(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車載用装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/53 20240101AFI20250107BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B60K35/53
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2020199566
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(72)【発明者】
【氏名】白嶋 仁
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-131037(JP,A)
【文献】特開平11-227535(JP,A)
【文献】特開平10-029469(JP,A)
【文献】特開2000-159197(JP,A)
【文献】中国実用新案第211663172(CN,U)
【文献】特開2008-230293(JP,A)
【文献】登録実用新案第3233146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動部材と、前記移動部材を移動させるモータと、前記移動部材の移動を検知する少なくとも1つの検知スイッチと、前記検知スイッチの検知出力に基づいて前記モータを制御する制御部と、を有する車載用装置において、
前記検知スイッチからの検知出力に基づき前記制御部において前記移動部材がその移動方向の終点領域に至ったと判定されたときに、前記移動部材をロックし、前記制御部において主スイッチがOFFになったことが判定されたら、前記ロックを解除するロック機構部と、
前記ロック機構部によるロックが解除された後に、前記検知スイッチからの検知出力に基づき前記制御部において前記移動部材が再移動させられたと判定されたら、前記モータを駆動して、前記移動部材を移動させるモータ駆動部と、
が設けられていることを特徴とする車載用装置。
【請求項2】
前記モータの出力で前記移動部材を移動させる駆動機構が設けられ、
前記ロック機構部では、
前記移動部材が第1方向に移動し、前記検知スイッチからの検知出力で前記移動部材が前記終点領域に至ったと判定されたときに、前記モータを、前記移動部材を第1方向へ押し付ける方向へ駆動してから停止して、前記駆動機構
に含まれる動力伝達経路のギヤのバックラッシュの発生を無くしてセルフロックし、
主スイッチがOFFとされたときに、前記ギヤにバックラッシュを生じさせることで、前記セルフロックを解除し、
前記バックラッシュが生じている状態で前記移動部材が動いたときに、前記移動部材が再移動させられたと判定される、
請求項1記載の車載用装置。
【請求項3】
前記移動部材の第1方向への移動を規制するストッパが設けられており、前記ロック機構部では、前記モータの動力で前記移動部材を前記ストッパに押し付けることで、バックラッシュを無くす、
請求項2記載の車載装置。
【請求項4】
前記ロック機構部では、
主スイッチがOFFとされたときに、前記移動部材を前記第1方向と逆向きの第2方向へ移動させる回転方向へ、前記モータを短時間駆動して、バックラッシュを生じさせる請求項2または3記載の車載用装置。
【請求項5】
前記モータの出力軸に設けられたウオームとウオームホイールとの噛み合い部が含まれている請求項2ないし4のいずれかに記載の車載用装置。
【請求項6】
前記ロック機構部は、前記モータから前記移動部材までの動力伝達経路に設けられた電磁ブレーキである請求項1記載の車載用装置。
【請求項7】
前記主スイッチは、自動車のアクセサリースイッチである請求項1ないし6のいずれかに記載の車載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置などを搭載した移動部材がモータの動力で移動する車載用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車載用表示装置に関する発明が記載されている。
この車載用表示装置は、インストルメントパネルの上部に上方パネルが軸部を介して回動自在に支持され、上方パネルには前記軸部よりも手前側に円弧状のラック支持部材が固定されている。表示部材の上部に設けられた支持凸部がラック支持部材に回動自在に支持され、表示部材の下部に設けられた摺動突出部が、車載用表示装置の側板に形成された摺動溝に摺動自在に支持されている。駆動機構には、駆動モータと伝達歯車群とが設けられ、伝達歯車群の終段の伝達歯車が、ラック支持部材のラック噛み合い部と噛み合っている。駆動モータの出力軸にウオームが固定され、伝達歯車群にはウオームと噛み合うウオームホイールが設けられている。
【0003】
前記車載用表示装置は、イグニッションスイッチがOFFのときに、表示部材が下降した収納姿勢である。イグニッションスイッチがONになると、駆動モータが始動し、その動力がラック支持部材に伝達され、上方パネルが上方に向けて回動させられるとともに、表示部材が上昇させられる。この車載用表示装置では、上方パネルの回動姿勢が二段階に設定され、表示部材は、表示画面の一部が車室内に向けられる第1の目視位置と、表示画面が広い範囲で表示可能となる第2目視位置とに設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるような車載用表示装置では、駆動機構に設けられた伝達歯車群において歯車間のバックラッシュが生じ、また表示部材と上方パネルとの連結部などにもがたつきが生じるため、車体振動により表示部材ががたついてノイズを発生する課題が生じている。
【0006】
また、表示部材が第1の目視位置や第2の目視位置にあるときにイグニッションスイッチがOFFとされたときに、表示部材がそれぞれの目視位置に留まったまま停止する仕様となることがある。このとき、手で表示部材を下方へ押して表示部材を強制的に収納姿勢にしようとすると、駆動機構に設けられた駆動モータと伝達歯車群とが負荷となり、表示部材を収納姿勢に移動させるのが難しくなる。特に、特許文献1に記載されているように駆動機構の動力伝達経路にウオームとウオームホイールとの噛み合い構造が含まれていると、減速比が大きいため、表示部材を手動で移動させるときの負荷が過大になる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、移動部材のがたつきを防止でき、しかも主スイッチがOFFのときに、移動部材を容易に移動させることが可能な車載用装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、移動部材と、前記移動部材を移動させるモータと、前記移動部材の移動を検知する少なくとも1つの検知スイッチと、前記検知スイッチの検知出力に基づいて前記モータを制御する制御部と、を有する車載用装置において、
前記検知スイッチからの検知出力に基づき前記制御部において前記移動部材がその移動方向の終点領域に至ったと判定されたときに、前記移動部材をロックし、前記制御部において主スイッチがOFFになったことが判定されたら、前記ロックを解除するロック機構部と、
前記ロック機構部によるロックが解除された後に、前記検知スイッチからの検知出力に基づき前記制御部において前記移動部材が再移動させられたと判定されたら、前記モータを駆動して、前記移動部材を移動させるモータ駆動部と、
が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の車載用装置は、
前記モータの出力で前記移動部材を移動させる駆動機構が設けられ、
前記ロック機構部では、
前記移動部材が第1方向に移動し、前記検知スイッチからの検知出力で前記移動部材が前記終点領域に至ったと判定されたときに、前記モータを、前記移動部材を第1方向へ押し付ける方向へ駆動してから停止して、前記駆動機構に含まれる動力伝達経路のギヤのバックラッシュの発生を無くしてセルフロックし、
主スイッチがOFFとされたときに、前記ギヤにバックラッシュを生じさせることで、前記セルフロックを解除し、
前記バックラッシュが生じている状態で前記移動部材が動いたときに、前記移動部材が再移動させられたと判定される、
ものとして構成される。
【0010】
本発明の車載用装置は、前記移動部材の第1方向への移動を規制するストッパが設けられており、前記ロック機構部では、前記モータの動力で前記移動部材を前記ストッパに押し付けることで、バックラッシュを無くす、ことが好ましい。
【0011】
本発明の車載用装置は、
前記ロック機構部では、
主スイッチがOFFとされたときに、前記移動部材を前記第1方向と逆向きの第2方向へ移動させる回転方向へ、前記モータを短時間駆動して、バックラッシュを生じさせることが好ましい。
【0012】
本発明の車載用装置は、
前記モータの出力軸に設けられたウオームとウオームホイールとの噛み合い部が含まれていることが好ましい。
【0013】
本発明の車載用装置は、
前記ロック機構部が、前記モータから前記移動部材までの動力伝達経路に設けられた電磁ブレーキであってもよい。
【0014】
本発明の車載用装置は、
例えば、前記主スイッチが、自動車のアクセサリースイッチである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車載用装置は、移動部材が終点領域に至ると、駆動機構内の動力伝達がロック状態となるため、車体振動が作用したときに移動部材のがたつきの発生を防止できる。例えば、移動部材に設けられた表示装置が大型であって、移動部材の質量が大きい場合でも、車両走行時のがたつきによるノイズの発生を防止できるようになる。
【0016】
また、自動車のアクセサリースイッチなどの主スイッチがOFFとされたときに、動力伝達のロック状態が解除されるため、移動部材を手動で最小の負荷で微小な距離だけ再移動させて検知スイッチを動作させることができ、検知スイッチの検知出力に基づいてモータを駆動して、移動部材を他方の終点領域に向けて移動させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の車載用装置が車室内のパネルに設置されて、移動部材が閉じ方向(第1方向)へ移動した状態を示す斜視図、
【
図2】本発明の実施形態の車載用装置が車室内のパネルに設置されて、移動部材が開き方向(第2方向)へ移動した状態を示す斜視図、
【
図3】移動部材が閉じ方向(第1方向)へ移動した車載用装置の全体構造を示す斜視図、
【
図4】
図3に示された車載用装置の主要部の構造を示す分解斜視図、
【
図5】移動部材が閉じ方向(第1方向)へ移動した車載用装置の全体構造を示す右側面図、
【
図6】移動部材が開き方向(第2方向)へ移動した車載用装置の全体構造を示す右側面図、
【
図7】移動部材が閉じ方向(第1方向)へ移動しているときの駆動機構の一部を示す部分右側面図、
【
図8】移動部材が開き方向(第2方向)へ移動しているときの駆動機構の一部を示す部分右側面図、
【
図9】駆動機構に設けられたモータと減速歯車群とを示す部分斜視図、
【
図10】本発明の実施形態の車載用装置の回路ブロック図、
【
図11】本発明の実施形態の車載用装置の動作の一部を説明するフローチャート、
【発明を実施するための形態】
【0018】
(車載用装置10の全体構造)
図1と
図2に、自動車の車室内のパネル1が示されている。パネル1は、車室内の前方に配置されたインストルメントパネルまたはダッシュボードなどである。
図2に示すように、パネル1には、車室内に向けて開口するパネル開口部2が形成されている。
【0019】
前記パネル1の内部(内側)に、本発明の実施形態の車載用装置10が設置されている。車載用装置10はX1側が左側で、X2側が右側である。車載用装置10は、本体部20と、本体部20に移動自在に支持された移動部材30とを有している。
図5と
図6にも示されるように、移動部材30は、本体部20に対し、閉じ方向である第1方向(i)と開き方向である第2方向(ii)へ移動可能に支持されている。
図1と
図5に示されるように、移動部材30が第1方向(i)の「移動終点」で停止しているときに、移動部材30は閉じ姿勢である第1姿勢(A)となり、
図2にと
図6に示されるように、移動部材が第2方向(ii)の「移動終点」で停止しているときに、移動部材30は開き姿勢である第2姿勢(B)となる。
【0020】
図3に示されるように、移動部材30は、移動筐体31と、移動筐体31に保持された表示装置32を有している。表示装置32はカラー液晶表示パネルと、その背部に配置されたバックライトパネルなどから構成されている。あるいは表示装置32がエレクトロルミネッセンス表示パネルを有するものであってもよい。
図1と
図2に示されるように、移動筐体31の表面の広い領域に表示装置32の表示画面33が現れている。表示画面33には、静電容量式のタッチパネルや抵抗式のタッチセンサが設けられている。また、移動筐体31では、表示画面33から外れた位置の前面に操作釦が設けられている。
図1に示されるように、移動部材30が閉じ姿勢である第1姿勢(A)で停止しているとき、パネル1の開口部2が移動部材30で塞がれる。このとき、移動部材30の表示画面33がパネルの前方すなわち車室内から目視しやすい姿勢に設定される。
【0021】
図2に示されるように、移動部材30が開き姿勢である第2姿勢(B)で停止すると、移動部材30が開口部2よりも上方に位置し、開口部2が解放される。車載用装置10の本体部20の内部に収納空間(R)が形成されており、移動部材30が第2姿勢(B)になると、パネル1の開口部2の内部に収納空間(R)が現れる。この収納空間(R)は、小物入れなどとして使用される。または、本体部にディスク駆動装置や、メモリ装着装置などが搭載されており、移動部材30が第2姿勢(B)になると、開口部2にこれら装置が現れる構造であってもよい。
【0022】
図3と
図4に示されるように、車載用装置10の本体部20は金属製の本体筐体21を有している。本体筐体21は、左側(X1側)の左側板21aと右側(X2側)の右側板21b、および前方において左側板21aと右側板21bを連結する前方連結部21cを有している。
図3に示されるように、本体筐体21には、上方において左側板21aと右側板21bを連結する上板21dが設けられている。ただし、
図4では上板21dが外されている。
【0023】
車載用装置10は、左側(X1側)と右側(X2側)に回動アーム34が設けられている。左右の一対の回動アーム34は左右方向(X1-X2方向)で面対称形状である。
図3と
図4に示されるように、移動部材30の移動筐体31の右側部が、回動アーム34の回動側先部34aにねじにより固定されており、移動筐体31の左側部も、同様に回動アーム34の回動側先部34aに固定されている。
【0024】
図4および
図5と
図6に示されるように、本体筐体21の左側板21aと右側板21bの双方に、支持軸22と、支持軸22を中心とする円弧軌跡に沿う円弧案内長穴23が形成されている。左側板21aと右側板21bとで、支持軸22と円弧案内長穴23とが、左右方向で面対称な構造となっている。
図4に示されるように、回動アーム34の支持側基部34bに支持穴34cが開口しており、
図5と
図6に示されるように、支持穴34cが支持軸22に回動自在に装着されている。
図4に示されるように、左側板21aと右側板21bのそれぞれに形成された前記円弧案内長穴23に摺動軸24が摺動自在に挿入されており、
図5と
図6に示されるように、摺動軸24は、回動アーム34に形成された軸固定穴34dに固定されている。
【0025】
本体筐体21の左側板21aと右側板21bにおいて、回動アーム34が、円弧案内長穴23に案内されながら、支持軸22を支点として回動することで、移動部材30が、
図5に示す第1姿勢(A)と
図6に示す第2姿勢(B)との間で移動する。
【0026】
(駆動機構50の構造)
図4に示されるように、本体筐体21の左側板21aと右側板21bとの間に、移動部材30および回動アーム34を駆動するための駆動機構50が設けられている。駆動機構50は、左側板21aと右側板21bとの間に設けられた伝達軸51と、左側板21aの内側に設けられたモータ駆動部52と、右側板21bの外側に設けられた回動駆動部53、さらに回転駆動部53によって駆動される駆動回転体60で構成されている。伝達軸51は、左側板21aと右側板21bに回動自在に支持されている。なお、左側板21aの外側にも回動駆動部53が設けられており、左側板21aの外側の回動駆動部53と、右側板21bの外側の回動駆動部53は、左右方向(X1-X2方向)において面対称な構造である。
【0027】
図4に示されるように、左側板21aの内側に駆動ブラケット25が固定されており、左側板21aと駆動ブラケット25との間に、前記モータ駆動部52が設けられている。
図9には、駆動ブラケット25を外した状態で、モータ駆動部52が拡大して示されている。モータ駆動部52にはモータMが設けられている。モータMは駆動ブラケット25に固定されている。
【0028】
図9に示されるように、モータ駆動部52では、モータMの出力軸Maにウオーム54が固定され、駆動ブラケット25に二段歯車55が回転自在に支持されている。二段歯車55は、ウオームホイール55aと小径平歯車55bとが一体化されたものであり、ウオーム54がウオームホイール55aに噛み合っている。伝達軸51に、平歯車56が固定されており、小径平歯車55bが平歯車56に噛み合っている。小径平歯車55bのピッチ円の直径はウオームホイール55aのピッチ円の直径よりも小さく、平歯車56のピッチ円の直径は、小径平歯車55bのピッチ円の直径よりも大きい。
【0029】
図4と
図5および
図6に、右側板21bの外側に設けられた回動駆動部53が示されている。右側板21bの外側に駆動ブラケット26が固定されており、右側板21bの外面と駆動ブラケット26との間に前記回動駆動部53が配置されている。回動駆動部53では、前記伝達軸51の右端部が右側板21bの外側に突出しており、この伝達軸51の右端部に伝達小歯車57が固定されている。駆動ブラケット26にはピニオン歯車58が回転自在に支持されており、伝達小歯車57とピニオン歯車58とが噛み合っている。伝達小歯車57のピッチ円の直径は、ピニオン歯車58のピッチ円の直径よりも小さい。
【0030】
駆動機構50では、モータ駆動部52のウオーム54から平歯車56への動力伝達経路が減速歯車列となっており、さらに回動駆動部53の伝達小歯車57からピニオン歯車58までの動力伝達経路も減速歯車列となっている。モータMが始動し出力軸Maが回転すると、平歯車56と共に伝達軸51が減速させられて回転し、さらに伝達小歯車57を経てピニオン歯車58が減速させられて回転する。
【0031】
図5と
図6に示されるように、回動駆動部53では、駆動ブラケット26に検知歯車59が回転自在に支持されており、検知歯車59がピニオン歯車58と噛み合っている。検知歯車59のピッチ円の直径はピニオン歯車58のピッチ円の直径よりも短い。したがって、ピニオン歯車58の回転が検知歯車59に増速されて伝達される。右側板21bには検知基板28が固定されており、検知基板に、検知歯車59の回転方向および回転数を検知する検知素子が搭載されている。
【0032】
図4に示されるように、右側板21bには支持ブラケット27が固定されており、支持軸22が右側板21bと支持ブラケット27との間に固定されている。右側板21bと支持ブラケット27との間において、回動アーム34の支持側基部34bに形成された支持穴34cが支持軸22に回動自在に支持されている。
【0033】
図5と
図6に示されるように、右側板21bと回動アーム34との間で、扇形状の駆動回転体60が支持軸22に回動自在に支持されている。駆動回転体60は駆動機構50の一部を構成している。駆動回転体60に扇歯車部61が形成されており、扇歯車部61がピニオン歯車58と噛み合っている。
図4に示されるように、駆動回転体60に連結軸62が固定されている。回動アーム34では、支持穴34cと軸固定穴34dとの間に連結固定穴34eが形成されており、
図5と
図6に示されるように、連結軸62が連結固定穴34eに固定されている。駆動回転体60と回動アーム34は、共通の支持軸22に回動自在に支持されており、駆動回転体60と回動アーム34は、連結軸62で連結されて一体となって回動する。
【0034】
図4と
図7に示されるように、駆動回転体60と支持ブラケット27との間において、回動アーム34を支持している支持軸22に、トーションばね65の巻回部が装着されている。トーションばね65の一方の腕部65aは前記連結軸62に掛けられている。トーションばね65の他方の腕部65bは、右側板21bのさらに右側(X2側)の外側に離れて配置された固定板(図示せず)に固定されている。トーションばね65の弾性力により、駆動回転体60は反時計方向(β1方向)へ付勢されている。この付勢力により、駆動機構50が動作しているときの、歯車の噛み合い部でのバックラッシュによるがたつきやノイズの発生が規制されている。
【0035】
前述のように、左側板21aの外側(X1側)にも、回動アーム34と回動駆動部53および駆動回転体60が設けられている。
図9に示されたモータ駆動部52のモータMが始動すると、その動力が伝達軸51に伝達され、左側板21aの外側(X1側)に設けられた回動駆動部53と、右側板21bの外側(X2側)に設けられた回動駆動部53とが同期して動作する。そして、左側板21aの外側と右側板21bの外側とで、駆動回転体60と回動アーム34とが一緒に回動させられて、移動部材30が第1方向(i)と第2方向(ii)へ回動(移動)させられる。
【0036】
図4に示されるように、本体筐体21の左側板21aと右側板21bのそれぞれの上部では、第1方向(i)側に第1ストッパ71が設けられ、第2方向(ii)側に第2ストッパ72が設けられている。
図5に示すように、移動部材30が第1方向(i)の「移動終点」に至ると、左右方向(X1-X2方向)の両側に設けられた回動アーム34が第1ストッパ71に当たり、回動アーム34の回動が停止し、移動部材30が第1姿勢(A)となる。
図6に示されるように、移動部材30が第2方向(ii)の「移動終点」に至ると、それぞれの回動アーム34が第2ストッパ72に当たり、回動アーム34の回動が停止し、移動部材30が第2姿勢(B)となる。
【0037】
(検知機構の構造)
図4に示されるように、右側板21bの外側に設けられた扇状の駆動回転体60には検知動作部66が一体に形成されている。
図7と
図8に、駆動回転体60の断面形状が示されている。検知動作部66の外周面が検知摺動面66aである。検知摺動面66aは、駆動回転体60を支持する支持軸22を中心とする円筒面の一部である。検知摺動面66aの第2方向(ii)側の端部が第1検知端部66bであり、検知摺動面66aの第1方向(i)側の端部が第2検知側端部66cである。
【0038】
図4に示されるように、右側板21bの外側(X2側)に検知基板74が固定されており、この検知基板74に検知スイッチ75が設けられている。検知動作部66と検知スイッチ75とで検知機構が構成されている。
図7と
図8に示されるように、検知スイッチ75は機械的に開閉動作する接点を有する押圧式スイッチでありアクチュエータ75aを有している。アクチュエータ75aに外力が作用していないときは、接点が開いて検知スイッチ75がOFFであり、アクチュエータ75aが押し込まれると接点が閉じて検知スイッチ75がONになる。
【0039】
図5と
図7では、回動アーム34が第1ストッパ71に当たっており、移動部材30が第1方向(i)の「移動終点」に位置している。このとき、アクチュエータ75aは検知動作部66の第1検知端部66bから外れており、検知スイッチ75がOFFである。
図6と
図8は、回動アーム34が第2ストッパ72に当たっており、移動部材30は第2方向(ii)の「移動終点」に位置している。このとき、アクチュエータ75aは第2検知端部66cから外れており、検知スイッチ75がOFFである。回動アーム34と駆動回転体60が回動している途中では、検知動作部66の検知摺動面66aでアクチュエータ75aが押し込まれ、検知スイッチ75がONになる。
【0040】
図7に示されるように、駆動回転体60が第1ストッパ71に当たって第1方向(i)の「移動終点」に位置しているとき、第1検知端部66bとアクチュエータ75aとの間に微小距離δ1が空けられている。駆動回転体60がこの微小距離δ1の範囲内で回動している間は検知スイッチがOFFである。駆動回転体60がこの微小距離δ1の回動範囲に位置しているとき、回動アーム34と移動部材30が第1方向(i)の「終点領域」に位置していると定義する。すなわち、駆動回転体60がβ1方向へ回動し、アクチュエータ75aが第1検知端部66bから外れて検知スイッチ75がOFFになると、駆動回転体60と回動アーム34および移動部材30が「終点領域」に至り、この「終点領域」内で、さらにβ1方向へ回動し、回動アーム34が第1ストッパ71に当たると「移動終点」となる。
【0041】
同様に、
図8に示されるように、駆動回転体60が第2ストッパ72に当たって第2方向(ii)の「移動終点」で停止しているとき、第2検知端部66cとアクチュエータ75aとの間に微小距離δ2が形成されている。駆動回転体60はこの微小距離δ2で回動している範囲で検知スイッチがOFFである。駆動回転体60がこの微小距離δ2の回動範囲に位置しているとき、回動アーム34と移動部材30が第2方向(ii)の「終点領域」に位置していると定義する。
【0042】
(回路ブロックの説明)
図10に前記車載用装置10の回路ブロック図が示されている。
車載用装置10は、前記モータMを含む前記駆動機構50および前記検知スイッチ75などを有する本体部20と、主回路基板100とを有している。
【0043】
主回路基板100には、制御部103が設けられている。制御部103は、CPUと各種メモリとを有するマイクロコンピュータで構成されている。制御部103には制御部電源(マイクロコンピュータの電源回路部)104が付属されている。制御部電源104には、自動車に搭載されたバッテリーBから電力が供給されており、制御部電源104で3.3Vの直流電力114が変換されて制御部103に与えられる。
【0044】
主回路基板100にモータ駆動回路(モータ駆動部)105が搭載されている。モータ駆動回路105の電源は、自動車に搭載されたバッテリーBである。制御部103からモータ駆動回路105に駆動指令111が与えられると、モータ駆動回路105からモータ駆動部52のモータMに駆動電力が与えられる。主回路基板100に車両側切替え部107が設けられている。自動車のアクセサリースイッチ106が主スイッチであり、アクセサリースイッチ106の切替え信号113が車両側切替え部107に与えられると、車両側切替え部107から制御部に起動信号(ウエイクアップ信号)112が与えられる。
【0045】
図10に示されるように、主回路基板100に第1スイッチ回路101と第2スイッチ回路102が設けられている。第1スイッチ部101は、ダイオード101aおよびトランジスタ101bを有している。トランジスタ101bのエミッタに制御部電源104から3.3Vのスイッチ用電力117が供給され、コレクタにバイアス抵抗101cが接続されている。第2スイッチ回路102は、ダイオード102aおよびトランジスタ102bを有している。トランジスタ102bのエミッタに自動車のバッテリーBから電力が供給され、コレクタにバイアス抵抗102cが接続されている。
【0046】
(主スイッチであるアクセサリースイッチ106がONのときの動作)
次に、
図11に示されるフローチャートを参照して、前記車載用装置10の動作を説明する。フローチャートでは、制御部103で実行させる制御の「ステップ」が「ST」で表されている。
【0047】
図11のST1において、主スイッチであるアクセサリースイッチ106がONのときの、車載用装置10の動作は以下の通りである。ST1でアクセサリースイッチ106がONになるのは、自動車の走行中などである。
図10の回路ブロック図において、主スイッチであるアクセサリースイッチ106がONであると、車両側切替え部107から起動信号112が制御部103に与えられ、制御部電源104から直流電力114が与えられて制御部103が制御動作可能となる。このとき制御部103からの許可信号115がOFFであり、第2スイッチ回路102からの切替え信号116が無視される。第1スイッチ回路101では、制御部電源104からトランジスタ101bのエミッタにスイッチ用電力117が与えられており、検知スイッチ75によって第1スイッチ回路101を動作させることが可能となっている。アクセサリースイッチ106がONのときに、本体部20の検知スイッチ75の接点が閉じると、第1スイッチ回路101から制御部103にONの切替え信号118が与えられる。
【0048】
図11に示すST2以下は、
図2と
図6に示されるように、移動部材30が第2姿勢(開き姿勢)(B)で停止しているときを基準とした処理動作を示している。移動部材30が第2姿勢(B)で停止していると、
図8に示されているように、駆動回転体60に設けられた検知動作部66の第2検知端部66cがアクチュエータ75aから外れている。よって、検知スイッチ75の接点が開状態であり、第1スイッチ回路101から制御部103に与えられる切替え信号118がOFFである。本明細書では、切替え信号116,118がOFFのときを、「検知スイッチ75がOFF」と説明し、切替え信号116,118がONのときを、「検知スイッチ75がON」と説明している部分がある。
【0049】
図11のST2において、移動部材30に設けられた操作釦を押すなどして移動部材30を第1姿勢(閉じ姿勢)(A)に移行させる操作が行われると、制御部103からモータ駆動回路(モータ駆動部)105に駆動指令111が与えられ、ST3において、
図9に示されるモータMが始動し、出力軸Maがα2方向に回転し始める。駆動機構50において、モータMの回転出力は、伝達軸51を経て左側板21aと右側板21bのそれぞれの外側に配置された回動駆動部53に伝達される。
図8に示されるように、ピニオン歯車58の回転力が駆動回転体60の扇歯車部61に伝達され、駆動回転体60が
図8において反時計方向(β1方向)へ駆動される。
【0050】
左右両側に位置する駆動回転体60が反時計方向(β1方向)へ回動すると、駆動回転体60と共に回動アーム34が反時計方向へ回動し、回動アーム34に支持されている移動部材30が第1方向(i)へ向けて移動する。駆動回転体60が反時計方向へ回動し始めると、すぐに検知動作部66の検知摺動面66aによって検知スイッチ75のアクチュエータ75aが押し込まれ、検知スイッチ75の接点が閉じ、
図10に示される第1スイッチ回路101から制御部103にスイッチONの切替え信号118が与えられる。
【0051】
図11のST4では、制御部103において切替え信号118の変化を監視する。また、移動部材30が移動するときの移動方向および移動距離は、検知基板28に搭載された検知素子からの信号により把握することができる。駆動回転体60がβ1方向へ回動し、
図7に示されるように、検知動作部66の第1検知端部66bが検知スイッチ75のアクチュエータ75から外れると、第1スイッチ回路101から制御部103に与えられる切替え信号118がONからOFFに切替えられる。制御部103は、このとき、移動部材30が第1方向(i)の「終点領域」に至ったと判断する。この「終点領域」では、検知スイッチ75がOFFになった後に、駆動回転体60が
図7に示される微小距離(微小角度)δ1だけ回動余裕を有している。
【0052】
ST5では、検知スイッチ75がOFFとなった直後に、制御部103からモータ駆動回路105に駆動指令111が与えられ、
図9に示されるモータMがさらにα2方向へ短時間だけ駆動され、駆動回転体60がβ1方向へ少しだけ駆動される。このとき、検知基板28に搭載された検知素子で検知歯車59の回転角度が検知され、
図5に示されるように、回動アーム34が第1ストッパ71に押し付けられたと判断された時点で、モータMが停止させられる。回動アーム34が第1ストッパ71に押し付けられてモータMが停止すると、駆動機構50においては、ウオーム54から扇歯車部61までの歯車の噛み合い部で歯どうしが圧接させられて歯車間のバックラッシュが無くなる。
【0053】
駆動機構50の動力伝達部でバックラッシュを無くすことで、駆動回転体60の回転のがたつきを規制でき、回動アーム34と移動部材30を、がたつきが生じないセルフロック状態とすることができる。移動部材30に比較的大画面の表示装置32が搭載されて移動部材30の質量が大きくなっていても、車体振動により、移動部材30のがたつき音の発生を抑制することが可能となる。
【0054】
アクセサリースイッチがONのときに、移動部材30を、
図1と
図5に示される第1姿勢(A)から
図2と
図6に示される第2姿勢(B)に移動させるときも、ST2からST5までと実質的に同じ動作制御が行われる。すなわち、移動部材30が第1姿勢(A)のときに操作釦が押されると、
図9に示されるモータMの出力軸Maがα1方向に回転し、駆動回転体60と回動アーム34が時計方向(β2方向)へ駆動され、移動部材30が第2方向(ii)に移動させられる。検知スイッチ75がOFFとなり、移動部材30が第2方向(ii)の「終点領域」に至ったと判断されると、さらにモータMが微小時間だけβ1方向へ動作し、
図6に示されるように、回動アーム34が第2ストッパ72に押し付けられてモータMが停止する。よって、移動部材30は第2姿勢(B)においてセルフロック状態となる。
【0055】
第1実施形態の車載用装置10では、駆動機構50の一部が、移動部材30を第1姿勢(A)と第2姿勢(B)でセルフロックさせる「ロック機構部」として機能している。すなわち、駆動機構50において、モータMから回動アーム34および移動部材30に至る動力伝達経路が「ロック機構部」として機能している。
【0056】
(主スイッチであるアクセサリースイッチ106がOFFのときの動作)
次に、ST1において、アクセサリースイッチ106がOFFのときの制御動作は以下の通りである。
ST5において、移動部材30が
図1と
図5に示される第1姿勢(A)でセルフロック状態となっているときに、ST1において、主スイッチであるアクセサリースイッチ106がOFFになると、制御部103では、ST6において検知スイッチ75がOFFであるか否か、すなわち移動部材30が第1姿勢(A)に位置しているか否かを確認する。検知スイッチ75がOFFならば、ST7に移行して駆動機構50内の「ロック機構部」においてセルフロック解除が行われる。
【0057】
ST7でのセルフロック解除は、
図5と
図7の状態において、
図9に示されるモータMをα1方向へ微小角度だけ回転戻しすることにより行われる。この微小角度は、回動アーム34を第1ストッパ71に押し付けている力を解除し、ウオーム54から駆動回転体60の扇歯車部61までの動力伝達経路に歯車間のバックラッシュを発生させる程度の角度である。歯車間に発生するバックラッシュによって、駆動回転体60が、
図7に示される微小距離δ1よりもやや長い距離だけ自由回転できるようになる。このとき、検知基板28に実装された検知素子で検知歯車59の回転角度を監視し、モータMのα1方向の回転戻しによって検知スイッチ75がONに切替わることがなく、且つセルフロックを解除して、駆動回転体60が微小距離δ1の範囲で自由回転できる状態となるように、モータMのわずかな駆動時間が制御される。
【0058】
アクセサリースイッチ106がOFFになり、ST7において、駆動機構50の一部である「ロック機構部」によるセルフロックが解除されると、その後に、制御部103がスリープ状態になる。
【0059】
アクセサリースイッチ106がOFFのときに、
図1と
図5に示される第1姿勢(A)の移動部材30を、手で第2方向(ii)へ押し上げると、駆動機構50のバックラッシュによる自由回転の範囲で、駆動回転体60がβ2方向へ微小距離δ1またはδ1よりもやや長めに回動させられ、検知動作部66の検知摺動面66aで検知スイッチ75のアクチュエータ75aが押され、ST8において検知スイッチ75がONになる。
【0060】
アクセサリースイッチ106がOFFのときに、検知スイッチ75の接点が閉じられると、バッテリーBから電力が与えられている第2スイッチ回路102が動作し、切替え信号116が制御部電源104に与えられて制御部電源104が動作可能になり、制御部電源104から制御部103に直流電力114が与えられて制御部103が起動し制御動作が可能になる。制御部電源104から第1スイッチ回路101にスイッチ用電力117が与えられているため、検知スイッチ75の接点が閉じられると、第1スイッチ回路101が動作し、制御部103にONの切替え信号118が与えられる。
【0061】
ST8で検知スイッチ75がONになると、制御部103において、移動部材30が(ii)方向へ強制的に再移動させられたと判定され、ST9に移行しモータ駆動回路(モータ駆動部)105に駆動指令111が与えられモータMが始動する。モータMの出力軸Maはα1方向へ駆動され、駆動回転体60がβ2方向へ回転駆動される。駆動回転体60と共に回動アーム34がβ2方向へ回動し、移動部材30が開き方向である第2方向(ii)に向けて移動する。移動部材30が第2方向(ii)の「終点領域」に移動し、
図8に示されるように、検知動作部66の第2検知端部66cが検知スイッチ75のアクチュエータ75aから離れると、ST10において検知スイッチ75のOFFを確認し、ST11でモータMを停止させる。ST12では、アクセサリースイッチ106の起動信号112を確認し、アクセサリースイッチ106がONであれば、ST13に移行し、モータMの出力軸Maをα1方向へ微小角度回転させ、回動アーム34を第2ストッパ72に押し付けた状態でモータMを停止させる。これにより、移動部材30が第2姿勢(B)でセルフロック状態となる。
【0062】
なお、移動部材30が第2姿勢(B)でセルフロックされているときに、アクセサリースイッチ106がOFFになると、このときもモータMの出力軸Maがα2方向へ微小角度だけ回転戻し動作し、駆動機構50における「ロック機構部」の歯車列にバックラッシュが生じるようになり、セルフロックが解除される。したがって、手で移動部材30を第1方向(i)に向けて押すと、駆動回転体60がバックラッシュにより回転し、検知スイッチ75がONになる。このとき、移動部材30が(i)方向へ強制的に再移動させられたと判定され、モータMが始動し、移動部材30が第1方向(i)へ移動させられて、閉じ姿勢である第1姿勢(A)になる。
【0063】
前記実施形態の車載用装置10は、アクセサリースイッチ106がONのときは、移動部材30が閉じ姿勢である第1姿勢(A)または開き姿勢である第2姿勢(B)でセルフロック状態となるため、車体振動が作用したときに移動部材30ががたつくのを規制することができる。またアクセサリースイッチ106がOFFのときに移動部材30のセルフロックが解除されるため、移動部材30を駆動機構50のバックラッシュで自由移動させることができる。すなわち軽い負荷で移動部材30を移動させて検知スイッチ75をONにすることができ、その後は移動部材30をモータMの動力で移動させることが可能になる。
【0064】
実施形態の車載用装置10では、移動部材30が
図5に示す第1姿勢(A)でセルフロックが解除されたときに、駆動機構50の歯車列のバックラッシュのみで、駆動回転体60を
図7に示される微小距離δ1またはそれ以上の距離で移動できるようにし、駆動回転体60のバックラッシュによる自由回転のみで検知スイッチ75をONに切替えることが好ましい。このように構成することで、アクセサリースイッチ106がOFFになったときに、第1姿勢(A)または第2姿勢(B)の移動部材30を軽い力で少しだけ移動させるだけで、その後はモータMの力で移動部材30を自動的に移動させることができるようになる。
【0065】
なお、移動部材30が第1姿勢(A)でセルフロックが解除されたときに、バックラッシュにより駆動回転体60がβ2方向へ自由回動できる角度が微小距離δ1よりも短くてもよい。この場合には、セルフロックが解除された後に、駆動回転体60をバックラッシュの範囲でβ1方向へ回動させても、検知動作部66の第1検知端部66bで検知スイッチ75のアクチュエータ75aを押すことはできない。しかしながら、バックラッシュによる自由移動に続いて、さらに移動部材30を駆動機構50の負荷に対抗して第2方向(ii)に押し込むことで、検知スイッチ75をONに切替えることができる。手で移動部材30を第2方向(ii)に向けて押したときに、最初はバックラッシュにより自由回転できるため、そのままの勢いで、さらに移動部材30を駆動機構50の負荷に対抗して移動させることが可能となるため、大きな負担を感じることなく、検知スイッチ75をONさせることが可能になる。
【0066】
前記実施形態では、駆動機構50にウオーム54とウオームホイール55aとの噛み合い部を含んでいる。ST5において、回動アーム34を第1ストッパ71に押し付けてモータMを停止させてセルフロック状態にすると、第1ストッパ71からの押圧反力により、ウオームホイール55aを時計方向へ回動させようとする力が作用する。しかし、ウオームホイール55aによってウオーム54をα1方向へ回動させるのには極めて大きな力が必要であり、ウオーム54が簡単にα1方向へ回動することはない。したがって、回動アーム34を第1ストッパ71に押し付けた状態でモータMを停止させれば、駆動機構50で強固な力でセルフロックすることができる。また、ウオーム54をα2方向へ微小角度だけ戻し回転させ、回動アーム34の第1ストッパ71への押し付け力を解除すれば、複数の歯車の噛み合い部でバックラッシュが生じるようになる。
【0067】
(変形例)
また、駆動機構50において、「ロック機構部」として電磁ブレーキを使用して、移動部材30が第1姿勢(A)または第2姿勢(B)のときに駆動機構50をロック状態としてもよい。電磁ブレーキはモータMに内蔵されたものを使用し、または電磁ブレーキは駆動機構50の動力伝達経路のいずれかの箇所に設けられる。アクセサリースイッチ106がONのときは、回動アーム34が第1ストッパ71または第2ストッパ72に押し付けられて移動部材30が第1姿勢(A)または第2姿勢(B)で停止したときに、モータMを停止するとともに電磁ブレーキを動作させて動力伝達にブレーキ力を与えて、駆動回転体60が容易に回転しないようにロック状態とする。アクセサリースイッチ106がOFFになったら、電磁ブレーキの動作を解除しブレーキ力を解消する。ブレーキが解除されることで、駆動機構50の歯車列のバックラッシュで、駆動回転体60が微小距離δ1またはδ2だけ自由回転できるようになる。
【0068】
図7と
図8に示されるように、実施形態の車載用装置10では、1つの検知スイッチ75によって、(a)移動部材30が(i)方向での「終点領域」に至ったか否か、(b)(i)方向での「終点領域」においてロックが解除ざれた後の移動部材30が(ii)方向へ再移動させられたか否か、(c)移動部材30が(ii)方向での「終点領域」に至ったか否か、(d)(ii)方向での「終点領域」においてロックが解除ざれた後の移動部材30が(i)方向へ再移動させられたか否か、の全てが検知されている。したがって、検知スイッチ75を複数設ける必要がない。ただし、本発明では、複数の検知スイッチを用いて、(a)(b)(c)(d)を別々の検知スイッチで検知するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0069】
(i) 第1方向
(ii) 第2方向
(A) 第1姿勢
(B) 第2姿勢
M モータ
1 パネル
2 開口部
10 車載用装置
20 本体部
21 本体筐体
30 移動部材
31 移動筐体
32 表示装置
33 表示画面
34 回動アーム
50 駆動機構
51 伝達軸
52 モータ駆動部
53 回動駆動部
54 ウオーム
55a ウオームホイール
58 ピニオン歯車
60 駆動回転体
61 扇歯車部
66 検知動作部
66a 検知摺動面
66b 第1検知端部
66c 第2検知端部
71 第1ストッパ
72 第2ストッパ
75 検知スイッチ
103 制御部
106 アクセサリースイッチ(主スイッチ)