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特許7613855コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素の膜の選択的化学機械研磨法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素の膜の選択的化学機械研磨法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/00 20120101AFI20250107BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20250107BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20250107BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
B24B37/00 H
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020152129
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2021041529
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】16/567,064
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】デュポン・エレクトロニック・マテリアルズ・ホールディング・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DuPont Electronic Materials Holding, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ムラリ・ガンス・ティヴァナヤガム
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・リチャード・ヴァン・ハネヘム
(72)【発明者】
【氏名】イ・グォ
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0340094(US,A1)
【文献】再公表特許第2015/129342(JP,A1)
【文献】特開2019-057710(JP,A)
【文献】特開2017-057263(JP,A)
【文献】特開2017-071753(JP,A)
【文献】特開2008-277814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
H01L 21/321
C09K 3/14
C09G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素を含む基材を提供する工程;
初期成分として、
水、
コロイダルシリカ砥粒、
コバルトキレート剤、
コロージョンインヒビター、及び
0.1~3重量%の式:
【化8】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、(C~C)アルキル基から選択される)
を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物を含み、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を提供する工程;
研磨面を有する化学機械研磨パッドを提供する工程;
前記化学機械研磨パッドと前記基材との間の界面で動的接触を生じさせる工程;ならびに
前記化学機械研磨パッドの前記研磨面上、前記化学機械研磨パッドと前記基材との間の界面又はその近くに前記化学機械研磨組成物を分配して、前記コバルトの少なくともいくらかを除去する工程
を含む化学機械研磨法。
【請求項2】
前記ベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物が、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コバルトキレート剤がアミノ酸であり、前記アミノ酸が、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記pHが8~13である、請求項1又は2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、ベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物、コバルトキレート剤、コロージョンインヒビター、コロイダルシリカ砥粒、任意選択で殺生物剤及び任意選択でpH調整剤を含有し、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を用いる、コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素の膜の選択的化学機械研磨法に関する。より具体的には、本発明は、水、ベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物、コバルトキレート剤、コロージョンインヒビター、コロイダルシリカ砥粒、任意選択で殺生物剤及び任意選択でpH調整剤を含有し、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を用いる、コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素の膜の選択的化学研磨法であって、コバルト、酸化ジルコニウム及びポリ-シリコンの除去速度が二酸化ケイ素よりも選択的である、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子デバイスの作製においては、導電材料、半導電材料及び誘電体材料の複数の層を半導体ウェーハの表面に堆積させたり、半導体ウェーハの表面から除去したりする。導電材料、半導電材料及び誘電体材料の薄層は、いくつかの堆積技術によって堆積させることができる。最新の加工において一般的な堆積技術は、スパッタリングとしても知られる物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD)及び電気化学的めっき法(ECP)を含む。
【0003】
材料の層が順次に堆積され、除去されるにつれ、ウェーハの最上面は非平坦になる。後続の半導体加工(たとえばメタライゼーション)は、ウェーハが平坦面を有することを要するため、ウェーハは平坦化されなければならない。平坦化は、望まれない表面トポグラフィーならびに表面欠陥、たとえば粗面、凝集した材料、結晶格子の損傷、スクラッチ及び汚染された層又は材料を除去するのに有用である。
【0004】
化学機械平坦化又は化学機械研磨(CMP)は、半導体ウェーハのような基材を平坦化するために使用される一般的な技術である。従来のCMPにおいて、ウェーハはキャリヤアセンブリに取り付けられ、CMP装置中で研磨パッドと接する状態に配置される。キャリヤアセンブリは、制御可能な圧をウェーハに提供して、ウェーハを研磨パッドに押し当てる。パッドは、外部駆動力によってウェーハに対して動かされる(たとえば回転させられる)。それと同時に、研磨組成物(「スラリー」)又は他の研磨溶液は、ウェーハと研磨パッドとの間に提供される。このようにして、ウェーハ表面は、パッド表面及びスラリーの化学的かつ機械的作用によって研磨され、平坦化される。しかし、CMPには多くの複雑な問題が伴う。各種類の材料は、特有の研磨組成物、適切に設計された研磨パッド、研磨とCMP後の清浄の両方に最適化されたプロセス設定、及び所与の材料を研磨する用途に合わせて個々に調整されなければならない他の要因を必要とする。
【0005】
≦10nmの先進論理ノードにおいては、コバルト金属がタングステンプラグに取って代わり、トランジスタゲートを配線工程(BEOL)及びBEOL中の銅配線金属の第一の数少ない金属層(M1及びM2―シリコンチップのBEOL中の第一及び第二の配線金属層)に接続する。先進論理ノード製造者たち(≦7nm)は、コバルト、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素(オルトケイ酸テトラエチル酸化物)の膜と組み合わせる、酸化ジルコニウムなどの新たなhigh-k誘電体膜を探求している。上述の膜を含む複雑な統合スキームを可能にするためには、チューニング可能な除去速度及び選択比で膜を研磨することができるCMPスラリーを実証することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、コバルト、酸化ジルコニウム及びポリ-シリコンを二酸化ケイ素よりも選択的に研磨するためのCMP研磨法及び組成物の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素を含む基材を提供する工程;初期成分として、水、コロイダルシリカ砥粒、コバルトキレート剤、コロージョンインヒビター、式:
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、(C~C)アルキル基から選択される)
を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物、及び任意選択で殺生物剤;任意選択でpH調整剤を含み、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を提供する工程;研磨面を有する化学機械研磨パッドを提供する工程;化学機械研磨パッドと基材との間の界面で動的接触を生じさせる工程;ならびに化学機械研磨パッドの研磨面上、化学機械研磨パッドと基材との間の界面又はその近くに化学機械研磨組成物を分配する工程を含む;コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素のいくらかが基材から研磨除去される、化学機械研磨法を提供する。
【0008】
本発明はさらに、コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素を含む基材を提供する工程;初期成分として、水、負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒、コバルトキレート剤、コロージョンインヒビター;式:
【化2】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、(C~C)アルキル基から選択される)
を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物、及び任意選択で殺生物剤;任意選択でpH調整剤を含み、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を提供する工程;研磨面を有する化学機械研磨パッドを提供する工程;化学機械研磨パッドと基材との間の界面で動的接触を生じさせる工程;ならびに化学機械研磨パッドの研磨面上、化学機械研磨パッドと基材との間の界面又はその近くに化学機械研磨組成物を分配する工程を含む;コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素のいくらかが基材から研磨除去される、化学機械研磨法を提供する。
【0009】
本発明はさらに、コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素を含む基材を提供する工程;初期成分として、水、負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒、一つ以上のアミノ酸から選択されるコバルトキレート剤、一つ以上の複素環式窒素化合物及び非芳香族ポリカルボン酸から選択されるコロージョンインヒビター;式:
【化3】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、(C~C)アルキル基から選択される)
を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物、及び殺生物剤;任意選択でpH調整剤を含み、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を提供する工程;研磨面を有する化学機械研磨パッドを提供する工程;化学機械研磨パッドと基材との間の界面で動的接触を生じさせる工程;ならびに化学機械研磨パッドの研磨面上、化学機械研磨パッドと基材との間の界面又はその近くに化学機械研磨組成物を分配する工程を含む;コバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素のいくらかが基材から研磨除去される、化学機械研磨法を提供する。
【0010】
本発明の前記方法は、初期成分として、水、コロイダルシリカ砥粒、コバルトキレート剤、コロージョンインヒビター、式:
【化4】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、(C~C)アルキル基から選択される)
を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物、及び任意選択で殺生物剤;任意選択でpH調整剤を含み、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を含み、コバルト、酸化ジルコニウム及びポリ-シリコンの研磨が二酸化ケイ素よりも選択的である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書全体を通して使用される場合、文脈が別段指示しない限り、以下の略号は以下の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;L=リットル;mL=ミリリットル;μ=μm=ミクロン;kPa=キロパスカル;Å=オングストローム;mV=ミリボルト;DI=脱イオン;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;min=分;sec=秒;rpm=毎分回転数;lb=ポンド;kg=キログラム;Co=コバルト;ZrOx(x=1~2)=酸化ジルコニウム;BTMAH=水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム;TBAH=水酸化テトラブチルアンモニウム;H=過酸化水素;KOH=水酸化カリウム;wt%=重量%;PVD=物理蒸着;RR=除去速度;PS=研磨スラリー;及びCS=対照スラリー。
【0012】
語「化学機械研磨」又は「CMP」とは、化学的及び機械的な力だけによって基材を研磨する加工法をいい、電気バイアスを基材に印加する電気化学-機械研磨(ECMP)とは区別される。語「ポリ-シリコン」とは、ポリ-Siとも呼ばれる多結晶シリコン、小さな結晶、すなわち≦1mmの結晶子からなるケイ素の高純度多結晶形態をいい、単結晶シリコン及びアモルファスシリコンとは区別される。語「アミノ酸」とは、アミン(-NH)及びカルボキシル(-COOH)官能基のみを各アミノ酸に特有の側鎖(R基)とともに含有する有機化合物をいう。語「TEOS」とは、オルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)の分解から形成される二酸化ケイ素をいう。語「high-k」誘電体とは、二酸化ケイ素よりも高い誘電率を有する、酸化ジルコニウムなどの材料をいう。名詞の単数形は単数と複数の両方を指す。別段記されない限り、すべての%値は重量%である。すべての数値範囲は包括的であり、そのような数値範囲が合計で100%となるように制約されることが論理的である場合を除き、任意の順序で組み合わせ可能である。
【0013】
基材がコバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素を含む本発明の基材研磨法は、基材表面からのコバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素の少なくともいくらかの除去を提供して、二酸化ケイ素に対するコバルト、酸化ジルコニウム及びポリ-シリコンの除去速度選択比を提供するために、初期成分として、水、コロイダルシリカ砥粒、コバルトキレート剤、コロージョンインヒビター、式:
【化5】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、(C~C)アルキル基から選択され、アニオンは、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸又は酢酸イオンである)を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物、及び任意選択で殺生物剤;任意選択で消泡剤;任意選択でpH調整剤を含有し(好ましくはそれらからなり)、7よりも大きいpHを有し、酸化剤を含まない化学機械研磨組成物を含む。
【0014】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物中に初期成分として含有される水は、偶発的な不純物を制限するために、脱イオン水及び蒸留水の少なくとも一つである。
【0015】
本発明の化学機械研磨法において使用される化学機械研磨組成物は、好ましくは、初期成分として、式(I):
【化6】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、(C~C)アルキル基、好ましくは(C~C)アルキル基、もっとも好ましくはメチル基から選択され;アニオンは、ベンジルトリアルキル第四級アンモニウムカチオンの正(+)電荷を中和するための対アニオンであり、アニオンは、水酸化物、ハロゲン化物、硝酸、炭酸、硫酸、リン酸又は酢酸イオン、好ましくは水酸化物又はハロゲン化物イオン、たとえば塩化物、臭化物、フッ化物又はヨウ化物イオンである)
を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物を0.01~5重量%含有する。好ましくは、ハロゲン化物は、塩化物又は臭化物である。もっとも好ましくは、ハロゲン化物は、塩化物である。本発明の化学機械研磨組成物はまた、初期成分として、式(I)を有するベンジルトリアルキル第四級アンモニウム化合物を0.1~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%、もっとも好ましくは0.2~1重量%含有する。好ましくは、式(I)を有するベンジルトリアルキルアンモニウム化合物は、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム又は塩化ベンジルトリメチルアンモニウムである。もっとも好ましくは、式(I)を有するベンジルトリアルキルアンモニウム化合物は、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムである。
【0016】
本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、酸化剤を含まない。本発明の範囲に入る酸化剤とは、適切なスラリーケミストリー及びpHの存在下、より硬質の金属面と比べてより速く研磨することができる軟質の金属酸化物を形成するために利用される化合物である。本発明の化学機械研磨組成物から排除されるそのような酸化剤としては、過酸化水素(H)、一過硫酸塩、ヨウ素酸塩、過フタル酸マグネシウム、過酢酸及び他の過酸、過硫酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硫酸塩、過酢酸、過ヨウ素酸塩、硝酸塩、鉄塩、セリウム塩、Mn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、ハロゲン、次亜塩素酸塩及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の化学機械研磨組成物は、過酸化水素、過塩素酸塩、過臭素酸塩;過ヨウ素酸塩、過硫酸塩、過酢酸又はそれらの混合物を含まない。もっとも好ましくは、化学機械研磨組成物は、酸化剤である過酸化水素を含まない。
【0017】
本発明の基材の化学機械研磨法において、化学機械研磨組成物は、コロイダルシリカ砥粒粒子を含む。好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、200nm以下の粒子径及び負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒を含有する。より好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、200nm以下の平均粒子径及び永久的な負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒を含有し、化学機械研磨組成物は、7よりも大きい、好ましくは8~13;より好ましくは8.5~11;さらに好ましくは9~11;もっとも好ましくは9~10.5のpHを有する。なおさらに好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、200nm以下の平均粒子径及び永久的な負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒を含有し、化学機械研磨組成物は、7よりも大きい、好ましくは8~13;より好ましくは8.5~11;さらに好ましくは9~11;もっとも好ましくは9~10.5のpHを有し、ゼータ電位は、-0.1mV~-40mV、好ましくは-10mV~-38mV、より好ましくは-20mV~-36mVである。
【0018】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、初期成分として、動的光散乱技術又はディスク遠心法によって計測して200nm以下、好ましくは5nm~200nm;より好ましくは5nm~200nm未満;さらに好ましくは10nm~175nm、なおさらに好ましくは10nm~150nm、もっとも好ましくは20nm~100nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカ砥粒を含有する。適切な粒子径計測機器は、たとえばMalvern Instruments(Malvern, UK)又はCPS Instruments(Prairieville, LA, USA)から市販されている。
【0019】
市販のコロイダルシリカ粒子の例は、扶桑化学工業株式会社から市販されているFuso PL-3又はSH-3(平均粒子径55nm)である。
【0020】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、動的光散乱技術によって計測して200nm以下、好ましくは5nm~200nm;より好ましくは5nm~175nm未満;さらに好ましくは10nm~150nm、なおさらに好ましくは20nm~150nm、もっとも好ましくは20nm~100nmの粒子径を有するコロイダルシリカ砥粒を0.01重量%~10重量%、好ましくは0.05重量%~5重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%、さらに好ましくは0.2重量%~5重量%、もっとも好ましくは1重量%~5重量%含有する。好ましくは、コロイダルシリカ砥粒は、負のゼータ電位を有する。
【0021】
本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、初期成分としてコロージョンインヒビターを含有し、コロージョンインヒビターは、複素環式窒素化合物、非芳香族ポリカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、複素環式窒素化合物は、アデニン、1,2,4-トリアゾール、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ポリイミダゾール及びそれらの混合物からなる群から選択され;非芳香族ポリカルボン酸は、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタル酸、クエン酸、それらの塩又はそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。好ましくは、前記非芳香族ポリカルボン酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩の一つ以上から選択される。本発明の基材の化学機械研磨法において、化学機械研磨組成物が好ましくは初期成分として複素環式窒素化合物を含む場合、複素環式窒素化合物はアデニンである。本発明の基材研磨法において、化学機械研磨組成物が非芳香族ポリカルボン酸を含む場合、提供される化学機械研磨組成物は初期成分として含有し、好ましくは、非芳香族ポリカルボン酸は、リンゴ酸、シュウ酸、アジピン酸、クエン酸、それらの塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、提供される化学機械研磨組成物が初期成分として非芳香族ポリカルボン酸を含有する場合、非芳香族ポリカルボン酸は、リンゴ酸、クエン酸、アジピン酸、それらの塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。もっとも好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物が初期成分として非芳香族ポリカルボン酸を含有する場合、非芳香族ポリカルボン酸は、非芳香族ジカルボン酸であるアジピン酸又はその塩であり、好ましくは、塩は、アジピン酸ナトリウム、アジピン酸カリウム及びアジピン酸アンモニウムからなる群から選択される。
【0022】
化学機械研磨組成物は、初期成分として、複素環式窒素化合物、非芳香族ポリカルボン酸及びそれらの混合物からなる群から選択されるコロージョンインヒビターを0.001重量%~1重量%、より好ましくは0.001重量%~0.05重量%、さらに好ましくは0.005重量%~0.01重量%含有し、複素環式窒素化合物は、アデニン、1,2,4-トリアゾール、イミダゾール、ポリイミダゾール及びそれらの混合物からなる群から選択され;非芳香族ポリカルボン酸は、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタル酸、クエン酸、それらの塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、初期成分として、複素環式窒素化合物であるアデニンを0.001~1重量%、より好ましくは0.001~0.05重量%、もっとも好ましくは0.005重量%~0.01重量%含有する。
【0023】
本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、初期成分としてコバルトキレート剤を含有する。好ましくは、コバルトキレート剤は、アミノ酸である。そのようなアミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アミノ酸は、アラニン、アルギニン、グルタミン、グリシン、ロイシン、リジン、セリン及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、アミノ酸は、アラニン、グルタミン、グリシン、リジン、セリン及びそれらの混合物からなる群から選択され、さらに好ましくは、アミノ酸は、アラニン、グリシン、セリン及びそれらの混合物からなる群から選択され、もっとも好ましくは、アミノ酸はグリシンである。
【0024】
キレート剤は、化学機械研磨組成物中に初期成分として0.001重量%~1重量%、より好ましくは0.05重量%~0.5重量%、さらに好ましくは0.05重量%~0.1重量%、もっとも好ましくは0.025重量%~0.1重量%含まれる。
【0025】
本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、7よりも大きいpHを有する。好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、8~13のpHを有する。より好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、8.5~11;さらに好ましくは9~11のpHを有し;もっとも好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、9~10.5のpHを有する。
【0026】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、任意選択でpH調整剤を含有する。好ましくは、pH調整剤は、無機及び有機のpH調整剤からなる群から選択される。好ましくは、pH調整剤は、無機酸及び無機塩基からなる群から選択される。より好ましくは、pH調整剤は、硝酸及び水酸化カリウムからなる群から選択される。もっとも好ましくは、pH調整剤は、水酸化カリウムである。
【0027】
任意選択で、本発明の方法において、化学機械研磨組成物は、殺生物剤、たとえば、いずれもDuPont de Nemours Company製のKORDEK(商標)MLX(メチル-4-イソチアゾリン-3-オン 9.5~9.9%、水 89.1~89.5%及び関連反応生成物 ≦1.0%)又は有効成分2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有するKATHON(商標)CG/ICP IIを含有する(KATHON及びKORDEKは、DuPontの商標である)。
【0028】
本発明の基材研磨法において、任意選択で、提供される化学機械研磨組成物は、初期成分として、殺生物剤を0.001重量%~0.1重量%、好ましくは0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは0.01重量%~0.05重量%、さらに好ましくは0.01重量%~0.025重量%含有することができる。
【0029】
任意選択で、本発明の方法において、化学機械研磨組成物はさらに、消泡剤、たとえば、エステル類、エチレンオキシド類、アルコール類、エトキシレート、ケイ素化合物、フッ素化合物、エーテル類、グリコシド類及びそれらの誘導体を含む非イオン界面活性剤を含むことができる。アニオン性エーテル硫酸塩、たとえばラウリルエーテル(either)硫酸ナトリウム(SLES)ならびにカリウム及びアンモニウム塩。界面活性剤は、両性界面活性剤であることもできる。
【0030】
本発明の基材研磨法において、任意選択で、提供される化学機械研磨組成物は、初期成分として、消泡剤を0.001重量%~0.1重量%、好ましくは0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは0.01重量%~0.05重量%、さらに好ましくは0.01重量%~0.025重量%含有することができる。
【0031】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨パッドは、当技術分野において公知の任意の適切な研磨パッドであることができる。当業者は、本発明の方法における使用に適切な化学機械研磨パッドを選択することを知っている。より好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨パッドは、織布及び不織布の研磨パッドから選択される。さらに好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨パッドは、ポリウレタン研磨層を含む。もっとも好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨パッドは、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層と、ポリウレタン含浸不織布サブパッドとを含む。好ましくは、提供される化学機械研磨パッドは、研磨面上に少なくとも一つの溝を有する。
【0032】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、提供される化学機械研磨パッドの研磨面上、化学機械研磨パッドと基材との間の界面又はその近くに分配される。
【0033】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨パッドと基材との間の界面で、研磨される基材の表面に対して垂直な0.69~20.7kPaのダウンフォースで動的接触を生じさせる。
【0034】
好ましくは、本発明の基材研磨法において、提供される化学機械研磨組成物は、Bruker社のTriboLab CMP研磨機上、26mm正方形クーポンウェーハを使用して、毎分120回転のプラテン速度、毎分117回転のキャリヤ速度、100mL/minの化学機械研磨組成物流量、20.7kPaの公称ダウンフォースを用い、化学機械研磨パッドが、ポリマー中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層と、ポリウレタン含浸不織布サブパッドとを含む条件で、≧900Å/min;より好ましくは≧950Å/min;さらに好ましくは≧960Å/minのコバルト除去速度;≧80Å/min;より好ましくは≧100Å/min、さらに好ましくは≧200Å/minのZrOx除去速度;≧1200Å/min、より好ましくは≧1400Å/min、さらに好ましくは≧1500Å/minのポリ-Si除去速度;及び好ましくは≧20のCo:TEOS選択比、より好ましくは≧60:1のCo:TEOS選択比;さらに好ましくは≧70のCo:TEOS選択比;好ましくは≧4:1のZrOx:TEOS選択比;より好ましくは≧10:1のZrOx:TEOS選択比;さらに好ましくは≧13:1のZrOx:TEOS選択比;及び好ましくは30:1のポリ-Si:TEOS選択比、より好ましくは≧100:1のポリ-Si:TEOS選択比を有する。
【0035】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、その範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0036】
実施例1
スラリー調合
研磨実験に使用した表1の全スラリーは、以下の手順に述べるように調製した。グリシン及びアデニンを脱イオン水に加え、オーバーヘッドスターラーを使用して(300~450RPM)完全に溶解するまで混合して、0.1重量%の最終グリシン濃度及び0.01重量%の最終アデニン濃度にしたのち、希釈KOH溶液(5%又は45%)でpHを10.3に調整した。コロイダルシリカ粒子は、扶桑化学工業株式会社から得たもの:Fuso SH-3(平均長70nmの結合球体を形成する、平均径55nmの繭型コロイダルシリカ粒子、入手時で固形分34重量%)であった。次いで、KORDEK(商標)MLX殺生物剤をスラリーに加え、その後、TBAH又はBTMAHを表1に示す量で加えた。クリーンルームグレードH(30%溶液)を撹拌下で加えて、最終スラリー中に0.3重量%のH濃度を達成した。このスラリーを、H添加と同じ日又はその翌日に研磨実験に使用した。
【0037】
【表1】
【0038】
【化7】
【0039】
実施例2
研磨実験
上記実施例1の表1に示されたスラリーを用いて以下のコバルト、酸化ジルコニウム、ポリ-シリコン及び二酸化ケイ素の研磨実験を実施した。
【0040】
【表2】
【0041】
コバルト膜厚さをOMNIMAP(商標)RS200で計測し、酸化ジルコニウム、ポリ-Si及びTEOSの膜厚さをAsset F5x計測ツールで計測した(いずれもKLA Corporation製)。研磨結果を以下の表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
実施例3
静的エッチ速度(コロージョン)分析
Novati Technologies製のブランケットCoウェーハ(200mm、シリコン基板に堆積させた厚さ~1700ÅのPVD Co)を入手時のまま使用した。Gamry PTC1(商標)塗料テストセルを分析に使用し、200mmのCoウェーハ全体を、Oリングシールを備えたガラス管と特注TEFLON(商標)ベースとの間に締め付けた。裂け目又は応力タイプの局所コロージョンを回避するために、開放面積3.0cm2の3M-470電気めっきテープをウェーハとOリングとの間に使用した。高温分析の場合、研磨中のパッドアスペリティ/ウェーハ接点における高めの局所温度をシミュレートするために静的エッチスラリー30mLを55℃のオーブン中に維持し、60分間予熱したのち、スラリーをただちに静的エッチセルに加えて、ウェーハと3分間接触し続けた。所望の保持時間ののち、静的エッチ溶液を捕集し、調合物中にコロイダルシリカ砥粒が存在するときはそれを遠心処理し、分離したのち、Coイオンに関し、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)分析によって分析した。ICP-OES分析を容易にするために、静的エッチ実験中のいくつかの調合物からコロイダルシリカ砥粒を排除した。再現性をチェックするために、試験した全スラリーに関して少なくとも二つのデータ点を収集した。
【0044】
以下の式を使用して、ICP分析におけるコバルト濃度からコバルト静的エッチ速度(SER)を計算した。
コバルトSER(Å/min)={[C(g/L)*V(l)]/[A(cm2)*D(g/cm3)*T(min)]}*10^8
C=ICP分析からのCo濃度(g/l)
V=静的エッチセットアップに使用(添加)した試験溶液の容量(l)
A=試験溶液に曝露されたコバルト金属の面積(cm2
D=コバルトの密度(8.9g/cm3
T=曝露時間(min)
10^8=cm-Å単位換算
【0045】
【表4】