(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/131 20060101AFI20250107BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20250107BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20250107BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20250107BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20250107BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20250107BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20250107BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20250107BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250107BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20250107BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20250107BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20250107BHJP
A61P 23/02 20060101ALI20250107BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20250107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250107BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61K31/131
A61K8/06
A61K8/41
A61K8/92
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K31/167
A61K45/00
A61K45/06
A61K47/44
A61P17/00
A61P23/02
A61P37/08
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018162105
(22)【出願日】2018-08-30
【審査請求日】2021-03-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2017167351
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日:平成29年6月28日、刊行物:販売店様用資料、公開者:ロート製薬株式会社、公開された発明の内容:ロート製薬株式会社が、販売店様用資料にて、川口慶晃及び丸川純子が発明した、ジフェンヒドラミン、ラベンダー油、ユーカリ油、及びアルモンド油を含むメンソレータムAD BOTANICALについて公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【氏名又は名称】多田 央子
(72)【発明者】
【氏名】川口 慶晃
(72)【発明者】
【氏名】丸川 純子
【合議体】
【審判長】吉田 佳代子
【審判官】伊藤 幸司
【審判官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-291856(JP,A)
【文献】特表2005-508994(JP,A)
【文献】特開2017-57145(JP,A)
【文献】特表2015-530380(JP,A)
【文献】特開2013-253078(JP,A)
【文献】メンソレータム ADボタニカル 90gの基本情報、Qlifeお薬検索、[online]、2017年8月15日、[2022年3月4日検索],インターネット<URL:https://www.qlife.jp/meds/otc4987241155231.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用組成物の全量に対して0.1~2重量%のジフェンヒドラミン及び/又はその塩と、外用組成物の全量に対して
0.005~0.5重量%であって、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩1重量部に対して0.01~1重量部の精油
と、外用組成物の全量に対して0.01~5重量%のリドカインを含有し、乳剤である外用組成物(但し、ルリコナゾール及び/又はその薬学的に許容される塩を含む場合を除く)。
【請求項2】
水中油型乳剤である、請求項
1に記載の外用組成物。
【請求項3】
水を、組成物の全量に対して、0.1~95重量%含有する、請求項1
又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
クリーム剤、又はローション剤である、請求項1~
3の何れかに記載の外用組成物。
【請求項5】
皮膚外用組成物である、請求項1~
4の何れかに記載の外用組成物。
【請求項6】
さらに、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸類、ポリグリセリン脂肪酸類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル、グリセリンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリルアミン、オレイルアミン、炭化水素、及び油性エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1~
5の何れかに記載の外用組成物。
【請求項7】
0.1~2重量%のジフェンヒドラミン及び/又はその塩
と0.01~5重量%のリドカインを含む乳剤である外用組成物に、外用組成物の全量に対して
0.005~0.5重量%であって、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩1重量部に対して0.01~1重量部の精油を共存させることにより、この外用組成物の乳化状態を安定化する方法(但し、外用組成物がルリコナゾール及び/又はその薬学的に許容される塩を含む場合を除く)。
【請求項8】
外用組成物が、さらに、ソルビタン脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪酸類、ポリグリセリン脂肪酸類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル、グリセリンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリルアミン、オレイルアミン、炭化水素、及び油性エステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬などの外用組成物の剤型としては、固形剤、散剤、液剤、リニメント剤、ローション剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、スプレー剤、貼付剤などが用いられている。この中で、クリーム剤は、油性物質と水性物質とを含み、水中油型又は油中水型に乳化した半固形の製剤である。また、ローション剤には、乳剤性ローション、溶液性ローション、懸濁性ローション等があるが、乳剤性ローションは、水中油型又は油中水型に乳化した液体ないし流動状の製剤である。このような乳剤は、使用感が良い、良く延びる、水で洗い流せるといったメリットがあり、外用組成物の剤型として多用されている。
しかし、乳剤は、水相と油相とが経時的に分離することがあるため、乳化状態を安定に保つための工夫が必要である。このため、界面活性剤が配合されることが多いが、高濃度の界面活性剤は皮膚刺激などの難点があり、その観点からは配合量は抑えることが望ましい。また、水中油型乳剤では、増粘剤を配合して水相の粘性を向上させることにより、水相と油相との分離を抑制することも行われているが、高濃度の増粘剤の配合によりベタツキが増して、使用感が損なわれることがある。
【0003】
このため、従来、乳剤の安定性を向上させるための試みが多数行われている。
例えば、特許文献1は、クロスポビドン、カルメロース、クロスカルメロース、カルボキシメチルスターチといった、通常、固形製剤に配合される崩壊剤を、水中油型乳化組成物に配合することにより、経時的な分離、特に高温環境下における分離が抑制されることを教えている。
しかし、有効成分の種類等に適した乳化安定化技術が求められている。
【0004】
ここで、植物性油は、動物油や鉱物油と異なり、常温で液体のものが多く、分子量が小さいため皮膚に浸透し易く、皮膚上に皮膜を形成し難いため汗腺や皮脂腺からの排泄を妨げ難く、さらに、それ自体ビタミン、ミネラル、抗酸化物質などの有用成分を含むといったメリットがあり、外用組成物の成分として多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乳剤である外用組成物であって、水相と油相の分離が抑制された組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ね、以下の知見を得た。
抗ヒスタミン剤又は植物性油を配合した乳剤は、乳化状態が不安定になり易いが、意外にも、抗ヒスタミン剤と植物性油を含有する乳剤であれば、両成分が相乗的に作用して、乳化状態の安定性が向上する。
【0008】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、下記の外用組成物を提供する。
項1. 抗ヒスタミン剤、及び植物性油を含有し、乳剤である外用組成物。
項2. 抗ヒスタミン剤が、エタノールアミン系抗ヒスタミン剤、及びプロピルアミン系の抗ヒスタミン剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1に記載の外用組成物。
項3. 抗ヒスタミン剤の含有量が、組成物の全量に対して、0.01~5重量%である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4. 植物性油が精油である、項1~3の何れかに記載の外用組成物。
項5. 植物性油の含有量が、組成物の全量に対して、0.0001~1重量%である、項1~4の何れかに記載の外用組成物。
項6. さらに、局所麻酔剤を含有する、項1~5の何れかに記載の外用組成物。
項7. 局所麻酔剤の含有量が、組成物の全量に対して、0.01~5重量%である、項6に記載の外用組成物。
項8. 水中油型乳剤である、項1~7の何れかに記載の外用組成物。
項9. 水を、組成物の全量に対して、0.1~95重量%含有する、項1~8の何れかに記載の外用組成物。
項10. クリーム剤、又はローション剤である、項1~9の何れかに記載の外用組成物。
項11. 皮膚外用組成物である、項1~10の何れかに記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外用組成物は、植物性油及び抗ヒスタミン剤を含有することによって、乳化状態の安定性が向上している。本発明の外用組成物は、熱だけでなく光に対しても乳化状態の安定性が向上している。
本発明の組成物は、界面活性剤や増粘剤といった、薬効に不要な添加物の配合のみによらずに、ないしはこれらの添加物に頼らず、乳剤の安定性を向上させることができるため、製剤化の自由度が高くなる。
【0010】
また、本発明の外用組成物は、抗ヒスタミン剤を含むため、痒み症状や皮膚乾燥に起因する症状を示す疾患の治療、予防、又は改善に好適であるところ、植物油(特に、精油)を含むことにより、製剤に香りを付与してリラックス効果を高め、痒みなどに対するストレスを和らげる効果が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の外用組成物は、抗ヒスタミン剤と植物性油を含み、乳剤である、外用組成物である。
【0012】
抗ヒスタミン剤
抗ヒスタミン剤としては、ジフェンヒドラミン、ブロモジフェンヒドラミン、クレマスチン、クロルフェノキサミン、ジフェニルピラリン、ドキシラミン、オルフェナドリン、フェニルトロキサミンのようなエタノールアミン系抗ヒスタミン剤、クロルフェニラミン、ジメチンデン、タラスチンのようなプロピルアミン系抗ヒスタミン剤、メピラミン、メタピリレン、トリペレナミンのようなエチレンジアミン系抗ヒスタミン剤、アリメマジン、ヒドロキシエチルプロメタジン、イソチペンジル、メキタジン、オキソメマジン、プロメタジンのようなフェノチアジン系抗ヒスタミン剤、ブクリジン、セチリジン、ホモクロルシクリジン、シクリジン、ヒドロキシジン、レボセチリジン、メクリジン、オキサトミドのようなピペラジン系抗ヒスタミン剤、ケトチフェン、オロパタジン、フェキソフェナジン、ロラタジン、テルフェナジン、アンタゾリン、アザタジン、バミピン、シプロヘプタジン、デプトロピン、エバスチン、エメダスチン、エピナスチン、メブヒドロリン、ミゾラスチン、ピメチキセン、ピロブタミン、キフェナジン、ルパタジン、トリプロリジン、アクリバスチン、アステミゾール、アゼラスチン、ビラスチン、デスロラタジン、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0013】
塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、無機酸塩、有機酸塩などが挙げられる。無機酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩のようなモノカルボン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等の多価カルボン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩のようなオキシカルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩、ナパジシル酸塩のような有機スルホン酸塩などが挙げられる。
具体的には、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ブロモジフェンヒドラミン塩酸塩、クレマスチンマレイン酸塩、クロルフェノキサミン塩酸塩、ジフェニルピラリン塩酸塩、ドキシラミンコハク酸塩、オルフェナドリン塩酸塩、クロルフェニラミンマレイン酸塩、ジメチンデンマレイン酸塩、メタピリレン塩酸塩、トリペレナミン塩酸塩、アリメマジン酒石酸塩、イソチペンジル塩酸塩、セチリジン塩酸塩、ホモクロルシクリジン塩酸塩、シクリジン塩酸塩、ヒドロキシジン塩酸塩、レボセチリジン塩酸塩、メクリジン塩酸塩、ケトチフェンフマル酸塩、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、アンタゾリン塩酸塩、アザタジンマレイン酸塩、シプロヘプタジン塩酸塩、デプトロピンクエン酸塩、エメダスチンフマル酸塩、エピナスチン塩酸塩、メブヒドロリンナパジシル酸塩、ピメチキセンマレイン酸塩、ピロブタミンリン酸塩、キフェナジン塩酸塩、ルパタジンフマル酸塩、トリプロリジン塩酸塩、アゼラスチン塩酸塩などが挙げられる。
塩である抗ヒスタミン剤は、水和物、半水和物、又は無水物であり得る。
【0014】
中でも、エタノールアミン系、プロピルアミン系、エチレンジアミン系といったアミン系抗ヒスタミン剤が好ましく、エタノールアミン系、プロピルアミン系の抗ヒスタミン剤がより好ましく、エタノールアミン系の抗ヒスタミン剤がさらに好ましく、ジフェンヒドラミン、又はその塩(特に、塩酸塩のような無機酸塩)がさらにより好ましく、ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン塩酸塩が特に好ましい。
抗ヒスタミン剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0015】
抗ヒスタミン剤の含有量は、組成物の全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上がさらにより好ましく、0.8重量%以上が特に好ましい。また、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらに好ましく、1.5重量%以下がさらにより好ましく、1.1重量%以下が特に好ましい。1重量%が最も好ましい。この範囲であれば、適切な抗ヒスタミン作用が発揮されると共に、組成物の乳化状態の安定性を十分に向上させることができる。
【0016】
植物性油
植物性油としては、ラベンダー油、ユーカリ油、ローズマリー油、ローズヒップ油、ローマカミツレ油、カミツレ油(カモマイル油)、ハッカ油、キダチハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、ベチベル油、リトシア・キュベバ油、レモン油、白檀油、ナツメグ油、シナモン油、ヒソップ油、キャラウェー油、オレンジ油、カデ油、ベルガモット油、グレープフルーツ油、ライム油、サルビア油、タイム油、クローブ油、アロエ油、ジャスミン油、ネロリ油、ローズ油、カンファー油、ゼラニウム油、サンダルウッド油、イランイラン油、メリッサ油、バジル油、パチュリー油、ジュニパー油、ジュニパーベリー油、セージ油、黒コショウ油、マージョラム油、アミリス油、ヨモギ油、ニガヨモギ油、アンゲリカ油、ショウガ油、オールスパイス油、カスカリラ油、カラムス油、クラリセージ油、セロリ油、ティーツリー油、キャロット油、パチョリ油、ベチバー油、ホップ油、マスティック油、ミルラ油、ラブダナム油、ウコン油、オリガナム油、ガランガ油、シトロネラ油、ベイ油、ヤロー油、ピメントベリー油、ロベージ油などの精油が挙げられる。
【0017】
また、室温で非揮発性の植物性油も用いることができ、ヒマワリ油、月見草油、アルモンド油、オリーブ油、アボガド油、ホホバ油、コーン油、大豆油、ゼニアオイ油、グレープシード油、ゴマ油、ヘーゼルナッツ油、プルセリン油、パーム油、ヒマシ油、ウォールナッツ油、カシュナッツ油、スイートアルモンド油、ククイナッツ油、サフラワー油、椿油、マカデミアナッツ油、サザンカ油、ラッカセイ油、メドフォーム油、コメ杯芽油、スクワランなどが挙げられる。
【0018】
中でも、精油は、本願発明の組成物において、乳化状態の安定化効果が特に高く、また、製剤に香りを付与することによってリラックス効果を高め、痒み等に対するストレスを和らげる効果が期待できる観点から、本発明の好適な対象である。特に、ラベンダー油、ユーカリ油、ベルガモット油、カミツレ油が好ましく、ラベンダー油、ユーカリ油がより好ましい。
植物性油は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
植物性油の含有量は、組成物の全量に対して、0.0001重量%以上が好ましく、0.001重量%以上がより好ましく、0.005重量%以上がさらに好ましく、0.01重量%以上がさらにより好ましい。また、0.03重量%以上、中でも0.05重量%以上とすることもできる。また、1重量%以下が好ましく、0.5重量%以下がより好ましく、0.2重量%以下がさらにより好ましい。また、0.1重量%以下とすることもできる。この範囲であれば、組成物の乳化状態の安定性を十分に向上させることができ、また、適度な香りの付与が可能となる。
【0020】
植物性油がラベンダー油である場合には、ラベンダー油が酢酸リナロールを多く含むことから、酢酸リナロールの含有量でラベンダー油の含有量を規定することができる。ラベンダー油は、酢酸リナロールの組成物全量に対する濃度が、0.0001重量%以上、中でも0.0005重量%以上、中でも0.001重量%以上、中でも0.0025重量%以上になるように含まれることが好ましい。また、酢酸リナロールの組成物全量に対する濃度が0.01重量%以上になるように含まれることもできる。また、ラベンダー油は、酢酸リナロールの組成物全量に対する濃度が、1重量%以下、中でも0.5重量%以下、中でも0.1重量%以下、中でも0.05重量%以下になるように含まれることが好ましい。
【0021】
植物性油がユーカリ油である場合には、ユーカリ油がシネオールを多く含むことから、シネオールの含有量でユーカリ油の含有量を規定することができる。ユーカリ油は、シネオールの組成物全量に対する濃度が、0.0001重量%以上、中でも0.0005重量%以上、中でも0.001重量%以上、中でも0.005重量%以上になるように含まれることが好ましい。また、シネオールの組成物全量に対する濃度が0.01重量%以上、中でも0.05重量%以上になるように含まれる態様も例示できる。また、ユーカリ油は、シネオールの組成物全量に対する濃度が、1重量%以下、中でも0.5重量%以下、中でも0.1重量%以下になるように含まれることが好ましい。
【0022】
本発明の外用組成物における、抗ヒスタミン剤に対する植物性油の含有比率は特に限定されず、抗ヒスタミン剤及び植物性油の種類、他の配合成分の種類及び含有量、外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定することができる。抗ヒスタミン剤に対する植物性油の含有比率は、本発明の効果をより一層高める観点から、例えば、抗ヒスタミン剤の総含有量1重量部に対して、植物性油の総含有量が、0.0001~5重量部であることが好ましく、0.001~1重量部であることがより好ましく、0.005~0.5重量部であることがさらにより好ましく、0.01~0.2重量部であることが特に好ましい。
【0023】
局所麻酔剤
本発明の組成物は、局所麻酔剤を含むことができる。
局所麻酔剤としては、リドカイン、ジブカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、レボブピバカイン、オキセサゼイン、及びこれらの塩のようなアミン構造及びアミド構造を有する局所麻酔剤、コカイン、プロカイン、クロロプロカイン、テトラカイン、及びこれらの塩のようなアミン構造及びエステル構造を有する局所麻酔剤、エステル構造を有するアミノ安息香酸エチル、オキシポリエトキシドデカンなどが挙げられる。
【0024】
塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、無機酸塩、有機酸塩などが挙げられる。無機酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩のようなモノカルボン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩のような多価カルボン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩のようなオキシカルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩、ナパジシル酸のような有機スルホン酸塩などが挙げられる。
具体的には、リドカイン塩酸塩、ジブカイン塩酸塩、メピバカイン塩酸塩、ブピバカイン塩酸塩、ロピバカイン塩酸塩、レボブピバカイン塩酸塩、オキセサゼイン塩酸塩、コカイン塩酸塩、プロカイン塩酸塩、クロロプロカイン塩酸塩、テトラカイン塩酸塩などが挙げられる。
塩である局所麻酔剤は、水和物、半水和物、又は無水物であり得る。
【0025】
中でも、リドカイン、ジブカイン、アミノ安息香酸エチル、オキシポリエトキシドデカン、又はそれらの塩(塩酸塩など)が好ましく、リドカイン又はその塩がより好ましく、リドカイン、塩酸リドカインがさらに好ましく、リドカインがさらにより好ましい。
局所麻酔剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0026】
局所麻酔剤の含有量は、組成物の全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上がさらに好ましく、0.5重量%以上がさらにより好ましい。また、1重量%以上とすることもできる。また、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、2重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、局所麻酔作用が効果的に発揮されると共に、本発明の乳剤の安定性が十分に向上する。
【0027】
本発明の外用組成物における、抗ヒスタミン剤に対する局所麻酔剤の含有比率は特に限定されず、抗ヒスタミン剤及び局所麻酔剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、外用組成物の用途及び製剤形態等に応じて適宜設定することができる。抗ヒスタミン剤に対する局所麻酔剤の含有比率は、本発明の効果をより一層高める観点から、例えば、抗ヒスタミン剤の総含有量1重量部に対して、局所麻酔剤の総含有量が、0.01~20重量部であることが好ましく、0.05~10重量部であることがより好ましく、0.1~5重量部であることがさらにより好ましく、0.2~2.5重量部であることが特に好ましい。
【0028】
鎮痒剤
本発明の組成物は、さらに抗ヒスタミン剤以外の鎮痒剤を含むことができる。
抗ヒスタミン剤以外の鎮痒剤としては、クロタミトン、イクタモール、モクタール、チモール、及びそれらの塩などが挙げられる。
塩は、薬学的又は生理学的に許容される塩であればよく、無機酸塩、有機酸塩などが挙げられる。無機酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩のようなモノカルボン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩のような多価カルボン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩のようなオキシカルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩、ナパジシル酸のような有機スルホン酸塩などが挙げられる。
塩である鎮痒剤は、水和物、半水和物、又は無水物であり得る。
中でも、クロタミトンが好ましい。
抗ヒスタミン剤以外の鎮痒剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0029】
抗ヒスタミン剤以外の鎮痒剤の含有量は、組成物の全量に対して、0.01重量%以上が好ましく、0.1重量%以上がより好ましく、1重量%以上がさらに好ましく、3重量%以上がさらにより好ましい。また、20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらにより好ましい。この範囲であれば、鎮痒作用が効果的に発揮されると共に、本発明の効果が十分に奏される。
【0030】
その他の成分
本発明の組成物は、抗ヒスタミン剤、及び植物性油を含む成分を、医薬品、医薬部外品、又は化粧品に使用される基剤又は担体、及び必要に応じて添加剤や、その他の生理活性又は薬理活性成分と混合して、医薬品、医薬部外品、又は化粧品の外用組成物とすることができる。特に、医薬組成物(医薬外用組成物)であり得る。
【0031】
添加剤としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、保存剤、pH調整剤、安定化剤又はキレート剤、紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤、刺激軽減剤、着色剤などが挙げられる。
添加剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0032】
界面活性剤としては、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリン脂肪酸類、モノイソステアリン酸ポリグリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80など)等の硬化ヒマシ油誘導体、モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル、グリセリンアルキルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンセチルエーテル(セトマクロゴール)、ステアリルアミン、オレイルアミンなどが挙げられる。
界面活性剤は、組成物の全量に対して、例えば0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%を配合できる。
【0033】
増粘剤としては、増粘多糖類(グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、デキストランなど)、セルロース系増粘剤(メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、アルギン酸、その塩、及びその誘導体(アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなど)、ビニル系増粘剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムなど)、ベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル、ペクチンなどが挙げられる。
増粘剤は、組成物の全量に対して、例えば0.01~10重量%、好ましくは0.1~5重量%を配合できる。
【0034】
保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノール、BHTなどが挙げられる。
【0035】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸など)、有機酸(乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、コハク酸ナトリウム、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、プロピオン酸、酢酸、アスパラギン酸、イプシロン-アミノカプロン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸など)、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム、無機塩基(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、有機塩基(モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジンなど)などが挙げられる。
【0036】
安定化剤又はキレート剤としては、エデト酸ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸四ナトリウム四水塩などが挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤又は紫外線散乱剤としては、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、2,4,6-トリス[4-(2-エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]-1,3,5-トリアジン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピロン酸エチルヘキシル、エトルヘキシルトリアゾリン、パラアミノ安息香酸およびその誘導体、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、ジヒドロキシベンゾフェノン、酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。
【0038】
刺激軽減剤としては、甘草エキス、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0039】
着色料としては、法定色素ハンドブック(日本化粧品工業連合会編(2004))に記載された色素などが挙げられる。
【0040】
その他の生理活性又は薬理活性成分(抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、及び抗ヒスタミン剤でない鎮痒剤、以外の生理活性又は薬理活性成分)としては、例えば、抗炎症剤、殺菌剤、抗真菌剤、保湿成分、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、血行促進成分、細胞賦活化成分、老化防止成分、美白成分、アミノ酸、タンパク質、植物エキスなどが挙げられる。
その他の生理活性又は薬理活性成分は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、その他の生理活性又は薬理活性成分は、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0041】
抗炎症剤としては、アラントイン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、吉草酸酢酸プレドニゾロン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ウフェナマート、ブフェキサマク、イブプロフェンピコノール、インドメタシン、ジクロフェナク、ピロキシカム、イプシロン-アミノカプロン酸、ベルベリン、リゾチーム、アズレン、ブロメライン、セラペプターゼ、セミアルカリプロティナーゼ、及びそれらの薬学的又は生理学的に許容される塩などが挙げられる。
【0042】
殺菌剤としては、イソプロピルメチルフェノール、塩化デカリニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルへキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩化セチルピリジニウム、安息香酸ナトリウム、エタノール、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、及びビグアニド化合物などが挙げられる。
【0043】
抗真菌剤としては、テルビナフィン、ナフチフィン、ブテナフィン、トルナフタート、リラナフタート、ミコナゾール、ラノコナゾール、ルリコナゾール、イソコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ネチコナゾール、スルコナゾール、ビホナゾール、オキシコナゾール、エコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾール、ホスフルコナゾール、ボリコナゾール、エフィコナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、セルタコナゾールなどが挙げられる。
【0044】
保湿成分としては、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジグリセリン、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオールのような多価アルコール、トレハロース、キシリトール、ソルビトールのような糖類、ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ケラチン、キチン、キトサンのような高分子化合物、セラミド、コレステロール、リン脂質のような脂質、カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、アロエエキスのような植物抽出エキスなどが挙げられる。
【0045】
ビタミン類としては、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム等のビタミンE類、ユビキノン誘導体及びその薬学的又は生理学的に許容される塩、リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル、ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、ニコチン酸1-(4-メチルフェニル)エチル、アスコルビゲン-A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビル、メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、フィロキノン、ファルノキノン、γ-オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩、チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩、塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’-リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン、葉酸、プテロイルグルタミン酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類、ビオチン、ビオチシン、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム、カルニチン、フェルラ酸、α-リポ酸、オロット酸、ヘスペリジン、γ-オリザノール、オロチン酸、ルチン、エリオシトリン及びその薬学的又は生理学的に許容される塩などが挙げられる。
【0046】
ペプチド又はその誘導体としては、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、加水分解シルクなどが挙げられる。
【0047】
血行促進成分としては、植物由来成分が好ましく例示される。例えば、オタネニンジン、アシタバ、アルニカ、イチョウ、エンメイソウ、オランダカシ、カロット、ゲンチアナ、ゴボウ、コメ、サンザシ、シイタケ、セイヨウサンザシ、セイヨウネズ、センキュウ、センブリ、タイム、チョウジ、チンピ、トウキ、トウニン、トウヒ、ニンジン、ニンニク、ブッチャーブルーム、ブドウ、ボタン、マロニエ、メリッサ、ユズ、ヨクイニン、ローズマリー、ローズヒップ、モモ、アンズ、クルミ、トウモロコシなどに由来する成分(これらの植物の抽出物など)や、グルコシルヘスペリジンなどが挙げられる。
【0048】
細胞賦活成分としては、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、ε-アミノカプロン酸のようなアミノ酸類、レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類、ビオチンのようなビタミン類、グリコール酸、乳酸のようなα-ヒドロキシ酸類、タンニン、フラボノイド、サポニン、アラントイン、感光素301号、胎盤抽出液、ヒノキチオール、セファランチン、キウイ種子抽出物などが挙げられる。
【0049】
老化防止成分としては、パンガミン酸、カイネチン、ウルソール酸、ウコンエキス、スフィンゴシン誘導体、ケイ素、ケイ酸、N-メチル-L-セリン、メバロノラクトンなどが挙げられる。
【0050】
美白成分としては、トコフェロール、アスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、4-アルキルレゾルシノ-ル、4-メトキシサリチル酸、ハイドロキノン、コウジ酸、それらの塩、又はそれらの誘導体、胎盤抽出物、オウバク抽出物、ユキノシタ抽出物、アロエ抽出物のような植物抽出物などが挙げられる。
【0051】
本発明の外用組成物には、さらに、角質軟化剤を含有させることもできる。角質軟化剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、グリセリン、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール、炭酸プロピレン、ヘキシルドデカノール、アラントイン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエタノールアミン、ジイソプロピルアジペート、エチルラウリレート、ラノリン、脂肪酸ジアルキロールアミド、サリチル酸、サリチル酸誘導体、尿素、イオウ、レゾルシン、グリコール酸、フィチン酸、乳酸、乳酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示される。
一方、本発明の外用組成物は、一態様として、このような角質軟化剤を含まない外用組成物とすることもできる。中でも、尿素を含まない態様が例示される。角質軟化剤を含まない外用組成物は、特に皮膚への負荷が少なく、好ましい。
【0052】
基剤又は担体
基剤又は担体としては、油性基剤、水性基剤が挙げられる。
油性基剤としては、流動パラフィン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、及び軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、及びシリコーンレジンのようなシリコーン油;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコールのような高級アルコール;コレステロール、フィトステロール、及びヒドロキシステアリン酸フィトステリルのようなステロール類;シアバター、カルバナロウ、及びキャンデリラロウのような植物脂;ラノリン、オレンジラフィー油、スクワラン、馬油、鯨ロウ、及びミツロウのような動物油脂;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化グアガム、及びアセチル化ヒアルロン酸のような天然高分子誘導体;ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、及びアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体のような合成高分子;カラギーナン、アルギン酸、セルロース、キサンタンガム、グアーガム、クインスシード、デキストラン、ジェランガム、及びヒアルロン酸のような天然高分子;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルのようなエステル類;デキストリン、及びマルトデキストリンのような多糖類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノプロピルエーテルのようなグリコールエーテルなどが挙げられる。
また、水性基剤としては、水、緩衝液の他に、エタノール、及びイソプロパノールのような低級アルコール;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソプレングリコール、ジグリセリン、及びジプロピレングリコールのような多価アルコールなどが挙げられる。
基材又は担体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
基剤又は担体としては、炭化水素、高級アルコール、天然高分子誘導体、合成高分子、天然高分子、エステル類、多価アルコールが好ましい。
基剤又は担体として炭化水素を含む場合の含有量としては、組成物の全量に対して、例えば0.1~20重量%、好ましくは1~15重量%が挙げられる。基剤又は担体として高級アルコールを含む場合の含有量としては、組成物の全量に対して、例えば0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%が挙げられる。基剤又は担体として天然高分子誘導体を含む場合の含有量としては、組成物の全量に対して、例えば0.01~5重量%、好ましくは0.05~3重量%が挙げられる。基剤又は担体として合成高分子を含む場合の含有量としては、組成物の全量に対して、例えば0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%が挙げられる。基剤又は担体として天然高分子を含む場合の含有量としては、組成物の全量に対して、例えば0.01~3重量%、好ましくは0.05~1重量%が挙げられる。基剤又は担体としてエステル類を含む場合の含有量としては、組成物の全量に対して、例えば0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%が挙げられる。基剤又は担体として多価アルコールを含む場合の含有量としては、組成物の全量に対して、例えば0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%が挙げられる。
【0054】
本発明の組成物は、水を含まず、水以外の水性基剤を用いて乳剤とすることもできるが、水を含むことが好ましい。
水の含有量は、組成物の全量に対して、0.1重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、30重量%以上、又は45重量%以上とすることができる。また、水の含有量は、組成物の全量に対して、95重量%以下、90重量%以下、又は80重量%以下とすることができる。この範囲であれば、植物性油を配合した乳剤が十分に安定なものとなる。
【0055】
本発明の組成物は、乳化された組成物である。乳化の型は、水中油型、油中水型の何れでもよいが、植物性油を配合した乳剤の安定性を向上させる上で、水中油型が好ましい。
本発明の剤型は、乳化された剤型であればよく、ローション剤(乳液)、クリーム剤、ゲル剤、フォーム剤、乳剤性軟膏、これらを基材に塗布した貼付剤、吸入剤、点鼻剤(鼻スプレー剤を含む)などが挙げられる。中でも、ローション剤、クリーム剤、これらを基材に塗布した貼付剤のような外用剤が好ましく、ローション剤、クリーム剤がさらに好ましく、クリーム剤が特に好ましい。
また、本発明の外用組成物は、皮膚又は粘膜に適用することができるが、特に皮膚外用組成物であることが好ましい。皮膚には頭皮が含まれる。
【0056】
本発明の組成物のpHは、3以上、4以上、4.5以上、又は5以上とすることができ、また、9以下、8以下、7.5以下、又は7以下とすることができる。この範囲であれば、乳化状態が安定であり、また刺激が少ない。
【0057】
適用対象
本発明の外用組成物は、抗ヒスタミン剤が治療、予防又は改善効果を奏する症状や疾患に対して用いるのが好ましい。このような症状又は疾患としては、例えば、痒み症状や皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患などが挙げられる。痒み症状や皮膚の乾燥に起因する症状を示す疾患としては、乾皮症、老人性乾皮症、小児乾燥性皮膚、尋常性鱗癬(鮫肌)、アトピー性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、皮脂減少性湿疹、敏感肌、季節性乾皮症、水性掻痒症、主婦湿疹、皮膚炎、かぶれ、じんましん、虫さされ、湿疹、ただれ、あせも、しもやけ等が挙げられる。
【0058】
相分離抑制方法・乳化状態の安定化方法
本発明は、植物性油を含む乳剤である外用組成物に抗ヒスタミン剤を含ませることにより、この組成物の相分離を抑制する方法を包含する。相分離は、乳化された組成物の一部ないしは全部が、水相と油相に分離している状態である。また、乳化された液滴が少なくとも部分的に合一して大きくなった状態も相分離に該当する。
また、本発明は、植物性油を含む乳剤である外用組成物に抗ヒスタミン剤を含ませることにより、この組成物の乳化状態を安定化する方法、又はこの組成物の安定性を向上させる方法を包含する。
抗ヒスタミン剤の存在により、相分離の低減又は遅延が検出できれば、相分離抑制に該当する。また、抗ヒスタミン剤の存在により、乳化状態の破壊又は変化の低減又は遅延が検出できたり、乳化状態の維持時間が延長されたり、より苛酷な条件で乳化状態が維持されるようになれば、安定化、又は安定性の向上に該当する。
【0059】
また、本発明は、抗ヒスタミン剤を含む乳剤である外用組成物に植物性油を含ませることにより、この組成物の相分離を抑制する方法を包含する。また、本発明は、抗ヒスタミン剤を含む乳剤である外用組成物に植物性油を含ませることにより、この組成物の乳化状態を安定化する方法、又はこの組成物の安定性を向上させる方法を包含する。植物性油の存在により、相分離の低減又は遅延が検出できれば、相分離抑制に該当する。また、植物性油の存在により、乳化状態の破壊又は変化の低減又は遅延が検出できたり、乳化状態の維持時間が延長されたり、より苛酷な条件で乳化状態が維持されるようになれば、安定化、又は安定性の向上に該当する。
【0060】
これらの本発明方法において、各成分の種類、使用量、組成物の剤型、pHなどは、本発明の外用組成物について説明した通りである。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(1)保存安定性の評価(熱安定性)
表1に示す組成の外用組成物(水中油型クリーム剤)を、常法に従って調製した。
実施例、及び比較例の各組成物50gを、ガラス製ねじ口ビン(容量50mL)に収容し、遮光下、50℃又は60℃で1週間保存した。
【0062】
保存前後の組成物の性状を目視で観察し、下記の基準に従って組成物の相分離の程度を評価した。
<分離の評価基準>
◎:全く分離がなく安定である
○:製剤の表面に少量の液体が確認できる。
△:製剤の表面、及びビン内の周縁部に分離した液が確認できる。
×:製剤の一部が液体に変化しており、明らかに分離している。
【0063】
結果を、表1に示す。表1中の単位は、表中に記載があるもの以外は全て「重量%」である。
【表1】
【0064】
50℃又は60℃における保存試験により、熱に対する安定性を評価することができると共に、常温保存する場合の安定性を予測評価することができる。
ラベンダー油、又はユーカリ油を配合した製剤では、保存後に水相と油相とが分離した(比較例1-2、比較例1-3)。また、ジフェンヒドラミンを配合した製剤も、保存後に水相と油相とが分離した(比較例1-1)。一方、ラベンダー油又はユーカリ油とジフェンヒドラミンを配合した製剤(実施例1-1、実施例1-2)、並びにラベンダー油及びユーカリ油とジフェンヒドラミンを配合した製剤(実施例1-3)は、相分離しなかった。ラベンダー油及び/又はユーカリ油とジフェンヒドラミンとが、相乗作用により、乳剤の相分離を抑制したことが分かる。
【0065】
(2)保存安定性の評価(光安定性)
表2に示す実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-3の外用組成物(水中油型クリーム剤)を常法に従って調製した。
実施例、及び比較例の各組成物50gを、ガラス製ねじ口ビン(容量50mL)に収容し、サンテスターを用いて、725W/m2の条件で、48時間光照射した。
光照射前後の組成物の性状を目視で観察し、「(1)保存安定性の評価(熱安定性)」と同じ基準で、各組成物の分離の程度を評価した。
結果を表2に示す。表2中の単位は、表中に記載があるもの以外は全て「重量%」である。
【0066】
【0067】
ラベンダー油又はユーカリ油を配合した製剤では、光照射後に水相と油相とが分離した(比較例2-2、比較例2-3)。また、ジフェンヒドラミンを配合した製剤も、保存後に水相と油相とが分離した(比較例2-1)。一方、ラベンダー油又はユーカリ油とジフェンヒドラミンを配合した製剤(実施例2-1、実施例2-2)、並びにラベンダー油及びユーカリ油とジフェンヒドラミンを配合した製剤(実施例2-3)は相分離しなかった。ラベンダー油及び/又はユーカリ油とジフェンヒドラミンとが、相乗作用により、乳剤の相分離を抑制したことが分かる。
【0068】
(3)保存安定性の評価(熱安定性、光安定性)
表3に示す組成の外用組成物(実施例3-1~3-5:水中油型クリーム剤、実施例3-6:水中油型ローション剤)を、常法に従って調製した。
実施例の各組成物50gを、ガラス製ねじ口ビン(容量50mL)に収容し、遮光下、50℃又は60℃で1週間保存した。また、実施例の各組成物50gを、ガラス製ねじ口ビン(容量50mL)に収容し、サンテスターを用いて、725W/m2の条件で、48時間光照射した。
保存前後、及び光照射前後の組成物の性状を目視で観察し、「(1)保存安定性の評価(熱安定性)」と同じ基準で、各組成物の分離の程度を評価した。
【0069】
結果を、表3に示す。表3中の単位は、表中に記載があるもの以外は全て「重量%」である。
【表3】
【0070】
ジフェンヒドラミンの含有量を変更した場合、リドカインの含有量を変更した場合、植物油の含有量を変更した場合、抗ヒスタミン剤としてジフェンヒドラミンに代えてジフェンヒドラミン塩酸塩を含有する場合、ローション剤である場合も、50℃又は60℃という高温での保存後、又は光照射後に、相分離しないことが確認された。
【0071】
製剤例
表4、表5に記載の処方で、抗ヒスタミン剤及び植物性油を含有する本発明の外用組成物を調製した(製剤例1~10)。製剤例1~4はクリーム剤であり、製剤例5~10はローション剤である。表4、表5中の単位は、表中に記載があるもの以外は全て「重量%」である。
【0072】
【0073】
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の外用組成物は、乳化剤や増粘剤などの添加物の使用のみによらずに、ないしはこれらの添加物に頼らずに、乳化状態の安定性を高めることができる。従って、処方設計の自由度が高く、商品価値が高いものである。