(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】与信管理装置、与信管理プログラムおよび与信管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 20/40 20120101AFI20250107BHJP
【FI】
G06Q20/40 320
(21)【出願番号】P 2020168692
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】398040527
【氏名又は名称】株式会社オービック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 健太
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛光
【審査官】小原 正信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-052684(JP,A)
【文献】特開2003-248754(JP,A)
【文献】特開2003-216800(JP,A)
【文献】特開2020-102134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備える与信管理装置であって、
前記制御部は、
財務科目毎の金額に応じた点数が記憶された定量評価算出パラメータを参照し、取引先企業の定量評価の基となる定量評価対象情報に含まれる財務科目の金額に対応する点数を算出し、企業の市場規模の変遷を示す、少なくとも発生期、成長期、成熟期及び衰退期の各項目内容に対応する点数が記憶された定性評価算出パラメータマスタを参照し、前記取引先企業の定性評価の基となる定性評価対象情報で示される項目内容に対応する点数を算出し、算出した各前記点数を所定の割合で重み付けして合算し、合算した点数を前記取引先企業の与信結果として出力する与信評価手段と、
点数毎の与信限度額が記憶された与信限度額換算マスタを参照し、所定の割合で重み付けして合算した前記点数に対応する前記取引先企業の与信限度額を算出する限度額算出手段と、
前記限度額算出手段で算出された前記与信限度額を、前記取引先企業への債権債務に基づく与信額と共に出力する出力制御手段と、
を備え、
前記与信評価手段は、前記定性評価対象情報または前記定量評価対象情報が更新された時に動作するものであり、前記限度額算出手段は、前記与信評価手段による点数の出力後直ちに動作するものであること、
を特徴とする与信管理装置。
【請求項2】
前記定量評価対象情報は、所定タイミングにおいて外部から自動的に取り込むこと、
を特徴とする請求項1に記載の与信管理装置。
【請求項3】
系列グループを含む自身の企業がもつ、会計・販売システムと自動的に連携して、
前記取引先企業への債権・債務の積み上げ値として与信情報を算出すること、
を特徴とする請求項1または2に記載の与信管理装置。
【請求項4】
コンピュータを、
財務科目毎の金額に応じた点数が記憶された定量評価算出パラメータを参照し、取引先企業の定量評価の基となる定量評価対象情報に含まれる財務科目の金額に対応する点数を算出し、企業の市場規模の変遷を示す、少なくとも発生期、成長期、成熟期及び衰退期の各項目内容に対応する点数が記憶された定性評価算出パラメータマスタを参照し、前記取引先企業の定性評価の基となる定性評価対象情報で示される項目内容に対応する点数を算出し、算出した各前記点数を所定の割合で重み付けして合算し、合算した点数を前記取引先企業の与信結果として出力する与信評価手段と、
点数毎の与信限度額が記憶された与信限度額換算マスタを参照し、所定の割合で重み付けして合算した前記点数に対応する前記取引先企業の与信限度額を算出する限度額算出手段と、
前記限度額算出手段で算出された前記与信限度額を、前記取引先企業への債権債務に基づく与信額と共に出力する出力制御手段として機能させ、
前記与信評価手段を、前記定性評価対象情報または前記定量評価対象情報が更新された時に動作させ、
前記限度額算出手段を、前記与信評価手段による点数の出力後直ちに動作させること、
を特徴とする与信管理プログラム。
【請求項5】
制御部を備える与信管理装置の与信管理方法であって、
前記制御部は、
財務科目毎の金額に応じた点数が記憶された定量評価算出パラメータを参照し、取引先企業の定量評価の基となる定量評価対象情報に含まれる財務科目の金額に対応する点数を算出し、企業の市場規模の変遷を示す、少なくとも発生期、成長期、成熟期及び衰退期の各項目内容に対応する点数が記憶された定性評価算出パラメータマスタを参照し、前記取引先企業の定性評価の基となる定性評価対象情報で示される項目内容に対応する点数を算出し、算出した各前記点数を所定の割合で重み付けして合算し、合算した点数を前記取引先企業の与信結果として出力する与信評価ステップと、
点数毎の与信限度額が記憶された与信限度額換算マスタを参照し、所定の割合で重み付けして合算した前記点数に対応する前記取引先企業の与信限度額を算出する限度額算出ステップと、
前記限度額算出ステップで算出された前記与信限度額を、前記取引先企業への債権債務に基づく与信額と共に出力する出力制御ステップと、を実行し、
前記与信評価ステップは、前記定性評価対象情報または前記定量評価対象情報が更新された時に実行し、
前記限度額算出ステップは、前記与信評価ステップによる点数の出力後直ちに実行すること、
を特徴とする与信管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、与信管理装置、与信管理プログラムおよび与信管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
取引先企業の与信判断を行うには、与信情報と与信限度額とを比較して管理することがある。与信情報は、例えば自身の企業(系列グループなどを含む)がもつ、会計・販売システム等と連携することにより、取引先への債権・債務の積み上げ値として求めることができる。
【0003】
また、与信限度額は、取引先の定量情報と定性情報とから評点を算出し、該算出された評点に該当する限度額として求めることができる。定量情報とは、例えば取引先の財務情報であり、定性情報とは、例えば企業情報である。定性情報による定性評価、および定量情報による定量評価は、例えば金融機関が企業の格付けをする際にも用いられるものである。
【0004】
与信限度額を与信情報が超過している取引先に関しては出力処理内で集計を行うことで抽出ができる。このような注意すべき取引先については、担当部署と確認を取り、システム上の限度額の一時引き上げを申請してもらい組織内で正しく管理するなどの対応をとることができる。
【0005】
なお、特許文献1には与信判断を行うために、外部信用情報および属性情報を用いて、所定の計算式に基づきユーザに対する割賦可能上限額を算出し、属性情報よりスコアリングポイントを算出し、割賦可能上限額およびスコアリングポイントに基づいて、商品代金の割賦払いの可否を判断することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
与信情報は上記のように取得が可能となっている。一方、与信限度額の算出のための定量情報は、その取引先の決算期ごとに手動による入力にしか対応ができていない。与信限度額の算出のための定性情報は、評点算出処理後に作成できるデータに従って毎回手動入力する必要がある。また、評点の算出および与信限度額の算出処理はそれぞれ手動で実行する必要がある。
【0008】
これらの処理は、与信管理を行う担当者の運用上の負荷となっており、与信限度額の更新も遅れてしまい与信判断の誤りや承認の遅延に繋がる懸念がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、与信限度額の更新を迅速、正確かつ容易に行うことのできる与信管理装置、与信管理プログラムおよび与信管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る与信管理装置は、制御部を備える与信管理装置であって、前記制御部は、財務科目毎の金額に応じた点数が記憶された定量評価算出パラメータを参照し、取引先企業の定量評価の基となる定量評価対象情報に含まれる財務科目の金額に対応する点数を算出し、企業の市場規模の変遷を示す、少なくとも発生期、成長期、成熟期及び衰退期の各項目内容に対応する点数が記憶された定性評価算出パラメータマスタを参照し、前記取引先企業の定性評価の基となる定性評価対象情報で示される項目内容に対応する点数を算出し、算出した各前記点数を所定の割合で重み付けして合算し、合算した点数を前記取引先企業の与信結果として出力する与信評価手段と、点数毎の与信限度額が記憶された与信限度額換算マスタを参照し、所定の割合で重み付けして合算した前記点数に対応する前記取引先企業の与信限度額を算出する限度額算出手段と、前記限度額算出手段で算出された前記与信限度額を、前記取引先企業への債権債務に基づく与信額と共に出力する出力制御手段と、を備え、前記与信評価手段は、前記定性評価対象情報または前記定量評価対象情報が更新された時に動作するものであり、前記限度額算出手段は、前記与信評価手段による点数の出力後直ちに動作するものであること、を特徴とする。
【0011】
なお、本発明に係る与信管理装置において、前記定量評価対象情報は、所定タイミングにおいて外部から自動的に取り込むものであってもよい。
【0012】
また、本発明に係る与信管理装置において、系列グループを含む自身の企業がもつ、会計・販売システムと自動的に連携して、取前記引先企業への債権・債務の積み上げ値として与信情報を算出してもよい。
【0013】
また、本発明に係る与信管理プログラムは、コンピュータを、財務科目毎の金額に応じた点数が記憶された定量評価算出パラメータを参照し、取引先企業の定量評価の基となる定量評価対象情報に含まれる財務科目の金額に対応する点数を算出し、企業の市場規模の変遷を示す、少なくとも発生期、成長期、成熟期及び衰退期の各項目内容に対応する点数が記憶された定性評価算出パラメータマスタを参照し、前記取引先企業の定性評価の基となる定性評価対象情報で示される項目内容に対応する点数を算出し、算出した各前記点数を所定の割合で重み付けして合算し、合算した点数を前記取引先企業の与信結果として出力する与信評価手段と、点数毎の与信限度額が記憶された与信限度額換算マスタを参照し、所定の割合で重み付けして合算した前記点数に対応する前記取引先企業の与信限度額を算出する限度額算出手段と、前記限度額算出手段で算出された前記与信限度額を、前記取引先企業への債権債務に基づく与信額と共に出力する出力制御手段として機能させ、前記与信評価手段を、前記定性評価対象情報または前記定量評価対象情報が更新された時に動作させ、前記限度額算出手段を、前記与信評価手段による点数の出力後直ちに動作させること、を特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る与信管理方法は、制御部を備える与信管理装置の与信管理方法であって、前記制御部は、財務科目毎の金額に応じた点数が記憶された定量評価算出パラメータを参照し、取引先企業の定量評価の基となる定量評価対象情報に含まれる財務科目の金額に対応する点数を算出し、企業の市場規模の変遷を示す、少なくとも発生期、成長期、成熟期及び衰退期の各項目内容に対応する点数が記憶された定性評価算出パラメータマスタを参照し、前記取引先企業の定性評価の基となる定性評価対象情報で示される項目内容に対応する点数を算出し、算出した各前記点数を所定の割合で重み付けして合算し、合算した点数を前記取引先企業の与信結果として出力する与信評価ステップと、点数毎の与信限度額が記憶された与信限度額換算マスタを参照し、所定の割合で重み付けして合算した前記点数に対応する前記取引先企業の与信限度額を算出する限度額算出ステップと、前記限度額算出ステップで算出された前記与信限度額を、前記取引先企業への債権債務に基づく与信額と共に出力する出力制御ステップと、を実行し、前記与信評価ステップは、前記定性評価対象情報または前記定量評価対象情報が更新された時に実行し、前記限度額算出ステップは、前記与信評価ステップによる点数の出力後直ちに実行すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、与信限度額の更新を迅速、正確かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、与信管理装置100の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、与信管理装置100における処理の流れを示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、外部情報を入力する際に用いられる外部コードマスタのテーブルを示す図である。
【
図4】
図4は、外部情報を取り込んで財務情報を作成するために用いられる各種のテーブルを示す図である。
【
図5】
図5は、企業情報を入力する際に用いられる各種のテーブルを示す図である。
【
図6】
図6は、定性評価算出の際に用いられる各種のテーブルを示す図である。
【
図7】
図7は、与信限度額算出のために用いられる与信限度額換算マスタのテーブルを示す図である。
【
図8】
図8は、顧客与信管理情報のテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る与信管理装置、与信管理プログラムおよび与信管理方法の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0018】
[1.構成]
本実施形態に係る与信管理装置(本発明に係る与信管理装置を含む)の構成の一例について、
図1等を参照して説明する。
図1は、与信管理装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
与信管理装置100は、市販のデスクトップ型パーソナルコンピュータを基に構築したものである。なお、与信管理装置100は、デスクトップ型パーソナルコンピュータのような据置型情報処理装置を基に構築したものに限らず、市販のノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistants)、スマートフォンまたはタブレット型パーソナルコンピュータなどの携帯型情報処理装置を基に構築したものであってもよい。
【0020】
与信管理装置100は、制御部102と通信インターフェース部104と記憶部106と入出力インターフェース部108と、を備えている。与信管理装置100が備えている各部は、任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0021】
通信インターフェース部104は、ルータ等の通信装置および専用線等の有線または無線の通信回線を介して、与信管理装置100をネットワーク300に通信可能に接続する。通信インターフェース部104は、他の装置と通信回線を介してデータを通信する機能を有する。ここで、ネットワーク300は、与信管理装置100とサーバ200とを相互に通信可能に接続する機能を有し、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)等である。なお、記憶部106に格納されるデータは、例えばサーバ装置200に格納されてもよい。
【0022】
入出力インターフェース部108には、入力装置112および出力装置114が接続されている。出力装置114には、モニタ(家庭用テレビを含む)の他、スピーカやプリンタを用いることができる。入力装置112には、キーボード、マウス、及びマイクの他、マウスと協働してポインティングデバイス機能を実現するモニタを用いることができる。なお、以下では、出力装置114をモニタ114とし、入力装置112をキーボード112またはマウス112として記載する場合がある。
【0023】
記憶部106には、各種のデータベース(以下、DBと記す)、テーブルおよびファイルなどが格納される。記憶部106には、OS(Operating System)と協働してCPU(Central Processing Unit)に命令を与えて各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録される。記憶部106として、例えば、RAM(Random Access Memory)・ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスクのような固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および光ディスク等を用いることができる。
【0024】
制御部102は、与信管理装置100を統括的に制御するCPU等である。制御部102は、OS等の制御プログラム・各種の処理手順等を規定したプログラム・所要データなどを格納するための内部メモリを有し、格納されているこれらのプログラムに基づいて種々の情報処理を実行する。
【0025】
制御部102は、機能概念的に、与信評価部(与信評価手段)102a、限度額算出部(限度額算出手段)102b、出力制御部(出力制御手段)102cなどを備える。
【0026】
記憶部106には、与信情報DB106a、財務情報DB106b、企業情報DB106c、評点情報DB106dなどが格納される。
【0027】
図2は、与信管理装置100における処理の流れを示す機能ブロック図である。与信情報DB106aには、自社(系列グループなどを含む)がもつ、会計・販売システム400と自動的に連携して、債券・債務情報402が取り込まれる。財務情報DB106bには、外部情報として取引先企業の財務情報(定量評価対象情報)を含むデータX、データY、データZなどが取り込まれる。データXは所定の企業連合会が供給するものであり、データYは所定の信用調査会社が供給するものであり、データZは所定の官公庁が供給するものである。企業情報DB106cには自社の営業担当者などが取引先企業の企業情報(定性評価対象情報)を随時入力する。この入力は営業担当者に限られず、入力権限が付与された他の者が行ってもよい。与信管理装置100で求められた与信情報(与信額)および与信限度額は、営業担当者・承認者などの操作に基づいて出力装置114に表示される。この表示処理は営業担当者・承認者に限られず、アクセス権限が付与された他の者に対して行ってもよい。
【0028】
図3は、外部情報を入力する際に用いられる外部コードマスタのテーブルを示す図である。顧客キーは対象となる取引先企業のキーである。ここで顧客とは取引先企業と同義である。外部IDは入力するデータの種別であり、外部CD値はそれぞれのコードである。
【0029】
図4は、外部情報を取り込んで財務情報を作成するために用いられる各種のテーブルを示す図である。これらのテーブルは財務情報DB106bに保持される。
図4(a)は、取り込んだデータXのファイルから外部コードマスタと連結し、顧客キーを特定して得られた取引先企業の元データのテーブルである。このテーブルは、例えばcsv形式で得られる。
図4(b)は、
図4(a)のテーブルを財務科目ごとにまとめて得られた財務情報のテーブルである。
【0030】
図4(c)は、データYに関する取引先企業の元データのテーブルであり、
図4(a)に相当するものである。
図4(d)は、
図4(c)のテーブルを財務科目ごとにまとめて得られた財務情報のテーブルである。
【0031】
図4(e)は、データZに関する取引先企業の元データを所定のツールでcsv形式に変換したテーブルである。
図4(f)は、データZに関する科目辞書変換マスタのテーブルである。
図4(g)は、
図4(e)のテーブルを
図4(f)の科目辞書変換マスタに基づいて編集して得られた財務情報のテーブルである。
【0032】
図5は、企業情報を入力する際に用いられる各種のテーブルを示す図である。これらのテーブルは企業情報DB106cに保持される。
図5(a)は、定性評価算出パラメータマスタのテーブルである。営業担当者は取引先企業について多角的に判断して所定のチェックボックスにマークを入れる。
図5(b)は、
図5(a)に基づいて入力された情報を元に作成される定性評価情報である。ここでの基準日とは、評点算出処理を実施した時点を指す。評点算出を実施する度に最新日でデータを作成して、データの履歴を残すことが可能になる。
【0033】
図6は、定性評価算出の際に用いられる各種のテーブルを示す図である。具体的には与信管理装置100の与信評価部102aで実行される評点算出ロジック(
図2参照)で用いられ、評点情報DB106dに保持される。
図6(a)は、定量評価算出パラメータマスタのテーブルであり、科目ごとに最小値(MIN)と最大値(MAX)が規定されており、財務情報に基づいて該当する欄から評点が決められる。
図6(b)は、定量評価情報のテーブルであり、
図6(a)の定量評価算出パラメータマスタに基づく評価項目区分(財務科目)ごとの評点の合計を、評価実行をしたときの基準日の情報とともに記録している。
【0034】
図6(c)は、定性評価情報のテーブルである。定性評価情報は
図5(b)で示したものがすでに企業情報DB106cに格納されていることからそれを読み出し、評価実行をしたときの基準日の情報を付加して評点情報DB106dに記録する。
【0035】
図6(d)は、評点割合マスタのテーブルである。評点割合マスタには、取引先企業の評点を算出するための定量情報の割合と、定性情報の割合とがそれぞれ%単位で記録されている。
図6(e)は、顧客評点情報のテーブルである。このテーブルは、顧客、つまり対象としている取引先企業について算出された評点を顧客キーとともに記録する。
【0036】
図7は、与信限度額算出のために用いられる与信限度額換算マスタのテーブルを示す図である。このテーブルでは評点ごとに最小値(MIN)と最大値(MAX)が規定されており、該当する欄から与信限度額が決められる。
【0037】
図8は、顧客与信管理情報のテーブルを示す図である。
図8(a)は、与信限度額が格納された状態であり、
図8(b)は、さらに与信情報が格納された状態である。
【0038】
[3.処理の具体例]
ここでは、与信管理装置100で実行される処理の一例を説明する。
与信管理装置100では、会計・販売システム400と連携して、ネットワーク300を介して債券・債務情報402が取り込まれて与信情報DB106aに格納される。この処理は例えば日次または月次に連携して行われ、同時に取引先への債権・債務の積み上げ値として与信情報が求められて与信情報DB106aに格納される。
【0039】
与信管理装置100では、ネットワーク300を介してデータX、データY、データZが取り込まれ財務情報DB106bに格納される。この処理はデータX、データY、データZ毎に規定されたタイミング(例えば決算期)や取引先企業の財務に関する最新の情報が更新されるタイミング等で自動的に実行される。この処理は、日次または月次に行われてもよい。
【0040】
この処理は、与信管理装置100が所定のタイミングで自動的に実行するため、システム管理者や営業担当者は手動入力する負担がなく、しかも複数の取引先企業の決算期が重なってデータが大量にある場合でも入力漏れ、入力ミス、入力遅延などがない。
【0041】
営業担当者は、企業の最新状況を変更があるタイミングなどで企業情報についての入力を行い、最新の定性評価情報として企業情報DB106cに格納する。この企業情報は、主に自動で定量的に評価することが困難な情報であり、例えば、
図5(b)の「市場ライフステージ」に関する情報では、事業継続年数、市場認知度、市場ニーズおよび競合他社状況などに基づいて多角的に判断して入力が行われる。この企業情報は営業担当者が随時入力するものであるが、当該企業および市況等が比較的安定している場合には頻繁に入力する必要はなく、入力担当者の負担は小さい。
【0042】
与信管理装置100では、データX、データY、データZが取り込まれ財務情報DB106bに格納および更新されたタイミング、および、営業担当者による入力がなされて企業情報DBの企業情報が更新されたタイミングで与信評価部102aが
図2に示す評点算出ロジックを自動実行する。換言すれば、評点算出ロジックは企業情報または財務情報が更新された時に動作する。
【0043】
評点算出ロジックでは、取引先企業の定量評価の基となる財務情報(
図4(b),(d),(g)参照)から、基準となる定量評価算出パラメータマスタ(
図6(a)参照)に従って、取引先企業の定量評価に関する評点を算出する。この評点は定量評価情報のテーブル(
図6(a)参照)における「評点」欄に格納される。なお、この処理は企業情報だけが更新されて、財務情報が更新されていない時には省略してもよい。ここでの評点の算出は、
図6(a)で示される定量評価算出パラメータマスタ以外の所定の基準であってもよい。
【0044】
評点算出ロジックでは、取引先企業の定性評価の基となる企業情報から、基準となる定性評価算出パラメータマスタ(
図5(a)参照)に従って、取引先企業の定性評価に関する評点を算出する。この評点は定性評価情報のテーブル(
図5(b)参照)における「評点」欄に格納される。なお、この処理は財務情報だけが更新されて、企業情報が更新されていない時には省略してもよい。ここでの評点の算出は、
図5(a)で示される定性評価算出パラメータマスタ以外の所定の基準であってもよい。
【0045】
評点算出ロジックでは、さらに、これらの評点を評点割合マスタ(
図6(d)参照)で規定される割合で重み付けして合算し、合算した評点を取引先企業の与信結果として出力する。具体的には顧客評点情報テーブル(
図5(e)参照)における「評点」欄に格納する。
【0046】
このような評点算出ロジックの処理が終了すると限度額算出部102bが
図2に示す与信限度額算出ロジックを自動実行する。与信限度額算出ロジックは、評点算出ロジックによる評点の出力後直ちに動作する。
【0047】
与信限度額算出ロジックは、評点算出ロジックで得られた評点、つまり顧客評点情報テーブルにおける「評点」欄の数値を読み込み、基準となる与信限度額換算マスタ(
図7参照)に従って、取引先企業に対する与信限度額を算出する。算出された与信限度額は顧客与信管理情報のテーブル(
図8参照)に格納する。顧客与信管理情報には、会計・販売システム400と連携した与信情報も格納される。
【0048】
そして、出力制御部102cは、与信限度額算出ロジックで算出されて顧客与信管理情報のテーブルに格納されている与信限度額と、取引先企業への債権債務に基づいて求められて顧客与信管理情報のテーブルに格納されている与信情報とを共に出力装置114に表示出力する。
【0049】
これらの与信限度額と与信情報との表示は、少なくとも営業担当者・承認者等による表示操作がなされたときに行われる。また、与信限度額算出ロジックの実行後に自動的に表示が行われてもよい。表示の形態は数値表示でもよいし、または直感的な比較が可能なようにグラフ形式としてもよい。例えば、与信情報の棒グラフ114aと与信限度額の棒グラフ114bとが区別された色で並列表示されると比較が容易である。
【0050】
このような実施形態では、与信限度額の算出のための財務情報は、決まったタイミングで外部情報として自動的に取り込まれることから担当者の負担とならず、しかも入力漏れ、入力ミス、入力遅延などがない。
【0051】
また、与信限度額の算出のための定性情報は、評点算出処理後に作成できるデータに従って毎回手動入力するのではなく、データ画面に依存しない共通データを定性評価算出パラメータマスタ(
図5(a)参照)として用意し、財務情報の入力とは別に営業担当者が随時入力できるようにしている。入力された定性情報は、即時に評点が算出されて定性評価情報(
図5(b)参照)として記録されるため、必要に応じて最新のデータを出力装置114に表示可能となっている。
【0052】
さらに、評点の算出および与信限度額の算出処理は、与信評価部102aおよび限度額算出部102bが評点算出ロジックおよび与信限度額算出ロジックにしたがって自動的に実行するため、与信限度額の更新を迅速、正確かつ容易に行うことができる。これにより、与信判断の誤りや承認の遅延が防止できる。なお、本願でいう取引先企業の「企業」とは広義であって、社団、財団、NPOなどの法人であってもよい。「取引」とは過去に行われた実際の取引に限らず、条件によっては今後見込まれる取引を含む。取引の形態や規模は特段問われない。
【0053】
[3.他の実施形態]
本発明は、上述した実施形態以外にも、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施形態にて実施されてよいものである。
【0054】
例えば、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0055】
また、本明細書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各処理の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0056】
また、与信管理装置100に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0057】
例えば、与信管理装置100が備える処理機能、特に制御部にて行われる各処理機能については、その全部または任意の一部を、CPUおよび当該CPUにて解釈実行されるプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。尚、プログラムは、本実施形態で説明した処理を情報処理装置に実行させるためのプログラム化された命令を含む一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されており、必要に応じて与信管理装置100に機械的に読み取られる。すなわち、ROMまたはHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部などには、OSと協働してCPUに命令を与え、各種処理を行うためのコンピュータプログラムが記録されている。このコンピュータプログラムは、RAMにロードされることによって実行され、CPUと協働して制御部を構成する。
【0058】
また、このコンピュータプログラムは、与信管理装置100に対して任意のネットワークを介して接続されたアプリケーションプログラムサーバに記憶されていてもよく、必要に応じてその全部または一部をダウンロードすることも可能である。
【0059】
また、本実施形態で説明した処理を実行するためのプログラムを、一時的でないコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよく、また、プログラム製品として構成することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、メモリーカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(登録商標)(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、および、Blu-ray(登録商標) Disc等の任意の「可搬用の物理媒体」を含むものとする。
【0060】
また、「プログラム」とは、任意の言語または記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードまたはバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OSに代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成および読み取り手順ならびに読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0061】
記憶部に格納される各種のデータベース等は、RAM、ROM等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、フレキシブルディスク、および、光ディスク等のストレージ手段であり、各種処理やウェブサイト提供に用いる各種のプログラム、テーブル、データベース、および、ウェブページ用ファイル等を格納する。
【0062】
また、与信管理装置100は、既知のパーソナルコンピュータまたはワークステーション等の情報処理装置として構成してもよく、また、任意の周辺装置が接続された当該情報処理装置として構成してもよい。また、与信管理装置100は、当該装置に本実施形態で説明した処理を実現させるソフトウェア(プログラムまたはデータ等を含む)を実装することにより実現してもよい。
【0063】
更に、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の付加等に応じてまたは機能負荷に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。すなわち、上述した実施形態を任意に組み合わせて実施してもよく、実施形態を選択的に実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、特に企業の与信管理において有用である。
【符号の説明】
【0065】
100 与信管理装置
102 制御部
102a 与信評価部
102b 限度額算出部
102c 出力制御部
104 通信インターフェース部
106 記憶部
106a 与信情報DB
106b 財務情報DB
106c 企業情報DB
106d 評点情報DB
108 入出力インターフェース部
112 入力装置
114 出力装置
200 サーバ装置
300 ネットワーク
400 会計・販売システム