(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01N 3/24 20060101AFI20250107BHJP
F02B 39/00 20060101ALI20250107BHJP
F16J 15/08 20060101ALI20250107BHJP
F02F 1/42 20060101ALI20250107BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20250107BHJP
【FI】
F01N3/24 N
F02B39/00 T
F16J15/08 H
F02F1/42 B
F01N13/08 E
(21)【出願番号】P 2021124062
(22)【出願日】2021-07-29
【審査請求日】2024-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】森 伸介
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-125904(JP,A)
【文献】特開2016-142194(JP,A)
【文献】実開昭54-3511(JP,U)
【文献】実開昭53-146812(JP,U)
【文献】実開昭52-35411(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F01N 13/08
F02F 1/42
F02B 39/00
F16J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気出口が排気側面に開口したシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの排気側面にガスケットを介して固定された触媒ケース又はターボ過給機とを備え、
前記触媒ケース及びターボ過給機は、前記排気出口から横向きに排出された排気ガスを下向きに方向変換するようにエルボ状に曲がった排気ガス導入筒部を有し、排気ガス導入筒部の始端にフランジ板が設けられ、前記フランジ板と前記シリンダヘッドの排気側面との間に、薄金属板より成る前記ガスケットが挟まれている、
という構成のエンジンであって、
前記ガスケットに、前記排気ガス導入筒部の内部に入り込んで排気ガスを下向きに方向変換させるインナーガイドが、前記排気ガス導入筒部との間に断熱空間を空けた状態で一体に形成されている、
エンジン。
【請求項2】
排気出口が排気側面に開口したシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの排気側面にガスケットを介して固定された触媒ケース又はターボ過給機とを備え、
前記触媒ケース及びターボ過給機は、前記排気出口から横向きに排出された排気ガスを下向きに方向変換するようにエルボ状に曲がった排気ガス導入筒部を有し、排気ガス導入筒部の始端にフランジ板が設けられ、前記フランジ板と前記シリンダヘッドの排気側面との間に、薄金属板より成る前記ガスケットが挟まれている、
という構成のエンジンであって、
前記シリンダヘッドの内部に、複数の気筒から排出された排気ガスを1つの前記排気出口に向かわせる集合通路が形成されている一方、
前記ガスケットは互いに重なり合った複数枚の薄金属板で構成されて、前記複数枚の薄金属板に、個別には樋状の形態を成して全体として筒状の形態を成すインナーガイドが、前記排気ガス導入筒部との間に間隔を空けた状態で前記排気ガス導入筒部の内部に入り込むように一体に形成されており、
前記インナーガイドの少なくとも一部に、排気ガスを下向きに方向変換させる曲がり部が形成されている、
エンジン。
【請求項3】
前記複数のインナーガイドは上部インナーガイドと下部インナーガイドとに分離しており、前記上部インナーガイドに前記曲がり部が形成されている、
請求項2に記載したエンジン。
【請求項4】
前記上部インナーガイドと下部インナーガイドとは、その側縁が互いに当接しない状態で上下に嵌まり合っている、
請求項3に記載したエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シリンダヘッドの排気側面に触媒ケース又はターボ過給機がガスケットを介して直付けされているエンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンでは、排気ガスの浄化手段として触媒が使用されているが、触媒はある程度まで昇温しないと十分に活性化しないという特性があるため、冷間始動してからある程度の時間は排気ガスの浄化能力が低い状態が続くという問題があった。
【0003】
さて、触媒は排気ガスの熱によって昇温されるが、触媒を早期昇温させるためには、排気ガスの熱を有効利用することが必要である。しかし、特段の対策を施さないと、シリンダヘッドから排出された排気ガスが触媒に到達するまでに、排気ガスの熱の相当割合が排気マニホールド等の排気管から外部に放熱されてしまい、排気ガスの熱を触媒の昇温に有効利用できない。そこで、排気マニホールドを二重構造に構成して、排気マニホールドからの放熱を抑制することにより、排気ガスの熱の利用効率を高めて触媒の早期昇温を図ることが提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
他方、排気マニホールドをシリンダヘッドに固定するにおいて、シール性を確保するために排気マニホールドのフランジとシリンダヘッドの排気側面との間にガスケットを配置しているが、特許文献2には、薄金属板製のガスケットに、排気マニホールドの内部に向けて僅かに突出した筒状の流れ制御手段を形成することにより、排気ガスが渦流を発生させることなく排気マニホールドにスムースに導かれる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-113741号公報
【文献】特開2001-235033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1を初めとした従来の二重構造の排気マニホールドは、気筒数と同じ数の枝管を1本に集合させて集合部に触媒ケース(又はターボ過給機)を接続しており、単層の排気マニホールドに比べて排気ガスの放熱を抑制することはできるが、排気マニホールドの内部面積(放熱面積)は非常に大きいため、放熱を抑制できるといっても、排気ガスの熱の利用効率は元々小さいと云わざるを得ない。従って、冷間始動後に触媒を迅速に活性化できるか否か疑問である。
【0007】
また、特許文献1を初めとした従来の二重構造の排気マニホールドは、構造が複雑であるためコストが大幅に嵩むのみならず、排気マニホールドの重量が増大して燃費にとってマイナス要因になるという点も問題であった。更に述べると、従来構造では、内管と外筒とが接合されているため、特に薄い内管に熱ひずみが発生することが不可避であり、そこで、内管には熱疲労強度が高い耐熱ステンレス板を使用せざるを得ず、これがコストを押し上げていた。
【0008】
他方、特許文献2は、ガスケットを利用して排気ガスの流れをスムース化するものであり、ガスケットを有効利用している点で注目に値するが、排気ガスがシリンダヘッドから排気マニホールドに流入するに当たっての流れを制御するものに過ぎないため、放熱抑制の機能は備えておらず、従って、冷間始動後の触媒の早期活性化という効果は期待できない。
【0009】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は多気筒エンジンを対象にしており、この多気筒エンジンは、
「排気出口が排気側面に開口したシリンダヘッドと、
前記シリンダヘッドの排気側面にガスケットを介して固定された触媒ケース又はターボ過給機とを備え、
前記触媒ケース及びターボ過給機は、前記排気出口から横向きに排出された排気ガスを下向きに方向変換するようにエルボ状に曲がった排気ガス導入筒部を有し、排気ガス導入筒部の始端にフランジ板が設けられ、前記フランジ板と前記シリンダヘッドの排気側面との間に、薄金属板より成る前記ガスケットが挟まれている」
という基本構成になっている。
【0011】
そして、請求項1の発明は、
「前記ガスケットに、前記排気ガス導入筒部の内部に入り込んで排気ガスを下向きに方向変換させるインナーガイドが、前記排気ガス導入筒部との間に断熱空間を空けた状態で一体に形成されている」
という特徴を有している。
【0012】
なお、インナーガイドは板金加工によってガスケットに一体に形成されるが、単なる曲げのみで形成することも可能であるし、曲げ加工と延伸加工とを組み合わせると、インナーガイドの突出寸法を大きくできて好適である。従って、ガスケットの素材として、延性に富んだ耐熱性・耐蝕性金属板を使用すると好適である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1と同じ基本構成において、
「前記シリンダヘッドの内部に、複数の気筒から排出された排気ガスを1つの前記排気出口に向かわせる集合通路が形成されている一方、
前記ガスケットは互いに重なり合った複数枚の薄金属板で構成されて、前記複数枚の薄金属板に、個別には樋状の形態を成して全体として筒状の形態を成すインナーガイドが、前記排気ガス導入筒部との間に間隔を空けた状態で前記排気ガス導入筒部の内部に入り込むように一体に形成されており、
前記インナーガイドの少なくとも一部に、排気ガスを下向きに方向変換させる曲がり部が形成されている」
という特徴を有している。
【0014】
本願発明は様々に展開可能であり、その例として請求項3では、請求項2において、
「前記複数のインナーガイドは上部インナーガイドと下部インナーガイドとに分離しており、前記上部インナーガイドに前記曲がり部が形成されている」
という構成になっている。
【0015】
更に、請求項3の好適な展開例として請求項4では、
「前記上部インナーガイドと下部インナーガイドとは、その側縁が互いに当接しない状態で上下に嵌まり合っている」
という構成になっている。
【0016】
この場合、上下インナーガイドの嵌まり合いの態様は、上部インナーガイドの側縁が下部インナーガイドの内部に入り込んでいる第1の態様と、下部インナーガイドの側縁が上部インナーガイドの内部に入り込んでいる第2の態様と、上部インナーガイドと下部インナーガイドとの側縁が気筒列方向にずれた状態で互いに嵌まり合っている第3の態様とがあり、第1の態様では、上部インナーガイドは下部インナーガイドよりも幅狭になっていて、第2の態様では下部インナーガイドが上部インナーガイドよりも幅狭になっていて、第3の態様では上下のインナーガイドは同じ程度の幅になっている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明において、排気ガスは1つの排気出口から排気ガス導入筒部を経由して触媒ケースの内部又はターボ過給機の内部(スクロール室又はウエストゲート通路)に流入するが、排気ガス導入筒部はエルボ状で短い長さであるため、排気ガスの放熱面積は、特許文献1のような外部集合方式排気マニホールドに比べて著しく小さい。従って、触媒ケースを設けるにしてもターボ過給機を設けるにしても、排気ガスの熱の利用効率は、特許文献1のような外部集合方式に比べて格段に高い。
【0018】
そして、本願発明では、ガスケットに形成したインナーガイドを利用して、排気ガスが触媒ケースの内部又はターボ過給機の内部に導かれるが、インナーガイドと排気ガス導入筒部との間に断熱用間隔が空いているため、排気ガスの熱が排気ガス導入筒部を通じて外部に放散される割合を大きく低減できる。しかも、インナーガイドはガスケットに一体に形成されているため、構造は単純で、従来の二重管に比べて、コストを大幅に抑制できると共に、軽量化によって燃費も向上できる。
【0019】
つまり、本願発明は、排気ガス導入筒部の長さを短くできる直付け方式を有効利用して、ガスケットに設けたインナーガイドによって排気ガスの流れをガイドすることにより、冷間始動後の触媒の早期活性化やターボ過給機の過給性能確保を、簡単な構造で実現したものである。
【0020】
そして、本願発明の特徴の1つは、インナーガイドが排気ガス導入筒部とは分離していて自由に伸縮することであり、従って、インナーガイドに熱ひずみが発生することはなくて、信頼性・耐久性に優れていると共に、従来のガスケットに適用できてコスト抑制効果を確実化できる。
【0021】
さて、従来の二重管式排気マニホールドは、内管を外管で覆っているため、製造に当たっては、外管を複数パーツに製造してから溶接せねばならず、これが製造の手間を倍加させると共に、鋳造品には適用できずに汎用性が低かった。
【0022】
これに対して本願発明では、インナーガイドは排気ガス導入筒部に入り込んでいるだけであるため、排気ガス導入筒部が鋳造によって形成されている場合も問題なく適用できる。従って、鋳造されていることが多いターボ過給機のハウジングにも適用できて、汎用性に優れている。
【0023】
ガスケットは、無機材の単層構造になっていることもあるが、複数枚の薄金属板(一般にはステンレス板)で構成していることが多く、この場合、各薄金属板にビードを膨出形成して、フランジの締め込みによってビードを潰し変形させることによってシール性を確保している。
【0024】
そして、ガスケットを薄金属板で構成するにおいて、従来は、排気出口に相当する部分を打ち抜いて捨てていたが、本願発明では、従来は打ち抜かれて捨てられていた部分を排気ガス導入筒部の内部に向かうように加工してインナーガイドと成すものであり、この場合、請求項2の発明のようにインナーガイドを樋状に形成すると、板金加工が容易であると共に、突出長さを長くして排気ガスのガイド機能を向上できる。
【0025】
複数枚の薄金属板に樋状のインナーガイドを形成することは、筒体を2つ割状や3つ割状に分けることを意味しているが、請求項3のように、インナーガイドを上部インナーガイドと下部インナーガイドとに分けて、上部インナーガイドに曲がり部を形成すると、排気出口から直進した排気ガスを上部インナーガイドによって下向きにスムースに方向変換できるため、排気出口から直進してきた排気ガスが排気ガス導入筒部の内面に当たるように漏れることを防止又は大幅に抑制して、排気ガスのガイド機能を向上できる利点がある。
【0026】
さて、シリンダヘッドの内部に排気集合通路を設けた内部集合方式では、排気出口は気筒列に長い形状(小判形)になるため、仮に、インナーガイドを気筒列方向に分離すると、一方のインナーガイドと他方のインナーガイドとの間の隙間から排気ガスが上向きに漏洩して放熱性が高くなるおそれがあり、これを防止するにはインナーガイド同士を溶接して一体化するなどの対策を採る必要がある。
【0027】
この点、請求項3のようにインナーガイドを上下に分離すると、上下のインナーガイドの間に隙間があっても、上に位置したインナーガイドによって排気ガスを的確にガイドできる。従って、請求項3では、各薄金属板にインナーガイドを個別に形成したことの利点を享受して、構造を簡単化しつつ排気ガスの熱を有効利用できる。上下のインナーガイドは互いに分離していて自由に伸縮するため、既述のとおり、熱ひずみに起因した問題は生じない(上部のインナーガイドは受熱量が大きいため、下部のインナーガイドよりも熱膨張が大きいが、上下のインナーガイドが分離していて両者は自由に伸長するため、膨張の違いに起因した熱ひずみは皆無である。)。
【0028】
特に、請求項4のように、上部インナーガイドと下部インナーガイドとが互いに当接することなく遊びを持った状態で嵌まり合っていると、上下のインナーガイドの自由な伸縮を保証しつつ排気ガスの漏洩を防止できるため、特に好適である。また、上下のインナーガイドは当接せずに独立しているため、排気ガスの流れによって上下のインナーガイドが振動しても、騒音が発生したり強度が低下したりすることはない。
【0029】
さて、排気ガス導入筒部はエルボ状であるため、排気ガスから排出された排気ガスは横向きに直進してから下向きに方向変換するが、排気ガスは正圧であるため、排気ガスの一部は、横向きに直進しつつ下方に押される傾向を呈する。この場合、下部インナーガイドが上部インナーガイドの内部に入り込んでいると、排気ガスが下部のインナーガイドの外側に漏洩しやすくなることが懸念される。
【0030】
これに対して、請求項4のうち上記第1の態様のように、上部インナーガイドの側縁を下部インナーガイドの内部に入り込ませると、下向きに押された排気ガスを下部のインナーガイドで受けて、排気ガス導入筒部の曲がり部に向けて進ませることができるため、排気ガスがインナーガイドの側縁から外れて排気ガス導入筒部の内面に向かうことを防止又は著しく抑制できて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施形態のエンジンを排気側面と直交した方向から見た側面図である。
【
図4】(A)(B)ともガスケットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下では方向を特定する前後・左右の文言を使用するが、この方向は、エンジンに関する一般的な称呼に準拠して、クランク軸線方向を前後方向、クランク軸線及びシリンダボア軸心と直交した方向を左右方向としている。前と後ろは、タイミイグチェーンが配置される側を前、トランスミッションが配置される側を後ろとしている。念のため、
図1~3に方向を明示している。上下方向は、ほぼ鉛直方向である。
【0033】
(1).エンジンの概要
エンジンの基本構造は従来と同様であり、エンジン本体を構成するシリンダブロック1とその上面に固定されたシリンダヘッド2とを有している。図示していないが、シリンダヘッド2とシリンダブロック1との間にはガスケットが介在している。
【0034】
図3に示すように、本実施形態のエンジンは3つのシリンダボア3を有する3気筒であり、シリンダヘッド2には、シリンダボア3と同心のプラグホール4と、一対ずつの排気ポート5と、排気ポート5の群が連通した排気集合通路6と、排気側面7に開口した1つの排気出口8とが形成されている。なお、
図3及び
図2において符号9で示すのはウォータジャケットである。
【0035】
排気出口8は排気集合通路6の前後中間部に配置されており、シリンダヘッド2の排気側面7には、排気出口8が開口したランド部7aを形成し、ランド部7aに、触媒ケース10に一体に形成されたエルボ状の排気ガス導入筒部11が、フランジ板12を介してスタッドボルト13及びナット14で固定されている。フランジ板12は排気ガス導入筒部11に溶接されている。
【0036】
図1のとおり、排気出口8は前後方向に長い小判形の形態であり、ランド部7aは、排気出口8を囲うドーナツ状の部分と、これから対角方向に突出した4つの半島状部とを有して、各半島状部の先端にスタッドボルト13が固定されている。従って、触媒ケース10のフランジ板12もランド部7aと同じ形状であり、フランジ板12がナット14でランド部7aに固定されている。
【0037】
触媒ケース10はステンレス板等の金属板製であり、触媒15が内蔵されたストレート部16と、ストレート部16の上端に一体に設けた上窄まり状の上コーン部17とを有して、上コーン部17に排気ガス導入筒部11が一体に形成されている。なお、排気ガス導入筒部11は、エルボ状継手部と呼ぶことも可能である。エンジンは、排気側面7を鉛直線に対して少し前傾させるようにスラントしている。
図2に示す符号18は、空燃比センサ(A/Fセンサ)である。
【0038】
(2).ガスケット
触媒ケース10のフランジ板12とシリンダヘッド2のランド部7aとの間には、ガスケット19が介在している。ガスケット19は、フランジ板12に重なった第1薄金属板20と、ランド部7aに重なった第2薄金属板21との2枚の薄金属板で構成されており、図示していないが、両者に、排気出口8を囲うビードが膨出加工されていて、ビードを偏平に潰すことによってシール性を保持している。
【0039】
そして、第1薄金属板20と第2薄金属板21とに、排気ガス導入筒部11の内部に入り込んだインナーガイド22,23が板金加工によって形成されている。第1薄金属板20に形成された第1インナーガイド(上部インナーガイド)22は下向きに開口した樋状の形態である一方、第2薄金属板21に形成された第2インナーガイド(下部インナーガイド)23は上向きに開口した樋状の形態であり、両者によって大まかな筒状の形態が構成されている。そして、両インナーガイド22,23の外面と排気ガス導入筒部11の内面との間には、若干の間隔の断熱用空間24が空いている。
【0040】
排気ガス導入筒部11は排気ガスを下向きに案内するエルボ状の形態であるため、内側の曲がり部11aと外側の曲がり部11bとを有しているが、第1インナーガイド22は、外側の曲がり部11bに倣った曲がり部22aを有して、第2インナーガイド23は、内側の曲がり部11aに倣った曲がり部23aを有しており、第1インナーガイド22の曲がり部22aにより、排気ガスが下方に向かうようにガイドされる。
【0041】
図3,4に示すように、第1インナーガイド22の前後幅W1は、第2インナーガイド23の前後幅W2よりも少し小さくなっている。従って、平面視及び側面視において第2インナーガイド23の前後側縁23bは、第1インナーガイド22の前後側縁22bの前後外側にはみ出ている。
【0042】
図2,
図4(A)では、第1インナーガイド22の前後側縁22bは第2インナーガイド23の前後側縁23bよりも僅かに高くなっているが、
図4(B)では、両インナーガイド22,23の前後側縁22b,23bが、若干の隙間を介して互いに嵌まり合っている。いずれにしても、両インナーガイド22,23は当接することなく独立しているので、熱伸縮に起因して歪みが発生したり振動によって騒音が発生したりすることはない。
図4(B)の態様は、排気ガスの漏洩機能を更に向上できる。
【0043】
図2,4に示すように、第1インナーガイド22の先端22cは、排気出口8の上下中心25よりも少し低くなっている。インナーガイド22,23は、排気出口8に相当する部分を除去せずにプレス加工によって排気ガス導入筒部11の内部側に突き出し加工しており、従って、素材状態の状態での面積は排気出口8の面積とほぼ同じある。
【0044】
そして、排気出口8に相当する部分を単に曲げただけであると、第1インナーガイド22の突出寸法は排気出口8の上下幅と同じ寸法になるだけであるが、本実施形態では、両薄金属板20,21として例えばSUS310のような延性に富んだステンレス板を使用することにより、引き延ばしながら曲げ加工してインナーガイド22,23を形成しており、これにより、第1インナーガイド22を、排気ガス導入筒部11の内面に沿わせつつ先端が排気出口8の中心よりも下方に位置するように大きな突出寸法を確保している。
【0045】
図面から理解できるように、排気出口8から横向き(左右方向)に噴出した排気ガスは、上下の両インナーガイド22,23にガイドされて下向きに方向変換し、触媒ケース10の内部に噴出する。この場合、排気ガスは直進性を持って排気ガスから噴出するため、第1インナーガイド23が存在しないと、排気ガスが排気ガス導入筒部11における外側の曲がり部11bに衝突して方向変換するため、排気ガス導入筒部11からの放熱量が大きくなって、触媒15の受熱量がそれだけ少なくなる。
【0046】
しかし、本実施形態では、インナーガイド22,23と排気ガス導入筒部11との間に断熱用空間24が空いていることと、第1インナーガイド22によって排気ガスが下向きにガイドされて、排気ガス導入筒部11に接触する排気ガスの量が少ないこととにより、排気ガス導入筒部11を通じた放熱量は著しく少なくなって、触媒15の受熱量を増大できる。これにより、冷間始動であっても触媒15の早期昇温を促進できる。
【0047】
両薄金属板20,21は、ビードが潰し変形されるという性質上薄いため、インナーガイド22,23の吸熱量も少ないし、薄金属板20,21を通じた放熱量も僅かである。この面においても、排気ガスの熱を触媒15の昇温に利用するにおいて、熱の利用効率を向上できる。
【0048】
また、両インナーガイド22,23が互いに分離していることと、それぞれ先端は自由端になっていて自由に熱膨張することとにより、両インナーガイド22,23に熱ひずみが発生することは皆無であるため、高い耐久性を確保できる。なお、インナーガイド22,23は樋状になっていて形状は安定しているため、排気ガスの圧力によって変形したり振動したりすることはない。ガスケット19を有効利用して排気ガスを方向変換させるものであるため、従来の二重管に比べてコストは格段に抑制できる。
【0049】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えば、実施形態は触媒ケースに適用したが、排気ターボ過給機に適用することも可能である。この場合も、温度が高い排気ガスをスクロール室に送り込めるため、過給効率を向上できる。第1薄金属板に第2インナーガイドを形成して、第2薄金属板に第1インナーガイドを形成することも可能である。
【0050】
ガスケットが3枚の薄金属板で構成されている場合、各薄金属板にそれぞれ樋状のインナーガイドを3つ割り状に形成することもできるし、2枚の薄金属板のみにインナーガイドを形成することもできる。4枚以上の場合も同様である。実施形態のように第1インナーガイドが第2インナーガイドよりも幅狭である場合、第1インナーガイドの側縁を第2インナーガイドの内面に当接させるといったことも可能である。この場合は、各インナーガイドの伸縮は自由であるため、熱ひずみの発生はない(第1インナーガイドを第2インナーガイドに弾性的に当接させて、離反しない状態に保持しておくと、振動による騒音を防止できる。)。
【0051】
例えば6気筒エンジンの場合、3つの気筒ごとに1つの排気出口を設けて、両排気出口にそれぞれ触媒ケースやターボ過給機を接続することがあるが、本願発明はこのようなタイプのエンジンにも適用できる。請求項1の発明は、単気筒エンジンにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本願発明は、エンジンに具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 シリンダブロック
2 シリンダヘッド
6 排気集合通路
7 排気側面
7a ランド部
8 排気出口
10 触媒ケース
11 排気ガス導入筒部
11b 外側の曲がり部
12 フランジ板
15 触媒
19 ガスケット
20 第1薄金属板
21 第2薄金属板
22 第1インナーガイド(上部インナーガイド)
22a 排気ガスを下向きに方向変換させる曲がり部
23 第2インナーガイド(下部インナーガイド)
23a 曲がり部
24 断熱用空間