(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250107BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20250107BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
(21)【出願番号】P 2020107814
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 敬太
(72)【発明者】
【氏名】山本 考史
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-261541(JP,A)
【文献】特表2016-526289(JP,A)
【文献】特開2020-17700(JP,A)
【文献】特表2016-503962(JP,A)
【文献】特開2011-192661(JP,A)
【文献】特開2017-41628(JP,A)
【文献】特表2009-512193(JP,A)
【文献】特開2007-311613(JP,A)
【文献】特開2017-84523(JP,A)
【文献】特開2016-189425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面とを備える板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面とを備えるベース部材と、を備え、前記板状部材の前記第2の面と、前記ベース部材の前記第3の面とが、熱的に接続され、前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記ベース部材は、
冷媒を流すための冷媒流路と、
前記第1の方向から見て前記第3の面から前記第4の面に向かって延びる環状の第1断熱部とを有し、
前記板状部材は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部に重なるように配置されている第2断熱部を内部に有し、
前記第2断熱部は、ガストンネルであって、ガスの供給口と前記供給口から当該第2断熱部に向かって延びる供給路を備えており、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部全体の5%以上に重なって
おり、
前記供給口は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部に重なっていない、
ことを特徴とする保持装置。
【請求項2】
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面とを備える板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面とを備えるベース部材と、を備え、前記板状部材の前記第2の面と、前記ベース部材の前記第3の面とが、熱的に接続され、前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記ベース部材は、
冷媒を流すための冷媒流路と、
前記第1の方向から見て前記第3の面から前記第4の面に向かって延びる環状の第1断熱部とを有し、
前記板状部材は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部に重なるように配置されている第2断熱部を内部に有し、
前記第2断熱部は、ガストンネルであって、ガスの供給口と前記供給口から当該第2断熱部に向かって延びる供給路を備えており、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部全体の5%以上に重なっており、
前記第1の面に、複数の凸部が形成されており、
前記凸部は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部と重ならないように配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項3】
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面とを備える板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面とを備えるベース部材と、を備え、前記板状部材の前記第2の面と、前記ベース部材の前記第3の面とが、熱的に接続され、前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記ベース部材は、
冷媒を流すための冷媒流路と、
前記第1の方向から見て前記第3の面から前記第4の面に向かって延びる環状の第1断熱部とを有し、
前記板状部材は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部に重なるように配置されている第2断熱部を内部に有し、
前記第2断熱部は、ガストンネルであって、ガスの供給口と前記供給口から当該第2断熱部に向かって延びる供給路を備えており、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部全体の5%以上に重なっており、
前記第2断熱部は、前記第1の面上に形成された溝、又は前記第1の方向にて前記第2の面から前記板状部材の厚みの1/3の位置よりも前記第1の面側に配置された内部空洞である
ことを特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの保持装置において、
前記板状部材の前記第1の面は、
前記第1の方向から見たときに前記第2断熱部の内側に位置する内側領域と、前記第1の方向から見たときに前記第2断熱部の外側に位置する外側領域とを有し、
前記冷媒流路には、前記内側領域を冷却するための内側冷媒流路と、前記外側領域を冷却するための外側冷媒流路とが独立して設けられている
ことを特徴とする保持装置。
【請求項5】
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面とを備える板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面とを備えるベース部材と、を備え、前記板状部材の前記第2の面と、前記ベース部材の前記第3の面とが、熱的に接続され、前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記ベース部材は、
冷媒を流すための冷媒流路と、
前記第1の方向から見て前記第3の面から前記第4の面に向かって延びる環状の第1断熱部とを有し、
前記板状部材は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部に重なるように配置されている第2断熱部を内部に有し、
前記第2断熱部は、ガストンネルであって、ガスの供給口と前記供給口から当該第2断熱部に向かって延びる供給路を備えており、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部全体の5%以上に重なっており、
前記第1の面に、複数の凸部が形成されており、
前記第2断熱部は、前記第1の面上に形成された溝、又は前記第1の方向にて前記第2の面から前記板状部材の厚みの1/3の位置よりも前記第1の面側に配置された内部空洞であり、
前記凸部は、前記第1の方向から見たときに、前記内部空洞の配置領域より前記内部空洞の非配置領域の方が多く配置されている
ことを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持装置に関する従来技術として、例えば、特許文献1に、対象物の保持面(ウエハ保持面)の内周部と外周部とで、それぞれ異なる温度に制御して明確な温度分布を得るために、電極ブロックに同心円状のスリットを設けて、内周部と外周部との間での熱伝達が抑制されるようにしたプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の装置では、誘電体膜(セラミックス)内部における径方向への熱伝達を抑制することができない。そのため、誘電体膜内部での径方向への熱伝達によって、対象物の保持面の内周部と外周部との温度境界(温度差)が不明確になり、明確な温度分布を得ることができないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、対象物の保持面の内周部と外周部とで明確な温度分布を得ることができる保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面とを備える板状部材と、第3の面と、前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面とを備えるベース部材と、を備え、前記板状部材の前記第2の面と、前記ベース部材の前記第3の面とが、熱的に接続され、前記板状部材の前記第1の面上に対象物を保持する保持装置において、
前記ベース部材は、
冷媒を流すための冷媒流路と、
前記第1の方向から見て前記第3の面から前記第4の面に向かって延びる環状の第1断熱部とを有し、
前記板状部材は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部に重なるように配置されている第2断熱部を内部に有し、
前記第2断熱部は、ガストンネルであって、ガスの供給口と前記供給口から当該第2断熱部に向かって延びる供給路を備えており、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部全体の5%以上に重なっていることを特徴とする。
【0007】
この保持装置では、第1の方向から見たときに、板状部材に第2断熱部が配置されるため、板状部材内で第2の方向(径方向)への熱伝達を抑制して第1の方向への熱伝達を促進することができる。そして、ベース部材では第1断熱部を境界として内周部と外周部との間の第2の方向への熱伝達が抑制されている。さらに、第1の方向から見たときに、第1断熱部の周辺に第2断熱部が配置されるため、ベース部材で形成される温度域がほぼそのままの状態で板状部材の内部を第1の方向へ伝達されるので、第1の面において、内周部と外周部とで明確な温度分布を得ることができる。
そして、第1断熱部と前記第2断熱部とが重なるように配置されているので、第1断熱部の直上に第2断熱部が配置されるため、ベース部材における内側領域と外側領域が、第1の面における内側領域と外側領域にほぼ一致する。そのため、ベース部材における内側領域と外側領域とでそれぞれ制御された温度域が、そのまま第1の面に反映される。従って、第1の面における温度分布制御の制御性が更に向上するため、第1の面において、内周部と外周部とでより一層明確な温度分布を得ることができる。
【0008】
上記した保持装置において、
前記第1の面に、複数の凸部が形成されており、
前記凸部は、前記第1の方向から見たときに、前記第1断熱部と重ならないように配置されていることが好ましい。
【0009】
この保持装置では、凸部が対象物に接触して対象物を保持する。この凸部は、第1断熱部の直上には配置されないため、第1の面(対象物との接触面)において、内周部と外周部との温度分布がより明確になる。そして、板状部材と対象物との間の熱伝達は、凸部と、凸部が配置されていない第1断熱部の直上部分とを比較すると、凸部が配置されていない第1断熱部の直上部分の方が熱伝達しにくい。これにより、板状部材の内周部と外周部とで温度差が生じる境界がはっきりとわかるため、第1の面において、内周部と外周部とでより明確な温度分布を得ることができる。
【0010】
上記した保持装置において、
前記第2断熱部は、前記第1の面上に形成された溝、又は前記第1の方向にて前記第2の面から前記板状部材の厚みの1/3の位置よりも前記第1の面側に配置された内部空洞であることが好ましい。
【0011】
このように、第2断熱部を、第1の面に形成された溝、又は厚みの1/3より上方に位置する内部空洞で形成することにより、板状部材において、第1の面の近傍での第2の方向(径方向)への熱伝達を効果的に抑制することができる。そのため、第1の方向への熱伝達がより促進される。従って、ベース部材の内周部と外周部とでそれぞれ制御された温度が、そのまま板状部材の内部を第1の方向へ伝達されるので、第1の面において、内周部と外周部とで明確に温度差が生じるため、内周部と外周部とでより明確な温度分布を得ることができる。
【0012】
また、溝や内部空洞によって第2断熱部を構成することにより、板状部材に第2断熱部を非常に簡単に設けることができる。そして、例えば、内部空洞として従来から板状部材に形成されているガストンネルを利用することにより、ガストンネルの形状や配置を変更するだけで、板状部材に第2断熱部を設けることができる。
【0013】
上記した保持装置において、
前記板状部材の前記第1の面は、
前記第1の方向から見たときに前記第2断熱部の内側に位置する内側領域と、前記第1の方向から見たときに前記第2断熱部の外側に位置する外側領域とを有し、
前記冷媒流路には、前記内側領域を冷却するための内側冷媒流路と、前記外側領域を冷却するための外側冷媒流路とが独立して設けられていることが好ましい。
【0014】
このようにすることにより、内側領域と外側領域とを独立した冷媒流路、つまり通路入口と通路出口とがそれぞれ別に設けられ、冷媒の温度や流速を別々に変更できる内側冷媒流路と外側冷媒流路とによって冷却することができ、第1断熱部により内側領域と外側領域とが分けられているため、第1の面の内側領域と外側領域とにおける温度分布制御の精度を一層向上させることができる。従って、第1の面において、内周部と外周部とで一層明確な温度分布を得ることができる。
【0017】
上記した保持装置において、
前記第1の面に、複数の凸部が形成されており、
前記第2断熱部は、前記第1の面上に形成された溝、又は前記第1の方向にて前記第2の面から前記板状部材の厚みの1/3の位置よりも前記第1の面側に配置された内部空洞であり、
前記凸部は、前記第1の方向から見たときに、前記内部空洞の配置領域より前記内部空洞の非配置領域の方が多く配置されていることが好ましい。なお、凸部の数の比較は、単位面積当たりの凸部の配置数で行えばよい。
【0018】
こうすることにより、内部空洞の配置領域(第1段熱部の配置領域でもある)には凸部が少なく(あるいは無し)、内部空洞の非配置領域(第1段熱部の非配置領域でもある)には凸部が多く配置される。そのため、凸部が多く配置される部分では、対象物との接触面積が大きくなるので、熱伝達が良くなり温度制御性を向上させられる。従って、内部空洞の非配置領域を境界にして、第1の面において、内側領域と外側領域とにおける制御温度を精度良く変化させることができるため、第1の面において、内周部と外周部とで明確な温度分布を得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、対象物の保持面の内周部と外周部とで明確な温度分布を得ることができる保持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る静電チャックの概略斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る静電チャックのXZ断面の概略構成図である。
【
図3】第1実施形態に係る静電チャックのXY平面の概略構成図である。
【
図4】第2実施形態に係る静電チャックのXZ断面の概略構成図である。
【
図5】(A)~(E)は、第2実施形態に係る静電チャックのXY平面の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本開示に係る実施形態である保持装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、半導体のウエハを保持する静電チャックに対して適用した場合について説明する。
【0022】
<静電チャックの全体構成>
本実施形態の静電チャックについて、
図1~
図3を参照しながら説明する。静電チャック10は、対象物(例えばウエハW)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば半導体製造装置の真空チャンバー内でウエハWを固定するために使用される。静電チャック10は、
図1に示すように、板状部材であるセラミックス部材41と、ベース部材42と、接合層43などを有する。
【0023】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、
図1に示すようにXYZ軸を定義するものとする。ここで、Z軸は静電チャック10の中心軸Ca方向(
図1の上下方向)の軸であり、X軸とY軸は静電チャック10の径方向の軸である。そして、Z軸方向(すなわち中心軸Ca方向)は、本開示の「第1の方向」の一例であり、X軸方向とY軸方向(すなわち、静電チャック10の径方向)は、本開示の「第2の方向」の一例である。
【0024】
セラミックス部材41は、例えば円盤状の部材であり、セラミックスにより形成されている。セラミックスとしては、様々なセラミックスが用いられるが、強度や耐摩耗性、耐プラズマ性等の観点から、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)または窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックスが用いられることが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。
【0025】
また、セラミックス部材41の直径は、例えば150mm~300mm程度であり、セラミックス部材41の厚さは、例えば2mm~6mm程度である。なお、セラミックス部材41の熱伝導率は、10~50W/mK(より好ましくは、18~30W/mK、例えば20W/mK)の範囲内が望ましい。
【0026】
図1、
図2に示すように、セラミックス部材41は、上面である吸着面51と、セラミックス部材41の中心軸方向(すなわち、Z軸方向)について吸着面51とは反対側に設けられる下面52と、を備えている。このセラミックス部材41は、吸着面51上にてウエハWを保持する。なお、吸着面51は本開示の「第1の面」の一例であり、下面52は本開示の「第2の面」の一例である。
【0027】
吸着面51には、
図2、
図3に示すように、その外縁付近に環状の環状凸部71が形成され、環状凸部71の内側に複数の独立した柱状の凸部72が形成されている。なお、環状凸部71は、シールバンドとも呼ばれる。環状凸部71の断面(XZ断面)の形状は、
図2に示すように、略矩形である。環状凸部71の高さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、10μm~20μm程度である。また、環状凸部71の幅(X軸方向の寸法)は、例えば、0.5mm~5.0mm程度である。
【0028】
各凸部72は、Z軸方向視で、
図3に示すように、略円形をなしており、略均等間隔で配置されている。また、各凸部72の断面(XZ断面)の形状は、
図2に示すように、略矩形である。凸部72の高さは、環状凸部71の高さと略同一であり、例えば、10μm~20μm程度である。また、凸部72の幅(Z軸方向視での凸部72の最大径)は、例えば、0.5mm~1.5mm程度である。なお、セラミックス部材41の吸着面51における環状凸部71より内側において、凸部72が形成されていない部分は、凹部73となっている。
【0029】
そして、ウエハWは、セラミックス部材41の吸着面51における環状凸部71と複数の凸部72とに支持されて、静電チャック10に保持される。ウエハWが静電チャック10に保持された状態では、ウエハWの表面(下面)と、セラミックス部材41の吸着面51(より詳細には吸着面51の凹部73)との間に、空間が存在することとなる。この空間には、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)が供給されるようになっている。
【0030】
なお、セラミックス部材41は、その内部に、Z軸方向視で、例えば略円形をなすチャック電極(不図示)を備える。そして、チャック電極は、電源(不図示)から電圧が印加されることによって静電引力を発生し、その静電引力により、ウエハWは吸着面51に吸着して保持される。
【0031】
ベース部材42は、例えば
図1に示すように円柱状、詳しくは、直径の異なる2つの円柱が、大きな直径の円柱状の上面部の上に小さな直径の円柱状の下面部が載せられるようにして、中心軸Caを共通にして重ねられて形成された段付きの円柱状である。このベース部材42は、金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されていることが好ましいが、金属以外であってもよい。
【0032】
そして、
図1、
図2に示すように、ベース部材42は、上面61と、ベース部材42(セラミックス部材41)の中心軸Ca(
図2参照)方向(すなわち、Z軸方向)について上面61とは反対側に設けられる下面62と、を備えている。なお、上面61は本開示の「第3の面」の一例であり、下面62は本開示の「第4の面」の一例である。
【0033】
ベース部材42の直径は、上段部が例えば150mm~300mm程度であり、下段部が例えば180mm~350mm程度である。また、ベース部材42の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば20mm~50mm程度である。なお、ベース部材42(アルミニウムを想定)の熱伝導率は、セラミックス部材41よりも大きく、180~250W/mK(好ましくは、230W/mK程度)の範囲内が望ましい。
【0034】
このベース部材42は、セラミックス部材41の下面52とベース部材42の上面61との間に配置された接合層43によって、セラミックス部材41に接合されている。接合層43は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の接着材により構成されている。なお、接合層43の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば0.1mm~1.0mm程度である。また、接合層43の熱伝導率は、例えば1.0W/mKである。なお、接合層43(シリコーン系樹脂を想定)の熱伝導率は、0.1~2.0W/mK(好ましくは、0.5~1.5W/mK)の範囲内が望ましい。
【0035】
ベース部材42には、
図2に示すように、半径方向の略中間位置の上面61から、中心軸Ca(
図2参照)(すなわち、Z軸)に沿って下面52方向に延びる溝部63が備えられている。また、溝部63は、
図3に示すように、ベース部材42の中心軸Caを中心として環状に延びている。したがって、ベース部材42は、溝部63よって、溝部63より内側に位置する内側領域64と、溝部63より外側に位置する外側領域65とに区画される。
【0036】
また、溝部63の深さ、つまり、ベース部材42の上面61から、中心軸Caに沿って溝部63の底面までの長さは、ベース部材42の厚さの1/10程度、好ましくは、1/3程度が望ましい。具体的には、例えば、ベース部材42の厚さが20mm程度であれば、2mm~7mm程度、また、ベース部材42の厚さが50mm程度であれば、5mm~17mm程度が望ましい。
【0037】
また、溝部63の径方向(つまり、X軸方向またはY軸方向)の幅は、5mm~35mm程度が望ましい。なお、溝部63は本開示の「第1断熱部」の一例である。
【0038】
また、ベース部材42の内側領域64には、
図2に示すように、冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)を流すための内側冷媒通路66を備える。この内側冷媒通路66はZ軸方向視で、中心軸Ca(すなわち、Z軸)を中心として、ベース部材42の内側領域64において螺旋状に配置されている。さらに、内側冷媒通路66は、ベース部材42の下面62に設けられた不図示の供給口と排出口とに接続されており、したがって、供給口からベース部材42に供給された冷媒は、内側冷媒通路66内を流れて排出口からベース部材42外へ排出される。このようにして内側冷媒通路66に冷媒を流すことにより、ベース部材42の内側領域64を冷却することができる。
【0039】
また、ベース部材42の外側領域65には、
図2に示すように、冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)を流すための外側冷媒通路67を備える。この外側冷媒通路67は、Z軸方向視で、ベース部材42の外側領域65において螺旋状に配置されている。つまり、外側冷媒通路67は、内側冷媒通路66の外側において、環状の溝部63を挟んで位置している。また、外側冷媒通路67は、ベース部材42の下面62に設けられた不図示の供給口と排出口とに接続されており、供給口からベース部材42に供給された冷媒は、外側冷媒通路67内を流れて排出口からベース部材42外へ排出される。このようにして外側冷媒通路67に冷媒を流すことにより、ベース部材42の外側領域65を冷却することができる。
【0040】
このように本実施形態では、内側領域64に設けられた内側冷媒通路66と、外側領域65に設けられた外側冷媒通路67とは、制御系統的に独立して設けられており、それぞれで冷媒の温度を調整したり、冷媒の流速などを調整することができる。そして、ベース部材42は、内側領域64と外側領域65との間に溝部63を備えている。したがって、外側冷媒通路67に冷媒を流すと、ベース部材42の外側領域65が、また、内側冷媒通路66に冷媒を流すと、ベース部材42の内側領域64が、それぞれ独立して冷却されることとなる。この際に、ベース部材42には、環状の溝部63が設けられているので、内側領域64は、外側領域65の温度の影響を受けることなく、また、外側領域65は、内側領域64の温度の影響を受けることなく、冷却することができる。したがって、ベース部材42の内側領域64と外側領域65とでは、所望の明確な温度分布を得ることができる。
【0041】
図2に示すように、セラミックス部材41の内部には、断熱空間74を備える。また、断熱空間74は、
図3に示すように、中心軸Ca(すなわち、Z軸)を中心として、環状に延びている。したがって、セラミックス部材41は、断熱空間74よって、断熱空間74より内側に位置する内側領域75と、断熱空間74より外側に位置する外側領域76とに区画される。
【0042】
また、断熱空間74は、
図3に示すように、ベース部材42に接合層43を介してセラミックス部材41に接合されている状態において、Z軸方向視で、
図3に示すように、溝部63と重なるように、つまり、周方向のほぼ全周(例えば、90%以上)に亘って沿うように配置されている。すなわち、本実施形態では、Z軸方向視で、断熱空間74の幅方向の中心は、溝部63の幅方向の中心に対して、周方向のほぼ全周に亘って一致するように配置されている。
【0043】
なお、本実施形態では、Z軸方向視で、断熱空間74の幅方向の中心は、溝部63の幅方向の中心に対して、周方向のほぼ全周に亘って一致するように配置されているが、それに限定されるものではない。すなわち、例えば、Z軸方向視で、断熱空間74の幅方向の中心は、溝部63の幅方向の中心に対して、内側方向にずれていても差し支えないし、また、外側方向にずれていても差し支えないことは、言うまでもない。
【0044】
また、断熱空間74の中心軸Ca方向の長さは、セラミックス部材41の厚さの1/4~1/2程度、好ましくは、1/3程度が望ましい。具体的には、例えば、セラミックス部材41の厚さが2mm程度であれば、0.5mm~1mm程度、また、セラミックス部材41の厚さが6mm程度であれば、1.5mm~3mm程度が望ましい。
【0045】
また、
図2に示すように、断熱空間74は、その底部が、セラミックス部材41の下面52から、セラミックス部材41の厚さの1/3の長さ分だけ、吸着面51側に間隔をおいて配置されている。
【0046】
また、断熱空間74の径方向(つまり、X軸方向とY軸方向)の幅は、溝部63の幅より広く設定され、15mm~35mm程度が望ましい。なお、断熱空間74は本開示の「第2断熱部」の一例である。
【0047】
図2に示すように、セラミックス部材41の、内側領域75および外側領域76における下面52と、ベース部材42の、内側領域64および外側領域65の上面61とは、その間に配置された接合層43によって、熱的に接続されている。
【0048】
一方、溝部63の、ベース部材42の上面61における環状の開口部分には、接合層43が配置されていないので、溝部63の、ベース部材42の上面61における開口部分においては、セラミックス部材41の下面52と、ベース部材42の上面61とが、熱的に接続されることはない。
【0049】
また、セラミックス部材41の、Z軸方向視で、内側領域75および外側領域76に対応する吸着面51には、
図2、
図3に示すように、多数の柱状の凸部72が設けられている。したがって、ウエハWが、セラミックス部材41の吸着面51における環状凸部71と複数の凸部72、つまり吸着面51に形成されたすべての凸部に支持された状態では、セラミックス部材41の、内側領域75および外側領域76における吸着面51と、ウエハWとは、環状凸部71と複数の凸部72と介して熱的に接続されている。
【0050】
一方、セラミックス部材41の、Z軸方向視で、溝部63と重なる、つまり、断熱空間74と重なる吸着面51部分には、柱状の凸部72が設けられていない。したがって、ウエハWと、セラミックス部材41とが、熱的に接続されることはない。
【0051】
以上のように構成された静電チャック10においては、供給口から内側冷媒通路66および外側冷媒通路67に冷媒を供給し、それによって、ベース部材42の温度を制御することができる。具体的には、供給口から内側冷媒通路66に供給される冷媒の温度や冷媒の流速を変えることにより、ベース部材42の内側領域64の温度を制御することが可能となる。また、供給口から外側冷媒通路67に供給される冷媒の温度や冷媒の流速を変えることにより、ベース部材42の外側領域65の温度を制御することが可能となる。
【0052】
この際、本実施形態では、ベース部材42の内側領域64と外側領域65との間に、環状の溝部63を備えるので、ベース部材42では溝部63を境界として内側領域64と外側領域65との間の径方向への熱伝達が抑制される。それにより、内側領域64と外側領域65とにおける温度分布制御の制御性が更に向上し、したがって、ベース部材42の、内側領域64の上面61と、外側領域65の上面61とでより一層明確な温度分布を得ることができる。
【0053】
また、ベース部材42の、内側領域64の上面61の温度は、中心軸Ca方向に延びる第1の熱伝達経路、具体的には、接合層43、セラミックス部材41の内側領域75および多数の柱状の凸部72を介してウエハWに熱伝達される。したがって、ウエハWの内側領域、言い換えれば、セラミックス部材41の内側領域75に対応する吸着面51の温度は、供給口から内側冷媒通路66に供給される冷媒の温度や冷媒の流速を変えることにより、容易に温度制御することが可能となる。
【0054】
また、ベース部材42の、外側領域65の上面61の温度は、第1の熱伝達経路の外側において、中心軸Ca方向に環状に延びる第2の熱伝達経路、具体的には、環状の接合層43、セラミックス部材41の環状の外側領域76および多数の柱状の凸部72を介してウエハWに熱伝達される。したがって、ウエハWの外側領域、言い換えれば、セラミックス部材41の外側領域76に対応する吸着面51の温度は、供給口から外側冷媒通路67に供給される冷媒の温度や冷媒の流速を変えることにより、容易に温度制御することが可能となる。
【0055】
この際、本実施形態では、セラミックス部材41の、溝部63と重なる部分には、断熱空間74が備えられ、また、Z軸方向視で、溝部63と重なる、つまり、断熱空間74と重なる吸着面51部分には、柱状の凸部72が形成されておらず、さらに、溝部63の、ベース部材42の上面61における環状の開口部分には、接合層43が配置されていないので、第1の熱伝達経路と第2の熱伝達経路との間の径方向の熱伝達が抑制される。そのため、ベース部材42の上面61で形成される温度がほぼそのままの状態でウエハWに熱伝達され、したがって、ウエハWの内側領域と外側領域とで明確な温度分布を得ることができる。
【0056】
また、供給口から内側冷媒通路66および外側冷媒通路67に供給される冷媒の温度や冷媒の流速を変えることにより、ウエハWの内側領域と外側領域とで、精度良く温度制御をすることができる。
【0057】
[第2実施形態]
続いて、本開示の第2実施形態に係る保持装置について、
図4及び
図5(A)~(E)を参照しながら詳細を説明する。なお、その説明中、第1実施形態と同じ作用効果を奏するものには、同じ符号を付して説明する。
【0058】
すなわち、第1実施形態では、セラミックス部材41に備えられた断熱空間74は、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76との間の熱伝達を抑制するために設けられていたが、本実施形態では、
図4に示すように、断熱空間74が、ガストンネル(Heトンネル)74によって構成されている点で異なる。このようなガストンネル74によって吸着面51にHeガスが吐出され、ウエハWと吸着面51との間にHeガスが充填されることにより、凸部72がない箇所においてもHeガスを介して、ウエハWと吸着面51との間での熱伝達が可能になっている。なお、
図4では、第2実施形態に係る保持装置の断面図の一例として、
図5(B)の保持装置の断面図を示している。
【0059】
ガストンネルを断熱空間74と兼用させるためには、ガストンネルの形状や配置を工夫する必要があり、以下に、
図5を参照して、その詳細について説明する。なお、以下の説明においては、断熱空間74をガストンネル74として説明する。また、
図5(A)~(E)においては、ベース部材42に形成された溝部63と、セラミックス部材41に形成されたガストンネル74とを1本の線によって概略的に示している。
【0060】
まず、
図5(A)に示すように、ガストンネル74は、ガスの供給口74Aと、供給口74Aからガストンネル74に向かって延びる供給路74Bとを有する。また、ガストンネル74は、供給路74Bが接続する部分とは反対側において、途切れるようにして配置されている。したがって、ガストンネル74は、溝部63の周方向の全周に亘って配置されておらず、一部において、溝部63の周方向に沿ってガストンネル74が配置されていない部分が存在する。
【0061】
この場合、ガストンネル74の周方向の長さが、溝部63の全周方向の長さの5%以上であれば、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76との間の熱伝達を抑制することが可能である。
【0062】
なお、
図5(A)では、ベース部材42に形成された溝部63に対して、セラミックス部材41に形成されたガストンネル74が内周側に配置されているが、Z軸方向視で、ガストンネル74の幅方向の中心は、溝部63の幅方向の中心に対して、周方向の全周に亘って一致するように配置されていてもよいし、外周側に配置されていてもよい。以下の
図5(B)~(E)についても同様である。
【0063】
また、
図5(B)に示すように、ガストンネル74は、溝部63の周方向において、4分割して配置されている。また、4分割された各ガストンネル74の中央部分には、供給口74Aから供給路74Bが接続されている。また、4分割された各ガストンネル74の両端部分には、排出口74Cがそれぞれ形成されている。したがって、分割されたあるガストンネル74の各端部においては、隣接するガストンネル74の端部との間に間隔が生じている。それにより、4分割されたガストンネル74は、溝部63の周方向の全周に亘って存在せず、ガストンネル74の各端部と、隣接するガストンネル74の端部との間では、溝部63の周方向に沿ってガストンネル74が配置されていない。
【0064】
この場合、ガストンネル74の周方向の長さが、溝部63の全周方向の長さの5%以上であれば、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76との間の熱伝達を抑制することが可能である。
【0065】
なお、
図5(B)では、ベース部材42に形成された溝部63に対して、セラミックス部材41に形成されたガストンネル74が内周側に配置されているが、Z軸方向視で、ガストンネル74の幅方向の中心は、溝部63の幅方向の中心に対して、周方向の全周に亘って一致するように配置されていてもよいし、外周側に配置されていてもよい。
【0066】
また、
図5(C)に示すように、ガストンネル74は、溝部63の内周側から、溝部63を跨ぐようにして、溝部63の外周側に蛇行した後、再び、溝部63を跨ぐようにして、溝部63の内周側に蛇行して配置されている。したがって、ガストンネル74が、内周側や外周側に大きく張り出した部分では、ガストンネル74は、溝部63に沿って配置されていない。
【0067】
この場合、ガストンネル74が、溝部63の全周に亘って配置されているので、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76との間の熱伝達を抑制することが可能であるが、溝部63の蛇行の幅によっては、ベース部材42の、内側領域64および外側領域65と、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76とが、Z軸方向視で、一致しなくなる可能性がある。しかし、溝部63の蛇行の幅に応じて、ガストンネル74の径方向(つまり、X軸方向とY軸方向)の幅を、第1実施形態の断熱空間74の幅より狭くしたり、或いは、溝部63の径方向(つまり、X軸方向とY軸方向)の幅を、第1実施形態の溝部63の径方向(つまり、X軸方向とY軸方向)の幅より広くすることにより解消可能である。
【0068】
また、
図5(D)に示すように、ガストンネル74は、溝部63の内周側において、溝部63の周方向の全周に亘って延びている。また、溝部63の外周側に配置された供給口74Aから、供給路74Bが溝部63を跨ぐようにして延びた後、ガストンネル74に接続されている。
【0069】
このように供給口74Aが溝部63の外周側に配置されても、ガストンネル74が、溝部63の全周に亘って配置されているので、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76との間の熱伝達を抑制することが可能である。なお、
図5(D)でも、ベース部材42に形成された溝部63に対して、セラミックス部材41に形成されたガストンネル74が内周側に配置されているが、Z軸方向視で、ガストンネル74の幅方向の中心は、溝部63の幅方向の中心に対して、周方向の全周に亘って一致するように配置されていてもよいし、外周側に配置されていてもよい。
【0070】
また、
図5(E)に示すように、ガストンネル74は、溝部63の内周側において、溝部63の周方向に亘って延びているが、ガストンネル74の一部において、溝部63と交差するようにして溝部63の外周側にて延びている。したがって、溝部63と交差するようにして溝部63の外周側にて延びているガストンネル74は、溝部63に沿って配置されていない。
【0071】
この場合、溝部63の外周側にて延びている部分を除くガストンネル74の周方向の長さが、溝部63の全周方向の長さの5%以上であれば、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76との間の熱伝達を抑制することが可能である。
【0072】
なお、
図5(E)では、ベース部材42に形成された溝部63に対して、セラミックス部材41に形成されたガストンネル74が内周側に配置されているが、Z軸方向視で、ガストンネル74の幅方向の中心は、溝部63の幅方向の中心に対して、周方向の全周に亘って一致するように配置されていてもよいし、外周側に配置されていてもよい。この場合には、
図5(E)において溝部63の外周側にて延びている部分を、内周側に延びるようにしてもよい。
【0073】
このように本実施形態では、ガストンネル74を、断熱空間と兼用させるために、ガストンネル74の形状や配置を工夫しているが、以上説明したいずれの場合においても、ガストンネル74は、セラミックス部材41の内側領域75と外側領域76との間の熱伝達を抑制することが可能である。
【0074】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、本実施形態では、ウエハWを吸着面51に吸着して保持する内部電極として、チャック電極を例示したが、内部電極はチャック電極に限らず、高周波電極になる場合もある。
【0075】
また、本実施形態では、セラミックス部材41に、セラミックス部材41を加熱するためのヒータを備えていないが、ヒータを備えても差し支えない。この場合には、セラミックス部材41内で、断熱空間74よりも下面62側における内側領域75と外側領域76とにおいて、それぞれ制御系統が異なる別個のヒータをそれぞれ配置するのが望ましい。
【0076】
また、本実施形態では、第1断熱部として、ベース部材42の上面61から、中心軸Caに沿って下面62に向けて延びる環状の溝部63によって構成したが、これに限定されるものではない。例えば、ベース部材42の内部に形成した環状の断熱空間であったり、また、ベース部材42の下面62から、中心軸Caに沿って上面61に向けて延びる環状の溝部によって構成しても差し支えない。この場合、断熱空間の底面は、ベース部材42の厚さの1/3の長さ分だけ、上面61側に間隔をおいて配置されているのが望ましい。また、環状の溝部は、下面62から、ベース部材42の厚さの1/3の長さ分だけ、中心軸Caに沿って上面61側に向かって延びているのが望ましい。
【0077】
また、本実施形態では、第2断熱部として、セラミックス部材41内に形成された断熱空間74によって構成したが、これに限定されるものではない。例えば、セラミックス部材41の吸着面51から中心軸Caに沿って下面52に向けて延びる環状の溝部によって構成しても差し支えない。この場合、環状の溝部は、吸着面51から、ベース部材42の厚さの1/3の長さ分だけ、中心軸Caに沿って下面52側に向かって延びているのが望ましい。
【0078】
また、本実施形態では、セラミックス部材41の、Z軸方向視で、内側領域75および外側領域76に対応する吸着面51には、多数の柱状の凸部72が設けられ、また、溝部63と重なる、つまり、断熱空間74と重なる吸着面51部分には、柱状の凸部72が設けられていないが、これに限定されるものではない。例えば、Z軸方向視で、内側領域75および外側領域76に対応する吸着面51には、多数の柱状の凸部72を設け、また、溝部63と重なる、つまり、断熱空間74と重なる吸着面51部分には、単位面積当たりの個数が、内側領域75および外側領域76に対応する吸着面51に設けられた凸部72の個数よりも少なくなるように、凸部72を設けても差し支えない。
【符号の説明】
【0079】
10 静電チャック
41 セラミックス部材
42 ベース部材
51 吸着面
52 下面
61 上面
62 下面
63 溝部
66 内側冷媒通路
67 外側冷媒通路
72 凸部
74 断熱空間(ガストンネル)
75 内側領域(セラミックス部材)
76 外側領域(セラミックス部材)
W ウエハ