(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】測位精度出力システム及びそのサーバ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/23 20100101AFI20250107BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20250107BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20250107BHJP
【FI】
G01S19/23
E02F9/26 B
G06Q50/08
(21)【出願番号】P 2021005860
(22)【出願日】2021-01-18
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 理沙
(72)【発明者】
【氏名】田中 正道
(72)【発明者】
【氏名】境 和樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雅嗣
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-134015(JP,A)
【文献】特開2012-159347(JP,A)
【文献】特開2004-125580(JP,A)
【文献】特開2012-022478(JP,A)
【文献】特開平09-062353(JP,A)
【文献】特開2014-040317(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0158887(US,A1)
【文献】国際公開第2020/174887(WO,A1)
【文献】米国特許第8694248(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14,
G01S 19/00-19/55,
E02F 9/26,
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位衛星からの電波に基づいて測位する建設機械と、前記建設機械と通信可能に接続され、前記建設機械の測位精度の状態を出力するサーバ装置と、を有する測位精度出力システムであって、
前記建設機械は、
前記測位衛星の位置及び軌道に関する情報を含む衛星情報を前記電波から取得し、前記衛星情報に基づいて測位し、前記建設機械の位置情報を取得するGNSS受信機と、
前記衛星情報に基づいて前記測位精度を計算し、測位精度情報を取得するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記測位精度として位置精度低下率を計算し、前記位置精度低下率の値を前記測位精度情報と
し、
前記サーバ装置は、
前記建設機械から送信された前記衛星情報と前記位置情報とに基づいて前記建設機械の位置における前記測位衛星の飛来予測を行い、前記測位精度情報と前記飛来予測とに基づいて、前記建設機械の位置における前記測位精度の状態を判定し、前記判定結果に応じた記号を出力し、
一方の軸が前記位置精度低下率の前記値を示し他方の軸が時刻を示すグラフを、前記一方の軸の正負方向を反転させて作成し、作成された前記グラフを出力する
ことを特徴とす
る測位精度出力システム。
【請求項2】
前記建設機械は、前記建設機械の周辺及び上空を撮像するカメラを備え、
前記サーバ装置は、前記建設機械の周辺環境情報と前記建設機械から送信された前記カメラの撮像画像と前記飛来予測とに基づいて、前記電波におけるマルチパスの発生有無を予測し、前記マルチパスの予測結果に基づいて前記測位精度の前記状態を判定し、前記判定結果に応じた前記記号を出力する
ことを特徴とする請求項
1に記載の測位精度出力システム。
【請求項3】
測位衛星からの電波に基づいて測位する建設機械と、前記建設機械と通信可能に接続され、前記建設機械の測位精度の状態を出力するサーバ装置と、を有する測位精度出力システムであって、
前記建設機械は、
前記測位衛星の位置及び軌道に関する情報を含む衛星情報を前記電波から取得し、前記衛星情報に基づいて測位し、前記建設機械の位置情報を取得するGNSS受信機と、
前記衛星情報に基づいて前記測位精度を計算し、測位精度情報を取得するコントローラと、を備え、
前記サーバ装置は、
前記建設機械から送信された前記衛星情報と前記位置情報とに基づいて前記建設機械の位置における前記測位衛星の飛来予測を行い、前記測位精度情報と前記飛来予測とに基づいて、前記建設機械の位置における前記測位精度の状態を判定し、前記判定結果に応じた記号を出力し、
前記建設機械の施工期間内の所定時間毎に前記測位精度の前記状態を判定し、前記所定時間毎に前記記号を出力し、前記建設機械の作業工程を前記記号に対応付けて出力する
ことを特徴とす
る測位精度出力システム。
【請求項4】
測位衛星からの電波に基づいて測位する建設機械と、前記建設機械と通信可能に接続され、前記建設機械の測位精度の状態を出力するサーバ装置と、を有する測位精度出力システムであって、
前記建設機械は、
前記測位衛星の位置及び軌道に関する情報を含む衛星情報を前記電波から取得し、前記衛星情報に基づいて測位し、前記建設機械の位置情報を取得するGNSS受信機と、
前記衛星情報に基づいて前記測位精度を計算し、測位精度情報を取得するコントローラと、を備え、
前記サーバ装置は、
前記建設機械から送信された前記衛星情報と前記位置情報とに基づいて前記建設機械の位置における前記測位衛星の飛来予測を行い、前記測位精度情報と前記飛来予測とに基づいて、前記建設機械の位置における前記測位精度の状態を判定し、前記判定結果に応じた記号を出力し、
前記建設機械の施工現場内の複数の作業区画のそれぞれにおいて前記測位精度の前記状態を判定し、前記建設機械の施工現場の地図画像に対して前記記号を前記作業区画毎に重畳させて出力する
ことを特徴とす
る測位精度出力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位精度出力システム及びそのサーバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械による施工に対して情報通信技術を適用した情報化施工が推進されている。情報化施工では、施工対象の3次元測量を行いながら3次元設計データに従って施工されるよう建設機械のマシンコントロール(3D-MC)又はマシンガイダンス(MG)を行ったり、建設機械及び施工対象の位置情報を用いて施工の進捗や施工精度を管理したりする(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、位置計測装置及び方位計測装置の計測結果から車体の位置座標及び作業機の長手方向を演算する演算部と、3次元設計データを構成する複数の設計面のうち第1目標面に隣接する他の設計面を第2目標面として設定し、車体を上から見たときの作業機の長手方向を第1目標面と第2目標面の境界線に対して平行にするための上部旋回体の旋回量を含む第1操作支援情報を生成する情報生成部と、情報生成部が生成した第1操作支援情報を表示装置に出力する情報出力部とを有する作業機械が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
情報化施工では、衛星測位システムを利用して建設機械及び施工対象の測位及び測量が行われる。衛星測位システムでは、測位衛星の位置やマルチパスの影響によって、高精度な位置情報を計算できなかったり位置情報が不連続にジャンプアップしたりして、測位精度が低下することがある。測位精度が低下すると、施工精度が低下したりマシンコントロールが行えなかったりするので、施工現場の施工業者は、衛星測位システムを利用した施工作業を停止することがある。測位精度の状態を施工業者に把握させることは重要であるが、特許文献1の作業機械では、このことについて何ら考慮されておらず、測位精度の状態によっては施工作業が計画通りに実行できない可能性がある。
【0006】
上記事情に鑑みて、本発明は、衛星測位システムを利用する建設機械の測位精度の状態を施工業者に分かり易く提示して、計画的且つ効率的な施工作業を支援することが可能な測位精度出力システム及びそのサーバ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の測位精度出力システムは、測位衛星からの電波に基づいて測位する建設機械と、前記建設機械と通信可能に接続され、前記建設機械の測位精度の状態を出力するサーバ装置と、を有する測位精度出力システムであって、前記建設機械は、前記測位衛星の位置及び軌道に関する情報を含む衛星情報を前記電波から取得し、前記衛星情報に基づいて測位し、前記建設機械の位置情報を取得するGNSS受信機と、前記衛星情報に基づいて前記測位精度を計算し、測位精度情報を取得するコントローラと、を備え、前記サーバ装置は、前記建設機械から送信された前記位置情報と前記測位精度情報と前記衛星情報とに基づいて、前記建設機械の位置における前記測位精度の状態を判定し、判定結果に応じた記号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衛星測位システムを利用する建設機械の測位精度の状態を施工業者に分かり易く提示して、計画的且つ効率的な施工作業を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の測位精度出力システムの構成を示す図。
【
図3】
図1に示す測位精度出力システムの機能的構成を示す図。
【
図4】測位精度の状態を判定する処理の流れを示すフローチャート。
【
図5】
図4に示すマルチパスの予測に係る処理の流れを示すフローチャート。
【
図6】端末装置の表示部に表示される画面の第1例を示す図。
【
図7】端末装置の表示部に表示される画面の第2例を示す図。
【
図8】端末装置の表示部に表示される画面の第3例を示す図。
【
図9】端末装置の表示部に表示される画面の第4例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成は、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態の測位精度出力システム1の構成を示す図である。
【0012】
測位精度出力システム1は、衛星測位システムを利用して測位する建設機械10の測位精度の状態を出力するシステムである。測位精度出力システム1は、建設機械10と、測位衛星20と、サーバ装置30と、端末装置40とを有する。
【0013】
建設機械10は、測位衛星20からの電波に基づいて自らの位置を測定可能な油圧ショベル又はダンプトラック等の建設機械である。
図1では、建設機械10として、下部走行体10a、上部旋回体10b及びフロント作業機10cを備える油圧ショベルを例に挙げて示している。
【0014】
建設機械10は、測位衛星20からの電波を受信するGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機11と、各種プログラムに従い各種処理を行って建設機械10の各構成要素を統括的に制御するコントローラ12と、サーバ装置30と通信する通信機13とを備える。更に、建設機械10は、コントローラ12の処理結果や建設機械10の動作状態を表示するモニタ14と、建設機械10の周辺及び上空を撮像する半球カメラ又は全球カメラ等の広角レンズを搭載したカメラ15とを備える。
【0015】
測位衛星20は、日本の準天頂衛星(QZSS)、米国のGPS、欧州連合のGalileo、中国のBeiDou、又は、露国のGLONASS等の衛星測位システムを構成する人工衛星である。サーバ装置30は、建設機械10と通信可能に接続され、建設機械10を管理すると共に、建設機械10の測位精度の状態を示す情報を出力するクラウドサーバ等の装置である。端末装置40は、サーバ装置30と通信可能に接続され、サーバ装置30から送信された測位精度の状態を示す情報を施工業者等に提示するタブレット又はPC等の装置である。端末装置40は、タッチパネル式のディスプレイ等の表示部41を備え、サーバ装置30から送信された測位精度の状態を示す情報を表示部41によって表示する。
【0016】
図2は、RTK-GPSの測位方式を説明する図である。
【0017】
衛星測位システムを利用した測位方式には、車や船舶のナビゲーション等に用いられる単独測位方式と、相対測位方式とがある。相対測位方式は、基準点との相対測位により誤差を補正し精度を向上させる方式である。単独測位方式では、上空約2万kmを周回する4つの測位衛星が電波を出した時刻と地上のGNSS受信機が電波を受信した時刻とから、衛星とGNSS受信機との距離を求め、測位衛星の位置関係と衛星からの距離によってGNSS受信の位置を求める。ここで、3次元的な位置を特定するためには、時間を一つの変数としているので、4つの測位衛星が必要となる。単独測位方式では、電波の遅延が誤差要因となる。
【0018】
一方、相対測位方式では、2以上のGNSS受信機にて、同時に4以上の測位衛星を捕捉する。この際、測位衛星の位置を基準として、測位衛星からの電波がそれぞれのGNSS受信機に到達する時間差を求め、2以上のGNSS受信機での相対的な位置関係を求める。各GNSS受信機にて同じ測位衛星の電波を受信しているので、測位衛星からの電波が地上に届くまでの気象条件等が同じとなり、測位衛星の位置誤差や電波の対流圏又は電離層による遅延が消去される。また、相対測位方式では、測位衛星からの電波が各GNSS受信機に到達するまでの時間の差を、電波の位相の差によって求める。この際、位相(衛星との距離)には、波数分(2πの整数分)の不確定(整数値バイアス)が含まれるので、これを取り除く複雑な計算が必要である。
【0019】
相対測位方式には、複数のGNSS受信機にて単独測位を行ってそれぞれの位置情報から相対位置を求めるD-GPS(Differential GPS)と、複数のGNSS受信機と測位衛星との距離から、各GNSS受信機間の相対位置を求めるRTK-GPS(Real-Time Kinematic GPS;干渉測位方式)とがある。D-GPSは、電波に含まれるコード情報を利用して測位する。RTK-GPSは、電波の位相データを利用して測位する。D-GPS及びRTK-GPSでは、位置の分かっている基準局と、位置を求めたい測定点とにおいて、同時に測位衛星からの電波を受信し、基準局で測定した位相データを無線等により測定点へリアルタイムに送信し、測定点の位置を高精度に求める手法である。
【0020】
具体的には、D-GPSでは、基準局における基準位置と測定された座標値の差を求め、測定点に補正情報として送信する。一方、RTK-GPSでは、基準局(ベース)と測定点(ローバ)とにおいて受信した電波の位相データを求め、基準局にて求められた位相データを測定点へ送信する。
【0021】
図2には、RTK-GPSの説明図として、測定点である建設機械10の上空に、4つの測位衛星20a~20dが飛来し、建設機械10の周辺に基準局25が設置されている例が示されている。建設機械10のGNSS受信機11は、移動局とも称される。建設機械10のGNSS受信機11と、基準局25のGNSS受信機とは、測位衛星20a~20dからの電波を同時に受信する。基準局25は、測定された位相データを建設機械10のGNSS受信機11へ送信する。GNSS受信機11は、受信した電波の位相データと、基準局25から送信された位相データとをリアルタイムに解析することにより、基準局25からの相対的な位置関係を求め、測定点の位置を高精度に求めることができる。
【0022】
電波の位相データは、式(1)のように記述される。
【数1】
【0023】
式(1)において、ΦiAは、GNSS受信機Aで測定された測位衛星iからの搬送波位相データである。fは、搬送波周波数である。cは、光速である。riAは、GNSS受信機Aと測位衛星iとの間の真の距離である。diは、測位衛星iの時計誤差による搬送波位相データの誤差である。δAは、GNSS受信機Aの内部時計誤差による搬送波位相データの誤差である。NiAは、アンビギュイティ(整数値)である。式(1)から、GNSS受信機Aと測位衛星iとの間の真の距離riAが求められる。これにより、例えば、測位衛星20aからGNSS受信機11までの距離R1と、測位衛星20aから基準局25までの距離R2とが求められる。そして、距離R1と距離R2との差から、測定点である建設機械10と基準局25との間の距離L(基線長)が求められる。これより、測定点である建設機械10の位置を高精度に求めることができる。
【0024】
なお、RTK-GPSでは、6以上の測位衛星の電波を利用して、測位衛星までの距離を求めることが一般的である。更に、RTK-GPSでは、ネットワーク型RTK-GPSと呼ばれる方式がある。ネットワーク型RTK-GPSでは、測定点に含まれる誤差を、電子基準点のリアルタイム測量データ等を利用して補正するものである。D-GPS及びRTK-GPSでは、各種の誤差要因が消去されることから、D-GPSの位置精度が数m程度、RTK-GPSの位置精度が数cm程度となる。
【0025】
RTK-GPSの誤差要因としては、測位衛星の位置による誤差が挙げられる。測位衛星の位置によって、測定点の測位誤差が異なってくる。測位衛星の位置は、比較的、高高度と低高度とに分布している方が理想的である。低高度の測位衛星からの電波は、電波の大気圏通過距離が長くなるため、誤差要因となる。水平線より低い測位衛星は、衛星が移動すると捕捉できなくなるので、誤差の要因となる。また、時計誤差やGNSS受信機の雑音等も誤差の要因となる。なお、相対測位方式では、単独測位方式と異なり、複数の測定点で電波を受信し、各測定点に共通な誤差要因の影響を相殺することによって、基線長の測位精度の向上を図っている。
【0026】
更に、RTK-GPSの誤差要因としては、測位衛星の軌道による誤差が挙げられる。測位衛星の位置は、測位衛星からの電波に含まれる軌道情報を用いる。この軌道情報は、地上の監視局でモニタして修正されるが、修正までの間に、太陽や月の引力、太陽光の輻射圧等の外乱によってドリフトし、誤差を生じる。
【0027】
更に、RTK-GPSの誤差要因としては、建造物等の障害物の影響による誤差が挙げられる。測位衛星からの電波は、極めて微弱であり、光に似た性質を持っているので、障害物に反射してからGNSS受信機に到達すること(マルチパス)がある。これにより、GNSS受信機の測位精度は低下し得る。特に、水平線に近い低高度の測位衛星からの電波は、地球の大気中を長距離に亘って伝播してくるので、その伝搬誤差が大きくなる場合が多い。
【0028】
図3は、
図1に示す測位精度出力システム1の機能的構成を示す図である。
【0029】
建設機械10のGNSS受信機11は、衛星情報取得部111と、位置情報取得部112とを備える。衛星情報取得部111は、測位衛星20からの電波から衛星情報を取得する。衛星情報は、測位衛星20の識別番号、位置、軌道、及び、電波の発信時刻等に関する情報を含む。衛星情報は、NMEAフォーマットに準拠して取得されてもよい。NMEAフォーマットは、音波探査機、ソナー、風速計(風向風速計)等の海上電子装置おける仕様であり、米国海洋電子機器協会により規定されたものである。衛星情報取得部111は、取得された衛星情報を、位置情報取得部112及びコントローラ12へ出力する。位置情報取得部112は、衛星情報に基づいて測位し、建設機械10の位置情報を取得する。位置情報取得部112は、例えば、上記のRTK-GPSの測位方式によって測位してもよい。位置情報取得部112は、取得された位置情報をコントローラ12へ出力する。
【0030】
建設機械10のコントローラ12は、GNSS受信機11からの位置情報によって、建設機械10の下部走行体10a、上部旋回体10b又はフロント作業機10cの各位置情報(3次元座標)を取得し、予め記憶された3次元設計データ、又は、3次元設計データから生成された3次元施工データと比較する。そして、コントローラ12は、3次元設計データ又は3次元施工データに従って施工されるよう、建設機械10の下部走行体10a、上部旋回体10b又はフロント作業機10cの動作を自動制御したり(3D-MC)、モニタ14にガイダンスを表示したりする(MG)。なお、3次元設計データ及び3次元施工データは、建設機械10を管理するサーバ装置30から予め送信されたデータであってもよい。
【0031】
また、コントローラ12は、GNSS受信機11から出力された測位衛星20の衛星情報に基づいて、建設機械10(GNSS受信機11)の測位精度を計算し、測位精度情報を取得する。具体的には、コントローラ12は、計算条件設定部121と、測位精度計算部122と、送信処理部123とを備える。
【0032】
計算条件設定部121は、測位精度の計算条件を測位精度計算部122に設定する。計算条件設定部121は、測位精度の計算条件として、計算対象の建設機械10の位置情報及び測位衛星20の衛星情報、並びに、従前に計算された測位精度の情報及び計算条件等を特定し、測位精度計算部122に設定する。
【0033】
測位精度計算部122は、衛星情報を含む上記計算条件に基づいて建設機械10の測位精度を計算し、測位精度情報を取得する。測位精度計算部122は、取得された測位精度情報を送信処理部123へ出力する。
【0034】
本実施形態では、測位精度計算部122は、測位精度として位置精度低下率(Position Dilution of Precision;以下「PDOP」とも称する)を計算し、計算されたPDOPの値を測位精度情報とする。
【0035】
PDOPは、HDOP(Horizontal Dilution of Precision)と、VDOP(Vertical Dilution of Precision)とを用いて、式(2)のように計算される。
【数2】
【0036】
HDOP及びVDOPは、それぞれ、PDOPの水平成分及び垂直成分を指標化したものであり、既存の衛星測位システムで使用される手法にて計算され、GNSS受信機11から出力される衛星情報に含まれる。PDOPは、その値が大きいほど測位精度が低く、その値が小さいほど測位精度が高いことを示している。PDOPの値が1である場合、測位精度が最も高い。HDOP及びVDOPについても同様に、それぞれの値が大きいほど測位精度が低く、それぞれの値が小さいほど測位精度が高いことを示している。
【0037】
このように、測位精度出力システム1は、既存の衛星測位システムで使用される位置精度低下率を測位精度として計算し、位置精度低下率の値を測位精度情報とするので、複雑な手段を使用しなくても測位精度を容易に計算し出力することができる。これにより、測位精度出力システム1は、衛星測位システムを利用する建設機械10を含む既存のシステムに対して容易に導入することが可能となる。よって、測位精度出力システム1は、測位精度の状態を施工業者に分かり易く提示し易くすることができ、計画的且つ効率的な施工作業を支援し易くすることができる。
【0038】
送信処理部123は、GNSS受信機11から出力された建設機械10の位置情報及び測位衛星20の衛星情報と、測位精度計算部122により取得された測位精度情報と、カメラ15の撮像画像とを、通信機13を介してサーバ装置30へ送信する。
【0039】
サーバ装置30は、測位衛星20からの電波に基づいて測位するGNSS受信機11とGNSS受信機11の測位精度を計算するコントローラ12とを備える建設機械10に通信可能に接続され、測位精度の状態を出力するサーバ装置である。サーバ装置30は、建設機械10から送信された建設機械10の位置情報と、測位衛星20の衛星情報と、測位精度情報とに基づいて、建設機械10位置における測位精度の状態を判定し、判定結果に応じた記号を出力する。具体的には、サーバ装置30は、記憶部31と、飛来予測部32と、マルチパス予測部33と、測位精度予測計算部34と、測位精度予測判定部35と、出力処理部36とを備える。
【0040】
記憶部31は、建設機械10から送信された情報や建設機械10を管理する各種情報を記憶する記憶装置である。記憶部31は、建設機械10から送信された、建設機械10の位置情報、測位衛星20の衛星情報、測位精度情報(PDOPの値)、及び、カメラ15の撮像画像を記憶する。記憶部31は、建設機械10から送信されたこれらの情報として、現在送信された情報を記憶するだけでなく、過去に送信された情報も記憶しており、これらの情報を蓄積している。
【0041】
また、記憶部31は、建設機械10の施工内容を示す施工情報、並びに、建設機械10の周辺環境の位置及び形状を示す周辺環境情報を記憶する。建設機械10の施工情報は、上記の3次元設計データ又は3次元施工データ等の施工対象に関する情報の他、建設機械10の施工計画、施工の進捗及び施工精度に関する情報を含む。建設機械10の周辺環境情報は、建設機械10の施工現場を含む建設機械10の周辺の地形、並びに、建造物及び森林等の地上物における位置及び形状に関する情報である。周辺環境情報のうち、建設機械10の施工現場を含む建設機械10の周辺の地形における位置及び形状については、3次元地図データから取得することができる。周辺環境情報のうち、建造物及び森林等の地上物における位置及び形状については、施工情報に含まれ得る3次元施工データから取得することができる。
【0042】
飛来予測部32は、建設機械10から送信された建設機械10の位置情報と測位衛星20の衛星情報とに基づいて、建設機械10の位置における測位衛星20の飛来予測を行う。具体的には、飛来予測部32は、記憶部31に記憶された測位衛星20の衛星情報に含まれる測位衛星20の位置及び軌道に関する情報から、建設機械10の位置において飛来する測位衛星20の現在、過去及び未来のそれぞれの位置に関する情報を取得する。例えば、飛来予測部32は、建設機械10の位置において建設機械10の周辺又は上空に飛来する測位衛星20の現在及び過去のそれぞれの位置を特定してもよい。そして、飛来予測部32は、特定された測位衛星20の現在及び過去のそれぞれの位置から、飛来する測位衛星20の未来の位置を予測してもよい。飛来予測部32は、建設機械10の位置において飛来する測位衛星20の現在、過去及び未来のそれぞれの位置に関する情報を、マルチパス予測部33及び測位精度予測計算部34へ出力する。
【0043】
マルチパス予測部33は、飛来予測部32から出力された測位衛星20の飛来情報と、記憶部31に記憶された建設機械10の周辺環境情報及びカメラ15の撮像画像とに基づいて、測位衛星20からの電波におけるマルチパスの発生有無を予測する。マルチパス予測部33は、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生すると予測する場合、マルチパスが発生する電波の発信源の測位衛星20を特定し、特定された測位衛星20の衛星情報が測位精度の計算から除外されるよう、測位精度予測計算部34を設定する。マルチパス予測部33は、マルチパスの予測結果と測位衛星20の飛来情報とを測位精度予測計算部34へ出力する。なお、マルチパスの予測に係る処理の詳細については、
図5を用いて後述する。
【0044】
測位精度予測計算部34は、測位衛星20の位置に関する情報と衛星情報とマルチパスの予測結果とに基づいて、建設機械10の位置における測位精度(PDOP)の予測計算を行う。具体的には、測位精度予測計算部34は、次のような手法によって測位精度の予測計算を行ってもよい。
【0045】
測位衛星20の現在の位置での測位精度を計算する際であって、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生しないと予測される場合、測位精度予測計算部34は、建設機械10から送信され記憶部31に記憶された測位精度情報をそのまま使用してもよい。
【0046】
測位衛星20の現在の位置での測位精度を計算する際であって、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生すると予測される場合、測位精度予測計算部34は、マルチパスが発生する電波の発信源の測位衛星20を除外し、除外した後に残った測位衛星20の衛星情報から、測位精度を計算してもよい。
【0047】
測位衛星20の未来の位置での測位精度を計算する際であって、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生しないと予測される場合、測位精度予測計算部34は、測位衛星20の現在及び過去のそれぞれの位置での測位精度情報を特定してもよい。測位精度予測計算部34は、特定された測位衛星20の現在及び過去のそれぞれの位置での測位精度情報と、測位衛星20の未来の位置とから、測位衛星20の未来の位置での測位精度を計算してもよい。
【0048】
測位衛星20の未来の位置での測位精度を計算する際であって、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生すると予測される場合、測位精度予測計算部34は、マルチパスが発生する電波の発信源の測位衛星20を除外してもよい。除外した後に残った測位衛星20の現在及び過去のそれぞれの位置での測位精度情報を特定してもよい。測位精度予測計算部34は、特定された測位衛星20の現在及び過去のそれぞれの位置での測位精度情報と、除外した後に残った測位衛星20の未来の位置とから、測位衛星20の未来の位置での測位精度を計算してもよい。
【0049】
測位精度予測計算部34は、建設機械10の位置において飛来する測位衛星20の現在又は未来の位置での測位精度情報(PDOPの値)を、測位精度予測判定部35へ出力する。
【0050】
測位精度予測判定部35は、測位精度予測計算部34から出力された測位精度情報に基づいて、建設機械10の位置における測位精度の状態を判定する。具体的には、測位精度予測判定部35は、測位衛星20の現在又は未来の位置での測位精度情報から、建設機械10の位置における現在又は未来の測位精度の状態を判定する。測位精度の状態は、測位精度予測計算部34から出力された測位精度情報が示すPDOPの値と、測位精度の状態毎に分けて予め設定されたPDOPの閾値範囲とを比較することによって判定される。PDOPの閾値範囲は、例えば、次のように予め設定されている。すなわち、測位精度が高い状態を示す閾値範囲は、PDOPの値が2より小さい範囲であると予め設定されている。測位精度が中程度の状態を示す閾値範囲は、PDOPの値が2以上であって4より小さい範囲であると予め設定されている。測位精度が低い状態を示す閾値範囲は、PDOPの値が4以上の範囲であると予め設定されている。
【0051】
測位精度予測判定部35は、建設機械10の位置において飛来する測位衛星20の現在又は未来の位置での測位精度の状態の判定結果を、出力処理部36へ出力する。
【0052】
出力処理部36は、測位精度予測判定部35から出力された測位精度の状態の判定結果に応じた記号を選択する。この記号は、測位精度の状態を示す情報であり、図形やアイコン等によって表現されてもよい。この記号は、測位精度の状態及びPDOPの閾値範囲に対応付けて予め記憶されている。なお、記号の選択に係る処理の詳細については、
図4を用いて後述する。出力処理部36は、選択された記号をサーバ装置30の通信機へ出力する。サーバ装置30の通信機は、出力処理部36から出力された記号を端末装置40へ送信する。端末装置40は、サーバ装置30から送信された記号を表示部41によって表示する。
【0053】
このように、本実施形態の測位精度出力システム1は、測位衛星20からの電波に基づいて測位する建設機械10と、建設機械10と通信可能に接続され、建設機械10の測位精度の状態を出力するサーバ装置30とを有する。建設機械10は、測位衛星20の位置及び軌道に関する情報を含む衛星情報を電波から取得し、衛星情報に基づいて測位し、建設機械10の位置情報を取得するGNSS受信機11を備える。更に、建設機械10は、衛星情報に基づいて測位精度を計算し、測位精度情報を取得するコントローラ12を備える。サーバ装置30は、建設機械10から送信された位置情報と測位精度情報と衛星情報とに基づいて、建設機械10の位置における測位精度の状態を判定し、判定結果に応じた記号415を出力する。
【0054】
これにより、測位精度出力システム1は、衛星測位システムを利用する建設機械10の測位精度の状態を施工業者に分かり易く提示することができる。施工業者は、施工作業を効率的に行い得る計画を策定し易くなり得る。よって、測位精度出力システム1は、計画的且つ効率的な施工作業を支援することができる。
【0055】
また、測位精度出力システム1は、測位衛星20の飛来予測に基づいて測位精度の状態を判定し、判定結果に応じた記号を出力するので、測位精度の未来の状態を予測することができ、予測結果に応じた記号を出力することができる。これにより、測位精度出力システム1は、測位精度の状態の将来的な推移を、施工業者に分かり易く提示することができる。施工業者は、施工作業を更に効率的に行い得る計画を策定し易くなり得る。よって、測位精度出力システム1は、計画的且つ効率的な施工作業を更に支援することができる。
【0056】
図4は、測位精度の状態を判定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0057】
ステップS401において、サーバ装置30は、建設機械10から送信され記憶部31に記憶された建設機械10の位置情報及び測位衛星20の衛星情報を取得する。
【0058】
ステップS402において、サーバ装置30は、建設機械10の位置情報及び測位衛星20の衛星情報に基づいて、建設機械10の位置において飛来する測位衛星20の未来の位置を予測する。
【0059】
ステップS403において、サーバ装置30は、記憶部31に記憶された周辺環境情報及びカメラ15の撮像画像を取得する。
【0060】
ステップS404において、サーバ装置30は、マルチパスの予測に係る処理を行う。この処理については、
図5を用いて後述する。
【0061】
ステップS405において、サーバ装置30は、測位衛星20の位置に関する情報と衛星情報とマルチパスの予測結果とに基づいて、建設機械10の位置における測位精度(PDOP)の予測計算を行う。サーバ装置30は、上記のように、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生すると予測される場合、マルチパスが発生する電波の発信源の測位衛星20を除外し、除外した後に残った測位衛星20の衛星情報から、測位精度の予測計算を行う。
【0062】
ステップS406において、サーバ装置30は、建設機械10の位置における測位精度(PDOP)の状態を判定するために、ステップS405において取得されたPDOPの値と、上記のPDOPの閾値範囲とを比較する。サーバ装置30は、ステップS405において取得されたPDOPの値が2より小さい場合、ステップS407へ移行する。サーバ装置30は、ステップS405において取得されたPDOPの値が2以上であって4より小さい場合、ステップS409へ移行する。サーバ装置30は、ステップS405において取得されたPDOPの値が4以上の場合、ステップS411へ移行する。
【0063】
ステップS407において、サーバ装置30は、測位精度が高い状態であると判定し、ステップS408へ移行する。
【0064】
ステップS408において、サーバ装置30は、測位精度が高い状態であるという判定結果に応じた記号、例えば晴れの記号を選択し、ステップS413へ移行する。
【0065】
ステップS409において、サーバ装置30は、測位精度が中程度の状態であると判定し、ステップS410へ移行する。
【0066】
ステップS410において、サーバ装置30は、測位精度が中程度の状態であるという判定結果に応じた記号、例えば曇りの記号を選択し、ステップS413へ移行する。
【0067】
ステップS411において、サーバ装置30は、測位精度が低い状態であると判定し、ステップS412へ移行する。
【0068】
ステップS412において、サーバ装置30は、測位精度が低い状態であるという判定結果に応じた記号、例えば雨の記号を選択し、ステップS413へ移行する。
【0069】
ステップS413において、サーバ装置30は、選択された記号を出力し、端末装置40へ送信する。端末装置40は、サーバ装置30から送信された記号を表示部41にて表示する。なお、サーバ装置30は、測位精度の状態の判定結果に応じた記号と併せて、測位精度及び施工現場に関する各種情報を出力し、端末装置40の表示部41に表示させることができる。端末装置40に表示される情報の詳細については、
図6~
図9を用いて後述する。
【0070】
図5は、
図4に示すマルチパスの予測(ステップS404)に係る処理の流れを示すフローチャートである。
【0071】
ステップS501において、サーバ装置30は、ステップS403において取得された周辺環境情報及びカメラ15の撮像画像を確認すると共に、ステップS402において予測された測位衛星20の位置を確認する。そして、サーバ装置30は、周辺環境情報と撮像画像とに基づいて、撮像画像内に写る斜面等の地形や建造物等の地上物の位置及び形状を確認する。更に、サーバ装置30は、測位衛星20の位置と撮像画像と基づいて、撮像画像内における測位衛星20の位置を確認する。
【0072】
ステップS502において、サーバ装置30は、カメラ15の撮像画像内に、測位衛星20からの電波を遮る障害物が存在するか否かを判定する。具体的には、サーバ装置30は、撮像画像内における測位衛星20の位置が、撮像画像内に写る斜面等の地形や建造物等の地上物と重なっているか否かを判定する。撮像画像内における測位衛星20の位置が、撮像画像内に写る斜面等の地形や建造物等の地上物と重なっている場合、サーバ装置30は、重なっている地形や地上物を、測位衛星20からの電波を遮る障害物と判定する。この場合、サーバ装置30は、カメラ15の撮像画像内に障害物が存在すると判定し、ステップS504へ移行する。一方、撮像画像内における測位衛星20の位置が、撮像画像内に写る斜面等の地形や建造物等の地上物と重なっていない場合、サーバ装置30は、カメラ15の撮像画像内に障害物が存在しないと判定し、ステップS503へ移行する。
【0073】
ステップS503において、サーバ装置30は、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生しないと予測する。その後、サーバ装置30は、
図5に示す処理を終了し、
図4のステップS405へ移行する。
【0074】
ステップS504において、サーバ装置30は、測位衛星20からの電波にマルチパスが発生すると予測する。
【0075】
ステップS505において、サーバ装置30は、ステップS502において測位衛星20からの電波を遮る障害物と判定された部分をマスクする。
【0076】
ステップS506において、サーバ装置30は、マスクされた部分に含まれる測位衛星20を、マルチパスが発生する電波の発信源の測位衛星20として特定する。サーバ装置30は、特定された測位衛星20の衛星情報が測位精度の予測計算から除外されるよう設定する。その後、サーバ装置30は、
図5に示す処理を終了し、
図4のステップS405へ移行する。
【0077】
このように、測位精度出力システム1では、マルチパスの発生有無を予測し、マルチパスの予測結果に基づいて測位精度の状態を判定し、判定結果に応じた記号を出力するので、測位精度の状態をより正確に判定することができ、判定結果に応じた記号を出力することができる。これにより、測位精度出力システム1は、測位精度の正確な状態を施工業者に分かり易く提示することができる。施工業者は、施工作業を効率的に行い得る計画を正確に策定することができる。よって、測位精度出力システム1は、計画的且つ効率的な施工作業を正しく支援することができる。
【0078】
図6は、端末装置40の表示部41に表示される画面411の第1例を示す図である。
【0079】
サーバ装置30は、測位精度の状態の判定結果に応じた記号と併せて、測位精度及び施工現場に関する各種情報を出力し、端末装置40の表示部41に表示させることができる。例えば、端末装置40の表示部41には、
図6に示すような画面411が表示される。
図6に示す画面411は、画面411の表示内容を設定する設定項目412と、測位精度及び施工現場に関する情報を表示する表示画像413とを含む。この表示画像413には、VDOP、HDOP及びPDOPの値のそれぞれの推移を示すグラフ414と、測位精度の状態の判定結果に応じた記号415と、建設機械10が位置する施工現場内の作業区画416と、建設機械10の作業工程417とが表示される。
【0080】
グラフ414は、一方の軸である縦軸414aがVDOP、HDOP及びPDOPの値を示し、他方の軸である横軸414bが時刻を示すグラフである。VDOP、HDOP及びPDOPは、それらの値が大きいほど測位精度が低く、それらの値が小さいほど測位精度が高いことを示している。PDOP等の値に不慣れな施工業者にとっては、PDOP等の値が大きいほど測位精度が高いと誤解される可能性がある。そこで、サーバ装置30は、一方の軸である縦軸414aの正負方向を反転させてグラフ414を作成し、作成されたグラフ414を出力し、端末装置40の表示部41に表示させる。
【0081】
これにより、測位精度出力システム1は、測位精度の推移を、測位精度に不慣れな施工業者であっても直感的に分かり易い形式によって出力することができる。よって、測位精度出力システム1は、測位精度の状態を施工業者に更に分かり易く提示することができ、計画的且つ効率的な施工作業を更に支援することができる。
【0082】
また、
図6に示す表示画像413には、施工現場内の特定の作業区画416の特定の作業日におけるPDOP等の1時間毎の推移を示すグラフ414と、1時間毎の記号415と、当該特定の作業日に行われる作業工程417とが対応付けて表示されている。この1時間とは、建設機械10の施工期間内において予め設定された所定時間であり、測位精度の状態の判定及び記号415の出力を行う周期である。すなわち、サーバ装置30は、建設機械10の施工期間内の所定時間毎に測位精度の状態を判定し、当該所定時間毎に記号415を出力し、端末装置40の表示部41に表示させる。そして、サーバ装置30は、建設機械10の作業工程417を記号415に対応付けて出力し、端末装置40の表示部41に表示させる。
【0083】
これにより、測位精度出力システム1は、建設機械10の作業工程417の流れと測位精度の状態との関係を、施工業者が直感的に分かり易い形式によって出力することができる。よって、測位精度出力システム1は、それぞれの作業工程417が行われる際の測位精度の状態を施工業者に分かり易く提示することができ、計画的且つ効率的な施工作業を更に支援することができる。
【0084】
図7は、端末装置40の表示部41に表示される画面411の第2例を示す図である。
【0085】
図7に示す表示画像413には、施工現場内の複数の作業区画416のそれぞれにおける所定時間毎の記号415の推移が表示されている。すなわち、サーバ装置30は、建設機械10の施工現場内の複数の作業区画416のそれぞれにおいて測位精度の状態を判定し、作業区画416毎に記号415を出力し、端末装置40の表示部41に表示させる。
【0086】
これにより、測位精度出力システム1は、測位精度の状態における作業区画416毎の違いを、施工業者が直感的に分かり易い形式によって出力することができる。よって、測位精度出力システム1は、測位精度の状態における作業区画416毎の違いを施工業者に分かり易く提示することができ、計画的且つ効率的な施工作業を更に支援することができる。
【0087】
図8は、端末装置40の表示部41に表示される画面411の第3例を示す図である。
【0088】
図8に示す表示画像413には、施工現場の地図画像418が表示されていると共に、施工現場内の作業区画416と作業区画416毎の記号415とが地図画像418に重畳して表示されている。地図画像418は、静止画像に限定されず、動画像であってもよい。
図8に示す表示画像413には、施工期間内の任意の時刻における地図画像418及び記号415を表示させるための時刻設定ツールバー419が表示されている。すなわち、サーバ装置30は、建設機械10の施工現場の地図画像418に対して記号415を作業区画416毎に重畳させて出力し、端末装置40の表示部41に表示させる。
【0089】
これにより、測位精度出力システム1は、施工現場の環境や作業の状況と測位精度の状態との関係を、施工業者が直感的に分かり易い形式によって出力することができる。よって、測位精度出力システム1は、施工現場の環境や作業の状況に照らし合わせながら測位精度の状態を施工業者に分かり易く提示することができ、計画的且つ効率的な施工作業を更に支援することができる。
【0090】
図9は、端末装置40の表示部41に表示される画面411の第4例を示す図である。
【0091】
図9に示す画面411は、画面411の表示内容を設定する設定項目412が操作されることによって、測位精度及び施工現場に関する情報を表示する表示画像413の代わりに、測位衛星20の飛来状況を表示する表示画像420が表示されてもよい。
図9に示す表示画像420には、ある場所のある時刻における測位衛星20の位置421がプロットされた天球画像422と、任意の時刻における天球画像422を表示させるための時刻設定ツールバー423が設けられている。表示画像420には、施工業者が指定する任意の場所及び任意の時刻における測位衛星20の種類、位置及び軌道が表示され得る。すなわち、サーバ装置30は、端末装置40への操作により施工業者から指定された任意の場所及び任意の時刻における測位衛星20の種類、位置及び軌道を出力し、端末装置40の表示部41に表示させることができる。
【0092】
これにより、測位精度出力システム1は、建設機械10の測位の際に捕捉される測位衛星20の位置及び個数を、施工業者が直感的に分かり易い形式によって出力することができる。したがって、測位精度出力システム1は、どの測位衛星20によって建設機械10の位置情報が取得され、測位精度が担保されているのかを、施工業者に分かり易く提示することができ、計画的且つ効率的な施工作業を更に支援することができる。
【0093】
なお、上記の実施形態では、サーバ装置30は、記号415等の測位精度に関する各種情報を出力し、端末装置40の表示部41に表示させていたが、これに限定されず、建設機械10のモニタ14に表示させてもよい。
【0094】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0095】
1…測位精度出力システム、10…建設機械、11…GNSS受信機、12…コントローラ、15…カメラ、20,20a~20d…測位衛星、30…サーバ装置、414…グラフ、415…記号、416…作業区画、417…作業工程、418…地図画像