(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】和風スナック用ミックス粉及び和風スナックの製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 10/02 20060101AFI20250107BHJP
A21D 2/22 20060101ALI20250107BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20250107BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20250107BHJP
A23G 3/36 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A21D10/02
A21D2/22
A21D13/80
A23G3/34 102
A23G3/36
(21)【出願番号】P 2020058564
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227489
【氏名又は名称】日東富士製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】井之上明弘
(72)【発明者】
【氏名】玉井千恵子
(72)【発明者】
【氏名】山田弦樹
(72)【発明者】
【氏名】砂岡隆志
(72)【発明者】
【氏名】大島秀男
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-206944(JP,A)
【文献】特開平06-284852(JP,A)
【文献】特開昭60-232060(JP,A)
【文献】特開平09-168365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23G
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉及び/又は澱粉と、ミョウバンを含有しない膨張剤とを含む
、焼型を用いて焼成される和風スナックに適用される和風スナック用ミックス粉において、アスコルビン酸ナトリウムを0.005質量%以上0.50質量%未満含有することを特徴とする和風スナック用ミックス粉。
【請求項2】
前記穀粉及び/又は澱粉:40~97.985質量%
と、前記膨張剤:1.0~10.0質量%
と、前記アスコルビン酸ナトリウム:0.005~0.50質量%
と、増粘剤:0.01~1.0 質量%
と、糖類:1.0 ~20.0質量%
とを含有する、請求項1に記載の和風スナック用ミックス粉。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の和風スナック用ミックス粉を用いて生地を調製する調製工程と、調製した生地を焼型を用いて焼成する焼成工程と、焼成した和風スナックを離型する工程とを含むことを特徴とする和風スナックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来使用されていた焼ミョウバン(無水硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO4)2))を含有する膨張剤を用いることなく、離型性のよい和風スナックの製造に用いる和風スナック用ミックス粉及び和風スナックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今川焼(大判焼き、回転焼きともいう)、たい焼、人形焼、もみじ饅頭等の和風スナックは、小麦粉などの穀粉に水、卵、調味料等を加えて調製した生地を焼型に流し込んで焼成することによって製造される。
【0003】
焼型を用いて製造されるこれらの和風スナックは、焼成後に焼き型から焼けた和風スナックを取り出す、いわゆる離型作業を行う必要がある。和風スナックを量産する場合、前記離型作業において、焼成物の型離れの良し悪しとなる離型性は重要な要素である。特に自動機による製造を行う場合、離型性が良くないと作業効率が低下し、最悪の場合は製造工程の自動化が困難になる。また、手作業による製造においても、離型性が悪いと作業効率が著しく低下してしまう。
【0004】
従来の和風スナックには、膨張剤として一般に焼ミョウバンが添加されている。この焼ミョウバンは、小麦粉のグルテンに作用して焼成中にグルテンを収斂させる作用があると考えられている。このため、焼ミョウバンを添加した生地では焼成中にグルテンが収斂し、焼成後の和風スナックが僅かに縮み、型から離れ易くなることが知られていた。
【0005】
ところで、焼きミョウバンなど食品に添加されるアルミニウム化合物は、土壌や水、空気中などにも微量に存在している成分であり、穀類や野菜などにも僅かに含まれている。このため、人体への深刻な影響はないと考えられていたが、ラットにアルミニウムを多量投与した実験では、腎臓(じんぞう)や膀胱(ぼうこう)への悪影響や握力の低下が認められた。
【0006】
また、世界保健機関(WHO)などの国際機関では、人が一生涯摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される暫定的な許容量を暫定耐容週間摂取量(PTWI:provisional tolerable weekly intake)として、アルミニウムの場合、体重1キログラム当り一週間に2ミリグラムと規定している。
【0007】
アルミニウム含有量の表示は義務づけられておらず、厚生労働省では使用基準を設ける方針を示しており、菓子パンや製菓、食品添加物メーカーでは、アルミニウムを含有しないアルミフリーの原料への切り替えが進められている。
【0008】
このため、和風スナックの原料においてもアルミフリーの原料への切り替えが進められているが、上記のように焼ミョウバンを含有しない膨張剤を用いると、グルテンの収斂作用がなくなり、離型性が悪化し、特に自動化工程での製造が困難になるという不具合を生じることがあった。
【0009】
下記特許文献1には、ホットケーキなどの焼き菓子の生地原料として有用な焼き菓子用ミックスとして、薄力粉、中力粉、強力粉、小麦全粒粉、デュラムセモリナ等の小麦粉;ライ麦粉、米粉、コーンフラワー、コーングリッツ等の穀粉を主成分として、これに酸性剤として、酢酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸、及びこれらの塩類等を添加している組成物が開示されている。また、適用できる製品としてたい焼が記載されている。
【0010】
下記特許文献2には、分割、丸め、成形時に粘つきがなく良好な物性を呈するベーカリー生地を提供するために、食物繊維として、所定のセルロースをパン生地に添加した組成物が開示されている。そして、この文献の段落0026には「食物繊維組成物は、生地のシマリを向上させる効果があり、それにより吸水量をさらに増やすことが可能な点で、酸化剤成分を含有することが好ましい。該酸化剤成分は、ベーカリー生地中で、酸化作用によりグルテン蛋白質の架橋をして、パン生地を強化する成分であり、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、・・・のうちの1種または2種以上を使用することが好ましい。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2019-62858号公報
【文献】特許第5739129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1で記載されているアスコルビン酸は、pH調整用の酸性剤で添加可能な化合物の例示として記載されているだけで、離型性を改善する点については何ら記載されていない。また、前記有機酸を塩類として添加できると記載されているが、具体的な塩の化合物名は記載されていない。さらに、アスコルビン酸が膨張剤に与える影響についても何ら検討されていない。
【0013】
特許文献2の組成物は、パン類に使用されるベーカリー生地、つまりイーストを用いて発泡させる形態の食材であり、和風スナック菓子のような膨張剤を用いて発泡させる食品とは、膨張・収斂のメカニズムが異なる。このため、膨張剤を用いた焼成工程での膨潤により、離型性に問題が生じる点や、これを改善するためにアスコルビン酸ナトリウムを用いる点についての記載は一切ない。
【0014】
上記いずれの文献にも、たい焼のような和風スナックにおいて、アルミフリー組成としたときの焼成時の離型性を改善するという課題は記載されていない。また、前記課題を解決するためにアスコルビン酸ナトリウムを添加する点も記載されていない。
【0015】
したがって、本発明の目的は、アルミフリーの和風スナック用ミックス粉でも従来の焼ミョウバンを含有する膨張剤を添加した生地と同等の離型性を実現し、自動機による製造を可能にし、また手作業においても作業効率を向上させることが可能な和風スナック用ミックス粉及びそれを用いた和風スナックの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、ミョウバンを含有しない膨張剤を用いても、原料中にアスコルビン酸ナトリウムを添加することで離型性を改善でき、従来の焼ミョウバンを含有する膨張剤を用いた原料と同等の離型性を実現できる和風スナック用ミックス粉を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、穀粉及び/又は澱粉と、ミョウバンを含有しない膨張剤とを含む和風スナック用ミックス粉において、アスコルビン酸ナトリウムを0.005質量%以上0.50質量%未満含有することを特徴とする和風スナック用ミックス粉を提供するものである。
【0018】
本発明の和風スナック用ミックス粉によれば、従来の焼ミョウバンを含有する膨張剤を用いた生地と同等の離型性を実現し、アルミフリーの原料でも自動機による製造を可能にし、また手作業においても作業効率を向上させることが可能な和風スナック用ミックス粉を提供することができる。
【0019】
本発明の和風スナック用ミックス粉は、焼型を用いて焼成される和風スナックに適用されるものであることが好ましい。
【0020】
また、本発明の和風スナック用ミックス粉は、前記穀粉及び/又は澱粉:40~97.985質量%、前記膨張剤:1.0~10.0質量%、前記アスコルビン酸ナトリウム:0.005 ~0.50質量%、増粘剤:0.01~1.0質量%、糖類:1.0 ~20.0 質量%含有することが好ましい。
【0021】
また、本発明のもう1つは、上記記載の和風スナック用ミックス粉を用いて生地を調製する調製工程と、調製した生地を焼型を用いて焼成する焼成工程と、焼成した和風スナックを離型する工程とを含むことを特徴とする和風スナックの製造方法を提供するものである。
【0022】
本発明の和風スナックの製造方法によれば、従来の焼ミョウバンを含有する膨張剤を添加した生地と同等の離型性を実現し、アルミフリーの原料でも自動機による製造を可能にし、また手作業においても作業効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、アルミニウムフリーの組成においても、焼ミョウバン含有の組成物と同等の離型性が得られ、しかも色調や食味を損なうことの無い和風スナックを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の和風スナック用ミックス粉は、穀粉及び/又は澱粉と、ミョウバンを含有しない膨張剤と、アスコルビン酸ナトリウムとを含有する。
【0025】
すなわち、本発明の和風スナック用ミックス粉は、ミョウバンを含有しない膨張剤を用いた場合でも、アスコルビン酸ナトリウムを含有させることによって、焼きミョウバンを含有する膨張剤を用いたのと同等な離型性を得ることができる点に特徴を有している。
【0026】
なお、一般にミョウバンは1価の陽イオンの硫酸塩MI
2(SO4)と3価の金属イオンの硫酸塩MIII
2(SO4)3の複塩の総称を意味するが、本発明におけるミョウバンは、特に食品添加物として多く用いられるアルミニウムの硫酸塩、特に硫酸カリウムアルミニウム十二水和物 [AlK(SO4)2・12H2O]、通称カリミョウバンを示すものであり、特に前記カリミョウバンの無水物である焼ミョウバンである。このようなミョウバンの存在は、アルミニウムを検出することでも確認できる。
【0027】
膨張剤は、和風スナック菓子をふっくら焼き上げ、食感をよくするために添加される。膨張剤としては、ミョウバンを含まないものであれば、特に限定されるものではなく、この種の焼成用和風スナック菓子に添加される膨張剤を用いることができる。具体的には、炭酸水素ナトリウム、グルコノデルタラクトン(グルコノラクトン)、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸一ナトリウム、α-酒石酸水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸一水素カルシウムなどから選ばれた1種又は2種以上を含有するものが挙げられる。膨張剤の含有量は、必要とされる食感が得られるように添加すればよいが、ミックス粉中の膨張剤の総含有量で、好ましくは2~10質量%、より好ましくは4~8質量%である。膨張剤の添加量が少ないと、所望の膨張効果が得られず、多すぎると食味が悪化するなどの弊害が生じてくる。
【0028】
アスコルビン酸ナトリウム(C6H7NaO6)は、アスコルビン酸のナトリウム塩であり、アスコルビン酸の異性体であるエリソルビン酸のナトリウム塩が存在するが、L-アスコルビン酸ナトリウムが、入手の容易性、低価格などの点で好ましい。L-アスコルビン酸ナトリウムの含有量は、例えばアスコルビン酸として酸化還元滴定などにより定量分析が行える。
【0029】
なお、ナトリウム塩でないアスコルビン酸は、酸味が強く食味に影響して、食感を悪くし、膨張剤などに対して酸性による悪影響を及ぼすため本発明の添加剤には適さない。以下、この明細書では。L-アスコルビン酸ナトリウムを単にアスコルビン酸ナトリウムと表記する。
【0030】
アスコルビン酸ナトリウムの含有量は、ミックス粉中の含有量で、0.005質量%以上0.50質量%未満、好ましくは0.007質量%~0.30質量%、より好ましくは0.01質量%~0.2質量%である。アスコルビン酸ナトリウムの添加量が少ないと、離型性が悪化し、多すぎると、えぐみなどが顕在化して食味が悪化し、色調もくすんだようになり見た目が悪くなってくる。
【0031】
主成分である穀粉及び/又は澱粉のうち、穀粉原料としては、例えば小麦粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、あわ粉、ひえ粉、はとむぎ粉、及びとうもろこし粉等を用いることができる。これらの中でも小麦粉が好ましく、小麦粉としては、強力粉、準強力粉、中力粉、及び薄力粉等が挙げられるが、特に薄力粉、中力粉が好ましく用いられる。
【0032】
本発明において、穀粉は、所定の粒度に調整して用いてもよい。小麦などの穀物を粉砕、分級・篩い分けして穀粉を製造する際に、篩い分けされた穀粉のうち最適なものを選択し、あるいは複数の粒度の穀粉を組合せて用いることができる。
【0033】
更に、本発明の和風スナック用ミックス粉には、加熱処理を行った小麦粉を用いてもよい。加熱処理を行った小麦粉を用いることで、生地の歯切れがよく、軽い食感が得られるという利点が得られる。加熱処理された小麦粉の割合は、上記小麦の添加量に対して50~100質量%が好ましく、70~100質量%がより好ましい。
【0034】
加熱処理の方法としては、公知の方法を採用することができる。具体的には乾熱加熱、湿熱加熱が挙げられる。例えば、乾熱加熱では、原料に加水を行わずに加熱を行う。乾熱加熱に用いられる装置としては、回転釜、焙煎釜、パドルドライヤー、熱風乾燥機、棚式乾燥機等を用いることができる。また、湿熱加熱では、原料の水分含量が13~16質量%程度となるように適宜加水し水分を調整した後、熱した密閉容器内で加熱を行う。あるいは加熱蒸気が含まれる容器中で加熱を行う。湿熱加熱に用いられる装置としては、密閉式加熱装置、ボックス式蒸し器等を用いることができる。
【0035】
その加熱条件に特に制限はないが、例えば、回転釜等の加熱容器に入れて、撹拌しながら、最終品温が100~120℃になるように、加熱時間がトータルで好ましくは30~60分間になるように加熱する等によってなされる。また、回転釜等の加熱容器を用いる態様に限らず、例えば、回転ドラムに原料を入れて、熱風を吹込みながら加熱する方法等、各種の態様を採用することができる。
【0036】
また、澱粉としては、例えばタピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチなどの生澱粉の他、それらの加工澱粉を用いることができる。加工澱粉としては、例えばα化処理、酸処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理を行った澱粉などが挙げられる。澱粉を添加することにより、焼成した生地が程よくソフトになり、口溶けがよく、また保形性も維持され、型崩れし難くなる傾向がある。
【0037】
穀粉及び/又は澱粉の含有量は、ミックス粉中、40~97.985質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましく、70~90質量%が最も好ましい。
【0038】
また、穀粉及び澱粉の総量に対する澱粉の含有量は、0~60質量%が好ましく、2.0~50.0質量%がより好ましい。
【0039】
本発明のミックス粉は、原料として、増粘剤を含有していてもよい。増粘剤は、調整された生地に一定の粘度を与えて、所望量の生地を型に定着させ易くさせ、作業性を向上させる効果を有する。増粘剤としては、一般に食品に添加されているものを使用することができ、例えばキサンタンガム、グアガム、タマリンドシードガム、ローストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、カードラン、プルラン等が挙げられる。増粘剤の添加量は、所望の粘性が得られるように添加すればよいが、ミックス粉中、好ましくは0.01~1.0質量%、より好ましくは0.01~0.8質量%である。
【0040】
また、本発明のミックス粉は、原料として、糖類を含有していてもよい。糖類は、和風スナックの食味を整えるために添加される。添加される糖類としては、この種の食品に添加されている糖類の中から好適なものを選択して用いればよく、例えば砂糖、乳糖、麦芽糖、ぶどう糖、オリゴ糖、果糖の他、ベタイン、キシリトール、エリスリトール、白ざら糖、加工黒糖、トウミツ、ラフィノースなどが使用できる。これらの中でも特に、砂糖、ブドウ糖が好ましく、カロリー制限食品に対応させる場合にはキシリトール、エリスリトール、ステビア、甘草、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロースなどを用いてもよい。本発明における糖類は、上記で例示した糖質系および非糖質系甘味料を含む広義の意味で用いられる。
【0041】
糖類の添加量は、使用する糖類によっても異なるが、通常用いられる砂糖・ブドウ糖など、高甘味度甘味料を除く糖類を用いる場合には、ミックス粉中に、好ましくは1.0~20.0質量%、より好ましくは2.0~15.0質量%である。
【0042】
本発明の和風スナック用ミックス粉は、上記成分以外に、和風スナックの原料として通常用いられている各種の原料を含有することができる。このような原料としては、例えば、調味料(食塩、こしょう、醤油、味噌、みりん、酒、グルタミン酸ナトリウム等)、卵製品(例えば卵黄粉末、全卵粉末)、大豆蛋白質、えんどう蛋白質、小麦グルテンなどの植物蛋白原料、乳製品(牛乳、脱脂粉乳、ホエー蛋白、カゼイン等)、ゼラチン、食物繊維、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン酸脂肪酸エステル等)、デキストリン、油脂、甘味料、香辛料、ビタミン類、ミネラル類等が挙げられる。これらの中でも特に、卵製品、澱粉、油脂、食塩を必要に応じて添加することで、和風スナックの食味や食感を向上させることができる。
【0043】
このような本発明の和風スナック用ミックス粉は、例えば今川焼(大判焼、回転焼とも呼ばれる)、たい焼、人形焼、もみじ饅頭、タコ焼きなどの焼型を用いて焼成された後、焼成物を型から離型する製造形態の和風スナックに好適に用いられる。ただし、本発明の和風スナック用ミックス粉の適用範囲は、特に上記例示製品に規制されるものではなく、お好み焼き等のその他の和風スナックの製造にも用いてもよい。
【0044】
上記和風スナックは、和風スナック用ミックス粉と必要に応じて水、牛乳、卵などの他の原料とを混合して生地とし、公知の製造方法により得ることができる。
【0045】
例えば、和風スナック用ミックス粉と他の原料とを混合して生地(バッター)を調製する調製工程と、調製した生地を焼型に流し込み、必要に応じて餡や具材を添加して、焼成する焼成工程と、焼成した和風スナックを型から取り出す離型工程とを含む工程により製造することができる。
【0046】
特に、前記離型工程において、一対の版が蝶番状に開閉する焼き型を開き、焼き型を反転して焼成物載置面を下向きにして、重力により和風スナックが型から剥離し、自然落下により離型する工程を有することが望ましい。
【0047】
自然落下により離型する工程を備えることで、離型に必要な特別な装置や機構が不要となり、製造装置全体を簡素化できる。
【実施例】
【0048】
1.たい焼の製造
表1に示した組成の和風スナック用ミックス粉(以下、「ミックス粉」ともいう。)の総量に対し、表1に示したアスコルビン酸ナトリウムまたは焼ミョウバンを添加した実施例サンプル1~3、比較例サンプル1~4の原料を用意し、さらに表1に示す量の水と混合し、均一化して生地を調整した。
【0049】
得られたたい焼用生地を、2つの版が蝶番状に対になり両者を合わせることで一体に焼成できるたい焼の焼き型を用いて焼成した。まず、予め170℃に加熱しておいた、一方の版である焼き型に生地を所定量流し込み、170℃、5分間焼成し、その後餡(標準品)を入れ、別途同様にして他方の版で生地のみを焼成したもので挟んで、更に約5分間焼成して、たい焼を製造した。
【0050】
【0051】
2.評価方法
得られたそれぞれのたい焼サンプルを、焼成直後にパネラーに離型性と色調について評価させ、その後試食させて、食味を評価させた。評価は7名で行われ、表2~4に示した評価基準による5点満点での5段階で評価し、平均値を求めた。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
3.結果
結果を表5に示す。
【0056】
【0057】
表5に示すように、アスコルビン酸ナトリウムを0.01~0.1質量%含有する和風スナック用ミックス粉を用いた実施例1~3のたい焼では、焼ミョウバンを含有しない比較例2のたい焼に比べ、焼ミョウバンを含有する比較例1のたい焼と同等かこれに近い良好な離型性を示している。また、実施例1~3のたい焼は、色調や食味も良好であった。
【0058】
一方、アスコルビン酸ナトリウムを、本発明の範囲を超えて過剰に添加した比較例3,4のたい焼では、離型性はある程度改善されるものの、色調と食味が劣る結果となっている。これは、アスコルビン酸ナトリウムの添加量が増えたことにより、色調と食味に悪影響が生じたと考えられる。
【0059】
以上の結果から、本発明範囲の和風スナック用ミックス粉を用いることで、色味、食味に悪影響を与えることなく、従来と同等の離型性が得られることが分かった。