(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】取付構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
H01L23/02 C
(21)【出願番号】P 2021099637
(22)【出願日】2021-06-15
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】391008559
【氏名又は名称】株式会社トランストロン
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】松沼 繁男
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】加納 清秀
(72)【発明者】
【氏名】大塚 陽水
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩平
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-034500(JP,A)
【文献】特開平03-027553(JP,A)
【文献】特開2013-145964(JP,A)
【文献】特開2011-147054(JP,A)
【文献】特開2015-018873(JP,A)
【文献】特開2010-245561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられたパッドにクリームはんだを印刷し、リフローはんだ付けにより電子部品及び当該電子部品を覆う金属製のキャップを前記基板に取り付ける取付構造であって、
前記基板には、環状の壁と、前記壁の内側に前記壁に沿って設けられた環状の
溝と、
が設けられており、
前記溝の底面には、前記パッドに含まれる水平パッドが設けられており、
前記キャップの端面は、前記溝に充填された前記クリームはんだに載置され、
前記キャップと前記壁との間には前記クリームはんだが充填されている
ことを特徴とする取付構造。
【請求項2】
前記壁と略直交する平面で切断したときに、前記キャップの周縁と前記壁との距離は、前記キャップの周縁と前記溝の内周側の端との距離の2倍以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の取付構造。
【請求項3】
前記壁の内周面には、前記パッドに含まれる垂直パッドが設けられており、
前記垂直パッドに前記クリームはんだが塗布されることで、前記キャップと前記壁との間に前記クリームはんだが充填される
ことを特徴とする請求項1又は2記載の取付構造。
【請求項4】
前記垂直パッドの前記基板からもっとも離れた位置と前記基板との距離は、前記電子部品の前記基板からもっとも離れた位置と前記基板との距離以上である
ことを特徴とする請求項3に記載の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リードフレームの少なくとも一部をモード樹脂体に埋設してなるパッケージ本体と、パッケージ本体に搭載される半導体チップの上方を覆った状態としてパッケージ本体の周縁部に固定される導電性材料からなる蓋体とを備え、パッケージ本体の周縁部には、リードフレームのステージ部の一部が露出する導電部と、モールド樹脂体の一部からなる樹脂部とが配置されるとともに、蓋体には、導電部に電気的接続状態に接触される接続部が設けられた半導体装置用パッケージが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、フランジ状に形成されたつば部である接続部と導電部とが導電性接着剤により隙間なく固着されることが開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の発明のように、導電部と蓋体との間に導電性接着剤が設けられているだけでは、リフローはんだ付けを行う際の温度変化により、導電性接着剤に孔が開き、パッケージの気密性が保たれなくなるおそれがある。
【0005】
そして、気密性が保たれていなければ、大気中の水分がパッケージの内部に浸入して半導体チップの酸化や腐食が発生したり、内圧の変化により半導体チップの性能が低下したりするおそれがある。
【0006】
また、特許文献1には、凹部内に導電性接着剤を介して蓋体のつば部が固着されている形態も開示されている。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、つば部を設けることでパッケージが大型化してしまう。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、大型化することなく気密性を保つことができる取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る取付構造は、例えば、基板に設けられたパッドにクリームはんだを印刷し、リフローはんだ付けにより電子部品及び当該電子部品を覆う金属製のキャップを前記基板に取り付ける取付構造であって、前記基板には、環状の壁と、前記壁の内側に前記壁に沿って設けられた環状の凹部と、が設けられており、前記溝の底面には、前記パッドに含まれる水平パッドが設けられており、前記キャップの端面は、前記溝に充填された前記クリームはんだに載置され、前記キャップと前記壁との間には前記クリームはんだが充填されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る取付構造によれば、溝に充填されたクリームはんだにキャップの端面が載置され、キャップと壁との間にクリームはんだが充填されているため、リフローはんだ付けの過程でキャップ内の空気が排出されず、キャップ内部の気密性を保つことができる。また、キャップの端面がクリームはんだに載置されるため、装置が大型化しない。
【0010】
前記壁と略直交する平面で切断したときに、前記キャップの周縁と前記壁との距離は、前記キャップの周縁と前記溝の前記壁から遠い側の端との距離の2倍以上であってもよい。これにより、リフロー炉の内部の温度上昇によるキャップ内外の圧力差を確実に打ち消し、キャップ内部の気密性を保つことができる。
【0011】
前記壁の内周面には、前記パッドに含まれる垂直パッドが設けられており、前記垂直パッドに前記クリームはんだが塗布されることで、前記キャップと前記壁との間に前記クリームはんだが充填されてもよい。これにより、クリームはんだが壁とキャップとの間に保たれる。
【0012】
前記垂直パッドの前記基板からもっとも離れた位置と前記基板との距離は、前記電子部品の前記基板からもっとも離れた位置と前記基板との距離以上であってもよい。したがって、リフロー炉を通しても、キャップと壁との間に充填されたクリームはんだがなくならない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、大型化することなく気密性を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】取付構造1が用いられる基板組立体2の概略を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【
図3】基板組立体2がリフロー炉に入っている状態における基板組立体2の様子を模式的に示す図である。
【
図4】従来の取付構造を有する基板組立体100、101の概略を示す図であり、(A)は基板組立体100を示し、(B)は基板組立体101を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る取付構造の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。以下、本発明に係る取付構造について、基板に設けられたパッドにクリームはんだを印刷し、リフローはんだ付けにより電子部品及び当該電子部品を覆う金属製のキャップを基板に取り付ける取付構造を例に説明する。なお、電子部品は、センサ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等の半導体素子を含むが、本実施の形態ではセンサを例に説明する。
【0016】
図1は、取付構造1が用いられる基板組立体2の概略を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。基板組立体2は、主として、キャップ11と、センサ12と、基板21と、壁23とを備える。
【0017】
基板21は、例えば、樹脂やガラス製のプリント基板である。なお、基板21の大きさや形状は
図1に示す形態に限られない。基板21の表面には図示しないパッドが設けられており、図示しないはんだを介してパッドにセンサ12が設けられている。キャップ11は、金属製であり、一端が覆われた筒状である。
【0018】
キャップ11及びセンサ12は、リフローはんだ付けにより基板21に設けられている。基板21は外部回路と接続するための端子を有し、端子を介してセンサ12が外部回路と接続される。基板21に設けられた状態では、キャップ11がセンサ12を覆い、センサ12が保護される。
【0019】
なお、
図1では、キャップ11は一端が覆われた角筒状であるが、キャップ11の形状はこれに限られない。例えば、キャップ11は一端が覆われた円筒状であってもよい。
【0020】
基板21には、環状の壁23が設けられている。壁23は、基板21に対して略垂直に設けられている。キャップ11は、壁23の内側に設けられている。
【0021】
また、基板21には、環状の溝22が設けられている。溝22は、壁23の内側に、壁23に沿って設けられている。キャップ11と壁23との間には、クリームはんだ30が充填されている。
【0022】
なお、本実施の形態では、
図1(A)に示すように、平面視(上方から見た状態)において壁23及び溝22は中空の矩形状であるが、壁23及び溝22の形態はこれに限られない。例えば、平面視において、壁23及び溝22は中空の円形状であってもよい。
【0023】
図2は、取付構造1の詳細を示す図である。溝22の底面には、水平パッド25が設けられており、壁23の内周面には、垂直パッド26が設けられている。水平パッド25及び垂直パッド26は、基板21に設けられたパッドに含まれる。
【0024】
水平パッド25にクリームはんだ30が塗布されることにより、溝22にクリームはんだ30が充填されている。キャップ11の端面は、溝22に充填されたクリームはんだ30に載置されている。
【0025】
垂直パッド26にクリームはんだ30が塗布されることにより、キャップ11と壁23との間にクリームはんだ30が充填されている。垂直パッド26の基板21からもっとも離れた位置と基板21との距離h2は、センサ12の基板21からもっとも離れた位置と基板21との距離h1(
図1参照)以上である。そのため、キャップ11と壁23との間に充填されたクリームはんだ30の高さは、センサ12の高さより高くなり、リフロー炉を通してもキャップ11と壁23との間に充填されたクリームはんだ30がなくなることはない。
【0026】
水平パッド25及び垂直パッド26を設けることで、基板21や壁23に対するはんだの濡れ性が向上する。ただし、垂直パッド26は必須ではない。
【0027】
壁23と略直交する平面で切断したときに、キャップ11の周縁と壁23との距離g2は、キャップ11の周縁と溝22の端22aとの距離g1よりの2倍以上である。なお、端22aは、溝22の内周側の端である。
【0028】
以下、距離g1、g2について
図3を用いて説明する。
図3は、基板組立体2がリフロー炉に入っている状態における基板組立体2の様子を模式的に示す図である。距離g1、g2は、リフローはんだ付けによるキャップ11内部の圧力変化に基づいて求められる。
【0029】
圧力、体積、温度の関係を規定する状態方程式は、以下の数式(1)により定義される。
PV=nRT・・・(1)
ここで、Pは圧力であり、Vは体積であり、nは物質量であり、Rは気体定数であり、Tは温度である。
【0030】
数式(1)に示す状態方程式は、常温(基板組立体2がリフロー炉に入っていない状態)では、以下の数式(2)のように示される。
PV=nR(25+273.15)=298.15nR・・・(2)
なお、Pは大気圧と略同一である。
【0031】
リフロー炉の最高温度が280℃であるため、高温状態(280℃)において、数式(1)に示す状態方程式は以下の数式(3)のように示される。
P’V’=nR(280+273.15)=553.15nR・・・(3)
なお、P’は、
図3に示すように、高温状態におけるキャップ11内部の圧力である。
【0032】
数式(3)においてV’=VのときにP’は最大となるため、数式(2)を用いて数式(3)からVを消去することで、P’は以下の数式(4)のように求められる。
P’=(553.15/298.15)P=1.86P・・・(4)
【0033】
つまり、リフロー炉の内部においては、キャップ11内部の圧力がキャップ11外部の圧力の約2倍となる。したがって、距離g2を距離g1の2倍以上とすれば、キャップ11の内外の圧力差を確実に打ち消すことができる。ただし、距離g2を距離g1の2倍以上とすることは必須ではない。
【0034】
リフロー炉で加熱することにより、クリームはんだ30に含まれる粒状のはんだが接合され、クリームはんだ30に含まれるフラックスが熱で気化することにより、キャップ11及びセンサ12が基板21にはんだ付けされる。キャップ11の端面周辺がクリームはんだ30で覆われているため、リフローはんだ付けの過程でキャップ11内の空気が排出されない。
【0035】
本実施の形態によれば、溝22に充填されたクリームはんだ30にキャップ11の端面が載置され、キャップ11と壁23との間にクリームはんだ30が充填されているため、リフローはんだ付けの過程でキャップ11内の空気が排出されず、キャップ11内部の気密性を保つことができる。
【0036】
図4(A)、(B)は、従来の取付構造を有する基板組立体100、101の概略を示す図である。従来は、基板組立体100のようにキャップ11の周縁にクリームはんだ30を塗布したり、基板組立体101のようにキャップ11と基板21との間にクリームはんだ30を塗布したりした後に、リフローはんだ付けによりキャップ11を基板21に取り付けていた。この場合には、リフローはんだ付けを行う際の温度変化によりキャップ11内部の圧力が高くなり、これによりキャップ11内部の気体がクリームはんだ30を通ってキャップ11の外部に抜けるおそれがある。その結果、リフローはんだ付け後にはんだに孔31が開き、キャップ11内部の気密性が保たれなくなる。
【0037】
それに対し、本実施の形態は、リフローはんだ付けの過程でキャップ11内の空気が排出されないため、はんだに孔が形成されず、キャップ11内部の気密性を保つことができる。その結果、キャップ11内部に設けられたセンサ12の性能を安定させることができる。
【0038】
また、
図4に示す従来例では、リフロー炉における加熱でキャップ11の内部の圧力が上昇して金属キャップが持ち上がり、キャップ11周辺のクリームはんだ30が溶融することで、キャップ11が脱落するおそれがある。
【0039】
それに対し、本実施の形態は、キャップ11の下側及び外側にクリームはんだ30が充填されているため、リフロー炉における加熱でキャップ11の内部の圧力が上昇して金属キャップが持ち上がってもキャップ11が脱落しない。
【0040】
また、本実施の形態によれば、キャップ11の端面がクリームはんだ30に載置されるため、装置が大型化しない。
【0041】
また、本実施の形態によれば、距離g2を距離g1の2倍以上とすることで、リフロー炉の内部の温度上昇によるキャップ11の内外の圧力差を確実に打ち消し、キャップ11内部の気密性を保つことができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、壁23の内周面に垂直パッド26を設けることで、垂直パッド26におけるはんだの濡れによる張力により、クリームはんだ30を壁23とキャップ11との間に保つことができる。また、キャップ11の内部の圧力が上昇して金属キャップが持ち上がっても、キャップ11の外側のクリームはんだ30がなくならず、高温下においても常温下における距離g1と距離g2との比を保つことができる。したがって、リフローはんだ付けの過程でキャップ11内の空気が排出されず、キャップ11内部の気密性を保つことができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、キャップ11の形状は一端が覆われた筒状であるが、キャップがセンサ12を覆い、キャップの端面が溝22に充填されたクリームはんだ30に載置されればよく、キャップ11の形状はこれに限られない。例えば、キャップが椀状であってもよいし、一端が覆われた錐台状であってもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、壁23の内周面が基板21に対して略垂直であるが、例えば壁がテーパを有する場合には壁の内周面が基板21に対して略垂直でなくてもよい。
【0045】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 :取付構造
2 :基板組立体
11 :キャップ
12 :センサ
21 :基板
22 :溝
22a :端
23 :壁
25 :水平パッド
26 :垂直パッド
30 :クリームはんだ
31 :孔
100、101:基板組立体