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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/40 20180101AFI20250107BHJP
   F21S 43/237 20180101ALI20250107BHJP
   F21S 43/241 20180101ALI20250107BHJP
   F21S 43/249 20180101ALI20250107BHJP
   F21S 43/27 20180101ALI20250107BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20250107BHJP
   F21S 43/145 20180101ALI20250107BHJP
   F21S 43/13 20180101ALI20250107BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20250107BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20250107BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20250107BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20250107BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20250107BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20250107BHJP
【FI】
F21S43/40
F21S43/237
F21S43/241
F21S43/249
F21S43/27
F21S43/14
F21S43/145
F21S43/13
F21V8/00 310
F21W103:00
F21W104:00
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021159987
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049940
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2024-07-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】本村 憲一
(72)【発明者】
【氏名】金塚 昌平
(72)【発明者】
【氏名】秋山 京平
(72)【発明者】
【氏名】林 亮介
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120708(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006699(WO,A1)
【文献】特開2013-008674(JP,A)
【文献】特開2016-197523(JP,A)
【文献】特開2020-087624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/00
F21V 8/00
F21W 103/00
F21W 104/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する光源部と、
前記光源部からの光が端面から入射され、内部で前記光を導波し、前記光の一部を側面から外部に照射する導光部材と、
前記導光部材から照射された光を反射光として反射するリフレクターとを備え、
前記リフレクターは、光吸収性材料を含有し、
遮光性材料で構成されたシェードを備え、
前記シェードは、前記導光部材の長手方向に沿って前記リフレクターとの間に配置され、部分的に前記光を透過する透光部が形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用灯具であって、
前記導光部材は、第1方向と第2方向の少なくとも二方向に前記光を第1光および第2光として照射し、
前記リフレクターは、前記第2光を反射し、
前記第1光を透過するインナーレンズを備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用灯具であって、
一方の端面から前記第1光が入射され、他方の端面から前記第1光を出射する第2導光板を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項4】
光を照射する光源部と、
前記光源部からの光が端面から入射され、内部で前記光を導波し、前記光の一部を側面から外部に照射する導光部材と、
前記導光部材から照射された光を反射光として反射するリフレクターとを備え、
前記リフレクターは、光吸収性材料を含有し、
前記導光部材は、第1方向と第2方向の少なくとも二方向に前記光を第1光および第2光として照射し、
前記リフレクターは、前記第2光を反射し、
前記導光部材は、前記光を第3方向にも第3光として照射し、
一方の端面から前記第3光が入射され、他方の端面から前記第3光を出射するとともに、前記反射光を裏面側から表面側に透過する第1導光板を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用灯具であって、
一方の端面から前記第1光が入射され、他方の端面から前記第1光を出射する第2導光板を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項6】
請求項4または5に記載の車両用灯具であって、
前記第1光を透過するインナーレンズを備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一つに記載の車両用灯具であって、
前記リフレクターの表面には、光散乱部が形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関し、特に発光素子からの光を導光部材で導光して照射する車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、前照灯や尾灯などの車両用灯具として、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などの発光素子を光源として用いるものが提案されている。これらの車両用灯具は車両外観の一部を構成するため、様々な外形や点灯状態で意匠性を高めることが求められている。そこで、発光素子が照射する光を導光部材に入射させ、導光部材の内部に設けられた光散乱部で光を散乱させて、所望の発光形状を実現するものも提案されている。このような導光部材による光散乱を用いる車両用灯具においては、導光部材に設けられた光散乱部の形状で光が外部に照射されるため、直線状や曲線状の発光形状を容易に実現することができる。
【0003】
また近年では、車両用灯具の意匠性に対する要求は年々高まっており、線状の発光形状のみならず多種多様な発光形状での表現が望まれている。従来の技術でも、複数の発光素子と導光部材を用いることで、複雑な発光形状を実現することは可能であるが、部品点数が増加するうえに設計自由度には限界があった。
【0004】
そこで、特許文献1,2等では、導光部材から光を複数の方向に照射して、より複雑な意匠の発光形状を実現する車両用灯具も提案されている。このような複数の方向に光を照射する導光部材を用いることで、それぞれの方向に照射される配光分布を調整して、複数の発光形状による表現を一つの導光部材で実現することができる。一例としては、導光部材から一方の方向に照射される光を直接外部に取り出し、他方の方向に照射される光をリフレクターで反射することで、ライン形状で直接的な光照射と二次元的な広がりの間接的な光照射を同時に実現することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-027731号公報
【文献】特開2020-129460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような導光部材とリフレクターを組み合わせた車両用灯具は、導光部材が透明な部材で構成されており、リフレクターが高反射な表面を有しているため、非点灯時に車両用灯具の内部構造を視認できてしまう。導光部材とリフレクターは、点灯時に所望の光を照射するように光学的に設計されているため、直接その構造を視認した場合の意匠性と両立させることは困難である。これは、複雑な発光形状を実現するために、光学的な要素が多く含まれる場合には特に顕著になってくる。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、導光部材とリフレクターを用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、光を照射する光源部と、前記光源部からの光が端面から入射され、内部で前記光を導波し、前記光の一部を側面から外部に照射する導光部材と、前記導光部材から照射された光を反射光として反射するリフレクターとを備え、前記リフレクターは、光吸収性材料を含有し、遮光性材料で構成されたシェードを備え、前記シェードは、前記導光部材の長手方向に沿って前記リフレクターとの間に配置され、部分的に前記光を透過する透光部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
このような本発明の車両用灯具では、光吸収性材料を含有するリフレクターを用いて、導光部材の側面から照射された光を反射するため、外部から車両用灯具の内部構造を視認することが困難になる。これにより、導光部材とリフレクターを用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能となる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記導光部材は、第1方向と第2方向の少なくとも二方向に前記光を第1光および第2光として照射し、前記リフレクターは、前記第2光を反射し、前記第1光を透過するインナーレンズを備える。
【0012】
また、本発明の一態様では、一方の端面から前記第1光が入射され、他方の端面から前記第1光を出射する第2導光板を備える。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、光を照射する光源部と、前記光源部からの光が端面から入射され、内部で前記光を導波し、前記光の一部を側面から外部に照射する導光部材と、前記導光部材から照射された光を反射光として反射するリフレクターとを備え、前記リフレクターは、光吸収性材料を含有し、前記導光部材は、第1方向と第2方向の少なくとも二方向に前記光を第1光および第2光として照射し、前記リフレクターは、前記第2光を反射し、前記導光部材は、前記光を第3方向にも第3光として照射し、一方の端面から前記第3光が入射され、他方の端面から前記第3光を出射するとともに、前記反射光を裏面側から表面側に透過する第1導光板を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様では、一方の端面から前記第1光が入射され、他方の端面から前記第1光を出射する第2導光板を備える。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記第1光を透過するインナーレンズを備える。
また、本発明の一態様では、前記リフレクターの表面には、光散乱部が形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、導光部材とリフレクターを用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能な車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る車両用灯具10の構成を示す模式断面図であり、図1(a)は透光部18aが形成された位置での断面図であり、図1(b)は透光部18aが形成されていない位置での断面図である。
図2】第1実施形態に係る車両用灯具10の内部構造を説明するための模式斜視図である。
図3】第1実施形態に係る車両用灯具10の外観を示す写真であり、図3(a)は非点灯時の正面からを示し、図3(b)は点灯時の正面からを示し、図3(c)は非点灯時の30度斜めからを示し、図3(d)は点灯時の30度斜めからを示している。
図4】第2実施形態に係る車両用灯具10の構成を示す模式断面図であり、図4(a)は透光部18aが形成された位置での断面図であり、図4(b)は透光部18aが形成されていない位置での断面図である。
図5】第2実施形態に係る車両用灯具10の外観を示す写真であり、図5(a)は非点灯時の正面からを示し、図5(b)は点灯時の正面からを示し、図5(c)は非点灯時の30度斜めからを示し、図5(d)は点灯時の30度斜めからを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。図1は、本実施形態に係る車両用灯具10の構成を示す模式断面図であり、図1(a)は透光部18aが形成された位置での断面図であり、図1(b)は透光部18aが形成されていない位置での断面図である。図2は、本実施形態に係る車両用灯具10の内部構造を説明するための模式斜視図である。図2中のA-A位置は図1(a)の断面に対応し、図2中のB-B位置は図1(b)の断面に対応している。
【0019】
図1図2に示すように、車両用灯具10は、ハウジング11と、バックパネル12と、アウターレンズ13と、スペーサ14とリフレクター15と、導光部材16と、シェード17,18と、インナーレンズ19と、発光素子20を備えている。また、リフレクター15は、第1反射部15aと、第2反射部15bと、シェード保持部15cを備えている。また、シェード18には光を透過する透光部18aが部分的に形成されている。図1において、導光部材16の内部から外部に向かって描かれた矢印は、導光部材16内を導波されて散乱された光の経路を模式的に示している。
【0020】
ハウジング11は、車両用灯具10の各部材を保持する筐体部分であり、光を遮る遮光性材料で構成されている。また、ハウジング11には前方開口部および後方開口部が形成されており、前方開口部および後方開口部を覆ってアウターレンズ13およびバックパネル12が設けられている。バックパネル12は、光を遮る遮光性材料で構成され、ハウジング11の後方開口部を覆うように設けられた部材である。バックパネル12には、車両用灯具10の外部から供給される電力を内部に伝えるコネクタ部やハーネス、内部配線などが設けられるが、ここでは図示を省略する。ここではハウジング11とバックパネル12を別体で構成する例を示したが、両者を一体化したハウジング11を用いるとしてもよい。
【0021】
アウターレンズ13は、少なくとも光の一部を透過する材料で構成された部材であり、ハウジング11の前方開口部を覆うように設けられて周縁が固定され、導光部材16からの光を車両用灯具10の外部に取り出す光学部材である。アウターレンズ13を構成する材料としては、ガラスやアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、軽量化や耐衝撃性、耐候性、透光性等の観点からポリカーボネートが最も好ましい。スペーサ14は、ハウジング11内部において、リフレクター15とアウターレンズ13の間に挿入されて両者の間隔を保持する部材である。ここではスペーサ14を用いた例を示しているが、スペーサ14を省略するとしてもよい。ハウジング11とバックパネル12とアウターレンズ13で車両用灯具10の灯室が構成されている。
【0022】
リフレクター15は、ハウジング11内部において導光部材16の後方に配置され、導光部材16から照射された光の少なくとも一部を反射面で反射する光学部材である。リフレクター15で反射された光は、アウターレンズ13を介して車両用灯具10の外部に向けて照射される。リフレクター15を構成する材料は限定されないが、従来から公知の樹脂材料またはガラス等を用いることができる。またリフレクター15は、少なくとも反射面に光吸収性材料を含有しており、可視光の少なくとも一部を吸収するよう設計されている。ここで光吸収材料は限定されないが、特定波長の光を吸収する染料や塗料を用いることができる。
【0023】
リフレクター15の構成例としては、リフレクター15を構成する樹脂材料の全体に染料を含有させた構成や、蒸着等によって反射面に染料や塗料で部分反射膜を成膜した構成が挙げられる。光吸収性材料の色は限定されず、赤色や青色などの特定色を吸収するものを用いることができるが、広範囲の波長範囲を吸収する暗色系のものを用いることが好ましく、黒色を用いることがより好ましい。黒色の光吸収性材料を用いた場合でも、リフレクター15の表面を光沢表面として、ピアノブラック調に仕上げることで、導光部材16からの光の一部を反射することができる。
【0024】
リフレクター15が光吸収性材料を含有していることで、外部からアウターレンズ13を介して車両用灯具10の内部を観察した場合にも、導光部材16やシェード18の形状を視認することが困難になる。したがって、導光部材16とリフレクター15を用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能となる。特に、光吸収性材料として暗色系のものを用いることで、車両用灯具10の非点灯時においてリフレクター15をブラックアウトさせ、車両用灯具10の存在感を抑制した表現の意匠を実現することができる。
【0025】
第1反射部15aは、リフレクター15のうち導光部材16の背面側に設けられた領域であり、導光部材16から背面側に照射された光を前方に反射する領域である。第1反射部15aは、光を反射する方向に基づいて設計することができ、具体的な形状は限定されない。図1に示した例では、第1反射部15aは間隙から迷光が漏れないように、導光部材16の側面における後方半分を覆うように設けられている。ここで、リフレクター15の少なくとも第2反射部15bには光吸収性材料を含有させるが、第1反射部15aには光吸収性材料を含有させないとしてもよく、第1反射部15aの反射面に可視光を良好に反射する高反射膜を形成するとしてもよい。
【0026】
第2反射部15bは、リフレクター15のうち導光部材16から離間した位置に設けられた領域であり、導光部材16から照射された光を前方に反射する領域である。図1図2に示した例では、第2反射部15bは断面が放物面とされ、放物面の焦点位置に導光部材16が配置されている。したがって、導光部材16から下方に照射された光は、第2反射部15bの反射面で反射されて略平行な光としてアウターレンズ13から外部に照射される。図1図2では、第2反射部15bを導光部材16の下方に設けた例を示したが、導光部材16から照射された光のうち、前面側または背面側に照射された光以外を反射する位置に設けられていれば位置および形状は限定されない。
【0027】
図1図2では図示を省略しているが、第2反射部15bにおける反射面には、表面に光散乱部が形成されていることが好ましい。光散乱部の形状や構造は限定されないが、構造例としては、導光部材16の延長方向である水平方向に沿って突起を形成する構造、導光部材16に直交する上下方向に沿って突起を形成する構造、二次元的に突起を形成する構造などが挙げられる。光散乱部を水平方向に沿って形成した場合には、上下方向への光の散乱を増強して、高さ方向での視点位置に関わらずリフレクター15からの反射光を視認させることができる。また、光散乱部を上下方向に沿って形成した場合には、左右方向への光の散乱を増強して、左右方向での視点位置に関わらずリフレクター15からの反射光を視認させることができる。
【0028】
シェード保持部15cは、シェード18に対応する位置に形成された凹部であり、シェード18の先端部分が挿入可能とされている。シェード保持部15cにシェード18の先端が挿入されることで、シェード18を位置決めして保持するとともに、シェード18の先端とリフレクター15とに生じる間隙を無くすことができる。これにより、製造誤差や使用履歴によって生じる間隙からの光の漏洩を防止し、第2反射部15bで反射される光の形状とコントラストの劣化を抑制することができる。ここでは凹部形状のシェード保持部15cをリフレクター15に形成した例を示したが、シェード保持部15cの形状は凹部に限定されず、シェード18の一面側に接触する段差形状などを用いるとしてもよい。また、間隙からの光の漏洩やシェード18の保持に問題が生じなければ、シェード保持部15cを省略することもできる。
【0029】
導光部材16は、光を透過する材料で構成され、延長方向に沿って光が導波されるとともに、導波された光を側面から照射する光学部材である。導光部材16には側面に沿って凹凸ステップが形成されており、内部を導波された光は凹凸ステップで反射されて側面から導光部材16の外部に照射される。図1図2に示した例では、導光部材16として略円柱形状のライトパイプを示しているが、板形状であってもよく、具体的な形状は限定されない。本実施形態では、導光部材16の側面には2パターンの凹凸ステップが形成されており、一方の凹凸ステップで反射された光(第1光)はインナーレンズ19側に照射され、他方の凹凸ステップで反射された光(第2光)は図中下方の第2反射部15b側に照射される。
【0030】
図1(a)に示した例では、インナーレンズ19側に第1光を反射するステップとして、導光部材16の側面が凹形状となる凹ステップを用いている。これは、正面に照射される第1光は車両用灯具100のメイン配光として使用しているため、導光部材16内を導光してきた光が当たりやすくして、効率良く正面に向けて第1光を反射するためである。また、第2反射部15b側に第2光を反射するステップとして、導光部材16の側面が凸形状となる凸ステップを用いている。これは、下方に照射される第2光は加飾用の配光として使用しているため、導光部材16内を導光してきた光が当たりにくい凸ステップを用いることで、メイン配光である第1光への影響を最小限にするためである。第2光を反射するための凸ステップの形状としては、ステップの高さを小さくすることや、光のムラが生じない範囲でステップ間の距離を広げてステップ数を減らすことなど、あまり光量を使わないよう調整することが好ましい。また、図1(a)(b)では透光部18aに対応する位置に、第2光を反射する凸ステップを離散的に形成した例を示しているが、導光部材16の全域にわたって一本の凸ステップを形成するとしてもよい。
【0031】
シェード17,18は、それぞれ導光部材16の上方および下方に配置され、光を遮る遮光性材料で構成された部材である。シェード17,18を構成する材料は限定されず、色調も限定されないが、リフレクター15と色調を同じにすることが好ましく、迷光を防止するために両者を黒色とすることがより好ましい。図1(b)に示したように、シェード18の先端をシェード保持部15cに挿入する場合には、シェード18の先端は先端に向かって薄くなるテーパ形状とすることが好ましい。先端をテーパ形状とすることで、凹部であるシェード保持部15cにシェード18を挿入しやすくなり、組み立て工程の作業性を向上させることができる。
【0032】
シェード17はリフレクター15の第1反射部15aよりも上方において、導光部材16の延伸方向に沿って全域にわたって設けられており、前方部分はインナーレンズ19の上面を覆っている。シェード18はリフレクター15の第1反射部15aと第2反射部15bの境界に配置され、導光部材16の延伸方向に沿って全域にわたって設けられており、前方部分はインナーレンズ19の下面を覆っている。導光部材16から照射された光の一部はシェード17,18に到達して遮られるため、車両用灯具10において光を照射する方向が制限される。
【0033】
図1図2では、樹脂の二色成形技術を用いて、シェード17,18とインナーレンズ19を一体に形成した例を示している。二色成形技術を用いることで、シェード17,18の成形精度が向上するとともに、インナーレンズ19との相対的な位置合わせが不要になり、製造工程を簡略化することができる。また、シェード17,18とインナーレンズ19を一体に形成していることで、リフレクター15のシェード保持部15cにシェード18の先端を挿入するだけで、インナーレンズ19のリフレクター15に対する相対的な位置合わせを行うことができ、さらに製造工程の簡略化を図ることができる。ここでは二色成形技術でシェード17,18とインナーレンズ19を一体に形成した例を示したが、シェード17,18とインナーレンズ19を別体に形成して、接着剤等で固定するとしてもよい。
【0034】
透光部18aは、シェード18の一部に形成された光を透過する部分である。図1図2に示した例では、透光部18aとしてシェード18の一部を切り欠いた開口部を用いているが、透明の樹脂等を用いて透光部18aを構成するとしてもよい。図2に示した例では、透光部18aは導光部材16の長手方向に沿って台形状の開口が複数形成されている。しかし、透光部18aの形状や個数は限定されず、リフレクター15の第2反射部15bで表現したい発光形状に応じて設計することができる。一例としては、シェード18の先端を全幅にわたってリフレクター15から離間させて透光部18aを幅方向全域に経緯するとしてもよく、リフレクター15とシェード18の先端を接触させて、リフレクター15から離れたインナーレンズ19に近い位置に透光部18aを形成するとしてもよい。
【0035】
導光部材16から照射された光の一部は透光部18aを透過してリフレクター15の第2反射部15bに到達し、第2反射部15bで反射された光がアウターレンズ13を介して外部に照射される。シェード18の一部に透光部18aを設けることで、第2反射部15bに到達する光の形状を透光部18aに対応した形状とすることができ、簡便な構造でアウターレンズ13側から視認される発光形状を整えて、車両用灯具10で表現できる発光形状の意匠性を高めることができる。
【0036】
本実施形態の車両用灯具10では、リフレクター15に光吸収性材料を含有させているため、第2反射部15bで反射された光は、インナーレンズ19を介して直接照射された光と比較すると輝度が低くなる。これにより、直接照射光と間接照射光のような濃淡のある発光を一つの車両用灯具10で同時に表現でき、発光形状の意匠性を高めることができる。また上述したように、第2反射部15bの表面に光散乱部を形成した場合には、第2反射部15bで反射される光の輪郭をぼやけさせて、さらに柔らかい印象の光を照射することができる。また、光散乱部が形成されていることで、第2反射部15bで反射された光の視野角が拡がり、車両の斜め側方からの視認性や意匠性を向上させることができる。
【0037】
インナーレンズ19は、少なくとも光の一部を透過する材料で構成された部材であり、導光部材16の前方においてアウターレンズ13との間に配置されている。インナーレンズ19の形状は限定されず、曲面を有するレンズ形状を用いて配光分布を調整するとしてもよい。図1図2に示した例では、インナーレンズ19の後方にはシェード17,18が一体に成形されており、シェード17,18を介して灯室内に固定されている。
【0038】
発光素子20は、導光部材16の端面に対向して配置された光学素子であり、図示を省略する電源や駆動回路と電気的に接続され、電力が供給されることで発光する。発光素子20の構成は限定されず、発光ダイオード素子、有機EL素子、半導体レーザ素子等の従来公知のものを用いることができる。
【0039】
上述したように、本実施形態の車両用灯具10では、発光素子20が発光した光を導光部材16の端面に入射させ、導光部材16内で光を導波させる。導光部材16内を導波した光の一部(第1光)は、凹凸ステップで反射されてインナーレンズ19およびアウターレンズ13を介して車両用灯具10の外部に直接照射される。また導光部材16内を導波した光の一部(第2光)は、凹凸ステップで反射されて透光部18aを介して第2反射部15bに到達して反射され、アウターレンズ13を介して車両用灯具10の外部に間接的に照射される。導光部材16から照射された光のうち、シェード17,18に到達した光は遮られ、第2反射部15bから外部に照射される光は、透光部18aの形状に対応した発光形状となる。
【0040】
図3は、本実施形態に係る車両用灯具10の外観を示す写真であり、図3(a)は非点灯時の正面からを示し、図3(b)は点灯時の正面からを示し、図3(c)は非点灯時の30度斜めからを示し、図3(d)は点灯時の30度斜めからを示している。非点灯状態では周囲の照明を点灯して日中の車両周囲環境を再現し、点灯状態では周囲の照明を消灯して夜間の車両周囲環境を再現している。図3に示した例では、ハウジング11、リフレクター15およびシェード17,18は黒色樹脂で形成し、第2反射部15bには二次元的に微小な突起を形成してシボ加工を施している。
【0041】
図3(a)(c)に示したように、非点灯状態では車両用灯具10の内部構造は視認できず、インナーレンズ19の前面部分が視認できる程度である。また、リフレクター15の第2反射部15bやシェード18はブラックアウトしており、存在を感じさせない。また、第2反射部15bを介してシェード18の透光部18aや導光部材16を視認することもできない。これは正面からにおいても斜め前方からにおいても同様である。
【0042】
また、図3(b)(d)に示したように、点灯状態ではインナーレンズ19を介した導光部材16からの直接的な光照射と、第2反射部15bを介した間接的な光照射を視認することができる。また、第2反射部15bを介しての光照射は、インナーレンズ19を介しての光照射よりもコントラストが低く、ぼんやりとした柔らかい印象(ブラー状)の光照射となっている。また、第2反射部15bの発光形状は、シェード18に形成された透光部18aの形状を反映したものとなっている。また、正面からにおいても斜め前方からにおいても、第2反射部15bでの発光形状を同様に視認できている。したがって、導光部材16とリフレクター15を用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能であることがわかる。
【0043】
上述したように本実施形態の車両用灯具10では、光吸収性材料を含有するリフレクター15を用いて、導光部材16の側面から照射された光を反射するため、外部から車両用灯具10の内部構造を視認することが困難になる。これにより、導光部材16とリフレクター15を用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能となる。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4図5を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。図4は、本実施形態に係る車両用灯具10の構成を示す模式断面図であり、図4(a)は透光部18aが形成された位置での断面図であり、図4(b)は透光部18aが形成されていない位置での断面図である。本実施形態では、導光部材16には3本の凹凸ステップが形成されており、側面から3方向に第1光、第2光、第3光が照射される点が第1実施形態と異なっている。図4では、ハウジング11、バックパネル12、アウターレンズ13、スペーサ14および発光素子20については図示を省略している。
【0045】
図4に示すように、車両用灯具10は、リフレクター25と、導光部材16と、シェード18と、導光板部30とを備えている。図4において、導光部材16の内部から外部に向かって描かれた矢印は、導光部材16内を導波されて散乱された光の経路を模式的に示している。また、導光板部30は、第2導光板31と第1導光板32が一体に形成されている。ここでは導光板部30として、第2導光板31と第1導光板32が一体に形成された例を示しているが、別体として分離して形成されているとしてもよい。
【0046】
リフレクター25は、ハウジング11内部において導光部材16の後方に配置され、導光部材16から照射された光の少なくとも一部を反射面で反射する光学部材である。リフレクター25を構成する材料は限定されないが、少なくとも反射面に光吸収性材料を含有しており、可視光の少なくとも一部を吸収するよう設計されている。また、リフレクター25は、第1反射部25aと第2反射部25bを備え、第1反射部25aと第2反射部25bの境界位置に、シェード18が突出して一体に形成されている。
【0047】
シェード18は、リフレクター25と一体に形成された突出部であり、光を遮る遮光性材料で構成されている。また、シェード18には、光を透過する透光部18aが部分的に形成されている。図4(a)(b)に示すように、透光部18aが形成された領域では、破線矢印で示したように導光部材16から照射された光(第2光)は第2反射部25bに到達して反射される。透光部18aが形成されていない領域では、導光部材16から照射された光はシェード18で遮られて第2反射部25bに到達しない。
【0048】
導光板部30は、第2導光板31と第1導光板32で構成され、一方の端部から光が入射されて内部で光を導波し、他方の端部から光を外部に照射する光学部材である。図4に示した例では、導光部材16に対向した端部で、第2導光板31と第1導光板32が連結されて、2枚の板が略V字形状に形成されている。第2導光板31と第1導光板32は、それぞれ光を透過する材料で構成された板状の部材であり、導光部材16から照射された光が一方の端面から入射され、他方の端面31a,32aから光を前方に照射する。
【0049】
第2導光板31は、導光部材16の前方に略水平に配置されており、実線矢印で示したように導光部材16から照射された光の一部(第1光)が後端面から入射されて、前方の端面31aからアウターレンズ13を介して直接的に光を外部に照射する。ここでは第2導光板31を水平に配置する例を示したが、光を出射する端面31aから外部に向けて光が直接取り出されるものであれば、形状や配置は限定されない。
【0050】
第1導光板32は、導光部材16の前方に傾斜して配置されており、リフレクター25の第2反射部25bの前方を第1導光板32の平板部分32bが横断している。第1導光板32は、実線矢印で示したように導光部材16から照射された光の一部(第3光)が後端面から入射されて、前方の端面32aからアウターレンズ13を介して直接的に光を外部に照射する。また、第1導光板32は、透光性の材料で構成されているため、第2反射部25bで反射された光(第2光)は、平板部分32bを裏面側から表面側に透過してアウターレンズ13から外部に照射される。
【0051】
図5は、本実施形態に係る車両用灯具10の外観を示す写真であり、図5(a)は非点灯時の正面からを示し、図5(b)は点灯時の正面からを示し、図5(c)は非点灯時の30度斜めからを示し、図5(d)は点灯時の30度斜めからを示している。非点灯状態では周囲の照明を点灯して日中の車両周囲環境を再現し、点灯状態では周囲の照明を消灯して夜間の車両周囲環境を再現している。図5に示した例では、ハウジング11、リフレクター25およびシェード18は黒色樹脂で形成し、第2反射部25bには二次元的に微小な突起を形成してシボ加工を施している。
【0052】
図5(a)(c)に示したように、非点灯状態では車両用灯具10の内部構造は視認できず、第2導光板31と第1導光板32の前端である端面31a,32a部分が視認できる程度である。また、リフレクター25の第2反射部25bやシェード18はブラックアウトしており、存在を感じさせない。また、第2反射部25bを介してシェード18の透光部18aや導光部材16を視認することもできない。これは正面からにおいても斜め前方からにおいても同様である。
【0053】
また、図5(b)(d)に示したように、点灯状態では第2導光板31と第1導光板32の端面31a,32aからの直接的な光照射と、第2反射部15bを介した間接的な光照射を視認することができる。また、第2反射部15bと平板部分32bを介しての光照射は、端面31a,32aからの光照射よりもコントラストが低く、ぼんやりとした柔らかい印象(ブラー状)の光照射となっている。また、第2反射部25bの発光形状は、シェード18に形成された透光部18aの形状を反映したものとなっている。また、正面からにおいても斜め前方からにおいても、第2反射部25bでの発光形状を同様に視認できている。したがって、導光部材16とリフレクター25を用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能であることがわかる。
【0054】
上述したように本実施形態の車両用灯具10でも、光吸収性材料を含有するリフレクター25を用いて、導光部材16の側面から照射された光を反射するため、外部から車両用灯具10の内部構造を視認することが困難になる。これにより、導光部材16とリフレクター25を用いて意匠性の高い光照射パターンを実現しながらも、非点灯時において内部構造を隠蔽することが可能となる。
【0055】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10…車両用灯具
11…ハウジング
12…バックパネル
13…アウターレンズ
14…スペーサ
15,25…リフレクター
15a,25a…第1反射部
15b,25b…第2反射部
15c…シェード保持部
16…導光部材
17,18…シェード
18a…透光部
19…インナーレンズ
20…発光素子
30…導光板部
31…第2導光板
31a…端面
32…第1導光板
32a…端面
32b…平板部分

図1
図2
図3
図4
図5