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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】医療具の搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20250107BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020179964
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070734
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白川 京典
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-297502(JP,A)
【文献】米国特許第05921952(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0235790(US,A1)
【文献】国際公開第2003/092782(WO,A1)
【文献】特表2010-506605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状をなすアウターシースと、
該アウターシース内にスライド可能に挿入されるインナーシースと、
筒状をなし、前記アウターシースの先端から挿出されたインナーシースの外周に配置され、基端が前記アウターシースの先端に当接可能とされ体内に留置される医療具と、
基端部が前記インナーシースに固定された線状部材とを有しており、
前記医療具は、該医療具に形成された第1孔を構成する切欠きを介して上方に切起こして形成され、体内に係止する係止部を有しており、
前記線状部材は、先端部が、前記係止部に係脱可能に係合するか、又は、前記第1孔を通して、前記インナーシースに切欠きを介して上方に切起こして形成された係合部に係脱可能に係合することを特徴とする医療具の搬送装置。
【請求項2】
筒状をなすアウターシースと、
該アウターシース内にスライド可能に挿入されるインナーシースと、
筒状をなし、前記アウターシースの先端から挿出されたインナーシースの外周に配置され、基端が前記アウターシースの先端に当接可能とされ体内に留置される医療具と、
基端部が前記インナーシースに固定された線状部材とを有しており、
前記医療具は、該医療具に形成された第1孔を構成する切欠きを介して上方に切起こして形成され、体内に係止する係止部を有しており、
前記線状部材は、先端部が、前記係止部に係脱可能に係合するか、又は、前記第1孔を通して、前記インナーシースに係脱可能に係合し、
前記アウターシースの周壁に、前記線状部材を通過させる第2孔が形成されており、
前記線状部材の、前記基端部から延びる延出部分は、前記アウターシースの内側から、前記第2孔のみを通過して、前記アウターシースの外側に挿出され、
前記線状部材の先端部は、前記第1孔を通して前記医療具の内側に挿入され、前記インナーシースに係脱可能に係合し、
前記線状部材の先端部は、前記インナーシースの外周を囲むループをなしており、このループに前記インナーシースが挿入されて係脱可能に係合するようになっており、
前記線状部材の、前記延出部分には、前記第2孔の内側周縁部に係合可能なストッパ部と、該ストッパ部及び前記基端部の間に配置され、前記インナーシースを前記ループの内側から引き抜き可能に延びる弛み部とが設けられていることを特徴とする医療具の搬送装置。
【請求項3】
前記医療具には、前記第1孔が複数形成されており、
前記アウターシースの周壁には、前記線状部材を通過させる第2孔が複数形成されており、
前記線状部材には、前記第1孔及び前記第2孔を通過して、前記アウターシースの先端及び前記医療具の基端に亘って延びる架設部分が設けられており、
該架設部分が、一つの前記線状部材によって前記アウターシース及び前記医療具の周方向に連続して複数配置されている請求項1又は2記載の医療具の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、管状器官等の目的位置にステント等の医療具を留置するための、医療具の搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、胆管、尿管、気管、血管等の管状器官の狭窄部や閉塞部に、ステント等の医療具を留置して、当該部分を拡張して胆汁や血液等を流れやすくする等といった、治療が行われている。医療具を体内の所望箇所に留置する際には、例えば、アウターシースと、該アウターシース内に配置されるインナーシースとを備えた、デリバリー装置が用いられることがあるが、体内における医療具の位置を修正したい場合がある。
【0003】
上記のように、医療具を位置修正可能にしたものとして、例えば、下記特許文献1には、プッシュカテーテルと、該プッシュカテーテル内に挿入されるガイドカテーテルと、プッシュカテーテル先端側に配置されるチューブステントとを有する、デリバリーシステムが記載されている。チューブステントの基端側からは、切欠き孔を介して、斜め上方に向けてフラップが形成されている。また、プッシュカテーテルの先端側には孔が形成されており、この孔に、環状の保持部材が挿通されている。
【0004】
そして、保持部材の一端側のループを、フラップ形成用の切欠き孔からチューブステント内に配置し、同ループにガイドカテーテルの遠位端を挿入することで、プッシュカテーテル先端にチューブステントが位置決め保持される。この状態で、プッシュカテーテル及びガイドカテーテルを操作者の手元側に引っ張ることで、切欠き孔周縁に係止した保持部材を介して、チューブステントを手元側に引き寄せて位置修正可能となっている。一方、ガイドカテーテルを手元側に引っ張って、その遠位端を保持部材のループから引き抜くことで、保持部材とガイドカテーテルとの係合が解除され、その後、ガイドカテーテル及びプッシュカテーテルを体内から引き抜くことで、体内にチューブステントを留置可能となっている。
【0005】
また、下記特許文献2には、ステントと、プッシャチューブと、該プッシャチューブ内に挿入されるガイドカテーテルと、基端側がプッシャチューブに係止され、先端側がステント側へ伸び、ステントとプッシャチューブとを連結する糸状体と、糸状体の先端部と係止され、ステントとプッシャチューブとの連結状態を維持し、かつ、ステントとプッシャチューブとの連結が解けたときに、糸状体の先端側をプッシャチューブの基端側へ引き込む、略J字状をなしたスタイレットとを備えた、ステントデリバリーシステムが記載されている。
【0006】
このシステムでは、プッシャチューブを手元側に引っ張ることで、糸状体を介してステントが手元側に引き寄せられて位置修正がなされる。一方、スタイレットで糸状体を手元側に引っ張ることで、糸状体とステントとの係止が解除され、その後、プッシャチューブやスタイレットを体内から引抜くことで、体内にステントを留置可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US6264624B1
【文献】特開2009-297502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1のデリバリーシステムでは、プッシュカテーテルの孔に保持部材が挿通されており、この保持部材の一端側のループにガイドカテーテルが挿通されているため、体内にチューブステントを留置する際には、体内からガイドカテーテル及びプッシュカテーテルを同時に引き抜く必要がある。そのため、プッシュカテーテルによって、チューブステントを保持することができないため、一旦位置決めされたチューブステントが、保持部材が切欠き孔周縁等に引っ掛かることによって、位置ずれするおそれがあった。また、プッシュカテーテルの孔に、環状の保持部材が挿通され装着されたままであるので、プッシュカテーテルを体内から引き抜く際に、例えば、内視鏡のシース挿出口や、体内に留置された他の医療具等に、保持部材が引っ掛かるおそれがあった。
【0009】
また、特許文献2のステントデリバリーシステムは、糸状体を引き込むために、別途スタイレットが必要であるため、部品点数が多く構造が複雑化し、更にスタイレットを引き込む操作が必要であるため、ステントの位置修正作業が容易とは言いがたい。
【0010】
したがって、本発明の目的は、体内において、医療具を位置ずれしにくくして、精度よく位置修正することができると共に、医療具以外の部材を体内から引き抜く際に、他部材に引っ掛かりにくくでき、更に構造を簡素化して医療具の位置修正作業も簡単となる、医療具の搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、筒状をなすアウターシースと、該アウターシース内にスライド可能に挿入されるインナーシースと、筒状をなし、前記アウターシースの先端から挿出されたインナーシースの外周に配置され、基端が前記アウターシースの先端に当接可能とされた医療具と、基端部が前記インナーシースに固定され、先端部が、前記医療具に係脱可能に係合するか、又は、前記医療具に形成された第1孔を通して、前記インナーシースに係脱可能に係合する線状部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、線状部材の先端部が、医療具に係脱可能に係合するか、又は、医療具に形成された第1孔を通して、インナーシースに係脱可能に係合するので、アウターシース及びインナーシースを操作者の手元側に引っ張ると、線状部材を介して、医療具を手元側に引き寄せることができ、体内における医療具の位置を修正することができる。
【0013】
また、体内の所望位置に医療具を位置決めした後、体内に医療具を留置する際には、アウターシースを固定してインナーシースを手元側に引っ張る。すると、線状部材の先端部が医療具から外れるか又はインナーシースから外れるので、体内に医療具を留置することができる。この際、アウターシースの先端に医療具の基端が当接するので、アウターシースに対して医療具を位置ずれしにくくすることができ、体内の所望箇所に、医療具を精度よく位置決めした状態で配置することができる。更に、線状部材がアウターシースの内側に収容されるので、医療具を除く搬送装置全体を体内から引き抜くときに、線状部材が他部材(例えば、内視鏡のシース挿出口や、体内に留置されたステントやバルーン等)に引っ掛かりにくくすることができる。
【0014】
また、アウターシース及びインナーシースを操作することで、線状部材を介して医療具を手元側に引っ張り、位置修正が可能な構造であるため、特許文献2(特開2009-297502号公報)のスタイレットのような別部材が不要となり、搬送装置の簡素化を図ることができ、スタイレット操作も不要となり、医療具の位置修正作業が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る医療具の搬送装置の、第1実施形態を示す斜視図である。
図2】同医療具の搬送装置の断面図である。
図3】同医療具の搬送装置の要部拡大斜視図である。
図4】同医療具の搬送装置の使用状態を示しており、(A)は線状部材とインナーシースとの係合状態が解除された状態の断面図、(B)は線状部材をアウターシース内に収容した状態の断面図である。
図5】同搬送装置を用いて、医療具を体内に留置した場合の、概略説明図である。
図6】本発明に係る医療具の搬送装置の、第2実施形態を示しており、その断面図である。
図7】同医療具の搬送装置の使用状態を示しており、(A)は線状部材とインナーシースとの係合状態が解除された状態の断面図、(B)は線状部材をアウターシース内に収容した状態の断面図である。
図8】本発明に係る医療具の搬送装置の、第3実施形態を示しており、(A)その断面図、(B)は(A)のA-A矢視線における断面図である。
図9】同医療具の搬送装置の効果を示す説明図である。
図10】本発明に係る医療具の搬送装置の、第4実施形態を示しており、その断面図である。
図11】本発明に係る医療具の搬送装置の、第5実施形態を示しており、その断面図である。
図12】本発明に係る医療具の搬送装置の、第6実施形態を示しており、その断面図である。
図13】本発明に係る医療具の搬送装置の、第7実施形態を示しており、その断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(医療具の搬送装置の第1実施形態)
以下、図1~5を参照して、本発明に係る医療具の搬送装置の、第1実施形態について説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、この第1実施形態の医療具の搬送装置10(以下、単に「搬送装置10」ともいう)は、筒状をなしたアウターシース20と、このアウターシース20内にスライド可能に挿入されるインナーシース30と、筒状をなしアウターシース20の先端23a側に配置される医療具40と、基端部51がインナーシース30に固定されると共に、医療具40に形成された第1孔47を通して、先端部53がインナーシース30に係脱可能に係合する線状部材50とを有している。
【0018】
なお、以下の説明において、「基端部」又は「基端」とは、医療具の搬送装置を使用する使用者の手元に近い方の端部(近位端部)を意味し、「先端部」又は「先端」とは、上記基端部又は基端とは反対側の端部(遠位端部)を意味する。
【0019】
前記アウターシース20は、一定外径及び一定内径で軸方向に所定長さで延びる、円筒状をなした周壁21を有している。この周壁21の先端部23側には、円形状をなした第2孔25が形成されている。なお、ここでいう孔とは、その内周が連続するように形成されて、切離された部分がない形状を意味する(第2孔25のみらなず、後述する第1孔47も同様の意味である)。また、アウターシース20の先端23aの開口から、インナーシース30が挿出されるようになっている。更に、アウターシース20の先端23aは、医療具40の基端42aに当接可能となっており、医療具40を押し込むことが可能とされている。
【0020】
一方、前記インナーシース30は、アウターシース20と同様に、一定外径及び一定内径で軸方向に所定長さで延びる、円筒状をなした周壁31を有している。この周壁31の外径は、アウターシース20の周壁21の内径よりも小さく形成されており、その結果、インナーシース30がアウターシース20内をスライド可能となっている。なお、このインナーシース30は、アウターシース20の先端23aの開口から挿出されると共に、この挿出された部分の外周に、医療具40が配置されるようになっている。また、インナーシース30の周壁31内には、図示しないガイドワイヤが挿通可能となっている。
【0021】
更に図2に示すように、インナーシース30の周壁31の軸方向所定箇所には、切欠き35aが形成されており、この切欠き35aを介して、周壁31の先端部側(図2の紙面上右側)に向けて斜め上方に延びる、係合部35が切起こされて形成されている。この係合部35には、線状部材50の先端部53のループの内側に挿入されることで、同先端部53に係脱可能に係合するようになっている(図2及び図4参照)。
【0022】
なお、係合部としては、上記のように、斜め上方に切起こして形成された係合部35以外にも、例えば、逆L字状をなしたフック形状をなしていたり、周壁31から軸方向に直交する方向に突設した突起形状をなしていたりしてもよく、線状部材50の先端部53が係脱可能に係合できればよい。ただし、医療具40を手元側に引っ張って位置修正すべく、アウターシース20及びインナーシース30を共に手元側に引っ張ったときに(図2の矢印F2参照)、係合部35から線状部材50の先端部53が外れない形状であることが望ましい。
【0023】
なお、アウターシース20とインナーシース30とを相対移動させる際には、例えば、アウターシース20を把持固定して、インナーシース30を手元側に引いたり、手元側とは反対側に押したり、或いは、インナーシース30を把持固定して、アウターシース20を手元側に引いたり、手元側とは反対側に押したり、或いは、アウターシース20とインナーシース30とを相互に押し引きすることで行うことができる。
【0024】
また、上記のようなアウターシース20やインナーシース30は、例えば、ポリエチレン(PE)、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン(POM)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン樹脂、ナイロンエラストマー、ポリエステル、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド等から形成されている。なお、アウターシースやインナーシースの形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。また、アウターシースやインナーシースの所定箇所に、X線不透過性のマーカーを配置してもよい。
【0025】
前記医療具40は、この第1実施形態の場合、合成樹脂製のいわゆるチューブステントとなっている。この医療具40は、一定外径及び一定内径で軸方向に所定長さで延びる、円筒状をなした周壁41を有している。この周壁41の内側に、インナーシース30の、アウターシース先端から挿出された部分(以下、単に「アウターシース挿出部分」ともいう)が挿入されることで、医療具40は、基端42aをアウターシース20の先端23aに向き合わせた状態で、インナーシース30の、アウターシース挿出部分の外周に配置されるようになっている(図2参照)。
【0026】
また、周壁41の外径及び内径は、アウターシース20の外径及び内径に適合している。そのため、上記のように医療具40を、インナーシース30の、アウターシース挿出部分の外周に配置したときに、周壁41の基端42aは、アウターシース20の先端23aに当接可能となっている。したがって、図2の矢印F1に示すように、アウターシース20及びインナーシース30を共に押し込むと、アウターシース20の先端23aが、医療具40の基端42aを押すので、医療具40を、手元側とは反対の押し込み方向側に位置修正可能となっている。なお、周壁41は、その基端42aが、アウターシース20の先端23aに当接可能であればよい。
【0027】
更に図1に示すように、周壁41の基端部42側には、略V状をなした切欠き45aを介して、略三角板状のフラップ形状をなした係止部45が、先端部43側に向かって斜め上方に切起こして形成されている。同様に、周壁41の先端部43側には、略V字をなした切欠き46aを介して、略三角板状のフラップ形状をなした係止部46が、基端部42側に向かって斜め上方に切起こして形成されている。また、周壁41の基端部42側には、係止部45を切起こし状に形成したことで、切欠き45aの内側に、略三角孔状をなした第1孔47が形成されるようになっている(図3参照)。この第1孔47の外側から、線状部材50が挿入されるようになっている(図2参照)。なお、係止部45,46は、管状器官や体腔等の壁面(ここでは乳頭2の壁面)に係止する部分となる(図5参照)。
【0028】
また、医療具としては、上記のようなチューブステント以外にも、例えば、線材を編み及び/又は組んで筒状に形成してなるステントや、金属筒をレーザーカット等でメッシュ状に形成してなるステントとしてもよく、線状部材に係脱可能か、又は、線状部材を通過可能な第1孔を有するものであれば、特に限定はされない。
【0029】
次に、線状部材50について説明する。
【0030】
この第1実施形態における線状部材50は環状をなしており、その基端部51が、接着剤や、接着テープ、ロウ材等からなる固定部52を介して、インナーシース30の周壁31の所定箇所に固定されている(図2参照)。なお、線状部材50の先端部53は、輪っか状(連続して切れ目のない形状)をなしたループとなっている。
【0031】
そして、線状部材50の先端部53を、アウターシース20の内側から、アウターシース20に形成した第2孔25のみを通過させて、アウターシース20の外側に挿出することで、先端部53に追随して、線状部材50の延出部分55が、アウターシース20の内側から、アウターシース20の第2孔25のみを通過して、アウターシース20の外側に挿出されるようになっている(図2参照)。
【0032】
更に、線状部材50の先端部53を、医療具40に形成された第1孔47の外側から挿入することで、先端部53に追随して延出部分55が、医療具40の第1孔47の外側から挿入され、その結果、医療具40の内側に、線状部材50の先端部53及び延出部分55が配置されるようになっている。そして、線状部材50の先端部53のループの内側に、インナーシース30に形成した斜め上方に延びる係合部35を挿入することで、線状部材50の先端部53が係合部35に係脱可能に係合するようになっている(図2参照)。また、線状部材50の先端部53が係合部35に係合した状態では、図3に示すように、線状部材50の延出部分55は、第1孔47の、傾斜した一方の内側縁部47aと、係止部45の、傾斜した一方の外側縁部45bとの間に入り込むように配置されている。
【0033】
そして、医療具40を手元側に引き寄せて位置修正すべく、アウターシース20及びインナーシース30を共に手元側に引っ張ったときに(図2の矢印F2参照)、第1孔47の内側縁部47aと係止部45の外側縁部45bとの間に入り込んだ、線状部材50の延出部分55が両側縁部47a,45bに係合するので、該延出部55を介して医療具40を手元側に引っ張ることが可能となっている。なお、アウターシース20及びインナーシース30を共に手元側に引っ張る際には、線状部材50の先端部53からの係合部35の抜け外れが規制されて、係合部35と線状部材50との係合状態が維持されるため、上記のような、線状部材50の延出部55を介しての、医療具40の手元側への引っ張り動作が可能となっている。
【0034】
また、アウターシース20を把持固定して、インナーシース30のみを手元側に引っ張ると(図2(A)の矢印F2参照)、図4(A)に示すように、係合部35が、線状部材50の先端部53のループの内側から引き抜かれて、線状部材50の先端部53とインナーシース30の係合部35との係合状態が解除される。
【0035】
その後、アウターシース20の固定状態を維持しつつ、インナーシース30のみを手元側に引っ張ると(図4(A)の矢印F2参照)、線状部材50の延出部分55及び先端部53が、医療具40の第1孔47から抜き出されて、アウターシース20の第2孔25から、アウターシース20の内側に引き込まれて収容される(図4(B)参照)。
【0036】
なお、この実施形態の線状部材50は、その先端部53が、医療具40の第1孔47を通して、インナーシース30の係合部35に係脱可能に係合するようになっているが、線状部材としては、その先端部が医療具40に直接係脱可能に係合するようになっていてもよい(これについては図11に示す第5実施形態で説明する)。また、この実施形態の線状部材50は、アウターシース20の第2孔25を通して、アウターシース外側に挿出したが、切欠きを介して挿出させたり(これについては図11に示す第5実施形態で説明する)、アウターシース先端開口から挿出させたり(これについては図12,13に示す第6,第7実施形態で説明する)してもよく、線状部材の、アウターシースからの引き出し構造は特に限定されない。
【0037】
(作用効果)
次に、上記構成からなる搬送装置10の使用方法の一例について、図2図4、及び図5等を参照して説明する。
【0038】
図5に示すように、十二指腸1の下部には、乳頭2が設けられており、この乳頭2から胆管3や膵管4が分岐して伸びている。ここでは、乳頭2を通して、胆管3の所望位置に、医療具40を留置する際の手順について説明する。なお、この搬送装置10は、胆管以外にも、例えば、膵管、尿管、気管等の管状器官や、その他の体腔等の、人体の体内に、医療具40を留置する際にも用いることができる。
【0039】
まず、アウターシース20の内側にインナーシース30を挿入して、インナーシース30のアウターシース挿出部分の外周に、医療具40を配置すると共に、線状部材50の先端部53を、アウターシース内側から第2孔25を通過させて、アウターシース外側に挿出させることで、延出部分55を、第2孔25を通過させてアウターシース外側に引き出す。その後、線状部材50の先端部53を、医療具40の第1孔47の外側から挿入することで、先端部53及び延出部分55を医療具40の内側に配置した後、先端部53のループの内側に、インナーシース30の係合部35を挿入することで、線状部材50の先端部53が係合部35に係脱可能に係合する。その結果、アウターシース20に基端部51が固定された線状部材50の先端部53が、係合部35を介してインナーシース30に係合すると共に(図2参照)、線状部材50の延出部分55が、第1孔47の内側縁部47aと係止部45の外側縁部45bとの間に係合する(図3参照)。その結果、線状部材50を介して、アウターシース20とインナーシース30と医療具40とが相互に係合した状態で、アウターシース先端側に医療具40が位置決め保持される。
【0040】
その後、インナーシース30の内側に図示しないガイドワイヤを挿入すると共に、搬送装置10全体を、内視鏡5の所定ルーメン内に挿入して、周知の方法によって、内視鏡5を口腔から胃等を通して十二指腸1まで移動させ、内視鏡5の先端開口からガイドワイヤを挿出し、X線透視下で位置を確認しながら、乳頭2を通過して胆管3に挿入する。
【0041】
その後、ガイドワイヤに沿って、アウターシース20及びインナーシース30を共に押し込んでいく。この際、アウターシース20の先端23aによって、医療具40の基端42aが押されるので、医療具40もアウターシース20と共に押し込まれる。
【0042】
そして、医療具40を体内の所望位置に留置した後、図示しないガイドワイヤ、アウターシース20、及びインナーシース30を体内から引き抜くことで、医療具40を体内の所望位置に留置される。この際、体内における医療具40の位置を修正したい場合がある。
【0043】
このとき、管状器官の奥側へと医療具40を位置修正したい場合には、上記のように、アウターシース20を押すことで、その先端23aが医療具40の基端42aを押すので、医療具40の位置を修正することができる。
【0044】
一方、医療具40を手元側(管状器官の奥側とは反対方向側)に引き寄せて位置修正したい場合には、図2の矢印F2に示すように、アウターシース20及びインナーシース30を共に手元側に引っ張る。すると、線状部材50の先端部53からの係合部35の抜け外れが規制され、係合部35と線状部材50との係合が維持された状態で、第1孔47の内側縁部47aと係止部45の外側縁部45bとの間に入り込んだ、線状部材50の延出部分55が、両側縁部47a,45bに係合して手元側に引き込むので、線状部材50を介して医療具40を手元側に引き寄せることができ、体内における医療具40の位置を修正することができる。
【0045】
また、アウターシース20及びインナーシース30が手元側に引っ張られた際には、上記のように、アウターシース20の先端23aに、医療具40の基端42aが当接するので、アウターシース20に対して医療具40を位置ずれしにくくすることができ、体内の所望箇所に、医療具40を精度よく位置決めした状態で配置することができる。
【0046】
上記のように、体内の所望位置に医療具40を位置決め配置した後、アウターシース20を把持固定して、インナーシース30のみを手元側に引っ張る(図4(A)の矢印F2参照)。すると、係合部35が、線状部材50の先端部53のループの内側から引き抜かれて、線状部材50の先端部53とインナーシース30の係合部35との係合状態が解除される(図4(A)参照)。
【0047】
その後、アウターシース20を把持固定した状態を維持して、更にインナーシース30のみを手元側に引っ張る(図4(B)の矢印F2参照)。すると、線状部材50の延出部分55及び先端部53が、医療具40の第1孔47から抜き出されると共に、アウターシース20の第2孔25から、アウターシース20の内側に引き込まれて収容される(図4(B参照))。この状態で、アウターシース20及びインナーシース30を体内から引き抜くことで、医療具40を体内の所望位置に留置することができる。
【0048】
なお、この第1実施形態では、医療具40の係止部45を乳頭2に位置するように、医療具40を胆管3内に留置することで、同係止部45が乳頭2に係止するので、胆管3の奥側へ医療具40が移動してしまうことが抑制される(図5参照)。
【0049】
そして、上記のように、体内の所望位置に医療具40を位置決め配置した後、内視鏡5の所定ルーメンを通して、ガイドワイヤ、アウターシース20、及びインナーシース30を体内から引き抜くことで、医療具40を体内の所望位置に留置することができる。
【0050】
このとき、上記のように、アウターシース20の先端23aに、医療具40の基端42aが当接するので、アウターシース20に対して医療具40を位置ずれしにくくすることができ、体内の所望箇所に、医療具40を精度よく位置決めした状態で配置することができる。なお、仮に、医療具40の基端42aがアウターシース20の先端23aに当接しないと、線状部材50が医療具40に引っ掛かった際に、線状部材50によって医療具40が手元側に引っ張られて、医療具40の位置ずれが生じることになる。また、線状部材50がアウターシース20の内側に収容されているので、線状部材50が他部材(この実施形態では、主に内視鏡5のシース挿出口であるが、体内に留置されたステントやバルーン等も挙げられる)に引っ掛かりにくくすることができる。その結果、医療具40を除く搬送装置10全体を体内からスムーズに引き抜くことができ、医療具40の留置作業性を向上させることができる。
【0051】
更に、この搬送装置10では、アウターシース20及びインナーシース30を操作することで、線状部材50を介して医療具40を手元側に引っ張り、位置修正が可能な構造であるため、上記特許文献2(特開2009-297502号公報)のスタイレットのような別部材が不要となり、搬送装置10の簡素化を図ることができると共に、スタイレット操作も不要となり、医療具40の位置修正作業が簡単となる。
【0052】
また、この第1実施形態においては、アウターシース20の周壁21に、線状部材50を通過させる第2孔25が形成されており、線状部材50の延出部分55は、アウターシース20の内側から、第2孔25のみを通過して、アウターシース20の外側に挿出されるように構成されている(図2参照)。
【0053】
上記態様によれば、線状部材50の延出部分55は、アウターシース20の内側から、第2孔25のみを通過して、アウターシース20の外側に挿出されるので、医療具40を手元側に引き寄せて位置修正すべく、アウターシース20及びインナーシース30を共に手元側に引っ張ったときに、アウターシース20の先端23aに医療具40の基端42aをしっかりと当接させて、アウターシース20に対して医療具40を、より位置ずれしにくくさせることができる。なお、線状部材50を、アウターシース20の先端23aと、医療具40の基端42aとの間から挿出させた場合には、アウターシース20及びインナーシース30の手元側への引っ張り時に、アウターシース20の先端23aと医療具40の基端42aとの間に、線状部材50が挟まれて、線状部材50を引き込みにくくなるおそれがある。
【0054】
また、線状部材50の延出部分55を、アウターシース内側から外側に挿出させる部分は、アウターシース20の周壁21に、内周が連続するように形成された孔であるため、アウターシース20及びインナーシース30を手元側に引っ張る際に、アウターシース20の先端23aの周方向全域に、医療具40の基端42aの周方向全域を隙間なく当接させることができ、アウターシース20に対する医療具40の位置ずれ防止を、より確実に図ることができる。
【0055】
また、この第1実施形態においては、線状部材50の先端部53は、第1孔47を通して医療具40の内側に挿入され、インナーシース30に係脱可能に係合するように構成されている。特に、この第1実施形態におけるインナーシース30は、線状部材50の先端部53が係脱する係合部35を有しており、この係合部35に線状部材50の先端部53が係脱するように構成されている(図2及び図4参照)。そのため、アウターシース20を固定してインナーシース30を手元側に引っ張るだけの簡単な作業で、線状部材50の先端部53とインナーシース30(ここでは係合部35)との係合を容易に解除することでき(図4(A)参照)、体内の所望箇所に、医療具40を迅速に留置することができる。
【0056】
また、線状部材50は、その延出部分55が、第2孔25からアウターシース20の外側に挿出されると共に、先端部53が、第1孔47から医療具40の内側に挿入されているので、第1孔47内に線状部材50の延出部分55が位置することになる。そのため、アウターシース20及びインナーシース30の手元側への引っ張り時に、第1孔47内に位置する線状部材50の延出部55を介して、医療具40を手元側へと移動させようとする力が作用する(上述したように、第1孔47の内側縁部47aと係止部45の外側縁部45bとの間に入り込んだ、線状部材50の延出部分55が両側縁部47a,45bに係合するため)。このとき、医療具40は、その基端42aの周方向全域がアウターシース20の先端23aの周方向全域に隙間なく当接し、アウターシース20に対して医療具40が、その傾きが抑制されつつ安定した姿勢で位置決め保持されているため、上記のよう医療具40が手元側に移動しても、その傾きや倒れ込みが抑制されて、アウターシース20と医療具40との当接部分において、インナーシース30がキンクすることを抑制することができる。また、線状部材50が第2孔25から挿出され且つ第1孔47から挿入されることで、アウターシース20の先端23aと医療具40の基端42aとの間を、線状部材50が跨ることになるので、インナーシース30をよりキンクしづらくすることができる。
【0057】
(医療具の搬送装置の第2実施形態)
図6及び図7には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第2実施形態が示されている。なお、第1実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0058】
この第2実施形態の医療具の搬送装置10A(以下、単に「搬送装置10A」ともいう)は、主として、インナーシース30に対する線状部材50Aの係脱構造が、第1実施形態と異なっている。
【0059】
この第2実施形態におけるインナーシース30Aは、第1実施形態のインナーシース30とは異なり、係合部35のない構造なっている。また、線状部材50Aは、その先端部53が、インナーシース30Aの外周を囲むループをなしており、このループにインナーシース30Aが挿入されて係脱可能に係合するようになっている(図6参照)。また、線状部材50Aの延出部分55には、アウターシース20の第2孔25の内側周縁部に係合可能なストッパ部57と、このストッパ部57及び前記基端部51の間に配置され、インナーシース30を先端部53のループの内側から引き抜き可能なように延びる弛み部59とが設けられている。
【0060】
この第2実施形態におけるストッパ部57は、第2孔25の内径よりも大きな形状をなしており、同第2孔25の内側周縁部に係合して、第2孔25からアウターシース外側へ抜け出ることを規制する。また、この第2実施形態の弛み部59は、延出部分55を、例えば、谷折り及び山折りを繰り返して屈曲させた蛇腹状をなしており、アウターシース20を把持固定した状態でインナーシース30Aを手元側に引っ張ることで、延びることが可能となっている(図7(A)参照)。
【0061】
そして、この第2実施形態においては、線状部材50Aの先端部53が、インナーシース30Aの外周を囲むループをなしているので、線状部材50Aの先端部53に、インナーシース30Aを確実に係合させることができる(図6参照)。なお、医療具40を手元側に引き寄せて位置修正すべく、アウターシース20及びインナーシース30Aを共に手元側に引っ張っると(図6の矢印F2参照)、前記第1実施形態と同様に、第1孔47の内側縁部47aと係止部45の外側縁部45bとの間に入り込んだ、線状部材50の延出部分55が、両側縁部47a,45bに係合して手元側に引き込むので、医療具40を手元側に引き寄せて位置修正することができる。
【0062】
また、アウターシース20を把持固定して、インナーシース30Aのみを手元側に引っ張ると(図6の矢印F2参照)、図7(A)に示すように、弛み部59が引き延ばされ、インナーシース30Aの先端部33が、線状部材50Aの先端部53のループの内側から引き抜かれて、線状部材50Aとインナーシース30Aとの係合を解除することができる。
【0063】
更に、線状部材50Aの延出部分55に、ストッパ部57と弛み部59を設けたことで、ストッパ部57が第2孔25の内側周縁部に係合して、弛み部59がインナーシース30の外側に抜け出ることを規制して、弛み部59をインナーシース30の内側に配置された状態を維持することができると共に、弛み部59により、線状部材50Aの先端部53のループ内側からインナーシース30Aの先端部33が引き抜かれるまで、インナーシース30をアウターシース20に対して相対的に手元側に引っ張ることができ(図7(A)参照)、線状部材50Aとインナーシース30Aとの係合解除が容易となる。
【0064】
その後、アウターシース20の固定状態を維持しつつ、インナーシース30Aのみを手元側に引っ張ると(図7(A)の矢印F2参照)、延出部分55及び先端部53が、医療具40の第1孔47から抜き出されて、アウターシース20の第2孔25から、アウターシース20の内側に引き込まれて収容される(図7(B)参照)。この状態で、アウターシース20及びインナーシース30Aを体内から引き抜くことで、医療具40を体内の所望位置に留置することができる。
【0065】
(医療具の搬送装置の第3実施形態)
図8及び図9には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0066】
前記第1,第2実施形態は、アウターシース20の先端部23と医療具40の基端部42との間において、周方向に1箇所のみ、線状部材50が架設されている(図2及び図6参照)。これに対して、この第3実施形態の医療具の搬送装置10B(以下、単に「搬送装置10B」ともいう)は、線状部材50の架設部分が2箇所となっている。
【0067】
図8に示すように、アウターシース20Bの周壁21の先端部23側であって、第2孔25とは周方向反対側の位置に、もう一つの第2孔27が形成されている。また、医療具40Bの、周壁41の基端部42側であって、第1孔47の周方向に対向する位置に、もう一つの第1孔49が形成されている。更に、インナーシース30Bの係合部35は、アウターシース20Bの第2孔27や医療具40Bの第1孔49に向けて配置され、かつ、第2孔27に近接する位置に配置されている。
【0068】
そして、線状部材50の延出部分55は、先端部53に追随して、アウターシース20Bの内側から第2孔25を通過して、アウターシース20Bの外側に挿出された後、第1孔47の外側から挿入されて、医療具40Bの内側に配置される。更に線状部材50の延出部分55は、図8(B)に示すように、インナーシース30の外周を通り、第1孔49を通過して、医療具40Bの外側に挿出される。その後、線状部材50の先端部53が、アウターシース20Bの内側に配置され、先端部53のループの内側に係合部35が挿入されて係脱可能に係合する。
【0069】
その結果、線状部材50の延出部分55には、第1孔47及び第2孔25を通過して、アウターシース20Bの先端部23及び医療具40Bの基端部42に亘って延びる、一つの架設部分K1が設けられると共に、第1孔49及び第2孔27を通過して、アウターシース20Bの先端部23及び医療具40Bの基端部42に亘って延びる、もう一つの架設部分K2が設けられる。すなわち、アウターシース20B及び医療具40Bの周方向に、2つの架設部分K1,K2が配置されるようになっている。なお、架設部分は、アウターシース及び医療具の周方向に、3つ以上配置するようにしてもよい。
【0070】
そして、この第3実施形態においては、線状部材50の延出部分55には、第1孔及び第2孔を通過して、アウターシース20Bの先端部23及び医療具40Bの基端部42に亘って延びる架設部分が、アウターシース20B及び医療具40Bの周方向に複数配置されているので(ここでは2つの架設部分K1,K2が周方向に配置されている)、図9に示すように、アウターシース20Bの先端23aから医療具40Bの基端42aを離反させにくくして、インナーシース30をキンクさせにくくすることができる。
【0071】
(医療具の搬送装置の第4実施形態)
図10には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0072】
この第4実施形態の医療具の搬送装置10Cにおいては、アウターシース20B及び医療具40Bが前記第3実施形態と同様の形状をなしており、インナーシース30A及び線状部材50Aが前記第2実施形態と同様の形状をなしている。
【0073】
また、線状部材50Aの延出部分55は、前記第3実施形態と同様に、アウターシース20Bの第2孔25、医療具40Bの第1孔47、第1孔49、アウターシース20Bの第2孔27を順次通過して、アウターシース20Bの内側に配置され、先端部53のループの内側にインナーシース30Aが挿入されて係脱可能に係合するようになっている。更に、線状部材50Aの延出部分55には、第1孔47及び第2孔25を通過して、アウターシース20Bの先端部23及び医療具40Bの基端部42に亘って延びる、一つの架設部分K1と、第1孔49及び第2孔27を通過して、アウターシース20Bの先端部23及び医療具40Bの基端部42に亘って延びる、もう一つの架設部分K2とが設けられる。この第4実施形態では、前記第1実施形態の効果が発揮されると共に、前記2実施形態及び前記第4実施形態の効果も併せて発揮される。
【0074】
(医療具の搬送装置の第5実施形態)
図11には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0075】
この第5実施形態の医療具の搬送装置10Dにおいては、アウターシース20Dの先端部23に、先端23a側が開口した切欠き29が形成されている。また、線状部材50の延出部分55は、アウターシース20Dの内側から切欠き29を通過して、アウターシース20Dの外側に挿出された後、先端部53のループの内側に、医療具40の係止部45が挿入されて係脱可能に係合するようになっている。すなわち、この第5実施形態では、線状部材50Aの先端部53が、医療具40に直接係脱可能に係合するようになっている。この第5実施形態でも、前記第1実施形態の効果が発揮される。
【0076】
(医療具の搬送装置の第6実施形態)
図12には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第6実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0077】
この第6実施形態の医療具の搬送装置10Eを構成するアウターシース20Eは、その先端部23に、孔や切欠きのない形状となっている。また、医療具40Eの周壁41の基端部42には、第1孔47に対して、医療具40Eの先端側に向けて所定間隔を空けて、挿通孔48が形成されている。
【0078】
線状部材50は、先端部53に追随して延出部分55が、アウターシース20Eの先端23aの開口から、アウターシース20Eの外側に挿出されて、医療具40Eの内側に挿入される。更に延出部分55が、先端部53に追随して第1孔47から医療具40Eの外側に挿出された後、先端部53が挿通孔48の外側から挿入されて、医療具40Eの内側に配置される。そして、この先端部53のループの内側に、医療具40Eの係合部35が挿入されて係脱可能に係合するようになっている。この第6実施形態でも、前記第1実施形態の効果が発揮される。
【0079】
(医療具の搬送装置の第7実施形態)
図13には、本発明に係る医療具の搬送装置の、第7実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0080】
この第7実施形態の医療具の搬送装置10Fを構成する医療具40Fは、その周壁41の基端部42に、切欠き44aを介して、係止部44が、先端部43側に向かって斜め内方に延設されている。
【0081】
線状部材50は、先端部53及びそれに追随した延出部分55が、アウターシース20Eの先端23aの開口から、アウターシース20Eの外側に挿出されて、医療具40Fの内側に挿入される。更に先端部53のループの内側に、医療具40Fの係止部44が挿入されて係脱可能に係合するようになっている。この第7実施形態でも、前記第1実施形態の効果が発揮される。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
10,10A,10B,10C,10D,10E 医療具の搬送装置(搬送装置)
20,20B,20D,20E アウターシース
21 周壁
23 先端部
23a 先端
25 第2孔
30,30A インナーシース
31 周壁
35 係合部
40,40B,40E,40F 医療具
41 周壁
42 基端部
42a 基端
43 先端部
44 係止部
45 係止部
46 係止部
47 第1孔
50,50A,50C 線状部材
51 基端部
52 固定部
53 先端部
55 延出部分
57 ストッパ部
59 弛み部
K1 架設部分
K2 架設部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13