(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】全量噴射型エアゾール剤
(51)【国際特許分類】
A01N 25/06 20060101AFI20250107BHJP
A01N 25/24 20060101ALI20250107BHJP
A01N 43/824 20060101ALI20250107BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20250107BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A01N25/06
A01N25/24
A01N43/824 C
A01N53/08 110
A01P7/04
(21)【出願番号】P 2020217619
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019233935
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 夏基
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227369(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159816(WO,A1)
【文献】特開2018-002800(JP,A)
【文献】特開2011-246358(JP,A)
【文献】特開2002-020202(JP,A)
【文献】特開2002-309242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P,B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉状物質及び有効成分を含む原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填されており、
前記有効成分が害虫防除成分であり、前記粉状物質が二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記粉状物質の吸油量が35mL/100g以上であり、
前記エアゾール組成物の1m
3当たりの噴射量が0.001~1g/秒の範囲であることを特徴とする全量噴射型エアゾール剤。
【請求項2】
粉状物質及び有効成分を含む原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填され
ており、前記有効成分が害虫防除成分であり、前記粉状物質が二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記粉状物質の吸油量が35mL/100g以上である全量噴射型エアゾール剤から、前記エアゾール組成物を1m
3当たり0.001~1g/秒の範囲で噴射することを特徴とする全量噴射型エアゾール剤の噴霧処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全量噴射型エアゾール剤に関し、さらに詳しくは、限定された空間にエアゾール剤の内容物のほとんど全量を短時間に噴射して用いる全量噴射型エアゾール剤に関する。
【背景技術】
【0002】
殺虫剤や消臭剤などの有効成分を少量の溶剤に溶解し、その溶液(エアゾール原液)と噴射剤を噴射装置付きの耐圧容器に充填してなるエアゾール剤は、他の剤形の殺虫剤、例えば粉剤、乳剤、油剤、燻煙製品等よりも操作が簡単であり、周囲に汚れを発生させることがない等の利点があるので便利に使用される。
【0003】
このようなエアゾール剤の中でも、部屋等の限定された空間において害虫駆除や消臭芳香を行うために、床に置いてその内容物を短時間に全量噴射して用いる全量噴射型エアゾール剤が開発されており、全量噴射型エアゾール剤は、簡単な操作で有効成分を短時間に、密閉空間中にほぼ均一に処理できるという利点を有している。
【0004】
このような全量噴射型エアゾール剤として、例えば、A)有効成分、B)沸点が200℃以上の高沸点溶剤、C)炭素数2又は3の低級アルコールを含有するエアゾール原液と、噴射剤を含み、B/Cの容量比率が1/10~1/1であり、かつ噴霧粒子の平均粒子径が30μm以下である全量噴射型エアゾール(特許文献1参照)、容器に内容物が充填された全量噴射型エアゾール製品であって、前記内容物が、遷移金属を有する無機系薬剤(A)と、沸点が70~200℃である溶剤(B)と、ジメチルエーテルを含む噴射剤(C)とを含有し、前記噴射剤(C)に対する前記溶剤(B)の質量比(B/C)が0.1~1.0である全量噴射型エアゾール製品(特許文献2参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-226301号公報
【文献】特開2014-227369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の全量噴射型エアゾール剤は、床面と比較すると天井面や壁面への有効成分の付着量が少ない傾向にあった。そのため、天井面や壁面における有効成分の効果を高めるためには、エアゾール原液中の有効成分の配合量を多くする必要があった。
【0007】
そこで、本発明は、部屋等の限定された空間で全量噴射型エアゾール剤を使用する際に、天井面や壁面への有効成分の付着量を向上させることのできる全量噴射型エアゾール剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題について鋭意研究を重ねた結果、粉状物質をエアゾール原液中に含有させるとともに、特定の噴射量で噴霧する全量噴射型エアゾール剤とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下の(1)~(2)を特徴とする。
(1)粉状物質及び有効成分を含む原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填されており、前記エアゾール組成物の1m3当たりの噴射量が0.001~1g/秒の範囲であることを特徴とする全量噴射型エアゾール剤。
(2)粉状物質及び有効成分を含む原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填された全量噴射型エアゾール剤から、前記エアゾール組成物を1m3当たり0.001~1g/秒の範囲で噴射することを特徴とする全量噴射型エアゾール剤の噴霧処理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の全量噴射型エアゾール剤によれば、処理対象空間における処理面への粉状物質の付着性が向上するので、部屋等の密閉空間で全量噴射型エアゾール剤を噴射した際に、粉状物質に保持された有効成分の天井面や壁面への付着量を向上させることができ、前記有効成分による効果の持続性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の全量噴射型エアゾール剤は、原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が噴射装置付きの耐圧容器に充填されてなり、エアゾール組成物の1m3当たりの噴射量が0.001~1g/秒の範囲であるものである。
【0013】
(原液)
原液は粉状物質と有効成分を含有する。
粉状物質は、その表面及び内部に有効成分を保持し得るものであることが好ましく、全量噴射型エアゾール剤の内容物であるエアゾール組成物を全量噴射した際に、有効成分を保持した粉状物質が処理対象空間における処理面へ付着し、当該処理面で有効成分の効果が発揮される。
【0014】
粉状物質は、35mL/100g以上の吸油量を有することが好ましい。本発明者の検討により、全量噴射型エアゾール剤を部屋等の空間で使用するとき、原液に配合する粉状物質の吸油量によって天井面や壁面における粉状物質の残渣効果が異なってくることも分かった。吸油量が35mL/100g以上の粉状物質を含有する全量噴射型エアゾール剤では天井面や壁面への粉状物質の残渣量が多くなり、それに伴い粉状物質に保持される有効成分の天井面や壁面への付着量を向上させることができる。
【0015】
粉状物質の吸油量は、100mL/100g以上であることがより好ましく、200mL/100g以上がさらに好ましい。また、吸油量の上限は特に限定されないが、噴射時の拡散性の観点から、500mL/100g以下であることが好ましく、400mL/100g以下がより好ましく、350mL/100g以下がさらに好ましい。粉状物質の吸油量は、例えば、JIS K5101、ASTM D2414、ISO4656等に準拠した方法により測定することができる。
【0016】
粉状物質の比表面積は、50~500m2/gであることが好ましく、100~400m2/gがより好ましく、150~350m2/gがさらに好ましい。前記粉状物質の比表面積が50m2/g以上であると有効成分を十分に保持できるので本発明の効果を発揮させることができ、また、500m2/g以下であると有効成分を保持しすぎることがない。粉状物質の比表面積は、例えば、BET法、ISO 5794-1等に準拠した方法により測定することができる。
【0017】
粉状物質の平均粒子径は、1~25μmであることが好ましく、1.5~20μmがより好ましく、2~15μmがさらに好ましい。前記粉状物質の平均粒子径が1μm以上であると有効成分を十分に保持することができ、また、平均粒子径が大きすぎると天井面や壁面から落下しやすくなるため、25μm以下であることが好ましい。粉状物質の平均粒子径は体積平均粒子径であり、例えば、ISO 13320、コールターカウンター法(コールターマルチサイザー法)等で測定することができる。
【0018】
粉状物質としては、例えば、無機化合物、有機化合物等が挙げられる。無機化合物としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミナ等の金属酸化物等が挙げられる。有機化合物としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エアゾール組成物中での分散性の観点から、無機化合物が好ましく、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム及びケイ酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1つを用いることがより好ましい。
【0019】
粉状物質の具体例としては、吸油量が35mL/100g以上の粉状物質として、例えば、市販品の「サンスフェアNP-200」(商品名、AGCエスアイテック株式会社製、吸油量40mL/100g、比表面積100m2/g、平均粒子径20μm)、「トクシールNP」(商品名、Oriental Silicas Corporation製、吸油量270mL/100g、比表面積190m2/g、平均粒子径10.3μm)、「アドソリダー101」(商品名、フロイント産業株式会社製、吸油量310mL/100g、比表面積300m2/g、平均粒子径3.2μm)等を挙げることができる。
【0020】
粉状物質は、原液中、0.01~15重量/容量%(以下、「w/v%」という。)の割合で含有されることが好ましく、0.05~10w/v%がより好ましく、0.1~5w/v%がさらに好ましい。前記粉状物質の原液中の含有量が0.01w/v%以上であると、粉状物質に保持されず存在する有効成分を無くすことができ、15w/v%以下であると、エアゾール剤の噴口で粉状物質が目詰まりを起こして全量噴射できなくなる等の噴射トラブルを引き起こすことがない。
【0021】
また、エアゾール組成物中の粉状物質の含有量は、0.001~7.5w/v%の範囲が好ましく、0.005~6w/v%がより好ましく、0.01~5w/v%がさらに好ましい。前記粉状物質のエアゾール組成物中の含有量が0.001w/v%以上であると、処理面における有効成分の付着性を向上させることができ、7.5w/v%以下であると、エアゾール製品中で粉状物質がケーキングを起こすことがなく、また使用時に再分散させやすい。
【0022】
有効成分は、全量噴射型エアゾール剤を使用した時に、何らかの作用を発揮するものを言う。有効成分としては、特に限定されないが、例えば、害虫防除成分、芳香成分、消臭成分、除菌・殺菌成分等が挙げられる。
【0023】
害虫防除成分の種類は、特に限定されず、公知の化合物を使用できる。
害虫防除成分としては、例えば、ペルメトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、シフルトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト、ブロフラニリド等の化合物;ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種精油成分;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
なお、害虫防除成分は、対象害虫の種類に合わせて適宜選択すればよい。対象害虫としては、例えば、蚊、ハエ、ガ、ハチ、カメムシ、トコジラミ、ゴキブリ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、マダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、アブ、ブユ、チョウバエ、シロアリ、ユスリカ、ヨコバイ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ、カミキリムシ、カツオブシムシ、チャタテムシ、イガ、コイガ等が挙げられる。
蚊、ハエ、ガ、ハチ、アブ、ブユ、ユスリカ、ヨコバイ、チョウバエ、イガ、コイガ等の飛翔害虫に対しては、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、フタルスリン、プラレトリン、モンフルオロトリン、メトキサジアゾン、ブロフラニリド等が好適である。また、ゴキブリ、カメムシ、トコジラミ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、シロアリ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ等の匍匐害虫に対しては、シフェノトリン、シフルトリン、フェノトリン、フタルスリン、プラレトリン、イミプロトリン、ペルメトリン、プロポクスル、メトキサジアゾン、アミドフルメト、ブロフラニリド等が好適である。
【0025】
芳香成分としては、例えば、上記した精油成分の他に、アニス油、ラベンダー油、ローズ油、ローズマリー油、グレープフルーツ油、カンフェン、p-シメン、シトロネロール、ネロール、ベンジルアルコール、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、クマリン、シネオール等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
消臭成分としては、例えば、緑茶エキス、柿タンニン、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、銀等の臭気成分を吸着する成分や、上記した芳香成分のような臭気成分をマスキングする成分等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
除菌・殺菌成分としては、例えば、サイアベンダゾール、4-イソプロピル-3-メチルフェノール(IPMP)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、p-クロロフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール(IF-1000)等の環境衛生用殺菌剤;イソフタロニトリル、プロシミドン、バイレトン、モレスタン等の農薬用殺菌剤;銀単体、酸化銀、無機銀塩(例えば、塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、炭酸銀、スルホン酸銀塩等)、有機銀塩(例えば、蟻酸銀、酢酸銀等)等の銀化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
有効成分は、効果の異なる成分同士を組み合わせて使用することができる。例えば、害虫防除成分と芳香成分を組み合わせて使用することや、芳香成分と芳香成分以外の消臭成分を組み合せて使用することができる。
【0029】
有効成分の含有量は、有効成分の種類、用途、適用空間の大きさ、使用環境等に応じて適宜調整すればよく、具体的に、原液中、0.01~30w/v%であることが好ましく、0.1~25w/v%がより好ましく、0.5~20w/v%がさらに好ましい。有効成分の原液中の含有量が0.01w/v%以上であると、十分な有効成分の効果を得ることができ、30w/v%以下であると、生産適性が向上する。
【0030】
また、エアゾール組成物中の有効成分の含有量も有効成分の種類、用途、適用空間の大きさ、使用環境等に応じて適宜調整すればよく、具体的に、0.001~15w/v%の範囲が好ましく、0.005~12.5w/v%がより好ましく、0.01~10w/v%がさらに好ましい。前記有効成分のエアゾール組成物中の含有量が0.001w/v%以上であると、十分な有効成分の効果を得ることができ、15w/v%以下であると、生産適正が向上する。
【0031】
原液には、原液の粘度、生産適性、有効成分の効果の発揮(例えば、有効成分が害虫防除剤の場合、害虫に対する薬剤の浸透性を上げる)等の目的のために溶剤を含んでいてもよい。このような溶剤としては、例えば、グリコールエーテル類や、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤等の有機溶媒や水等が挙げられる。
【0032】
炭化水素系溶剤としては、例えば、パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素が挙げられ、具体的にはノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが好ましく、例えば、中央化成株式会社製のネオチオゾール、JXTGエネルギー株式会社製のノルマルパラフィンMA等が挙げられる。イソパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが好ましく、例えば、出光興産株式会社製のIPクリーンLX、スーパーゾルFP25等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール(ノルマル、イソ)等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。
水としては、例えば、水道水、蒸留水、精製水、イオン交換水等が挙げられる。
【0033】
溶剤の含有量は、溶剤の比重によって異なるが、原液中、50~99.98w/v%の範囲であることが好ましく、60~99.9w/v%がより好ましく、70~99.5w/v%がさらに好ましい。溶剤の含有量が50w/v%以上であると、生産適性を向上させることができ、99.98w/v%以下であると、十分な有効成分の効果を得ることができる。
【0034】
原液は、粉状物質と有効成分を、例えば溶剤に溶解/分散させることにより得られる。有効成分は原液中で粉体物質に担持されており、噴射剤により噴射された際には、有効成分は粉体物質に担持された状態で噴射され、有効成分を担持した粉体物質が処理面に付着する。
【0035】
粉体物質に有効成分を担持させる方法としては特に限定されない。例えば、粉体物質に液状の有効成分を滴下、噴霧等して両者を接触させたり、液状の有効成分に粉体物質を浸漬させる等して両者を接触させたりして、粉体物質に有効成分を担持させたものを溶剤に添加する方法、溶剤に粉体物質と有効成分を別々に添加し、必要により撹拌等することにより原液中で粉体物質に有効成分を担持させる方法、等が挙げられる。
【0036】
原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、溶解助剤等が挙げられ、含有量は適宜調整できる。
【0037】
エアゾール組成物中の原液の含有量は、全量噴射型エアゾール剤の使用目的や噴射剤との組み合わせに応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に1~50容量%とすることができる。エアゾール組成物中に原液が1容量%以上であると、十分な有効成分の効果を得ることができ、50容量%以下であると、原液を噴霧粒子として噴射することができるので、例えば室内で使用した場合に、原液による家具、床、壁等の汚染を少なくできる。原液の含有量は、エアゾール組成物中、下限は5容量%以上であることがより好ましく、10容量%以上がさらに好ましく、また、上限は40容量%以下であることがより好ましく、35容量%以下がさらに好ましい。
【0038】
(噴射剤)
噴射剤は、上記原液を噴射するための媒体であり、原液とともに耐圧容器に加圧充填される。
噴射剤としては、例えば、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス、HFC-152a、HFC-134a、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上を用いることができる。使用する噴射剤は、原液との相溶性やエアゾールバルブ等の容器部材に合わせて適宜選択すればよい。
【0039】
エアゾール組成物中の噴射剤の含有量は、全量噴射型エアゾール剤の使用目的や原液との組み合わせに応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に50~99容量%とすることができる。エアゾール組成物中に噴射剤が50容量%以上であると、原液を噴霧粒子として噴射することができるため有効成分がより拡散しやすくなり、有効成分の効果が持続しやすくなる。また、噴射剤が99容量%以下であると、十分な有効成分の効果を得ることができる。噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中、下限は60容量%以上であることがより好ましく、65容量%以上がさらに好ましく、また、上限は95容量%以下がより好ましく、90容量%以下がさらに好ましい。
【0040】
なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で1:99~50:50であることが好ましく、3:97~40:60がより好ましく、5:95~30:70がさらに好ましい。このような体積比とすることで、十分な有効成分の効果を得ることができる。
【0041】
(全量噴射型エアゾール剤)
本発明の全量噴射型エアゾール剤は、上記した原液と噴射剤がエアゾール用の耐圧容器に充填され、該耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止されることにより構成される。全量噴射型エアゾール剤は、エアゾールバルブに取り付けられた噴射部材(以下、噴射ボタンともいう。)が使用者に1回操作されることにより、耐圧容器内のエアゾール組成物(原液と噴射剤)の全量がエアゾールバルブを通って耐圧容器の外へ押し出され、その際にエアゾール組成物は粒子状とされて噴射される。
【0042】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、噴射部材が使用者に操作されることにより耐圧容器内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。ハウジングには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには、ハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0043】
ステムのステム孔の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。ステム孔が円形である場合、ステム孔の大きさは、直径0.1~4.5mmであることが好ましく、直径0.3~4.2mmがより好ましく、直径0.6~4mmがさらに好ましい。ステム孔の形状が多角形である場合、ステム孔の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。
ステムのアンダータップ孔は、円形である場合、その大きさが直径0.5~3mmであることが好ましく、直径0.7~2.5mmがより好ましく、直径1~2.2mmがさらに好ましい。アンダータップ孔の形状は円形でも多角形であってもよく、多角形の場合は、アンダータップ孔の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。
ステムにはベーパータップ孔があっても無くてもよいが、ベーパータップ孔を有する場合は、その大きさは、円形である場合、直径0.1~3mmであることが好ましく、直径0.2~2.5mmがより好ましく、直径0.3~2.2mmがさらに好ましい。ベーパータップ孔の形状は円形でも多角形であってもよく、多角形の場合は、ベーパータップ孔の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。
なお、ステム孔及びベーパータップ孔は1個でもよいし、複数個有していてもよい。ステム孔及びベーパータップ孔の大きさは、それらが複数ある場合は、その合計の大きさである。
【0044】
(噴射部材)
噴射部材(噴射ボタン)は、エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴射ボタンには、エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路とエアゾール組成物が噴射される噴口が形成されている。
全量噴射型エアゾール剤に用いる噴射部材は、噴射ボタンに対する押圧が行われると、噴射ボタンがエアゾールバルブのステムを押し下げた状態で固定され、エアゾール組成物が、押し下げられたステム内を通って噴射ボタンの噴口から連続的に噴出(全量噴射)する。
【0045】
噴射ボタンの噴口の形状は、円形であってもよいし、多角形でもよい。噴口が円形である場合、その内径(噴口孔径)は、噴射量や噴射時間の設計に応じて適宜調整すればよいが、例えば、直径0.1~2mmであることが好ましく、直径0.3~1.5mmがより好ましく、直径0.6~1.2mmがさらに好ましい。噴口の形状が多角形である場合、噴口の大きさは円形の場合と同等となる大きさであればよい。また、これらと等しい面積を有する複数の噴口を有していても問題ない。
【0046】
(エアゾール内圧)
全量噴射型エアゾール剤の25℃における内圧は、0.2~0.8MPaであることが好ましい。内圧が0.2MPa以上であると、エアゾール組成物を使用空間中への粉状物質の拡散性を担保しつつ、全量噴射できる。また内圧が0.8MPa以下であると、噴射時にエアゾール組成物が勢いよく出すぎて粉状物質が使用空間を構成する天井に当たって、付着することなく落下してしまうのを防ぐことができる。全量噴射型エアゾール剤の内圧は、0.25~0.6MPaであることがより好ましく、0.3~0.5MPaがさらに好ましい。
【0047】
(噴射圧)
全量噴射型エアゾール剤の噴射圧は、噴口から20cm離れた位置における測定で、1~15gfであることが好ましく、3~10gfがより好ましい。噴射圧が前記範囲であることで、一般的な建屋内の空間で使用した際に天井面までエアゾール組成物を飛散させることができる。
なお、前記噴射圧は、全量噴射型エアゾール剤の噴口から鉛直方向に20cmの距離を置いたところにデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DS2-2N)に装着した直径60mmの円状の平板を設置し、25℃の室温条件下で、前記平板の中心に向かってエアゾール組成物を噴射した際の最大値を噴射荷重とし、平均を算出することにより測定できる。
【0048】
(噴射量)
本発明の全量噴射型エアゾール剤は、エアゾール組成物の1m3当たりの噴射量が0.001~1g/秒の範囲である。エアゾール組成物の1m3当たりの噴射量が0.001g/秒以上であると、噴射の勢いが得られるので使用空間の全体にエアゾール組成物を飛散させることができ、1g/秒以下であると、エアゾール剤としての安全性を担保することができる。1m3当たりの噴射量は、0.005~0.7g/秒が好ましく、0.01~0.5g/秒がより好ましい。
【0049】
(噴射時間)
本発明の全量噴射型エアゾール剤の全量が噴射されるまでの噴射時間は、5~150秒であることが好ましい。噴射時間が5秒以上であると、使用する空間全体に有効成分を噴射でき、150秒以下であると、エアゾール剤の単位時間あたりの噴射量を高めることができるので、使用空間におけるエアゾール組成物の飛散性を高めることができ、これにより天井面や壁面への有効成分の付着量を増加させることができる。噴射時間は7~120秒がより好ましく、10~100秒がさらに好ましい。
【0050】
噴射量及び噴射時間を調整する方法としては、例えば、噴射ボタンの噴口の大きさを調整する方法、全量噴射型エアゾール剤の噴射圧を調整する方法、エアゾールバルブのステム孔径を調整する方法、噴射剤の圧力を調整する方法、及びこれらの組み合せ等が挙げられる。
【0051】
本発明では、上記した本発明の全量噴射型エアゾール剤を用いて、当該全量噴射型エアゾール剤からエアゾール組成物を、1m3当たり0.001~1g/秒の範囲で噴射する。エアゾール組成物を前記範囲の噴射量となるように噴射することで、処理対象空間における処理面への粉状物質の付着性を向上させることができ、部屋等の密閉空間で全量噴射型エアゾール剤を噴射した際に、粉状物質に保持された有効成分の天井面や壁面への付着量を向上させることができ、よって、前記有効成分による効果の持続性も向上させることができる。
1m3当たりの噴射量は、0.005~0.7g/秒が好ましく、0.01~0.5g/秒がより好ましい。
【0052】
なお、本発明は、原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が耐圧容器に充填された全量噴射型エアゾール剤の前記原液に、粉状物質を含有させるとともに、エアゾール組成物の1m3当たりの噴射量を0.001~1g/秒の範囲とすることにより、全量噴射型エアゾール剤の効力を増強する方法も提供するものである。
粉状物質は、上記したように、全量噴射型エアゾール剤に含有した場合、部屋等の天井面や壁面への残渣量が多くなる。よって、前記粉状物質を原液中に含有させ、前記範囲の噴射量となるように噴射することにより、粉状物質に保持される有効成分も天井面や壁面に残留するので、処理面における有効成分の付着量が向上する。よって、全量噴射型エアゾール剤の効力を増強することができる。
【実施例】
【0053】
以下の試験例により本発明を更に説明するが、本発明は下記試験例に何ら制限されるものではない。
【0054】
なお、以下の試験例で使用した粉状物質は表1に示すとおりである。
【0055】
【0056】
(試験例1)
1.原液の作製
表2に示す配合処方に従い、有効成分及び/又は粉状物質を測り取り、無水エタノール(比重0.797(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液1~4を調製した。
【0057】
【0058】
2.全量噴射型エアゾール剤の作製
(検体1)
エアゾール用耐圧缶(容量100mL)に、原液1を30mL充填し、エアゾールバルブ(ステム孔の直径1.2mm×3、アンダータップ孔の直径1.85mm)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤としてジメチルエーテルを70mL加圧充填した。なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で30:70であった。
エアゾールバルブに全量噴射用の噴射ボタン(噴口孔径0.6mm)を取り付け、全量噴射型エアゾール剤を得た。
【0059】
(検体2~4)
原液1を原液2~4に代えた以外は検体1と同様にして検体2~4の全量噴射型エアゾール剤を作製した。
【0060】
3.噴射量の測定
上記作製した全量噴射型エアゾール剤を用いて、1m3当たりのエアゾール組成物の噴射量を測定した。
25℃に設定した試験室(縦3.6m×横3.6m×高さ2.5m:容積32.4m3)の床面の略中央に全量噴射型エアゾール剤を置き、噴射ボタンを操作してエアゾール組成物が噴射されたのを確認した後に試験室を密閉した。エアゾール組成物が全量噴射された際の重量(噴射量)と時間を測定し、以下の式(1)により1m3当たりのエアゾール組成物の噴射量を求めた。なお、噴射された重量は、噴射前のエアゾール剤の重量から噴射後のエアゾール剤の重量を引いた値である。
1m3当たりの噴射量(g/秒)=噴射された重量(g)÷全量噴射に要した時間(秒)÷試験室の容積(m3) ・・・(1)
結果を表3に示す。
【0061】
4.噴射試験
図1に示すように、8畳空間(縦3.6m×横3.6m×高さ2.5m:容積32.4m
3)の試験室10の天井の隅に、底面に10cm
2の大きさのろ紙を貼付したプラスチックカップ2(カップの高さ9.8cm)をカップ開口が床面に向くように2個設置した。試験室10の床面の略中央に全量噴射型エアゾール剤1を置き、噴射ボタンを操作してエアゾール組成物が噴射されたのを確認した後に試験室を密閉した。
1時間後にプラスチックカップ2を回収し、回収したプラスチックカップ2それぞれに供試虫としてチャバネゴキブリの雌成虫10頭を入れ、プラスチック製の蓋(ピンセットで通気孔を開けたもの)を被せてろ紙と感受性チャバネゴキブリとが継続的に接触するようにした。
観察開始から10時間経過後の感受性チャバネゴキブリのノックダウン(KD)数(転倒して動けなくなったゴキブリの数)と、観察開始から24時間後の感受性チャバネゴキブリの致死数を数え、プラスチックカップごとのKD率、致死率を求めてそれらの平均値を求めた。
上記の試験は2回行い、各回における、各経過時間でのKD率、致死率を表3に示す。
【0062】
【0063】
表3に示すように、検体2~4は検体1に比べて供試虫の10時間後のKD率及び24時間後の致死率が顕著に高く、全量噴射型エアゾール剤の原料中に粉状物質を配合することで天井面に設置したプラスチックカップにおけるKD効果及び致死効果が向上することが分かった。中でも検体4に比べて粉体物質の吸油量が高い検体2、3は、供試虫の10時間後のKD率及び24時間後の致死率がともにより優れていた。
【0064】
(試験例2)
有効成分をメトキサジアゾンに変更し、試験例1と同様の試験を行った。
【0065】
1.原液の作製
表4に示す配合処方に従い、有効成分及び/又は粉状物質を測り取り、無水エタノール(比重0.797(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液5~8を調製した。
【0066】
【0067】
2.全量噴射型エアゾール剤の作製
(検体5)
エアゾール用耐圧缶(容量100mL)に、原液5を30mL充填し、エアゾールバルブ(ステム孔の直径1.2mm×3、アンダータップ孔の直径1.85mm)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤としてジメチルエーテルを70mL加圧充填した。なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で30:70であった。
エアゾールバルブに全量噴射用の噴射ボタン(噴口孔径0.6mm)を取り付け、全量噴射型エアゾール剤を得た。
【0068】
(検体6~8)
原液5を原液6~8に代えた以外は検体5と同様にして検体6~8の全量噴射型エアゾール剤を作製した。
【0069】
3.噴射量の測定
試験例1の「3.噴射量の測定」に記載の方法と同様に、検体5~8の全量噴射型エアゾール剤を用いて、1m3当たりのエアゾール組成物の噴射量を測定した。
結果を表5に示す。
【0070】
4.噴射試験
試験例1の「4.噴射試験」に記載の方法と同様に、検体5~8の全量噴射型エアゾール剤を用いて、感受性チャバネゴキブリのKD率、致死率を求めた。
結果を表5に示す。
【0071】
【0072】
表5に示すように、検体6~8は検体5に比べて供試虫の10時間後のKD率は同等以上であり、24時間後の致死率は顕著に高かった。全量噴射型エアゾール剤の原料中に粉状物質を配合することで、有効成分の種類に寄らず本発明の効果が得られることがわかった。中でも検体8に比べて粉体物質の吸油量が高い検体6、7は、供試虫の10時間後のKD率及び24時間後の致死率がより優れていた。
【0073】
(試験例3)
1.原液の作製
表6に示す配合処方に従い、有効成分及び/又は粉状物質を測り取り、無水エタノール(比重0.797(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液9~12を調製した。
なお、原液9~12は試験例1の原液1~4と同一処方である。
【0074】
【0075】
2.全量噴射型エアゾール剤の作製
(検体9)
エアゾール用耐圧缶(容量100mL)に、原液9を30mL充填し、エアゾールバルブ(ステム孔の直径0.6mm×2、アンダータップ孔の直径1.85mm)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤としてジメチルエーテルを70mL加圧充填した。なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で30:70であった。
エアゾールバルブに全量噴射用の噴射ボタン(噴口孔径0.6mm)を取り付け、全量噴射型エアゾール剤を得た。
【0076】
(検体10~12)
原液9を原液10~12に代えた以外は検体9と同様にして検体10~12の全量噴射型エアゾール剤を作製した。
【0077】
(検体13)
エアゾール用耐圧缶(容量100mL)に、原液9を30mL充填し、エアゾールバルブ(ステム孔の直径0.3mm、アンダータップ孔の直径2.2mm)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤としてジメチルエーテルを70mL加圧充填した。なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で30:70であった。
エアゾールバルブに全量噴射用の噴射ボタン(噴口孔径0.6mm)を取り付け、全量噴射型エアゾール剤を得た。
【0078】
(検体14)
原液9を原液10に代えた以外は検体13と同様にして検体14の全量噴射型エアゾール剤を作製した。
【0079】
3.噴射量の測定
試験例1の「3.噴射量の測定」に記載の方法と同様に、検体9~14の全量噴射型エアゾール剤を用いて、1m3当たりのエアゾール組成物の噴射量を測定した。
結果を表7に示す。
【0080】
4.噴射試験
試験例1の「4.噴射試験」に記載の方法と同様に、検体9~14の全量噴射型エアゾール剤を用いて、感受性チャバネゴキブリのKD率、致死率を求めた。
結果を表7に示す。
【0081】
【0082】
表7に示すように、検体9と検体10~12の対比、並びに検体13と検体14の対比より、試験例1、2よりも1m3当たりの噴射量が低い条件においても、全量噴射型エアゾール剤の原料中に粉状物質を配合することで天井面に設置したプラスチックカップにおけるKD効果及び致死効果が向上することが分かった。
【0083】
(試験例4)
1.原液の作製
表8に示す配合処方に従い、有効成分及び/又は粉状物質を測り取り、無水エタノール(比重0.797(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液13~14を調製した。
【0084】
【0085】
2.全量噴射型エアゾール剤の作製
(検体15)
エアゾール用耐圧缶(容量100mL)に、原液13を10mL充填し、エアゾールバルブ(ステム孔の直径1.2mm×3、アンダータップ孔の直径1.85mm)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤としてジメチルエーテルを90mL加圧充填した。なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、原液:噴射剤で10:90であった。
エアゾールバルブに全量噴射用の噴射ボタン(噴口孔径0.6mm)を取り付け、全量噴射型エアゾール剤を得た。
【0086】
(検体16)
原液13を原液14に代えた以外は検体15と同様にして検体16の全量噴射型エアゾール剤を作製した。
【0087】
3.噴射量の測定
試験例1の「3.噴射量の測定」に記載の方法と同様に、検体15~16の全量噴射型エアゾール剤を用いて、1m3当たりのエアゾール組成物の噴射量を測定した。
結果を表9に示す。
【0088】
4.噴射試験
試験例1の「4.噴射試験」に記載の方法と同様に、検体15~16の全量噴射型エアゾール剤を用いて、感受性チャバネゴキブリのKD率、致死率を求めた。
結果を表9に示す。
【0089】
【0090】
表9に示すように、原液と噴射剤の含有比(体積比)が10:90の条件においても、全量噴射型エアゾール剤の原料中に粉状物質を配合することで天井面に設置したプラスチックカップにおけるKD効果及び致死効果が向上することが分かった。
【符号の説明】
【0091】
1 全量噴射型エアゾール剤
2 プラスチックカップ
10 試験室