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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】受信側装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20250107BHJP
   H04B 7/08 20060101ALI20250107BHJP
   H04J 99/00 20090101ALI20250107BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20250107BHJP
【FI】
H04B7/0413
H04B7/08 020
H04J99/00 100
H04W16/28 130
H04W16/28 150
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020174201
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065548
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅文
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-057497(JP,A)
【文献】特開2013-172169(JP,A)
【文献】特開2014-195200(JP,A)
【文献】森山 雅文 Masafumi MORIYAMA,多数デバイスを収容する携帯電話網に関する高効率通信方式 Efficient Radio Access for Massive Machine-Type Communication,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.117 No.103 IEICE Technical Report,2017年06月14日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
H04B 7/08
H04J 99/00
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
M本の受信アンテナと、
N台の送信側装置から同時に受信した信号から、所定の受信処理によって、前記N台の送信側装置のうちの1台である第1の送信側装置からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理を実行する制御部と、
を備える受信側装置であって、
前記所定の受信処理は、複数の送信側装置の台数が受信アンテナの数以下である場合に、前記複数の送信側装置から同時に受信した信号を第1のウェイトに乗算することで、前記複数の送信側装置のうちの1台の送信側装置以外からの信号をキャンセルし、前記1台の送信側装置からの信号を取得する処理であり、
前記制御部は、前記第1の処理において、
前記送信側装置の台数Nが前記受信アンテナの数Mよりも多い場合に、前記N台の送信側装置からの信号を、前記第1の送信側装置からの前記第1の信号と、M-1台の送信側装置からの前記所定の受信処理によってキャンセルされる第2の信号と、N-M台の送信側装置からの前記所定の受信処理によってキャンセルされない第3の信号に分類した組み合わせの全パターンを取得し、
前記全パターンについて、各パターンの前記所定の受信処理に用いられる前記第1のウェイトに基づいて前記第1の信号の電力及び前記第2の信号の電力を取得し、チャネル推定値から前記第3の信号の電力を取得し、
前記第2の信号及び前記第3の信号との合計電力に対する前記第1の信号の電力の電力比を取得し、
前記所定の受信処理後の前記電力比が最も大きくなる組み合わせを、前記所定の受信処理を実行し、前記復調する信号の組み合わせに決定する、
受信側装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の処理において、前記送信側装置の台数Nが前記受信アンテナ
の数Mよりも多い場合に、
各送信側装置からの信号の受信電力を取得し、
前記各送信側装置からの信号の受信電力に基づいて、前記N台の送信側装置から所定数の送信側装置を除外したN’台の送信側装置からの信号について前記組み合わせの全パターンを取得することで、取得されるパターン数を削減する、
請求項1に記載の受信側装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記N台の送信側装置から、前記受信電力が小さい下位の所定数の送信側装置を除外して、前記N’台の送信側装置から送信された信号を特定する、
請求項2に記載の受信側装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記N台の送信側装置から、前記受信電力に定数k(k>1)を乗算した値が最も大きい受信電力よりも小さい送信側装置を除外して、前記N’台の送信側装置からの信号を特定する、
請求項2に記載の受信側装置。
【請求項5】
前記所定の受信処理は、最小平均二乗誤差(MMSE)ダイバーシチであって、
前記制御部は、前記全パターンについて、各パターンの前記第3の信号の電力を干渉電力の一部として用いて、MMSEの前記第1のウェイトを求める、
請求項1から4のいずれか一項に記載の受信側装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1の信号または前記第1のデータを基に、前記所定の受信処理が行われる前の前記第1の送信側装置から到来する信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第1の送信側装置から到来する信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の送信側装置から前記第1の送信側装置を除外したN-1台の送信側装置の1つを新たに第1の送信側装置として順次、前記第1の処理から第3の処理を繰り返すことと、
をさらに実行する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の受信側装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記受信側装置への通信の要求発生時に無線リソースの割り当てを受けないで複数の送信側装置による前記受信側装置との通信を許容し、受信した参照信号に基づいて、前記複数の送信側装置のうちの前記N台の送信側装置を判定し、前記N台の送信側装置から信号を同時に受信したときに、前記第1の処理から第3の処理を繰り返す、
請求項6に記載の受信側装置。
【請求項8】
M本の受信アンテナを備える受信側装置が、
N台の送信側装置から同時に受信した信号から、所定の受信処理によって、前記N台の送信側装置のうちの1台である第1の送信側装置からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理を実行することを含む無線通信方法であって、
前記所定の受信処理は、複数の送信側装置の台数が受信アンテナの数以下である場合に、前記複数の送信側装置から同時に受信した信号を第1のウェイトに乗算することで、前記複数の送信側装置のうちの1台の送信側装置以外からの信号をキャンセルし、前記1台の送信側装置からの信号を取得する処理であり、
前記第1の処理において、
前記送信側装置の台数Nが前記受信アンテナの数Mよりも多い場合に、前記N台の送信側装置からの信号を、前記第1の送信側装置からの前記第1の信号と、M-1台の送信側装置からの前記所定の受信処理によってキャンセルされる第2の信号と、N-M台の送信側装置からの前記所定の受信処理によってキャンセルされない第3の信号に分類した組み合わせの全パターンを取得し、
前記全パターンについて、各パターンの前記所定の受信処理に用いられる前記第1のウェイトに基づいて前記第1の信号の電力及び前記第2の信号の電力を取得し、チャネル推定値から前記第3の信号の電力を取得し、
前記第2の信号及び前記第3の信号との合計電力に対する前記第1の信号の電力の電力比を取得し、
前記所定の受信処理後の前記電力比が最も大きくなる組み合わせを、前記所定の受信処理を実行し、前記復調する信号の組み合わせに決定する、
無線通信方法。
【請求項9】
前記第1の処理において、前記送信側装置の台数Nが前記受信アンテナの数Mよりも多い場合に、
各送信側装置からの信号の受信電力を取得し、
前記各送信側装置からの信号の受信電力に基づいて、前記N台の送信側装置から所定数の送信側装置を除外したN’台の送信側装置からの信号について前記組み合わせの全パターンを取得することで、取得されるパターン数を削減する、
請求項8に記載の無線通信方法。
【請求項10】
前記N台の送信側装置から、前記受信電力が小さい下位の所定数の送信側装置を除外して、前記N’台の送信側装置からの信号を特定する、
請求項9に記載の無線通信方法。
【請求項11】
前記N台の送信側装置から、前記受信電力に定数k(k>1)を乗算した値が最も大きい受信電力よりも小さい送信側装置を除外して、前記N’台の送信側装置からの信号を特定する、
請求項9に記載の無線通信方法。
【請求項12】
前記所定の受信処理は、最小平均二乗誤差(MMSE)ダイバーシチであって、
前記全パターンについて、各パターンの前記第3の信号の電力を干渉電力の一部として用いて、MMSEの前記第1のウェイトを求める、
請求項8から11のいずれか一項に記載の無線通信方法。
【請求項13】
前記第1の信号または前記第1のデータを基に、前記所定の受信処理が行われる前の前記第1の送信側装置から到来する信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第1の送信側装置から到来する信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の送信側装置から前記第1の送信側装置を除外したN-1台の送信側装置の1つを新たに第1の送信側装置として順次、前記第1の処理から第3の処理を繰り返すことと、
をさらに実行する、
請求項8から12のいずれか一項に記載の無線通信方法。
【請求項14】
前記受信側装置への通信の要求発生時に無線リソースの割り当てを受けないで前記N台の複数の送信側装置による前記受信側装置との通信を許容し、受信した参照信号に基づいて、前記複数の送信側装置のうちの前記N台の送信側装置を判定し、前記N台の送信側装置から信号を同時に受信したときに、前記第1の処理から第3の処理を繰り返す、
請求項13に記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットのような公衆ネットワークに接続可能な端末を制御に利用したいというニーズが増えており、公衆ネットワークにアクセスする無線通信の低遅延化が求められている。一方、無線通信では、Multiple Input Multiple Output(MIMO)が利用されている。MIMOは、基地局と端末とが、それぞれ複数のアンテナにより同一周波数帯で通信する技術である。また、MIMOにおいて、複数の端末が同時に通信に関与する技術は、マルチユーザのMIMOと呼ばれる。このような無線通信技術の発達ともに、公衆ネットワークにアクセスする端末数の今後の増加が予測されており、上り回線のひっ迫が懸念されている。
【0003】
ところで、無線通信において、Configured Grant(CG)という通信手順が規定されている。CGによらない通信手順としては、Dynamic grantが例示される。Dynamic grantでは、端末は基地局へのデータ送信時にスケジューリング要求(Scheduling Request, SR)を基地局に送信する。そして、基地局が下りリンク制御情報(Downlink Control Information, DCI)により、そのデータ送信で使用できる無線リソースを端末に指定するともに、送信を許可する。すると、端末は送信許可を受け、指定された無線リソースにより、基地局にデータを送信する。
【0004】
これに対して、CGでは、基地局が予めデータ送信に使用可能な物理リソース等を指定する送信パラメータを端末に送信しておく。そして、基地局がCGよるデータの送信の許可開始及び許可終了等を端末に通知する。ただし、物理リソース等の送信パラメータと、許可開始とが同時に送信される場合もある。これにより、端末は、SRの送信なしで、かつ、DCIの受信なしで、直ちに、指定されている物理リソースを使用し、基地局にデータを送信できる。このように、CGによる通信では、端末は基地局とのネゴシエーションを省略して、基地局にデータ送信できる。このため、CGは、低遅延通信を実現させる技術として期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】鈴木博、“最小2乗合成ダイバーシチ受信における信号伝送特性-希望波合成と干渉波キャンセルとの関係‐”、電子情報通信学会論文誌 1992年8月 B-II Vol. J75-B-II, No.8, pp.524-534
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、CGで例示される通信により、基地局へ同一のタイミングで送信する端末の数(N)が増加する。同一のタイミングで送信する端末の数(N)が基地局の受信アンテナ数(M)よりも大きい状態は、過負荷MIMOと呼ばれる。
【0007】
開示の実施の形態の目的は、過負荷MIMOが発生しやすい状況において、通信品質の劣化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様の一つは、
M本の受信アンテナと、
N台の送信側装置から同時に受信した信号から、受信ダイバーシチ処理によって、前記N台の送信側装置のうちの1台の第1の送信側装置からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理を実行する制御部と、を備える受信側装置であって、
前記制御部は、前記第1の処理において、
前記送信側装置の台数Nが前記受信アンテナの数Mよりも多い場合に、前記N台の送信側装置からの信号を、前記第1の送信側装置からの前記第1の信号と、M-1台の送信側装置からの前記受信ダイバーシチ処理によってキャンセルされる第2の信号と、N-M台の送信側装置からの前記受信ダイバーシチ処理によってキャンセルされない第3の信号と、に分類した組み合わせの全パターンを取得し、
前記全パターンについて、各パターンの前記受信ダイバーシチ処理に用いられるウェイトに基づいて前記第1の信号の電力及び前記第2の信号の電力を取得し、チャネル推定値から前記第3の信号の電力を取得し、
前記第2の信号及び前記第3の信号との合計電力に対する前記第1の信号の電力の電力比を取得し、
前記受信ダイバーシチ処理後の前記電力比が最も大きくなる組み合わせを、前記受信ダイバーシチ処理を実行し、前記復調する信号の組み合わせに決定する、
受信側装置である。
【0009】
本開示の他の態様の一つは、
M本の受信アンテナを備える受信側装置が、
N台の送信側装置から同時に受信した信号から、受信ダイバーシチ処理によって、前記N台の送信側装置のうちの1台である第1の送信側装置からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理を実行することを含む無線通信方法であって、
前記第1の処理において、
前記送信側装置の台数Nが前記受信アンテナの数Mよりも多い場合に、前記N台の送信側装置からの信号を、前記第1の送信側装置からの前記第1の信号と、M-1台の送信側装置からの前記受信ダイバーシチ処理によってキャンセルされる第2の信号と、N-M台の送信側装置からの前記受信ダイバーシチ処理によってキャンセルされない第3の信号と、に分類した組み合わせの全パターンを取得し、
前記全パターンについて、各パターンの前記受信ダイバーシチ処理に用いられるウェイトに基づいて前記第1の信号の電力及び前記第2の信号の電力を取得し、チャネル推定値から前記第3の信号の電力を取得し、
前記第2の信号及び前記第3の信号との合計電力に対する前記第1の信号の電力の電力比を取得し、
前記受信ダイバーシチ処理後の前記電力比が最も大きくなる組み合わせを、前記受信ダイバーシチ処理を実行し、前記復調する信号の組み合わせに決定する、
無線通信方法である。
【0010】
本開示の態様の一つによれば、過負荷MIMOが発生しやすい状況において、通信品質の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る無線通信システムの構成を例示する図である。
図2図2は、第1実施の形態の基地局のハードウェア構成を例示する図である。
図3図3は、端末の構成を例示するブロック図である。
図4図4は、基地局の構成を例示するブロック図である。
図5図5は、基地局の処理を例示するフローチャートである。
図6図6は、基地局における端末とのCGによる受信処理の手順を例示するフローチャートである。
図7図7は、基地局における希望信号の分離処理のフローチャートである。
図8図8は、チャネル行列H及びRについて説明する図である。
図9図9は、チャネル行列H及びRについて説明する図である。
図10図10は、基地局における組み合わせパターンの削減処理のフローチャートの一例である。
図11図11は、基地局における組み合わせの選択処理のフローチャートの一例である。
図12図12は、シミュレーションの条件の一例である。
図13図13は、第1実施形態の処理によるシミュレーション結果の一例を示す図である。
図14図14は、第1実施形態の処理によるシミュレーション結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る無線通信システムの構成を例示する図である。本無線通信システムは、基地局1と、基地局1との間で無線により通信する複数の端末2-1、2-2、・・・、2-Nを含む。端末2-1等は、総称して端末2とも称する。本実施の形態では、マルチユーザのMIMOにおいて、基地局での受信アンテナ数Mよりも、端末数Nが多い過負荷MIMOの無線通信システムが例示される。端末2は、無線通信端末ということができる。
【0013】
送信端末数(N)が基地局の受信アンテナ数(M)以下である、通常のMIMOの場合には、例えば、所定の受信ダイバーシチのウェイトWを用いることで、1端末からの希望信号を取り出し、他の端末からの信号を干渉信号としキャンセルすることができる。一方、過負荷MIMOの場合には、送信端末数(N)が基地局の受信アンテナ数(M)よりも多いため、所定の受信ダイバーシチのウェイトWを用いても、M-N台の端末からの信号をキャンセルできない。キャンセルできないM-N台の端末からの信号は干渉信号として残るため、希望信号を復調する際に当該干渉信号の影響によりエラー率が増大する恐れがある。なお、干渉信号をキャンセルできるとは、希望信号への干渉信号による干渉を抑圧することである。
【0014】
送信端末数(N)が基地局の受信アンテナ数(M)よりも多い場合には、希望信号、キャンセルされる干渉信号(M-1)、及び、キャンセルされない干渉信号(N-M)を分類して、受信ダイバーシチ処理が行われる。しかしながら、N台の送信端末からの信号を、希望信号、キャンセルされる干渉信号(M-1)、及び、キャンセルされない干渉信号(N-M)に分類する方法は提案されていない。
【0015】
本開示の態様の一つでは、送信端末数(N)が基地局の受信アンテナ数(M)よりも多い場合に、希望信号のエラー率をより小さくする、希望信号、キャンセルされる干渉信号(M-1)、及び、キャンセルされない干渉信号(N-M)の分類方法を提案する。
【0016】
より具体的には、本開示の態様の一つは、M本の受信アンテナと、N台の送信側装置から同時に受信した信号から、受信ダイバーシチ処理によって、N台の送信側装置のうちの1台の第1の送信側装置からの第1の信号を取得し、第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理を実行する制御部と、を備える受信側装置である。制御部は、第1の処理において、送信側装置の台数Nが受信アンテナの数Mよりも多い場合に、以下の処理を行う。制御部は、N台の送信側装置からの信号を、第1の送信側装置からの
第1の信号と、M-1台の送信側装置からの受信ダイバーシチ処理によってキャンセルされる第2の信号と、N-M台の送信側装置からの受信ダイバーシチ処理によってキャンセルされない第3の信号と、に分類した組み合わせの全パターンを取得する。制御部は、全パターンについて、各パターンの受信ダイバーシチ処理に用いられるウェイトに基づいて第1の信号の電力及び第2の信号の電力を取得し、チャネル推定値から第3の信号の電力を取得する。制御部は、第2の信号及び第3の信号の合計電力に対する第1の信号の電力の電力比を取得し、受信ダイバーシチ処理後の当該電力比が最も大きくなる組み合わせを、受信ダイバーシチ処理を実行し、復調する信号の組み合わせに決定する。
【0017】
送信側装置は、例えば、無線通信端末である。受信側装置は、例えば、基地局である。ただし、送信側装置及び受信側装置は所定の端末に限定されない。例えば、送信側装置は基地局であってもよいし、受信側装置は無線通信端末であってもよい。受信ダイバーシチ処理は、例えば、最小二乗誤差(MMSE)方式である。ただし、受信ダイバーシチ処理の方式はこれに限定されない。第1の信号は、例えば、希望信号とも称される、抽出対象となる信号である。第2の信号及び第3の信号は、希望信号に対して影響を与える干渉信号とも称される。したがって、第2の信号及び第3の信号の合計電力に対する第1の信号の電力の電力比は、いわゆる、信号電力対干渉電力比(Signal-to-Interference Ratio、SIR)である。
【0018】
本開示の態様の一つによれば、複数の送信側装置から同時に受信された信号を、第1の信号、キャンセルされる第2の信号、及び、キャンセルされない第3の信号の3つに分類することができる。この分類は、全パターンの中から、例えば、各信号のチャネル推定値と受信ダイバーシチ処理のウェイトとに基づいて取得されるSIRが最も大きい組み合わせのパターンが選ばれる。すなわち、受信タイバーシチ処理後の電力の大きさに基づいて、希望信号に対する干渉信号の影響が最も小さくなるような組み合わせを決定することができ、希望信号のエラー率を低減させることができる。
【0019】
本開示の態様の一つでは、制御部は、第1の処理において、送信側装置の台数Nが受信アンテナの数Mよりも多い場合には、各送信側装置からの信号の受信電力を取得し、各送信側装置からの信号の受信電力に基づいて、N台の送信側装置から所定数の送信側装置を除外したN’台の送信側装置からの信号について、組み合わせの全パターンを取得することで、取得されるパターン数を削減するようにしてもよい。信号の分類の組み合わせのパターン数が減ることによって、受信側装置の演算量が削減されるので、受信側装置の処理負荷を軽減することができる。
【0020】
N’台の送信側装置からの信号は、N台の送信側装置から、受信電力が小さい下位の所定数の送信側装置を除外して特定されてもよい。または、N’台の送信側装置からの信号は、N台の送信側装置から、受信電力に定数k(k>1)を乗算した値が最も大きい受信電力よりも小さい送信側装置を除外して特定されてもよい。
【0021】
本開示の態様の一つでは、受信ダイバーシチ処理は、最小平均二乗誤差(MMSE)ダ
イバーシチであってもよい。この場合に、制御部は、信号の分類の全パターンについて、MMSEのウェイトを、各パターンの第3の信号の電力を干渉電力の一部として用いて求めるようにしてもよい。MMSEのウェイトを第3の信号の電力を干渉電力の一部として用いて求めることによって、キャンセルされない干渉信号である第3の信号の影響をより抑えるようなウェイトとすることができる。
【0022】
本開示の態様の一つでは、制御部は、さらに以下の第2の処理と第3の処理とを実行するようにしてもよい。第2の処理では、制御部は、第1の信号または第1のデータを基に、受信ダイバーシチ処理が行われる前の第1の送信側装置から到来する信号を生成する。
第3の処理では、受信した信号から、第2の処理によって生成された第1の送信側装置から到来する信号を除外した信号を抽出する。制御部は、第3の処理によって抽出された信号に対してN台の送信側装置から第1の送信側装置を除外したN-1台の送信側装置のうちの1つを新たに第1の送信側装置として順次、第1の処理から第3の処理を繰り返すことと、をさらに実行するようにしてもよい。これによって、受信アンテナ数Mよりも多いN台からの送信側装置から同時に通信を受信した場合に、全送信側装置からの信号を再生することができる。
【0023】
また、本開示の態様の一つでは、制御部は、受信側装置への通信の要求発生時に無線リソースの割り当てを受けない複数の送信側装置による受信側装置との通信を許容し、受信した参照信号に基づいて、当該複数の送信側装置のうちのN台の送信側装置を判定し、N台の送信側装置から信号を同時に受信したときに、第1の処理から第3の処理を繰り返すようにしてもよい。受信側装置への通信の要求発生時に無線リソースの割り当てを受けない複数の送信側装置による受信側装置との通信の一例は、Nの上限を制限しないCGである。Nの上限を制限しないCGによる通信が行われる場合には、受信アンテナ数Mよりも多いN台からの送信側装置から同時に通信を受信するような状況が発生しやすいが、安定した品質の通信を維持することができる。
【0024】
図2は、第1実施形態の基地局1のハードウェア構成を例示する図である。基地局1は、プロセッサ11と、メモリ12と、内部インターフェース13と、他の基地局等と通信するためのネットワークインターフェース14と、無線処理装置15とを有する。
【0025】
プロセッサ11はCentral Processing Unit (CPU)、Microprocessor Unit (MPU)とも呼ばれる。プロセッサ11は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一の物理CPUがマルチコア構成を有していても良い。さらにまた、プロセッサ11は、Digital Signal
Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)等の様々な回路構成の演算装置を含んでも良い。また、プロセッサ11は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路、またはアナログ回路と連携するものでもよい。集積回路は、LSI、 Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含むものでもよい。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を
含むものでもよい。したがって、プロセッサ11は、例えば、マイクロコントローラ(MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれるものでもよい。
【0026】
メモリ12は、プロセッサ11が実行する命令列(コンピュータプログラム)、または、プロセッサ11が処理するデータ等を記憶する。プロセッサ11とメモリ12とは、ベースバンド装置(BBU)とも呼ばれることがある。内部インターフェース13は、種々の周辺装置をプロセッサに接続する回路である。ベースバンド装置は、制御部ということもできる。
【0027】
ネットワークインターフェース14は、他の基地局が接続されるネットワークに基地局1がアクセスするための通信装置である。他の基地局が接続されるネットワークは、バックホールとも呼ばれる。バックホールは例えば、光通信による有線ネットワークである。
【0028】
無線処理装置15は、無線信号を送信するトランシーバおよび無線信号を受信するレシーバ等を含み、アンテナANT-B1、・・・、ANT-BMに接続される。無線処理装置15は、トランシーバおよびレシーバをそれぞれアンテナと同数のM系統有してもよい。無線処理装置15は、遠隔無線ヘッド(RRH)と呼ばれ、ベースバンド装置とは光通信による有線ネットワークで接続して、遠隔に設置される構成とすることもできる。また
、1つのベースバンド装置に、複数の遠隔無線ヘッドが接続される構成であってもよい。なお、ベースバンド装置と遠隔無線ヘッドを接続するネットワークは、フロントホールとも呼ばれる。
【0029】
図3は、端末2の構成を例示するブロック図である。図3では、端末2の構成とともに、無線リソースブロック及び無線チャネルのチャネル行列Hが例示されている。無線リソースブロックは、端末2に割り当てられる搬送波(サブキャリア)の周波数と時間軸とで区切られた部分をいう。また、チャネル行列Hは、端末2の各アンテナANT-1、ANT-2等と、基地局1の受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMとの間の伝送路の振幅及び位相の変動量を示す行列である。送信側の端末2の各アンテナANT-1、ANT-2等の送信信号ベクトルに、チャネル行列Hを乗算することで、基地局1の受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMでの受信信号ベクトルの推定値を得ることができる。
【0030】
図3では、複数の端末2-1、・・・、2-Nが例示されている。また、端末2の詳細構成は、端末2-1によって例示されている。図3では、各端末2は、一対のアンテナANT-1、ANT-2、・・・ANT-2N-1、ANT-2Nを有する。以下の説明では、各端末2のアンテナを総称する場合に、単にアンテナANTと記載する。ただし、本実施の形態において、各端末2のアンテナ数が2に限定される訳ではない。
【0031】
端末2は、User Equipment(UE)とも呼ばれる。また、端末2は、プロセッサ、メモリ、無線処理装置、アンテナANT等を有する。端末2のプロセッサ、メモリ、無線処理装置は、図2で説明したプロセッサ11、メモリ12、及び無線処理装置15と同様である。ただし、端末2では、プロセッサ、メモリ、及び無線処理装置は、通常、1つの筐体に収納される。端末2のプロセッサは、メモリに実行可能に展開された命令列(コンピュータプログラム)により、符号化部206、変調部207、送信ダイバーシチ処理部208の各処理を含む無線通信処理を実行する。
【0032】
符号化部206は、端末2から送信されるデータを誤り訂正符号化する。誤り訂正符号は、軟判定符号でも硬判定符号でもよく、符号化の種類に制限はない。変調部207は、誤訂正符号化されたデータをデジタル変調する。デジタル変調の方式は、例えば、Quadrature Amplitude Modulation (QAM)、Phase Shift Keying (PSK)、Frequency Shift Keying (FSK)等である。
【0033】
送信ダイバーシチ処理部208は、デジタル変調された信号を複数に分離し、送信ダイバーシチのブランチを形成する。送信ダイバーシチ処理部208は、複数のブランチに分離された信号を、無線処理装置を通じて、複数のアンテナANTから放射する。図3の例では、各端末2の送信ダイバーシチ処理部208は、2本のアンテナにより伝送路を分離し、送信ダイバーシチのブランチを形成する。ただし、本実施の形態において、送信ダイバーシチ処理部208による処理が複数のアンテナによるダイバーシチに限定される訳ではない。例えば、端末2が単一のアンテナを有する場合には、送信ダイバーシチ処理部208は、偏波ダイバーシチ、時間ダイバーシチ、周波数ダイバーシチ等を採用してもよい。本実施の形態でダイバーシチ処理に限定はなく、各種のダイバーシチが採用される。
【0034】
図4は、基地局1の構成を例示するブロック図である。基地局1は、レプリカ除去部101、受信ダイバーシチ及び等化処理部102、復調部103、復号部104、レプリカ生成部105を有する。また、レプリカ生成部105は、符号化部106、変調部107、送信ダイバーシチ処理部108、及びチャネル行列乗算部109を有する。図2に例示したプロセッサ11がメモリ12に実行可能に展開された命令列(コンピュータプログラム)を実行することにより、レプリカ除去部101、受信ダイバーシチ及び等化処理部102、復調部103、復号部104、レプリカ生成部105、符号化部106、変調部1
07、送信ダイバーシチ処理部108、及びチャネル行列乗算部109の各処理を実行する。
【0035】
図4では、基地局1の構成とともに、チャネル行列Hが例示されている。チャネル行列Hの構成は、図3と共通である。チャネル行列Hは、端末2の各アンテナANT-1、ANT-2等と、基地局のアンテナANT-B1乃至ANT-BMとの間の伝送路の振幅及び位相の変動量を示す行列である。チャネル行列Hは、各端末2-jの各アンテナ2j-1、2j(J=1、・・・、N)から送信される基準信号(Reference Signal, RS)を各アンテナANT-B1、・・・、ANT-BMで受信することにより決定される。各端末2のアンテナ数が2と異なる場合も、同様である。要するに、送信側の各アンテナ2j-1、2jと、受信側の各アンテナANT-Biとの間で送受信さされる基準信号によって、伝送路の伝達関数に相当する変動量が求められる。
【0036】
本実施の形態の通信システムでは、RSは、CGで使用さるリソースブロックと同一のリソースブロックで送信される。ただし、RSは、CGで使用されるリソースブロックと異なるリソースブロックで送信されてもよい。本実施の形態では、RSは、CGで使用されるリソースブロックと同一のリソースブロックで送信されるので、複数の端末2の間で、RSが互いに干渉しないように、それぞれの端末2の各送信アンテナANTからのRSは、直交している。RSの直交のさせ方としては、時間的に重ならないようにする方法(TDMA)、周波数をずらす方法(FDMA)、符号による直交(CDMA)等が例示できる。本実施形態では、例えば、CDMAが採用される。RSに使われる符号として、基地局1はCGを設定する時に、それぞれの端末2に対して、相互に異なる符号を割り当てる。RSは、端末2から送信されるデータ(DS: データ信号)の前後に付加される。RSは直交しているので、基地局1は、過負荷MIMOの状態でも、RSの各信号を分離し、チャネル行列Hを測定できる。本実施の形態では、基地局1は、常時、最新のチャネル行列Hを測定済みとして、説明がされる。
【0037】
本実施の形態では、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMにおいて、受信アンテナ数Mより大きいN台の端末2から同時に送信された、重複するリソースブロックでの無線信号が受信される(過負荷MIMO)。アンテナANT-B1乃至ANT-BMのそれぞれにおいては、複数の端末2からの信号が互いに干渉する。さらに、過負荷MIMOの状態では、送信ダイバーシチの効果が生じない。そこで、本実施の形態の基地局1では、プロセッサ11が、MMSE等化および送信信号の干渉レプリカの除去を逐次的に行うシリアルキャンセラ(Successive Interference Canceller、SIC)を繰り返し実行する
【0038】
まず、SICについて説明する。SICでは、まず、プロセッサ11は、各端末2から受信される信号のうち、着目する端末2-x(1≦x≦Nの整数)の送信ブランチ2x-1、2x(端末2-xのアンテナANT-2x-1、ANT-2x)からの受信信号sx1、sx2をMMSE等化により求める。着目する端末2-xをどのように選択するか、については、後述の処理によって決定される。
【0039】
次に、プロセッサ11は、受信信号sx1、sx2に対応する送信ブランチ2x-1、2x(送信アンテナANT-2x-1、ANT-2x)からの干渉レプリカr1(i)、rx2(i)(i=1、・・・ 、M)を生成する。干渉レプリカrx1(i)、rx2
(i)は、受信アンテナANT-Biで受信されるMMSE等化前の送信ブランチ2x-1、2x(送信アンテナANT-2x-1、ANT-2x)からの受信信号の推定値である。
【0040】
そして、プロセッサ11は、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMでの受信信号
から、それぞれ、干渉レプリカrx1(i)、rx2(i)(i=1、・・・ 、M)を
除去する。これによって、プロセッサ11は、送信ブランチ1、2(送信アンテナANT-2x-1、ANT-2x)からの送信信号の影響のない受信信号を受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMから受信したかのようにして取得できる。以下、順次、除去されていない(残っている)端末2の中から着目する端末2-xを新たに決定し、端末2-xの送信ブランチ2x-1、2x(端末2-xの送信アンテナANT-2x-1、ANT-2x)について、SICの処理が繰り返して実行される。すなわち、SICのj番目(j=1、・・・ 、N)のループにおいて着目される端末を端末2-x(j)とすると、端
末2-x(1)乃至端末2-x(j-1)からの送信信号を除去した受信信号に対して、同様の処理が繰り返される。このようなプロセッサ11の制御により、過負荷MIMOで受信された無線信号に対して、1つ1つの端末2の各アンテナANT-1、ANT-2、...、ANT-2N-1、ANT-2Nからの受信信号が順次求められる。以上、ここまでがSICの説明である。
【0041】
次に、基地局1の構成について説明する。レプリカ除去部101は、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMにおいて受信されたそれぞれの受信信号s(i)(i=1、・・・、M)から、後述のレプリカ生成部105によって生成された干渉レプリカを減算する。SICの1番目のループ実行後、すなわち、2番目のSICのループの開始時には、受信信号s(i)(i=1、・・・、M)から、それぞれ、干渉レプリカr1-xj(i),r2-xj(i)(i=1、・・・、M)が減算された信号s2(i)がレプリカ除去部101から出力される。j番目(j=1、・・・、N)のSICのループ開始時にレプリカ除去部101から出力される受信信号sj(i)(i=1、・・・、M、j=1、・・・、N)は、受信信号s(i)=s1(i)から、端末2-x(1)乃至端末2-x(j-1)の干渉レプリカr1-x1(1)、r2-x1(1)乃至r1-x(j-1)(i)、r2-x(j-1)(i)(i=1、・・・、M)が減算された信号となる。なお、干渉レプリカr1-x(j-1)(i)、r2-x(j-1)(i)は、端末2-x(j-1)の送信アンテナANT-2x(j-1)-1、ANT-2x(j-1)からの受信信号の推定値である。
【0042】
受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、レプリカ除去部101から出力される、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMにおいて受信された受信信号s1(i)から干渉レプリカが除去された後の信号sj(i)の入力を受ける。すなわち、SICのループj番目において、信号sj(i)には、端末2-x(1)乃至端末2-x(j-1)の送信アンテナANT-2x(1)-1、ANT-2x(1)乃至ANT-2x(j-1)-1、ANT-2x(j-1)以外の端末2からの受信信号を含む信号ともいえる。
【0043】
受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、信号sj(i)に含まれる端末2の信号の、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせを決定する。希望信号は、着目する端末2-x(j)からの受信信号である。具体的には、受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、信号sj(i)に含まれる端末2の信号の、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせの全パターンを取得する。次に、受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、全パターンについて、MMSE法による受信ダイバーシチ及び等化処理部102による処理後の信号の信号電力対干渉電力比(Signal-to-Interference Ratio、SIR)を取得する。受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、SIRが最も大きい組み合わせを選択し、着目する端末2-x(j)を決定する。
【0044】
受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、MMSE法により、着目する各端末2-x(j)(送信アンテナANT-2x(j)-1、ANT-2x(j))以外の干渉を抑圧する。そのため、受信ダイバーシチ受信及び等化処理部102は、チャネル行列Hと、そ
のエルミート転置行例H^Tから、次の式(1)により、MMSEウェイトWmmseベクトルが計算される。
【数1】

(式1)内の行列Rは、チャネル行列Hに各端末2の送信振幅を乗じた行列である。以降、行列Rもチャネル行列と称する。Pnは、受信アンテナ1本当たりの雑音電力である。Pnは予め測定されている既定値である。Piは、キャンセルされない干渉信号の電力である。行列Iは、単位行列である。ベクトルrは、希望信号の送信振幅を乗算したチャネルベクトルである。
【0045】
そして、受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMにおいて受信されたそれぞれの受信信号sj(i)(i=1、・・・、M、j=1、・・・、N)をMMSEウェイトWmmseベクトルに乗算する。これにより、受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、各端末2-jの送信アンテナANT-2j-1、ANT-2jからの信号について、他の送信アンテナからの干渉を抑圧した等化処理を実行する。受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、各SICのj番目のループにおいて、1番目からj-1番目までのループですでに除去される端末2-x(1)乃至端末2-X(j-1)以外の端末2の信号の、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせの全パターンを取得する。次に、受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、全パターンについて、チャネル行列RにMMSEウェイトWmmseを乗じた演算結果から、SIRを取得する。そして、受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、最もSIRが大きい組み合わせにおける希望信号に対応する端末2をj番目のループにおいて着目する端末2-x(j)に決定する。そして、受信ダイバーシチ及び等化処理部102は、決定された1つの端末2-x(j)からの複数のブランチを用いて、送信ダイバーシチによる受信処理を実行する。
【0046】
復調部103は、受信ダイバーシチ及び等化処理部102で得られた受信信号からビット列を生成する。復号部104は、復調部103で得られたビット列から、誤り訂正符号を復号し、データを取得する。
【0047】
レプリカ生成部105は、復号された端末2からの信号を基に、端末2のアンテナANT-2j-1、ANT-2jから送信され、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMにおいて受信される干渉レプリカを生成する。
【0048】
すなわち、符号化部106は、端末2から送信され、復号されたデータを再度誤り訂正符号化する。変調部107は、誤り訂正符号化されたデータをデジタル変調する。送信ダイバーシチ処理部108は、端末2と同一の送信ダイバーシチ処理を実行する。チャネル行列乗算部109は、送信ダイバーシチ処理され、端末2の各送信ブランチから送信される送信信号をチャネル行列に乗算する。この乗算により、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMにおいて受信される干渉レプリカが生成される。復号部104が復号するデータは第1の信号から復号される第1のデータといえる。
【0049】
図5は、基地局1の処理を例示するフローチャートである。OP1では、プロセッサ11は、端末2との接続時に、端末2にCGを許可するとともに、CGで使用するリソース及び端末毎に異なるRS(Reference Signal)を指定する。ここで、接続時とは、例えば、シグナリングと呼ばれる手順により、端末2と基地局が接続を確立する時、あるいは、端末2と基地局との間の初期設定時が例示される。
【0050】
OP2では、プロセッサ11は、基地局1内で、SICループの受信をするための設定を行う。SICループでは、例えば、プロセッサ11は、端末から受信するRSを確認して端末2を識別するため、端末2に指定したRSと端末2の識別情報との関係をメモリ12に記憶する。また、プロセッサ11は、RSが受信された端末の数から、SICループの回数を決定し、メモリ12に記憶する。SICループの回数は、例えば、RSを受信した端末2の台数N-1回である。
【0051】
OP3では、プロセッサ11は、CGにより、端末2からの信号を受信する。なお、端末2からの信号を受信に伴い、プロセッサ11は、基地局1からの応答(ACK、NACK)を適宜返信する。OP4では、基地局1が端末2との接続を開放するときに、プロセッサ11は、CGの設定を解除し、図5に示される処理を終了する。接続を開放するときとは、例えば、端末2が基地局1のセルから離脱するとき、端末2が処理を停止するとき等である。以上の処理によれば、基地局1が端末2にCGを許可すると、プロセッサ11は、基地局1内で、SICループの受信をするための設定を行う。
【0052】
図6は、基地局1における端末2とのCGによる受信処理のフローチャートである。図6に示される処理は、図5のOP3の処理に相当する。図6の処理は、基地局1が端末2との接続を開放するまで繰り返し実行される。OP101では、プロセッサ11は、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BM及び無線処理装置15で受信した過負荷MIMOの受信信号を取得する。
【0053】
OP102では、プロセッサ11は、変数Nの初期値を受信信号の端末数に設定する。変数Nは、未分離の端末の数を示す変数である。OP103では、プロセッサ11は、着目する端末2-Xを決定し、MMSE法により、端末2-xから送信された信号(希望信号)を受信信号から分離して取得する。端末2-xは、送信ダイバーシチにより信号を送信するので、プロセッサ11は、複数の送信ブランチを基に、端末2-xから送信された被変調キャリア信号を取得する。プロセッサ11は、受信ダイバーシチ及び等化処理部102として、OP103の処理を実行する。
【0054】
OP104では、プロセッサ11は、OP103の処理で取得された信号を基に、デジタル復調処理を実行する。すなわち、被変調キャリア信号からベースバンド信号としてビット列を取り出す。プロセッサ11は、復調部103として、OP104の処理を実行する。OP105では、プロセッサ11は、OP104の処理で復調されたベースバンド信号である誤り訂正符号化された信号から、データを復号する。プロセッサ11は、復号部104として、OP105の処理を実行する。OP103乃至OP105の処理によって、受信信号から端末2のからの信号が分離、符号化、復調され、被変調キャリアで搬送されたデータが復調及び復号される。したがって、OP103乃至OP105の処理は、第1の処理ということができる。
【0055】
OP106では、プロセッサ11は、端末2-xの送信ブランチ(送信アンテナ)からの干渉レプリカを生成する。プロセッサ11は、レプリカ生成部105として、OP106の処理を実行する。OP106の処理は、第2の処理ということができる。
【0056】
OP107では、プロセッサ11は、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BM及び無線処理装置15で受信した受信信号から干渉レプリカを除去する。OP107の処理は、第3の処理ということができる。OP108では、プロセッサ11は、未分離の端末2が残っているか否かを判定する。未分離の端末2が残っている場合には(OP108:YES)、処理がOP109へ進む。全ての端末2が処理され、未分離の端末2が残っていない場合には(OP108:NO)、図6に示される処理が終了し、処理が図5のOP4
へ進む。
【0057】
OP109では、プロセッサ11は、変数Nから1を減算して、変数Nを更新する。その後、処理がOP103へ進み、次の着目する端末2-xが決定され、端末2-xについて、OP103からOP108の処理が行われる。
【0058】
図7は、基地局1における希望信号の分離処理のフローチャートである。図7に示される処理は、図6のOP103において実行される処理である。OP201では、プロセッサ11は、変数Nが受信アンテナ数Mよりも大きいか否を判定する。変数Nは、未分離の端末数である。変数Nが受信アンテナ数Mよりも大きい場合には(OP201:YES)、過負荷MIMO状態であることが示され、処理がOP202へ進む。変数Nが受信アンテナ数M以下である場合には(OP201:NO)、負荷MIMO状態でないことが示され、処理がOP206へ進む。OP206では、プロセッサ11は、未分離の端末2の中から、例えば、受信信号の最も電力の大きい端末2を着目する端末2-xとして決定し、MMSE法により、端末2-xから送信された信号(希望信号)を受信信号から分離して取得する。なお、OP206で用いられるMMSEウェイトWmmseは、(式1)において、Pi=0としたものである。その後、図7に示される処理が終了し、図6のOP104へ処理が進む。
【0059】
OP202では、プロセッサ11は、変数NがM’よりも大きいか否を判定する。M’は、受信アンテナ数Mよりも大きい固定値である。変数NがM’よりも大きい場合には(OP202:YES)、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせのパターンが多いため、OP203へ処理が進み、OP203では組み合わせパターンの削減処理が行われる。OP203の処理の詳細は、後述される。変数NがM’以下である場合には(OP202:NO)、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせのパターンを削減する必要がなく、処理がOP204へ進む。
【0060】
OP204では、プロセッサ11は、組み合わせの決定処理を行う。すなわち、OP204では、プロセッサ11は、未分離の端末2からの受信信号の、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせの全パターンについて、SIRを算出し、最もSIRが大きくなる組み合わせを決定する。OP204の処理の詳細は後述される。
【0061】
OP205では、プロセッサ11は、OP204において決定された組み合わせについて、MMSEウェイトWmmseを算出し、受信アンテナANT-B1乃至ANT-BMにおいて受信されたそれぞれの受信信号sj(i)(i=1、・・・、M、j=1、・・・、N)にMMSEウェイトWmmseベクトルを乗算した演算結果から、希望信号を取得する。その後、図7に示される処理が終了し、図6のOP104へ処理が進む。
【0062】
図8及び図9は、チャネル行列H及びRについて説明する図である。図8及び図9は、後述の図10及び図11のフローチャートで示される処理において用いられる行列の定義を示す。図8及び図9では、受信アンテナ数M本、同時に信号が受信される端末数N台であり、M<Nの過負荷MIMOの場合のチャネル行列について示される。また、図8及び図9では、端末#1からの信号を希望信号、端末#2~端末#MのM-1台の端末からの信号をキャンセルされる干渉信号、及び、端末#M+1から端末#NのN-M台の端末からの信号をキャンセルされない干渉信号として説明する。
【0063】
図8では、チャネル行列Hについて示されている。ベクトルhjは、端末#jからの信号のチャネルベクトルである。ベクトルhjのサイズは、M×1である。行列Hc‘は、
キャンセルされる干渉信号のチャネル行列である。行列Hcのサイズは、M×M-1である。行列Hcは、希望信号とキャンセルされる干渉信号のチャネル行列であり、一列目が希望信号のチャネルベクトルh1、二列目からM-1列目がキャンセルされる干渉信号のチャネル行列Hc’である。行列Hcのサイズは、M×Mである。行列Huは、キャンセルされない干渉信号のチャネル行列である。行列Huのサイズは、M×N-Mである。なお、全体のチャネル行列Hは、希望信号とキャンセルされる干渉信号のチャネル行列Hcと、キャンセルされない干渉信号のチャネル行列Huを並べた、M×Nの行列となる。
【0064】
図9では、チャネル行列Rについて示されている。チャネル行列Rは、チャネル行列Hに、各端末2の送信振幅を乗算して求められる行列である。端末#jからの信号の送信振幅をpjとする。送信振幅pjを二乗すると送信電力が得られる。
【0065】
ベクトルrjは、端末#jのチャネルベクトルである。端末#jのチャネルベクトルrjは、その成分が端末#jのチャネルベクトルhjの成分に端末#jの送信振幅pjを乗じたものとなる。
【0066】
行列Rcは、希望信号とキャンセルされる干渉信号のチャネル行列である。行列Rcは、端末#1から端末#Mのチャネルベクトルh1~hMを並べたものである。行列Ruは、キャンセルされない干渉信号のチャネル行列である。行列Ruは、端末#M+1から端末#NのチャネルベクトルhM+1~hNを並べたものである。なお、全体のチャネル行列Rは、希望信号とキャンセルされる干渉信号のチャネル行列Rcと、キャンセルされない干渉信号のチャネル行列Ruを並べた、M×Nの行列となる。ベクトルrj、行列Rc、及び、Ruのサイズは、それぞれ、ベクトルhj、行列Hc、及び、行列Huのサイズと同じである。
【0067】
図10は、基地局1における組み合わせパターンの削減処理のフローチャートの一例である。図10に示される処理は、図7のOP203における処理に相当する。図10に示される組み合わせパターンの削減処理は、同時に信号が受信された端末数が閾値M’よりも大きい場合、すなわち、組み合わせのパターン数が多くなる場合に実行される。
【0068】
OP301では、プロセッサ11は、端末n(n=1、2、・・・、N)からの受信電力P_H(n)を算出する。端末nからの受信電力P_H(n)は、以下の(式2)によって取得される。R(m、n)は、行列Rのm行n列の成分を示す。
【数2】
【0069】
OP302では、プロセッサ11は、各端末2の信号の受信電力を降順に並び替える。図10中のP_H(α1)のα1は、並び替えた後の順番を示す。
【0070】
OP303では、プロセッサ11は、除外する端末を特定する。OP303における除外する信号の特定方式は、方式1と方式2とがある。いずれの方式の処理が行われるかは、例えば、基地局1の管理者によって設定されてもよい。OP303Aは、方式1による除外する信号の特定の処理である。OP303Bは、方式2による除外する信号の特定の処理である。
【0071】
OP303Aでは、すなわち、方式1では、プロセッサ11は、各端末2の信号のうち、降順に並び替えられた受信電力が下位Xの信号を除外する信号として特定する。この場
合、プロセッサ11は、組み合わせのパターンの検討対象となる信号の数N’をN-X個に設定する。
【0072】
OP303Bでは、すなわち、方式2では、プロセッサ11は、各端末2の信号の受信電力P_H(αn)に定数k(k>1)を乗算した値が、最も大きい受信電力P_H(α1)よりも小さくなる信号を除外する信号として特定する。この場合、プロセッサ11は、組み合わせのパターンの検討対象となる信号の数N’をNから除外する信号の数を減算した値に設定する。除外する信号として特定される信号の数が不定なため、特定する信号の数N’も不定となる。
【0073】
OP303A又はOP303Bの処理が終了すると、図10に示される処理が終了し、処理が図7のOP204ヘ進む。なお、OP303A及びOP303Bにおいて除外する信号の受信電力は、最も大きい受信電力P_H(α1)よりも十分に小さく、次の処理である組み合わせの選択処理の検討対象から除外しても、SIRの値等に及ぼす影響が無視できるほどにごく小さい。
【0074】
図11は、基地局1における組み合わせの選択処理のフローチャートの一例である。図11に示される処理は、図7のOP204における処理に相当する。図11の処理は、図7のOP203(図10)において決定されたN’個の信号を対象とする。
【0075】
OP401では、プロセッサ11は、N’個の信号について、希望信号(1個)、キャンセルされる干渉信号(M-1個)、キャンセルされない干渉信号(M-N’個)の組み合わせの全パターンを作成する。1つの希望信号に対するパターン数Lは、N’-1個からM-1個を選択する組み合わせの数となる。
【0076】
OP402からOP405の処理は、各組み合わせのSIRを取得するための処理であって、全パターン(N’*L)に対して実行される。OP402では、プロセッサ11は、以下の(式3)を用いて、N’-M個のキャンセルされない干渉信号の干渉電力Piを算出する。Piは、N’-M個のキャンセルされない干渉信号の干渉電力を受信アンテナ1本当たりに振り分けた場合の干渉電力である。
【数3】
【0077】
OP403では、プロセッサ11は、(式1)に従ってMMSEウェイトWmmseを算出する。MMSEウェイトWmmseは、M×1のベクトルである。OP404では、プロセッサ11は、希望信号の電力Psとそれ以外の干渉信号の電力Pbを求める。干渉信号の電力Pbは、キャンセルされる干渉信号(M-1個)とキャンセルされない干渉信号(N’-M個)との干渉電力の合計値である。
【0078】
希望信号の電力Psとそれ以外の干渉信号の電力Pbを求めるために、まずは、プロセッサ11は、MMSEウェイトWmmseの転置ベクトル(1×M)に全体のチャネル行列R(M×N’)を乗算して、ベクトルGを取得する。ベクトルGは、1×N’のベクトルとなる。ベクトルGの一列目の成分が希望信号成分Gsであり、行列Gの2列目からN’列目の成分が干渉信号成分Gu(p)(p=2、・・・、N’)である。それぞれの成分の絶対値を二乗することで電力が得られる。すなわち、希望信号の電力Psは、希望信号成分Gsの絶対値を二乗することで取得される。干渉信号の電力Pbは、干渉信号成分Gu(p)の絶対値の二乗を合計することで取得される。
【0079】
OP405では、プロセッサ11は、SIRを算出する。SIRは、希望信号の電力Psを干渉信号の電力Pbで割算することで得られる。全パターンに対してOP402からOP405の処理を行い、全パターンのSIRが取得されると、処理がOP406へ進む。
【0080】
OP406では、プロセッサ11は、最もSIRが大きくなる組み合わせを選択する。その後、図10に示される処理が終了し、処理が図7のOP205に進む。なお、図7の処理において、OP202が否定判定の場合には、OP203の処理が行われないため、OP204(図11)の処理において、N’=Nとして処理が行われる。
【0081】
図12から図14により、本実施形態の処理によるシミュレーション結果を例示する。図12は、シミュレーションの条件を例示する。このシミュレーションは、同時送信端末数3乃至6(それぞれの端末で送信アンテナ2本)場合と、同時送信端末数5乃至10(それぞれの端末で送信アンテナが4本)の場合で行われる。
【0082】
送信データサイズは80ビットである。誤り訂正符号はターボ符号(符号化率1/3)である。変調方式は、シングルキャリアQPSKである。伝送路は、最大ドップラー周波数0Hzの1パスレイリーフェージングが仮定された。また、伝送路の信号対雑音電力比は30dBが仮定された。
【0083】
図13は、シミュレーションにおいて、受信アンテナ数が2本である場合の、組み合わせパターンの削減処理(図10)及び組み合わせ選択処理(図11)の実行の有無によるビット誤り率の相違を例示する。図13の各グラフは、いずれも送信ダイバーシチのない例である。図13で横軸は同時に送信する端末台数であり、縦軸はビット誤り率である。
【0084】
図13で、丸のマーカ(●)のグラフは、組み合わせパターンの削減処理(図10)及び組み合わせ選択処理(図11)を実行しない場合のシミュレーション結果である。丸のマーカのグラフの場合には、信号の受信電力が大きい順で希望信号、キャンセルされる干渉信号、キャンセルされない干渉信号を決定している。三角のマーカ(▲)のグラフは、組み合わせパターンの削減処理(図10)及び組み合わせ選択処理(図11)を実行した場合のシミュレーション結果である。三角のマーカ(▲)のグラフの場合には、除外する信号の特定方式として方式1が採用され、下位1の信号を除外している。黒塗り四角のマーカのグラフは、組み合わせパターンの削減処理(図10)及び組み合わせ選択処理(図11)を実行した場合のシミュレーション結果である。黒塗り四角のマーカのグラフの場合には、除外する信号の特定方式として方式2が採用され、定数k=4に設定されている。
【0085】
図13に示されるシミュレーション結果のグラフを比較すると、同時送信する端末台数が3~6台のいずれの場合でも、組み合わせパターンの削減処理(図10)及び組み合わせ選択処理(図11)を実行しない場合(丸のマーカのグラフ)よりも、実行した場合(三角のマーカのグラフと四角のマーカのグラフ)の方が、ビット誤り率が低いことが示されている。
【0086】
図14は、シミュレーションにおいて、受信アンテナ数が4本である場合の、組み合わせパターンの削減処理(図10)及び組み合わせ選択処理(図11)の実行の有無によるビット誤り率の相違を例示する。図14において、シミュレーション及びグラフのそれぞれの設定は図13と同様である。
【0087】
図14に示されるシミュレーション結果のグラフを比較すると、同時送信する端末台数
が5~10台のいずれの場合でも、組み合わせパターンの削減処理(図10)及び組み合わせ選択処理(図11)を実行しない場合(丸のマーカのグラフ)よりも、実行した場合(三角のマーカのグラフと四角のマーカのグラフ)の方が、ビット誤り率が低いことが示されている。
【0088】
図13及び図14に示されるシミュレーション結果から、過負荷MIMOにおいて、N台の端末2からの信号を、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号に分類する組合わせの全パターンについてSIRを求め、SIRが最も大きい組み合わせをもちいて希望信号を分離させることによって、エラー率を低減させることができる。
【0089】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態によれば、受信アンテナ数よりも同時に発信する端末の数が多い過負荷MIMOの状況において、SIRが最も高くなる、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせを決定することができる。これによって、希望信号のエラー率を低減させることができ、過負荷MIMOの状況下でも通信品質の劣化を抑制することができる。
【0090】
また、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせを決定する際に用いられる各パターンのSIRは、MMSEウェイトを受信信号のチャネル行列に乗算した演算結果に基づいて求められる。これによって、実際に得られる出力に基づいて当該組み合わせを決定することができ、よりエラー率を低減させることができる。
【0091】
また、第1実施形態では、受信電力が十分に小さい信号は、希望信号、キャンセルされる干渉信号、及び、キャンセルされない干渉信号の組み合わせを決定する対象から除外されるので、当該組み合わせのパターン数を削減することができ、各パターンのSIRを算出する処理の負荷を軽減することができる。
【0092】
本実施の形態の通信システムによれば、過負荷MIMOにおいて、SICにより、個々の端末2からの信号を分離することにより、パケット誤り率を抑制し、効率のよい無線通信を実現できる。また、本実施の形態の通信システムによれば、過負荷MIMOにおいて、SICとともに、送信ダイバーシチを併用することにより、さらに、パケット誤り率を抑制できる。
【0093】
したがって、IoTにおいて、CGが実施され、多数の端末2が基地局の受信のアンテナ数を超えて基地局1と通信する場合、基地局1がSICを実施することで、パケット誤り率を抑制し、効率的で信頼性のある無線通信が実現される。また、基地局1がSICとともに、送信ダイバーシチを併用することにより、さらに、効率的で信頼性のある無線通信が実現される。すなわち、本実施の形態では、基地局1が端末2にCGのリソースを割り当て、CGを許容したときに、SICの処理を実行することで、CGでの通信の信頼性の向上、及びパケット誤り率の抑制による通信の効率化が見込まれる。
【0094】
また、本実施の形態では、誤り訂正後のデータを基に、干渉レプリカを生成するため、過負荷MIMO状態のため信号対干渉ノイズ比SINRが低い状態であっても、基地局1は精度よく干渉レプリカを生成し、フィードバックできる。
【0095】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
【0096】
第1実施形態では、端末2が送信側であり、基地局1が受信側であることを想定して説明されたが、基地局1が送信側であり、端末2が受信側であってもよい。基地局1が送信側であり、端末2が受信側である場合には、端末2が第1実施形態において説明された基地局1と同様の構成を有し、同様の処理を行う。したがって、基地局1は、「受信側装置」の一例でもあり、「送信側装置」の一例でもある。端末2は、「送信側装置」の一例でもあり、「受信側装置」の一例でもある。
【0097】
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0098】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0099】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0100】
1 基地局
2 端末
11 プロセッサ
12 メモリ
13 内部インターフェース
14 ネットワークインターフェース
15 無線処理装置
101 レプリカ除去部
102 受信ダイバーシチ及び等化処理部
103 復調部
104 復号部
105 レプリカ生成部
106 符号化部
107 変調部
108 送信ダイバーシチ処理部
109 チャネル処理部
ANT アンテナ
図1
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