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  • 特許-車両側部構造 図1
  • 特許-車両側部構造 図2
  • 特許-車両側部構造 図3
  • 特許-車両側部構造 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
B62D25/04 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021027670
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129107
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】杉原 隆一
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-101094(JP,A)
【文献】特開2019-156104(JP,A)
【文献】特開2019-098974(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0267900(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部を車両上下方向に沿って延在され、断面ハット状に形成されてセンタピラーの車両幅方向外側を構成すると共に、ベルトラインよりも下方における車両幅方向外側の面に、車両上下方向に沿って凹ビードが形成されたピラーアウタパネルを有し、
前記ピラーアウタパネルは、前記ピラーアウタパネルの上側を構成するアウタアッパ部と、前記アウタアッパ部の車両幅方向内側に重ね合わされると共に前記アウタアッパ部よりも下方まで延在されてロッカに接合されたアウタロア部と、を含んで構成されており、
前記アウタアッパ部は、車両上下方向を長手方向として当該アウタアッパ部における車両幅方向外側の面を構成する天板部を備えており、
前記天板部には、当該天板部よりも車両幅方向外側に位置してドアヒンジを締結するためのヒンジ締結部が形成されており、
前記凹ビードの下端が前記ヒンジ締結部に接続されている、
車両側部構造。
【請求項2】
記アウタロア部は、前記アウタアッパ部よりも引張強度が低い材質で形成されており、
前記凹ビードは、前記アウタアッパ部と前記アウタロア部とが重ねて合わされた領域において前記アウタアッパ部に形成されている、
請求項1に記載の車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センタピラーの下部を構成するロア部に、車両前後方向に延在された凹ビード、すなわち横ビードが形成された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-098974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構造では、車両の側面衝突時に横ビードを起点としてセンタピラーのロア部が車室側に折れ曲がることで、センタピラーの上部を構成するアッパ部が車室側へ侵入するのを抑制している。しかしながら、センタピラーの折れ量などを管理するのは困難であり、側面衝突時にセンタピラーを所望の変形モードで変形されるには改善の余地がある。
【0005】
本発明は、側面衝突時にセンタピラーの上部が車室側へ侵入するのを抑制しつつ、センタピラーを所望の変形モードで変形させることができる車両側部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両側部構造は、車両側部を車両上下方向に沿って延在され、断面ハット状に形成されてセンタピラーの車両幅方向外側を構成すると共に、ベルトラインよりも下方における車両幅方向外側の面に、車両上下方向に沿って凹ビードが形成されたピラーアウタパネルを有し、前記ピラーアウタパネルは、前記ピラーアウタパネルの上側を構成するアウタアッパ部と、前記アウタアッパ部の車両幅方向内側に重ね合わされると共に前記アウタアッパ部よりも下方まで延在されてロッカに接合されたアウタロア部と、を含んで構成されており、前記アウタアッパ部は、車両上下方向を長手方向として当該アウタアッパ部における車両幅方向外側の面を構成する天板部を備えており、前記天板部には、当該天板部よりも車両幅方向外側に位置してドアヒンジを締結するためのヒンジ締結部が形成されており、前記凹ビードの下端が前記ヒンジ締結部に接続されている。
【0007】
請求項1に係る車両側部構造では、車両側部を車両上下方向に沿って延在されたピラーアウタパネルを備えている。ピラーアウタパネルは、断面ハット状に形成されてセンタピラーの車両幅方向外側を構成している。また、ピラーアウタパネルにおけるベルトラインよりも下方には、凹ビードが形成されている。これにより、車両の側面衝突時に凹ビードを起点としてセンタピラーの下部が変形されることで衝突エネルギーの一部を吸収することができ、センタピラーの上部が車室側へ侵入するのを抑制することができる。
【0008】
また、凹ビードは、車両幅方向外側の面に車両上下方向に沿って形成されている。これにより、側面衝突時には、センタピラーに衝突荷重が入力することで、凹ビードが車両幅方向内側に入り込み、ピラーアウタパネルの断面がハット状から略M字状に変形する。すなわち、センタピラーの下部を折り曲げずに変形させて衝突エネルギーの一部を吸収するため、折れ変形させて衝突エネルギーを吸収する構造と比較して、変形モードを管理しやすい。
請求項2に係る車両側部構造は、請求項1において、前記アウタロア部は、前記アウタアッパ部よりも引張強度が低い材質で形成されており、前記凹ビードは、前記アウタアッパ部と前記アウタロア部とが重ねて合わされた領域において前記アウタアッパ部に形成されている。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明に係る車両側部構造によれば、側面衝突時にセンタピラーの上部が車室側へ侵入するのを抑制しつつ、センタピラーを所望の変形モードで変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る車両側部構造が作用された車両骨格の全体構成を示す斜視図である。
図2図1におけるX部を拡大した状態を概略的に示す拡大斜視図である。
図3図2の3-3線で切断した断面を示す断面図である。
図4】実施形態の構造と比較例の構造とのエネルギー吸収量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る車両側部構造10について、図1~3を参照して説明する。
【0012】
図1には、車両側部構造10が採用された車両Vの全体構成が図示されている。この図1に示されるように、本実施形態の車両側部構造10は、主として、ロッカ12、ルーフサイドレール14、フロントピラー16、センタピラー18及びリヤピラー20を含んで構成されている。
【0013】
ロッカ12は、車両Vの下部に左右一対設けられており、それぞれ車両前後方向に延在されている。また、ロッカ12は、閉断面構造とされており、車両V骨格の一部を構成している。
【0014】
ロッカ12よりも車両上方には、ルーフサイドレール14が設けられている。ルーフサイドレール14は、車両Vの上部に左右一対設けられており、それぞれ車両前後方向に延在されている。また、ルーフサイドレール14は、閉断面構造とされており、車両V骨格の一部を構成している。
【0015】
ロッカ12の前部12Aとルーフサイドレール14の前部14Aとは、車両上下方向に延在されたフロントピラー16によって連結されている。フロントピラー16は、車両前部における車両側部に左右一対設けられており、それぞれ車両上下方向に延在されている。
【0016】
フロントピラー16よりも車両後方側には、センタピラー18が設けられている。センタピラー18は、車両上下方向に沿って延在されており、センタピラー18の下端部がロッカ12に接合されている。また、センタピラー18の上端部がルーフサイドレール14に接合されている。そして、ロッカ12、ルーフサイドレール14、フロントピラー16及びセンタピラー18で囲まれた部分は、図示しないフロントサイドドアによって開閉可能に閉塞されるドア開口部となる。センタピラー18の詳細については後述する。
【0017】
センタピラー18よりも車両後方側には、リヤピラー20が設けられている。リヤピラー20は、車両上下方向に沿って延在されており、リヤピラー20の下端部は、ロッカ12の後部12Bに接合されている。また、リヤピラー20の上端部は、ルーフサイドレール14の後部14Bに接合されている。そして、ロッカ12、ルーフサイドレール14、センタピラー18及びリヤピラー20で囲まれた部分は、図示しないリヤサイドドアによって開閉可能に閉塞されるドア開口部となる。
【0018】
(センタピラー18)
次に、本発明の腰部であるセンタピラー18について説明する。図2は、図1のX部を拡大した拡大斜視図であり、センタピラー18の下部が図示されている。ここでいうセンタピラー18の下部とは、例えば、ベルトラインBL(図1参照)よりも下方である。
【0019】
図2に示されるように、センタピラー18は、断面ハット状に形成されてセンタピラー18の車両幅方向外側を構成するピラーアウタパネル24含んで構成されている。また、センタピラー18の車両幅方向内側には、図示しない略平板状のピラーインナパネルが配設されており、このピラーインナパネルの前後両端部がピラーアウタパネル24に接合されることで、閉断面を構成している。
【0020】
ピラーアウタパネル24は、アウタアッパ部26と、アウタロア部28とを含んで構成されている。アウタアッパ部26は、ピラーアウタパネル24の上側を構成しており、天板部26A、前側縦壁部26B、前側フランジ26C及び後側縦壁部26Dを含んで構成されている。
【0021】
天板部26Aは、車両上下方向を長手方向としてアウタアッパ部26における車両幅方向外側の面を構成している。また、天板部26Aにおける下端部には、ドアヒンジを締結するためのヒンジ締結部30が形成されている。ヒンジ締結部30は、天板部26Aよりも僅かに車両幅方向外側に位置しており、三カ所に取付孔32が形成されている。さらに、天板部26Aには、凹ビード26Eが形成されている。凹ビード26Eの詳細については後述する。
【0022】
天板部26Aの前端部から車両幅方向内側へ向かって前側縦壁部26Bが延在されている。また、前側縦壁部26Bの車両幅方向内側の端部から車両前方側へ向かって前側フランジ26Cが延在されており、前側フランジ26Cは、図示しないピラーインナパネルと接合される。さらに、図3に示されるように、天板部26Aの後端部から車両幅方向内側へ向かって後側縦壁部26Dが延在されている。
【0023】
図2に示されるように、アウタロア部28は、アウタアッパ部26の車両幅方向内側に重ね合わされた状態で配設されており、アウタアッパ部26よりも下方まで延在されてロッカ12(図1参照)に接合されている。また、アウタロア部28は、アウタアッパ部26よりも引張強度が低い材質で形成されている。
【0024】
アウタロア部28は、天板部28A、前側縦壁部28B、前側フランジ28C、後側縦壁部28D及び後側フランジ28Eを含んで構成されている。
【0025】
天板部28Aは、車両上下方向を長手方向としてアウタアッパ部26における車両幅方向外側の面を構成しており、一部が天板部26Aに重ね合わされている。
【0026】
天板部28Aの前端部から車両幅方向内側へ向かって前側縦壁部28Bが延在されている。また、前側縦壁部28Bの車両幅方向内側の端部から車両前方側へ向かって前側フランジ28Cが延在されている。さらに、天板部28Aの後端部から車両幅方向内側へ向かって後側縦壁部26Dが延在されており、後側縦壁部28Dの車両幅方向内側の端部から車両後方側へ向かって後側フランジ28Eが延在されている。
【0027】
(凹ビード26E)
次に、凹ビード26Eについて説明する。凹ビード26Eは、アウタアッパ部26の天板部26Aに車両上下方向に沿って形成されている。具体的には、凹ビード26Eは、天板部26Aと前側縦壁部26Bとの稜線に沿って、上部よりも下部が車両前方に位置するようにやや傾斜している。そして、凹ビード26Eの下端部は、ヒンジ締結部30に接続されている。
【0028】
図3に示されるように、凹ビード26Eは、車両幅方向内側へ凹んだ形状に形成されており、本実施形態では一例として、凹ビード26Eの深さが2mm程度となっている。
【0029】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0030】
本実施形態に係る車両側部構造10では、ピラーアウタパネル24は、断面ハット状に形成されてセンタピラー18の車両幅方向外側を構成している。また、ピラーアウタパネル24におけるベルトラインよりも下方には、凹ビード26Eが形成されている。これにより、車両の側面衝突時に凹ビード26Eを起点としてセンタピラー18の下部が変形されることで衝突エネルギーの一部を吸収することができ、センタピラー18の上部が車室側へ侵入するのを抑制することができる。
【0031】
また、凹ビード26Eは、センタピラー18の下部における車両幅方向外側の天板部26Aに車両上下方向に沿って形成されている。これにより、側面衝突時には、センタピラー18に衝突荷重が入力することで、凹ビード26Eが車両幅方向内側に入り込み、ピラーアウタパネル24の断面がハット状から略M字状に変形する。すなわち、センタピラー18の下部を折り曲げずに変形させて衝突エネルギーの一部を吸収するため、折れ変形させて衝突エネルギーを吸収する構造と比較して、変形モードを管理しやすい。
【0032】
図4は、凹ビード26Eを形成した実施形態の構造と、凹ビード26Eが形成されていない比較例の構造とでエネルギー吸収量を比較したグラフである。エネルギー吸収量は、CAE解析により算出した。この図4に示されるように、凹ビード26Eが形成された実施形態の構造では、比較例の構造よりもアウタアッパ部26のエネルギー吸収量が20%以上増加したことが確認できる。
【0033】
以上、実施形態に係る車両側部構造10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、図2に示されるように、凹ビード26Eをやや傾斜して形成したが、これに限定されず、車両上下方向に略垂直に形成してもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、凹ビード26Eの下端部をヒンジ締結部30に接続したが、これに限定されない。さらに、凹ビード26Eの深さや形状については特に限定しない。
【符号の説明】
【0035】
10 車両側部構造
18 センタピラー
24 ピラーアウタパネル
BL ベルトライン
図1
図2
図3
図4