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特許7613847複数の可撓性長尺物の搬送装置およびその作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】複数の可撓性長尺物の搬送装置およびその作動方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 51/32 20060101AFI20250107BHJP
   B65H 51/10 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B65H51/32 D
B65H51/10 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020106985
(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公開番号】P2022001525
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江田 拓朗
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特許第7514925(JP,B2)
【文献】実開昭54-171080(JP,U)
【文献】特公昭38-011815(JP,B1)
【文献】実開昭54-137677(JP,U)
【文献】特開平08-002813(JP,A)
【文献】実開昭57-089549(JP,U)
【文献】特開平10-212067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 51/32
B65H 51/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸方向に第1端と第2端をそれぞれ有し、互いに間隔を開けて並んでいる複数の可撓性長尺物を並行して搬送する装置であって、
前記複数の可撓性長尺物の前記第1端側を保持する第1保持部と、
前記複数の可撓性長尺物の前記第2端側を保持する第2保持部と、を備え、
前記第1保持部は、
一の第1ローラーと、前記第1ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第1シャフトと、前記第1シャフトを回転駆動する第1駆動機構と、を有する第1回転部と、
複数の第2ローラーと、前記第1シャフトと平行であり前記複数の第2ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第2シャフトと、を有する第2回転部と、を備え、
前記第2保持部は、
一の第3ローラーと、前記第3ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第3シャフトと、前記第3シャフトを回転駆動する第2駆動機構と、を有する第3回転部と、
複数の第4ローラーと、前記第3シャフトと平行であり前記複数の第4ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフトと、を有する第4回転部と、を備え、
前記第1ローラーと前記可撓性長尺物の間の転がり摩擦係数が、前記第3ローラーと前記可撓性長尺物の間の転がり摩擦係数よりも大きい複数の可撓性長尺物の搬送装置。
【請求項2】
全ての前記第4ローラーが、フリーローラーである請求項に記載の搬送装置。
【請求項3】
全ての前記第2ローラーが、フリーローラーである請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
一の前記第2ローラーが、一の前記可撓性長尺物に対応して配置されている請求項1~のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記第1回転部は、一の前記第1シャフトを有しており、
一の前記第1シャフトは、全ての前記第2シャフトと向かい合って配置されている請求項1~のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第1回転部は、互いに間隔を開けて並んでいる複数の前記第1シャフトを有しており、
複数の前記第1シャフトのそれぞれが、前記第2シャフトと向かい合って配置されている請求項1~のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記第1回転部と前記第2回転部の少なくともいずれか一方が、前記可撓性長尺物を保持する力を調整する保持力調整機構を備えている請求項1~のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項8】
複数の前記第2シャフトは、それぞれ前記保持力調整機構を備えている請求項に記載の搬送装置。
【請求項9】
長手軸方向に第1端と第2端をそれぞれ有し、互いに間隔を開けて並んでいる第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物を並行して搬送する装置であって、
前記第1の可撓性長尺物の前記第1端側と前記第2の可撓性長尺物の前記第1端側を保持する第1保持部と、
前記第1の可撓性長尺物の前記第2端側と前記第2の可撓性長尺物の前記第2端側を保持する第2保持部と、を備え、
前記第1保持部は、
一の第1ローラーと、前記第1ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第1シャフトと、前記第1シャフトを回転駆動する第1駆動機構と、を有する第1回転部と、
複数の第2ローラーと、前記第1シャフトと平行であり前記複数の第2ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第2シャフトと、を有する第2回転部と、を備え、
前記第2保持部は、
一の第3ローラーと、前記第3ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第3シャフトと、前記第3シャフトを回転駆動する第2駆動機構と、を有する第3回転部と、
複数の第4ローラーと、前記第3シャフトと平行であり前記複数の第4ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフトと、を有する第4回転部と、を備え、
前記第1ローラーと可撓性長尺物の間の転がり摩擦係数が、前記第3ローラーと可撓性長尺物の間の転がり摩擦係数よりも大きい搬送装置を準備する工程と;
前記第1ローラーと前記第2ローラーにより前記第1の可撓性長尺物と前記第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程と;
前記第1ローラーと前記第2ローラーにより前記第2の可撓性長尺物を第2の所定距離だけ搬送する工程と;を含む複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法。
【請求項10】
前記搬送装置は、前記第1の可撓性長尺物に必要な搬送距離である第1調整量と前記第2の可撓性長尺物に必要な搬送距離である第2調整量を検出する検出部をさらに有し、
前記第1ローラーと前記第2ローラーにより前記第1の可撓性長尺物と前記第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程の前に、前記検出部が前記第1調整量と前記第2調整量を検出する工程を有し、
前記第1ローラーと前記第2ローラーにより前記第1の可撓性長尺物と前記第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程において、前記第1の所定距離は前記第1調整量と等しく、
前記第1ローラーと前記第2ローラーにより前記第2の可撓性長尺物を第2の所定距離だけ搬送する工程において、前記第2の所定距離は前記第2調整量から前記第1調整量を引いた差と等しい請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1ローラーと前記第2ローラーにより前記第1の可撓性長尺物と前記第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程と、前記第1ローラーと前記第2ローラーにより前記第2の可撓性長尺物を第2の所定距離だけ搬送する工程では、前記第1回転部を回転駆動させることによって前記第1の可撓性長尺物と前記第2の可撓性長尺物の少なくともいずれかを搬送する請求項または10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の樹脂チューブ等の可撓性長尺物を搬送するための装置とその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに対向配置されたローラー対を2つ設けることで長尺な線条体ワークを挟んで保持し、2つのローラーのいずれかを回転駆動させることによってワークを搬送する装置が知られている(例えば、特許文献1)。これにより、可撓性を有するワークであっても重力による撓みを抑制しながら搬送することができる。また、複数の長尺な線条体ワークを同時に搬送する装置も知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-143092号公報
【文献】特開2001-226035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように長尺なワークを連続して搬送する装置は種々提案されているが、直径が小さく所定長であって柔軟なワークをバッチ毎に精密に搬送することは難しかった。そのようなワークの位置を精密に制御して搬送するためには、1本ずつワークを搬送するか、複数のワークを搬送する場合にはワーク毎に駆動装置を配置する必要があった。また、このようなワークは繊細で傷が付きやすいため、手作業での搬送が行われることも多い。
【0005】
ところで複数のワークを搬送する際には、対向する2つのローラーで複数のワークを保持して搬送した後にその保持を解除し、次いでその2つのローラーで別の複数のワークを保持するという動作を繰り返すことがある。このとき2つのローラーはワークに対して接触および離反を繰り返すように動いている。ところが精密な搬送を行いつつ、ワークの搬送効率向上のためにそのような動きを高速で行うと、2つのローラーがワークに接触する際の衝撃力は強くなる。これに伴い、2つのローラーが例えばその接近および離反方向に位置ずれしやすくなる。その結果、精密な搬送が困難になり、ワークの位置がずれた状態で保持されて搬送されるおそれがある。そこで、本発明は、複数の可撓性長尺物の保持位置が揃った状態で搬送することができる装置とその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決することができた本発明の複数の可撓性長尺物の搬送装置の一実施態様は、長手軸方向に第1端と第2端をそれぞれ有し、互いに間隔を開けて並んでいる複数の可撓性長尺物を並行して搬送する装置であって、複数の可撓性長尺物の第1端側を保持する第1保持部と、複数の可撓性長尺物の第2端側を保持する第2保持部と、を備え、第1保持部は、一の第1ローラー、第1ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第1シャフト、第1シャフトを回転駆動する第1駆動機構を有する第1回転部と、複数の第2ローラー、第1シャフトと平行であり複数の第2ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第2シャフトを有する第2回転部と、を備えている点に要旨を有する。上記搬送装置によれば、第1回転部に第1ローラーが1つのみ設けられているため、第1ローラーと第2ローラーを高速で可撓性長尺物に繰り返し接触させても、第1ローラーと第2ローラーの接近および離反方向における第1ローラーの位置ずれを抑制することができる。したがって、第1ローラーに接触する複数の可撓性長尺物の位置を揃えることが可能であり、複数の可撓性長尺物を位置が揃った状態で搬送することができる。また、長期間にわたって第1ローラーの位置ずれを抑制することもできる。
【0007】
上記搬送装置において、第2保持部は、一の第3ローラー、第3ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第3シャフト、第3シャフトを回転駆動する第2駆動機構を有する第3回転部と、複数の第4ローラー、第3シャフトと平行であり複数の第4ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフトを有する第4回転部と、を備えていることが好ましい。
【0008】
上記搬送装置において、第1ローラーと可撓性長尺物の間の転がり摩擦係数が第3ローラーと可撓性長尺物の間の転がり摩擦係数よりも大きいことが好ましい。
【0009】
上記搬送装置において、全ての第4ローラーが、フリーローラーであることが好ましい。
【0010】
上記搬送装置において、全ての第2ローラーがフリーローラーであることが好ましい。
【0011】
上記搬送装置において、一の第2ローラーが、一の可撓性長尺物に対応して配置されていることが好ましい。
【0012】
上記搬送装置において、第1回転部は一の第1シャフトを有しており、一の第1シャフトは全ての第2シャフトと向かい合って配置されていることが好ましい。
【0013】
上記搬送装置において、第1回転部は互いに間隔を開けて並んでいる複数の第1シャフトを有しており、複数の第1シャフトのそれぞれが第2シャフトと向かい合って配置されていることが好ましい。
【0014】
上記搬送装置において、第1回転部と第2回転部の少なくともいずれか一方が、可撓性長尺物を保持する力を調整する保持力調整機構を備えていることが好ましい。
【0015】
上記搬送装置において、複数の第2シャフトはそれぞれ保持力調整機構を備えていることが好ましい。
【0016】
上記搬送装置において、第1ローラーと第2ローラーはそれぞれ可撓性長尺物と当接する当接部を有し、第2ローラーの当接部が第1ローラーの当接部よりも柔軟な材料から構成されていることが好ましい。
【0017】
上記搬送装置において、第2保持部は、一の第3ローラー、第3ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第3シャフト、第3シャフトを回転駆動する第2駆動機構を有する第3回転部と、複数の第4ローラー、第3シャフトと平行であり複数の第4ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフトを有する第4回転部と、を備え、第3ローラーと第4ローラーはそれぞれ可撓性長尺物と当接する当接部を有し、第4ローラーの当接部が第3ローラーの当接部よりも柔軟な材料から構成されていることが好ましい。
【0018】
上記搬送装置において、第2保持部は、一の第3ローラー、第3ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第3シャフト、第3シャフトを回転駆動する第2駆動機構を有する第3回転部と、複数の第4ローラー、第3シャフトと平行であり複数の第4ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフトを有する第4回転部と、を備え、第1ローラーと第2ローラーと第3ローラーと第4ローラーはそれぞれ可撓性長尺物と当接する当接部を有し、第1ローラーの当接部と第2ローラーの当接部と第3ローラーの当接部と第4ローラーの当接部は、それぞれ可撓性長尺物よりも柔軟な材料から構成されていることが好ましい。
【0019】
上記搬送装置において、第1保持部と第2保持部はそれぞれ第1シャフトの長手軸方向と上下方向の双方に垂直な方向に移動可能であることが好ましい。
【0020】
本発明は、複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法も提供する。本発明の複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法の一実施態様は、長手軸方向に第1端と第2端をそれぞれ有し、互いに間隔を開けて並んでいる第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物を並行して搬送する装置であって、第1の可撓性長尺物の第1端側と第2の可撓性長尺物の第1端側を保持する第1保持部と、第1の可撓性長尺物の第2端側と第2の可撓性長尺物の第2端側を保持する第2保持部と、を備え、第1保持部は、一の第1ローラー、第1ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第1シャフト、第1シャフトを回転駆動する第1駆動機構を有する第1回転部と、複数の第2ローラー、第1シャフトと平行であり複数の第2ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第2シャフトを有する第2回転部と、を備えた搬送装置を準備する工程と;第1ローラーと第2ローラーにより第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程と;第1ローラーと第2ローラーにより第2の可撓性長尺物を第2の所定距離だけ搬送する工程と;を含む点に要旨を有する。上記作動方法によれば、第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物の長手軸方向の位置を効率よく揃えることができる。
【0021】
上記作動方法において搬送装置は、第1の可撓性長尺物に必要な搬送距離である第1調整量と第2の可撓性長尺物に必要な搬送距離である第2調整量を検出する検出部をさらに有し、上記作動方法は、第1ローラーと第2ローラーにより第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程の前に、検出部が第1調整量と第2調整量を検出する工程を有し、第1ローラーと第2ローラーにより第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程において、第1の所定距離は第1調整量と等しく、第1ローラーと第2ローラーにより第2の可撓性長尺物を第2の所定距離だけ搬送する工程において、第2の所定距離は第2調整量から第1調整量を引いた差と等しいことが好ましい。
【0022】
上記作動方法は、第1ローラーと第2ローラーにより第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物を一緒に第1の所定距離だけ搬送する工程と、第1ローラーと第2ローラーにより第2の可撓性長尺物を第2の所定距離だけ搬送する工程では、第1回転部を回転駆動させることによって第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物の少なくともいずれかを搬送することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る複数の可撓性長尺物の搬送装置およびその作動方法によれば、第1回転部に第1ローラーが1つのみ設けられているため、第1ローラーと第2ローラーを高速で可撓性長尺物に繰り返し接触させても、第1ローラーと第2ローラーの接近および離反方向における第1ローラーの位置ずれを抑制することができる。したがって、第1ローラーに接触する複数の可撓性長尺物の位置を揃えることが可能であり、複数の可撓性長尺物を位置が揃った状態で搬送することができる。また、長期間にわたって第1ローラーの位置ずれを抑制することもできる。さらに、本発明に係る複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法によれば、第1の可撓性長尺物と第2の可撓性長尺物の長手軸方向の位置を効率よく揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る複数の可撓性長尺物の搬送装置の側面図を表す。
図2図1に示した搬送装置の正面断面図を表す。
図3図2に示した搬送装置の変形例を示す正面断面図を表す。
図4図1に示した搬送装置の変形例を示す側面図を表す。
図5図4に示した搬送装置の正面断面図を表す。
図6図5に示した搬送装置の変形例を示す正面断面図を表す。
図7図1に示した第1ローラーと第2ローラーを拡大した側面図を表す。
図8】本発明の一実施形態に係る複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法を示す模式図を表す。
図9】本発明の一実施形態に係る複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法を示す模式図を表す。
図10】本発明の一実施形態に係る複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法を示す模式図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0026】
1.複数の可撓性長尺物の搬送装置
本発明の複数の可撓性長尺物の搬送装置の一実施態様は、長手軸方向に第1端と第2端をそれぞれ有し、互いに間隔を開けて並んでいる複数の可撓性長尺物を並行して搬送する装置であって、複数の可撓性長尺物の第1端側を保持する第1保持部と、複数の可撓性長尺物の第2端側を保持する第2保持部と、を備え、第1保持部は、一の第1ローラー、第1ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第1シャフト、第1シャフトを回転駆動する第1駆動機構を有する第1回転部と、複数の第2ローラー、第1シャフトと平行であり複数の第2ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第2シャフトを有する第2回転部と、を備えている点に要旨を有する。上記搬送装置では第1回転部に第1ローラーが1つのみ設けられている。このため、第1ローラーと第2ローラーを高速で可撓性長尺物に繰り返し接触させても、第1ローラーと第2ローラーの接近および離反方向における第1ローラーの位置ずれを抑制することができる。したがって、第1ローラーに接触する複数の可撓性長尺物の位置を揃えることが可能であり、複数の可撓性長尺物を位置が揃った状態で搬送することができる。また、長期間にわたって第1ローラーの位置ずれを抑制することもできる。
【0027】
以下では複数の可撓性長尺物の搬送装置を単に「搬送装置」、可撓性長尺物を単に「長尺物」と称することがある。図1図6を参照して搬送装置の基本構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置の側面図を表し、図2は、図1に示した搬送装置の正面断面図を表す。図3は、図2に示した搬送装置の変形例を示す正面断面図を表す。図4は、図1に示した搬送装置の変形例を示す側面図を表し、図5は、図4に示した搬送装置の正面断面図を表し、図6は、図5に示した搬送装置の変形例を示す正面断面図を表す。各図面の空間座標において、x方向を長尺物の搬送方向とし、y方向を上下方向とし、z方向を第1シャフト12の長手軸方向とする。x、y、z方向は互いに直交している。搬送装置1は第1保持部10と第2保持部30を備えている。なお、図2図3および図5図6では、3つの長尺物50を搬送する装置を例に挙げて説明する。
【0028】
搬送装置1は、互いに間隔を開けて並んでいる複数の長尺物50を並行して搬送する装置1である。詳細には、搬送装置1において長尺物50は後述する第1保持部10の第1ローラー15と第2ローラー25が回転することで特定の方向に送り出される。長尺物50を搬送する方向は特に限定されないが、水平方向に搬送することが好ましい。3つ以上の長尺物50が搬送される場合、並んでいる長尺物50同士の間隔は一定であってもよく、それぞれ異なっていてもよい。なお、図2図3および図5図6では、3つの長尺物50同士がほぼ等間隔に並んでいる。
【0029】
搬送対象である可撓性長尺物50は長手軸方向に第1端50Aと第2端50Bを有している。長尺物50の長手軸方向の第1端50A側とは、長尺物50を長手軸方向で二等分割したときの第1端50Aを含む側を意味する。長尺物50の長手軸方向の第2端50B側とは、長尺物50を長手軸方向で二等分割したときの第2端50Bを含む側を意味する。
【0030】
長尺物50の形状は特に限定されず中実状でも中空状でもよい。長尺物50は部分的に中空状であってもよい。長尺物50は弾性を有していてもよい。搬送装置1により搬送される長尺物50の長さは、例えば30cm以上100cm以下、直径は、例えば0.1mm以上5mm以下である。このように長尺物50は細長形状のワークであってもよい。長尺物50を上記範囲の長さにすることで、第1保持部10および第2保持部30による長尺物50の保持、搬送および保持解除や、搬送後の工程における長尺物50の加熱、膨張、延伸等の処理が行いやすくなる。
【0031】
長尺物50を構成する材料としては樹脂または金属を挙げることができる。長尺物50を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。長尺物50を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
長尺物50は、樹脂または金属で構成されている長尺体の表面に樹脂や金属が被覆されたものも含まれる。長尺物50は、樹脂チューブであることが好ましく、フッ素系樹脂チューブまたはポリアミド系樹脂チューブであることがより好ましい。長尺物50は、工業用または医療用の樹脂チューブであることが好ましく、医療用の樹脂チューブであることがより好ましく、バルーンカテーテル用の樹脂チューブであることがさらに好ましく、バルーン成形用の樹脂チューブであることが特に好ましい。
【0033】
第1保持部10は、複数の可撓性長尺物50の第1端50A側を保持する部材である。第1保持部10による長尺物50の保持位置は特に限定されないが、長尺物50の第1端50Aを含む位置を保持してもよく、第1端50Aよりも長尺物50の長手軸方向の中央側の位置を保持してもよい。長尺物50は、第1保持部10と第2保持部30の間において直線状態で保持されればよい。長尺物50の一部が図示しない巻き取り器に巻き取られていてもよい。
【0034】
第2保持部30は、複数の可撓性長尺物50の第2端50B側を保持する部材である。第2保持部30による長尺物50の保持位置は特に限定されないが、長尺物50の第2端50Bを含む位置を保持してもよく、第2端50Bよりも長尺物50の長手軸方向の中央側の位置を保持してもよい。
【0035】
長尺物50の変形を防ぐため、あるいは長尺物50の加工や搬送を容易にするために、第1保持部10と第2保持部30によって、複数の長尺物50が水平に保持されていることが好ましい。
【0036】
第1保持部10について詳細に説明する。第1保持部10は、長尺物50を保持しながら少なくとも一の方向に送り出す機能を有している。図1および図4に示すように、第1保持部10は、第1回転部11と第2回転部21を備えている。図2図3図5図6に示すように、第1回転部11は、一の第1ローラー15と、第1ローラー15を支持しかつ回転駆動する一または複数の第1シャフト12と、第1シャフト12を回転駆動する第1駆動機構18と、を有している。第2回転部21は、複数の第2ローラー25と、第1シャフト12と平行であり複数の第2ローラー25をそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第2シャフト22と、を有している。上記搬送装置1では第1回転部11に第1ローラー15が1つのみ設けられている。このため、第1ローラー15と第2ローラー25を高速で可撓性長尺物50に繰り返し接触させても、第1ローラー15と第2ローラー25の接近および離反方向における第1ローラー15の位置ずれを抑制することができる。したがって、第1ローラー15に接触する複数の可撓性長尺物50の位置を揃えることが可能であり、複数の長尺物50を位置が揃った状態で搬送することができる。また、長期間にわたって第1ローラー15の位置ずれを抑制することもできる。
【0037】
上記搬送装置1によればさらに以下の効果も期待できる。第1回転部11に第1ローラー15が1つのみ設けられているため、第1回転部11に複数の第1ローラー15が設けられている場合に比べて、ローラー部品の寸法や形状のバラツキによる周速差の発生を抑制することができる。また第2ローラー25の数を増やすことによって、まとめて搬送可能な長尺物50の数を増やすことができるなど、搬送装置1の拡張性に優れており、設計の自由度が高いものである。
【0038】
第1保持部10では、第1ローラー15と第2ローラー25が互いに接近することで長尺物50を挟んで保持し、接近した第1ローラー15と第2ローラー25が互いに離反することで長尺物50の保持が解除される。第1ローラー15と第2ローラー25に接触している長尺物50は、第1ローラー15と第2ローラー25が回転することで第1ローラー15の回転軸と垂直な方向に送り出されて、搬送される。長尺物50を送り出すことで長尺物50の長手軸方向における長尺物50の保持位置を変えることもできる。なお、第1ローラー15は複数の長尺物50に接触するものである。
【0039】
第1回転部11では、一の第1ローラー15が一または複数の第1シャフト12に支持されている。図2および図5では、一の第1ローラー15が一の第1シャフト12に支持されている。このため、第1ローラー15と第2ローラー25の接近および離反方向における第1ローラー15の位置ずれをより一層抑制することができる。また、一の第1ローラー15が複数の第1シャフト12に支持されている場合に比べて第1ローラー15の周速差も発生しにくくなる。したがって、第1ローラー15に接触する複数の可撓性長尺物50の位置が揃いやすくなり、複数の長尺物50をこれらの位置が揃った状態で搬送することができる。
【0040】
第1回転部11が一の第1シャフト12を有しており、一の第1シャフト12は全ての第2シャフト22と向かい合って配置されていることが好ましい。これにより、第1ローラー15に対する第2ローラー25の位置ずれを抑制することができるため、複数の長尺物50をこれらの位置が揃った状態で搬送しやすくなる。
【0041】
一の第1ローラー15が複数の第1シャフト12に支持されていてもよい。その場合、複数の第1シャフト12は互いに間隔を開けて並んでいることが好ましい。例えば図3および図6では一の第1ローラー15が2つの第1シャフト12に支持されている。第1回転部11に複数の第1シャフト12が設けられていることにより、メンテナンスの際に摩耗や損傷により交換を要する第1シャフト12のみを交換することができる。また、図2および図5に示した態様と比べて第1シャフト12の総重量の軽減も可能となる。
【0042】
図3および図6のように、第1回転部11は互いに間隔を開けて並んでいる複数の第1シャフト12を有しており、複数の第1シャフト12のそれぞれが第2シャフト22と向かい合って配置されていることが好ましい。第1ローラー15と第2ローラー25が向かい合って配置されるため、第1ローラー15に対する第2ローラー25の位置ずれを抑制しやすくなる。また、第1ローラー15と第2ローラー25の間に一の可撓性長尺物50を確実に保持しやすくなる。
【0043】
第1回転部11に設けられる第1シャフト12の数は特に限定されないが、2つ以下であることが好ましく、1つであることがより好ましい。これにより、第1回転部11において第1シャフト12を支持しやすくなる。
【0044】
第2回転部21では、一の第2シャフト22が一の第2ローラー25を支持しており、一の第2シャフト22が複数の第2ローラー25を支持しないことが好ましい。また、第1回転部11と第2回転部21で複数の長尺物50を保持する際に、一の第2ローラー25が一度に接触するのは一の長尺物50に限られており、複数の長尺物50には接触しないことが好ましい。これにより長尺物50毎に保持力を調整することができる。
【0045】
第2シャフト22の数は特に限定されないが、搬送装置1によって一斉に搬送される長尺物50の数と同じであることが好ましい。
【0046】
第1保持部10において、第1シャフト12と第2シャフト22の数は同じであってもよく、異なっていてもよい。図2図3および図5図6のように、第1シャフト12の数が第2シャフト22の数よりも少なくてもよい。
【0047】
第2ローラー25の数は第1ローラー15の数よりも多い。第2ローラー25の数は搬送装置1によって一斉に搬送される長尺物50の数と同じであることが好ましい。このように一の第2ローラー25が、一の長尺物50に対応して配置されていることが好ましい。一の長尺物50に対して一の第2ローラー25が接触するため、長尺物50毎に適度な負荷を掛けやすくなる。第2ローラー25の数は、第2シャフト22の数と同じであることが好ましい。
【0048】
第1保持部10に第1シャフト12が2つ設けられる場合、一の第1シャフト12が、複数の第2シャフト22と向かい合って配置されていてもよい。一の第2シャフト22が、複数の第1シャフト12と向かい合って配置されていてもよい。
【0049】
第1ローラー15と第2ローラー25の上下方向の位置関係は特に限定されない。図1図3の第1保持部10では、第1ローラー15が第2ローラー25よりも上側に配置されている。図4図6の第1保持部10では、第2ローラー25が第1ローラー15よりも上側に配置されている。このように第1ローラー15と第2ローラー25を上下に配置することで、長尺物50を水平方向に搬送しやすくなる。
【0050】
図1図3のように第1ローラー15を第2ローラー25よりも上側に配置するためには、全ての第1シャフト12を全ての第2シャフト22よりも上側に配置すればよい。また、図4図6のように第2ローラー25を第1ローラー15よりも上側に配置するためには、全ての第2シャフト22を全ての第1シャフト12よりも上側に配置すればよい。
【0051】
図示していないが、搬送装置1によって長尺物50が水平方向以外の方向、例えば、水平方向と垂直な方向に搬送されてもよい。そのためには第1シャフト12と第2シャフト22が同一水平面上に配置されていてもよい。
【0052】
第1ローラー15は、回転駆動する第1シャフト12に支持されているため、駆動ローラーである。回転駆動する第1ローラー15が長尺物50に接触することで、長尺物50を特定の方向に搬送することができる。
【0053】
例えば図2に示すように、第1回転部11は、第1シャフト12を回転駆動させるための第1駆動機構18を含む。第1駆動機構18は、第1シャフト12に接続されている。第1シャフト12は、第1駆動機構18により回転する。第1シャフト12と第1ローラー15とは、第1シャフト12の回転が第1ローラー15に伝わり、第1駆動機構18によって第1ローラー15が回転するように構成される必要がある。
【0054】
第2ローラー25は長尺物50の移動に伴って回転するフリーローラーであることが好ましい。ここでフリーローラーは回転駆動源に接続されていないローラーである。第2ローラー25がフリーローラーであることにより、第1保持部10のうち回転駆動源が設けられるのが第1回転部11だけとなり、長尺物50に対して適度な負荷を掛けやすくなるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物50の搬送が可能となる。第2ローラー25がフリーローラーである場合、第2ローラー25は、第2シャフト22に支持されるのみで、第2ローラー25の回転によって第2シャフト22が回転しなくてもよく、第2ローラー25の回転によって第2シャフト22が回転してもよい。
【0055】
全ての第2ローラー25がフリーローラーであることが好ましい。全ての長尺物50に対して適度な負荷を掛けやすくなるため、重力による撓みを抑制しながら複数の長尺物50の搬送が可能となる。
【0056】
複数の第2ローラー25はその一部または全部が駆動ローラーであってもよい。これにより第1ローラー15とともに第2ローラー25が長尺物50に接触することで、長尺物50を特定の方向に搬送しやすくなる。
【0057】
図示していないが、搬送装置1は、複数の第2ローラー25として駆動ローラーとフリーローラーをそれぞれ一または複数有していてもよい。
【0058】
第1回転部11と第2回転部21の少なくともいずれか一方が、可撓性長尺物50を保持する力を調整する保持力調整機構を備えていることが好ましい。これにより、第1ローラー15と第2ローラー25によって長尺物50を保持する保持力の大きさを調整することができる。図1および図4では、第2シャフト22に保持力調整機構28が接続されている。保持力調整機構28はレール29に沿って上下方向に移動可能となっている。
【0059】
保持力調整機構では、第1ローラー15と第2ローラー25の少なくともいずれか一方の長尺物50に対する推力を調整することによって、長尺物50の保持力を調整することが好ましい。そのような保持力調整機構としては、エアシリンダ、油圧シリンダ、水圧シリンダ、電動アクチュエータ等の動力シリンダが挙げられる。動力シリンダは、シリンダチューブと、シリンダチューブ内にスライド可能に挿入され、第1シャフト12と第2シャフト22の少なくともいずれか一方に連結されているピストンロッドとを有する構成とすることができる。電動アクチュエータではモータの回転力を、エアシリンダでは空気圧をピストンロッドの直線運動に変換することにより、ピストンロッドを伸縮させる。
【0060】
複数の第2シャフト22は、それぞれ保持力調整機構28を備えていることが好ましい。保持力調整機構28によって各第2ローラー25の保持力を個別に調整することができるため、複数の長尺物50の外径や可撓性が異なっていても各第2ローラー25で長尺物50を保持しやすくなる。
【0061】
第1ローラー15と第2ローラー25はそれぞれ長尺物50と当接する当接部を有していることが好ましい。以下では、第1ローラー15と第2ローラー25を各ローラーと称することがある。各ローラーの外周面を当接部とすることができる。また、各ローラーの外周面を含む部分、例えば各ローラーの径方向の外方部分を当接部としてもよい。
【0062】
第1ローラー15と第2ローラー25はそれぞれ長尺物50と当接しない非当接部を有していてもよい。例えば、ローラーの径方向における当接部よりも内方部分を非当接部とすることができる。当接部は、少なくともローラーの外周面を含めばよく、当接部と非当接部との境界は特に限定されない。図7は、図1に示した第1ローラー15と第2ローラー25を拡大した側面図である。図7では、第1ローラー15の外周面を含む部分が当接部16であり、当接部16よりも径方向の内方部分が非当接部17となっている。また第2ローラー25の外周面を含む部分が当接部26であり、当接部26よりも径方向の内方部分が非当接部27となっている。
【0063】
各ローラーの当接部と非当接部はそれぞれ同じ材料から構成されていてもよく、互いに異なる材料から構成されていてもよい。
【0064】
各ローラーを構成する材料としては、長尺物50を構成する材料の説明を参照することができるが、ゴムまたはエラストマーであることが好ましい。各ローラーは、ショアD硬度が15以上の材料を含んでいることが好ましく、20以上の材料を含んでいることがより好ましく、25以上の材料を含んでいることがさらに好ましく、30以上の材料を含んでいることが特に好ましい。また、各ローラーは、ショアD硬度が60以下の材料を含んでいてもよい。これにより、各ローラーに適度な硬さを付与することができるため、長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。なお、ショアD硬度はISO868:2003 プラスチック・デュロメータ硬さ試験方法に基づき計測される。
【0065】
長尺物50に当接したときに、第1ローラー15と第2ローラー25の少なくともいずれかが長尺物50に食い込むことが好ましい。このように各ローラーが変形することで、長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。
【0066】
第1ローラー15と第2ローラー25はそれぞれ長尺物50と当接する当接部を有し、第2ローラー25の当接部26が、第1ローラー15の当接部16よりも柔軟な材料から構成されていることが好ましい。駆動ローラーである第1ローラー15が、第2ローラー25に比べて変形しにくくなるため、第1ローラー15の回転半径の変化による長尺物50の搬送精度の低下を抑制することができる。
【0067】
第1ローラー15と第2ローラー25はそれぞれ長尺物50と当接する当接部を有し、第1ローラー15の当接部16と第2ローラー25の当接部26は、長尺物50よりも柔軟な材料から構成されていることが好ましい。これにより、第1ローラー15と第2ローラー25で長尺物50を保持する際に、長尺物50よりもローラーが変形しやすくなるため、長尺物50を強固に保持することができるとともに、長尺物50の変形も抑制することができる。
【0068】
第2保持部30について詳細に説明する。第2保持部30は、第1保持部10と同様の構成を有していてもよく、第1保持部10とは異なる構成を有していてもよい。
【0069】
図1および図4に示すように、第2保持部30は、第3回転部31と第4回転部41とを備えていることが好ましい。第3回転部31は、一の第3ローラー35と、第3ローラー35を支持しかつ回転駆動する一または複数の第3シャフト32と、第3シャフト32を回転駆動する第2駆動機構(図示せず)と、を有していることが好ましい。第4回転部41は、複数の第4ローラー45と、第3シャフト32と平行であり複数の第4ローラー45をそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフト42と、を有していることが好ましい。このように第2保持部30が第3回転部31と第4回転部41を備えていることにより、第1保持部10で長尺物50を搬送する際に長尺物50に適度な負荷を掛けられるため、重力による長尺物50の撓みを抑制することができる。また第3回転部31と第4回転部41が回転することにより、長尺物50を図1のx方向と、x方向と反対方向の両方に搬送しやすくなる。
【0070】
第3シャフト32と第4シャフト42は、それぞれ第1シャフト12と平行であることが好ましい。これにより、第1回転部11、第2回転部21、第3回転部31および第4回転部41の回転軸方向が揃うため、これらの回転により長尺物50を搬送しやすくなる。
【0071】
第3シャフト32の構成は、第1回転部11の第1シャフト12の説明を参照することができる。第3ローラー35の構成は、第1回転部11の第1ローラー15の説明を参照することができる。第4シャフト42の構成は、第2回転部21の第2シャフト22の説明を参照することができる。第4ローラー45の構成は、第2回転部21の第2ローラー25の説明を参照することができる。
【0072】
第4ローラー45は長尺物50の移動に伴って回転するフリーローラーであることが好ましい。第4ローラー45がフリーローラーであることにより、第2保持部30において回転駆動源が設けられるのが第3回転部31だけとなり、長尺物50に対して適度な負荷を掛けやすくなるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物50の搬送が可能となる。第4ローラー45がフリーローラーである場合、第4ローラー45は、第4シャフト42に支持されるのみで、第4ローラー45の回転によって第4シャフト42が回転しなくてもよく、第4ローラー45の回転によって第4シャフト42が回転してもよい。
【0073】
全ての第4ローラー45がフリーローラーであることが好ましい。全ての長尺物50に対して適度な負荷を掛けやすくなるため、重力による撓みを抑制しながら複数の長尺物50の搬送が可能となる。
【0074】
第3ローラー35と第4ローラー45の上下方向の位置関係は特に限定されない。図1では、第3ローラー35が第4ローラー45よりも上側に配置されている。図4では、第4ローラー45が第3ローラー35よりも上側に配置されている。第3ローラー35と第4ローラー45のうち上側に配置されているローラーがフリーローラーであることが好ましい。これにより、上側に配置されているローラーの自重により長尺物50に対して適度な負荷を掛けることができる。
【0075】
第1保持部10と同様に、第3ローラー35と第4ローラー45の少なくともいずれか一方が、長尺物50を保持する力を調整する保持力調整機構を備えていることが好ましい。これにより、第3ローラー35と第4ローラー45によって長尺物50を保持する保持力の大きさを調整することができる。図1および図4では、第4シャフト42に保持力調整機構48が接続されている。保持力調整機構48はレール49に沿って上下方向に移動可能となっている。保持力調整機構では、第3ローラー35と第4ローラー45の少なくともいずれか一方の長尺物50に対する推力を調整することによって、長尺物50の保持力を調整することが好ましい。また複数の第4ローラー45は、それぞれ保持力調整機構48を備えていることが好ましい。
【0076】
第1ローラー15と長尺物50の間の転がり摩擦係数が、第3ローラー35と長尺物50の間の転がり摩擦係数よりも大きいことが好ましい。これにより、第3ローラー35は第1ローラー15に比べてスリップしやすくなるため、第3ローラー35によって重力による長尺物50の撓みを抑制しながら、第1ローラー15によって長尺物50を搬送することができる。
【0077】
図示していないが、第3回転部31は、第3シャフト32を回転駆動させるための第2駆動機構を含むことが好ましい。第2駆動機構は、第3シャフト32に接続されている。第3シャフト32は、第2駆動機構により回転する。第3シャフト32と第3ローラー35とは、第3シャフト32の回転が第3ローラー35に伝わり、第2駆動機構によって第3ローラー35が回転するように構成される必要がある。
【0078】
長尺物50を第1保持部10側へ搬送する過程で、第3ローラー35をスリップさせるためには、第1シャフト12の回転数は、第3シャフト32の回転数より大きいことが好ましい。長尺物50を第2保持部30側へ搬送する過程で、第3ローラー35をスリップさせるためには、第3シャフト32の回転数は、第1シャフト12の回転数より大きいことが好ましい。第3ローラー35をスリップさせずに搬送するためには、第1シャフト12の回転数と第3シャフト32の回転数とが同じであることが好ましい。第3ローラー35がスリップすることにより、第1保持部10と第2保持部30の間で、長尺物50を撓ませずに直線状に保って搬送することができる。
【0079】
第3ローラー35と第4ローラー45はそれぞれ長尺物50と当接する当接部を有し、第4ローラー45の当接部が、第3ローラー35の当接部よりも柔軟な材料から構成されていることが好ましい。駆動ローラーである第3ローラー35が、第4ローラー45に比べて変形しにくくなるため、第3ローラー35の回転半径の変化による長尺物50の搬送精度の低下を抑制することができる。
【0080】
第1ローラー15と第2ローラー25と第3ローラー35と第4ローラー45はそれぞれ長尺物50と当接する当接部を有し、第1ローラー15の当接部と第2ローラー25の当接部と第3ローラー35の当接部と第4ローラー45の当接部は、それぞれ長尺物50よりも柔軟な材料から構成されていることが好ましい。これにより、第1ローラー15と第2ローラー25と第3ローラー35と第4ローラー45で長尺物50を保持する際に、長尺物50よりもローラーが変形しやすくなるため、長尺物50を強固に保持することができるとともに、長尺物50の変形も抑制することができる。
【0081】
図示していないが第2保持部30において、第3回転部31は、複数の第3ローラー35と、複数の第3ローラー35をそれぞれ一つずつ支持しかつ回転駆動する複数の第3シャフト32と、第3シャフト32を回転駆動する第2駆動機構と、を有し、第4回転部41は、複数の第4ローラー45と、第3シャフト32と平行であり複数の第4ローラー45をそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフト42と、を有していてもよい。このように第2保持部30を構成することによって、各長尺物50に対して個別に適度な負荷を掛けやすくなる。
【0082】
第1保持部10と第2保持部30は、それぞれ第1シャフト12の長手軸方向zと上下方向yの双方に垂直な方向に移動可能であることが好ましい。これにより、長尺物50を水平方向に搬送することができる。
【0083】
搬送装置1は、第1保持部10に接続されており、第1シャフト12と第2シャフト22を移動させる第3駆動機構を有していることが好ましい。また、搬送装置1は、第2保持部30に接続されており、第3シャフト32と第4シャフト42を移動させる第4駆動機構を有していることが好ましい。これにより、第1保持部10と第2保持部30で長尺物50を保持した状態で、長尺物50を移動させることができる。また、第1保持部10と第2保持部30での長尺物50の保持位置を変えることもできる。図示していないが、第3駆動機構と第4駆動機構は、それぞれ第1保持部10または第2保持部30に接続されている搬送部と、搬送部に接続され且つ搬送部の移動を制御する制御部とを有していてもよい。
【0084】
搬送部は、第1シャフト12の長手軸方向zと上下方向yの双方に垂直な方向に移動可能な1軸以上のアクチュエータを含むことが好ましく、上下方向yと、第1シャフト12の長手軸方向zと上下方向yの双方に垂直な方向に移動可能な2軸のアクチュエータを含むことがより好ましく、上下方向yと、第1シャフト12の長手軸方向zと、第1シャフト12の長手軸方向zと上下方向yの双方に垂直な方向に移動可能な3軸のアクチュエータを含むことがさらに好ましい。このように搬送部を構成することにより、自由度の高い設計が可能となる。アクチュエータは、モータ、リニアガイド、ボールねじ、タイミングベルト・プーリ、スライダ、ラックアンドピニオン等の機械要素を含むことができる。
【0085】
第1保持部10は長尺物50の搬送方向xの下流側に位置し、第2保持部30は長尺物50の搬送方向xの上流側に位置することが好ましい。第2保持部30によって長尺物50に適度な負荷を掛けながら、第1保持部10によって長尺物50を搬送することができる。
【0086】
図示していないが、搬送装置1は長尺物50の張力を検出する張力検出部を有していてもよい。その場合、張力検出部で検出された張力のデータが保持力調整機構に送信され、検出された張力に応じて第1ローラー15、第2ローラー25、第3ローラー35、第4ローラー45の少なくともいずれかの保持力が調整されることが好ましい。これにより、第1保持部10や第2保持部30によって長尺物50を適度な負荷で保持することができる。張力検出部としてはテンションメータを用いることができる。
【0087】
2.複数の長尺物の搬送装置の作動方法
本発明には複数の可撓性長尺物の搬送装置の作動方法も含まれる。以下では、図8図10を参照しながら作動方法の各ステップについて説明する。図8図10は、本発明の一実施形態に係る搬送装置1の作動方法を示す模式図を表す。この作動方法は、第1の可撓性長尺物51と第2の可撓性長尺物52の長手軸方向の位置を揃えることを目的としている。
【0088】
まず、複数の可撓性長尺物50の搬送装置1を準備する(工程1)。搬送装置1は、長手軸方向に第1端50Aと第2端50Bをそれぞれ有し、互いに間隔を開けて並んでいる第1の可撓性長尺物51と第2の可撓性長尺物52を並行して搬送する装置である。搬送装置1は、第1の可撓性長尺物51の第1端50A側と第2の可撓性長尺物52の第1端50A側を保持する第1保持部10と、第1の可撓性長尺物51の第2端50B側と第2の可撓性長尺物52の第2端50B側を保持する第2保持部30と、を備えている。第1保持部10は、図1図6に示すように第1回転部11と第2回転部21を備えている。第1回転部11は、一の第1ローラー15と、第1ローラー15を支持しかつ回転駆動する一または複数の第1シャフト12と、第1シャフト12を回転駆動する第1駆動機構18と、を有している。第2回転部21は、複数の第2ローラー25と、第1シャフト12と平行であり複数の第2ローラー25をそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第2シャフト22と、を有している。その他、搬送装置1の具体的構成については「1.複数の可撓性長尺物の搬送装置」の説明を参照することができる。なお、以下では可撓性長尺物を単に「長尺物」ということがある。
【0089】
以降の説明では第1の長尺物51と第2の長尺物52を目標位置Ptまで搬送して、第1の長尺物51と第2の長尺物52にそれぞれ形成されている膨出部50Cの先端の位置を揃える場合を例に挙げる。第1ローラーと第2ローラーの回転による搬送前において第1の長尺物51の膨出部50Cの先端は位置P1にあり、第2の長尺物52の膨出部50Cの先端は位置P21にある。一の第2ローラーは、一の長尺物50に接するように構成されている。
【0090】
第1ローラーと第2ローラーにより、図9に示すように第1の長尺物51と第2の長尺物52を一緒に第1の所定距離A1だけ搬送する(工程2)。本工程では、第1保持部10の第1ローラーと第2ローラーが回転することによって長尺物50を特定の方向に送り出すことが好ましい。図8図9では、第1の長尺物51と第2の長尺物52はx方向に搬送されている。
【0091】
図8図9に示すように第1の所定距離A1は、第1の長尺物51を搬送前の位置P1から目標位置Ptまで移動させるのに必要な距離である。第1の所定距離A1は任意に定めることができる。第1の所定距離A1を、第1の長尺物51の搬送前の位置P1から、目標位置Ptよりも位置P1側の任意の位置までの距離とすることもできる。
【0092】
図8図9では、第1の所定距離A1を長尺物50の長手軸方向における膨出部50Cの先端の位置を基準に設定している。図示していないが、第1の所定距離A1は、長尺物50の長手軸方向における膨出部50Cの中央または後端の位置、あるいは長尺物50の第1端50Aまたは第2端50Bの位置を基準に設定してもよい。
【0093】
工程2では、第1保持部10により保持されている全ての長尺物50を一緒に第1の所定距離A1だけ搬送することが好ましい。図示していないが、例えば、第1保持部10で第1の長尺物と第2の長尺物と第3の長尺物と第4の長尺物を保持している場合には、これら4つの長尺物を一緒に第1の所定距離A1だけ搬送することが好ましい。これにより、複数の長尺物の位置揃えに必要な搬送回数を減らすことができる。
【0094】
第1ローラーと第2ローラーにより、図9図10に示すように第2の長尺物52を第2の所定距離A2だけ搬送する(工程3)。工程2~工程3により、第1の長尺物51と第2の長尺物52の長手軸方向の位置を効率よく揃えることができる。
【0095】
工程3では、工程2と同様に第1保持部10の第1ローラーと第2ローラーが回転することによって第2の長尺物52を特定の方向に送り出すことが好ましい。図9図10では、第2の長尺物52はx方向に搬送されている。
【0096】
図9に示すように、第2の所定距離A2は、工程2で第2の長尺物52を搬送した後の位置P22から第2の長尺物52の目標位置Ptまで移動させるのに必要な距離である。第2の所定距離A2は任意に定めることができる。例えば、第2の所定距離A2を、位置P22から目標位置Ptよりも位置P22側の任意の位置までの距離とすることもできる。
【0097】
工程3での長尺物50の搬送方向は、工程2での長尺物50の搬送方向と同じ方向であることが好ましい。例えば、図8図9(工程2)では第1の長尺物51と第2の長尺物52をx方向に搬送しており、図9図10(工程3)でも第2の長尺物52をx方向に搬送している。このように長尺物50の移動方向を制限することで第1保持部10の機構をシンプルに構成しながらも複数の長尺物50の位置を効率よく揃えることができる。
【0098】
工程3では第1の長尺物51を搬送する必要がない。このため、工程3では第1の長尺物51は、第1ローラーと第2ローラーで保持されていないことが好ましい。例えば第2ローラーを上方向または下方向に移動させて、第1の長尺物51から第2ローラーを離すことで、第1ローラーと第2ローラーによる第1の長尺物51の保持を解除することができる。
【0099】
工程2の後であって工程3の前に、第1の長尺物51から第1ローラーと第2ローラーを離すことが好ましい。これにより、第1ローラーと第2ローラーを回転させても第1の長尺物51との間に摩擦力が働かないため、第1の長尺物51が搬送されずに済む。
【0100】
図示していないが、搬送装置1を用いて3つ以上の長尺物50の位置を揃えるときには、例えば工程2で第1の長尺物、第2の長尺物および第3の長尺物を第1の所定距離A1だけ搬送した後、工程3で第2の長尺物と第3の長尺物を第2の所定距離A2だけ搬送し、工程3の後に第3の長尺物を第3の所定距離A3だけ搬送してもよい。
【0101】
工程1~工程3の後は、第1保持部10と第2保持部30で第1の長尺物51と第2の長尺物52を保持した状態で、第1保持部10と第2保持部30を同一の方向に移動させることによって、複数の長尺物50の長手軸方向の位置が揃った状態で、複数の長尺物50を次工程に供給することができる。
【0102】
第1ローラーと第2ローラーにより第1の長尺物51と第2の長尺物52を一緒に第1の所定距離A1だけ搬送する工程(工程2)と、第1ローラーと第2ローラーにより第2の長尺物52を第2の所定距離A2だけ搬送する工程(工程3)では、第1回転部を回転駆動させることによって第1の長尺物51と第2の長尺物52の少なくともいずれかを搬送することが好ましい。第1回転部を回転駆動させることによって、長尺物50を特定の方向に送り出すことができる。
【0103】
搬送装置1は、第1の長尺物51に必要な搬送距離である第1調整量と第2の長尺物52に必要な搬送距離である第2調整量を検出する検出部を有していてもよい。その場合、上記作動方法は、第1ローラーと第2ローラーにより第1の長尺物51と第2の長尺物52を一緒に第1の所定距離A1だけ搬送する工程の前に、検出部が第1調整量と第2調整量を検出する工程を有し、第1ローラーと第2ローラーにより第1の長尺物51と第2の長尺物52を一緒に第1の所定距離A1だけ搬送する工程において、第1の所定距離A1は第1調整量と等しく、第1ローラーと第2ローラーにより第2の長尺物52を第2の所定距離A2だけ搬送する工程において、第2の所定距離A2は第2調整量から第1調整量を引いた差と等しいことが好ましい。検出部によって各長尺物50に必要な搬送距離、例えば目標位置までの搬送距離を予め検出することによって、第1の長尺物51と第2の長尺物52の位置を揃えやすくなる。
【0104】
第2調整量が第1調整量よりも大きくてもよい。すなわち、第2調整量から第1調整量を引いた差が正の値であってもよい。図8では第2の長尺物52の搬送前の位置P21から目標位置Ptまでの距離が、第1の長尺物51の搬送前の位置P1から目標位置Ptまでの距離よりも長くなっている。図9図10では第1の長尺物51と第2の長尺物52を第1調整量だけx方向に搬送した後、第2の長尺物52を第2調整量だけx方向に搬送している。
【0105】
図示していないが、第1調整量が第2調整量よりも大きくてもよい。すなわち、第2調整量から第1調整量を引いた差が負の値であってもよい。例えば、第2の長尺物52の搬送前の位置から目標位置までの距離が、第1の長尺物51の搬送前の位置から目標位置までの距離よりも短くてもよい。その場合、第1の長尺物51と第2の長尺物52を第1調整量だけ搬送した後には、第2の長尺物52は目標位置を超過することとなる。このため、第1の長尺物51と第2の長尺物52を第1の方向に第1調整量だけ搬送した後に、第2の長尺物52を第1の方向と反対の第2の方向に第2調整量だけ搬送することが好ましい。このように複数の長尺物50の位置を揃える際に、一部の長尺物50のみを反対方向に移動させてもよい。
【0106】
図示していないが、第1の長尺物、第2の長尺物、第3の長尺物を含む3以上の長尺物を搬送する場合、これらの長尺物は第1シャフトの長手軸方向において第1の長尺物、第2の長尺物、第3の長尺物の順に並んでいる必要はない。例えば、第1の長尺物、第3の長尺物、第2の長尺物の順に並んでいてもよい。
【0107】
第2保持部30は、第3回転部と第4回転部を備えていることが好ましい。第3回転部は、一の第3ローラーと、第3ローラーを支持しかつ回転駆動する一または複数の第3シャフトと、第3シャフトを回転駆動する第2駆動機構と、を有していることが好ましい。第4回転部は、複数の第4ローラーと、第3シャフトと平行であり複数の第4ローラーをそれぞれ一つずつ支持しかつ互いに間隔を開けて並んでいる複数の第4シャフトと、を有していることが好ましい。第2保持部30は、第3ローラーと第4ローラーの間に一の長尺物50を保持するように構成されていることが好ましい。また、搬送装置1は、長尺物50の張力を検出する張力検出部を有していてもよい。その場合、長尺物50の張力が所定値に達したとき以降に、第3ローラーと第4ローラーによる長尺物50の保持力を小さくすることが好ましい。これにより、第3ローラーが長尺物50との間でスリップすることが好ましい。長尺物50に適度な負荷を掛けることができるため、重力による撓みを抑制しながら長尺物50を搬送することができる。
【符号の説明】
【0108】
1:複数の可撓性長尺物の搬送装置
10:第1保持部
11:第1回転部
12:第1シャフト
15:第1ローラー
18:第1駆動機構
21:第2回転部
22:第2シャフト
25:第2ローラー
28:保持力調整機構
29:レール
30:第2保持部
31:第3回転部
32:第3シャフト
35:第3ローラー
41:第4回転部
42:第4シャフト
45:第4ローラー
48:保持力調整機構
49:レール
50:可撓性長尺物
50A:第1端
50B:第2端
50C:膨出部
51:第1の可撓性長尺物
52:第2の可撓性長尺物
P1:第1の可撓性長尺物の搬送前の位置
P21:第2の可撓性長尺物の搬送前の位置
P22:工程2で第2の可撓性長尺物を搬送した後の位置
Pt:目標位置
A1:第1の所定距離
A2:第2の所定距離
x:長尺物の搬送方向
y:上下方向
z:第1シャフトの長手軸方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10