(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】仮設煙突設置構造
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20250107BHJP
E04H 12/28 20060101ALI20250107BHJP
F23J 13/02 20060101ALI20250107BHJP
F23J 13/04 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
E04H12/28 A
F23J13/02
F23J13/04 Z
(21)【出願番号】P 2021053576
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2024-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 順行
(72)【発明者】
【氏名】槇元 秀樹
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-153345(JP,A)
【文献】実開昭57-106688(JP,U)
【文献】特開昭51-099339(JP,A)
【文献】特開2012-152685(JP,A)
【文献】実開昭51-062222(JP,U)
【文献】特開昭49-038401(JP,A)
【文献】特開2013-216733(JP,A)
【文献】滋賀県長浜市のコンテナハウスセルフビルドお宅訪問,北欧直販ウェブサイト,[online],合同会社SCANDIC,2016年12月16日,[2024年8月29日検索], URL:https://hokuou-chokuhan.com/stove/3252.html
【文献】春の全工事,FIRE WORLD福岡ウェブサイト,[online],五大株式会社,2016年04月27日,[2024年8月29日検索], URL:http://go-dai.jp/blog/archives/date/2016/04
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 5/00- 7/32
E04H 12/00-14/00
E04G 23/00-23/08
F23J 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に設置され、筒身の内部にライニング材が設けられた既設煙突と、
前記既設煙突
の根元部分の外側面に
地面に接しない状態で支持される基台部と、前記基台部に支持され前記既設煙突
の外部に当該既設煙突に沿って配置される筒身部
とを有する仮設煙突と
を備える仮設煙突
設置構造。
【請求項2】
前記筒身部は、上下方向に接合された複数の筒身部材を有し、
複数の前記筒身部材は、普通鋼により形成される
請求項1に記載の仮設煙突
設置構造。
【請求項3】
複数の前記筒身部材は、表面に耐酸性の塗料による塗膜が形成される
請求項2に記載の仮設煙突
設置構造。
【請求項4】
複数の前記筒身部材は、最も下側に配置される第1筒身部材と、最も上側に配置される第2筒身部材と、前記第1筒身部材と前記第2筒身部材との間に配置される複数の第3筒身部材とを有し、
少なくとも前記第3筒身部材は、それぞれ同一形状及び同一寸法となるように形成される
請求項
2又は請求項
3に記載の仮設煙突
設置構造。
【請求項5】
複数の前記筒身部材は、上下方向の両端部にフランジ部を有し、上下に並んで配置される前記筒身部材の前記フランジ部同士がボルトにより固定された状態で接合される
請求項
2から請求項4のいずれか一項に記載の仮設煙突
設置構造。
【請求項6】
前記既設煙突に支持され、前記筒身部の外周面との間に隙間を空けた状態で前記筒身部を囲うように配置され、前記筒身部の水平方向への移動を規制する規制部を更に備える
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の仮設煙突
設置構造。
【請求項7】
前記筒身部は、前記既設煙突が設けられる側とは反対側に排気を取り込む開口部を有する
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の仮設煙突
設置構造。
【請求項8】
前記基台部は、
前記既設煙突から水平方向に延びて前記筒身部を載置する載置フレームと、
前記載置フレームのうち前記既設煙突側とは反対側の端部から前記既設煙突側に向けて斜め下方に延び、前記既設煙突に連結される支持フレームと
を有する
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の仮設煙突
設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仮設煙突に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば石炭焚き、重油焚き、LNG焚きボイラー等を有する設備における煙突内面には、排ガスによる筒身鋼板の腐食防止を主目的としてセメント系ライニング材が施工されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ライニング材は、排ガス中の例えば酸性物質の腐食性物質及び水分等の浸透によって経年的に劣化して厚さが減少し、防錆能力が低下するため、修繕が必要となる。ライニング材を修繕する場合、上記の設備を停止させ、排煙を停止させる必要があるため、部分的な範囲の修繕しか行うことができない。このため、既設煙突の周辺に仮設煙突を設置し、仮設煙突から排煙させることで設備を停止することなくライニング材の修繕を行うことが提案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、既設煙突の周辺には仮設煙突を建設するための十分な作業用地がない場合が多いという問題がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、既設煙突の周辺に十分な作業用地がない場合でも設置可能な仮設煙突を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る仮設煙突は、既設煙突に支持される基台部と、前記基台部に支持され、前記既設煙突に沿って配置される筒身部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、既設煙突の周辺に十分な作業用地がない場合でも設置可能な仮設煙突を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る仮設煙突の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、仮設煙突の基台部の一例を示す側面図である。
【
図3】
図3は、仮設煙突の基台部の一例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、仮設煙突の筒身部の一例を示す側面図(一部断面図)である。
【
図5】
図5は、仮設煙突の規制部の一例を示す平面図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る仮設煙突の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る仮設煙突の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、本実施形態に係る仮設煙突100の一例を示す図である。
図1に示す仮設煙突100は、既設煙突50が使用できない期間において、既設煙突50に代えて排ガスを排出する。
【0012】
既設煙突50は、例えば石炭焚き、重油焚き、LNG焚きボイラー等を有する設備からの排ガスを排出する。このような既設煙突50は、筒身の腐食防止等を目的としてライニング材が設けられる場合がある。仮設煙突100は、例えば既設煙突50のライニング材を修繕する期間等において、既設煙突50に代えて、上記の施設からの排ガスを排出するために建造される。このため、本実施形態に係る仮設煙突100は、使用期間が限定される。
【0013】
図1に示すように、仮設煙突100は、基台部10と、筒身部20と、規制部30とを有する。
【0014】
基台部10は、既設煙突50に支持される。
図2は、仮設煙突100の基台部10の一例を示す側面図である。
図3は、仮設煙突100の基台部10の一例を示す平面図である。
図2及び
図3に示すように、基台部10は、載置フレーム11と、支持フレーム12とを有する。載置フレーム11は、既設煙突50から水平方向に延びている。載置フレーム11は、筒身部20が載置される。
【0015】
載置フレーム11は、延出部材11aと、連結部材11bと、内側部材11cとを有する。延出部材11aは、既設煙突50から2本平行又はほぼ平行に水平方向に延びている。
【0016】
連結部材11bは、延出部材11aの先端部同士と、基端部側の所定位置同士とを連結する。所定位置は、例えば延出部材11aの先端部からの距離が連結部材11bと同一又はほぼ同一となる位置とすることができる。この構成により、延出部材11aと連結部材11bとで平面視正方形状又は略正方形状の部分が形成される。
【0017】
内側部材11cは、延出部材11a及び連結部材11bに接合される。内側部材11cは、上記した延出部材11a及び連結部材11bにおける平面視正方形状又は略正方形状の部分の4辺の中点同士を結ぶ直線の位置に配置される。内側部材11cは、平面視正方形状又は略正方形状に形成される。
【0018】
支持フレーム12は、2本の延出部材11aの先端部から既設煙突50側に向けて斜め下方に延び、既設煙突50に連結される。
【0019】
上記のように、基台部10は、載置フレーム11及び支持フレーム12のそれぞれが既設煙突50に連結される。したがって、仮設煙突100は、基礎工が設けられず、既設煙突50を支持構造体とした構成となっている。既設煙突50は、例えば金属、コンクリート等により建造され、仮設煙突100を支持するために十分な強度を備えている。
【0020】
図1に示すように、筒身部20は、基台部10に支持される。筒身部20は、既設煙突50に沿って配置される。筒身部20は、上下方向に接合された複数の筒身部材21を有する。複数の筒身部材21は、それぞれ普通鋼により形成される。
【0021】
筒身部20は、既設煙突50が設けられる側とは反対側に排気を取り込む開口部22を有する開口部22には、排ガスを排出する設備等の排ガス流路23が接続される。仮設煙突100は、筒身部20の開口部22から排ガスが取り込まれ、この排ガスが筒身部20の内部を上昇して筒身部20の最上部から排出される。開口部22が既設煙突50とは反対側に配置されることにより、排ガス流路23の取り回す場合に既設煙突50との干渉を避けることができる。
【0022】
複数の筒身部材21は、第1筒身部材21aと、第2筒身部材21bと、第3筒身部材21cとを有する。第1筒身部材21aは、最も下側に配置される筒身部材21である。第1筒身部材21aは、上記した内側部材11cに載置される。第2筒身部材21bは、最も上側に配置される筒身部材21である。
【0023】
第3筒身部材21cは、第1筒身部材21aと第2筒身部材21bとの間に複数配置される。第3筒身部材21cは、それぞれ同一形状及び同一寸法となるように形成される。第3筒身部材21cは、例えば最大径が2.5m以下、上下方向の長さが10m以下となるように形成される。なお、第3筒身部材21cの寸法については上記に限定されない。
【0024】
図4は、仮設煙突100の筒身部20の一例を示す側面図(一部断面図)である。
図4に示すように、複数の筒身部材21は、上下方向の両端部にフランジ部21fを有する。上下に並んで配置される筒身部材21は、溶接ではなく、フランジ部21f同士がボルト21tにより固定された状態で接合される。
【0025】
このように、複数の筒身部材21は、フランジ部21fによるフランジ継手がボルト接合された構成であるため、溶接作業を行うことなく接合される。このため、溶接により接合する場合に比べて、接合作業及び分解作業の工期が短縮化される。
【0026】
なお、
図4において一部断面で示すように、複数の筒身部材21は、それぞれ内周面21mに耐酸性の塗料による塗膜21rが形成されてもよい。塗膜21rが形成されることにより、限定された使用期間において、筒身部材21の腐食を抑制することが可能となる。
【0027】
規制部30は、既設煙突50に支持され、筒身部20の水平方向への移動を規制する。規制部30は、上下方向の複数個所に配置される。
図5は、仮設煙突100の規制部30の一例を示す平面図である。
【0028】
図5に示すように、規制部30は、規制フレーム31と、規制板32とを有する。規制フレーム31は、延出部材31aと、連結部材31bとを有する。延出部材31aは、既設煙突50から2本平行又はほぼ平行に水平方向に延びている。
【0029】
連結部材31bは、延出部材31aの先端部同士と、基端部側の所定位置同士とを連結する。所定位置は、例えば延出部材31aの先端部からの距離が連結部材31bと同一又はほぼ同一となる位置とすることができる。この構成により、延出部材31aと連結部材31bとで平面視正方形状又は略正方形状の部分が形成される。
【0030】
規制板32は、延出部材31aと連結部材31bとで囲まれた部分に配置される。規制板32は、筒身部20を囲うように配置される。規制板32は、筒身部材21の外周面21sの形状に対応した形状の開口部32aを有する。本実施形態において、規制板32の開口部32aは、例えば円形状である。開口部32aの径は、例えば筒身部材21の外周面21sとの間に隙間を空けた状態となるように設定される。
【0031】
規制部30は、平常時においては、規制板32と筒身部材21との間に隙間を空けた状態、つまり、筒身部材21の移動を規制していない状態である。これに対して、筒身部材21が傾いた場合等において、筒身部材21が規制板32に当接し、規制板32により水平方向への移動が規制される。このため、筒身部材21の傾きが大きくなることを抑制できる。
【0032】
上記のように構成される仮設煙突100の建設方法を説明する。まず、既設煙突50に基台部10を設置する。基台部10を設置した後、当該基台部10に筒身部20を設置する。このように、既設煙突50を支持構造体として仮設煙突100を建設することができる。このため、既設煙突50の周辺に十分な作業用地が確保できない場合でも、仮設煙突100を建設可能となる。
【0033】
筒身部20を設置する場合、複数の筒身部材21のフランジ部21f同士をボルトで固定することで最下部から上方へ順に接合することができる。また、筒身部20の内部にライニング材等を形成せず、筒身部材21の内周面を露出させた状態又は当該筒身部材21の内周面に塗膜21rが形成された状態で排煙を流通させる。
【0034】
仮設煙突100は、既設煙突50のライニング材を補修する期間に使用するものであるため、既設煙突50のような長期的に使用する煙突とは異なり、腐食等を考慮する必要がない。このため、複数の筒身部材21同士を接合する場合に溶接を行わず、フランジ部21f同士をボルト21tで接合する接合方法を採用し、ライニング材を設けない態様とすることで、短い工期で仮設煙突100を建設することができる。
【0035】
既設煙突50のライニング材の補修が完了し、既設煙突50が使用可能となった場合、仮設煙突100に接続されていた排ガス流路23の接続を既設煙突50に切り替え、仮設煙突100に排ガスが流れないようにする。
【0036】
その後、仮設煙突100の上部から順にボルト21tを取り外すことで筒身部材21同士を分離する。最下部の筒身部材21(第1筒身部材)を基台部10から取り外した後、基台部10を既設煙突50から取り外す。これにより、仮設煙突100を撤去することができる。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る仮設煙突100は、既設煙突50に支持される基台部10と、基台部10に支持され、既設煙突50に沿って配置される筒身部20とを備える。
【0038】
従って、既設煙突50を支持構造体として基台部10及び筒身部20を建設することにより、既設煙突50の周辺に十分な作業用地が確保できない場合でも、仮設煙突100を建設可能となる。
【0039】
本実施形態に係る仮設煙突100において、筒身部20は、上下方向に接合された複数の筒身部材21を有し、複数の筒身部材21は、普通鋼により形成される。従って、仮設煙突100を低コストで製造可能となる。
【0040】
本実施形態に係る仮設煙突100において、複数の筒身部材21は、表面に耐酸性の塗料による塗膜21rが形成される。従って、既設煙突50のライニング材を補修する期間等の限定的な期間における使用において、一定程度の腐食を防止することができる。
【0041】
本実施形態に係る仮設煙突100において、複数の筒身部材21は、最も下側に配置される第1筒身部材21aと、最も上側に配置される第2筒身部材21bと、第1筒身部材21aと第2筒身部材21bとの間に配置される複数の第3筒身部材21cとを有し、少なくとも第3筒身部材21cは、それぞれ同一形状及び同一寸法となるように形成される。したがって、仮設煙突100を低コストかつ容易に製造可能となる。
【0042】
本実施形態に係る仮設煙突100において、複数の筒身部材21は、上下方向の両端部にフランジ部21fを有し、上下に並んで配置される筒身部材21のフランジ部21f同士がボルト21tにより固定された状態で接合される。従って、仮設煙突100を低コストかつ短い工期で製造可能となる。
【0043】
本実施形態に係る仮設煙突100において、既設煙突50に支持され、筒身部20の外周面との間に隙間を空けた状態で筒身部20を囲うように配置され、筒身部20の水平方向への移動を規制する規制部30を更に備える。従って、筒身部20を安定した状態で建設できる。
【0044】
本実施形態に係る仮設煙突100において、筒身部20は、既設煙突50が設けられる側とは反対側に排気を取り込む開口部22を有する。従って、仮設煙突100に排ガスを引き回す際に既設煙突50との干渉を避けることができる。
【0045】
本実施形態に係る仮設煙突100において、基台部10は、既設煙突50から水平方向に延びて筒身部20を載置する載置フレーム11と、載置フレーム11のうち既設煙突50側とは反対側の端部から既設煙突50側に向けて斜め下方に延び、既設煙突50に連結される支持フレーム12とを有する。従って、基台部10を強固に形成することができ、筒身部20を安定して載置することができる。
【0046】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、仮設煙突100の高さを既設煙突50と同様の高さとする構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。
【0047】
図6は、変形例に係る仮設煙突100Aの一例を示す図である。
図6に示すように、仮設煙突100Aは、例えば既設煙突50の高さよりも低い高さとしてもよい。また、
図6に示すように、仮設煙突100Aの最上部の筒身部材21(第2筒身部材21b)が屈曲された形状であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10 基台部
11 載置フレーム
11a,31a 延出部材
11b,31b 連結部材
11c 内側部材
12 支持フレーム
20 筒身部
21 筒身部材
21a 第1筒身部材
21b 第2筒身部材
21c 第3筒身部材
21f フランジ部
21m 内周面
21r 塗膜
21s 外周面
21t ボルト
22,32a 開口部
23 排ガス流路
30 規制部
31 規制フレーム
32 規制板
50 既設煙突
100,100A 仮設煙突