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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20250107BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20250107BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20250107BHJP
   B22F 7/08 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01L21/52 G
H01L21/52 C
H01L21/68 N
B82Y40/00
B22F7/08 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021542801
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031399
(87)【国際公開番号】W WO2021039566
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2019153523
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】市川 功
(72)【発明者】
【氏名】中山 秀一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輔
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-170470(JP,A)
【文献】特開2016-213223(JP,A)
【文献】特開2019-065354(JP,A)
【文献】特開2013-103959(JP,A)
【文献】国際公開第2016/189986(WO,A1)
【文献】特開2018-152403(JP,A)
【文献】特開2017-224782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
H01L 21/683
B82Y 40/00
B22F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有し、貼付対象の半導体チップと同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさのフィルム状焼成材料(ただし、溶剤を含むものを除く)を、支持シート上に設ける工程と、
前記支持シート上の前記フィルム状焼成材料に、前記半導体チップの裏面側を向い合せに貼付する工程と、
前記フィルム状焼成材料及び前記半導体チップを、前記支持シートから剥離させる工程と、
前記フィルム状焼成材料が貼付された前記半導体チップの前記フィルム状焼成材料の側を、基板に貼付する工程と、
前記フィルム状焼成材料を200℃以上に加熱することで、前記半導体チップと前記基板とを焼結結合させる工程と、を含む積層体の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム状焼成材料を200℃以上に加熱するとともに、5MPa以上で加圧することで、前記半導体チップと前記基板とを焼結結合させる、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記基板がセラミック基板である、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記支持シートは、基材フィルムと、前記基材フィルム上の全面に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記支持シートの前記粘着剤層上に、前記フィルム状焼成材料を設ける、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記支持シートは、基材フィルムと、前記基材フィルム上の周縁部に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記支持シートの前記基材フィルム上のうち、前記粘着剤層が設けられていない領域に、前記フィルム状焼成材料を設ける、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記粘着剤層が、エネルギー線硬化性を有する、請求項4又は5に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
前記粘着剤層に、エネルギー線を照射し、前記フィルム状焼成材料及び前記半導体チップを、前記支持シートから剥離させる、請求項4に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
剥離フィルム上に形成された前記フィルム状焼成材料を、前記支持シート上に転写して、前記支持シート上に、前記フィルム状焼成材料を設ける、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項9】
前記剥離フィルム上に、前記フィルム状焼成材料を印刷して形成する、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記剥離フィルム上に、前記フィルム状焼成材料を、貼付対象の前記半導体チップと同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさの金型を用いて抜き加工して形成する、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項11】
前記支持シート上に、前記フィルム状焼成材料を印刷して設ける、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項12】
前記支持シートが円形である、請求項1~11のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項13】
前記支持シートをエキスパンドすることで、前記支持シートと前記フィルム状焼成材料との界面に応力を発生させ、前記フィルム状焼成材料及び前記半導体チップを、前記支持シートから剥離させる、請求項1~12のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項14】
前記支持シート上に、前記フィルム状焼成材料を格子状に並べて設ける、請求項1~13のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関する。
本願は、2019年8月26日に日本に出願された特願2019-153523号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車、エアコン、パソコン等の、高電圧・高電流化に伴い、これらに搭載される電力用半導体素子(パワーデバイス)の需要が高まっている。電力用半導体素子では、これが高電圧・高電流下で使用されるという特徴から、半導体素子からの熱の発生が問題となりやすい。
従来、半導体素子から発生した熱の放熱のため、半導体素子の周りにヒートシンクが取り付けられる場合もある。しかし、ヒートシンクと半導体素子との間の接合部での熱伝導性が良好でなければ、効率的な放熱が妨げられてしまう。
【0003】
熱伝導性に優れた前記接合部を形成可能な接合材料としては、例えば、加熱焼結性金属粒子、高分子分散剤及び揮発性分散媒を混合して得られたペースト状金属微粒子組成物が知られている。この組成物は、その焼結によって固形状金属を形成する焼成材料であり、この固形状金属は前記接合部を構成可能であるとされている。
しかし、このようなペースト状の焼成材料を用いる場合には、これを焼結接合の対象物に塗工し、焼結させることで、前記接合部を形成するが、塗工物の厚さを均一化することが難しく、厚さ安定性が高い前記接合部を形成することが難しい。
【0004】
このような問題点は、フィルム状の焼成材料を用いることで解決できる。厚さ安定性が高いフィルム状の焼成材料を予め形成しておき、これを焼結接合の対象物(例えば、半導体ウエハ)に貼付し、焼結させることで、安定性が高い前記接合部を形成できる。
このようなフィルム状焼成材料としては、例えば、焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有したものが開示されている。このフィルム状焼成材料は、その一方の側に支持シートが剥離可能に仮着され、他方の側に剥離フィルムが設けられた、支持シート付フィルム状焼成材料として用いるものである。そして、支持シートが、基材フィルム上の全面もしくは外周部に粘着剤層が設けられたものであり、フィルム状焼成材料の端部の平均厚さと、剥離フィルムの面積と、剥離フィルムにおける切れ込みの有無が、特定の条件を満たすように構成されている(特許文献1参照)。このフィルム状焼成材料は、剥離フィルムを剥がしてから使用するものであり、厚さ安定性及び熱伝導性に優れた前記接合部を形成可能である。そして、このフィルム状焼成材料においては、剥離フィルムを剥がすときに通常生じ易い、凝集破壊等の破損が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第6327630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のフィルム状焼成材料は、その使用時に、半導体ウエハの裏面全面に貼付することを想定したものである。そのためこのフィルム状焼成材料は、半導体ウエハへの貼付後には、半導体ウエハが半導体チップへ分割されるときに、この半導体チップの形状及び大きさに合わせて切断されることになる。切断後のフィルム状焼成材料は、最終的に焼結によって、半導体チップと基板を接合する接合部を形成する。ところが、焼結性金属粒子を多く含むフィルム状焼成材料は、比較的脆いため、その切断時に切断屑が生じ易く、また切断方法によっては破損し易いという問題点があった。さらに、半導体チップに不具合がある場合には、この半導体チップは使用できないため、この半導体チップに貼付されている分のフィルム状焼成材料が無駄になってしまい、フィルム状焼成材料の歩留まりが低下してしまうという問題点があった。
【0007】
本発明は、接合部を介して半導体チップと基板が積層されて構成された積層体の製造方法であって、前記接合部は、フィルム状焼成材料の焼結によって形成され、厚さ安定性及び熱伝導性に優れており、フィルム状焼成材料の破損を抑制でき、フィルム状焼成材料の歩留まりが良好である、積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有し、貼付対象の半導体チップと同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさのフィルム状焼成材料を、支持シート上に設ける工程と、前記支持シート上の前記フィルム状焼成材料に、前記半導体チップの裏面側を向い合せに貼付する工程と、前記フィルム状焼成材料及び前記半導体チップを、前記支持シートから剥離させる工程と、前記フィルム状焼成材料が貼付された前記半導体チップの前記フィルム状焼成材料の側を、基板に貼付する工程と、前記フィルム状焼成材料を200℃以上に加熱することで、前記半導体チップと前記基板とを焼結結合させる工程と、を含む積層体の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の積層体の製造方法においては、前記フィルム状焼成材料を200℃以上に加熱するとともに、5MPa以上で加圧することで、前記半導体チップと前記基板とを焼結結合させてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記基板がセラミック基板であってもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記支持シートは、基材フィルムと、前記基材フィルム上の全面に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記支持シートの前記粘着剤層上に、前記フィルム状焼成材料を設けてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記支持シートは、基材フィルムと、前記基材フィルム上の周縁部に設けられた粘着剤層と、を備えており、前記支持シートの前記基材フィルム上のうち、前記粘着剤層が設けられていない領域に、前記フィルム状焼成材料を設けてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記粘着剤層がエネルギー線硬化性を有していてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、エネルギー線硬化性を有する前記粘着剤層に、エネルギー線を照射し、前記フィルム状焼成材料及び前記半導体チップを、前記支持シートから剥離させてもよい。
【0010】
本発明の積層体の製造方法においては、剥離フィルム上に形成された前記フィルム状焼成材料を、前記支持シート上に転写して、前記支持シート上に、前記フィルム状焼成材料を設けてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記剥離フィルム上に、前記フィルム状焼成材料を印刷して形成してもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記剥離フィルム上に、前記フィルム状焼成材料を、貼付対象の前記半導体チップと同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさの金型を用いて抜き加工して形成してもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記支持シート上に、前記フィルム状焼成材料を印刷して設けてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記支持シートが円形であってもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記支持シートをエキスパンドすることで、前記支持シートと前記フィルム状焼成材料との界面に応力を発生させ、前記フィルム状焼成材料及び前記半導体チップを、前記支持シートから剥離させてもよい。
本発明の積層体の製造方法においては、前記支持シート上に、前記フィルム状焼成材料を格子状に並べて設けてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接合部を介して半導体チップと基板が積層されて構成された積層体の製造方法であって、前記接合部は、フィルム状焼成材料の焼結によって形成され、厚さ安定性及び熱伝導性に優れており、フィルム状焼成材料の破損を抑制でき、フィルム状焼成材料の歩留まりが良好である、積層体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本実施形態の製造方法で用いる支持シートの一例を模式的に示す平面図である。
図1B図1Aに示す支持シートの、図1A中のI-I線における断面図である。
図2A】本実施形態の製造方法で用いる支持シートの他の例を模式的に示す平面図である。
図2B図2Aに示す支持シートの、図2A中のII-II線における断面図である。
図3A】第1実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図3B】第1実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図3C】第1実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図3D】第1実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図3E】第1実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図4】第1実施形態の製造方法によって得られた、支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す平面図である。
図5】第1実施形態の製造方法によって得られた、支持シート付きフィルム状焼成材料の他の例を模式的に示す平面図である。
図6】第1実施形態の製造方法によって得られた、支持シート付きフィルム状焼成材料のさらに他の例を模式的に示す平面図である。
図7】第1実施形態の製造方法によって得られた、保護フィルムを備えた、支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す断面図である。
図8】第1実施形態の製造方法によって得られた、保護フィルムを備えた、支持シート付きフィルム状焼成材料の他の例を模式的に示す断面図である。
図9A】第2実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図9B】第2実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図9C】第2実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図9D】第2実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図9E】第2実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
図10】第2実施形態の製造方法によって得られた、支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<積層体の製造方法>>
本発明の一実施形態に係る積層体の製造方法は、焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有し、貼付対象の半導体チップと同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさのフィルム状焼成材料を、支持シート上に設ける工程(本明細書においては、「工程A」と称することがある)と、前記支持シート上の前記フィルム状焼成材料に、前記半導体チップの裏面側を向い合せに貼付する工程(本明細書においては、「工程B」と称することがある)と、前記フィルム状焼成材料及び前記半導体チップを、前記支持シートから剥離させる工程(本明細書においては、「工程C」と称することがある)と、前記フィルム状焼成材料が貼付された前記半導体チップの前記フィルム状焼成材料の側を、基板に貼付する工程(本明細書においては、「工程D」と称することがある)と、前記フィルム状焼成材料を200℃以上に加熱することで、前記半導体チップと前記基板とを焼結結合させる工程(本明細書においては、「工程E」と称することがある)と、を含む。
【0014】
本実施形態の積層体の製造方法においては、工程Aにおいて、支持シート上に、貼付対象の半導体チップと同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさのフィルム状焼成材料を設けるため、フィルム状焼成材料を半導体チップの形状及び大きさに合わせて切断する必要がない。したがって、フィルム状焼成材料が脆くても、フィルム状焼成材料由来の切断屑が生じず、フィルム状焼成材料の破損が抑制される。また、工程Bにおいて、フィルム状焼成材料に半導体チップを貼付するため、不具合がある半導体チップの使用を避けることによって、フィルム状焼成材料には確実に不具合が無い半導体チップを貼付できる。したがって、フィルム状焼成材料が無駄になることが無く、フィルム状焼成材料の歩留まりが良好となる。
以下、まず、本実施形態で用いる支持シート、フィルム状焼成材料、半導体チップ及び基板について、説明する。
【0015】
<支持シート>
前記支持シートは、前記フィルム状焼成材料を設けることが可能であり、後述する工程B~Cを行うことが可能であれば、特に限定されない。
【0016】
前記支持シートの形状は、特に限定されないが、四角形、円形等が挙げられる。四角形には、例えば、正方形及び長方形が含まれ、さらに長方形には帯状(換言すると、長尺の四角形)の形状が含まれる。
本明細書において、「支持シートの形状」とは、特に断りのない限り、支持シートをその主面(例えば、後述する第1面)の上方から見下ろして平面視したときの形状(すなわち平面形状)を意味する。
【0017】
支持シートとしては、例えば、基材フィルムと、前記基材フィルム上の全面に設けられた粘着剤層と、を備えたものが挙げられる。
図1Aは、このような支持シートの一例を模式的に示す平面図であり、図1Bは、図1Aに示す支持シートの、図1A中のI-I線における断面図である。
ここに示す支持シート11は、その形状が四角形であり、基材フィルム111と、基材フィルム111の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)111aの全面に設けられた粘着剤層112と、を備えて構成されている。
【0018】
粘着剤層112は、例えば、後述する工程Cにおいて、フィルム状焼成材料を支持シート11から剥離させることを容易とするのに好適である。
【0019】
支持シート11を用いる場合、粘着剤層112の基材フィルム111側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)112aが、後述する工程Aにおいては、フィルム状焼成材料に対向する面となる。支持シート11の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)11aは、粘着剤層112の第1面112aと同じである。
【0020】
支持シートとしては、例えば、基材フィルムと、前記基材フィルム上の周縁部に設けられた粘着剤層と、を備えたものも挙げられる。
図2Aは、このような支持シートの一例を模式的に示す平面図であり、図2Bは、図2Aに示す支持シートの、図2A中のII-II線における断面図である。
なお、図2A以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0021】
ここに示す支持シート19は、基材フィルム111と、基材フィルム111の一方の面(第1面)111aの周縁部1110aに設けられた粘着剤層192と、を備えて構成されている。
基材フィルム111の第1面111aの周縁部1110aは、前記第1面111aのうち、基材フィルム111の外周部に沿った幅の狭い領域であり、粘着剤層192は前記外周部に沿った帯状の形状を有する。そして、粘着剤層192は、前記周縁部1110aに、連続して角形リング状に設けられている。
支持シート19の第1面19aは、基材フィルム111の第1面111aと同じである。
【0022】
粘着剤層192は、これによって、例えば、後述する工程B~Cにおいて、支持シート19を支持フレームに貼り合わせて、支持シート19を一時的に固定し、その後の工程で支持フレームから剥離させるために用いるのに好適である。
【0023】
前記支持シートは、前記基材フィルム上の全面もしくは周縁部に粘着剤層が設けられたものが好ましく、換言すると、少なくとも前記基材フィルム上の周縁部に粘着剤層が設けられたものが好ましい。
【0024】
[基材フィルム]
前記基材フィルムの構成材料としては、樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体等のエチレン系共重合体(エチレンから誘導された構成単位を有する共重合体);ポリ塩化ビニル;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体;ポリウレタン;アイオノマー;耐熱性を有するポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート又はポリエチレンナフタレート等のポリエステル;これら樹脂の架橋物等が挙げられる。
【0025】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0026】
基材フィルムは、粘着性を有する樹脂を構成材料とする、弱粘着性のものであってもよい。このような基材フィルムは、後述する工程Aにおいて、これにフィルム状焼成材料を直接接触させて設ける場合に好適である。
【0027】
基材フィルムは、放射線処理、放電処理等によって改質されていてもよい。
【0028】
基材フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0029】
本明細書においては、基材フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0030】
基材フィルムの厚さは特に限定されず、例えば、30~300μmであってもよい。
ここで、「基材フィルムの厚さ」とは、基材フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材フィルムの厚さとは、基材フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0031】
[粘着剤層]
前記粘着剤層としては、例えば、エネルギー線硬化性の粘着剤層、非硬化性で弱粘着性の粘着剤層等が挙げられる。
エネルギー線硬化性の粘着剤層は、エネルギー線の照射によって硬化し、その粘着力が低下する。
【0032】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0033】
エネルギー線硬化性の前記粘着剤層の構成材料としては、公知のエネルギー線硬化型粘着剤が挙げられる。
【0034】
非硬化性で弱粘着性の前記粘着剤層の構成材料としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、熱膨張成分含有粘着剤等の汎用粘着剤が挙げられる。
粘着面が凹凸形状となっている粘着剤層は、弱粘着性の粘着剤層として用いることができる。
非硬化性で弱粘着性の粘着剤層は、例えば、23℃でSUS板(ステンレス鋼板)に対して、30~120mN/25mmの粘着力を示すものであってもよい。
【0035】
前記粘着剤層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0036】
粘着剤層の厚さは特に限定されず、例えば、1~100μmであってもよい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0037】
<フィルム状焼成材料>
前記フィルム状焼成材料の形状は、貼付対象の半導体チップと同形もしくは略同形であり、例えば、正方形又は長方形であってもよい。本明細書において、「フィルム状焼成材料の形状」とは、特に断りのない限り、フィルム状焼成材料をその主面(例えば、後述する第1面)の上方から見下ろして平面視したときの形状(すなわち平面形状)を意味する。
【0038】
フィルム状焼成材料の大きさは、貼付対象の半導体チップの大きさと同じである。
【0039】
フィルム状焼成材料は、焼結性金属粒子及びバインダー成分を含有し、さらに、これら以外に他の成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。
【0040】
[焼結性金属粒子]
前記焼結性金属粒子は、フィルム状焼成材料の焼成時に、相互に結合して焼結体を形成する。フィルム状焼成材料に接触して配置されていた部材同士は、焼成によって、フィルム状焼成材料の焼結体を介して接合される。
【0041】
焼結性金属粒子は、少なくとも金属元素を含む粒子であり、金属元素のみからなる粒子であってもよいし、金属元素と非金属元素からなる粒子であってもよい。金属元素と非金属元素からなる粒子としては、例えば、金属酸化物の粒子が挙げられる。
【0042】
焼結性金属粒子を構成する金属種としては、例えば、銀、金、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、シリコン、パラジウム、白金、チタン等が挙げられ、単体金属であってもよいし、2種以上の金属の合金であってもよい。
【0043】
1個の焼結性金属粒子を構成する金属種は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
例えば、前記金属酸化物は、2種以上の金属元素を含む複合酸化物であってもよく、このような複合酸化物としては、例えば、チタン酸バリウム等が挙げられる。
【0044】
焼結性金属粒子の粒子径は、金属粒子が焼結性を示す限り、特に限定されず、焼結性に優れる点では、例えば、100nm以下、50nm以下、及び30nm以下のいずれかであってもよい。
本明細書において、「金属粒子の粒子径」とは、電子顕微鏡を用いて観測された金属粒子の投影面積と等しい面積をもつ円の直径(投影面積円相当径)を意味する。
焼結性金属粒子の粒子径は、前記投影面積円相当径が100nm以下の粒子に対して求めた粒子径の数平均が、0.1~95nm、0.3~50nm、及び0.5~30nmのいずれかとなるものであってもよい。ただし、観測対象の金属粒子は、1枚のフィルム状焼成材料において無作為に選ばれた100個以上のものとする。
【0045】
焼結性金属粒子は、ナノサイズの粒子であることが好ましく、銀粒子であることが好ましく、ナノサイズの銀粒子(銀ナノ粒子)であることがより好ましい。
本明細書において、「ナノサイズの粒子」とは、粒子径が100nm以下である粒子を意味する。
【0046】
[バインダー成分]
前記バインダー成分は、フィルム状焼成材料に成形性及び粘着性を付与するための成分である。
前記バインダー成分は、フィルム状焼成材料の焼成時に熱分解される熱分解性であってもよい。
【0047】
バインダー成分は特に限定されないが、樹脂であることが好ましい。
前記樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリ乳酸、セルロース誘導体の重合物等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
前記アクリル系樹脂としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物の単独重合体、2種以上の(メタ)アクリレート化合物の共重合体、(メタ)アクリレート化合物と他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0048】
前記アクリル系樹脂において、(メタ)アクリレート化合物由来の構成単位の含有量は、例えば、構成単位の全量に対して、50~100質量%であってもよい。
【0049】
前記(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
前記アクリル系樹脂は、メタクリレートであることが好ましい。バインダー成分がメタクリレート由来の構成単位を含有することで、フィルム状焼成材料は比較的低温で焼成可能であり、焼結後により高い接合強度が得られる。
【0051】
前記アクリル系樹脂において、メタクリレート由来の構成単位の含有量は、例えば、構成単位の全量に対して、50~100質量%であってもよい。
【0052】
前記他の単量体は、前記(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な化合物であれば特に限定されない。
前記他の単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、ビニルフタル酸等の不飽和カルボン酸;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン等の、ビニル基含有ラジカル重合性化合物等が挙げられる。
【0053】
前記樹脂の重量平均分子量(Mw)は、例えば、1000~1000000であってもよい。樹脂の重量平均分子量がこのような範囲内であることで、フィルム状焼成材料は、より高い強度とより良好な柔軟性を有する。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0054】
前記樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、-60~50℃であってもよい。樹脂のTgが前記下限値以上であることで、後述する支持シートからのフィルム状焼成材料の剥離がより容易となる。樹脂のTgが前記上限値以下であることで、フィルム状焼成材料と半導体チップ等との接着力がより向上する。
【0055】
前記バインダー成分が、フィルム状焼成材料の焼成時に熱分解される熱分解性である場合、バインダー成分が熱分解されたことは、焼成時のバインダー成分の質量減少により確認できる。
本実施形態においては、フィルム状焼成材料の焼成時において、バインダー成分は、ほぼ又は完全にその全量が熱分解されてもよいし、一部が熱分解されなくてもよい。
焼成後のバインダー成分の質量は、焼成前のバインダー成分の質量に対して、例えば、10質量%以下であってもよい。
【0056】
<半導体チップ>
前記半導体チップは、公知のものであってよい。
半導体チップの大きさ(例えば、半導体チップをその回路形成面の上方から見下ろして平面視したときの面積)は、例えば、0.01~25cmであってもよく、0.25~9cmであってもよい。
【0057】
<基板>
前記基板は、半導体チップの接合対象となるものであれば、特に限定されない。
好ましい前記基板としては、セラミック基板が挙げられる。
【0058】
次に、図面を参照しながら、本実施形態の積層体の製造方法について、詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
まず、図1A及び図1Bに示す支持シート11を用いた場合を例に挙げて、前記積層体の製造方法(本明細書においては、「第1実施形態」と称することがある)について説明する。
図3A図3Eは、本実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
【0059】
・第1実施形態
<工程A>
工程Aにおいては、図3Aに示すように、支持シート11上にフィルム状焼成材料12を設ける。本実施形態においては、このようにフィルム状焼成材料が設けられた支持シートを、「支持シート付きフィルム状焼成材料」と称することがある。図3A中では、支持シート付きフィルム状焼成材料に符号1を付している。
【0060】
上述のとおり、支持シート11が粘着剤層112を備えているため、工程Aにおいては、より具体的には、支持シート11の粘着剤層112上(粘着剤層112の第1面112a)に、フィルム状焼成材料12を設ける。
【0061】
工程Aにおいては、ここに示すように、支持シート11の第1面11aに、フィルム状焼成材料12を直接接触させることが好ましい。
【0062】
工程Aにおいては、ここに示すように、1枚の支持シート11に複数枚(2枚以上)のフィルム状焼成材料12を設けることが好ましい。その場合、1枚の支持シート11に設けるフィルム状焼成材料12の枚数は、10~10000であることが好ましく、25~1000であることがより好ましい。前記枚数が前記下限値以上であることで、前記積層体の製造効率がより高くなる。前記枚数が前記上限値以下であることで、支持シート11としてより適切な大きさのものを使用でき、工程Aの作業適性がより向上する。
【0063】
図4は、本実施形態の製造方法によって得られた、支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す平面図である。
ここに示す支持シート11の形状は四角形であり、支持シート11の第1面11aには、直交する2方向に5列と7列、合計で35枚のフィルム状焼成材料12が設けられている。
また、支持シート11上で、すべてのフィルム状焼成材料12の向きが一致しており、上述の直交する2方向において、隣り合うフィルム状焼成材料12の配置位置が互いに一致するように、フィルム状焼成材料12が整列して配置されている。すなわち、フィルム状焼成材料12は、支持シート11上に格子状に並んで設けられている。図4中、符号12aは、フィルム状焼成材料12の支持シート11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)を示す。
このように、支持シート11上に、フィルム状焼成材料12を格子状に並べて設ける工程Aは、好ましい実施形態の一例である。
【0064】
図4においては、フィルム状焼成材料12は、支持シート11上に格子状に並んで設けられているが、支持シート11上でのフィルム状焼成材料12の配置形態は、これに限定されない。例えば、1枚又は2枚以上のフィルム状焼成材料12の向きが一致していなくてもよいし、1枚又は2枚以上のフィルム状焼成材料12については、上述の直交する2方向において、隣り合うフィルム状焼成材料12の配置位置が互いに一致していなくてもよい。
【0065】
図4においては、支持シート11上に設けられているフィルム状焼成材料12の枚数は、35であるが、前記枚数はこれに限定されない。例えば、前記枚数は先に説明したとおりであってもよい。
【0066】
工程Aにおいて、支持シート11上にフィルム状焼成材料12を設ける方法で、好ましい方法としては、例えば、支持シート11上に、フィルム状焼成材料12を印刷して設ける方法(本明細書においては、「方法(A-1)」と称することがある);剥離フィルム上に形成されたフィルム状焼成材料12を、支持シート11上に転写して、支持シート11上に、フィルム状焼成材料12を設ける方法(本明細書においては、「方法(A-2)」と称することがある)が挙げられる。
【0067】
従来知られているように、シリンジを用いて、フィルム状焼成材料12の原料となるペースト状の組成物を支持シート11上に塗布し、これを焼結させることで接合部を形成する場合には、前記組成物の塗布量を制御することによって、塗布した組成物の厚さを均一化することが難しく、厚さ安定性が高い接合部を形成することは難しい。
これに対して、上述の方法(A-1)又は(A-2)を採用した場合には、支持シート11上(ここでは、より具体的には、支持シート11の第1面11a)に、厚さ安定性が高いフィルム状焼成材料12を設けることができ、その結果、後述する工程Eにおいて、フィルム状焼成材料12から形成される接合部も、厚さ安定性が高いままとなる。特に、方法(A-2)を採用した場合には、厚さ安定性が高いフィルム状焼成材料12を、剥離フィルム上に予め形成しておくことができるため、これをそのままの状態で転写することによって、厚さ安定性がより高いフィルム状焼成材料12を支持シート11上に設けることができる。
本明細書において、フィルム状焼成材料、及びフィルム状焼成材料から形成される接合部について、「厚さ安定性が高い」とは、これらの厚さの均一性が高いことを意味する。
【0068】
方法(A-2)において、前記剥離フィルム上にフィルム状焼成材料12を形成する方法としては、例えば、剥離フィルム上に、フィルム状焼成材料12を印刷して形成する方法;剥離フィルム上に、フィルム状焼成材料12を、貼付対象の半導体チップと同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさの金型を用いて抜き加工して形成する方法、が挙げられる。
【0069】
方法(A-1)において、支持シート11上にフィルム状焼成材料12を印刷する方法、及び、方法(A-2)において、剥離フィルム上に、フィルム状焼成材料12を印刷する方法、としては、公知の印刷法が挙げられる。前記印刷法として、より具体的には、例えば、フレキソ印刷法等の凸版印刷法;グラビア印刷法等の凹版印刷法;オフセット印刷法等の平板印刷法;シルクスクリーン印刷法、ロータリースクリーン印刷法等のスクリーン印刷法;インクジェット印刷法等の各種プリンタを用いる印刷法等が挙げられる。
【0070】
<工程B>
工程Bは、工程Aの後に行う。
工程Bにおいては、図3Bに示すように、支持シート11上のフィルム状焼成材料12に、半導体チップ9の裏面9b側を向い合せに貼付する。ここでは、フィルム状焼成材料12の第1面12aと、半導体チップ9の裏面9bと、を貼り合わせる。
フィルム状焼成材料12への半導体チップ9の貼付は、例えば、コレットを用いる方法等、半導体チップを固定及び移動させる公知の方法を採用できる。
【0071】
工程Bにおいては、フィルム状焼成材料12に半導体チップ9を貼付するため、不具合がある半導体チップの使用を避けることによって、フィルム状焼成材料12には確実に不具合が無い半導体チップ9を貼付できる。したがって、フィルム状焼成材料12が無駄になることが無く、フィルム状焼成材料12の歩留まりが良好となる。
【0072】
<工程C>
工程Cは、工程Bの後に行う。
工程Cにおいては、図3Cに示すように、フィルム状焼成材料12及び半導体チップ9を、支持シート11から剥離させる。このとき、フィルム状焼成材料12及び半導体チップ9は、互いに貼り合わされ、一体化された状態のまま、支持シート11から剥離させる。本実施形態においては、このように、半導体チップと、前記半導体チップの裏面に設けられたフィルム状焼成材料と、を備えたものを「フィルム状焼成材料付き半導体チップ」と称することがある。図3C中では、フィルム状焼成材料付き半導体チップに符号90を付している。図3C中の矢印Pは、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90を剥離させる方向を示している。
なお、ここでは、一部のフィルム状焼成材料付き半導体チップ90の、支持シート11からの剥離が、完了していない段階での工程Cの様子を示している。
【0073】
工程Cにおいては、ここに示すように、支持シート11をエキスパンドすることで、支持シート11とフィルム状焼成材料12との界面に応力を発生させ、フィルム状焼成材料12及び半導体チップ9(すなわち、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90)を、支持シート11から剥離させることが好ましい。このようにすることで、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90を容易かつ高精度に、支持シート11から剥離させることができる。図3C中の矢印Eは、支持シート11をエキスパンドする方向を示している。
【0074】
支持シート11をエキスパンドする方法としては、半導体装置の製造の分野で半導体加工用等のシートをエキスパンドする公知の方法を適用できる。例えば、支持シート11を、その外周に沿って、外周よりもやや内側において固定し、この固定部位よりもさらに内側の高さを、前記固定部位よりも外側の高さよりも相対的に高くすることによって、支持シート11をエキスパンドする方法が挙げられる。
【0075】
フィルム状焼成材料付き半導体チップ90の支持シート11からの剥離は、例えば、コレットを用いる方法等、半導体チップを固定及び移動させる公知の方法を採用できる。
【0076】
工程Cにおいては、例えば、支持シート11の第1面11aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)11b側から、支持シート11越しに、支持シート11からフィルム状焼成材料付き半導体チップ90へ向かう方向に、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90に対して力を加えて突き上げることによって、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90を支持シート11から剥離させてもよい。このようにすることで、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90を、さらに容易かつ高精度に、支持シート11から剥離させることができる。
なお、支持シート11の第2面11bは、基材フィルム111の第1面111aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)111bと同じである。
【0077】
フィルム状焼成材料付き半導体チップ90を突き上げる方法としては、例えば、ニードルを用い、その先端部を支持シート11へ当接させて、上述の方向(支持シート11からフィルム状焼成材料付き半導体チップ90へ向かう方向)にニードルを移動させることで、突き上げる方法(例えば、日本国特許第2658915号公報、日本国特許第2635889号公報参照);ニードルレススライダーを用い、その先端部を支持シート11へ当接させて、上述の方向に支持シート11を突き上げた状態としたニードルレススライダーを、支持シート11の第2面11bに沿って移動(スライド)させることにより、突き上げる方法(例えば、国際公開第2005/029574号参照);上下動によって突出状態及び非突出状態を実現する3個の突出ブロックが並列配置されている突出部を用い、その先端部を支持シート11へ当接させて、3個の突出ブロックを上述の方向において距離を変えて移動させ、3個の突出ブロックの先端部をピラミッド状とすることにより、突き上げる方法(例えば、国際公開第2011/125492号参照)が挙げられる。
【0078】
支持シート11が、先に説明したように、基材フィルム111及び粘着剤層112を備えており、粘着剤層112がエネルギー線硬化性を有する場合には、工程Cにおいては、粘着剤層112にエネルギー線を照射し、フィルム状焼成材料12及び半導体チップ9(すなわち、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90)を、支持シート11(ここでは、より具体的には、粘着剤層112の硬化物)から剥離させることが好ましい。この場合、粘着剤層112をエネルギー線の照射によって硬化させることにより、粘着剤層112の硬化物とフィルム状焼成材料12との粘着力が小さくなるため、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90を、より容易に支持シート11から剥離させることができる。
【0079】
本実施形態では、工程A、工程B及び工程Cのうちの1~3工程において、支持シート11中の粘着剤層112(より具体的には、粘着剤層112の第1面112a)のうち、その周縁部を支持フレーム(図示略)に貼り合わせることによって、支持シート11を支持フレームに一時的に固定することができる。その場合には、粘着剤層112の支持フレームへの貼り合わせを阻害しないように、粘着剤層112の第1面112aのうち、周縁部の上部を開放しておく。ここで、粘着剤層112の第1面112aの周縁部とは、先に説明した基材フィルム111の第1面111aの周縁部1110aと同様に、粘着剤層112の第1面112aのうち、粘着剤層112の外周部に沿った幅の狭い領域である。
【0080】
<工程D>
工程Dは、工程Cの後に行う。
工程Dにおいては、図3Dに示すように、フィルム状焼成材料12が貼付された半導体チップ9(すなわち、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90)のフィルム状焼成材料12の側を、基板8に貼付する。本明細書において「フィルム状焼成材料付き半導体チップ90のフィルム状焼成材料12の側」とは、フィルム状焼成材料12の半導体チップ9側とは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)12bと同じである。図3D中の矢印Mは、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90の、基板8への貼付時の移動方向を示している。
なお、ここでは、一部のフィルム状焼成材料付き半導体チップ90の、基板8への貼付が、完了していない段階での工程Dの様子を示している。
【0081】
フィルム状焼成材料付き半導体チップ90の基板8への貼付は、例えば、コレットを用いる方法等、半導体チップを固定及び移動させる公知の方法を採用できる。
【0082】
本実施形態においては、工程Cによる、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90の支持シート11からの剥離が、すべてのフィルム状焼成材料付き半導体チップ90において終了した時点以降に、工程Dによる、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90の基板8への貼付を開始してもよいし、工程Cによる、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90の支持シート11からの剥離が、すべてのフィルム状焼成材料付き半導体チップ90において終了する以前に、工程Dによる、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90の基板8への貼付を開始してもよい。そして、後者の場合、工程Cで1個のフィルム状焼成材料付き半導体チップ90を、支持シート11から剥離させた後、直ちに工程Dを行って、この剥離させたフィルム状焼成材料付き半導体チップ90を基板8に貼付し、1個のフィルム状焼成材料付き半導体チップ90について、この工程C及び工程Dを続けて行う操作を、すべてのフィルム状焼成材料付き半導体チップ90に適用して、繰り返し行うことが好ましい。
【0083】
<工程E>
工程Eは、工程Dの後に行う。
工程Eにおいては、フィルム状焼成材料12を200℃以上に加熱することで、図3Eに示すように、半導体チップ9と基板8とを焼結結合させる。
工程Eを行うことにより、フィルム状焼成材料12の焼成によって、フィルム状焼成材料12から接合部12’が形成され、接合部12’を介して半導体チップ9と基板8が積層されて構成された積層体801が得られる。
【0084】
工程Eにおいて、フィルム状焼成材料12の加熱温度の上限値は、特に限定されない。例えば、半導体チップ9の表面に形成されている配線の加熱によるダメージを抑制する点では、フィルム状焼成材料12の加熱温度は、500℃以下であることが好ましい。一方、加熱温度が前記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料12の焼成度がより向上する。
【0085】
工程Eにおいて、フィルム状焼成材料12の加熱時間は、フィルム状焼成材料12の種類と、前記加熱温度を考慮して、適宜選択できるが、1~60分であることが好ましい。加熱時間が前記下限値以上であることで、フィルム状焼成材料12の焼成度がより向上する。加熱時間が前記上限値以下であることで、過剰な加熱が抑制される。
【0086】
工程Eにおいては、フィルム状焼成材料12を加熱するとともに、加圧してもよい。このようにすることで、半導体チップ9と基板8の接合強度と、接合部12’自体の強度を、より向上させることができる。
このときのフィルム状焼成材料12の加圧は、基板8側から行ってもよいし、半導体チップ9側から行ってもよいし、基板8側と半導体チップ9側の両側から行ってもよい。
【0087】
フィルム状焼成材料12の加圧時の圧力は、特に限定されないが、5MPa以上であることが好ましい。前記圧力がこのような範囲であることにより、加圧により得られる効果がより高くなる。
すなわち、工程Eにおいては、フィルム状焼成材料12を200℃以上に加熱するとともに、5MPa以上で加圧することで、半導体チップ9と基板8とを焼結結合させてもよい。
【0088】
工程Eにおいて、フィルム状焼成材料12を加熱するとともに加圧する場合の、圧力の上限値は、特に限定されない。例えば、基板8、特にセラミック基板である基板8の破損を抑制する点では、前記圧力は、50MPa以下であることが好ましい。
【0089】
本実施形態において、接合部12’は、フィルム状焼成材料12から形成されているため、その厚さ安定性及び熱伝導性に優れている。また、フィルム状焼成材料12が半導体チップ9と同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさであったため、フィルム状焼成材料12を半導体チップ9の形状及び大きさに合わせて切断する必要がなく、フィルム状焼成材料12が脆くても、フィルム状焼成材料12由来の切断屑が生じず、フィルム状焼成材料12の破損が抑制され、破損のない接合部12’が形成される。
積層体801は、電力用半導体素子(パワーデバイス)を構成するのに好適である。
【0090】
本実施形態の製造方法は、ここまでに説明したものに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。より具体的には、以下のとおりである。
【0091】
ここまでは、支持シートの形状が四角形である場合の積層体の製造方法について説明したが、本実施形態で用いる支持シートの形状は、円形であってもよい。図5は、その場合の支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す平面図である。
【0092】
ここに示す支持シート21と支持シート付きフィルム状焼成材料2の形状は円形である。
支持シート21中の基材フィルム(図示略)は、その形状が円形である点を除けば、支持シート11中の基材フィルム111と同じであり、支持シート21中の粘着剤層212は、その形状が円形である点を除けば、支持シート11中の粘着剤層112と同じである。
粘着剤層212の基材フィルム側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)212aは、支持シート21の第1面21aと同じである。
【0093】
支持シート21の第1面21aには、直交する2方向に4~8列と3~9列、合計で56枚のフィルム状焼成材料12が設けられている。
【0094】
図5に示す支持シート21でのフィルム状焼成材料12の配置形態は、フィルム状焼成材料12の列数、1列あたりのフィルム状焼成材料12の枚数、及びフィルム状焼成材料12の合計枚数が異なる点を除けば、支持シート11でのフィルム状焼成材料12の配置形態と同じである。
【0095】
図5に示す支持シート付きフィルム状焼成材料2は、支持シートが円形である場合の支持シート付きフィルム状焼成材料の一例であり、本実施形態で作製する円形の支持シート付きフィルム状焼成材料は、ここに示すものに限定されない。
例えば、円形の支持シート付きフィルム状焼成材料においては、支持シート上でのフィルム状焼成材料の向き、配置位置及び列数、1列あたりのフィルム状焼成材料の枚数、並びにフィルム状焼成材料の合計枚数、等の配置形態は、目的に応じて任意に設定できる。
【0096】
支持シート21を用いる場合の、前記積層体の製造方法は、支持シート11に代えて支持シート21を用いる点を除けば、上述の積層体の製造方法と同じである。
【0097】
例えば、支持シート21を用いる場合、工程A、工程B及び工程Cのうちの1~3工程において、支持シート21中の粘着剤層212(より具体的には、粘着剤層212の第1面212a)のうち、その周縁部を支持フレーム(図示略)に貼り合わせることによって、支持シート21を支持フレームに一時的に固定することができる。その場合には、粘着剤層212の支持フレームへの貼り合わせを阻害しないように、粘着剤層212の第1面212aのうち、周縁部の上部を開放しておく。ここで、粘着剤層212の第1面212aの周縁部とは、先に説明した粘着剤層112の場合と同様であり、粘着剤層212の第1面212aのうち、粘着剤層212の外周部に沿った幅の狭い領域である。
【0098】
本実施形態で用いる支持シートの形状は、帯状であってもよい。図6は、その場合の支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す平面図である。
【0099】
ここに示す支持シート31と支持シート付きフィルム状焼成材料3の形状は帯状である。
支持シート31中の基材フィルム(図示略)は、その形状が帯状である点を除けば、支持シート11中の基材フィルム111と同じであり、支持シート31中の粘着剤層312は、その形状が帯状である点を除けば、支持シート11中の粘着剤層112と同じである。
粘着剤層312の基材フィルム側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)312aは、支持シート31の第1面31aと同じである。
【0100】
支持シート31の第1面31aには、支持シート31の長手方向に1列に、2枚以上のフィルム状焼成材料12が設けられている。
支持シート31上で、すべてのフィルム状焼成材料12の向きは一致しており、前記長手方向においては、フィルム状焼成材料12が一定間隔に並んで設けられている。また、前記長手方向に直交する方向において、すべてのフィルム状焼成材料12の配置位置が互いに一致している。
【0101】
支持シート31上に設けられているフィルム状焼成材料12の枚数は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。例えば、前記枚数は5~10000であってもよい。
支持シート31上の、フィルム状焼成材料12の列数は、1以外(すなわち2以上)であってもよい。前記列数が2以上である場合、フィルム状焼成材料12は、支持シート31上に格子状に並んで設けられていてもよい。
【0102】
支持シート31でのフィルム状焼成材料12の配置形態は、フィルム状焼成材料12の列数、1列あたりのフィルム状焼成材料12の枚数、及びフィルム状焼成材料12の合計枚数が異なり得る点を除けば、支持シート11でのフィルム状焼成材料12の配置形態と同じである。
【0103】
図6に示す支持シート付きフィルム状焼成材料3は、支持シートが帯状である場合の支持シート付きフィルム状焼成材料の一例であり、本実施形態で作製する帯状の支持シート付きフィルム状焼成材料は、ここに示すものに限定されない。
例えば、帯状の支持シート付きフィルム状焼成材料においては、支持シート上でのフィルム状焼成材料の向き、配置位置及び列数、1列あたりのフィルム状焼成材料の枚数、並びにフィルム状焼成材料の合計枚数、等の配置形態は、目的に応じて任意に設定できる。
【0104】
支持シート31を用いる場合の、前記積層体の製造方法は、支持シート11に代えて支持シート31を用いる点を除けば、上述の積層体の製造方法と同じである。
【0105】
本実施形態においては、工程Aを行うことによって得られた支持シート付きフィルム状焼成材料は、保管に適している。
例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料として、フィルム状焼成材料の第1面に、さらに保護フィルムを備えたものは、特に保管に適している。
【0106】
すなわち、本実施形態の製造方法は、工程Aと工程Bとの間に、前記フィルム状焼成材料の前記支持シート側とは反対側の面(第1面)に、保護フィルムを貼付する工程(本明細書においては、「工程F1」と称することがある)と、前記保護フィルムを貼付後の前記支持シート及びフィルム状焼成材料(支持シート付きフィルム状焼成材料)を保管する工程(本明細書においては、「工程F2」と称することがある)と、前記保護フィルムが貼付されている、保管後の前記支持シート上の前記フィルム状焼成材料(保管後の支持シート付きフィルム状焼成材料)から、前記保護フィルムを剥離させる工程(本明細書においては、「工程F3」と称することがある)と、を含んでいてもよい。
【0107】
前記保護フィルムは、支持シート付きフィルム状焼成材料中のフィルム状焼成材料を保護するためのものである。保護フィルムとしては、先に挙げた剥離フィルムと同様のものが挙げられる。
【0108】
図7は、支持シート11を用いた場合の、保護フィルムを備えた、支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す支持シート付きフィルム状焼成材料1は、フィルム状焼成材料12の第1面12a上に、保護フィルム7を備えている。保護フィルム7は、支持シート付きフィルム状焼成材料1中のすべてのフィルム状焼成材料12の第1面12aを被覆できれば、その形状及び大きさは、特に限定されない、例えば、保護フィルム7を備えた状態での支持シート付きフィルム状焼成材料1の取り扱い性が向上する点では、保護フィルム7の形状(平面形状)は、支持シート11の形状(平面形状)と同じであってもよい。
【0109】
支持シートの形状が、支持シート11の場合のように四角形ではなく、例えば、支持シート21の場合のように円形である場合や、支持シート31の場合のように帯状である場合も、保護フィルムを備えた、支持シート付きフィルム状焼成材料は、その形状を除けば、保護フィルムを備えた、支持シート付きフィルム状焼成材料1と同様の構造を有する。
【0110】
保護フィルムを備え、支持シートの形状が四角形又は円形である支持シート付きフィルム状焼成材料(例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料1又は支持シート付きフィルム状焼成材料2)は、例えば、その複数枚をその厚さ方向において重ねて保管できる。
また、このような支持シート付きフィルム状焼成材料は、例えば、その1枚を捲回することによって、ロール状として保管できる。
【0111】
例えば、保護フィルムを備え、支持シートの形状が帯状である支持シート付きフィルム状焼成材料(例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料3)は、その1枚(1本)を捲回することによって、リール状として保管するのに、特に適している。
すなわち、支持シートの形状が帯状である場合には、前記工程F2は、前記保護フィルムを貼付後の前記支持シート及びフィルム状焼成材料(支持シート付きフィルム状焼成材料)を、リール状に捲回して保管する工程、であってもよい。そして、前記工程F3は、前記保護フィルムが貼付されている、保管後の前記支持シート及び前記フィルム状焼成材料(保管後の支持シート付きフィルム状焼成材料)を、リール状から繰り出し、次いで、前記フィルム状焼成材料から、前記保護フィルムを剥離させる工程、であってもよい。
【0112】
図8は、支持シート31を用いた場合の、保護フィルムを備えた、支持シート付きフィルム状焼成材料の一例を模式的に示す断面図である。ここでは、保護フィルムを備えた、リール状の支持シート付きフィルム状焼成材料3が、繰り出されている状態を示している。
ここに示す支持シート付きフィルム状焼成材料3は、フィルム状焼成材料12の第1面12a上に、保護フィルム7を備えている。
支持シート付きフィルム状焼成材料3は、保護フィルム7の露出面をリールの径方向内側へ向け、支持シート11の露出面(第2面11b)をリールの径方向外側へ向けて、支持シート11を外巻き(換言すると保護フィルム7を内巻き)にして、リール状に捲回されている。
【0113】
支持シートの形状が四角形又は円形である支持シート付きフィルム状焼成材料(例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料1又は支持シート付きフィルム状焼成材料2)が、1本(1枚)の帯状の保護フィルム(例えば、保護フィルム7)に対して、その長手方向に複数枚貼り合わされたもの(以下、「帯状の複合フィルム」と称する)も、上述の支持シートの形状が帯状である支持シート付きフィルム状焼成材料の場合と同様に、その1本を捲回することによって、リール状として保管するのに、特に適している。この場合も、この帯状の複合フィルムは、保護フィルムの露出面をリールの径方向内側へ向け、支持シートの露出面(第2面)をリールの径方向外側へ向けて、支持シートを外巻き(換言すると保護フィルムを内巻き)にして、リール状に捲回される。
1本の帯状の保護フィルムに対して、その長手方向に複数枚貼り合わされた支持シート付きフィルム状焼成材料は、1本の保護フィルムの長手方向において、1列に配置されていてもよいし、2列以上に配置されていてもよい。
また、このように列状に配置されている複数枚の支持シート付きフィルム状焼成材料は、互いに離間して配置されていることが好ましい。
【0114】
帯状の複合フィルムを用いる場合には、前記工程F1は、前記フィルム状焼成材料が設けらた複数枚の支持シート(すなわち複数枚の支持シート付きフィルム状焼成材料)を、その前記フィルム状焼成材料の前記支持シート側とは反対側の面(第1面)によって、1本の帯状の保護フィルムに列状に貼付する工程、であってもよい。また、前記工程F2は、前記フィルム状焼成材料が設けらた複数枚の支持シート(複数枚の支持シート付きフィルム状焼成材料)が貼付された前記帯状の保護フィルムを、リール状に捲回して保管する工程、であってもよい。そして、前記工程F3は、前記フィルム状焼成材料が設けらた複数枚の支持シート(複数枚の支持シート付きフィルム状焼成材料)が貼付された、保管後の前記帯状の保護フィルムを、リール状から繰り出し、次いで、複数枚の前記フィルム状焼成材料から、前記帯状の保護フィルムを剥離させる工程、であってもよい。
【0115】
支持シートの形状によらず、工程F1、工程F2及び工程F3は、この順に行う。
工程F1における、フィルム状焼成材料への保護フィルムの貼付(フィルム状焼成材料の保護フィルムへの貼付)と、工程F2における、支持シート付きフィルム状焼成材料の保管と、工程F3における、保管後の支持シート付きフィルム状焼成材料からの保護フィルムの剥離は、いずれも公知の方法で行うことができる。
【0116】
次に、図2A及び図2Bに示す支持シート19を用いた場合を例に挙げて、前記積層体の製造方法(本明細書においては、「第2実施形態」と称することがある)について説明する。
図9A図9Eは、本実施形態の積層体の製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。
【0117】
・第2実施形態
<工程A>
工程Aにおいては、図9Aに示すように、支持シート19上にフィルム状焼成材料12を設け、支持シート付きフィルム状焼成材料6を作製する。
【0118】
上述のとおり、支持シート19において、粘着剤層192は、基材フィルム111の第1面111aのうち、周縁部1110aに設けられている。そして、工程Aにおいては、より具体的には、支持シート19の基材フィルム111上(基材フィルム111の第1面111a)のうち、粘着剤層192が設けられていない領域に、フィルム状焼成材料12を設ける。
【0119】
第2実施形態における工程Aは、上述のように、フィルム状焼成材料12を設ける対象が異なる点以外は、第1実施形態における工程Aと同じである。
例えば、第2実施形態の工程Aにおいては、ここに示すように、支持シート19の第1面19aに、フィルム状焼成材料12を直接接触させることが好ましい。
【0120】
図10は、第2実施形態の製造方法によって得られた、支持シート付きフィルム状焼成材料6の一例を模式的に示す平面図である。
ここに示す支持シート19の形状は四角形であり、支持シート19の第1面19aには、支持シート付きフィルム状焼成材料1の場合と同じ配置形態で、フィルム状焼成材料12が格子状に配置されている。ただし、すべてのフィルム状焼成材料12が、支持シート19上において、粘着剤層192よりも内側(換言すると、支持シート19の重心側)に設けられている。
なお、支持シート19の第1面19aは、基材フィルム111の第1面111aと同じである。
【0121】
<工程B>
工程Bは、工程Aの後に行う。
工程Bにおいては、図9Bに示すように、支持シート19上のフィルム状焼成材料12に、半導体チップ9の裏面9b側を向い合せに貼付する。ここでも、フィルム状焼成材料12の第1面12aと、半導体チップ9の裏面9bと、を貼り合わせる。
第2実施形態における工程Bは、上述のように支持シート付きフィルム状焼成材料が異なる点以外は、第1実施形態における工程Bと同じである。
【0122】
<工程C>
工程Cは、工程Bの後に行う。
工程Cにおいては、図9Cに示すように、フィルム状焼成材料12及び半導体チップ9を、支持シート19から剥離させる。このとき、フィルム状焼成材料12及び半導体チップ9は、互いに貼り合わされ、一体化された状態のまま、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90として、支持シート19から剥離させる。
ここでも、図3Cの場合と同様に、一部のフィルム状焼成材料付き半導体チップ90の、支持シート19からの剥離が、完了していない段階での工程Cの様子を示している。
【0123】
第2実施形態における工程Cは、上述のように支持シート付きフィルム状焼成材料が異なる点以外は、第1実施形態における工程Cと同じである。
例えば、第2実施形態の工程Cにおいては、ここに示すように、支持シート19をエキスパンドすることで、支持シート19とフィルム状焼成材料12との界面に応力を発生させ、フィルム状焼成材料12及び半導体チップ9(すなわち、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90)を、支持シート19から剥離させることが好ましい。
ただし、第2実施形態においては、フィルム状焼成材料12が粘着剤層192ではなく基材フィルム111に接触しているため、粘着剤層192がエネルギー線硬化性を有していても、粘着剤層112をエネルギー線の照射によって硬化させることにより、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90を、より容易に支持シート19から剥離させることはできない。
【0124】
第2実施形態では、工程A、工程B及び工程Cのうちの1~3工程において、支持シート19中の粘着剤層192を支持フレーム(図示略)に貼り合わせることによって、支持シート19を支持フレームに一時的に固定することができる。その場合には、粘着剤層192の支持フレームへの貼り合わせを阻害しないように、粘着剤層192の第1面192a上を開放しておく。
【0125】
粘着剤層192がエネルギー線硬化性を有する場合には、支持フレームへ固定されている支持シート19を支持フレームから剥離させる前に、粘着剤層192にエネルギー線を照射することが好ましい。この場合、粘着剤層192をエネルギー線の照射によって硬化させることにより、粘着剤層192の硬化物と支持フレームとの粘着力が小さくなるため、支持シート19をより容易に、支持フレームから剥離させることができる。
【0126】
<工程D、工程E>
工程Dは工程Cの後に行い、工程Eは工程Dの後に行う。
工程Dにおいては、図9Dに示すように、フィルム状焼成材料12が貼付された半導体チップ9(すなわち、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90)のフィルム状焼成材料12の側を、基板8に貼付する。
ここでも、図3Dの場合と同様に、一部のフィルム状焼成材料付き半導体チップ90の、基板8への貼付が、完了していない段階での工程Dの様子を示している。
そして、工程Eにおいては、フィルム状焼成材料12を200℃以上に加熱することで、図9Eに示すように、半導体チップ9と基板8とを焼結結合させる。
工程Eを行うことにより、フィルム状焼成材料12の焼成によって、フィルム状焼成材料12から接合部12’が形成され、接合部12’を介して半導体チップ9と基板8が積層されて構成された積層体801が得られる。
第2実施形態においては、上記の工程Cによって、第1実施形態の場合と同様に、フィルム状焼成材料付き半導体チップ90が得られる。したがって、第2実施形態の工程Dは、第1実施形態の工程Dと同じであり、第2実施形態の工程Eは、第1実施形態の工程Eと同じである。
【0127】
第2実施形態においても、接合部12’は、フィルム状焼成材料12から形成されているため、その厚さ安定性及び熱伝導性に優れている。また、フィルム状焼成材料12が半導体チップ9と同形もしくは略同形であってかつ同じ大きさであったため、フィルム状焼成材料12を半導体チップ9の形状及び大きさに合わせて切断する必要がなく、フィルム状焼成材料12が脆くても、フィルム状焼成材料12由来の切断屑が生じず、フィルム状焼成材料12の破損が抑制され、破損のない接合部12’が形成される。
【0128】
第2実施形態の製造方法は、ここまでに説明したものに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。より具体的には、以下のとおりである。
【0129】
第2実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、支持シートの形状は、四角形以外に、例えば、円形又は帯状であってもよい。ただし、いずれの場合も、上記のとおり、すべてのフィルム状焼成材料は、支持シート上において、粘着剤層よりも内側(換言すると、支持シートの重心側)に設けられている。
【0130】
第2実施形態においても、工程Aを行うことによって得られた支持シート付きフィルム状焼成材料は、保管に適している。
例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料として、フィルム状焼成材料の第1面に、さらに保護フィルムを備えたものは、特に保管に適している。
【0131】
すなわち、第2実施形態の製造方法は、工程Aと工程Bとの間に、前記フィルム状焼成材料の前記支持シート側とは反対側の面(第1面)上に、保護フィルムを貼付する工程(工程F1)と、前記保護フィルムを貼付後の前記支持シート及びフィルム状焼成材料(支持シート付きフィルム状焼成材料)を保管する工程(工程F2)と、前記保護フィルムが貼付されている、保管後の前記支持シート上の前記フィルム状焼成材料(保管後の支持シート付きフィルム状焼成材料)から、前記保護フィルムを剥離させる工程(工程F3)と、を含んでいてもよい。
【0132】
第2実施形態における工程F1、工程F2及び工程F3は、用いる支持シートが異なる点以外は、第1実施形態における工程F1、工程F2及び工程F3と同じである。
第2実施形態における工程F1においては、前記フィルム状焼成材料の第1面だけでなく、粘着剤層の第1面(例えば、粘着剤層192の第1面192a)にも、保護フィルムを貼付してもよいし、貼付しなくてもよい。
【0133】
第2実施形態における、保護フィルムを備えた支持シート付きフィルム状焼成材料(例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料6)は、第1実施形態における、保護フィルムを備えた支持シート付きフィルム状焼成材料(例えば、支持シート付きフィルム状焼成材料1~3)の場合と同じ方法で、保管できる。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、電力用半導体素子(パワーデバイス)の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0135】
1,2,3,6・・・支持シート付きフィルム状焼成材料、11,19,21,31・・・支持シート、11a,19a,21a,31a・・・支持シートの第1面、111・・・基材フィルム、111a・・・基材フィルムの第1面、112,212,192,312・・・粘着剤層、112a,212a,192a,312a・・・粘着剤層の第1面、12・・・フィルム状焼成材料、12a・・・フィルム状焼成材料の第1面、12b・・・フィルム状焼成材料12の第2面、12’・・・接合部、8・・・基板、9・・・半導体チップ、9b・・・半導体チップ9の裏面、90・・・フィルム状焼成材料付き半導体チップ、801・・・積層体
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10