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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】基地局、システム、及び、情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20250107BHJP
   H04B 7/022 20170101ALI20250107BHJP
   H04B 7/026 20170101ALI20250107BHJP
【FI】
H04J99/00 100
H04B7/022
H04B7/026
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021065982
(22)【出願日】2021-04-08
(65)【公開番号】P2022161289
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 雅文
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
【審査官】川口 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-074594(JP,A)
【文献】特開2013-009225(JP,A)
【文献】特開2019-033513(JP,A)
【文献】特開2017-130962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/022-7/026
H04J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の基地局が接続するバックボーン回線に接続する通信部と、
M(1<M)本の受信アンテナと、
N(1<N)台の端末から同時に受信した信号から、所定の処理によって、前記N台の端末のうちの1台である第1の端末からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理と、
前記第1のデータを基に、前記所定の処理が行われる前の前記第1の端末から到来する信号のレプリカである第2の信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第2の信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の端末から前記第1の端末を除外したN-1台の端末の1つを新たに第1の端末として順次、前記第1の処理から第3の処理を繰り返すことと、
を実行する制御部を備える基地局であって、
前記制御部は、
前記第1の処理によって取得された前記第1のデータを前記バックボーン回線を通じて1又は複数の他の基地局と共有し、
前記M本の受信アンテナよりも前記N台の端末の方が多い場合に、前記第1の処理によって前記第1のデータが取得されなかった端末について、前記1又は複数の他の基地局のいずれかから受信した第1のデータを用いて、前記第2の処理及び前記第3の処理を実行する、
基地局。
【請求項2】
1又は複数の基地局が接続するバックボーン回線に接続する通信部と、
M(1<M)本の受信アンテナと、
N(1<N)台の端末から同時に受信した信号から、所定の処理によって、前記N
台の端末のうちの1台である第1の端末からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理と、
前記第1のデータを基に、前記所定の処理が行われる前の前記第1の端末から到来する信号のレプリカである第2の信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第2の信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の端末から前記第1の端末を除外したN-1台の端末の1つを新たに第1の端末として順次、前記第1の処理から第3の処理を繰り返すことと、
を実行する制御部を備える基地局であって、
前記制御部は、
前記第1の処理によって取得された前記第1のデータを前記バックボーン回線を通じて1又は複数の他の基地局と共有し、
前記M本の受信アンテナよりも前記N台の端末の方が多い場合に、前記第1の処理によって前記第1のデータが取得されなかった端末について、前記1又は複数の他の基地局のいずれかから受信した第1のデータを用いて、前記第2の処理及び前記第3の処理を実行する、
基地局と、
前記基地局による前記第1の処理によって取得された前記第1のデータに応じた処理を行い、前記第1の端末に応答するサーバと、
の組み合わせを複数含む、
システム。
【請求項3】
前記バックボーン回線に接続する通信部と、
前記基地局から送信された第1のデータを受信することと、
前記受信した第1のデータを他の基地局へ送信することと、
を実行する制御部と、
を備える情報処理装置をさらに含む請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記情報処理装置の前記制御部は、
前記受信した第1のデータに対応する前記第1の端末から信号を受信している基地局を特定し、
前記第1のデータの送信元である基地局以外の前記特定した基地局へ前記受信した第1のデータを送信する、
請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記情報処理装置の前記制御部は、
数の基地局が含まれるセル内に存在する、信号を発信した複数の端末のすべてについて、第1のデータが取得された場合に、前記複数の基地局へ前記第1の処理から前記第3の処理の停止を送信する、
請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
1又は複数の基地局が接続するバックボーン回線に接続する通信部と、
M(1<M)本の受信アンテナと、
を備える基地局が、
N(1<N)台の端末から同時に受信した信号から、所定の処理によって、前記N台の端末のうちの1台である第1の端末からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理と、
前記第1のデータを基に、前記所定の処理が行われる前の前記第1の端末から到来する信号のレプリカである第2の信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第2の信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の端末から前記第1の端末を除外したN-1台の端末の1つを新たに第1の端末として順次、前記第1の処理から前記第3の処理を繰り返すことと、
を実行し、
前記第1の処理によって取得された前記第1のデータを前記バックボーン回線を通じて1又は複数の他の基地局と共有し、
前記M本の受信アンテナよりも前記N台の端末の方が多い場合に、前記第1の処理によって前記第1のデータが取得されなかった端末について、前記1又は複数の他の基地局のいずれかから受信した第1のデータを用いて、前記第2の処理及び前記第3の処理を実行する、
方法。
【請求項7】
前記バックボーン回線に接続する通信部を備える情報処理装置が、
前記基地局から送信された第1のデータを受信することと、
前記受信した第1のデータを他の基地局へ送信することと、
を実行する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記情報処理装置が、
前記受信した第1のデータに対応する前記第1の端末から信号を受信している基地局を特定し、
前記第1のデータの送信元である基地局以外の前記特定した基地局へ前記受信した第1のデータを送信する、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記情報処理装置が、
数の基地局が含まれるセル内に存在する、信号を発信した複数の端末のすべてについて、第1のデータが取得された場合に、前記複数の基地局へ前記第1の処理から前記第3の処理の停止を送信する、
請求項7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、IoT(Internet of Things)のように、インターネットのような公衆ネットワークに接続可能な端末を制御に利用したいというニーズが増えており、公衆ネットワークにアクセスする無線通信の低遅延化が求められている。一方、無線通信では、Multiple
Input Multiple Output(MIMO)が利用されている。MIMOは、基地局と端末とが、それぞれ複数のアンテナにより同一周波数帯で通信する技術である。また、MIMOにおいて、複数の端末が同時に通信に関与する技術は、マルチユーザのMIMOと呼ばれる。このような無線通信技術の発達とともに、公衆ネットワークにアクセスする端末数の今後の増加が予測されており、上り回線のひっ迫が懸念されている。
【0003】
端末は、電力領域上りリンク非直交多重(Power-Domain UpLink Non Orthogonal Multiple Access:PD-UL-NOMA)を用いて電波を送信する。PD-UL-NOMAは
、上りリンクにおいて、時間及び周波数で分割された領域に加えて、同一時間及び同一周波数における電力領域でも多重化を実現する技術である。これによって、受信アンテナ数よりも多い送信アンテナ数、すなわち、受信アンテナ数よりも多い端末数を同時に接続させることが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】岸山祥久、須山聡、奥村幸彦、“5Gシステムの最新無線アクセス技術とフィールド実証実験結果 -無線データ伝送の超高速化・高速移動対応・周波数利用効率向上を実現する技術-”、NTT DoCoMoテクニカルジャーナル、2017年4月、Vol. 25、No.1、p.16-29
【文献】須山聡、奥山達樹、井上祐樹、岸山祥久、“5Gマルチアンテナ技術”、 NTT DoCoMoテクニカルジャーナル、2016年1月、Vol. 23、No.4、p.30-39.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、PD-UL-NOMAを用いた通信のように、基地局へ同一のタイミングで送信する端末の数が増加し、受信アンテナ数よりも接続端末数が多くなると、通信の品質が低下する可能性が高くなる。
【0006】
本開示の実施の態様は、無線通信の品質の低下を抑制可能な基地局、システム、及び、方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様の一つは、
1又は複数の基地局が接続するバックボーン回線に接続する通信部と、
M(1<M)本の受信アンテナと、
N(1<N)台の端末から同時に受信した信号から、所定の処理によって、前記N台の端末のうちの1台である第1の端末からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理と、
前記第1のデータを基に、前記所定の処理が行われる前の前記第1の端末から到来する
信号のレプリカである第2の信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第2の信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の端末から前記第1の端末を除外したN-1台の端末の1つを新たに第1の端末として順次、前記第1の処理から前記第3の処理を繰り返すことと、
を実行する制御部を備える基地局であって、
前記制御部は、
前記第1の処理によって取得された前記第1のデータを前記バックボーン回線を通じて1又は複数の他の基地局と共有し、
前記M本の受信アンテナよりも前記N台の端末の方が多い場合に、前記第1の処理によって前記第1のデータが取得されなかった端末について、前記1又は複数の他の基地局のいずれかから受信した第1のデータを用いて、前記第2の処理及び前記第3の処理を実行する、
基地局である。
【0008】
本開示の他の態様の一つは、
1又は複数の基地局が接続するバックボーン回線に接続する通信部と、
M(1<M)本の受信アンテナと、
N(1<N)台の端末から同時に受信した信号から、所定の処理によって、前記N台の端末のうちの1台である第1の端末からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理と、
前記第1のデータを基に、前記所定の処理が行われる前の前記第1の端末から到来する信号のレプリカである第2の信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第2の信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の端末から前記第1の端末を除外したN-1台の端末の1つを新たに第1の端末として順次、前記第1の処理から第3の処理を繰り返すことと、
を実行する制御部を備える基地局であって、
前記制御部は、
前記第1の処理によって取得された前記第1のデータを前記バックボーン回線を通じて1又は複数の他の基地局と共有し、
前記M本の受信アンテナよりも前記N台の端末の方が多い場合に、前記第1の処理によって前記第1のデータが取得されなかった端末について、前記1又は複数の他の基地局のいずれかから受信した第1のデータを用いて、前記第2の処理及び前記第3の処理を実行する、
基地局と、
前記基地局に接続し、前記基地局による前記第1の処理によって取得された前記第1のデータについて処理を行うサーバと、
の組み合わせを複数含む、
システムである。
【0009】
本開示の他の態様の一つは、
1又は複数の基地局が接続するバックボーン回線に接続する通信部と、
M(1<M)本の受信アンテナと、
を備える基地局が、
N(1<N)台の端末から同時に受信した信号から、所定の処理によって、前記N台の端末のうちの1台である第1の端末からの第1の信号を取得し、前記第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する第1の処理と、
前記第1のデータを基に、前記所定の処理が行われる前の前記第1の端末から到来する信号のレプリカである第2の信号を生成する第2の処理と、
前記受信した信号から前記生成された前記第2の信号を除外した信号を抽出する第3の処理と、
前記抽出された信号に対して前記N台の端末から前記第1の端末を除外したN-1台の端末の1つを新たに第1の端末として順次、前記第1の処理から前記第3の処理を繰り返すことと、
を実行し、
前記第1の処理によって取得された前記第1のデータを前記バックボーン回線を通じて1又は複数の他の基地局と共有し、
前記M本の受信アンテナよりも前記N台の端末の方が多い場合に、前記第1の処理によって前記第1のデータが取得されなかった端末について、前記1又は複数の他の基地局のいずれかから受信した第1のデータを用いて、前記第2の処理及び前記第3の処理を実行する、
方法である。
【0010】
本開示の態様の一つによれば、無線通信の品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る無線通信システムの構成を例示する図である。
図2図2は、SIC処理の一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態の基地局とMulti-access Edge Computing(MEC)サーバとのハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、基地局及び制御局の機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、制御局の端末管理テーブルの一例である。
図6図6は、基地局のMIMO受信処理のフローチャートの一例である。
図7図7は、制御局の端末管理処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の態様の一つは、1又は複数の基地局が接続するバックボーン回線に接続する通信部と、M(1<M)本の受信アンテナと、制御部とを備える基地局である。制御部は、N(1<N)台の端末から同時に信号を受信した場合に、以下の、第1の処理、第2の処理、及び、第3の処理を繰り返し実行する。
【0013】
第1の処理は、N台の端末から同時に受信した信号から、所定の処理によって、N台の端末のうちの1台である第1の端末からの第1の信号を取得し、第1の信号を復調及び復号して第1のデータを取得する処理である。第2の処理は、第1の処理によって取得された第1のデータを基に、所定の処理が行われる前の第1の端末から到来する信号のレプリカである第2の信号を生成する処理である。第3の処理は、N台の端末から同時に受信した信号から第2の処理によって生成された第2の信号を除外した信号を抽出する処理である。制御部は、第3の処理によって抽出された信号に対してN台の端末から第1の端末を除外したN-1台の端末の1つを新たに第1の端末として順次、第1の処理から第3の処理を繰り返す。第1の処理、第2の処理、及び、第3の処理は、逐次干渉除去(Successive Interference Cancellation:SIC)と呼ばれる処理である。
【0014】
所定の処理は、N台の端末から同時に受信した信号から、第1の端末から到来した信号を取り出す処理である。N台の端末から同時に受信した信号から、第1の端末から到来した信号を取り出す処理には、例えば、受信ダイバーシチ処理がある。受信ダイバーシチ処理には、例えば、最小二乗誤差(Minimum Mean Square Error:MMSE)方式の処理がある。受信ダイバーシチ処理は、チャネル行列Hを用いて定義されるウェイトWを用いるこ
とで、N台の端末から同時に受信した信号から第1の端末から到来した信号を取り出し、他の端末からの信号を干渉信号としキャンセルする。なお、N台の端末から同時に受信した信号から、第1の端末から到来した信号を分離させる処理は特定の方法に限定されない。
【0015】
なお、本開示において、「信号」と称する場合には、アナログ信号及びデジタル信号を含む、0と1で2値化されていない状態の信号を示す。本開示において、「データ」とは、0と1で2値化された信号を示す。
【0016】
本開示の態様の一つでは、当該基地局の制御部は、第1の処理によって取得された第1のデータをバックボーン回線を通じて1又は複数の他の基地局と共有する。また、当該基地局の制御部は、M本の受信アンテナよりもN台の端末の方が多い場合に、第1の処理によって第1のデータが取得されなかった端末について、1又は複数の他の基地局のいずれかから受信した当該端末の第1のデータを用いて、第2の処理及び第3の処理を実行する。
【0017】
M本の受信アンテナよりもN台の端末の方が多い場合には、N-M台の端末からの信号は、所定の処理を行ってもキャンセルできず、干渉信号として残るため、第1の端末から到来した信号を復調する際に当該干渉信号の影響によりエラーが発生し、第1のデータが取得できない場合がある。本開示の態様の一つでは、基地局間で、各基地局が取得した各端末の第1のデータを共有するので、第1の端末からの第1のデータが取得できない場合でも、他の基地局から受信した第1の端末に対応する第1のデータを用いて、第1の端末から到来した信号のレプリカである第2の信号を作成し、前回の第3の処理によって抽出された信号から第2の信号を除去することができる。これによって、基地局において、1の端末からの第1のデータが取得できない場合でも、他の基地局から受信した第1のデータ用いて第2の信号を作成して除去できるため、残りの端末からの信号にとって干渉信号となる信号が減少する。これによって、残りの端末についての第1の処理から第3の処理を継続することができ、N台の端末から同時に受信した信号から、1の端末から到来した信号を分離できる端末の数が増える可能性が高くなり、端末間干渉除去性能が向上する。
【0018】
本開示の他の態様の一つは、上述の基地局と、当該基地局による第1の処理によって取得された第1のデータに応じた処理を行い、第1の端末に応答するサーバと、の組み合わせを複数含むシステムである。当該サーバは、例えば、MECサーバである。本開示の他の態様の一つによれば、基地局によって復調及び復号されて取得された第1のデータが、当該基地局に接続するサーバによって処理され、処理結果としての応答が第1の端末へ返されるので、低遅延化を実現することができる。
【0019】
本開示の他の態様の一つであるシステムは、バックボーン回線に接続する通信部と、基地局から送信された第1のデータを受信することと、受信した第1のデータを他の基地局へ送信することと、を実行する制御部と、を備える情報処理装置をさらに含んでもよい。これによって、各基地局で取得された第1のデータを情報処理装置に集約することができる。また、第1のデータは0と1で2値化されたデータであるため、サイズが小さく、バックボーン回線の使用帯域を削減することができる。また、各基地局で受信された信号を情報処理装置に集約し、情報処理装置において、各端末からの信号の分離処理、及び、復調及び復号処理を行うシステムに比べると、情報処理装置における負荷を軽減することができる。
【0020】
また、本開示の他の態様の一つでは、当該情報処理装置の制御部は、1の基地局から受信した第1のデータに対応する第1の端末から信号を受信している基地局を特定し、特定した基地局へ受信した第1のデータを送信するようにしてもよい。これによって、当該1
の基地局から第1のデータを受信していない基地局へ第1のデータの送信は行われないので、バックボーン回線の帯域の使用を低減することができる。
【0021】
また、本開示の他の態様の一つでは、当該情報処理装置の制御部は、複数の基地局が含まれるセル内に存在する、信号を発信した複数の端末のすべてについて、第1のデータが取得された場合に、複数の基地局へ第1の処理から第3の処理の停止を送信するようにしてもよい。これによって、各基地局は、受信したN台全ての端末について、第1の処理から第3の処理を行っている途中でも、情報処理装置から停止の指示を受信した場合には、当該処理を停止することができるので、基地局における処理負荷を軽減することができる。
【0022】
本開示の他の態様の一つとして、上述の基地局が上述の処理を行う方法として特定することも可能である。また、本開示の他の態様として、コンピュータに上述の基地局の処理を実行させるためのプログラム、及び、当該プログラムを記憶した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体としても特定することができる。
【0023】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る無線通信システム100の構成を例示する図である。無線通信システム100は、複数の基地局1と、各基地局1に1対1で接続する複数のMEC(Multi-access Edge Computing又はMobile Edge Computing)サーバ2と、基地局1を管理する制御局3と、基地局1との間で無線により通信する複数の端末4を含む。複数の基地局1は、制御局3が管理する1つのセル内に存在する基地局である。基地局1と制御局3とは、バックボーン回線50で接続されている。
【0025】
第1実施形態では、基地局1は、それぞれ、M本の受信アンテナを備え、マルチユーザのMIMOを実施する。また、端末4は、PD-UL-NOMAを用いて電波を送信する。したがって、第1実施形態では、基地局1は、複数の端末4から同時に信号を受信する。基地局1がMIMOによって受信した信号には、複数の端末4からの信号が重畳されているため、基地局1は、受信した信号から、各端末4からの信号を分離する。重畳信号から、各端末4からの信号を分離する方法の一つに、逐次干渉除去(Successive Interference Cancellation:SIC)がある。
【0026】
図2は、SIC処理の一例を示す図である。図2では、端末A-Eの5台からの信号を含む重畳信号から各端末A-Eからの信号を分離する場合の例である。SIC処理では、(1)希望信号のデータ取得処理、(2)レプリカ信号生成処理、及び、(3)レプリカ信号除去処理の3つの処理が繰り返し実行される。
【0027】
(1)希望信号のデータ取得処理では、まず、アンテナで受信した受信信号(重畳信号)に対して、受信ダイバーシチ処理を行うことによって、対象の1台の端末からの信号を取り出す。対象の1台の端末からの信号を、以降、希望信号と称する。重畳信号から希望信号を取り出すことを、希望信号を分離する、とも称する。重畳信号から希望信号が取り出されていない端末を、未分離の端末、と称する。
【0028】
受信ダイバーシチ処理では、所定のウェイトWを用いて所定の演算を行うことによって、対象の端末以外の端末からの信号は干渉信号としてキャンセルされ、演算結果として、対象の端末からの希望信号を取得することができる。希望信号に対して、復調及び復号が行われることで、対象の端末から送信されたデータが取得される。復調及び復号によって
得られたデータについては、CRC(Cyclic Redundancy Check)等の誤り訂正符号によ
ってエラーチェックが行われる。0と1とで2値化されたデータを、以降、硬判定値と称する。
【0029】
なお、第1実施形態では、“信号”という場合には、0と1で2値化されていない信号を示す。“データ”と称する場合には、0と1で2値化された信号を示す。例えば、ベースバンド信号はデジタル信号であるが、0と1で2値化されていないため、第1実施形態では、“信号”と称される。第1実施形態では、データと硬判定値とは、双方とも0と1とで2値化された同じものを示すが、信号を復調及び復号して得られたデータのうち、エラーチェックによってエラーが検出されなかった、0と1とで2値化されたデータを、区別して、硬判定値と称する。重畳信号から取り出された対象の1台の端末からの信号は、「第1の信号」の一例である。重畳信号から取り出された対象の1台の端末からの信号を復調及び復号し、CRCのエラーチェックによってエラーが検出されなかったデータ(硬判定値)は、「第1のデータ」の一例である。
【0030】
(2)レプリカ信号生成処理では、硬判定値を符号化及び変調して、希望信号のレプリカが生成される。希望信号のレプリカをレプリカ信号と称する。(3)レプリカ信号除去処理では、重畳信号から希望信号のレプリカ信号を除去する。レプリカ信号は、「第2の信号」の一例である。
【0031】
レプリカ信号の除去後の重畳信号と、未分離の端末とについて、再度(1)-(3)の処理が繰り返し行われることによって、重畳信号に含まれる各端末からの信号が分離される。SIC処理は、例えば、全ての端末について分離される、又は、エラーチェックにおいてエラーが発生することによって、終了する。(1)希望信号のデータ取得処理は、「第1の処理」の一例である。(2)レプリカ信号生成処理は、「第2の処理」の一例である。(3)レプリカ信号除去処理は、「第3の処理」の一例である。
【0032】
図2に示される例では、まず、端末Aの希望信号が求められ、端末A-Eの信号を含む重畳信号から端末Aの希望信号のレプリカ信号が除去される。次に、端末Bの希望信号が求められ、端末B-Eの信号を含む重畳信号から端末Bの希望信号のレプリカ信号が除去される。次に、端末Cの希望信号が求められ、端末C-Eの信号を含む重畳信号から端末Bの希望信号のレプリカ信号が除去される。最後に、端末Dの希望信号が求められ、端末D-Eの信号を含む重畳信号から端末Dの希望信号のレプリカ信号が除去され、残った信号が端末Eの希望信号となり、SIC処理が終了する。図2に示される例では、(1)―(3)の処理が4回繰り返される。なお、信号が分離される端末の順序は、例えば、受信信号の電力の大きい端末の順である。ただし、これに限られない。
【0033】
図1に戻って、第1実施形態では、基地局1での受信アンテナ数Mよりも、端末数Nが多い過負荷MIMOとなる状態が発生することが想定される。過負荷MIMOの場合には、送信端末数(N)が基地局の受信アンテナ数(M)よりも多いため、所定の受信ダイバーシチのウェイトWを用いても、N-M台の端末からの信号をキャンセルすることができない。キャンセルできないN-M台の端末からの信号は干渉信号として残るため、希望信号を復調する際に当該干渉信号の影響により希望信号が復調及び復号されたデータがエラーとなる可能性が高くなるおそれがある。すなわち、過負荷MIMOの場合には、SIC処理の(1)希望信号のデータ取得処理において、復調及び復号によって得られたデータがエラーチェックでエラーとなり、硬判定値が得られない端末が発生する可能性が高まる。
【0034】
SIC処理の(1)希望信号のデータ取得処理において硬判定値が得られない場合には、次の(2)レプリカ信号生成処理と(3)レプリカ信号除去処理とが行えないため、S
IC処理自体がその時点で終了してしまう。そうすると、信号を受信した端末のうち、データを得られない端末の数が増えてしまう可能性がある。
【0035】
また、(1)希望信号のデータ取得処理において硬判定値が得られない場合には、未分離の他の端末について先にSIC処理が実行され、それ以降のいずれかのタイミングで、硬判定値が得られなかった端末について再度SIC処理が実行されてもよい。ただし、この場合でも、重畳信号に信号が含まれる全ての端末について硬判定値が得られない可能性がある。
【0036】
そこで、第1実施形態では、各基地局1は、SIC処理の(1)希望信号のデータ取得処理において取得された硬判定値を対象の端末の識別情報とともにバックボーン回線50へ送出し、基地局1間で共有する。基地局1は、SIC処理の(1)希望信号のデータ取得処理において硬判定値が得らえない場合には、他の基地局1によって取得された対象の端末の硬判定値を用いて、(2)レプリカ信号生成処理と(3)レプリカ信号除去処理とを実行する。
【0037】
これによって、(1)希望信号のデータ取得処理において硬判定値を取得できなかった場合でもSIC処理を継続することができ、硬判定値を得られない端末の数を少なく抑えることができる。
【0038】
また、第1実施形態では、各基地局1において端末4からの信号の復調が行われデータが取得されるため、各基地局1に対してそれぞれ、データを処理するMECサーバ2が接続される。MECサーバ2は、HTTP(HyperText Transfer Protocol)の応答等のデ
ータに応じた所定の処理を実行し、データの送信元の端末4へ応答を返す。すなわち、基地局1によって復調された端末4からのデータは、基地局1に接続されたMECサーバ2によって処理されるので、バックボーン回線50へ送出せずに処理でき、端末4への応答時間が短縮され、低遅延化を実現することができる。MECサーバ2は、「サーバ」の一例である。
【0039】
制御局3は、各基地局1から硬判定値と端末4の識別情報とを受信し、他の基地局1へ当該硬判定値と端末4の識別情報とを送信する。これによって、セル内に基地局1が3台以上存在する場合でも、基地局1間で硬判定値を共有させることができる。
【0040】
また、制御局3は、セル内でMIMO受信が発生した場合に、各基地局1から各基地局1が信号を受信した端末4の情報の報告を受信し、管理下のセル内で発信している端末4の信号の復調状況を各基地局1から送信される硬判定値と端末4の識別情報とから把握する。管理下のセル内で発信しているすべての端末4の信号の復調が完了した場合には、制御局3は、各基地局1へMIMOの終了を指示する。基地局1は、制御局3からMIMO受信処理の停止の指示を受信すると、SIC処理を停止し、MIMOの受信に関する情報を削除する。これによって、基地局1において余分にSIC処理を実行しなくてよくなり、基地局1の処理負荷が軽くなる。制御局3は、「情報処理装置」の一例である。
【0041】
図3は、第1実施形態の基地局1と制御局3とのハードウェア構成の一例を示す図である。基地局1は、ハードウェア構成として、プロセッサ11と、メモリ12と、内部インタフェース(IF)13と、バックボーン回線50に接続するネットワークIF 14Aと、MECサーバ2を接続するネットワークIF 14Bと、無線処理装置15と、アンテナ16とを有する。
【0042】
プロセッサ11は、例えば、Central Processing Unit(CPU)、又は、Microprocessor Unit(MPU)である。プロセッサ11は、単一のプロセッサに限定される訳ではな
く、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一の物理CPUがマルチコア構成を有していても良い。さらにまた、プロセッサ11は、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)等の様々な回路構成の演算装置を含んでも良い。また、プロセッサ11は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路、またはアナログ回路と連携するものでもよい。集積回路は、LSI、 Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含むものでもよい。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FP
GA)を含むものでもよい。したがって、プロセッサ11は、例えば、マイクロコントローラ(MCU)、SoC(System-on-a-chip)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれるものでもよい。
【0043】
メモリ12は、プロセッサ11が実行する命令列(コンピュータプログラム)、または、プロセッサ11が処理するデータ等を記憶する。プロセッサ11とメモリ12とは、ベースバンド装置(BBU)とも呼ばれることがある。内部インタフェース13は、種々の周辺装置をプロセッサに接続する回路である。ベースバンド装置は、制御部ということもできる。
【0044】
ネットワークIF 14Aは、他の基地局が接続されるバックボーン回線50に基地局1がアクセスするための通信装置である。バックボーン回線50は、例えば、光通信による有線ネットワークである。その場合には、ネットワークIF 14Aは、例えば、X1インタフェースである。
【0045】
ネットワークIF 14Bは、MECサーバ2を接続するための通信装置である。MECサーバ2を接続するネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)等である。ネットワークIF 14Bは、例えば、NIC(Network Interface Card)である。なお、MECサーバ2と接続するネットワークは無線ネットワークであってもよい。その場合には、ネットワークIF 14Bは、無線通信回路である。
【0046】
無線処理装置15は、無線信号を送信するトランシーバおよび無線信号を受信するレシーバ等を含み、M本のアンテナ16に接続される。無線処理装置15は、トランシーバおよびレシーバをそれぞれアンテナと同数のM系統有してもよい。無線処理装置15は、遠隔無線ヘッド(RRH)と呼ばれ、ベースバンド装置とは光通信による有線ネットワークで接続して、遠隔に設置される構成とすることもできる。また、1つのベースバンド装置に、複数の遠隔無線ヘッドが接続される構成であってもよい。なお、ベースバンド装置と遠隔無線ヘッドを接続するネットワークは、フロントホールとも呼ばれる。
【0047】
次に、制御局3は、例えば、専用又は汎用のコンピュータである。制御局3は、ハードウェア構成として、プロセッサ31、メモリ32、内部IF 33、ネットワークIF 34、及び、外部記憶装置35を備える。プロセッサ31、メモリ32、内部IF 33、及び、ネットワークIF 34は、プロセッサ11、メモリ12、内部IF 13、及び、ネットワークIF 14Aと同様である。
【0048】
外部記憶装置35は、様々なプログラムや、各プログラムの実行に際してプロセッサ31が使用するデータを格納する。外部記憶装置35は、例えば、EPROM(Erasable Programmable ROM)やハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)である。外部記憶装置35に保持されるプログラムには、例えば、オペレーティングシステム(OS)、その他様々なアプリケーションプログラムを保持する。なお、基地局1及び制御局3のハードウェア構成は、図3に示されるものに限定されない。MECサーバ2のハードウェア構成は、制御局3と同様であり、プロセッサ、メモリ、外部記憶装置、及びネットワークインタフェースを備える。
【0049】
図4は、基地局1及び制御局3の機能構成の一例を示す図である。基地局1は、レプリカ除去部101、受信ダイバーシチ処理部102、復調復号部103、CRC部104、レプリカ生成部105、選択部106、及び、制御部107を有する。図3に示されるプロセッサ11がメモリ12に実行可能に展開された命令列(コンピュータプログラム)を実行することにより、レプリカ除去部101、受信ダイバーシチ処理部102、復調復号部103、CRC部104、レプリカ生成部105、選択部106、及び、制御部107の各処理を実行する。
【0050】
レプリカ除去部101は、SIC処理の(3)レプリカ信号除去処理を実行する。具体的には、レプリカ除去部101は、M本の受信アンテナ16において受信されたそれぞれの受信信号又は1又は複数の端末4からの受信信号のレプリカ信号を除去済みの重畳信号から、後述のレプリカ生成部105によって生成された1の端末4からの受信信号のレプリカ信号を減算する。なお、各受信アンテナ16について受信信号が存在するので、レプリカ生成部105によって生成されるレプリカ信号も各受信アンテナ16について生成され、各受信アンテナ16について受信信号からレプリカ信号の減算が行われる。
【0051】
受信ダイバーシチ処理部102、復調復号部103、及び、CRC部104は、SIC処理の(1)希望信号のデータ取得処理を実行する。受信ダイバーシチ処理部102は、レプリカ除去部101から重畳信号の入力を受け、例えば、MMSE法により、所定のウェイトを用いて受信ダイバーシチ処理を行い、対象の端末4の希望信号以外の干渉を抑圧して(キャンセルして)、対象の端末4の希望信号を取り出す。対象の端末4の希望信号は、復調復号部103へ出力される。対象の端末4は、例えば、未分離の端末4のうち、受信電力が最も大きい端末4が選択されてもよい。
【0052】
復調復号部103は、受信ダイバーシチ処理部102から入力される希望信号からビット列を生成し(復調)、得られたビット列を誤り訂正符号によって復号し、データを取得する。復号されたデータは、CRC部104へ出力される。
【0053】
CRC部104は、復調復号部103から入力されたデータに対して、CRCによるエラーチェックを行う。具体的には、CRC部104は、復調復号部103から入力されたデータのペイロード部分に対してCRCの演算を行い、その演算結果と復調復号部103から入力されたデータのCRC部分の値とを比較する。CRCの演算結果と復調復号部103から入力されたデータのCRC部分の値が一致する場合には、エラーなしとなり、復調復号部103から入力されたデータは、硬判定値となる。一方、CRCの演算結果と復調復号部103から入力されたデータのCRC部分の値が一致しない場合には、エラーありとなり、復調復号部103から入力されたデータは正しいデータでないと判定され、廃棄される。
【0054】
CRC部104は、CRCのエラーチェックの結果と対象の端末4の識別情報と、エラーなしの場合には硬判定値と、を選択部106に出力する。また、CRCのエラーなしの場合には、CRC部104は、対象の端末4の識別情報と硬判定値とをバックボーン回線50へ出力する。また、CRCのエラーなしの場合には、CRC部104は、硬判定値をMECサーバ2へ送信する。端末4の識別情報は、端末4からの受信信号に含まれている。第1実施形態では、対象の端末4の識別情報と硬判定値とは、バックボーン回線50を通じて、制御局3へ送信される。
【0055】
レプリカ生成部105は、SIC処理の(2)レプリカ信号生成処理を実行する。具体的には、レプリカ生成部105は、選択部106から入力される対象の端末4の硬判定値を基に、アンテナ16において対象の端末4から受信された信号のレプリカ信号を生成す
る。レプリカ生成部105は、入力された硬判定値を誤り訂正符号化し、誤り訂正符号化された信号をデジタル変調し、デジタル変調された信号に対して送信ダイバーシチ処理を実行し、送信ダイバーシチ処理された信号をチャネル行列に乗算して、レプリカ信号を生成する。レプリカ生成部105は、生成したレプリカ信号をレプリカ除去部101へ出力する。
【0056】
選択部106は、バックボーン回線50から他の基地局1によって取得された硬判定値と対応する端末4の識別情報とを受信する。選択部106は、受信した硬判定値と端末4の識別情報とをメモリ12の記憶領域に保存する。
【0057】
選択部106は、CRC部104からCRCのエラーチェックの結果の入力を受ける。選択部106は、CRCのエラーチェックの結果に基づいて、自局で取得した硬判定値と他局から受信した硬判定値とのいずれを用いてレプリカ信号を生成するかを選択する。CRC部104からCRCのエラーチェックの結果がエラーなしである場合には、選択部106は、自局で取得した硬判定値、すなわち、CRC部104から入力された硬判定値を選択し、レプリカ生成部105へ出力する。CRC部104からCRCのエラーチェックの結果がエラーありである場合には、選択部106は、他局から受信した硬判定値を選択し、レプリカ生成部105へ出力する。
【0058】
制御部107は、基地局1における処理を制御する。制御部107は、受信ダイバーシチ処理部102から、M本の受信アンテナ16によって信号が受信された端末4の識別情報を取得し、信号が受信された端末4の識別情報を含む信号受信リストを作成し、バックボーン回線50を通じて制御局3へ送信する。M本の受信アンテナ16によって信号が受信された端末4の識別情報は、例えば、当該端末4がユーザデータを送信する前に送信するリファレンス信号の受信により取得される。
【0059】
また、制御部107は、バックボーン回線50を通じて制御局3からMIMO受信処理の停止の指示を受信する。MIMO受信処理の停止の指示を受信した場合には、制御部107は、SIC処理を停止させ、MIMO受信処理に関する情報を削除する。MIMO受信処理に関する情報には、例えば、M本のアンテナ16によって信号が受信された端末4の識別情報、他の基地局1の硬判定値と対応する端末4の識別情報等がある。
【0060】
なお、基地局1の機能構成は、図4に示されるものに限定されない。図4では、基地局1は、1つのレプリカ生成部105と選択部106とを備え、選択部106がレプリカ信号の生成に用いられる硬判定値を選択してレプリカ生成部105へ出力する。これに代えて、基地局1は、自局で取得した硬判定値からレプリカ信号を生成するレプリカ生成部105A、他局から受信された硬判定値からレプリカ信号を生成するレプリカ生成部105Bと、選択部106とを備え、選択部106はCRCのエラーチェックの結果に応じて、レプリカ生成部105Aとレプリカ生成部105Bのいずれを起動させるかを選択してもよい。
【0061】
次に、制御局3は、機能構成として制御部301を備える。制御部301は、セル内に存在する全端末4を把握している。これは、例えば、端末4の初期接続時の位置登録等による。また、MIMOによる複数の端末4からの信号の同時受信が発生すると、各基地局1から、各基地局1が信号を受信した端末4の信号受信リストを受信する。信号受信リストには、基地局1が信号を受信した端末4の識別情報が含まれている。これによって、制御部301は、セル内で発信している端末4と、各基地局1が信号を受信している端末4とを把握することができる。
【0062】
制御部301は、バックボーン回線50を通じて、各基地局1から硬判定値と対応する
端末4の識別情報とを受信する。これによって、制御部301は、管理下のセル内で発信している端末4の信号の復調状況を把握することができる。制御部301は、1の基地局から受信した硬判定値と対応する端末4の識別情報とを基地局1間で共有させる。具体的には、制御部301は、識別情報が受信された端末4から信号を受信している基地局1を特定し、硬判定値を受信した基地局1以外の特定した基地局1へ、受信した硬判定値と対応する端末4の識別情報とを送信する。なお、これに限定されず、制御部301は、1の基地局から硬判定値と対応する端末4の識別情報とを受信した場合に、受信した硬判定値と対応する端末4の識別情報とを他の基地局1へ送信してもよい。
【0063】
また、制御部301は、管理下のセル内で発信しているすべての端末4について、信号の復調が完了したことを検出すると、バックボーン回線50を通じて、セル内の各基地局1へMIMO受信処理の停止の指示を送信する。MIMO受信処理の停止の指示を受信すると、基地局1は、SIC処理を停止し、MIMO受信に関する情報を削除する。
【0064】
図5は、制御局3の端末管理テーブルの一例である。端末管理テーブルは、セル内の端末4の発信状況及びMIMO受信時の信号の復調状況を管理するためのテーブルである。端末管理テーブルは、例えば、制御局3のメモリ32の記憶領域に格納されている。
【0065】
端末管理テーブルには、セル内に存在する端末4の数だけエントリが含まれる。新たにセルに進入した端末4が検出された場合には、制御部301は、端末管理テーブルに当該端末4のエントリを追加する。端末4がセルから退出したことを検出した場合には、制御部301は、端末4のエントリを端末管理テーブルから削除する。
【0066】
各エントリには、端末ID、基地局A受信端末、基地局B受信端末、...、復号済みのフィールドが含まれている。端末IDのフィールドには、セル内に存在する端末4の識別情報が格納されている。基地局A受信端末、基地局B受信端末、...のフィールドには、セル内の各基地局が当該端末4から信号を受信しているか否かを示すフラグが格納されている。例えば、基地局Xが当該エントリに該当する端末4から信号を受信している場合には、基地局X受信端末のフィールドの値は「1」となる。基地局A受信端末、基地局B受信端末、...のフィールドの初期値は、「0」である。例えば、基地局Xから受信した信号受信リストに、エントリに該当する端末#Nの識別情報が含まれている場合に、制御部301によって、当該端末#Nの基地局X受信端末のフィールドにフラグが立てられる。
【0067】
復調済みのフィールドには、当該エントリに該当する端末4の信号の復調が完了しているか否かを示すフラグが格納されている。例えば、当該エントリに該当する端末4からの信号の復調が完了している場合には、当該端末4の復調済みのフィールドの値は「1」となる。復調済みのフィールドの初期値は、「0」である。いずれかの基地局1から端末#Nの識別情報と硬判定値とが受信された場合に、制御部301によって、端末#Nの復調済みのフィールドにフラグが立てられる。
【0068】
制御局3の制御部301は、端末管理テーブルに基づいて、1の基地局1から受信した硬判定値と端末4の識別情報を送信する基地局1を特定する。また、制御局3の制御部301は、端末管理テーブルに基づいて、セル内の発信しているすべての端末4の信号の復調が完了したか否かを判定する。なお、図5に示される端末管理テーブルは一例であって、図5に示されるものに限定されない。
【0069】
図6は、基地局1のMIMO受信処理のフローチャートの一例である。図6に示される処理は、基地局1の稼働中繰り返し実行される。OP101では、プロセッサ11は、M本の受信アンテナ16及び無線処理装置15で受信したMIMOの受信信号(重畳信号)
を取得する。受信信号の端末数はN台であるとする。また、OP101では、プロセッサ11は、信号受信リストを生成して制御局3へ送信する。
【0070】
OP102以降の処理は、受信信号の端末数N-1回、又は、制御局3からMIMO受信処理の停止の指示を受信するまで繰り返し実行される。OP102では、プロセッサ11は、対象の端末4を決定し、例えば、MMSE法により、対象の端末4から受信された信号(希望信号)を受信信号から分離して取得する。OP102の処理は、受信ダイバーシチ処理部102の処理に相当する。
【0071】
OP103では、プロセッサ11は、OP102の処理で取得された希望信号について、デジタル復調処理を実行し、さらに、誤り訂正符号による復号を行う。すなわち、プロセッサ11は、被変調キャリア信号である希望信号からベースバンド信号としてビット列を取り出し、復調されたベースバンド信号である誤り訂正符号化された信号から、データを復号する。OP103の処理は、復調復号部103の処理に相当する。
【0072】
OP104では、プロセッサ11は、OP103の処理で取得されたデータに対して、CRCチェックを行う。OP104の処理は、CRC部104の処理に相当する。
【0073】
OP105では、プロセッサ11は、OP103の処理で取得されたデータのCRCチェックの結果がエラー有りであるか否かを判定する。OP103の処理で取得されたデータのCRCチェックの結果がエラー有りである場合には(OP105:YES)、処理がOP109へ進む。OP103の処理で取得されたデータのCRCチェックの結果がエラーなしである場合には(OP105:NO)、処理がOP106へ進む。
【0074】
OP106では、プロセッサ11は、チェックの結果がエラーなしのデータである硬判定値を、バックボーン回線50を通じて制御局3へと、自局に接続されているMECサーバ2へと送信する。OP107では、プロセッサ11は、対象の端末4が重畳信号からレプリカ信号を除去済みの端末であるか否かを判定する。対象の端末4が重畳信号からレプリカ信号を除去済みの端末である場合には(OP107:YES)、処理がOP111へ進む。対象の端末4が重畳信号からレプリカ信号を除去済みの端末である場合には(OP107:NO)、処理がOP111へ進む。
【0075】
OP108では、プロセッサ11は、OP103において取得された硬判定値、すなわち、自局で取得した硬判定値から対象の端末4からの受信信号のレプリカ信号を生成する。
【0076】
OP109では、プロセッサ11は、他の基地局1によって取得された対象の端末4の硬判定値を受信済みであるか否かを判定する。他の基地局1によって取得された対象の端末4の硬判定値が受信済みである場合には(OP109:YES)、処理がOP110へ進む。他の基地局1によって取得された対象の端末4の硬判定値が受信されていない場合には(OP109:NO)、処理がOP112へ進む。
【0077】
OP110では、プロセッサ11は、他の基地局1によって取得された対象の端末4の硬判定値から対象の端末4からの受信信号のレプリカ信号を生成する。OP105-OP110の処理は、選択部106及びレプリカ生成部105の処理に相当する。
【0078】
OP111では、プロセッサ11は、重畳信号からOP108又はOP110の処理によって生成されたレプリカ信号を除去する。OP111の処理は、レプリカ除去部101の処理に相当する。
【0079】
OP112では、プロセッサ11は、制御局3からMIMO受信処理の停止の指示を受信したか否かを判定する。制御局3からMIMO受信処理の停止の指示を受信した場合には(OP112:YES)、プロセッサ11は、メモリ12内のMIMO受信処理に係る情報を削除し、図6に示される処理が終了する。制御局3からMIMO受信処理の停止の指示を受信した場合には(OP112:YES)、未分離の端末4について、OP102へ処理が進む。OP112の処理は、制御部107の処理に相当する。
【0080】
なお、過負荷MIMOでない場合、すなわち、受信アンテナ数M≧端末数Nである場合には、受信ダイバーシチ処理において希望信号に対する干渉信号の影響が少ないため、CRCチェックにおいてエラーとなる確率が小さくなる。その為、過負荷MIMOでない場合には、OP105において否定判定となり、他局から受信した硬判定値を用いることなく、N台の端末について信号を分離してデータを取得することができる。過負荷MIMOの場合には、上述のようにCRCエラーとなる可能性が高くなるため、OP105において肯定判定となる可能性が高く、他局から受信された硬判定値を用いる可能性が高くなる。
【0081】
図7は、制御局3の端末管理処理のフローチャートの一例である。図7に示される処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0082】
OP201では、プロセッサ31は、基地局1から硬判定値と対応する端末4の識別情報とを受信した否かを判定する。基地局1から硬判定値と対応する端末4の識別情報とを受信した場合には(OP201:YES)、処理がOP202へ進む。基地局1から硬判定値と対応する端末4の識別情報とを受信した場合には(OP201:NO)、図7に示される処理が終了する。
【0083】
OP202では、プロセッサ31は、端末管理テーブルの端末IDのフィールドの値が受信された識別情報に一致するエントリの復号済みのフィールドにフラグを立てて、受信された識別情報の端末4からの信号の変調が完了したことを記録する。
【0084】
OP203では、プロセッサ31は、端末管理テーブルを参照して、セル内の発信している全端末4について信号の復調が完了しているか否かを判定する。セル内の発信している全端末4について信号の復調が完了している場合には(OP203:YES)、処理がOP204へ進む。OP204では、プロセッサ31は、バックボーン回線50を通じて、各基地局1へMIMO受信処理の停止の指示を送信する。その後、図7に示される処理が終了する。
【0085】
OP203において、セル内の発信している端末4のうち、信号の復調が完了していない端末4が存在する場合には(OP203:NO)、処理がOP205へ進む。OP205では、プロセッサ31は、受信した識別情報に対応する端末4からの信号を受信している基地局1を端末管理テーブルから抽出し、抽出した基地局1へ、受信した硬判定値と対応する端末4の識別情報とを、バックボーン回線50を通じて、送信する。その後、図7に示される処理が終了する。
【0086】
<第1実施形態の作用効果>
第1実施形態では、基地局1間で、硬判定値を共有することで、過負荷MIMOにおいて、エラーとなったデータについても、当該データを送信した端末4に対応する硬判定値を用いて、当該端末4からの信号のレプリカ信号を生成することができる。これによって、基地局1における端末間干渉除去性能が向上し、無線通信品質が向上する。
【0087】
第1実施形態では、基地局1が端末4からの信号を復調してデータを取得するので、基
地局1にMECサーバ2を接続し、MECサーバ2に当該データを処理させることによって、当該端末4への応答をより早く返すことができ、低遅延化を実現することができる。
【0088】
第1実施形態では、各基地局1は硬判定値をバックボーン回線50へ送出する。硬判定値は2値化されたデータであるので、例えば、ベースバンド信号に比べるとサイズが小さくなる。したがって、第1実施形態によれば、バックボーン回線50の帯域の使用を低減
することができる。
【0089】
第1実施形態では、制御局3は、各基地局1からの硬判定値と端末4の識別情報とを受信し、当該端末4からの信号を受信している他の基地局1を抽出して、抽出した基地局1へ受信した硬判定値と端末4の識別情報とを送信する。これによって、当該端末4の硬判定値を必要としない基地局1へ硬判定値と端末4の識別情報とを送信することを抑制することができる。
【0090】
第1実施形態では、制御局3は、各基地局1からの硬判定値と端末4との識別情報を受信することで、管理下のセル内において発信している端末4の信号の復調状況を管理している。制御局3は、管理下のセル内において発信しているすべての端末4からの信号の復調が完了したことを検出した場合には、各基地局1へMIMO受信処理の停止の指示を送信する。これによって、各基地局1は、例えば、未分離の端末4が存在している場合でもMIMO受信処理を停止させることができるので、各基地局1の処理負荷を軽減することができる。図7に示される処理は、制御局3の制御部301の処理に相当する。
【0091】
また、例えば、各基地局1では端末からの受信信号を復調せず、ベースバンド信号を制御局3に集約して、制御局3が復調を行う場合と比べると、第1実施形態における各基地局1が端末からの受信信号を復調する場合の方が、システム全体のMIMOの演算の総量が少なくなる。これは、受信ダイバーシチ処理における演算内の行列のサイズがアンテナ数に伴って大きくなることに起因する。例えば、各基地局1におけるアンテナ数がMであると想定すると、第1実施形態のように各基地局1が復調を行う場合には、受信ダイバーシチ処理における演算内の行列のサイズはM×Mである。一方、制御局3がベースバンド信号から復調を行う場合には、受信ダイバーシチ処理における演算内の行列のサイズは、(M×基地局数)×(M×基地局数)となる。
【0092】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
【0093】
本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0094】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0095】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録
商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0096】
1・・基地局
2・・MECサーバ
3・・制御局
4・・端末
11、31・・プロセッサ
12、32・・メモリ
13、33・・内部IF
14A、14B、34・・ネットワークIF
14B・・ネットワークIF
15・・無線処理装置
35・・外部記憶装置
301・・制御部
50・・バックボーン回線
100・・無線通信システム
101・・レプリカ除去部
102・・受信ダイバーシチ処理部
103・・復調復号部
104・・CRC部
105・・レプリカ生成部
106・・選択部
107・・制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7