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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021182598
(22)【出願日】2021-11-09
(65)【公開番号】P2023070425
(43)【公開日】2023-05-19
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一馬
(72)【発明者】
【氏名】荒木 清道
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 将年
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-530269(JP,A)
【文献】特開2011-130519(JP,A)
【文献】特開2013-55830(JP,A)
【文献】特開2014-3858(JP,A)
【文献】国際公開第2015/4872(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/24255(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/46370(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子(TH1,TH2;TL1,TL2)から入力された電圧を変圧して出力端子(TH2,TH1;TL2,TL1)から出力する電力変換装置(10)において、
上アーム第1半導体部(DH1,QH1)及び上アーム第2半導体部(DH2,QH2)の直列接続体と、
中間アーム第1スイッチ部(QM1)及び中間アーム第2スイッチ部(QM2)の直列接続体と、
下アーム第1半導体部(QL1,DL1)及び下アーム第2半導体部(QL2,DL2)の直列接続体と、
前記上アーム第1半導体部及び前記上アーム第2半導体部の接続点と、前記中間アーム第2スイッチ部及び前記下アーム第1半導体部の接続点とを接続するリアクトル(30)及び第1中間コンデンサ(31)の直列接続体と、
前記中間アーム第1スイッチ部及び前記中間アーム第2スイッチ部の接続点と、前記下アーム第1半導体部及び前記下アーム第2半導体部の接続点とを接続する電気経路に設けられた第2中間コンデンサ(32;32A,32B)と、
を備える、電力変換装置。
【請求項2】
前記入力端子としての高電位側入力端子(TH1)及び低電位側入力端子(TL1)から入力された電圧を昇圧して、前記出力端子としての高電位側出力端子(TH2)及び低電位側出力端子(TL2)から出力する電力変換装置において、
前記上アーム第1半導体部は、上アーム第1ダイオード部(DH1)であり、
前記上アーム第2半導体部は、上アーム第2ダイオード部(DH2)であり、
前記下アーム第1半導体部は、下アーム第1スイッチ部(QL1)であり、
前記下アーム第2半導体部は、下アーム第2スイッチ部(QL2)であり、
前記上アーム第1ダイオード部のカソードに、前記高電位側出力端子が接続され、
前記上アーム第2ダイオード部のアノードに、前記中間アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記中間アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記下アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記下アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記低電位側出力端子及び前記低電位側入力端子が接続され、
前記上アーム第2ダイオード部及び前記中間アーム第1スイッチ部の接続点に前記高電位側入力端子が接続されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記中間アーム第1スイッチ部及び前記下アーム第1スイッチ部をオフし、前記中間アーム第2スイッチ部及び前記下アーム第2スイッチ部をオンするMode1、前記中間アーム第1スイッチ部及び前記中間アーム第2スイッチ部をオンし、前記下アーム第1スイッチ部及び前記下アーム第2スイッチ部をオフするMode2、前記中間アーム第1スイッチ部及び前記下アーム第1スイッチ部をオンし、前記中間アーム第2スイッチ部及び前記下アーム第2スイッチ部をオフするMode3、及び前記Mode2をこの順に繰り返す昇圧制御を実行する制御装置(60)を備える、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記リアクトルに流れる電流が0近傍となるタイミングにおいて、前記Mode1から前記Mode2への切り替え、前記Mode2から前記Mode3への切り替え、前記Mode3から前記Mode2への切り替え、及び前記Mode2から前記Mode1への切り替えを実行する、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記入力端子及び前記出力端子として、第1高電位側端子(TH1)、第1低電位側端子(TL1)、第2高電位側端子(TH2)及び第2低電位側端子(TL2)が設けられ、
前記上アーム第1半導体部は、上アーム第1スイッチ部(QH1)であり、
前記上アーム第2半導体部は、上アーム第2スイッチ部(QH2)であり、
前記下アーム第1半導体部は、下アーム第1スイッチ部(QL1)であり、
前記下アーム第2半導体部は、下アーム第2スイッチ部(QL2)であり、
前記上アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側に、前記第2高電位側端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記中間アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記中間アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記下アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記下アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記第2低電位側端子及び前記第1低電位側端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部及び前記中間アーム第1スイッチ部の接続点に前記第1高電位側端子が接続されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記上アーム第1スイッチ部、前記中間アーム第1スイッチ部及び前記下アーム第1スイッチ部をオフし、前記上アーム第2スイッチ部、前記中間アーム第2スイッチ部及び前記下アーム第2スイッチ部をオンするMode1、前記上アーム第1スイッチ部、前記中間アーム第1スイッチ部及び前記中間アーム第2スイッチ部をオンし、前記上アーム第2スイッチ部、前記下アーム第1スイッチ部及び前記下アーム第2スイッチ部をオフするMode2、前記上アーム第2スイッチ部、前記中間アーム第1スイッチ部及び前記下アーム第1スイッチ部をオンし、前記上アーム第1スイッチ部、前記中間アーム第2スイッチ部及び前記下アーム第2スイッチ部をオフするMode3、及び前記Mode2をこの順に繰り返す制御を実行する制御装置(60)を備える、請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記リアクトルに流れる電流が0近傍となるタイミングにおいて、前記Mode1から前記Mode2への切り替え、前記Mode2から前記Mode3への切り替え、前記Mode3から前記Mode2への切り替え、及び前記Mode2から前記Mode1への切り替えを実行する、請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記入力端子としての高電位側入力端子(TH2)及び低電位側入力端子(TL2)から入力された電圧を降圧して、前記出力端子としての高電位側出力端子(TH1)及び低電位側出力端子(TL1)から出力する電力変換装置において、
前記上アーム第1半導体部は、上アーム第1スイッチ部(QH1)であり、
前記上アーム第2半導体部は、上アーム第2スイッチ部(QH2)であり、
前記下アーム第1半導体部は、下アーム第1ダイオード部(DL1)であり、
前記下アーム第2半導体部は、下アーム第2ダイオード部(DL2)であり、
前記上アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側に、前記高電位側入力端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記中間アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記中間アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記下アーム第1ダイオード部のカソードが接続され、
前記下アーム第2ダイオード部のアノードに、前記低電位側出力端子及び前記低電位側入力端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部及び前記中間アーム第1スイッチ部の接続点に前記高電位側出力端子が接続されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記上アーム第1スイッチ部及び前記中間アーム第1スイッチ部をオフし、前記上アーム第2スイッチ部及び前記中間アーム第2スイッチ部をオンするMode1、前記上アーム第1スイッチ部、前記中間アーム第1スイッチ部及び前記中間アーム第2スイッチ部をオンし、前記上アーム第2スイッチ部をオフするMode2、前記上アーム第2スイッチ部及び前記中間アーム第1スイッチ部をオンし、前記上アーム第1スイッチ部及び前記中間アーム第2スイッチ部をオフするMode3、及び前記Mode2をこの順に繰り返す降圧制御を実行する制御装置(60)を備える、請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記リアクトルに流れる電流が0近傍となるタイミングにおいて、前記Mode1から前記Mode2への切り替え、前記Mode2から前記Mode3への切り替え、前記Mode3から前記Mode2への切り替え、及び前記Mode2から前記Mode1への切り替えを実行する、請求項9に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力端子から入力された電圧を変圧して出力端子から出力する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電力変換装置としては、特許文献1に記載されているように、LC共振を利用して昇圧比を1.5とする昇圧コンバータが知られている。詳しくは、特許文献1の図5に記載の昇圧コンバータは、4つのスイッチと、4つのダイオードと、2つのリアクトルと、5つのコンデンサとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10637352号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力変換装置の搭載先における搭載スペースの制約上、電力変換装置には小型化が要求されている。このため、リアクトルを含む受動素子や、スイッチを含む半導体素子の数を削減することが望まれている。
【0005】
本発明は、構成部品を削減できる電力変換装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力端子から入力された電圧を変圧して出力端子から出力する電力変換装置において、
上アーム第1半導体部及び上アーム第2半導体部の直列接続体と、
中間アーム第1スイッチ部及び中間アーム第2スイッチ部の直列接続体と、
下アーム第1半導体部及び下アーム第2半導体部の直列接続体と、
前記上アーム第1半導体部及び前記上アーム第2半導体部の接続点と、前記中間アーム第2スイッチ部及び前記下アーム第1半導体部の接続点とを接続するリアクトル及び第1中間コンデンサの直列接続体と、
前記中間アーム第1スイッチ部及び前記中間アーム第2スイッチ部の接続点と、前記下アーム第1半導体部及び前記下アーム第2半導体部の接続点とを接続する電気経路に設けられた第2中間コンデンサと、を備える。
【0007】
本発明は、昇圧機能を有する電力変換装置として、例えば以下のように具体化できる。
【0008】
前記入力端子としての高電位側入力端子及び低電位側入力端子から入力された電圧を昇圧して、前記出力端子としての高電位側出力端子及び低電位側出力端子から出力する電力変換装置において、
前記上アーム第1半導体部は、上アーム第1ダイオード部であり、
前記上アーム第2半導体部は、上アーム第2ダイオード部であり、
前記下アーム第1半導体部は、下アーム第1スイッチ部であり、
前記下アーム第2半導体部は、下アーム第2スイッチ部であり、
前記上アーム第1ダイオード部のカソードに、前記高電位側出力端子が接続され、
前記上アーム第2ダイオード部のアノードに、前記中間アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記中間アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記下アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記下アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記低電位側出力端子及び前記低電位側入力端子が接続され、
前記上アーム第2ダイオード部及び前記中間アーム第1スイッチ部の接続点に前記高電位側入力端子が接続されている。
【0009】
また、本発明は、昇圧機能を有する電力変換装置として、例えば以下のように具体化できる。
【0010】
前記入力端子及び前記出力端子として、第1高電位側端子、第1低電位側端子、第2高電位側端子及び第2低電位側端子が設けられ、
前記上アーム第1半導体部は、上アーム第1スイッチ部であり、
前記上アーム第2半導体部は、上アーム第2スイッチ部であり、
前記下アーム第1半導体部は、下アーム第1スイッチ部であり、
前記下アーム第2半導体部は、下アーム第2スイッチ部であり、
前記上アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側に、前記第2高電位側端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記中間アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記中間アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記下アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記下アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記第2低電位側端子及び前記第1低電位側端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部及び前記中間アーム第1スイッチ部の接続点に前記第1高電位側端子が接続されている。
【0011】
また、本発明は、降圧機能を有する電力変換装置として、例えば以下のように具体化できる。
前記入力端子としての高電位側入力端子及び低電位側入力端子から入力された電圧を降圧して、前記出力端子としての高電位側出力端子及び低電位側出力端子から出力する電力変換装置において、
前記上アーム第1半導体部は、上アーム第1スイッチ部であり、
前記上アーム第2半導体部は、上アーム第2スイッチ部であり、
前記下アーム第1半導体部は、下アーム第1ダイオード部であり、
前記下アーム第2半導体部は、下アーム第2ダイオード部であり、
前記上アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側に、前記高電位側入力端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記中間アーム第1スイッチ部の両端のうち高電位側が接続され、
前記中間アーム第2スイッチ部の両端のうち低電位側に、前記下アーム第1ダイオード部のカソードが接続され、
前記下アーム第2ダイオード部のアノードに、前記低電位側出力端子及び前記低電位側入力端子が接続され、
前記上アーム第2スイッチ部及び前記中間アーム第1スイッチ部の接続点に前記高電位側出力端子が接続されている。
【0012】
本発明によれば、電力変換装置の構成部品の中で体格が比較的大きいリアクトル及びコンデンサの数を削減することができ、電力変換装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図2】スイッチの駆動状態、電流及び電圧等の推移を示すタイムチャート。
図3】Mode1における電流の流通状態を示す図。
図4】Mode2における電流の流通状態を示す図。
図5】Mode3における電流の流通状態を示す図。
図6】体格低減効果を示す図。
図7】第2実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図8】スイッチの駆動状態、電流及び電圧等の推移を示すタイムチャート。
図9】Mode1における電流の流通状態を示す図。
図10】Mode2における電流の流通状態を示す図。
図11】Mode3における電流の流通状態を示す図。
図12】第3実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図13】昇圧制御におけるスイッチの駆動状態、電流及び電圧等の推移を示すタイムチャート。
図14】Mode1における電流の流通状態を示す図。
図15】Mode2における電流の流通状態を示す図。
図16】Mode3における電流の流通状態を示す図。
図17】昇圧制御におけるスイッチの駆動状態、電流及び電圧等の推移を示すタイムチャート。
図18】Mode1における電流の流通状態を示す図。
図19】Mode2における電流の流通状態を示す図。
図20】Mode3における電流の流通状態を示す図。
図21】その他の実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図22】その他の実施形態に係る電力変換装置の構成図。
図23】その他の実施形態に係る電力変換装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る電力変換装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。電力変換装置は、例えば、車両、航空機又は船舶等の移動体に搭載される。車両は、例えば、回転電機及びエンジンを備えるハイブリッド車、又は回転電機及びエンジンのうち回転電機のみを備える電気自動車である。
【0015】
図1に示すように、電力変換装置10は、第1コンデンサ21、中間アーム第1スイッチQM1(「中間アーム第1スイッチ部」に相当)、中間アーム第2スイッチQM2(「中間アーム第2スイッチ部」に相当)、下アーム第1スイッチQL1(「下アーム第1スイッチ部」に相当)及び下アーム第2スイッチQL2(「下アーム第2スイッチ部」に相当)を備えている。本実施形態において、各スイッチQM1,QM2,QL1,QL2は、ボディダイオードを有するNチャネルMOSFETである。
【0016】
電力変換装置10の第1高電位側端子TH1(「高電位側入力端子」に相当)には、第1コンデンサ21の第1端と、中間アーム第1スイッチQM1のドレインが接続されている。中間アーム第1スイッチQM1のソースには、中間アーム第2スイッチQM2のドレインが接続され、中間アーム第2スイッチQM2のソースには、下アーム第1スイッチQL1のドレインが接続されている。下アーム第1スイッチQL1のソースには、下アーム第2スイッチQL2のドレインが接続されている。下アーム第2スイッチQL2のソースには、第1コンデンサ21の第2端と、電力変換装置10の第1低電位側端子TL1(「低電位側入力端子」に相当)とが接続されている。なお、各端子TH1,TL1には、例えば、ACDCコンバータの直流側端子、又は2次電池が接続される。2次電池は、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0017】
電力変換装置10は、上アーム第1ダイオードDH1(「上アーム第1ダイオード部」に相当)、上アーム第2ダイオードDH2(「上アーム第2ダイオード部」に相当)及び第2コンデンサ22を備えている。上アーム第1ダイオードDH1のカソードには、電力変換装置10の第2高電位側端子TH2(「高電位側出力端子」に相当)と、第2コンデンサ22の第1端とが接続されている。第2コンデンサ22の第2端には、電力変換装置10の第2低電位側端子TL2(「低電位側出力端子」に相当)と、下アーム第2スイッチQL2のソースとが接続されている。上アーム第1ダイオードDH1のアノードには、上アーム第2ダイオードDH2のカソードが接続されている。上アーム第2ダイオードDH2のアノードには、中間アーム第1スイッチQM1のドレインが接続されている。なお、各端子TH2,TL2には、例えば、ACDCコンバータの直流側端子、又は2次電池が接続される。2次電池は、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。本実施形態において、第2高電位側端子TH2及び第2低電位側端子TL2に接続されるACDCコンバータの直流側端子又は2次電池の定格電圧(例えば450V)は、第1高電位側端子TH1及び第1低電位側端子TL1に接続されるACDCコンバータの直流側端子又は2次電池の定格電圧(例えば300V)よりも高い。
【0018】
電力変換装置10は、リアクトル30、第1中間コンデンサ31及び第2中間コンデンサ32を備えている。リアクトル30の第1端には、上アーム第1ダイオードDH1のアノード及び上アーム第2ダイオードDH2のカソードが接続されている。リアクトル30の第2端には、第1中間コンデンサ31の第1端が接続されている。第1中間コンデンサ31の第2端には、中間アーム第2スイッチQM2のソース及び下アーム第1スイッチQL1のドレインが接続されている。第2中間コンデンサ32の第1端には、中間アーム第1スイッチQM1のソース及び中間アーム第2スイッチQM2のドレインが接続されている。第2中間コンデンサ32の第2端には、下アーム第1スイッチQL1のソース及び下アーム第2スイッチQL2のドレインが接続されている。
【0019】
電力変換装置10は、第1電圧センサ51及び第2電圧センサ52を備えている。第1電圧センサ51は、第1コンデンサ21の端子間電圧を検出し、第2電圧センサ52は、第2コンデンサ22の端子間電圧を検出する。各電圧センサ51,52の検出値は、電力変換装置10が備える制御装置60に入力される。
【0020】
制御装置60は、中間アーム第1スイッチQM1、中間アーム第2スイッチQM2、下アーム第1スイッチQL1及び下アーム第2スイッチQL2のスイッチング制御を行うことにより、第1高電位側端子TH1(「高電位側入力端子」に相当)及び第1低電位側端子TL1(「低電位側入力端子」に相当)から入力された電圧を昇圧して、第2高電位側端子TH2(「高電位側出力端子」に相当)及び第2低電位側端子TL2(「低電位側出力端子」に相当)から出力する電力変換処理を行う。なお、制御装置60が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0021】
次に、図2を用いて、電力変換処理について説明する。図2(a)において、実線は第1電圧センサ51により検出された低圧側電圧VLの推移を示し、破線は第2電圧センサ52により検出された高圧側電圧VHの推移を示す。図2(b)は、上アーム第1ダイオードDH1及び上アーム第2ダイオードDH2の接続点からリアクトル30へと流れる電流iCfの推移を示し、図2(c)は、第1コンデンサ21に流れる電流iLの推移を示す。図2(d)において、実線は中間アーム第1スイッチQM1の駆動状態の推移を示し、破線は中間アーム第2スイッチQM2の駆動状態の推移を示す。図2(e)において、実線は下アーム第1スイッチQL1の駆動状態の推移を示し、破線は下アーム第2スイッチQL2の駆動状態の推移を示す。図2(f)において、実線は上アーム第1ダイオードDH1の端子間電圧VDH1の推移を示し、破線は上アーム第2ダイオードDH2の端子間電圧VDH2の推移を示す。図2(g)において、実線は中間アーム第1スイッチQM1の端子間電圧VQM1(ドレイン及びソース間電圧)の推移を示し、破線は中間アーム第2スイッチQM2の端子間電圧VQM2の推移を示す。図2(h)において、実線は下アーム第1スイッチQL1の端子間電圧VQL1の推移を示し、破線は下アーム第2スイッチQL2の端子間電圧VQL2の推移を示す。図2において、各電流,電圧の符号は、図1に示す矢印の向きを正とする。
【0022】
制御装置60は、電力変換処理として、Mode1、Mode2、Mode3及びMode2からなる1サイクルを繰り返す処理を行う。これにより、第1高電位側端子TH1及び第1低電位側端子TL1の入力電圧を約1.5倍して第2高電位側端子TH2及び第2低電位側端子TL2から出力する。Mode1の期間において、中間アーム第2スイッチQM2及び下アーム第2スイッチQL2がオンされ、中間アーム第1スイッチQM1及び下アーム第1スイッチQL1がオフされる。Mode2の期間において、中間アーム第1,第2スイッチQM1,QM2がオンされ、下アーム第1,第2スイッチQL1,QL2がオフされる。Mode3の期間において、中間アーム第1スイッチQM1及び下アーム第1スイッチQL1がオンされ、中間アーム第2スイッチQM2及び下アーム第2スイッチQL2がオフされる。
【0023】
Mode1の期間においては、図3に示すように、上アーム第2ダイオードDH2、リアクトル30、第1中間コンデンサ31、中間アーム第2スイッチQM2、第2中間コンデンサ32、下アーム第2スイッチQL2及び第1コンデンサ21を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1,第2中間コンデンサ31,32とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。
【0024】
第1中間コンデンサ31の静電容量をC1とし、第2中間コンデンサ32の静電容量をC2とし、リアクトル30のインダクタンスをLとする場合、Mode1におけるLC共振の共振周期である第1共振周期Tc1は下式(eq1)で表される。
【0025】
【数1】
制御装置60は、Mode1が開始されてから第1共振周期Tc1の半周期(=Tc1×1/2)が経過したタイミングにおいて、中間アーム第1スイッチQM1をオンに切り替え、下アーム第2スイッチQL2をオフに切り替える。これにより、Mode1からMode2に移行する。この際、中間アーム第1スイッチQM1のオンへの切り替えと、下アーム第2スイッチQL2のオフへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。なお、iLが0になるタイミングと、iCfが0になるタイミングとは同じタイミング又は略同じタイミングである。
【0026】
Mode2の期間においては、図4に示すように、中間アーム第1スイッチQM1、中間アーム第2スイッチQM2、第1中間コンデンサ31、リアクトル30、上アーム第1ダイオードDH1、第2コンデンサ22及び第1コンデンサ21を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1中間コンデンサ31とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。
【0027】
Mode2におけるLC共振の共振周期である第2共振周期Tc2は下式(eq2)で表される。
【0028】
【数2】
第2中間コンデンサ32の静電容量C2は、第1中間コンデンサ31の静電容量C1と同等又はC1よりも大きい。本実施形態では、第2中間コンデンサ32の静電容量C2は、第1中間コンデンサ31の静電容量C1よりも十分大きい。これにより、第2共振周期Tc2と第1共振周期Tc1とが同じ又は略等しい周期にされている。
【0029】
制御装置60は、Mode2が開始されてから第2共振周期Tc2の半周期(=Tc2×1/2)が経過したタイミングにおいて、中間アーム第2スイッチQM2をオフに切り替え、下アーム第1スイッチQL1をオンに切り替える。これにより、Mode2からMode3に移行する。この際、中間アーム第2スイッチQM2のオフへの切り替えと、下アーム第1スイッチQL1のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0030】
Mode3の期間においては、図5に示すように、中間アーム第1スイッチQM1、上アーム第2ダイオードDH2、リアクトル30、第1中間コンデンサ31、下アーム第1スイッチQL1及び第2中間コンデンサ32を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1,第2中間コンデンサ31,32とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。このLC共振の共振周期は、上記第1共振周期Tc1である。
【0031】
制御装置60は、Mode3が開始されてから第1共振周期Tc1の半周期が経過したタイミングにおいて、中間アーム第2スイッチQM2をオンに切り替え、下アーム第1スイッチQL1をオフに切り替える。これにより、Mode3からMode2に移行する。この際、中間アーム第2スイッチQM2のオンへの切り替えと、下アーム第1スイッチQL1のオフへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0032】
制御装置60は、Mode2が開始されてから第2共振周期Tc2の半周期が経過したタイミングにおいて、中間アーム第1スイッチQM1をオフに切り替え、下アーム第2スイッチQL2をオンに切り替える。これにより、Mode2からMode1に移行し、Mode1、Mode2、Mode3及びMode2からなる1サイクルが終了する。この際、中間アーム第1スイッチQM1のオフへの切り替えと、下アーム第2スイッチQL2のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0033】
図6に、比較例と本実施形態との体格の違いを示す。比較例は、上記特許文献1の図5の電力変換装置である。比較例ではスイッチ及びその駆動回路が4つ必要であるのに対し、本実施形態でも4つ必要である。一方、比較例ではダイオードが4つ必要であるのに対し、本実施形態では2つ必要である。また、比較例ではリアクトルが2つ必要であるのに対し、本実施形態では1つ必要であり、特に、リアクトルのインダクタンスを比較例の1/4にできている。また、比較例では、コンデンサが5つ必要であるのに対し、本実施形態では4つ必要であり、特に、コンデンサの静電容量を比較例の2/5にできている。比較例及び本実施形態において、ダイオード等の各構成の数を足し合わせた値を体格の大小とみなす場合、比較例の体格が19であるのに対し、本実施形態の体格は12.5である。つまり、本実施形態では、電力変換装置10の体格が約34%低減されている。
【0034】
特に、コンデンサやリアクトルといった受動部品は体格が大きくなりやすいため、コンデンサやリアクトルの数を減らすことのできる本実施形態によれば、電力変換装置の小型化を好適に図ることができる。
【0035】
図2に示すように、各スイッチQM1,QM2,QL1,QL2のスイッチング周波数の2倍の周波数で電流iCfが変動する。これにより、各スイッチQM1,QM2,QL1,QL2のスイッチング周波数を過度に高くすることなく、リアクトル30及び各中間コンデンサ31,32の印加電圧の周波数を高めることができる。その結果、各スイッチQM1,QM2,QL1,QL2のスイッチング周波数を過度に高くすることなく、リアクトル30及び各中間コンデンサ31,32の小型化を図ることができる。
【0036】
これに対し、上記比較例では、リアクトル及びコンデンサの印加電圧の周波数が、スイッチのスイッチング周波数と同じ周波数となる。このため、比較例では、リアクトル及びコンデンサを小型化する場合、スイッチのスイッチング周波数を高める必要がある。
【0037】
<第1実施形態の変形例>
・Mode1~3のうち、あるModeから別のModeへの切り替えタイミングは、電流iL,iCfが0になるタイミングに限らず、電流iL,iCfが0付近になるタイミングであってもよい。電流iL,iCfが0付近になるタイミングは、例えば、電流iL、iCfが、0よりも大きくてかつ電流iL,iCfのピーク値が取り得る最大値の1/10,1/20若しくは1/40以下の値となるタイミングである。電流iL,iCfが0になるタイミング、及び電流iL,iCfが0付近になるタイミングを合わせた概念が、電流iL,iCfが0近傍になるタイミングである。
【0038】
・リアクトル30は、上アーム第1,第2ダイオードDH1,DH2の接続点と第1中間コンデンサ31との間に限らず、第1中間コンデンサ31と、中間アーム第2スイッチQM2及び下アーム第1スイッチQL1の接続点との間に設けられていてもよい。
【0039】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図7に示すように、上アーム第1,第2ダイオードDH1,DH2に代えて、上アーム第1,第2スイッチQH1,QH2が設けられ、下アーム第1,第2スイッチQL1,QL2に代えて、下アーム第1,第2ダイオードDL1,DL2(「下アーム第1,第2ダイオード部」に相当)が設けられている。本実施形態において、上アーム第1,第2スイッチQH1,QH2はNチャネルMOSFETである。なお、図7において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0040】
上アーム第1スイッチQH1のドレインには、第2コンデンサ22の第1端と、第2高電位側端子TH2とが接続されている。上アーム第1スイッチQH1のソースには、上アーム第2スイッチQH2のドレインが接続されている。上アーム第2スイッチQH2のソースには、中間アーム第1スイッチQM1のドレインが接続されている。
【0041】
中間アーム第2スイッチQM2のソースには、下アーム第1ダイオードDL1のカソードが接続され、下アーム第1ダイオードDL1のアノードには、下アーム第2ダイオードDL2のカソードが接続されている。下アーム第2ダイオードDL2のアノードには、第1コンデンサ21及び第2コンデンサ22の第2端が接続されている。
【0042】
上アーム第1スイッチQH1及び上アーム第2スイッチQH2の接続点には、リアクトル30の第1端が接続されている。中間アーム第2スイッチQM2及び下アーム第1ダイオードDL1の接続点には、第1中間コンデンサ31の第2端が接続されている。中間アーム第1スイッチQM1及び中間アーム第2スイッチQM2の接続点と、下アーム第1ダイオードDL1及び下アーム第2ダイオードDL2の接続点とは、第2中間コンデンサ32により接続されている。
【0043】
制御装置60は、上アーム第1スイッチQH1、上アーム第2スイッチQH2、中間アーム第1スイッチQM1及び中間アーム第2スイッチQM2のスイッチング制御を行うことにより、第2高電位側端子TH2(「高電位側入力端子」に相当)及び第2低電位側端子TL2(「低電位側入力端子」に相当)から入力された電圧を降圧して第1高電位側端子TH1(「高電位側出力端子」に相当)及び第1低電位側端子TL1(「低電位側出力端子」に相当)から出力する電力変換処理を行う。図8を用いて、この電力変換処理について説明する。図8(a)~(c)は、図2(a)~(c)に対応している。図8(d)において、実線は上アーム第1スイッチQH1の駆動状態の推移を示し、破線は上アーム第2スイッチQH2の駆動状態の推移を示す。図8(e)において、実線は中間アーム第1スイッチQM1の駆動状態の推移を示し、破線は中間アーム第2スイッチQM2の駆動状態の推移を示す。図8(f)において、実線は上アーム第1スイッチQH1の端子間電圧VQH1の推移を示し、破線は上アーム第2スイッチQH2の端子間電圧VQL2の推移を示す。図8(g)において、実線は中間アーム第1スイッチQM1の端子間電圧VQM1の推移を示し、破線は中間アーム第2スイッチQM2の端子間電圧VQM2の推移を示す。図8(h)において、実線は下アーム第1ダイオードDL1の端子間電圧VDL1の推移を示し、破線は下アーム第2ダイオードDL2の端子間電圧VDL2の推移を示す。図8において、各電流,電圧の符号は、図7に示す矢印の向きを正とする。
【0044】
制御装置60は、電力変換処理として、Mode1、Mode2、Mode3及びMode2からなる1サイクルを繰り返す処理を行う。これにより、第2高電位側端子TH2及び第2低電位側端子TL2の入力電圧を約0.67倍(2/3倍)して第1高電位側端子TH1及び第1低電位側端子TL1から出力する。Mode1の期間において、上アーム第2スイッチQH2及び中間アーム第2スイッチQM2がオンされ、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1スイッチQM1がオフされる。Mode2の期間において、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1,第2スイッチQM1,QM2がオンされ、上アーム第2スイッチQH2がオフされる。Mode3の期間において、上アーム第2スイッチQH2及び中間アーム第1スイッチQM1がオンされ、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第2スイッチQM2がオフされる。なお、本実施形態の各Modeは、第1実施形態の各Modeとは異なる。
【0045】
Mode1の期間においては、図9に示すように、上アーム第2スイッチQH2、第1コンデンサ21、下アーム第2ダイオードDL2、第2中間コンデンサ32、中間アーム第2スイッチQM2、第1中間コンデンサ31及びリアクトル30を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1,第2中間コンデンサ31,32とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。このLC共振の共振周期は、上記第1共振周期Tc1である。
【0046】
制御装置60は、Mode1が開始されてから第1共振周期Tc1の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第2スイッチQH2をオフに切り替え、上アーム第1スイッチQH1をオンに切り替える。また、制御装置60は、中間アーム第1スイッチQM1をオンに切り替える。これにより、Mode1からMode2に移行する。この際、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1スイッチQM1のオンへの切り替えと、上アーム第2スイッチQH2のオフへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0047】
Mode2の期間においては、図10に示すように、第1コンデンサ21、第2コンデンサ22、上アーム第1スイッチQH1、リアクトル30と、第1中間コンデンサ31、中間アーム第2スイッチQM2及び中間アーム第1スイッチQM1を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1中間コンデンサ31とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。このLC共振の共振周期は、上記第2共振周期Tc2である。
【0048】
制御装置60は、Mode2が開始されてから第2共振周期Tc2の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第1スイッチQH1をオフに切り替え、上アーム第2スイッチQH2をオンに切り替える。また、制御装置60は、中間アーム第2スイッチQM2をオフに切り替える。これにより、Mode2からMode3に移行する。この際、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第2スイッチQM2のオフへの切り替えと、上アーム第2スイッチQH2のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0049】
Mode3の期間においては、図11に示すように、上アーム第2スイッチQH2、中間アーム第1スイッチQM1、第2中間コンデンサ32、下アーム第1ダイオードDL1、第1中間コンデンサ31及びリアクトル30を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1,第2中間コンデンサ31,32とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。このLC共振の共振周期は、上記第1共振周期Tc1である。
【0050】
制御装置60は、Mode3が開始されてから第1共振周期Tc1の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第2スイッチQH2をオフに切り替え、上アーム第1スイッチQH1をオンに切り替える。また、制御装置60は、中間アーム第2スイッチQM2をオンに切り替える。これにより、Mode3からMode2に移行する。この際、上アーム第2スイッチQH2のオフへの切り替えと、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第2スイッチQM2のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0051】
制御装置60は、Mode2が開始されてから第2共振周期Tc2の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第1スイッチQH1をオフに切り替え、上アーム第2スイッチQH2をオンに切り替える。また、制御装置60は、中間アーム第1スイッチQM1をオフに切り替える。これにより、Mode2からMode1に移行し、Mode1、Mode2、Mode3及びMode2からなる1サイクルが終了する。この際、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1スイッチQM1のオフへの切り替えと、上アーム第2スイッチQH2及び中間アーム第2スイッチQM2のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0052】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、降圧機能を有する電力変換装置10の部品数を削減することができる。
【0053】
<第2実施形態の変形例>
・Mode1~3のうち、あるModeから別のModeへの切り替えタイミングは、第1実施形態の変形例と同様に、電流iL,iCfが0になるタイミングに限らず、電流iL,iCfが0付近になるタイミングであってもよい。
【0054】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1,第2実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図12に示すように、先の図7の構成における下アーム第1,第2ダイオードDL1,DL2に代えて、下アーム第1,第2スイッチQL1,QL2が設けられている。なお、図12において、先の図1及び図7に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0055】
制御装置60は、電力変換処理として、昇圧制御及び降圧制御のうちいずれかを選択して実行する。
【0056】
まず、図13を用いて、昇圧制御について説明する。図13(a)~(f),(h),(i)は、先の図8(a)~(g)に対応し、図13(g),(j)は、先の図2(e),(h)に対応している。
【0057】
制御装置60は、Mode1、Mode2、Mode3及びMode2からなる1サイクルを繰り返す降圧制御を行う。なお、本実施形態の各Modeは、第1,第2実施形態の各Modeとは異なる。
【0058】
Mode1の期間においては、上アーム第2スイッチQH2、中間アーム第2スイッチQM2及び下アーム第2スイッチQL2がオンされ、上アーム第1スイッチQH1、中間アーム第1スイッチQM1及び下アーム第1スイッチQL1がオフされる。これにより、図14に示すように、上アーム第2スイッチQH2、リアクトル30、第1中間コンデンサ31、中間アーム第2スイッチQM2、第2中間コンデンサ32、下アーム第2スイッチQL2及び第1コンデンサ21を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1,第2中間コンデンサ31,32とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。このLC共振の共振周期は、上記第1共振周期Tc1である。
【0059】
制御装置60は、Mode1が開始されてから第1共振周期Tc1の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第2スイッチQL2をオフに切り替え、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1スイッチQM1をオンに切り替える。これにより、Mode1からMode2に移行する。この際、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第2スイッチQL2のオフへの切り替えと、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1スイッチQM1のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0060】
Mode2の期間においては、図15に示すように、中間アーム第1スイッチQM1、中間アーム第2スイッチQM2、第1中間コンデンサ31、リアクトル30、上アーム第1スイッチQH1、第2コンデンサ22及び第1コンデンサ21を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1中間コンデンサ31とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。このLC共振の共振周期は、上記第2共振周期Tc2である。
【0061】
制御装置60は、Mode2が開始されてから第2共振周期Tc2の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第2スイッチQM2をオフに切り替え、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第1スイッチQL1をオンに切り替える。これにより、Mode2からMode3に移行する。この際、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第2スイッチQM2のオフへの切り替えと、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第1スイッチQL1のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0062】
Mode3の期間においては、図16に示すように、中間アーム第1スイッチQM1、上アーム第2スイッチQH2、リアクトル30、第1中間コンデンサ31、下アーム第1スイッチQL1及び第2中間コンデンサ32を含む閉回路に電流が流れる。詳しくは、この閉回路に、リアクトル30と、第1,第2中間コンデンサ31,32とによるLC共振が発生して正弦波状の電流が流れる。このLC共振の共振周期は、上記第1共振周期Tc1である。
【0063】
制御装置60は、Mode3が開始されてから第1共振周期Tc1の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第1スイッチQL1をオフに切り替え、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第2スイッチQM2をオンに切り替える。これにより、Mode3からMode2に移行する。この際、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第1スイッチQL1のオフへの切り替えと、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第2スイッチQM2のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0064】
制御装置60は、Mode2が開始されてから第2共振周期Tc2の半周期が経過したタイミングにおいて、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1スイッチQM1をオフに切り替え、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第2スイッチQL2をオンに切り替える。これにより、Mode2からMode1に移行し、Mode1、Mode2、Mode3及びMode2からなる1サイクルが終了する。この際、上アーム第1スイッチQH1及び中間アーム第1スイッチQM1のオフへの切り替えと、上アーム第2スイッチQH2及び下アーム第2スイッチQL2のオンへの切り替えとにおいてZCSのソフトスイッチングを実現することができ、損失の低減を図ることができる。
【0065】
続いて、図17を用いて、降圧制御について説明する。図17(a)~(j)は、先の図13(a)~(j)に対応している。
【0066】
制御装置60は、Mode1、Mode2、Mode3及びMode2からなる1サイクルを繰り返す降圧制御を行う。つまり、本実施形態において、降圧制御のスイッチング制御は、昇圧制御のスイッチング制御と同じである。降圧制御のMode1~3における電流の流通態様を図18図20に示す。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、昇圧制御及び降圧制御におけるスイッチング制御態様が同じである。このため、スイッチング制御態様が切り替えられることなく、昇圧制御及び降圧制御のうち、一方の制御から他方の制御へとシームレスに切り替えることができる。
【0068】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0069】
・第3実施形態において、Mode1~3のうち、あるModeから別のModeへの切り替えタイミングは、第1実施形態の変形例と同様に、電流iL,iCfが0になるタイミングに限らず、電流iL,iCfが0付近になるタイミングであってもよい。
【0070】
・電力変換装置10が備えるスイッチ部は、1つの半導体スイッチに限らず、複数の半導体スイッチの直列接続体であってもよいし、電力変換装置10が備えるダイオード部は、1つのダイオードに限らず、複数のダイオードの直列接続体であってもよい。図21には、図1に示す構成において、上アーム第1,第2ダイオードDH1,DH2が2つのダイオードの直列接続体で構成され、各スイッチQM1,QM2,QL1,QL2が2つのNチャネルMOSFETの直列接続体で構成される例を示す。これにより、各スイッチ及び各ダイオードを低耐圧の素子とすることができる。
【0071】
・電力変換装置10が備えるスイッチ部は、複数のスイッチの並列接続体であってもよいし、電力変換装置10が備えるダイオード部は、複数のダイオードの並列接続体であってもよい。図22には、図1に示す構成において、上アーム第1,第2ダイオードDH1,DH2が2つのダイオードの並列接続体で構成され、各スイッチQM1,QM2,QL1,QL2が2つのNチャネルMOSFETの並列接続体で構成される例を示す。これにより、各スイッチ及び各ダイオードを低電流容量の素子とすることができる。
【0072】
図23に示すように、第2中間コンデンサが電力変換装置10に複数備えられていてもよい。図23に示す例では、電力変換装置10は、第2A中間コンデンサ32Aと、第2B中間コンデンサ32Bとを備えている。電力変換装置10は、第1切替スイッチSA及び第2切替スイッチSBを備えている。図23において、各切替スイッチSA,SBは、ドレイン同士が接続された2つのNチャネルMOSFETで構成されている。第1切替スイッチSA及び第2A中間コンデンサ32Aは直列接続され、第2切替スイッチSB及び第2B中間コンデンサ32Bは直列接続されている。なお、各切替スイッチSA,SBは、ソース同士が接続された2つのNチャネルMOSFETで構成されていてもよい。
【0073】
第2A中間コンデンサ32Aの静電容量と、第2B中間コンデンサ32Bの静電容量とは異なっている。このため、第1切替スイッチSA及び第2切替スイッチSBの少なくとも一方が制御装置60によりオンされることにより、第1共振周期Tc1を変更することができる。
【0074】
・電力変換装置10が備えるスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されたIGBTであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10…電力変換装置、30…リアクトル、31,32…第1,第2中間コンデンサ、DH1,DH2…上アーム第1,第2ダイオード、QM1,QM2…中間アーム第1,第2スイッチ、QL1,QL2…下アーム第1,第2スイッチ、60…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23