IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鼎佳能源股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許7613767空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置
<>
  • 特許-空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置 図1
  • 特許-空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置 図2
  • 特許-空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置 図3
  • 特許-空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置 図4
  • 特許-空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置 図5
  • 特許-空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造及び水素酸化装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/28 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
B01J31/28 M
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023106006
(22)【出願日】2023-06-28
(65)【公開番号】P2024146679
(43)【公開日】2024-10-15
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】112112502
(32)【優先日】2023-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521129288
【氏名又は名称】鼎佳能源股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】閻 明宇
(72)【発明者】
【氏名】蔡 亞庭
(72)【発明者】
【氏名】史 富洋
(72)【発明者】
【氏名】張 旭霖
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055210(JP,A)
【文献】特開2017-199656(JP,A)
【文献】特開2007-222732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/40-23/42
B01J 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造であって、
第一の表面を有する基材と、
前記基材の前記第一の表面の上に設置されている触媒層とを含み、
前記触媒層は、
カーボン担体と、
白金金属又は白金合金を含有する複数の触媒粒子と、
フッ素系ポリマーとを含み、
前記複数の触媒粒子は、前記カーボン担体の表面に担持され、前記カーボン担体は、前記フッ素系ポリマーにより前記基材の前記第一の表面に粘着されていることを特徴とする触媒構造。
【請求項2】
前記複数の触媒粒子は、平均粒径が1nm~50nmであることを特徴とする請求項1に記載の触媒構造。
【請求項3】
前記複数の触媒粒子は、パラジウム金属、パラジウム合金、ニッケル金属、ニッケル合金、コバルト金属、コバルト合金、ルテニウム金属、ルテニウム合金又はこれらの組み合わせを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の触媒構造。
【請求項4】
前記カーボン担体は、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、活性炭、メソポーラスカーボン、メソポーラスカーボン微小球、グラファイト、グラフェン又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載の触媒構造。
【請求項5】
前記触媒層における前記カーボン担体及び前記複数の触媒粒子の合計重量を基準とし、前記複数の触媒粒子の使用量は、0.1重量%~90重量%であることを特徴とする請求項1に記載の触媒構造。
【請求項6】
前記基材の幾何学形態は、中が空洞になっていない平板形状、複数の貫通孔を備えた平板形状、波曲げ形状、グリッド形状、格子形状、ハニカム形状、発泡多孔形状又はこれらの組み合わせを含むことを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載の触媒構造。
【請求項7】
前記基材は、第二の表面を有し、前記第二の表面は、前記第一の表面に対向し、当該第二の表面には、もう一つの触媒層が設置され、前記もう一つの触媒層は、前記第一の表面の上に設置されている前記触媒層と同じ材料を有することを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載の触媒構造。
【請求項8】
請求項1~5の何れか1つに記載の少なくとも1つの触媒構造と、
互いに連通する収容空間、第一のガス流通部及び第二のガス流通部を有するケーシングとを含み、
当該収容空間は、当該ケーシングの内部に位置し、前記第一のガス流通部及び前記第二のガス流通部は、それぞれ前記収容空間の両端に設置されており、
前記触媒構造は、当該収容空間の中に設置され、前記第一のガス流通部及び前記第二のガス流通部の間に位置していることを特徴とする水素酸化装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの触媒構造は、複数の触媒構造であり、それぞれの触媒構造は、互いに間隔をあけて並んでいることを特徴とする請求項8に記載の水素酸化装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの触媒構造は、螺旋巻き形状であることを特徴とする請求項8に記載の水素酸化装置。
【請求項11】
前記ケーシングの外表面に設置され、感温変色の染料を含む感温変色アセンブリを更に含むことを特徴とする請求項8に記載の水素酸化装置。
【請求項12】
前記ケーシングの外表面に設置され、水気を吸収した後に変色する染料を含む湿気感知ユニットを更に含むことを特徴とする請求項8に記載の水素酸化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒構造に関し、特に、水素を酸化するために用いられる触媒構造及び前記触媒構造を含む水素酸化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際エネルギー機関(INTERNATIONAL ENERGY AGENCY、IEA)は、2050年に二酸化炭素排出量が実質的にゼロであるという目標を達成するために、エネルギー構造が大幅に調整され、変革され、その中、水素エネルギーが益々注目されるであろうと予測している。水素は、エネルギー生産の原料として使用されるだけでなく、エネルギー担体として使用することもできる。電力供給が需要を上回った場合、水素は、再生可能エネルギーにより生成された余剰エネルギーを貯蔵するために使用することができる。また、集積回路(IC)の製造プロセスにおいても、キャリアガスとして水素が使用されたり、プロセス反応により水素が発生したりするので、ICの製造プロセス後には、廃水素が発生する。しかしながら、水素は、引火性、爆発性の特性を有するので、空気の中の水素の体積濃度が4.0%以上になると、火源に遭遇すれば、爆発を引き起こす。
【0003】
従って、水素を使用する場所や水素を製造する場所等のような、水素が漏洩する可能性がある場所には、水素漏洩検知器を設置することが多く、水素が漏洩し、予め設定した安全値を超えた場合、警報を発して連鎖的に安全措置を開始し、設備の運転を停止し、現場の人や可燃物を避難させ、排気ファンを作動させるか、自然対流を利用して環境内の水素濃度が設定された安全値に低下するまで、一時停止された動作を継続し、又は、空間を再利用する。つまり、現在の安全措置は、大量のリソース及び時間を消費する可能性がある。また、水素は、空間の天井部分や死角に集中しやすいため、対流や排気ファンだけに頼っては、水素濃度が安全範囲に収まらないという領域が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特開CN112271003A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した問題を解決するために、水素を安全性の高い水に変換するという関連研究が提案されている。例えば、電気カップリング加熱を使用して温度を上げ、水素を酸化に必要な温度に到達させる電気カップリング加熱法であり、又は、触媒(例えば、パラジウム触媒)を使用して低酸素濃度下で水素の水への変換を促進する。しかしながら、上述した方法は、水素を水に変換することにより、空間内の水素濃度を下げることができるが、全て高温で行う必要がある。また、通常、触媒は、セラミック担体上に焼結して固定されているので、空気の中に含有される水気が高すぎると、セラミック担体が加水分解して崩壊しやすいため、触媒構造の無効を招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来技術における技術欠陥に鑑み、本発明の目的は、空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造を提供することである。当該触媒構造は、非高温の環境で水素を変換できるため、空間内の水素濃度を下げることができる。
【0007】
本発明のもう1つの目的は、空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造を提供することである。当該触媒構造は、高湿度の環境で依然として水素を効果的に変換できるため、空間内の水素濃度を下げることができる。
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造を提供する。当該触媒構造は、第一の表面を有する基材と、前記基材の前記第一の表面の上に設置されている触媒層とを含む。また、前記触媒層は、カーボン担体と、白金金属又は白金合金を含有する複数の触媒粒子と、フッ素系ポリマーとを含む。また、前記複数の触媒粒子は、前記カーボン担体の表面に担持され、前記カーボン担体は、前記フッ素系ポリマーにより前記基材の前記第一の表面に粘着されている。
【0009】
本発明は、主に、フッ素系ポリマーにより白金金属を担持するカーボン担体を、前記基材に分散・付着させることにより、構造的に安定な触媒構造を得ることができ、当該触媒構造は、強い耐酸化性を有する。本発明は、白金金属又は白金合金を含有する触媒粒子を使用していることにより、非高温の環境(例えば、0℃~100℃)でも、触媒の活性化の作用を発揮することができる。また、本発明は、カーボン担体を使用していることにより、セラミックス担体を用いることで水気の影響を受けやすいということを避けることができる。よって、本発明による、空気の中の水素を酸化することが可能な触媒構造は、耐熱性を向上させ、より良い耐久性を有させることができる。
【0010】
幾つかの実施形態においては、前記カーボン担体は、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、活性炭、メソポーラスカーボン、メソポーラスカーボン微小球、グラファイト、グラフェン又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限らない。前記カーボン担体は、カーボンブラックであることが好ましい。
【0011】
前記カーボン担体が複数の孔を有する場合、前記複数の触媒粒子は、前記カーボン担体の表面に担持されたり、孔内に分散されたりすることができる。前記カーボン担体が粉末状または粒状の構造(粉粒状構造)である場合、前記複数の触媒粒子は、前記カーボン担体の表面に担持され、それぞれの粉末状または粒状のカーボン担体は、前記フッ素系ポリマーが前記カーボン担体の表面を覆うことにより相互に接着する。言い換えれば、前記フッ素系ポリマーは、前記カーボン担体の表面の一部又は全部を覆うことができる。
【0012】
前記カーボン担体が粉末状または粒状の構造である場合、前記カーボン担体の平均粒径は、10ナノメートル(nm)~100nmであることが好ましいが、これに限らない。前記平均粒径とは、累積粒度分布百分率が50%に達した時に対応する粒径を意味し、D50と略称される。前記カーボン担体の平均粒径は、10nm~50nmであることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、前記複数の触媒粒子は、平均粒径が1nm~50nmであっても良いが、これに限らない。前記平均粒径は、D50を意味する。前記複数の触媒粒子は、平均粒径が2nm~10nmであることが好ましい。
【0014】
幾つかの実施形態においては、前記複数の触媒粒子が含有する前記白金合金は、白金含有量が0.1重量%(wt%)~99wt%であることを指し、前記白金合金は、白金含有量が1wt%~50wt%であることが好ましい。
【0015】
幾つかの実施形態においては、前記複数の触媒粒子は、パラジウム(Pd)金属、パラジウム合金、ニッケル(Ni)金属、ニッケル合金、コバルト(Co)金属、コバルト合金、ルテニウム(Ru)金属、ルテニウム合金又はこれらの組み合わせを更に含む。
【0016】
幾つかの実施形態においては、前記フッ素系ポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethene、PTFE)、パーフルオロスルホン酸樹脂(perfluorosulfonic acid resin、PFSA)、ポリフッ化ビニリデン(poly(vinylidene fluoride),PVDF)又はこれらの組み合わせを含んでも良いが、これらに限らない。
【0017】
幾つかの実施形態においては、前記触媒層における前記カーボン担体及び前記複数の触媒粒子の合計重量を基準とし、前記複数の触媒粒子の使用量は、0.1wt%~90wt%である。
【0018】
幾つかの実施形態においては、前記触媒層における前記カーボン担体及び前記複数の触媒粒子の合計重量を基準とし、前記カーボン担体の使用量は、10wt%~99.9wt%である。
【0019】
幾つかの実施形態においては、前記触媒層の合計重量を基準とし、前記フッ素系ポリマーの使用量は、0.1wt%~50wt%である。
【0020】
幾つかの実施形態においては、前記基材の材料は、アルミニウム金属、アルミニウム合金、銅金属、銅合金、ニッケル金属、ニッケル合金、ステンレス鋼、炭素材料、炭素繊維複合材料、プラスチック、ガラス繊維複合材料又はこれらの組み合わせを含んでも良いが、これらに限らない。具体的には、前記炭素繊維複合材料は、炭素繊維と高分子樹脂とを組み合わせた複合材料であり、前記ガラス繊維複合材料は、ガラス繊維と高分子樹脂とを組み合わせた複合材料である。
【0021】
幾つかの実施形態においては、前記基材の幾何学形態は、中が空洞になっていない平板形状、複数の貫通孔を備えた平板形状、波曲げ形状、グリッド形状(フェンス形状)、格子形状(メッシュ形状)、ハニカム形状、発泡多孔形状又はこれらの組み合わせを含んでも良い。例えば、前記基材は、ニッケル発泡体、アルミニウム発泡体、銅発泡体、炭素発泡体等の多孔質材料のような多孔質形状材料又はメッシュ形状材料であっても良い。他の幾つかの実施形態においては、前記基材の対向する両端は、更に延びて二翼部を形成することができ、当該二翼部は、係止アセンブリにより前記触媒構造を固定することができる。
【0022】
本発明によれば、前記基材は、第一の表面及び第二の表面を有する。前記第二の表面は、前記第一の表面に対向する。幾つかの実施形態においては、前記基材は、第一の表面の上だけに前記触媒構造が設置されている。他の幾つかの実施形態においては、前記基材の第二の表面の上には、もう1つの触媒層が更に設置されている。
【0023】
例えば、前記第二の表面の上の前記もう1つの触媒層は、前記第一の表面の上の前記触媒層と完全に同じであっても良く、又は、前記第二の表面の上の前記もう1つの触媒層は、前記第一の表面の上の前記触媒層と材料が同じであるが、平均厚さが異なっても良く、又は、前記第二の表面の上の前記もう1つの触媒層は、前記第一の表面の上の前記触媒層と同じカーボン担体を有するが、触媒粒子の種類が異なっても良く、又は、前記第二の表面の上の前記もう1つの触媒層は、前記第一の表面の上の前記触媒層と同じ触媒粒子を有するが、カーボン担体の種類が異なって良いが、上述した内容に限らない。
【0024】
幾つかの実施形態においては、前記触媒構造は、平均厚さが0.06mm~10.5mmである。
【0025】
幾つかの実施形態においては、前記基材は、平均厚さが0.05mm~10mmである。
【0026】
幾つかの実施形態においては、前記媒体層は、平均厚さが0.01mm~0.5mmである。
【0027】
幾つかの実施形態においては、本発明の触媒構造は、水素処理を行おうとする場所に直接的に設置することができる。例えば、係止アセンブリにより前記触媒構造における基材が伸びて形成する二翼部を壁に固定する。また、前記触媒構造は、地面に垂直するように設置されている。前記空気が前記触媒構造を通過する時に、空気に含まれる水素と空気の中の酸素を反応して水を生成することを促進する。
【0028】
本発明の触媒構造は、前記水素を水に変換することを促進するように、温度が0℃~100℃である環境に設置しても良いことが好ましいが、これに限らない。
【0029】
本発明は、体積濃度が5%以下である水素を含む空気を処理し、前記水素を水に変換ことに適用することが望ましく、水素による火災や爆発等の災害を避けることができる。
【0030】
本発明は、水素酸化装置を更に提供する。当該水素酸化装置は、少なくとも1つの前記触媒構造と、互いに連通する収容空間、第一のガス流通部及び第二のガス流通部を有するケーシングとを含む。なお、前記収容空間は、当該ケーシングの内部に位置し、前記第一のガス流通部及び前記第二のガス流通部は、それぞれ前記収容空間の両端に設置されている。前記媒体構造は、前記収容空間の中に設置され、前記第一のガス流通部及び前記第二のガス流通部の間に位置している。
【0031】
幾つかの実施形態においては、前記少なくとも1つの触媒構造は、複数の触媒構造であり、それぞれの触媒構造は、互いに間隔をあけて並んでいる。具体的には、複数の触媒構造は、互いに間隔をあけて平行に並んでも良く、又は、複数の媒体構造は、互いに間隔をあけて同心円に並んでも良い。
【0032】
幾つかの実施形態においては、前記少なくとも1つの触媒構造は、全体として螺旋巻き形状であり、各サイクルは、互いに間隔をあけて通路を形成することができる。水素含有空気が前記触媒構造内の通路を螺旋状に通過する時に、前記水素含有空気が前記触媒構造を通過する時間を延長することができ、水素の酸化反応をより完全に行うことができる。
【0033】
幾つかの実施形態においては、前記ケーシングは、前記第一のガス流通部及び前記第二のガス流通部だけにそれぞれ1つまたは複数の開口を設置しても良く、又は、前記ケーシングの全体は、グリッド形状又はメッシュ形状の形状を有しても良い。
【0034】
幾つかの実施形態においては、ガスは、前記第一のガス流通部から導入され、前記第二のガス流通部から排出される。例えば、前記第一のガス流通部から導入される気流の方向は、前記第二のガス流通部から排出される気流の方向と同じであり、又は、前記第一のガス流通部から導入される気流の方向は、前記第二のガス流通部から排出される気流の方向に垂直する。他の幾つかの実施形態においては、ガスは、前記第一のガス流通部と前記第二のガス流通部の間において双方向に流通する。
【0035】
幾つかの実施形態においては、前記触媒構造は、着脱可能な方式で前記水素酸化装置に取り付けられている。
【0036】
幾つかの実施形態においては、前記水素酸化装置は、前記ケーシングの外表面に設置され、感温変色の染料を含む感温変色アセンブリを更に含んでも良い。空気に含まれる水素は、前記水素酸化装置内の前記触媒構造に接触すると、前記水素の酸化反応が起こり、前記水素酸化装置の温度が上昇し、前記感温変色アセンブリは、変色して指示することができる。
【0037】
幾つかの実施形態においては、前記水素酸化装置は、前記ケーシングの外表面に設置され、水気を吸収した後に変色する染料を含む湿気感知ユニットを更に含んでも良い。空気に含まれる水素は、前記水素酸化装置内の前記触媒構造に接触すると、前記水素は、酸化反応をして水気を発生するので、前記湿気感知ユニットは、変色して指示することができる。好ましくは、前記湿気感知ユニットは、前記ケーシングの上表面に設置され、前記上表面は、前記第一のガス流通部及び前記第二のガス流通部に垂直しても良く、又は、前記上表面は、前記第二のガス流通部の一部でも良い。即ち、前記水素酸化装置の設置が完了したら、前記湿気感知ユニットは、前記ケーシングの上方に位置する。
【0038】
幾つかの実施形態においては、前記水素酸化装置は、水素感知ユニットと一緒に使用することができる。前記水素感知ユニットは、前記ケーシングの外部に設置されている。前記水素感知ユニットは、水素を吸収した後に変色する染料を有する。水素は、前記水素酸化装置に接触すると、前記水素感知ユニットは、変色して指示することができる。前記水素感知ユニットは、前記水素酸化装置の上方に対応して設置されていることが好ましい。
【0039】
幾つかの実施形態においては、水素の酸化反応が発熱反応であるため、前記水素酸化装置は、前記ケーシングの外表面に設置されている温度検出器を更に含むことができる。前記水素酸化装置の温度が高すぎる時に、前記温度検出器は、警告を発することができる。
【0040】
幾つかの実施形態においては、前記水素酸化装置は、鉛蓄電池の充電室又は水素ボンベのキャビネット、原子力発電所等のような、少量の水素を発生又は漏洩する可能性がある密閉又は半開放の空間に設置するのに適しているが、これに限らない。例えば、前記水素酸化装置は、前記空間の中の上層に設置されている。
【0041】
幾つかの実施形態においては、前記水素酸化装置は、固定アセンブリを更に含んでも良い。前記固定アセンブリは、磁気アセンブリ、バックル材又はロック材等を含んでも良いが、これらに限らない。
【0042】
本発明によれば、前記水素酸化装置は、温度が0℃~100℃である環境に置いても良いが、これに限らない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施例1の触媒構造の側面断面模式図である。
図2】実施例2の触媒構造の模式図である。
図3】実施例3の水素酸化装置の模式斜視図である。
図4】実施例4の水素酸化装置の模式斜視図である。
図5】実施例4の水素酸化装置の別の角度から見た模式斜視図である。
図6】実施例5の水素酸化装置の模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、幾つかの実施例を列挙して本発明の実施形態を説明する。本発明の説明においては、用いられている「中心」、「上」、「下」、「天井」、「底」、「内」、「外」等で示される方角又は位置関係は、図に示す方角又は位置関係に基づくものであり、本発明を分かりやすく説明するためのものに過ぎず、言及される装置又はアセンブリが特定の方角を有し、特定の方角で構築及び操作をしなければならないことを意味又は示唆するものではない。
【0045】
<実施例1の触媒構造>
図1に示すように、本実施例の触媒構造10は、単一の触媒層12を含む。即ち、前記触媒構造10は、基材11及び触媒層12を含む。基材11は、第一の表面111及び第二の表面112を有する。触媒層12は、基材11の第一の表面111の上に設置されている。触媒層12は、カーボン担体121、複数の触媒粒子122及びフッ素系ポリマー123を含む。なお、前記複数の触媒粒子122は、前記カーボン担体121の表面の上に担持され、前記フッ素系ポリマー123は、前記カーボン担体121の一部の表面を覆う。
【0046】
前記基材11の材料は、ガラス繊維複合材料である。前記基材11の平均厚さは、0.2mmである。前記触媒層12の平均厚さは、0.05mmである。前記触媒層12においては、前記カーボン担体121は、粉末状または粒状のカーボンブラックからなり、前記カーボンブラックの平均粒子径は、30nmである。前記複数の触媒粒子122は、白金金属を含む。前記複数の触媒粒子122の平均粒子径は、10nm未満である。前記フッ素系ポリマー123は、PFSAである。前記フッ素系ポリマー123は、前記粉末状または粒状のカーボン担体121の表面を覆い、前記粉末状または粒状のカーボン担体121を互いに接着するだけではなく、前記粉末状または粒状のカーボン担体121を前記基材11の第一の表面111に粘着させることもできる。
【0047】
<実施例2の触媒構造>
本実施例の触媒構造10は、基材11及び2つの触媒層12を含む。図2に示す触媒構造10を詳しく説明する。前記触媒構造10は、平板形状の基材11及び2つの触媒層12を含む。前記基材11は、対向する第一の表面111及び第二の表面112を有する。1つの触媒層12は、前記基材11の第一の表面111の上に設置され、もう1つの触媒層12は、基材11の第二の表面112の上に設置されている。即ち、前記基材11は、2つの触媒層12の間に挟まれて設置されている。2つの触媒層12は、同じ材料及び平均厚さを有する。本実施例における基材11、触媒層12の材料の選択及び平均厚さは、実施例1の基材11、触媒層12と同じである。
【0048】
<実施例3の水素酸化装置>
図3に示すように、本実施例の水素酸化装置1は、複数の触媒構造10及び箱状のケーシング20を含む。ケーシング20は、連通する収容空間201、第一のガス流通部202及び第二のガス流通部203を有する。収容空間201は、ケーシング20の内部に位置する。第一のガス流通部202及び第二のガス流通部203は、それぞれ収容空間201の対向する両端に設置されている。前記複数の触媒構造10は、収容空間201に挿入されて設置され、第一のガス流通部202と第二のガス流通部203の間に位置する。
【0049】
第一のガス流通部202と第二のガス流通部203には、それぞれ2つの長方形の開口が設置されている。各触媒構造10は、実施例2の触媒構造10と材料が同じであり、本実施例の水素酸化装置1に含まれる複数の触媒構造10が複数の貫通孔を更に有する点のみが異なる。なお、前記複数の触媒構造10は、合計0.672グラムの白金金属を含有している。前記複数の触媒構造10は、互いに間隔をあけて平行に並んでいる。各触媒構造10は、平板状であるが、各平板には、複数の貫通孔が設置されている。水素含有空気が第一のガス流通部202から水素酸化装置1に導入された後、水素含有空気は、一致の気流方向を維持したままで前記複数の触媒構造10を通過することができ、第二のガス流通部202から排出される。水素は、触媒構造10に接触すると、酸化反応を行うができるので、水素含有空気の中の水素の含有量を減少することができる。
【0050】
<水素酸化のテスト>
まず、検出限界が10000ppmである水素濃度検出器を用意し、前記水素濃度検出器を、周囲温度が10℃~15℃であり、水素を含まない空間に置く。その後、気流速度が毎分1.2リットル(1.2L/min)である水素を前記空間に導入し始め、320秒間連続して水素を注入すると、前記空間の水素濃度が既に検出限度(即ち、10000ppm)に到達する。
【0051】
また、実施例3の水素酸化装置を、周囲温度が10℃~15℃であり、水素を含まない同じ空間に置く。類似的には、水素を上述と同じ方式で前記空間に導入し、370秒間連続して水素を注入すると、空間の水素濃度が最高値8150ppmに到達する。その後、前記空間の水素濃度の降下が始まり、900秒間連続して水素を注入すると、前記空間の水素濃度のバランスが取れた。この時の水素濃度は、4500ppmである。上述した内容から分かるように、本発明の水素酸化装置は、確かに非高温(例えば、室温)の環境で水素の酸化反応を促進し、空間の水素濃度を減少することができる。
【0052】
<実施例4の水素酸化装置>
図4図5に示すように、本実施例の水素酸化装置1は、触媒構造10及びケーシング20を含む。ケーシング20は、中空の円柱体のメッシュ状の外周面に囲まれて形成され、前記外周面に垂直な透かし彫りの天井面及び複数の円形の穴を有する底面は、それぞれケーシング20の第二のガス流通部203及び第一のガス流通部202である。前記中空の円柱体のメッシュ状の内周面が囲んで収容空間201を形成する。即ち、ケーシング20は、連通する収容空間201、第一のガス流通部202及び第二のガス流通部203を有する。収容空間201は、ケーシング20の内部に位置する。第一のガス流通部202及び第二のガス流通部203は、それぞれ収容空間201の対向する両端に設置されている。また、前記触媒構造10は、収容空間201の中に設置されており、第一のガス流通部202と第二のガス流通部203の間に位置する。
【0053】
触媒構造10は、薄いシート状の形状を有する。触媒構造10全体は、螺旋状に巻かれており、各サイクルが互いに間隔をあけて水素含有空気の空気流通路を形成することができる。本実施例の触媒構造10は、実施例2の触媒構造10と同じ材料を有する。
【0054】
<実施例5の水素酸化装置>
図6に示すように、本実施例の水素酸化装置1は、ケーシング20及び2つの触媒構造10を含む。本実施例の水素酸化装置1は、実施例4の水素酸化装置1と同じケーシング20を有し、触媒構造10全体が螺旋状の方式で巻かれて収容空間201の中に設置されており、触媒構造10の材料の種類も同じである。本実施例の水素酸化装置1と実施例4の水素酸化装置1の主な違いは、本実施例において2つの触媒構造10を有し、1つの触媒構造10は実施例4の触媒構造10の幾何学構造と同じであるが、もう1つの触媒構造10は実施例4の触媒構造10の幾何学構造と異なるという点である。具体的には、前記もう1つの触媒構造10は、薄型の波形板であり、薄型のシート状の触媒構造10の2つのサイクルの間に挟まれて設置されている。
【0055】
上述したように、本発明の触媒構造は、非高温(例えば、室温)の環境で確かに水素の酸化反応を促進することができるので、前記触媒構造が設置される空間の水素濃度を低減することができる。よって、水素の爆発を避け、前記空間の安全性を確保することができる。また、本発明の触媒構造は、従来のセラミック担体の代わりに、カーボン担体を用いることにより、触媒構造が水気の影響を受けるのを避け、触媒構造の耐熱性、耐湿性を向上させ、より良い耐久性を有させることができる。従って、前記触媒構造を含む水素酸化装置は、異なる空間環境に適用することができ、商業的な製品開発の可能性を更に有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6