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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】コンパクト
(51)【国際特許分類】
   A45D 33/00 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
A45D33/00 615C
A45D33/00 625A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021110945
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2023007845
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2021-07-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】515260173
【氏名又は名称】日栄樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 芳樹
【合議体】
【審判長】北村 英隆
【審判官】永冨 宏之
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0063232(KR,A)
【文献】国際公開第2005/023049(WO,A1)
【文献】実開昭59-69137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向きに開口した平面視四角形でトレー状の本体と、前記本体の内部に着脱自在に配置される平面視四角形の個別容器の群とを備え、
前記本体の底面に、平面視円形で上下に貫通した中心穴を有するボスの群が縦横に同じピッチで整列して上向きに突設されている一方、前記各個別容器の四辺の長さは前記ボスのピッチの3倍以上の整数倍よりもごく僅かに小さい幅寸法に設定されて、前記各個別容器の四辺には、前記ボスの群に内接する枠体が全周にわたって途切れることなく連続した状態で下向きに突設されており、
前記ボスの外周面に全周にわたって形成された第1係合部と前記枠体の内周面に部分的に形成された第2係合部とを弾性に抗して係脱させることにより、前記各個別容器が前記本体に着脱されるもので、前記第1係合部と第2係合部とは、一方は係合突起で他方は係合溝になっている、コンパクトであって、
前記個別容器は、外周面が成型に際しての抜き勾配によって下窄まりに形成されて、前記枠体における各コーナー部にそれぞれ互いに相違する1つずつの前記ボスが内接すると共に、前記枠体における各辺の一端と他端との間の部位に、前記コーナー部に内接するボスとは異なる少なくとも1つの前記ボスが内接するように設定されて、前記枠体における各辺の一端と他端との間の部位の内面に前記第2係合部が部分的に形成されており、
かつ、前記枠体の下向き突出寸法が前記ボスの上向き突出寸法よりも大きくて、前記各個別容器の底板と前記ボスとの間に隙間が空いている、
コンパクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、化粧用のコンパクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧用のコンパクトには頬紅やアイシャドー等の化粧料を収容しているが、多数の色の化粧料を楽しみたいという要望がある。そこで、本体の内部に多数個の個別容器を着脱自在に配置できるようにすることが提案されている。個別容器は、一般に四角形(正方形又は長方形)に形成されている。
【0003】
個別容器が着脱自在であると、個別容器が本体から簡単には離脱しないように保持する必要がある。この保持手段に関する従来技術として、マグネットを利用したもの(例えば特許文献1)、両面粘着テープを利用したもの(特許文献2)、吸着部材を利用したもの(特許文献3)、個別容器の下面に形成した溝と本体に設けた突起とを噛み合わせたもの(特許文献4)、個別容器の下面に形成した突起と本体に設けた溝又は穴とを噛み合わせたもの、及び、個別容器に設けた下向き突起の群で本体に設けた上向き突起を囲ったもの(特許文献5)、個別容器の側面に形成した平面視C形の合着凹部(ホルダー部)と本体の底面に設けた上向き突起とを嵌合させたもの(特許文献6)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-076210号のマイクロフィルム
【文献】実開昭57-158406号のマイクロフィルム
【文献】実開昭57-158460号のマイクロフィルム
【文献】特開2003-204821号公報
【文献】実開昭57-169205号のマイクロフィルム
【文献】実開昭55-159007号のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個別容器の保持手段としてマグネットや両面粘着テープ、吸着部材を使用すると、それだけコストが嵩むという問題がある。特に、マグネットは磁性板とセットで使用されるため、コストが嵩むだけでなく重量が増大するという問題もある。
【0006】
他方、個別容器の保持手段として特許文献4~6のように突起と溝等の係合手段を採用すると、それら突起や溝などの係合部は成形によって形成されるため、コストを抑制できる利点がある。しかし、個別に見ていくと、問題点が見られる。
【0007】
例えば特許文献6は、個別容器の側面から合着凹部が横向きに突出しているため、個別容器の外側に合着凹部が露出して美観が良くないという問題がある。コンパクトは人が化粧のために用いるものであり、コンパクト自体にも高いデザイン性が要求されるが、合着凹部が露出するとコンパクトの美粧性が低下して商品価値を損なうことになり兼ねない。
【0008】
他方、特許文献4,5の構成では、突起や溝、穴は個別容器の下方に隠れるため、コンパクトとして使用する上で美観悪化の問題は生じない。しかし、特許文献4では、個別容器の下面に形成した溝はその両側面に開口しているため、個別容器は溝の長手方向にスライド可能であり、従って、複数の個別容器を本体に敷き詰めておくことによって個別容器の移動を阻止せねばならず、すると、個別容器のレイアウトの自由性が損なわれるおそれがある。
【0009】
他方、特許文献5のうち、個別容器の下面に形成した突起(突条)と本体に設けた溝又は穴とを噛み合わせた構成では、個別容器の下面に設けた突起が本体の溝又は穴に嵌まると個別容器は横ずれ不能に保持されるため、個別容器を自由にレイアウトできるが、各個別容器の下面の全体が本体の底面に密着するため、本体又は個別容器の成形収縮等によって加工誤差が発生すると、各個別容器の高さが揃わずに見た目が悪くなることが懸念される。また、突起(突条)と溝又は穴との噛み合いが緩いと、ガタ付きが発生することも懸念される。
【0010】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、多数個の個別容器を収納できるコンパクトを改良された形態で提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、
「上向きに開口した平面視四角形でトレー状の本体と、前記本体の内部に着脱自在に配置される平面視四角形の個別容器の群とを備え、
前記本体の底面に、平面視円形で上下に貫通した中心穴を有するボスの群が縦横に同じピッチで整列して上向きに突設されている一方、前記各個別容器の四辺の長さは前記ボスのピッチの3倍以上の整数倍よりもごく僅かに小さい幅寸法に設定されて、前記各個別容器の四辺には、前記ボスの群に内接する枠体が全周にわたって途切れることなく連続した状態で下向きに突設されており、
前記ボスの外周面に全周にわたって形成された第1係合部と前記枠体の内周面に部分的に形成された第2係合部とを弾性に抗して係脱させることにより、前記各個別容器が前記本体に着脱されるもので、前記第1係合部と第2係合部とは、一方は係合突起で他方は係合溝になっている」
という基本構成である。
【0012】
そして、上記基本構成において、
「前記個別容器は、外周面が成型に際しての抜き勾配によって下窄まりに形成されて、前記枠体における各コーナー部にそれぞれ互いに相違する1つずつの前記ボスが内接すると共に、前記枠体における各辺の一端と他端との間の部位に、前記コーナー部に内接するボスとは異なる少なくとも1つの前記ボスが内接するように設定されて、前記枠体における各辺の一端と他端との間の部位の内面に前記第2係合部が部分的に形成されており、
かつ、前記枠体の下向き突出寸法が前記ボスの上向き突出寸法よりも大きくて、前記各個別容器の底板と前記ボスとの間に隙間が空いている」
という特徴を備えている。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
なお、本願発明において、本体の内部には個別容器のみが配置されるようになっていてもよいし、個別容器の配置部とは別にブラシ類収納部やパフ収納部が形成されていてもよい。この場合、ブラシ類収納部やパフ収納部は本体に一体に形成してもよいし、本体とは別部材として製造して、本願発明の個別容器と同じ係合手段によって取り付けることも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本願発明では、個別容器は、枠体が本体の底面に載ることによって本体で支持されるため、本体の底面又は個別容器の下面に成形収縮等によって不陸が生じても、不陸の影響を無くして安定良く配置できる。従って、多数の個別容器を整列して配置するに当たって、各個別容器の上面を揃えて優れた美観を現出できる。
【0019】
また、本願発明では、枠体の対でボスの対が水平方向から挟まれているため、ボスと枠体とを安定した係合状態に保持できる。また、特許文献5の第5図のように4つの下向き突起で1つの上向き突起を囲ったものに比べて、個別容器の着脱を容易化できる利点もある。
【0020】
なお、多数個の個別容器を縦横等に整列して配置したときに、隣り合った個別容器の上端間に僅かの隙間が空くように設定しておくと、隣り合った個別容器の上面間に多少の段差があっても人目には揃った高さに見えるため好適である。また、個別容器は上下動しやすくなるため、個別容器の着脱も容易になる。
【0021】
本願発明では、個別容器は、ボスの配置ピッチだけずらして本体の内部に配置できるため、大きさや形状が異なる個別容器を装着できる利点や、個別容器の配置レイアウトのバリエーションを拡大できる利点がある。従って、ユーザーフレンドリーである。
【0022】
また、本願発明では、個別容器は下向き枠体を有するため個別容器の安定性を向上できる。また、枠体でボスの群が囲われているため、横ずれやガタ付きもしっかりと防止して、コンパクトの商品価値を向上できる。
【0023】
ボスと枠体との離反を阻止する係合手段は様々に具体化できるが、本願発明のように係合突起と係合溝との組み合わせを採用すると、これら係合突起及び係合溝は、個別容器及び本体を射出成形法によって成形するに当たって、いわゆる無理抜きによって容易に形成できるため、コストの低減に貢献できる。また、噛み合い力の調整は係合突起と係合溝との寸法の調節などで容易に行えるため、個別容器の着脱の容易性も担保できる。
【0024】
更に、係合突起と係合溝とは、部材がいったん弾性に抗して逃げ変形してから、弾性復元力によって戻ることによって互いに嵌まり合うが、弾性復元力による戻り変形が瞬間的に行われることにより、両者が嵌合するに際して、カチッというクリック音を発生させ得ると共に使用者の指先にクリック感を与えることができる。従って、使用者は個別容器が本体にしっかり保持されたことを感じ取ることができて、ユーザーフレンドリーである。
【0025】
本願発明では、各ボスに設けた貫通穴から細いピンや棒を挿通して個別容器を突き出すことにより、個別容器の取り外しをごく簡単に行える。また、本体の底板には多数の貫通穴が形成されるため、本体を合成樹脂の射出成形法によって成形するに際して、ひずみの発生を防止して寸法精度を向上できる利点もある。更に、個別容器を着脱するに際して空気の抜けがよくなるため、個別容器の着脱の容易性にも貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態を示す図で、(A)は開蓋状態の斜視図、(B)は個別容器を裏返した状態での斜視図である。
図2】第1実施形態を示す図で、(A)は背面図、(B)は平面図、(C)は正面図、(D)は側面図である。
図3】(A)は図2(B)のIIIA-IIIA 視断面図、(B)は図2(B)のIIIB-IIIB 視断面図、(C)は個別容器の縦断正面図である。
図4】(A)はコンパクトの底面図、(B)は個別容器の配置例を示す平面図である。
図5】(A)は個別容器の配置例を示す平面図、(B)~(D)は個別容器の別例である第2~第4実施形態の平面図、(E)は個別容器を円形に形成した第5実施形態の平面図、(F)は第1参考例の個別容器の斜視図である。
図6】(A)はボスの別例である第2参考例の部分平面図、(B)はボスの別例である第実施形態の部分平面図、(C)は個別容器の別例である第3参考例の斜視図、(D)は個別容器の別例である第参考例の縦断正面図、(E)は個別容器の別例である第参考例の縦断正面図、(F)は(E)のF-F視断面図である。
図7】(A)は筆用個別容器を配置した第実施形態の平面図、(B)は筆用個別容器の別例である第実施形態の部分平面図、(C)は第実施形態の平面図、(D)は(C)のD-D視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1).第1実施形態の概要・本体
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、図1図5(A)に示す第1実施形態を説明する。
【0028】
コンパクトの基本構造は従来から知られたものであり、図1のとおり、コンパクトは、平面視四角形(横長長方形)で上向きに開口した浅いトレー状の本体1と、本体1を上から開閉する蓋2とを備えており、本体1の内部に、化粧料用の多数の個別容器3を装着できるようになっている。本体1、蓋2、個別容器3はいずれも合成樹脂の射出成形品であり、平面視四角形に形成されている。なお、蓋の内面に鏡を装着できる。
【0029】
蓋2も浅いトレー状になっており、本体1の上面には、蓋2がごく僅かのクリアランスを持って嵌合する土手部4が形成されている。また、本体1の後面には、左右の後ろ向き突出部5が形成されており、蓋2は、後ろ向き突出部5に左右のピン6によって連結されている。このため、図3(A)に示すように、蓋2の後部には、本体1における左右の後ろ向き突出部5に入り込む足部7が形成されて、足部7がピン6によって本体1に連結されている。
【0030】
本体1の四周は壁になっているが、前壁の左右中間部に前方及び上方に開口した凹所8が形成されて、凹所8の内面の上部に前向き係合突起9を突設している一方、蓋2の前端には本体1の凹所8に入り込む板片10が形成されて、板片10に、前向き係合突起9と係合する後ろ向き係合突起11が形成されている。板片10の弾性変形により、後ろ向き係合突起11が前向き係合突起9に係脱する。
【0031】
本体1の底板12に(本体1の底面に)、上向きに突出したボス13の群が、縦横に同一ピッチで多数形成されている。実施形態では、ボス13は、縦方向に6列、横方向に12列形成されている。すなわち、縦横に3列の倍数で形成されている。なお、本体1の四隅の箇所ではボス13は機能しないため、四隅のボス13を無くすことも可能である。各ボス13は円筒状に形成されており、中心穴14は底板12に貫通している。また、図3(B)に明示するように、各ボス13の外周面には、請求項に記載した第1係合部の例として、ごく浅い係合溝15が全周にわたって形成されている。
【0032】
(2).個別容器
他方、個別容器3は図1のとおり平面視正方形の枡形の形態であり、各辺の長さ(横幅)は、ボス13の配置ピッチの3倍よりもごく僅かに小さい寸法に設定されている。従って、図2(B)に示すように、多数個の個別容器3を互いに密接した状態で縦横に整列して本体1の内部に配置できる。
【0033】
個別容器3は枡形であるため4枚の側板(壁)を有するが、4枚の側板を底板16の下方に突出させることにより、底面視四角形の枠体17が周方向に連続した状態に形成されている。そして、枠体17の4つの辺の内面に、請求項に記載した第2係合部の例として、ボス13の係合溝15に嵌合する係合突起18が形成されている。係合突起18は、各辺の幅方向の中間部に部分的に設けているが、配置位置は任意に設定できる。1つの辺に複数の係合突起18を設けることも可能である。
図1(B)に明示するように、枠体17を構成する各側板は一対ずつのリブ19によって底板16と連接している。リブ19は反り防止のために設けているが、必ずしも必要なものではない。リブ19を設ける場合、その個数や配置位置は任意に設定できる。図3(B)に示すように、枠体17の突出寸法はボス13の突出寸法よりも大きく、従って、ボス13と底板16との間には間隔が空いている。
【0034】
本実施形態では、個別容器3の枠体17で9個のボス13が囲われているため、個別容器3は正確に位置決めされる。そして、縦横に離れた一対ずつのボス13が、枠体17を構成する一対ずつの側板と係合していることにより、個別容器3は、例えばコンパクトを逆さにしても本体1から外れない状態に保持される。個別容器3の取り付けは、上から押し付けて、枠体17及びボス13を弾性変形させることによって行われる。枠体17の各コーナー部は、それぞれ1つのボス13に内接している。
【0035】
このとき、枠体17及びボス13はいったん弾性に抗して逃げ変形してから戻り変形して係合突起18と係合溝15とが嵌合するが、戻り変形は弾性復元力で瞬間的に行われるため、係合突起18と係合溝15とが嵌合するとカチッというクリック音が発生する。このため、使用者は個別容器3が確実にセットされたことを把握できる。従って、ユーザーフレンドリーである。
【0036】
本実施形態では、縦横に配置された3対ずつのボス13が縦横の2方向から枠体17で挟まれているため、各係合突起18と係合溝15との係合状態が安定して、個別容器3をしっかりと保持できる。また、枠体17はボス13の列の間に位置するため、多数のボス13を縦横に配置しつつ、本体1がボス13と干渉することはない。従って、個別容器3は、ボス13の配置ピッチで縦横にずらして配置できる。すなわち、ボス13の配置ピッチを単位としては、個別容器3の位置を設定できる。これにより、レイアウトの自由性が高くなる。
【0037】
図3(B)に一点鎖線で示すように、細い棒状のプッシャー20を本体1の中心穴14に挿入して個別容器3を押すと、個別容器3を取り外しできる。但し、個別容器3は、その側面に指が掛かると引き起こしできるので、個別容器3が1つでも取り付けられていない場合(本体1の内部に一部でも空白部がある場合)は、プッシャー20を使用することなく個別容器3を取り外しできる。なお、プッシャー20は、ヘアピンやピンセット、千枚通しのように身近にある物も使用できるし、フランジ付きの専用品を作ってコンパクトに付属させておくこともできる。
【0038】
本実施形態では、図3(C)に明示するように、個別容器3は、その外周面が僅かながら下窄まりになっている。このため、隣り合った個別容器3の上端を互いに密着又は密接させつつ、下端間では間隔を広げることができる。このため、個別容器3の上下動を許容しつつ、隣り合った個別容器3の間隔を狭めて美観を向上できる。
【0039】
なお、図3(C)のように個別容器3を下窄まりに形成した場合、射出成形法で製造するに際しては、図3(C)で見ると、固定型(キャビ)は下に位置して可動型(コア)は上に位置する。従って、個別容器3の外周面は、固定型に設けた抜き勾配によって下窄まり形状になっている。そして、係合突起18を形成するための溝は固定型に形成されるが、枠体17の内周面には抜き勾配が存在するため、枠体17を圧縮変形させて型抜きできる(無理抜きできる。)。
【0040】
図3(C)に一点鎖線で示すように、個別容器3の底面のうち少なくも周縁部を湾曲面に形成することが可能である。この場合は、個別容器3の隅部に化粧料が残ることを防止できる。底面の全体を湾曲させることも可能である。この点は、他の実施形態も同様である。
【0041】
個別容器3は、様々なレイアウトで配置できる。図4(B)の使用例では、縦方向に並んだ2個ずつの個別容器3を、互いに間隔を空けた状態で配置している。また、図5(A)の使用例では、本体1の左右両側部に2個ずつの個別容器3を縦に並べて、2個の個別容器3の群の間に2個の個別容器3を斜め方向に並べている。これらは一例であり、消費者は、必要に応じて様々なレイアウトを選択できる。
【0042】
(3).他の実施形態
第1実施形態では、個別容器3を正方形に形成していたが、図5(B)に示す第2実施形態及び図5(C)に示す第3実施形態では、個別容器3を平面視長方形に形成している(長辺は短辺の略2倍の大きさである。)。(B)の第2実施形態では、化粧料の収容部を四角形に形成しているが、この場合、実線で示すように収容部を1 つにして外形と相似形の長方形に形成してもよいし、一点鎖線で示すように仕切り壁を設けて2つ(複数)に区分してもよい。
【0043】
(C)の第3実施形態では、外形は長方形に形成しつつ、化粧料の収容部は2つに分けてそれぞれ円形に形成している。(D)に示す第4実施形態では、個別容器3の外形は正方形に形成して化粧料の収納部は円形に形成している。個別容器3を、縦横とも第1実施形態のものの2倍の大きさの正方形に形成することもできる。この場合、収容部は1つにしてこれに化粧料又はパフを入れることもできるし、収容部を複数に仕切って複数種類の化粧料を収納することもできる。
【0044】
上記の各実施形態は個別容器3を四角形に形成したが、図5(E)(F)に第1参考例として示すように、個別容器3を円形に形成することも可能である。この場合は、4つのボス13との干渉を回避するために、枠体17に4つの切欠き22を形成している。4つの足状下向き突起を互いに独立した状態に形成することも可能である。敢えて述べるまでもないが、本願発明では、1つの本体1に形状や大きさが異なる複数種類の個別容器3を装着できる。
【0045】
図6(A)に示す第2参考例では、ボス13を複数(4本)に割られたパーツで構成している。このように構成すると、ボス13は弾性変形しやすくなるため、寸法精度をラフにしつつ個別容器3の着脱を軽快に行える。図6(B)に示す第実施形態では、ボス13は円筒状に形成しつつ、中心穴14を、底板16の上に位置した部位14aが底板12に貫通した部位14bよりも大径になる異径(段違い)に設定している。この場合も、ボス13は肉厚が薄くなることによって変形が容易になる。
【0046】
図6(C)に示す第3参考例では、個別容器3の枠体17を構成する4枚の側板を2本ずつのスリット23によって分断し、中間部に位置した中間片17aに係合突起18を形成している。このように構成すると、中間片17aは撓み変形しやすくなるため、個別容器3の着脱が容易になる。
【0047】
図6(D)に示す第参考例では、個別容器3の枠体17に係合溝15を形成して、ボス13(図示せず)に係合突起18を形成している。この場合は、枠体17のコーナー部にも係合溝15を形成している。そして、この実施形態では、固定型(キャビ)24が個別容器3に上から嵌まる状態になっており、従って、個別容器3には上窄まりの抜き勾配が形成されている。
【0048】
この参考例では、係合溝15を形成する突起は可動型(コア)に形成されるが、成形後には、製品は、固定型から離反してのち可動型から突き出されるため、個別容器3は可動型から離れるときは外側に膨れ変形することが許容されている。従って、いわゆる無理抜きによって係合溝15を確実に形成できる利点がある。枠体17に係合突起18を形成する場合も同様である。
【0049】
成形に際しては、個別容器3は可動型に係合しているので、外周に抜き勾配を形成しなくても、固定型を容易に離反させることが可能である。すなわち、固定型(キャビ)に抜き勾配を形成しなくてもキャビ離れを容易化して、製品の取り出しを支障なく行える。
【0050】
図6(E)に示す第参考例では、個別容器3の下面に、下向き突起として、4つのボス13に内側から当たる内部枠体25を形成し、内部枠体25の外周面に係合突起18を形成している。従って、この参考例では、内部枠体25は、一対ずつのボス13によって、縦横の2方向から挟まれて安定している。(F)に一点鎖線で示すように、個別容器3の安定性を高めるために、個別容器3の四周と連続した外部枠体26を形成することは可能である。
【0051】
図7(A)に示す第実施形態では、化粧料用の個別容器3とは別に長方形の筆用の個別容器27を配置している。筆用の個別容器27の縦長寸法は本体1の内部の縦長寸法によりも小さくなっており、このため、筆用個別容器27の短辺と本体1の内面との間に空所28が空いている。
【0052】
従って、空所28に指先を挿入して筆用個別容器27を引き起こすことができる。そして、筆用個別容器27を取り外すと2個の化粧料用の個別容器3の側面が露出するため、これに指を掛けて個別容器3を取り外しできる。このように、個別容器3の交換や並べ変えを容易に行うことができる。
【0053】
図7(A)において空所28を形成したのは、筆用個別容器27の取り外しを容易にするためであったが、図7(B)に第実施形態として示すように、筆用個別容器27の短辺部に、指先を挿入できる凹部29を形成してもよい。
【0054】
図7(C)(D)に示す第実施形態は、個別容器3の取り外しを容易にするための他の手段として、本体1に形成した左右の後ろ向き突出部5に、本体1の内部と連通して指掛け凹所30を形成している。また、個別容器3を取り外すに際して当該個別容器3への指の引っ掛かりを良くするために、個別容器3の外周に、その上端部を残して肉ヌスミ部31を形成している。なお、肉ヌスミ部31は、他の実施形態にも適用できる。
【0055】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本願発明は、コンパクトに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 本体
2 蓋
3 個別容器
5 後ろ向き突出部
12 本体の底板
13 ボス(上向き突起)
14 中心穴
15 係合溝
16 個別容器の底板
17 枠体(下向き突起)
18 係合突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7