(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 1/18 20220101AFI20250107BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20250107BHJP
F24H 15/104 20220101ALI20250107BHJP
F24H 15/136 20220101ALI20250107BHJP
F24H 15/212 20220101ALI20250107BHJP
F24H 15/258 20220101ALI20250107BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20250107BHJP
F24H 15/34 20220101ALI20250107BHJP
【FI】
F24H1/18 G
F24H4/02 F
F24H15/104
F24H15/136
F24H15/212
F24H15/258
F24H15/269
F24H15/34
(21)【出願番号】P 2021181641
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2024-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富澤 祥伍
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
(72)【発明者】
【氏名】赤木 伸行
(72)【発明者】
【氏名】姫野 竜佑
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-281665(JP,A)
【文献】特開2014-013103(JP,A)
【文献】特開2010-243093(JP,A)
【文献】特開2013-238374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H1/00-15/493
F04C2/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯タンクと、
冷媒を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱された前記冷媒と前記貯湯タンク内の湯水との熱交換を行う熱交換器と、
前記貯湯タンクの下部から前記熱交換器に向かう往き管、及び、前記熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管、を備えた湯水循環回路と、
前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させる循環ポンプと、
前記循環ポンプを駆動するポンプ駆動手段と、
前記加熱手段及び前記ポンプ駆動手段を制御し、当該加熱手段による加熱を行いつつ前記循環ポンプを所定の通常回転数で駆動することにより、前記往き管を介して前記熱交換器に導入され前記冷媒との熱交換により加熱された前記湯水を、前記戻り管を介して前記貯湯タンクに供給する沸上運転を実行する制御手段と、
を有する貯湯式給湯装置において、
前記沸上運転の開始時において、前記湯水循環回路内の前記湯水の循環不全により起こり得る所定のエラー事象の発生を検知するエラー検知手段と、
前記沸上運転の開始時において、前記湯水のキャビテーションが生じ得る所定状態となっているか否かを判定する状態判定手段と、
を有し、
前記制御手段は、
前記エラー検知手段により前記所定のエラー事象の発生が検知され、かつ、前記状態判定手段により前記所定状態になっていると判定された場合に、前記循環ポンプを前記通常回転数よりも高い増大回転数で駆動しつつ前記沸上運転を実行する
ことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記沸上運転の開始時に前記エラー検知手段により前記所定のエラー事象が検知された場合には、当該沸上運転を終了した後に当該沸上運転を再開するリトライ処理と、
前記リトライ処理の実行回数が予め定めた閾値に到達したことによって、前記所定のエラー事象の発生を確定するエラー確定処理と、
を実行し、
かつ、
前記エラー検知手段により前記所定のエラー事象の発生が検知されたが前記エラー確定処理による前記所定のエラー事象の確定はなされておらず、かつ、前記状態判定手段により前記所定状態になっていると判定された場合に、前記循環ポンプを前記増大回転数で駆動しつつ前記沸上運転を実行する
ことを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記制御手段は、さらに、
前記所定のエラー事象の検知により前記沸上運転が終了した後、前記リトライ処理により前記沸上運転を再開する前に所定の待機時間を設ける待機処理を実行する
ことを特徴とする請求項2記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記所定状態は、
実時刻が朝の特定時間帯であることを含む
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、貯湯タンクに給湯する貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種の貯湯式給湯装置においては、特許文献1記載のように、貯湯タンクに接続される給水管及び給湯管内の湯水を排水して凍結防止を図るための、不凍水栓を設けるものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のものでは、例えば夜間に凍結防止のために不凍水栓が使用された状態のまま、朝方に自動沸上運転が行われる場合、水抜きにより貯湯タンク内に給水圧がかからないため、湯水の温度が高い場合は水中に空気を溶解しにくくなってしまいキャビテーションが生じる恐れがあった。キャビテーションが発生すると、貯湯タンクへの湯水循環回路に設けた循環ポンプに湯水を引き込みにくくなり、沸上運転が困難となるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、湯水を貯湯する貯湯タンクと、冷媒を加熱する加熱手段と、前記加熱手段により加熱された前記冷媒と前記貯湯タンク内の湯水との熱交換を行う熱交換器と、前記貯湯タンクの下部から前記熱交換器に向かう往き管、及び、前記熱交換器から前記貯湯タンクの上部に戻る戻り管、を備えた湯水循環回路と、前記湯水循環回路内に前記湯水を循環させる循環ポンプと、前記循環ポンプを駆動するポンプ駆動手段と、前記加熱手段及び前記ポンプ駆動手段を制御し、当該加熱手段による加熱を行いつつ前記循環ポンプを所定の通常回転数で駆動することにより、前記往き管を介して前記熱交換器に導入され前記冷媒との熱交換により加熱された前記湯水を、前記戻り管を介して前記貯湯タンクに供給する沸上運転を実行する制御手段と、を有する貯湯式給湯装置において、前記沸上運転の開始時において、前記湯水循環回路内の前記湯水の循環不全により起こり得る所定のエラー事象の発生を検知するエラー検知手段と、前記沸上運転の開始時において、前記湯水のキャビテーションが生じ得る所定状態となっているか否かを判定する状態判定手段と、を有し、前記制御手段は、前記エラー検知手段により前記所定のエラー事象の発生が検知され、かつ、前記状態判定手段により前記所定状態になっていると判定された場合に、前記循環ポンプを前記通常回転数よりも高い増大回転数で駆動しつつ前記沸上運転を実行するものである。
【0006】
また、請求項2では、前記制御手段は、前記沸上運転の開始時に前記エラー検知手段により前記所定のエラー事象が検知された場合には、当該沸上運転を終了した後に当該沸上運転を再開するリトライ処理と、前記リトライ処理の実行回数が予め定めた閾値に到達したことによって、前記所定のエラー事象の発生を確定するエラー確定処理と、を実行し、かつ、前記エラー検知手段により前記所定のエラー事象の発生が検知されたが前記エラー確定処理による前記所定のエラー事象の確定はなされておらず、かつ、前記状態判定手段により前記所定状態になっていると判定された場合に、前記循環ポンプを前記増大回転数で駆動しつつ前記沸上運転を実行するものである。
【0007】
また、請求項3では、前記制御手段は、さらに、前記所定のエラー事象の検知により前記沸上運転が終了した後、前記リトライ処理により前記沸上運転を再開する前に所定の待機時間を設ける待機処理を実行するものである。
【0008】
また、請求項4では、前記所定状態は、実時刻が朝の特定時間帯であることを含むものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の請求項1によれば、前述のような不凍水栓使用に由来する沸上運転開始後のキャビテーション発生に対応するために、エラー検知手段と状態判定手段とが設けられる。エラー検知手段は、前記沸上運転の開始時において、前記湯水循環回路内での湯水の循環不全により起こり得る所定のエラー事象が発生していることを検知する。所定のエラー事象の一例としては、例えばヒートポンプ型の加熱手段に備えられている圧縮機を駆動するモータに異常な過電流が流れている状態や、湯水循環回路のうち熱交換器の下流側で検出される沸上温度が異常に高温となっている状態や、循環ポンプが回転数指令値よりも異常に高い回転数で回転している空焚き状態、等が想定可能である。一方、状態判定手段は、沸上運転の開始時において、その時点で湯水のキャビテーションが生じ得る所定状態になっているか否かを、判定する。所定状態の一例としては、例えば外気温度が所定値以下で、かつ、所定の時間条件が満足されており、かつ、貯湯タンク内又は湯水循環回路内の湯水の温度が所定値以上となっている場合、等である。上記の所定のエラー事象の発生が検知され、かつ、状態判定手段による判定結果が、前記所定状態になっていると判定された場合には、前述の所定のエラー事象の発生は、前記した不凍水栓使用に由来するキャビテーションの発生が理由であると推定される。これにより、制御手段は、前記ポンプ駆動手段による前記循環ポンプの回転数を、通常の沸上運転時における通常回転数よりも高い増大回転数とする。キャビテーションによって循環ポンプへ湯水が引き込みにくくなっている場合であっても、この回転数の増大によって循環ポンプへの湯水の引き込み作用を強化することができるので、沸上運転を確実に実行することができる。
【0010】
また、請求項2によれば、所定のエラー事象の発生が検知された場合に、沸上運転終了→その後沸上運転再開、というリトライ処理の実行を所定の閾値まで繰り返す。所定のエラー事象の発生検知後すぐに循環ポンプの回転数を増大させ、沸上運転の終了・再開を繰り返し試行することにより、循環ポンプへの湯水の引き込みを確実なものとすることができ、沸上運転をより確実に実行することができる。このようにして、沸上運転の実行のために万全を期すことができる。
【0011】
また、請求項3によれば、リトライ処理時に、沸上運転終了→所定時間待機→沸上運転再開という流れとして、沸上運転を終了して再開するまでの間に所定の待機時間を設けることにより、キャビテーションの影響を低減し、リトライ処理による沸上運転の成功率を高めることができる。
【0012】
また、請求項4によれば、例えば、夜間に凍結防止のために不凍水栓が使用された場合に、その状態のまま朝方に沸上運転が行われる場合、不凍水栓の使用による水抜き状態により貯湯タンク内に給水圧がかからないため、キャビテーションが生じる恐れが高まる。このため、湯水のキャビテーションが生じ得る所定の状態の判定条件に、沸上運転の開始時が朝の特定時間帯であることを含めることにより、不凍水栓が使用された状態でユーザが朝に湯水を使用する場合に対応して、その使用に備えた沸上運転を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の貯湯式給湯装置の全体概略構成図
【
図2】加熱制御装置の機能的構成を表す機能ブロック図
【
図3】ヒートポンプユニットと貯湯タンクの設置高さを表す側面図
【
図4】加熱制御装置が実行する制御手順を表すフローチャート図
【
図5】沸上運転時の貯湯式給湯装置の全体概略構成図
【
図6】エラーが確定するまでのリトライエラーの回数を表す説明図
【
図7】エア抜き運転、凍結防止運転時の貯湯式給湯装置の全体概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
【0015】
<概略回路構成>
図1に示すように、本実施形態に係わる貯湯式給湯装置100は、湯水を貯湯する貯湯タンク2を有したタンクユニット1と、ヒートポンプユニット3と、を有している。
【0016】
前記ヒートポンプユニット3は、前記貯湯タンク2内の湯水を加熱するために水冷媒熱交換器15(熱交換器に相当)と、加熱循環ポンプ19(循環ポンプに相当)と、を備えている。水冷媒熱交換器15は、冷媒を流通させる冷媒側の流路15bと水側の流路15aとを有し、高温高圧の冷媒と貯湯タンク2内の湯水とを熱交換する。すなわち、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aと前記貯湯タンク2とが、貯湯タンク2の下部から水冷媒熱交換器15に向かう加熱往き管5(往き管に相当)、及び、水冷媒熱交換器15から貯湯タンク2の上部に戻る加熱戻り管6(戻り管に相当)によって環状に接続され、前記タンクユニット1と前記ヒートポンプユニット3とにわたる湯水循環回路としての加熱循環回路4が形成されている。
【0017】
加熱往き管5は、前記貯湯タンク2の下部に接続され、加熱戻り管6は、前記貯湯タンク2の上部に接続されている。前記加熱循環ポンプ19は、前記加熱往き管5の途中に設けられ、前記水側の流路15aを介し前記加熱往き管5からの湯水を前記加熱戻り管6へ流通させつつ、加熱循環回路4内に貯湯タンク2の湯水を循環させる。前記加熱循環ポンプ19は、駆動モータ19m(ポンプ駆動手段に相当)により駆動される。なお、前記加熱往き管5には、前記水冷媒熱交換器15の前記水側の流路15aに流入する湯水の入水温度T1を検出する入水温度センサ23が設けられ、前記加熱戻り管6には、前記水側の流路15aから前記貯湯タンク2に向かって流出する湯水の沸上温度Tbを検出する沸上温度センサ24(エラー検知手段に相当)が設けられている。
【0018】
前記タンクユニット1において、貯湯タンク2の側面には、貯湯タンク2内の湯水の温度Twを検出する貯湯温度センサ12が上下にわたり複数設けられている。前記貯湯タンク2の下部にはまた、貯湯タンク2に水を給水する給水管7が接続され、前記貯湯タンク2の上部にはまた、貯湯されている高温水を出湯する出湯管8が接続されている。出湯管8には、貯湯タンク2内が負圧になった場合に開弁して貯湯タンク2内に空気を導入する負圧吸気弁119が設けられ、給水管7からは給水バイパス管9が分岐して設けられている。なお、負圧吸気弁119は、貯湯タンク2内の圧力が所定の設定圧力(例えば450kPa)まで上昇した際に作動して貯湯タンク2の上部に溜まったエアを排出する過圧逃し弁119としても機能する。
【0019】
さらに、出湯管8からの湯と給水バイパス管9からの水とを混合して給湯設定温度の湯とする混合弁10と、混合弁10で混合された湯を給湯端末125に給湯するための給湯管108aと、給湯管108a内の給湯温度を検出する給湯温度センサ11と、が設けられている。給水管7の途中には、市水を一定の給水圧(例えば設定圧力値380kPa)に減圧すると共に貯湯タンク2内の湯水を上流側へ逆流させない機能を備えた逆止弁117が設けられている。
【0020】
なお、前記タンクユニット1外における給湯管108aの給湯端末125側には給湯管108bが設けられており、これら給湯管108a,108bの間には混合弁10で混合された湯を加熱可能なガス熱源機130が設けられている。また、前記タンクユニット1外における逆止弁117の一次側配管121、及び、給湯管108bから分岐した分岐配管123、における凍結深度以下の地中には、給水を止水すると共に一次側配管121及び給湯管108bの水抜きを行うための不凍水栓120が埋設されている。不凍水栓120は、操作ハンドル120aと、排水口120bと、排湯口120cと、を備えている。
【0021】
前記ヒートポンプユニット3はまた、冷媒を圧縮する圧縮機14と、四方弁31と、前記水冷媒熱交換器15を通過した後の冷媒を減圧させる減圧器としての電子膨張弁16と、熱源としての空気と冷媒との熱交換を行う熱源側熱交換器としての空気熱交換器17と、空気熱交換器17に外気を送り込む室外ファン67と、を備えている。そして、前記圧縮機14と、前記四方弁31と、前記圧縮機14から吐出された冷媒が流通する前記水冷媒熱交換器15の前記冷媒側の流路15bと、前記電子膨張弁16と、前記空気熱交換器17とが冷媒配管18で環状に接続されることにより冷媒循環回路30が形成されている。
【0022】
前記四方弁31は4つのポートを備える弁であり、前記冷媒配管18のうち(冷媒主経路を構成する)配管部18b,18d用の2つのポートのそれぞれに対して、残りの配管部18a,18c用の2つのポートの何れを接続するかを切り替える。前記配管部18a,18c用の2つのポートどうしは、ループ状に配置された前記配管部18a,18cからなる冷媒副経路によって接続されており、この冷媒副経路上に前記圧縮機14が設けられている。前記圧縮機14は、駆動モータ14mにより駆動される。
【0023】
例えば四方弁31は、
図1の状態に切り替えられた場合は、前記圧縮機14の吐出側である前記配管部18aを前記水冷媒熱交換器15の入口側である前記配管部18bに連通させることで空気熱交換器17を電子膨張弁16からの低温低圧の冷媒を蒸発させる蒸発器として機能させ、水冷媒熱交換器15において冷媒配管18内の冷媒から放熱して熱を放出し加熱循環回路4内に温水を生成する。生成された温水は、加熱循環ポンプ19が誘起する加熱循環回路4内の温水の流れによって加熱戻り管6を介し貯湯タンク2内に供給され、これによって貯湯タンク2内の湯水の温度を上昇させることができる(=沸上運転)。また四方弁31が別の状態へ切り替えられた場合は、前記配管部18aを前記空気熱交換器17側である前記配管部18dに連通させ、空気熱交換器17を凝縮器として機能させ、空気熱交換器17に生成される霜を溶かすことができる(=除霜運転)。
なお、冷媒循環回路30及びこれに接続された圧縮機14、四方弁31、空気熱交換器17、電子膨張弁16が、加熱手段に相当している。
【0024】
冷媒循環回路30内には、冷媒として例えばR32冷媒が循環され、ヒートポンプサイクルを構成している。前記圧縮機14と前記水冷媒熱交換器15の冷媒側の流路15bとの間の冷媒配管18には、圧縮機14から吐出される冷媒の冷媒吐出温度Toutを検出する吐出温度センサ20が設けられ、前記空気熱交換器17の空気入口側には、外気温度Tairを検出する外気温度センサ22が設けられている。
【0025】
そして、前記タンクユニット1には、前記した各センサ11,12の検出結果が入力される貯湯制御装置40が設けられている。同様に、前記ヒートポンプユニット3には、前記した各センサ20,22,23,24の検出結果が入力される加熱制御装置50(制御手段に相当)が設けられている。加熱制御装置50及び貯湯制御装置40は、互いに通信可能に接続されており、前記各センサ11,12,20,22,23,24の検出結果等に基づき、相互に連携しつつ、前記タンクユニット1及び前記ヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御する。
【0026】
例えば加熱制御装置50は、前記加熱循環ポンプ19の駆動モータ19m、前記圧縮機14、四方弁31、室外ファン67、電子膨張弁16等を制御し、前記ヒートポンプユニット3による加熱を行いつつ加熱循環ポンプ19を所定の通常回転数(例えば3000rpm)で駆動することにより、前記加熱往き管5を介して水冷媒熱交換器15に導入され冷媒との熱交換により加熱された湯水を、前記加熱戻り管6を介して貯湯タンク2に供給する沸上運転を実行する。
【0027】
なお、加熱制御装置50と貯湯制御装置40との間に制御上の主従関係があり、例えばセンサ11,12の検出結果に基づく運転指令を貯湯制御装置40が加熱制御装置50へ出力し、加熱制御装置50はこの運転指令と各センサ20,22,23,24の検出結果とに基づきヒートポンプユニット3内の各機器の動作を制御するようにしてもよい。以下、本明細書においては、このような場合を例にとって説明する。
【0028】
<加熱制御装置>
次に、前記ヒートポンプユニット3に備えられた前記加熱制御装置50について説明する。加熱制御装置50は、詳細な図示を省略するが、各種のデータやプログラムを記憶する記憶部と、演算・制御処理を行う制御部とを備えている。この加熱制御装置50の機能的構成を
図2により説明する。
【0029】
図2に示すように、前記加熱制御装置50は、四方弁制御部410Aと、圧縮機制御部410Bと、膨張弁制御部410Cと、室外ファン制御部410Dと、ポンプ制御部410Fと、エラー判定部410Gと、状態判定部410Hと、を機能的に備えている。
【0030】
本実施形態のヒートポンプユニット3は、貯湯制御装置40から出力される運転指令に基づき各種制御を行う。すなわち、四方弁制御部410Aには、前記貯湯制御装置40により出力された運転指令が入力される。四方弁制御部410Aは、前記運転指令に応じて、実際にヒートポンプユニット3を、空気熱交換器17を蒸発器として機能させるか又は凝縮器として機能させるか、を決定する。四方弁制御部410Aは、前記運転指令が表す運転態様に対応する開閉信号を四方弁31へ出力し、四方弁31を切り替える。
【0031】
また、四方弁制御部410Aは、その決定結果に対応する運転情報を、前記圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410C、室外ファン制御部410D、及び、ポンプ制御部410Fに出力する。なおこの運転情報には、前記貯湯温度センサ12により検出された貯湯タンク2内の湯水の温度Tw、及び、適宜に決定された目標沸上温度Tbo、等が含まれる。
【0032】
圧縮機制御部410Bには、この例では、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される(直接入力される場合のほか、間接的に入力するようにしてもよい。以下同様)。圧縮機制御部410Bは、この例では、入力された前記外気温度Tair及び前記沸上温度Tbに基づき、前記圧縮機14の目標回転数を設定し、この目標回転数となるように圧縮機14の駆動モータ14mの回転数を増減制御する。また、圧縮機制御部410Bは、電流検出部410Ba(エラー検知手段に相当)を備える。電流検出部410Baは、駆動モータ14mの電流値を検出する。電流検出部410Baは、例えば駆動モータ14mへの給電回路途中に設けたシャント抵抗等により構成される。
【0033】
膨張弁制御部410Cには、前記吐出温度センサ20により検出された前記冷媒吐出温度Toutと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。この例では、膨張弁制御部410Cは、前記冷媒吐出温度Toutが制御上の所望の目標温度となるように、電子膨張弁16の開度を増減制御する。
【0034】
室外ファン制御部410Dには、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。この例では、室外ファン制御部410Dは、入力された前記運転情報及び前記外気温度Tairに基づき、前記室外ファン67の目標回転数を設定し、室外ファン67の回転数がその目標回転数となるように増減制御する。
【0035】
ポンプ制御部410Fには、前記沸上温度センサ24により検出された前記沸上温度Tbと、前記外気温度センサ22により検出された前記外気温度Tairと、前記入水温度センサ23により検出された前記入水温度T1と、前記貯湯制御装置40の運転指令に対応した前記運転情報と、が入力される。ポンプ制御部410Fは、これらに基づき、前記加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mの目標回転数を設定し、この目標回転数となるように駆動モータ19mの回転数を増減制御する。またポンプ制御部410Fは、目標回転数設定部410Faと、駆動信号出力部410Fbと、頻度設定部410Fcと、回転数検出部410Fd(エラー検知手段に相当)と、を備える。回転数検出部410Fdは、加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mの実際の回転数である実回転数を検出する。目標回転数設定部410Fa、駆動信号出力部410Fb、頻度設定部410Fcの詳細については後述する。
【0036】
エラー判定部410G(エラー確定手段に相当)は、前記加熱循環回路4内での湯水の循環不全により起こり得る所定のエラー事象(本明細書では適宜「リトライエラー」ともいう)や、各種モータや各種センサそのものの故障により起こり得るその他のエラー事象が発生しているか否かを判定する。状態判定部410H(状態判定手段に相当)は、前記加熱循環回路4内の湯水のキャビテーションにより加熱循環ポンプ19にエア噛みが生じ得る所定状態となっているか否かを判定する。これらの詳細については後述する。エラー判定部410G及び状態判定部410Hによる判定結果に対応する判定情報は、前記四方弁制御部410A、圧縮機制御部410B、膨張弁制御部410C、室外ファン制御部410D、及び、ポンプ制御部410Fに出力される。
【0037】
<実施形態の背景及び特徴>
前記したように、本実施形態では、不凍水栓120が設けられることにより、貯湯タンク2の一次側に接続される一次側配管121及び給湯管108b内の湯水を排水して凍結防止を図ることができる。このような構成において、例えば、夜間に凍結防止のために不凍水栓120が使用された状態のまま朝方に沸上運転が行われる場合、不凍水栓120の使用による一次側配管121の水抜き状態により貯湯タンク2内に給水圧がかからないため、湯水の温度が高い場合に水中に空気を溶解しにくくなってしまいキャビテーションが生じる恐れがある。特に、加熱循環ポンプ19を駆動させた際に加熱往き管5が負圧になるため、キャビテーションが発生しやすい。もし湯水中にキャビテーションが発生すると、加熱循環ポンプ19内にエアが溜まり、貯湯タンク2への加熱循環回路4に設けた加熱循環ポンプ19に湯水を引き込むことができず(=いわゆるエア噛みの発生)、沸上運転が困難となるおそれがある。
【0038】
特に、次のような場合にはエア噛みが発生し易くなる。例えば、貯湯式給湯装置100が寒冷地で使用される場合、
図3に示すように、前記ヒートポンプユニット3が雪に埋まらないように架台60上に設置され、設置高さがH(例えば1m程度)だけかさ増しされる場合がある。また、ヒートポンプユニット3のユニットタイプによっては、前記加熱循環ポンプ19がヒートポンプユニット3の上部に配置される場合がある。このような場合、前記貯湯タンク2の水頭圧が加熱循環ポンプ19に作用し難くなるため、不凍水栓120の使用により貯湯タンク2内に給水圧がかからない場合には、加熱循環ポンプ19にキャビテーションによるエア噛みがより一層発生し易くなる。
【0039】
さらに、キャビテーションによるエア噛みが発生すると、前記加熱循環ポンプ19に湯水を引き込めずに自動的にエラーとなって加熱循環ポンプ19が停止される結果、外気温が低い場合に加熱循環回路4に凍結が発生し器具が破損するおそれがある。
【0040】
本実施形態の主な特徴は、上記に対応し、沸上運転の開始時において、前記加熱循環回路4内での湯水の循環不全により起こり得る前記リトライエラーが発生していることが検知され、且つ、エア噛みが生じ得る所定状態となっていると判定された場合には、前記加熱循環ポンプ19を通常回転数よりも高い増大回転数で駆動しつつ沸上運転を実行することにある。そのために本実施形態の加熱制御装置50が実行する制御手法を、
図4のフローチャート等により説明する。
【0041】
図4に示すフローチャートは、1日(このフローが朝方に実行される日の前日)のすべての前記沸上運転が終了していることを前提に開始される。まずS5で、前記加熱制御装置50の四方弁制御部410Aにより、前記貯湯制御装置40から沸上運転指令を受信したか否かが判定される。沸上運転指令を受信するまでは判定が満たされず(S5:No)ループ待機し、沸上運転指令を受信したら判定が満たされ(S5:Yes)、S10へ移行する。
【0042】
S10では、加熱制御装置50により、リトライエラーの発生回数であるリトライカウントの値がリセットされる。
【0043】
S15では、加熱制御装置50のポンプ制御部410Fにより、加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mを通常回転数で駆動しつつ沸上運転が開始される。具体的には、ポンプ制御部410Fの目標回転数設定部410Faにより、加熱循環ポンプ19の目標回転数Nが通常回転数に設定される。通常回転数の一例としては、N=3000[rpm]に設定される。そして、駆動信号出力部410Fbにより、前記目標回転数設定部410Faにより設定された目標回転数Nの回転を実行するための駆動信号が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力される。
【0044】
一方で、四方弁制御部410Aは空気熱交換器17を蒸発器として機能させるように四方弁31を切り替え、圧縮機制御部410Bは圧縮機14の駆動モータ14mを駆動させて目標回転数となるように制御し、膨張弁制御部410Cは前記冷媒吐出温度Toutが制御上の所望の目標温度となるように電子膨張弁16の開度を制御し、室外ファン制御部410Dは室外ファン67を駆動させて目標回転数となるように制御する。
【0045】
以上により、
図5に示すように、加熱循環回路4では、水冷媒熱交換器15→加熱戻り管6→貯湯タンク2→加熱往き管5→水冷媒熱交換器15→・・の順で湯水を通過させつつ、加熱循環回路4内での湯水の循環が行われる。一方で、冷媒循環回路30では、水冷媒熱交換器15→電子膨張弁16→空気熱交換器17→圧縮機14→水冷媒熱交換器15→・・の順で冷媒を通過させつつ、冷媒循環回路30内での冷媒の循環が行われる。その結果、水冷媒熱交換器15において流路15b内の冷媒が流路15a内の湯水に熱を放出して温水を生成し、生成された温水が貯湯タンク2内に供給されることで、貯湯タンク2内の湯水の温度が上昇する。その後、S20へ移行する。
【0046】
S20では、前記エラー判定部410G及び状態判定部410Hにより、前記加熱循環回路4内の湯水の循環不全により起こり得るリトライエラーの発生を検知するための判断材料となる各種パラメータ、及び、エア噛みが生じ得る所定状態となっているか否かを判定するための判定材料となる各種パラメータの取得が行われる。リトライエラーの発生を検知するためのパラメータの例としては、例えば前記圧縮機14の駆動モータ14mに供給される駆動電流の電流値、前記沸上温度センサ24により検出される沸上温度Tb、前記加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mの実回転数等がある。駆動モータ14mの電流値は、前記圧縮機制御部410Bの電流検出部410Baにより検出される。駆動モータ19mの実回転数は、前記ポンプ制御部410Fの回転数検出部410Fdにより検出される。エア噛みが生じ得る所定状態を判定するためのパラメータの例としては、前記外気温度センサ22により検出される外気温度Tair、前記貯湯温度センサ12により検出される貯湯タンク2内の湯水の温度Tw、前記入水温度センサ23により検出される入水温度T1、沸上運転指令を受信した時刻等がある。その後、S25へ移行する。
【0047】
S25では、エラー判定部410Gにより、S20で取得された各パラメータの値に基づき、リトライエラーが発生しているか否かが判定される。リトライエラーは、種々の検知可能な異常のうち、以下(A)(B)(C)の3つの異常のうちの少なくとも1つが検知された場合に発せられる。
【0048】
(A)過電流異常
前記圧縮機制御部410Bの電流検出部410Baにより検出された圧縮機14の駆動モータ14mの電流値が異常に高くなっている場合である。例えば、電流値が所定の閾値(例えば15A)以上である場合に過電流異常が検知される。
【0049】
(B)沸上温度高温異常
前記沸上温度センサ24により検出された沸上温度Tbが比較的高温となっている場合である。例えば、沸上温度Tbが所定の閾値(例えば75℃)以上を所定時間(例えば3秒)継続した場合に沸上温度高温異常が検知される。
【0050】
(C)空焚き異常
前記ポンプ制御部410Fの回転数検出部410Fdにより検出された駆動モータ19mの実回転数が異常に高くなっている場合である。例えば特定の指示回転数に対応したデューティー比で前記加熱循環ポンプ19を駆動した場合に、水が無い(空焚きの場合)と負荷が小さいため、水がある場合と比較して駆動モータ19mの実回転数が特定の指示回転数に比べて異常に高くなる。したがって、実回転数と特定の指示回転数の差が所定の閾値(例えば1000rpm)以上である場合に空焚き異常が検知される。
【0051】
前記エラー判定部410Gにより上記(A)(B)(C)のうちの少なくとも1つの異常が検知されてリトライエラーが発生した場合(S25:Yes)は、S30へ移行する。一方、リトライエラーが発生していない場合(S25:No)は、S20へ戻る。
【0052】
S30では、加熱制御装置50により沸上運転が停止される。具体的には、ポンプ制御部410Fの駆動信号出力部410Fbにより停止信号(目標回転数0の駆動信号でもよい)が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力され、加熱循環回路4内での湯水の循環が停止される。また、圧縮機制御部410Bにより圧縮機14が停止されると共に、室外ファン制御部410Dにより室外ファン67が停止される。これにより、冷媒循環回路30内での冷媒の循環が停止される。
【0053】
S35では、状態判定部410Hにより、S20で取得された各パラメータの値に基づき、エア噛みが生じうる所定状態となっているか否かが判定される。所定状態は、以下(D)(E)(F)の3つの条件がすべて満たされる場合をいう。
【0054】
(D)外気温度条件
前記外気温度Tairが低温となっていることである。具体的には、例えばTair<―10[℃]の条件である。
【0055】
(E)湯水温度条件
前記湯水の温度Tw又は貯湯タンク2内の湯水の温度としての入水温度センサ23で検出した前記入水温度T1が比較的高温となっていることである。具体的には、例えばTw≧25[℃]、若しくは、T1≧25[℃]、の条件である。
【0056】
(F)時間条件
前記沸上運転指令を受信した時刻(実時刻)が、例えば朝の特定時間帯(例えば予測沸上開始時間~7:00)内であること等が条件である。なお、予測沸上開始時間とは、例えば貯湯制御装置40又は加熱制御装置50が過去のユーザの使用実績から学習して予測した朝の沸上開始時間等である。
【0057】
前記状態判定部410Hにより上記(D)(E)(F)の3つの条件がすべて満たされた前記所定状態であると判定された場合(S35:Yes)は、S40へ移行する。一方、前記所定状態であると判定されていない(上記(D)(E)(F)のうち少なくとも1つの条件が満たされていない)場合(S35:No)は、後述するS70へ移行する。
【0058】
S40では、エラー判定部410Gにより、所定状態でのリトライエラーの発生回数(リトライカウントの値)が所定回数に到達したか否かが判定される。所定回数は、エラーの種類ごとに閾値として予め定められている。例えば
図6(a)に示すように、過電流異常でリトライエラーが発生した場合には、所定回数は4回に設定されている。また
図6(b)に示すように、沸上温度高温異常でリトライエラーが発生した場合には、所定回数は6回に設定されている。また
図6(c)に示すように、空焚き異常でリトライエラーが発生した場合には、所定回数は4回に設定されている。リトライエラーの発生回数が所定回数に到達した場合(S40:Yes)は、S45へ移行する。一方、リトライエラーの発生回数が所定回数に到達していない場合(S40:No)は、後述するS60へ移行する。なお、前記所定状態ではない場合でもリトライエラーが発生し得るが、その場合はリトライエラーの発生回数が所定回数に到達したら、所定の操作が行われるまで運転をロックアウトして安全を確保するようにしている(後述のS70,S75,S80参照)。
【0059】
S45では、エラー判定部410Gにより、所定状態でのリトライエラーの発生が確定される。すなわち、
図6(a)に示すように、過電流異常でリトライエラーが発生した場合には、リトライエラーが4回発生した時点でエラーが確定される。また
図6(b)に示すように、沸上温度高温異常でリトライエラーが発生した場合には、リトライエラーが6回発生した時点でエラーが確定される。また
図6(c)に示すように、空焚き異常でリトライエラーが発生した場合には、リトライエラーが4回発生した時点でエラーが確定される。その後、S50へ移行する。なお、本S45が、リトライ処理の実行回数が予め定めた閾値に到達したことによって、所定のエラー事象の発生を確定するエラー確定処理に相当する。また、本S45を実行するエラー判定部410Gが、沸上運転の開始後において、湯水循環回路内の湯水の循環不全により起こり得る所定のエラー事象の発生を確定するエラー確定手段に相当する。
【0060】
S47では、加熱制御装置50により沸上運転を停止した状態で所定の待機時間Tだけ待機される。一例として、T=15[min]に設定される。なお、本S47が、沸上運転を終了した後に所定の待機時間を設ける待機処理に相当する。
【0061】
S50では、加熱制御装置50により、加熱循環回路4の湯水内の空気除去を図るエア抜き運転(空気抜き運転に相当)が実行される。エア抜き運転では、ヒートポンプユニット3による加熱を行わない状態で、加熱循環ポンプ19を所定の時間条件(第1時間条件に相当)で所定の回転数(第1回転数に相当)にて駆動して前記加熱循環回路4内に湯水を循環させることにより、当該加熱循環回路4の湯水内の空気除去を図る。
【0062】
前記所定の時間条件は、前記頻度設定部410Fcにより、一例として30分間連続又は時間制限なしに設定される。前記回転数は、前記目標回転数設定部410Faにより、一例として5500[rpm]に設定される。
【0063】
そして、駆動信号出力部410Fbにより、前記目標回転数設定部410Faにより設定された目標回転数Nの回転を、前記頻度設定部410Fcにより設定された所定の時間条件で実行するための駆動信号が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力される。これにより、
図7に示すように、前記した態様で加熱循環ポンプ19が駆動されることで、水冷媒熱交換器15→加熱戻り管6→貯湯タンク2→加熱往き管5→水冷媒熱交換器15→・・の順で湯水を通過させつつ、加熱循環回路4内での湯水の循環が行われる。この湯水の循環は、前記ヒートポンプユニット3の圧縮機14が運転されず冷媒循環回路30内での冷媒の循環が行われない状態、すなわち冷媒側からの加熱が行われない状態で行われ、これによって湯水の循環のみによる加熱循環回路4内での空気除去が図られる。その後、S55へ移行する。
【0064】
なお、上記エア抜き運転による加熱循環回路4内での空気除去とは、貯湯タンク2の上部にエアを溜めることを指すものである。すなわち、エア抜き運転では、上述した加熱循環ポンプ19の高回転による運転により、加熱循環回路4内のエアを貯湯タンク2まで送ることができる。その際、送られたエアは貯湯タンク2の上部に留まり、再び加熱循環ポンプ19に吸引されることはない。このようにしてエア抜き運転により貯湯タンク2の上部に溜まったエアは、最終的に、沸上運転時の貯湯タンク2内の温度上昇に伴う圧力上昇により前記過圧逃し弁119が作動した場合に、過圧逃し弁119から排出、又は給湯時に出湯管8から排出される。
【0065】
S55では、加熱制御装置50により、ヒートポンプユニット3による加熱が禁止された状態で前記加熱循環ポンプ19を駆動することにより、前記加熱循環回路4内に湯水を循環させて当該加熱循環回路4の凍結防止を図るための凍結防止運転が行われる。凍結防止運転では、加熱循環ポンプ19を前記エア抜き運転の時間条件よりも低頻度となる所定の時間条件(第2時間条件に相当)で、前記エア抜き運転における回転数よりも低く、かつ前記通常回転数より高い回転数(第2回転数に相当)にて駆動して前記加熱循環回路4内に湯水を循環させることにより、当該加熱循環回路4の凍結防止を図る。
【0066】
前記所定の時間条件は、前記頻度設定部410Fcにより、一例として、加熱循環ポンプ19が、非駆動と駆動とを交互に繰り返すときの、その非駆動時間tsと駆動時間tdとの比率が、ts=9[分]、td=1[分]、すなわちts:td=9:1に設定される。すなわちこの場合、加熱循環ポンプ19は、9分停止+1分駆動というサイクル(10分間のうち1分間だけ駆動)が繰り返されることとなる。前記回転数は、前記目標回転数設定部410Faにより、一例として4500[rpm]に設定される。なお、凍結防止運転における最初の上記非駆動時間tsを、沸上運転を終了した後に所定の待機時間を設ける待機処理としてもよい。その場合には、上記ステップS47を不要としてもよい。
【0067】
そして、駆動信号出力部410Fbにより、前記目標回転数設定部410Faにより設定された目標回転数Nの回転を、前記頻度設定部410Fcにより設定された所定の時間条件で実行するための駆動信号が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力される。これにより、
図7に示すように、前記した態様で加熱循環ポンプ19が駆動されることで、水冷媒熱交換器15→加熱戻り管6→貯湯タンク2→加熱往き管5→水冷媒熱交換器15→・・の順で湯水を通過させつつ、加熱循環回路4内での湯水の循環が行われる。この湯水の循環は、前記ヒートポンプユニット3の圧縮機14が運転されず冷媒循環回路30内での冷媒の循環が行われない状態、すなわち冷媒側からの加熱が行われない状態で行われ、これによって湯水の循環のみによる加熱循環回路4内での凍結防止が図られる。
【0068】
なお、凍結防止運転は、例えば予め定められた運転期間(例えば6時間)が経過した場合、予め定められた運転終了時刻(例えば5:30)が到来した場合、又は、予めスケジューリングされていた当日(このフローが朝方に実行される日の当日)の沸上運転予定のうち一番最初の自動沸上の開始時間近くになった場合等に、停止される。その後、前記S5に戻る。
【0069】
S60では、加熱制御装置50により沸上運転を停止した状態で所定の待機時間Tだけ待機される。一例として、T=15[min]に設定される。なお、本S60が、所定のエラー事象の検知により沸上運転が終了した後、リトライ処理により沸上運転を再開する前に所定の待機時間を設ける待機処理に相当する。
【0070】
S65では、加熱制御装置50のポンプ制御部410Fにより、加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mを通常回転数よりも高い増大回転数で駆動しつつ沸上運転が再開される。具体的には、ポンプ制御部410Fの目標回転数設定部410Faにより、加熱循環ポンプ19の目標回転数Nが通常回転数よりも高い増大回転数に設定される。一例としては、N=5000[rpm]に設定される。そして、駆動信号出力部410Fbにより、前記目標回転数設定部410Faにより設定された目標回転数Nの回転を実行するための駆動信号が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力される。一方で、圧縮機制御部410Bは圧縮機14の駆動を再開し、膨張弁制御部410Cは電子膨張弁16の開度の制御を再開し、室外ファン制御部410Dは室外ファン67の駆動を再開する。以上により、加熱循環ポンプ19を増大回転数で駆動しつつ沸上運転が再開(リトライ)される。その後、後述するS90へ移行する。なお、本S65が、沸上運転の開始時にエラー検知手段により所定のエラー事象が検知された場合には、当該沸上運転を終了した後に当該沸上運転を再開するリトライ処理に相当する。
【0071】
S70では、エラー判定部410Gにより、非所定状態でのリトライエラーの発生回数(リトライカウントの値)が所定回数に到達したか否かが判定される。所定回数は、エラーの種類ごとに閾値として予め定められている。例えば前述の
図6(a)、
図6(b)、及び
図6(c)に示すように、所定状態でのリトライエラーの発生回数の閾値と同じ値に設定されてもよい。リトライエラーの発生回数が所定回数に到達した場合(S70:Yes)は、S75へ移行する。一方、リトライエラーの発生回数が所定回数に到達していない場合(S70:No)は、後述するS85へ移行する。
【0072】
S75では、エラー判定部410Gにより、非所定状態でのリトライエラーの発生が確定される。
【0073】
S80では、加熱制御装置50により強制的に運転が停止される(ロックアウト)。具体的には、ポンプ制御部410Fの駆動信号出力部410Fbにより停止信号が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力され、加熱循環回路4内での湯水の循環が停止される。また、圧縮機制御部410Bにより圧縮機14が停止されると共に、室外ファン制御部410Dにより室外ファン67が停止される。これにより、冷媒循環回路30内での冷媒の循環が停止される。
【0074】
S85では、加熱制御装置50のポンプ制御部410Fにより、加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mを通常回転数で駆動しつつ沸上運転が再開される。具体的には、ポンプ制御部410Fの目標回転数設定部410Faにより、加熱循環ポンプ19の目標回転数Nが通常回転数に設定される。一例としては、N=3000[rpm]に設定される。そして、駆動信号出力部410Fbにより、前記目標回転数設定部410Faにより設定された目標回転数Nの回転を実行するための駆動信号が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力される。一方で、圧縮機制御部410Bは圧縮機14の駆動を再開し、膨張弁制御部410Cは電子膨張弁16の開度の制御を再開し、室外ファン制御部410Dは室外ファン67の駆動を再開する。以上により、加熱循環ポンプ19を通常回転数で駆動しつつ沸上運転が再開(リトライ)される。その後、S90へ移行する。
【0075】
S90では、加熱制御装置50により、前記沸上温度センサ24により検出された沸上温度Tbが前記目標沸上温度Tboに到達したか否かが判定される。目標沸上温度Tboに到達していない場合(S90:No)は、前記S20へ戻る。一方、目標沸上温度Tboに到達した場合(S90:Yes)は、S95へ移行する。
【0076】
S95では、加熱制御装置50により沸上運転が終了される。具体的には、ポンプ制御部410Fの駆動信号出力部410Fbにより停止信号が生成されて加熱循環ポンプ19の駆動モータ19mへと出力され、加熱循環回路4内での湯水の循環が停止される。また、圧縮機制御部410Bにより圧縮機14が停止されると共に、室外ファン制御部410Dにより室外ファン67が停止される。これにより、冷媒循環回路30内での冷媒の循環が停止される。以上により、本フローチャートを終了する。
【0077】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態においては、前述のような不凍水栓120の使用に由来する沸上運転開始後のキャビテーション発生に対応するために、加熱制御装置50にエラー判定部410Gと状態判定部410Hとが設けられる。
【0078】
エラー判定部410Gは、前記沸上運転の開始時において、前記加熱循環回路4内での湯水の循環不全により起こり得るリトライエラーが発生していることを検知する。リトライエラーの一例としては、例えばヒートポンプユニット3に備えられている圧縮機14の駆動モータ14mに異常な過電流が流れている状態や、加熱循環回路4のうち水冷媒熱交換器15の下流側で検出される沸上温度Tbが異常に高温となっている状態や、加熱循環ポンプ19が回転数指令値よりも異常に高い回転数で回転している空焚き状態、等が想定可能である。
【0079】
一方、状態判定部410Hは、沸上運転の開始時において、その時点で湯水のキャビテーションが生じ得る所定状態になっているか否かを、判定する。所定状態の一例としては、例えば外気温度Tairが所定値(例えば-10℃)未満で、かつ、所定の時間条件(例えば朝方の特定時間帯である)が満足されており、かつ、貯湯タンク2内又は加熱循環回路4内の湯水の温度が所定値(例えば25℃)以上となっている場合、等である。
【0080】
上記のリトライエラーの発生が検知され、かつ、状態判定部410Hによる判定結果が、前記所定状態になっていると判定された場合には、前述のリトライエラーの発生は、前記した不凍水栓120の使用により水抜き状態となっていることに起因するキャビテーションの発生が理由であると推定される。これにより、加熱制御装置50は、前記駆動モータ19mによる加熱循環ポンプ19の回転数を、通常の沸上運転時における通常回転数よりも高い増大回転数とする。
【0081】
これにより、キャビテーションによって加熱循環ポンプ19へ湯水が引き込みにくくなっている場合であっても、この回転数の増大によって加熱循環ポンプ19への湯水の引き込み作用を強化することができるので、沸上運転を確実に実行することができる。
【0082】
また、本実施形態では特に、リトライエラーの発生が検知された場合に、沸上運転終了→その後沸上運転再開、というリトライ処理の実行を所定の閾値まで繰り返す。リトライエラーの発生検知後すぐに加熱循環ポンプ19の回転数を増大させ、沸上運転の終了・再開を繰り返し試行することにより、加熱循環ポンプ19への湯水の引き込みを確実なものとすることができ、沸上運転をより確実に実行することができる。このようにして、沸上運転の実行のために万全を期すことができる。
【0083】
また、本実施形態では特に、リトライ処理時に、沸上運転終了→所定時間待機→沸上運転再開という流れとして、沸上運転を終了して再開するまでの間に所定の待機時間を設けることにより、キャビテーションの影響を低減し、リトライ処理による沸上運転の成功率を高めることができる。
【0084】
また、本実施形態では特に、例えば夜間に凍結防止のために不凍水栓120が使用された場合に、その状態のまま朝方に沸上運転が行われる場合、不凍水栓120の使用による水抜き状態により貯湯タンク2内に給水圧がかからないため、キャビテーションが生じる恐れが高まる。このため、湯水のキャビテーションが生じ得る所定の状態の判定条件に、沸上運転の開始時が朝の特定時間帯であることを含めることにより、不凍水栓120が使用された状態でユーザが朝に湯水を使用する場合に対応して、その使用に備えた沸上運転を確実に行うことができる。
【0085】
<変形例>
なお、本発明は以上の態様に限定されることなく、その趣旨を変更しない範囲で変更可能なものである。
【0086】
例えば、上記実施形態では、所定状態でのリトライエラーの発生が確定した場合に、所定の待機時間経過後にエア抜き運転を実行し、その後凍結防止運転を実行する場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、所定状態でのリトライエラーの発生が確定した場合に、所定の待機時間経過後に、エア抜き運転を実行せずに凍結防止運転を実行してもよい。この場合、待機処理の実行により、沸上運転中止後の加熱循環ポンプ19の停止中に、加熱循環ポンプ19の入口側に貯湯タンク2の水頭圧が幾分か作用し、加熱循環ポンプ19内のエアが幾分か加熱循環ポンプ19の出口側へ抜け、その後、凍結防止運転の実行により加熱循環ポンプ19が駆動されると湯水の流れが少々生じる。前述のように凍結防止運転では加熱循環ポンプ19が繰り返し間欠運転されるため、続く加熱循環ポンプ19の駆動によってキャビテーションが発生する場合があるが、その後の加熱循環ポンプ19の停止時に再度加熱循環ポンプ19内のエアが幾分か加熱循環ポンプ19の出口側へ抜け、再度の加熱循環ポンプ19の駆動で湯水の流れが少々生じる。この動作が繰り返されることで、加熱循環回路4内の湯水が少しずつ間欠的に循環される。このように、エア抜き運転を実行しない場合であっても、凍結防止運転を行うことで少なくとも加熱循環回路4内の湯水が循環される結果、低温による凍結発生を防止して器具の破損を防止することができる。
【0087】
なお、上記変形例においても、凍結防止運転における最初の前記非駆動時間tsを、沸上運転を終了した後に所定の待機時間を設ける待機処理としてもよい。その場合には、前記ステップS47を不要としてもよい。
【0088】
また、上記実施形態では特に設置しなかったが、加熱循環回路4又は貯湯タンク2にエア抜き弁を設けてもよい。
【0089】
また、例えば、前記ヒートポンプサイクルとしては、減圧器としてエジェクターを用いたエジェクターサイクルでもよいものである。
【0090】
また、上記実施形態では、熱源機として、熱源側熱交換器としての空気熱交換器17に冷媒を通じる一方で外気を送風する室外ファン67を有し、熱源としての外気と前記冷媒とが熱交換される、空気熱源式のヒートポンプである場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、熱源機を、熱源側熱交換器に対して水や不凍液が供給されそれらの液体と冷媒とが当該熱源側熱交換器において熱交換する構成のものとしてもよい。
また、地中又は比較的大容量の水源中に熱源側熱交換器を設け、この熱源側熱交換器で前記地中又は前記水源と冷媒とが熱交換する構成のものとしてもよい。さらには、前記地中又は前記水源の熱を用いたヒートポンプ回路と空気熱を用いた別のヒートポンプ回路とを備えた複合熱源型の構成としてもよい。
さらには、熱源側熱交換器において前記冷媒と熱交換できるものであれば、前記液体や前記外気や前記水源に代えて、それ以外のもの(例えば、発煙、排煙、各種高温ガス等を含む気体や、熱砂、塵埃、各種粒子等を含む流動固体)を熱源側熱交換器に通じたり、太陽光、反射光、その他輻射等による熱を熱源側熱交換器に供給して用いる構成としても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 タンクユニット
2 貯湯タンク
3 ヒートポンプユニット
4 加熱循環回路(湯水循環回路)
5 加熱往き管(往き管)
6 加熱戻り管(戻り管)
12 貯湯温度センサ
14 圧縮機(加熱手段)
14m 駆動モータ
15 水冷媒熱交換器(熱交換器)
16 電子膨張弁(加熱手段)
17 空気熱交換器(加熱手段)
19 加熱循環ポンプ(循環ポンプ)
19m 駆動モータ(ポンプ駆動手段)
22 外気温度センサ
23 入水温度センサ
24 沸上温度センサ(エラー検知手段)
30 冷媒循環回路(加熱手段)
31 四方弁(加熱手段)
40 貯湯制御装置
50 加熱制御装置(制御手段)
100 貯湯式給湯装置
410Ba 電流検出部(エラー検知手段)
410F ポンプ制御部
410Fd 回転数検出部(エラー検知手段)
410G エラー判定部(エラー確定手段)
410H 状態判定部(状態判定手段)
T1 入水温度
Tair 外気温度
Tb 沸上温度
Tout 冷媒吐出温度