分ではなく、認証に失敗する。塗料の厚さが十分であれば、照射時のタガントの反応により、その塗料は認証される。
【0038】
タガントを使用することで、通常は入射した赤外光または他の光を反射しない非金属基材上の塗膜の厚さを測定することができ、塗料層の厚さの信頼性の高い判定が可能になる。しかし、この方法では、金属基材上でも塗料の厚さを測定することができる。
【0039】
認証プロセスは、塗料が乾燥してから行うことができる。塗料が完全に乾燥または硬化するには、1週間程度かかることがある。測定値が使用されている検量線と正確に相関していることを確認するために、塗料が完全に乾燥または硬化するまで待つことが好ましい。
【0040】
ステップ(a)から(c)は、携帯型の機器や読み取り装置を使って行うことができる。その機器は、基材上の塗料に対してまたはその近くで保持されてもよい。この機器は、IRレーザやIR LEDなどのIRエミッタを含んでいてもよく、これらはタガントからの発光を引き起こすために高強度であってもよい。励起波長の例は、使用するタガントによって依存するが、レーザまたはLEDは、例えば940nmまたは980nmで発光する。また、UVエミッタが提供されてもよい。
【0041】
携帯機器は、可視光、赤外光、または可視光と赤外光の両方を検出できるセンサーを含んでいてもよい。場合によっては、センサーは、紫外光、好ましくは近紫外光を検出することができてもよい。携帯機器は、複数の異なる塗料を認証するために、複数のシグネチャー発光スペクトルでプログラムされていてもよい。読み取り装置は、色を識別したり、光の強さを判断したりすることができる。
【0042】
読み取り装置は、エミッタからの光(例えば、レーザー)を封じ込め、読み取り装置を使用する際に目を保護する必要がないように、塗料に対して配置可能な筐体を含むことができる。
【0043】
励起中または励起直後に、塗料(または塗料の各部分)の画像を記録し、現場外で塗料または各部分を認証してもよい。記録された画像には、タイムスタンプが適用されたり、関連付けられたりしてもよい。GPS位置スタンプなどの位置データは、記録された画像に適用されるか、または関連付けられてもよい。これは、認証すべき多数の塗装エリアがあり、塗装エリアへのアクセスが可能な状態で認証を行うには時間が足りない場合に有効である。また、使用された塗料について疑問が生じた場合に備えて、証拠を入手し、将来にわたって保管しておくこともできる。例えば、火災が発生して人に被害が及んだ場合に、塗料が耐火性の仕様を満たしていることを証明できれば、制裁が軽減される可能性がある。カメラを使って画像を記録し、関連する発光スペクトルを記録することができる。
【0044】
本発明の第3の態様によれば、液体、1つまたは複数の添加剤、および1つまたは複数の添加剤に対応するタガントを含むワニスであって、タガントはワニスの実質的に0.1重量%までの量で提供され、タガントは1つの波長の赤外光または紫外光によって励起されて1つまたは複数の他の波長の光を放出し、タガントの発光波長またはスペクトルはワニス中の添加剤を示すワニスが提供される。
【0045】
液体は、従来のワニスに含まれる成分を含んでいてもよく、例えば、乾燥油、樹脂、溶媒のいずれかの組み合わせから独立して選択されるものである。場合によっては、顔料を提供してもよい。
【0046】
ワニスは、本発明の第1の態様に関して提示された任意の特徴または特徴の組み合わせを含むことができる。
【0047】
本発明の第4の態様によれば、塗料またはワニスに添加するためのタガント組成物を提供する。タガント組成物は、タガント、1つまたは複数の添加剤、および分散剤を含み、タガントは1つまたは複数の添加剤に対応し、タガントは1つの波長の赤外光または紫外光によって励起されて1つまたは複数の他の波長の光を放出し、タガントの発光波長またはスペクトルはタガント組成物中の添加剤を示す。
【0048】
任意の特徴は従属請求項に記載される。
【0049】
タガント組成物は、現場で既存の塗料やワニスに添加してもよい。これは、例えば、塗料やワニスを壁に塗布する直前に行うことができる。これにより、既存の塗料やワニスの製造プロセスをそのままにして、その後、使用する時点でタガント組成物を塗料に添加/混合することで、製造を簡素化することができる。また、大量のタガント組成物の容器をより効率的に輸送することができる。
【0050】
もちろん、塗料やワニスは目的に合ったものでなければならず、タガント組成物を塗料やワニスに配合する前に、塗料やワニスを確認するための適切な検査を行うことができる。
【0051】
本発明の第5の態様によれば、塗料またはワニスを製造または修正する方法が提供され、この方法は以下のステップを含む。
a) 顔料、キャリア液、およびバインダーを含む塗料、またはワニスを提供するステップ、
b) 本発明の第4の態様に記載のタガント組成物を提供することであって、タガント組成物中のタガントが、塗料またはワニスの重量に対して実質的に0.1重量%までの量で提供されるステップ、
c) タガントまたはタガント組成物を、塗料またはワニスに混合するステップ。
【0052】
これにより、本発明の第1または第3の態様による塗料またはワニスを提供することができる。混合ステップは、塗料またはワニスが適用される現場で行われてもよい。
【0053】
塗料、ワニス、および/またはタガント組成物は、本発明の他の態様で提示される任意の特徴(複数を含む)を含んでもよい。
【0054】
塗料やワニスは容器に入って提供されてもよい。容器には蓋が付いていてもよい。容器は、手で持ち運べるほど小さくてもよいが、混合のために大きな器に注いだり、空にしたりしてもよい(ステップ(c))。
【0055】
タガント組成物は、塗料やワニスの容器、または塗料やワニスが注がれる器に加えるために、より小さな容器で提供されてもよい。
【0056】
本発明の第6の態様によれば、本体と本体内に分布したタガントを含むプラスチックまたは複合材料であって、タガントはプラスチックまたは複合材料の実質的に0.1重量%までの量で提供され、タガントは1つの波長の赤外光または紫外光によって励起されて1つまたは複数の他の波長の光を放出し、タガントの発光波長またはスペクトルは本体を形成するプラスチックまたは複合材料の種類を示すプラスチックまたは複合材料が提供される。
【0057】
これにより、プラスチックや複合材料を識別し、リサイクルのために分別するための有用な方法が得られる。タガントは、例えば、押出成形されたプラスチック本体や繊維に含まれていてもよい。
【0058】
任意の特徴は従属請求項に記載される。
【0059】
タガントは、プラスチックまたは複合材料のマスターバッチに含まれていてもよい。タガントは、材料全体に分布されていてもよく、例えば、道路交通事故のひき逃げの際などに、材料の断片を容易に追跡することができる。
【0060】
プラスチックまたは複合材料は、本発明の他の態様で提示されるタガントの任意の特徴または特性を含んでもよい。
【0061】
本発明の第7の態様によれば、カーペット、フロアタイル、またはリノリウムなどの床材、および建物の外装のための被覆材からなるグループから選択された建築部材が提供され、この建築部材は、本体と本体に分布されたタガントとを含み、タガントは建築部材の重量に対して実質的に0.1重量%までの量で提供され、タガントは赤外光または紫外光により1つの波長で励起され、1つまたは複数の他の波長で発光し、タガントの発光波長またはスペクトルは建築部材の識別性を示す。
【0062】
これにより、床材や被覆材の特性を検査することができ、要求されたタイプのものが使用されているか、要求された安全基準を満たさない安価で粗悪な製品で代用されていないかを確認することができる。
【0063】
このチェックは、本発明の第2の態様の方法と同様の方法で行うことができる。例えば、建築部材の識別性を非破壊的に認証するためである。
a) 建築部材に光を当て、タガントを励起する(存在する場合)ステップ、
b) 続いて建築部材から放出された光があれば、それを検出するステップ、
c) 検出された光を、予想される建築部材に対応する予想されるシグネチャーの発光波長またはスペクトルと比較して、建築部材が予想される識別性と特性を持っているかどうかを判断するステップ。
【0064】
任意の特徴は従属請求項に記載されている。
【0065】
建築部材は、本発明の他の態様で提示されるタガントの任意の特徴(複数を含む)を含んでもよい。
【0066】
本発明の第8の態様によれば、自動化されたシステムを用いて、リサイクルのために異なる材料の物品の混合物を分別する方法であって、以下のステップを含む方法が提供される。
a) ある場合にはタガントを励起するためにその物品に光を当てるステップ、
b) 続いてその物品から発せられた光があれば、それを検出するステップ、
c) 検出された光を、タガントのシグネチャー発光波長またはスペクトルの記録またはデータベースと比較するステップ、
d) 残りの物品の少なくとも1つ、または好ましくは残りの物品の一部または全部について、ステップ(a)から(c)を繰り返すステップ、
e) ステップ(a)から(d)の結果に基づいて、物品の混合物を、バッチまたはバッチの一部としてリサイクルするために、同じまたは実質的に類似した材料の物品の少なくとも1つのセットに自動的に分別するステップ。
【0067】
これにより、リサイクルのための混合材料(特にプラスチック)の自動(または半自動)分別が容易になる。これにより、プラスチックの種類や、実際にリサイクル可能かどうかの分別において、人為的なミスによる汚染を避けることができます。例えば、パッケージに使用されている多種多様なプラスチックを物品のグループに細分化し、それらをまとめてリサイクルすることで、使用可能なリサイクル製品/材料を回収することができる。
【0068】
また、リサイクル素材を使用していても、その素材がリサイクルに適していないものを識別し、分別するために使用されることもできる。
【0069】
任意の特徴は従属請求項に記載される。
【0070】
異なるプラスチックは、効率的に分別するために異なるタガントを含むべきである。タガントはリサイクルの過程でその場に残る可能性があるので、グループ化された物品は類似または同じタガント(または比率)であるべきである。
【0071】
もし、リサイクルの過程でタガントが失われたり、減少したりした場合は、その後同じプロセスで分別された場合に、その材料がX回リサイクルされたことを示す指標となる。
【0072】
混合物は、異なるプラスチックで作られた複数のプラスチックの物品を含んでいてもよい。
【0073】
既存のリサイクルシステムやプラントに、適切な発光システム、1つまたは複数の発光検出器、分別機構、検出器の結果に応じて分別機構を制御するようにプログラムされた電子制御装置を取り付けて、上記の方法を実行することができる。
【0074】
本発明のこの態様におけるタガントは、本発明の他の態様のいずれかに関して提示された任意の特徴(複数を含む)を含むことができる。
【0075】
本発明の任意の態様において、タガントは、赤外線を吸収してUV光を放出するか、または可視光を放出するか、あるいはUV光を吸収して可視光または赤外線を放出してもよい。
【0076】
本発明のいずれの態様においても、タガントからの発光(UV発光など)は、タガントを含む塗料または材料の厚さを評価するために使用されてもよい。製品の発光または色は、製品を識別するため、または製品の供給者および/または製品の製造日を識別するために使用されてもよい。すなわち、タガントは、製品を認証する手段としてだけでなく、製品の起源や年数を確認する手段としても選択することができる。これは、製品自体に従来のバーコードを付けることができない塗料などの製品に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
本発明をよりよく理解するために、また本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、ここでは例として添付の図面を参照する。
【
図1】
図1は、塗料の識別性を認証するプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
塗料は、望ましい色を提供するために顔料または一連の顔料を含む。また、塗料は、塗料を基材や表面に適切に付着させるためのバインダーを含む。塗料はさらに、他の成分を均質に分布させ、基材または表面への塗料の塗布を可能にする分散媒(carrier fluid)または溶媒を含む。分散媒や溶媒は、塗料を塗布した後に蒸発するように選択されており、塗料が基材上で乾燥または定着するようになっている。本実施形態では、これらの成分(顔料、バインダー、キャリア)の従来のものが使用される。
【0079】
添加剤は、使用目的に応じて塗料に含まれる。例えば、屋外用の塗料は耐候性のある添加剤を含むであろう。防火地域の壁の塗料は、耐火性の添加剤を含むであろう。食品製造領域や保育園の塗料は抗菌性添加剤を含むであろう。耐候性、難燃性、抗菌性を備えた塗料は、複数の添加剤と、選択された添加剤に対応する複数のタガントを有する。
【0080】
塗料には、タガントやセキュリティマーカーが含まれる。タガントは、塗料が液状のうちに添加される。タガントは、塗料の他の成分の前や後、あるいは同時に導入することができる。本実施形態では、タガントはランタノイド系セラミックタガントの組み合わせである。これらのタガントを併用することで、偽装が困難なシグネチャー発光スペクトルを塗料に与えることができる。ある実施形態では、CeMgAl11O19:Tb3+、BaMgAl10O17:Eu、La0.60Ce0.27Tb0.13PO4の組み合わせを使用している。塗料の1kgのサンプルには、約1g~2.5gのタガントの組み合わせが含まれる。
【0081】
この塗料は、従来の方法で壁や物体などの基材や表面に塗布することができる。塗料が完全に乾くまでの時間は、キャリア液や溶媒、周囲の環境、塗料の他の成分、そして全体の塗布層数(およびそれらの層を塗布する間の時間)によって異なる。例えば、耐火性塗料に適した厚さ100ミクロンの層の場合、認証に十分な硬化が得られるまでに7日間を要することがある。
【0082】
図1は、塗料を表面に塗布して十分に硬化させた後に、塗料の識別性を認証するための一連の手順を示す。本実施形態では、表面は非金属の表面である。これは、塗装を行う作業者が、例えば塗料の認証を担当する当局によって監視されていないことを想定している。
【0083】
携帯型読み取り装置は、赤外線を塗料に照射するために使用される。携帯型読み取り装置は、赤外光と可視光の範囲で光を検出することができ、塗料からの反射または発光によって戻ってくる光を検出する。帰還信号は、入射光を吸収して応答して発光するタガントの存在によるものである。他の実施形態では、読み取り装置はUV光を塗料に照射してもよい。
【0084】
光が検出されない場合、または検出された光が直接反射したものとしか考えられない場合、その塗料にはタガントが含まれていないと判断され、認証チェックに失敗する。読み取り装置では、例えば、このことを示すLED(例えば赤色LED)が点灯したり、スピーカーから警告音が鳴ったりする。
【0085】
タガントが存在すると、赤外光や紫外光を吸収し、光をアップコンバートまたはダウンコンバートして、シグネチャースペクトルを放出する。これが読み取り装置によって検出され、あらかじめプログラムされた発光スペクトルまたは発光スペクトルのセットと比較される。ユーザーが読み取り値を特定のスペクトルと比較したり、読み取り装置が読み取り値をプログラムされたすべてのスペクトルと自動的に比較したりしてもよい。
【0086】
塗料からの発光スペクトルが、プログラムされたデータと十分に一致した場合(例えば、95%の信頼区間内)、その塗料は認証プロセスの第1段階を通過する。塗料の厚さが問題にならない場合は、これで十分かもしれない。例えば、抗菌用途では、火災関連の用途に比べて塗料の厚さはそれほど重要ではない。
【0087】
塗料の厚さをチェックするには、一致した発光スペクトルの強度と検出された光の強度を比較する。あらかじめプログラムされた検量線を用いて、検出された光の強度に応じて塗料の厚さを判定する。検出された光の強度が低すぎる場合は、塗料の層が少なすぎることになり、読み取り装置はチェックに失敗したことを示す。理想的には、この不合格表示は、第1段階の「発光しない」という不合格とは異なる。場合によっては、塗料の厚みの不足が示されてもよい。
【0088】
検出された光の強度が期待された値と一致するか、または必要な値を超えた場合、塗料は認証チェックに合格したとみなされ、読み取り装置は別のLEDでまたは「成功」の音などでそれを示す。
【0089】
いくつかの実施形態では、カメラを使用して、タガントを励起すると予想される光で照射されたら塗料の画像をデジタル記録する(特定のタガントが存在して励起されると予想される場合)。画像には、タイムスタンプや位置情報のタグを付けることができる。画像は、現場外での分析のために送信され、これにより認証すべき塗装部分が多数ある大規模な建物や不動産のチェックプロセスを効率化することができる。
【0090】
上記の説明は、ワニスに同様の方法で適用できることが理解されるだろう。
【0091】
いくつかの実施形態では、塗料またはワニスは、従来の塗料またはワニスであってもよく、別のタガント組成物をその塗料またはワニスに使用時点で加えてもよい。これは、缶などの容器を開けて、任意に塗料やワニスをより大きな容器に移し、タガント組成物(タガント、分散剤、添加剤)を塗料やワニスに加えることで行うことができる。その組成物は、タガントが均一に分散するように混合される。その後、塗料やワニスを使用する準備が整い、上記のように塗料やワニスを塗布した後に試験を行うことができる。タガント組成物は、いくつかの実施形態において、塗料またはワニスの容器に添加して混合してもよいことが理解されるであろう。
【0092】
別の実施形態では、タガントを含むプラスチック製の本体または物品(または複合材料で作られた本体/物品)が提供される。プラスチックまたは複合材料は、従来の手段によって本体または物品に製造または押し出される。タガントは、その製造または押し出しのステップの前に、プラスチックまたは複合材料に添加される。
【0093】
例えば、タガントは、製造前または製造の最初の段階で、出発材料に添加または組み込んでもよい。例えば、プラスチックのバッチを溶かし、タガントを加えて均一に分散させた後、プラスチックを特定の形状に加工することができる。
【0094】
タガント組成物は、例えば、射出成形用のプラスチックペレットに混合してもよい。
【0095】
同様の実施形態では、カーペット、フロアタイル、リノリウム、外装被覆材などの建築部材を、タガントまたはタガント組成物を含むプラスチックまたは複合材料を用いて製造することができる。これらの建築部材は、前述の塗料/ワニスと同様の方法で試験することができる。
【0096】
別の実施形態では、リサイクルのためにプラスチック物品を分別する方法が提供される。プラスチック物品は、各物品に組み込まれたプラスチックの種類に応じて、タガント(複数を含む)を含む。例えば、次のような物品の混合物を考える。
・リサイクル可能なポリ袋で、第1のタガント、またはシグネチャー比Aのタガントを有する。
・リサイクル可能なPETトレイで、第2のタガント、またはシグネチャー比Bのタガントを有する。
・リサイクルされたプラスチック容器、それはリサイクルできない、第3のタガント、またはシグネチャー比Cのタガントを有する。
・リサイクルできないプラスチック、第4のタガント、またはシグネチャー比Dのタガントを有する。および
・タガントを持たないリサイクルできないプラスチック。
【0097】
正確な形(トレイなど)やプラスチックの種類(PETなど)は、ここでは限定することを意図していないことが理解できるだろう。異なる形態や種類は、純粋に方法を例示するために言及されている。すなわち、典型的に廃棄されるプラスチックおよびプラスチックの形態の例を示すためである。他のプラスチックおよびプラスチック物品の形態は、他の実施形態において本方法で使用することができる。
【0098】
自動化または半自動化されたシステムは、上記の混合物(またはプラスチック物品を含む他の混合物)を以下のように分別するように構成することができる。物品は、発光および検出システムを介して、例えば、連続して/1つずつ進むことができる。発光装置(エミッタ)は、プラスチック中のタガントからの発光を刺激する波長のIRまたはUV光を発するように構成されるべきである。
【0099】
使用中、発光が検出されない場合(リサイクルできないプラスチック)、その物品は廃棄物として送られるか、手で分別される。発光した光が検出された場合、その光は既知のタガントの発光波長またはスペクトルの記録またはデータベースと比較される。
【0100】
この比較によってプラスチックの種類が識別されると、そのプラスチックの物品は、特定のプラスチック素材またはプラスチック素材のグループの物品を扱う正しい宛先に送られる。これにより、プラスチックのリサイクルがより効率的になる。これは、他の合成素材の分別にも同様に適用できることは理解されるであろう。
【0101】
上記のケースでは、リサイクルのために別々にグループ化される可能性のある2種類のタガント付きプラスチックがある。これらの種類のプラスチックは、順番に分別されてもよいし、並行して分別されてもよい。
【0102】
物品が1つずつスキャンされる場合もあれば、バッチやバルクでスキャンされる場合もあることは理解できるであろう。システムは、分別のために進む様々な物品に、物理的またはデジタル的にタグを付けたり追跡したりする。ロボットアームなどの自動化された手段は、プラスチックの物品をピックアップしたり、プラスチックの物品を他の物品から分離したりすることができ、選択されたプラスチックの物品をリサイクルに適したバッチに分別することができる。
【0103】
他の実施形態では、分別されるプラスチックの物品は、タガントを有する1つの種類のプラスチックと、タガントを有しない他の種類のプラスチックを含むことができる。混合されたプラスチックは、同様の方法でリサイクルのために類似または同じプラスチックのバッチに分別することができる。
【0104】
このシステムは、より一般的な意味で、混合廃棄物や混合材料からプラスチックを分別するのにも適していることが理解されるだろう。例えば、このプロセスは、例えば埋立地の廃棄物やごみ、あるいは埋立地に向かうごみからプラスチックを分離するために使用することができる。
【0105】
すなわち、廃棄物の流れまたはリサイクル材料の流れは、金属、ガラス、木材、紙および/または他の非プラスチック材料のいずれか1つまたは複数などの非プラスチックを含んでいてもよい。したがって、分別プロセスは、タガントを含む材料を、類似のタガントを含む材料の1つまたは複数のグループと、非タガントを含む材料の少なくとも1つのグループとに一般的に分別するために使用されてもよい。
【0106】
したがって、本発明は複数の方法で実質的に有用である。任意の実施形態において、タガント(複数可)は、塗料もしくはワニス、またはプラスチックもしくは複合材料(またはそれらを含む製品)の製造段階で添加/含有されてもよい。これにより、タガントを含む製品に応じて、塗布後および/またはリサイクル目的で、製品の識別性を独立して認証することができる。
【0107】
上述した実施形態は、例としてのみ提供されており、添付の請求項によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更や修正が当業者に明らかになるであろう。