(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】光学フィルム及び光学積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2021569452
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 IB2020054788
(87)【国際公開番号】W WO2020234801
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-18
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ハーグ,アダム ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,イ-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ツェ ユアン
(72)【発明者】
【氏名】松田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】トイ,ミッシェル エル.
(72)【発明者】
【氏名】エイスミン,ライアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデロフスク,ジョン エフ.サード
(72)【発明者】
【氏名】マクダニエル,ディヴィッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,マシュー ビー.
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105923(JP,A)
【文献】国際公開第2017/205106(WO,A1)
【文献】特開2017-204000(JP,A)
【文献】特表2017-521700(JP,A)
【文献】特開2015-030765(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101230(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0099411(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線吸収偏光子と、
前記直線吸収偏光子上に配置され、前記直線吸収偏光子に結合されている反射偏光子と、を備え、
実質的な垂直入射光に対して、かつ378nm~715nmにわたる可視波長範囲の少なくとも第1の波長に対して、
前記反射偏光子が、第1の偏光状態に対する少なくとも60%の光反射率と、直交する第2の偏光状態に対する少なくとも60%の光透過率とを有し、
前記直線吸収偏光子が、前記第1の偏光状態に対する少なくとも60%の光吸収率と、前記第2の偏光状態に対する少なくとも60%の光透過率とを有し、
摂氏105度で15分間加熱された場合、前記第1の偏光状態に沿った、前記反射偏光子および前記直線吸収偏光子の収縮率をそれぞれSR1、SL1とするとき、SR1-SL1が、ゼロから|SR1|および|SL1|のいずれか小さい値の10%を減じた値よりも大きく、前記第2の偏光状態に沿った、前記反射偏光子および前記直線吸収偏光子の収縮率をそれぞれSR2、SL2とするとき、SR2-SL2が、0.2%から|SR2|および|SL2|のいずれか小さい値の10%を減じた値よりも大きく、
前記反射偏光子が、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、少なくとも前記第1の波長に対して、前記第1のポリマー層が、前記第2のポリマー層よりも小さい平均面内屈折率を有し、前記第1のポリマー層が、等方性でありかつ少なくとも摂氏107度のガラス転移温度を有する、光学積層体。
【請求項2】
前記第1のポリマー層が、少なくとも摂氏109度のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記第1のポリマー層が、少なくとも摂氏115度のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層内の各層が、厚さ550nm未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記反射偏光子の前記複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層が、前記反射偏光子の互いに反対側にある2個の最外層の間に配置されており、各最外層が、0.45ミクロン~5.5ミクロンの厚さを有する、請求項4に記載の光学積層体。
【請求項6】
少なくとも前記第2のポリマー層が、実質的に一軸配向されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項7】
実質的な垂直入射光に対して、かつ少なくとも前記第1の波長に対して、前記複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層が、前記第1の偏光状態に対する72%超の光反射率と、前記第2の偏光状態に対する76.5%超の光透過率と、前記第1の偏光状態に対する0.11%未満の光透過率とを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記反射偏光子と前記直線吸収偏光子とが、接着剤で一体に結合されており、前記接着剤が、11kPa未満の、摂氏105度における貯蔵弾性率G’と、摂氏105度における損失弾性率G”であって、前記貯蔵弾性率G’に対する前記損失弾性率G”の比が、少なくとも0.45であるような、損失弾性率G”とを有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
偏光子積層体は、一体に結合されている吸収偏光子と反射偏光子とを含み得る。そのような偏光子積層体は、ディスプレイ用途において使用され得る。
【発明の概要】
【0002】
本明細書のいくつかの態様では、直線吸収偏光子と、直線吸収偏光子上に配置され、直線吸収偏光子に結合されている反射偏光子と、を含む、光学積層体が提供されている。実質的な垂直入射光に対して、かつ約420nm~約650nmにわたる可視波長範囲の少なくとも第1の波長に対して、反射偏光子は、第1の偏光状態に対する少なくとも60%の光反射率と、直交する第2の偏光状態に対する少なくとも60%の光透過率とを有し、直線吸収偏光子は、第1の偏光状態に対する少なくとも60%の光吸収率と、第2の偏光状態に対する少なくとも60%の光透過率とを有する。摂氏105度で15分間加熱された場合、第1の偏光状態及び第2の偏光状態に沿った、反射偏光子と直線吸収偏光子との収縮率の差は、それぞれ、約ゼロ超及び約0.2%超である。反射偏光子は、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、少なくとも第1の波長に対して、第1のポリマー層は、第2のポリマー層よりも小さい平均面内屈折率を有する。第1のポリマー層は、少なくとも摂氏107度のガラス転移温度を有する。
【0003】
本明細書のいくつかの態様では、一体形成された光学フィルムが提供されている。一体形成された光学フィルムは、互いに反対側にある2個の最外ポリマー層の間に配置されている、合計で少なくとも50個の、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含む。第1のポリマー層及び第2のポリマー層のそれぞれは、厚さ約400nm未満であり、各最外ポリマー層は、厚さ約500nm超である。第1のポリマー層は、少なくとも摂氏107度のガラス転移温度を有し、第2のポリマー層よりも小さい平均面内屈折率を有する。一体形成された光学フィルムの2つの部分間の最小平均剥離強度は、約0.4N/cm超であり、2つの部分のそれぞれは、最外ポリマー層のうちの一方を含む。いくつかの実施形態では、光学積層体は、直線吸収偏光子と、直線吸収偏光子上に配置され、直線吸収偏光子に結合されている、一体形成された光学フィルムと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図2】反射偏光子の通過軸及び直線吸収偏光子の通過軸の概略図である。
【
図6】反射偏光子の層厚さプロファイルを示すプロットである。
【
図7】
図6の反射偏光子に関する透過率対波長のプロットである。
【
図8】別の反射偏光子の層厚さプロファイルを示すプロットである。
【
図9】
図8の反射偏光子に関する透過率対波長のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し様々な実施形態が例示として示されている添付図面が参照される。図面は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。他の実施形態が想到され、本明細書の範囲又は趣旨から逸脱することなく実施されてもよい点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味で解釈されるべきでない。
【0006】
吸収偏光子と、光学フィルム及び/又は反射偏光子と、を含む、光学積層体は、様々なディスプレイ用途において有用である。例えば、液晶ディスプレイ(liquid crystal display;LCD)内の内側偏光子(観察者から離れる方向を向いている偏光子)は、バックライトに面する反射偏光子と、ディスプレイパネルに面する吸収偏光子と、を含む、光学積層体を含み得る。偏光子積層体、及びディスプレイ用途におけるそれらの使用は、例えば、米国特許第6,025,897号(Weberら)で概説されている。
【0007】
吸収偏光子と、従来の反射偏光子と、を有する、光学積層体を、ディスプレイ内で使用することに関する問題は、フィルムの層における波形/座屈を指すマイクロリンクル(micro-wrinkling)の現象である。そのようなマイクロリンクルは、光学積層体を構成要素にラミネートする間に生じ得る、又は、経時的に生じ得る。例えば、光学積層体は、自動車用途(例えば、自動車内のLCDディスプレイ)において使用される場合があり、その場合、光学積層体は、マイクロリンクルを引き起こし得る高温に晒される場合がある。マイクロリンクルは、多層フィルムの隣接する表面又は境界面が、互いに平行ではないことによって特徴付けられる。例えば、PCT出願国際公開第2017/205106号(Stoverら)及び対応する米国特許出願第16/301106号に記載されているように、マイクロリンクルは、反射偏光子フィルムの収縮率を増大させることによって低減され得、それにより、高温に晒された場合の、吸収偏光子の収縮に起因する、反射偏光子フィルム内での圧縮応力の形成が回避される。
【0008】
多層光学フィルム(例えば、反射偏光子フィルム)は、典型的には、交互する高屈折率層及び低屈折率層を含む。本明細書によれば、低屈折率層用に選択される従来のポリマーよりも高いガラス転移温度を有する、低屈折率層用のポリマーを選択することによって、マイクロリンクルは低減され得ることが見出された。従来は、多層フィルムが、隣接する層間における十分な層間剥離抵抗又は剥離強度を有するためには、低屈折率層は、比較的低いガラス転移温度(例えば、摂氏105度以下)を有するべきであると考えられてきた。しかしながら、現在は、より高いガラス転移温度を有する低屈折率層を使用することにより、許容可能な層間剥離抵抗が提供され得、マイクロリンクルの低減がもたらされ得ることが見出された。また、多層光学フィルムを吸収偏光子に結合するために使用される接着剤はマイクロリンクルを低減するように選択され得ることが見出された。例えば、低い貯蔵弾性率及び/又は高いtanδを有する接着剤は、マイクロリンクルを低減することができることが見出された。反射偏光子若しくは光学フィルムと吸収偏光子との相対収縮率を選択すること、低屈折率層のガラス転移温度を選択すること、又は接着剤を選択することの任意の組み合わせは、マイクロリンクルを低減するために使用され得る。
【0009】
図1は、直線吸収偏光子110と、直線吸収偏光子120上に配置され、直線吸収偏光子120に結合されている光学フィルム及び/又は反射偏光子110と、を含む、光学積層体100の概略断面図である。図示の実施形態では、光学フィルム及び/又は反射偏光子110と、直線吸収偏光子120とは、接着剤130で一体に結合されている。いくつかの実施形態では、光学フィルム及び/又は反射偏光子110は、一体形成された光学フィルムである。いくつかの実施形態では、一体形成された光学フィルムは、直線吸収偏光子の通過軸と実質的に整列している通過軸を有する、反射偏光子である。
【0010】
図2は、反射偏光子の通過軸112及び直線吸収偏光子の通過軸122の概略図である。通過軸112と通過軸122との間の角度θが示されている。通過軸は、例えば、角度が約30度未満である場合、実質的に整列しているとして説明され得る。いくつかの実施形態では、角度θは、約30度未満、又は約10度未満、又は約5度未満、又は約3度未満である。
【0011】
いくつかの実施形態では、光学積層体100は、接着剤130で一体に結合されている、反射偏光子110と直線吸収偏光子120とを含み、接着剤130は、約10kPa未満の、摂氏105度における貯蔵弾性率G’と、摂氏105度における損失弾性率G”であって、貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の比(tanδ)が、少なくとも約0.4、又は少なくとも約0.5、又は少なくとも約0.6であるような、損失弾性率G”とを有する。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、接着剤130は、約8kPa未満の、摂氏105度における貯蔵弾性率G’を有する。低い(例えば、約10kPa未満、又は約8kPa未満の)貯蔵弾性率及び/又は高い(少なくとも約0.4、又は少なくとも約0.5、又は少なくとも約0.6の)tanδを有する接着剤を使用することにより、光学積層体のマイクロリンクルが低減されることが見出された。弾性率G’及び弾性率G”は、例えば、動的機械分析(dynamic mechanical analysis;DMA)を使用して決定され得る。弾性率G’及び弾性率G”は、別段の指示がない限り、1Hzの周波数において決定される。弾性率は、例えば、ASTM D4065-12試験規格に従って決定され得る。
【0012】
いくつかの実施形態では、摂氏105度で15分間加熱された場合、直交する第1の偏光状態及び第2の偏光状態に沿った(例えば、
図3に示されている第1の偏光状態215及び第2の偏光状態219に平行な方向に沿った)、反射偏光子110と直線吸収偏光子120との収縮率の差は、それぞれ、約ゼロ超及び約0.2%超である(例えば、それぞれ、-0.01%超及び0.18%超、又はそれぞれ、0%超及び0.2%超、又はそれぞれ、0.01%超及び0.22%超である)。例えば、直線吸収偏光子120は、通過軸及びブロック軸に沿った、0.1%及び0.3%の収縮率を有し得、反射偏光子は、通過軸及びブロック軸に沿った、0.3%及び0.6%の収縮率を有し、それにより、通過軸及びブロック軸に沿った、反射偏光子と吸収偏光子との収縮率の差は、それぞれ、0.2%及び0.3%である。いくつかの実施形態では、第2の偏光状態に沿った、反射偏光子110と直線吸収偏光子120との収縮率の差は、約0.25%超、又は約0.3%超である。いくつかの実施形態では、第1の偏光状態に沿った、反射偏光子110と直線吸収偏光子120との収縮率の差は、約0.05%超、又は約0.1%超、又は約0.15%超である。収縮率の差は、各偏光状態に沿って、5%未満、又は3%未満、又は1%未満であり得る。これらの範囲の収縮率の差を有することにより、例えば、光学積層体を他の構成要素にラミネートする間の、又は高温でエージングする間の、光学積層体のマイクロリンクルの低減がもたらされることが見出された。収縮率の差は、本明細書の他の箇所で更に説明されているように、光学フィルム及び/又は反射偏光子110の収縮率を制御することによって、制御され得る。
【0013】
図3は、例えば、光学フィルム110又は直線吸収偏光子120に相当し得る光学部材250の概略断面図である。光学部材250は、直線吸収偏光子、光学フィルム、反射偏光子、又は、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層のうちの1つ以上であることができる。第1の波長λ1を有し、第1の偏光状態215を有する実質的な垂直(例えば、垂直の30度以内、又は20度以内、又は10度以内、又は5度以内の)入射光213が、概略的に示されている。入射光213の一部分233は反射され(光反射率×入射エネルギー)、入射光213の(矢印を有さない破線によって概略的に示されている一部分253は吸収され(光吸収率×入射エネルギー)、入射光213の一部分243は透過する(光透過率×入射エネルギー)。第1の波長λ1を有し、第1の偏光状態215に直交する第2の偏光状態219を有する実質的な垂直入射光217が、概略的に示されている。入射光217の一部分237は反射され(光反射率×入射エネルギー)、入射光217の一部分257は吸収され(光吸収率×入射エネルギー)、入射光217の一部分247は透過する(光透過率×入射エネルギー)。
【0014】
いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光に対して、かつ約420nm~約650nmにわたる可視波長範囲の少なくとも第1の波長に対して、反射偏光子は、第1の偏光状態215に対する少なくとも60%の光反射率と、直交する第2の偏光状態219に対する少なくとも60%の光透過率とを有し、直線吸収偏光子は、第1の偏光状態215に対する少なくとも60%の光吸収率と、第2の偏光状態219に対する少なくとも60%の光透過率とを有する。いくつかの実施形態では、反射偏光子は、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含む。いくつかの実施形態では、実質的な垂直入射光に対して、かつ少なくとも第1の波長に対して、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層は、第1の偏光状態215に対する約80%超の光反射率と、第2の偏光状態219に対する約85%超の光透過率と、第1の偏光状態215に対する約0.1%未満の光透過率とを有する。いくつかの実施形態では、直線吸収偏光子は、第1の偏光状態215に対する少なくとも70%の光吸収率と、第2の偏光状態219に対する少なくとも70%の光透過率とを有する。
【0015】
異なる屈折率を有するミクロ層を配置することによって、望ましい透過特性及び/又は反射特性を少なくとも部分的に提供する多層光学フィルムが既知である。そのような光学フィルムは、例えば、交互するポリマー層を共押出しすることと、フィルムダイを介してチルロール上に当該層をキャスティングすることと、次いで、キャストウェブを延伸することとによって実証されている。例えば、米国特許第3,610,729号(Rogers)、同第4,446,305号(Rogersら)、同第4,540,623号(Imら)、同第5,448,404号(Schrenkら)、同第5,882,774号(Jonzaら)、同第6,157,490号(Wheatleyら)、同第6,783,349号(Neavinら)、及び同第9,279,921号(Kivelら)、並びに国際出願公開第2018/163009号(Haagら)を参照されたい。これらのポリマー多層光学フィルムにおいては、ポリマー材料が、個々の層を作製する際に、主として又は排他的に使用され得る。そのようなフィルムは、大量生産プロセスと適合性があり、大型のシート及びロール物品として作製され得る。
【0016】
多層光学フィルムの収縮率は、フィルムの延伸の後のフィルムの冷却の間の応力を制御することによって、制御され得る。この冷却の間のより高い応力が、より大きい収縮率をもたらすことが概して見出された。いくつかの実施形態では、フィルムを延伸した後に、ヒートセットが適用される。ヒートセットは、米国特許第6,827,886号(Neavinら)に記載されているように、フィルムを配向するために使用されるテンターオーブンの最終ゾーンにおいて実施され得る。典型的には、そのようなヒートセットプロセスは、熱がその後にフィルムに加えられた場合のフィルムの収縮率を低減する又は最小にするために使用される。フィルムのその後の収縮率を最小にすることが所望される場合、ヒートセット温度は、テンター内でのフィルム破断をもたらさない最も高い温度に設定されてもよく、フィルムは、フィルムの張力を減少させるヒートセットゾーンの近傍で、横断方向において弛緩され得る。特に機械方向における(典型的には、光学フィルムが反射偏光子である場合、通過軸に沿った)より高い収縮率は、ヒートセット温度を低減すること、所与のヒートセット温度に関するヒートセット処理の持続時間を低減すること、及び/又は、ヒートセット工程を排除することによって、達成され得る。特に横断方向における(典型的には、光学フィルムが反射偏光子である場合、ブロック軸に沿った)より高い収縮率は、ブロック方向におけるフィルムの弛緩を低減することによって、達成され得る。これは、例えば、ヒートセット後のテンターレール間の間隔を調節することによって行われ得る。この間隔を低減することは、トーインと称される場合が多い。フィルムの収縮率に対するヒートセット温度及びトーインの効果は、例えば、米国特許出願第6,797,396号(Liuら)に記載されている。それゆえ、ヒートセット条件及びトーイン条件を制御することによって、光学フィルムが摂氏105度で15分間加熱された場合の、横断方向及び機械方向における所望の収縮率が達成され得る。光学の収縮率は、例えば、ASTM D2732-14試験規格「Standard Test Method for Unrestrained Linear Thermal Shrinkage of Plastic Film and Sheeting」に従って決定され得る。
【0017】
図4は、光学フィルム310の互いに反対側にある最外層366と最外層368との間に配置されている複数の交互する第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362を含む、反射偏光子であり得る光学フィルム310の概略断面図である。光学フィルム310は、一体形成された光学フィルムであることができ、最外層366及び最外層368は、ポリマー層であることができる。いくつかの実施形態では、第1のポリマー層361は、第2のポリマー層362よりも小さい平均面内屈折率(直交する第1の偏光状態及び第2の偏光状態に沿った屈折率などの、2つの直交する面内方向に沿った屈折率の平均)を有する。例えば、第2のポリマー層362は、第1の面内方向に沿ったより大きい屈折率と、第2の面内方向に沿ったより小さい屈折率とを有する配向された層であることができ、第1のポリマー層361は、第2の面内方向に沿った第2のポリマー層の屈折率と実質的に等しい、第1の面内方向及び第2の面内方向のそれぞれに沿った実質的に同じ屈折率を有し得る。屈折率は、例えば、
図3の第1の波長λ1において指定され得る。波長が別段に指定されていない場合、屈折率は、532nmの波長において決定された屈折率であると理解され得る。面内方向とは、フィルムが平置きされている場合、フィルムの平面内の方向を指し、又は、フィルムが湾曲している場合、フィルムの接する平面内の方向を指す。
【0018】
いくつかの実施形態では、少なくとも第2のポリマー層362は、実質的に一軸配向されている。例えば、いくつかの実施形態では、光学フィルム310は、実質的な一軸延伸フィルムであり、かつ少なくとも0.7、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85の一軸性度Uを有する反射偏光子であり、ここで、U=(1/MDDR-1)/(TDDR1/2-1)であり、MDDRは、機械方向延伸比として定義され、TDDRは、横断方向延伸比として定義される。そのような実質的に一軸配向された多層光学フィルムは、例えば、米国特許出願公開第2010/0254002号(Merrillら)に記載されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362内の各層は、厚さ約500nm未満、又は厚さ約400nm未満、又は厚さ約300nm未満、又は厚さ約250nm未満である。第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362の厚さは、所与の波長の光に対して所望の反射率を提供するように選択され得る(例えば、一対の隣接する層の総光学厚さは、所与の波長の半分であるように選択され得る)。第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362の厚さは、所定の(例えば、約450nm~約650nm、又は約420nm~約650nm、又は約400nm~約700nmにわたる)波長範囲にわたって所望の反射率を提供するように、光学フィルムの厚さにわたって変更され得る。
【0020】
第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362の総数は、
図4で概略的に示されているものを実質的に超えてもよい。いくつかの実施形態では、複数の交互する第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362は、合計で少なくとも50個(例えば、合計で100~500個の層)であり、互いに反対側にある最外ポリマー層366と最外ポリマー層368との間に配置されており、第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362のそれぞれは、厚さ約400nm未満であり、最外ポリマー層366及び最外ポリマー層368のそれぞれは、厚さ約500nm超である。いくつかの実施形態では、光学フィルム310の複数の交互する第1のポリマー層361及び第2のポリマー層361は、光学フィルム310の互いに反対側にある最外層366と最外層368との間に配置されており、各最外層366、368は、約0.5ミクロン~約5ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、最外ポリマー層366及び最外ポリマー層368のそれぞれは、厚さ約2マイクロメートル未満、又は厚さ約1.5マイクロメートル未満、又は厚さ1マイクロメートル未満である。そのような厚さを有する最外層を使用することにより、光学フィルムの層間剥離抵抗が改善され得ることが見出された。
【0021】
いくつかの実施形態では、所定の波長範囲の実質的な垂直入射光に対して、光学フィルム300、又は複数の交互する第1のポリマー層361及び第2のポリマー層362は、第1の偏光状態に対する約80%超の平均光反射率と、直交する第2の偏光状態に対する約85%超の平均光透過率と、第1の偏光状態に対する約0.2%未満又は約0.1%未満の平均光透過率とを有する。そのような透過率及び反射率を有する光学フィルムは、例えば、国際出願公開第2018/163009号(Haagら)に記載されている。
【0022】
本明細書の光学フィルム又は反射偏光子は、一体形成され得る。本明細書で使用するとき、第2の要素と「一体形成された」第1の要素とは、第1の要素と第2の要素とが、別個に製造され、次いでその後に接合されるのではなく、一緒に製造されることを意味する。一体形成されるとは、第1の要素を製造した後に、続いて第2の要素を第1の要素上に製造することを含む。複数の層を含む光学フィルムは、当該層が、別個に製造され、次いでその後に接合されるのではなく、一緒に製造される(例えば、溶融ストリームとして組み合わされ、次いでチルロール上にキャスティングされてキャストフィルムを形成し、次いで、キャストフィルムが配向される)場合、一体形成されている。一体形成された光学フィルム又は反射偏光子は、交互するポリマー層の1つ以上のパケットを含むことができ、各パケット内の交互するポリマー層のそれぞれは、厚さ約400nm未満である。約500nmよりも厚い層により、隣接するパケットが隔てられ得、及び/又は、約500nmよりも厚い層は、1つ以上のパケットの最外表面に配置され得る。そのような層は、交互するポリマー層の共押出しされたウェブにおける流れプロファイルが、交互するポリマー層内に光学的欠陥を生じさせることを防止するために含まれる保護境界層(protective boundary layer;PBL)であることができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、光学フィルムは、交互するポリマー層の2つのパケットと、2つのパケット間に配置された複数の(例えば、少なくとも3つ、又は3~20個の)より薄い(例えば、厚さ400nm未満、又は厚さ300nm未満の)PBLと、を含む。これにより、2019年5月23日に出願され、「MULTILAYER OPTICAL FILM」と題された、同一所有者の仮特許出願第62/852112号に更に記載されているように、隣接するパケット間の層間剥離抵抗が改善されることが見出された。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のポリマー層361は、少なくとも摂氏107度、又は少なくとも摂氏109度、又は少なくとも摂氏112度、又は少なくとも摂氏115度のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、第1のポリマー層361のガラス転移温度は、摂氏125度以下、又は摂氏120度以下である。これらの範囲のうちのいずれかの範囲のガラス転移温度を有する第1のポリマー層361を使用することにより、光学フィルム310の許容可能な層間剥離抵抗がもたらされること、及び、マイクロリンクルの低減がもたらされることが見出された。いくつかの実施形態では、最外層366及び最外層368は、これらの範囲のうちのいずれかの範囲のガラス転移温度を有する。いくつかの実施形態では、最外層366及び最外層368は、第1のポリマー層361と同じ材料から形成されている。
【0025】
ガラス転移温度は、例えば、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry;DSC)によって決定され得る。例えば、ASTM D3418-15試験規格又はASTM E1356-08(2014)試験規格が、DSCによってガラス転移温度を決定するために使用され得る。代替的に、ガラス転移温度は、動的機械分析(DMA)によって決定され得る。例えば、ASTM E1640-18試験規格が、DMAによってガラス転移温度を決定するために使用され得る。所望のガラス転移温度を有するポリマーは、所望のガラス転移温度をもたらす比で、異なるガラス転移温度を有する異なるポリマーをブレンドすることによって、及び/又は、所望のガラス転移温度をもたらす比で、異なるセグメントをコポリマー内に含めることによって、形成され得る。例えば、ポリカーボネートとコポリエステルとのブレンドは、所望の範囲のガラス転移温度をもたらし得る。いくつかの実施形態では、低屈折率層(例えば、第1のポリマー層361)は、ポリカーボネートと、PETG(Eastman Chemicals(Knoxville,TN)より入手可能な、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)と、グリコール変性剤として使用されるシクロヘキサンジメタノールとのコポリエステル)と、PCTG(Eastman Chemicals(Knoxville,TN)より入手可能な、PETと、PETGと比較して2倍の量の、グリコール変性剤として使用されるシクロヘキサンジメタノールとのコポリエステル)とのブレンドから形成されている。使用されるポリカーボネートの割合は、所望のガラス転移温度が与えられるように選択され得る。いくつかの実施形態では、高屈折率層(例えば、第2のポリマー層362)は、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate;PEN)、又はPEN/ポリエチレンテレフタレート(PET)コポリマーから形成されている。ポリマー多層光学フィルムにおいて有用であることが既知の他のポリマー材料が、代替的に使用されてもよい。
【0026】
層間剥離抵抗は、光学フィルムの部分間の剥離力の観点から特徴付けられ得る。層間剥離抵抗は、例えば、グラム/インチ(1インチ当たりの重量グラムであると理解される)又はN/cmで表され得る。例えば、いくつかの実施形態では、一体形成された光学フィルム310の2つの部分間の最小平均剥離強度は、約0.4N/cm超(例えば、0.36N/cm超、又は0.38N/cm超)、又は約0.6N/cm超、又は約0.8N/cm超であり、2つの部分のそれぞれは、最外ポリマー層366、368のうちの一方を含む。いくつかの実施形態では、最小平均剥離強度は、約1.5m/分の剥離速度での実質的な90度剥離試験を使用して決定され、最小平均剥離強度は、約5秒の平均化時間にわたって平均化された剥離強度の最小値である。
【0027】
図5は、例えば、光学フィルム310に相当し得る一体形成された光学フィルム410に適用される剥離試験を概略的に示す。光学フィルム410は、試験用の規格サイズ(例えば、幅1インチ(2.54cm)×12インチ(30cm)のストリップ)へ切り出され得る。両面テープ458(例えば、3M Company(St.Paul,MN)より入手可能な3M 665 Double Sided Tape)は、プレート455(例えば、金属プレート)に取り付けられ、フィルム410は、両面テープ448に取り付けられる。フィルム410には、例えば、20~60度、又は30~45度の範囲である、プレート455の主表面と角度αをなす切り込み線444に沿って、フィルムの縁部の付近に(例えば、かみそり刃を用いて)切り込みが付けられる。テープ459は、テープ459がフィルム410の少なくとも切り込み部分を覆うように、かつテープ459の自由端479が剥離試験において使用可能であるように、フィルム410に貼り付けられる。例えば、テープ459は、3M Company(St.Paul,MN)より入手可能な3M 396テープの約1.5インチ(4cm)のストリップであることができる。剥離試験の間に把持するために使用される自由端479は、自由端479自体の上に折り畳まれて、非粘着性のタブ(例えば、約1/2インチ(1.3cm)のタブ)を形成することができる。次いで、実質的な90度剥離試験が、自由端479から剥離することによって、実行される。例えば、(
図5の印加力Fによって概略的に示されている)引き方向と、プレート455の上面に平行な方向との間の角度βは、約90度であることができる。剥離試験は、約1.2~約1.8m/分(例えば、約1.5m/分)の範囲の剥離速度(引き方向に沿った自由端479の速度)で実施される。剥離試験は、例えば、IMASS SP-2000剥離試験機(IMASS Inc.(Accord,MA))を使用して実行され得る。剥離強度は、約4~約6秒(例えば、約5秒)の平均化時間にわたって平均化される。平均剥離強度は、複数のサンプル(例えば、5つのフィルムサンプル)のそれぞれ1つに対して単一の平均化時間で、又は、単一の(例えば、より長い)サンプルに対して複数の間隔の平均化時間で、決定され得る。これらの平均剥離強度の最小値が、最小平均剥離強度と称される。
【0028】
剥離強度は、光学フィルム410の2つの部分434と部分435との間の剥離強度であり、2つの部分434、435のそれぞれは、最外ポリマー層のうちの一方(例えば、
図4に示されている最外層366又は最外層368)を含む。例えば、剥離試験の間に、光学フィルム410は、最外層のうちの一方と、交互する第1の層及び第2の層(例えば、第1の層361及び第2の層362)のうちの1つとの間の境界面で、層間剥離し得、それにより、2つの部分434、435のうちの一方は、層間剥離された最外層を含み、2つの部分434、435のうちの他方は、光学フィルム410の残部を含む。別の例として、光学フィルム410は、2つの内部層間の境界面で層間剥離し得、それにより、部分434及び部分435のそれぞれは、最外層と、交互する第1の層及び第2の層のうちの少なくとも1つとを含む。更に別の例として、層間剥離は、最外層と、交互する第1の層及び第2の層のうちの1つとの間の境界面で開始し得、次いで、光学フィルム410の内部層内へ伝播し得、それにより、部分434及び部分435のそれぞれは、内部層の部分を含む。
【実施例】
【0029】
剥離強度試験方法
フィルムサンプルが調製され、幅1インチ(2.54cm)×12インチ(30cm)のストリップへ切り出された。両面テープ(3M Company(St.Paul,MN)より入手可能な3M 665 Double Sided Tape)が、金属プレートに取り付けられ、サンプルストリップが両面テープに取り付けられた。過剰なフィルムは、プレートの一方の端部から切られ、それにより、フィルムは、プレートのこの縁部と揃い、他方の縁部には、かみそり刃を用いて鋭角で切ることによって、切り込みが付けられた。テープ(3M Company(St.Paul,MN)より入手可能な3M 396テープ)の約1.5インチ(4cm)のストリップの一方の端部は、ストリップ自体の上に折り畳まれて、1/2インチ(1.3cm)の非粘着性のタブを形成した。テープの他方の端部は、フィルムサンプルの切り込み付き縁部に貼り付けられた。次いで、90度剥離試験が、5秒の平均化時間を使用する60インチ/分(1.5m/分)の剥離速度でのIMASS SP-2000剥離試験機(IMASS Inc.(Accord,MA))を使用して、実行された。5つのストリップが、各フィルムサンプルについて試験された。実施例において与えられた結果に関しては、層を互いから層間剥離するために必要とされる最も弱い力又は最も低い力を比較するために、最小値が報告されている。
【0030】
収縮率試験方法
一定温度の液浴の代わりにオーブンが使用された点を除いて、ASTM D2732-14試験規格で概説されているように、収縮率が決定された。サンプルは、試験の前に、乾燥チャンバ(<20%のRH)内で、>24時間にわたって調整された。サンプルは、105℃(オーブン設定点)で15分間試験された。
【0031】
比較例C1
複屈折反射偏光子光学フィルムが、以下のように調製された。2つの多層光学パケットは、各パケットが、ポリエチレンナフタレート(PEN)と、低屈折率の等方性層との325個の交互する層から構成された状態で、共押出しされ、低屈折率の等方性層は、屈折率が約1.57であるように、ポリカーボネートとコポリエステルとのブレンド(PC:coPET)で作製され、一軸配向の際に、実質的に等方性のままであり、PC:coPETの重量比は、約41重量%のPC及び59重量%のcoPETであり、摂氏105.8度のTgを有した。この等方性材料は、延伸後に、2つの非延伸方向における等方性材料の屈折率が、非延伸方向における複屈折材料の屈折率と実質的に一致したままであり、延伸方向においては、複屈折層と非複屈折層との間に屈折率の実質的な不一致があるように選択された。PEN及びPC/coPETのポリマーは、別個の押出成形機から多層共押出フィードブロックに供給され、多層共押出フィードブロック内で、PEN及びPC/coPETのポリマーは、組み合わされて、325個の交互する光学層の2つのパケットに加えて、積層された光学パケットの外側上のPC/coPETのより厚い保護境界層と、パケットの間の、光学厚さを有するがコヒーレンスのない9つの交互する内部保護境界層との合計で661個の層になされた。次いで、多層溶融物は、ポリエステルフィルムに関する従来の方式で、フィルムダイを介してチルロール上にキャスティングされ、キャスティングされた際に、急冷された。次いで、キャストウェブは、米国特許第6,916,440号(Jacksonら)に記載されているように、パラボリックテンター内で、320°Fの温度で横断方向において約6:1の比で延伸された。
【0032】
比較例1の光学フィルムに関する層厚さプロファイルが、
図6に示されている。垂直入射における通過及びブロックの透過率が決定され、
図7に示されている。ブロック偏光及び通過偏光に対する、450~650nmでの平均透過率は、それぞれ、0.011%及び86.7%であった。比較例1のフィルムは、静電容量ゲージによって測定した結果、約58.9μmの総厚さを有した。105℃における15分間での収縮率は、機械方向(machine direction;MD)において約1.01%であり、横断方向(transverse direction;TD)において約0.15%であった。最小平均剥離力は、256.7g/インチであった。
【0033】
接着剤層を含むSanritz 5518吸収偏光子が、Sanritz偏光子上の接着剤を使用して光学フィルムにラミネートされて、光学積層体を提供した。
【0034】
実施例1
複屈折反射偏光子光学フィルムが、以下のように調製された。2つの多層光学パケットは、各パケットが、90%のポリエチレンナフタレート(PEN)及び10%のポリエチレンテレフタレート(PET)から構成されたポリマーである90/10coPENと、低屈折率の等方性層との325個の交互する層を有する状態で、共押出しされ、低屈折率の等方性層は、屈折率が約1.57であるように、ポリカーボネートとコポリエステルとのブレンド(PC:coPET)で作製され、一軸配向の際に、実質的に等方性のままであり、PC:coPETの重量比は、約61重量%のPC及び39重量%のcoPETであり、摂氏116.4度のTgを有した。この等方性材料は、延伸後に、2つの非延伸方向における等方性材料の屈折率が、非延伸方向における複屈折材料の屈折率と実質的に一致したままであり、延伸方向においては、複屈折層と非複屈折層との間に屈折率の実質的な不一致があるように選択された。PEN及びPC/coPETのポリマーは、別個の押出成形機から多層共押出フィードブロックに供給され、多層共押出フィードブロック内で、PEN及びPC/coPETのポリマーは、組み合わされて、325個の交互する光学層の2つのパケットに加えて、積層された光学パケットの外側上のPC/coPETのより厚い保護境界層と、パケットの間の、光学厚さを有するがコヒーレンスのない9つの交互する内部保護境界層との合計で661個の層になされた。次いで、多層溶融物は、ポリエステルフィルムに関する従来の方式で、フィルムダイを介してチルロール上にキャスティングされて、キャスティングされた際に、急冷された。次いで、キャストウェブは、米国特許第6,916,440号(Jacksonら)に記載されているように、パラボリックテンター内で、300°Fの温度で横断方向において約6:1の比で延伸された。
【0035】
実施例1の光学フィルムに関する層厚さプロファイルが、
図8に示されている。垂直入射における通過及びブロックの透過率が決定され、
図9に示されている。ブロック偏光及び通過偏光に対する、450~650nmでの平均透過率は、それぞれ、0.021%及び89.2%であった。実施例1のフィルムは、静電容量ゲージによって測定した結果、約58.7μmの総厚さを有した。105℃における15分間での収縮率は、MD及びTDにおいて、それぞれ、0.31%及び0.57%であった。最小平均剥離力は、226.9g/インチであった。
【0036】
接着剤層を含むSanritz 5518吸収偏光子(Sanritz Co.,Ltd.(Japan)より入手可能)が、Sanritz偏光子上の接着剤を使用して光学フィルムにラミネートされて、光学積層体を提供した。105℃における15分間でのSanritz偏光子の収縮率は、通過軸及びブロック軸に沿って、それぞれ、0.10%及び0.30%であった。
【0037】
実施例2~8
実施例2~8は、表1に示されている変更を除き、実施例1と同様の方式で調製された。低屈折率光学(low index optical;LIO)層のガラス転移温度(Tg)は、ブレンドに使用されたPC及びcoPETのガラス転移温度から算出された。PC及びcoPETの添加量、算出されたTg、105℃における15分間での通過状態及びブロック状態の収縮率、105℃における15分間でのサンプルとSanritz偏光子とに対する通過状態及びブロック状態の収縮率の差Δ、及び最小平均剥離力は、表1に報告されている。
【表1】
【0038】
マイクロリンクル試験
3M 8171接着剤(3M Company(St.Paul,MN)より入手)が、比較例C1及び実施例1~8の光学積層体の両側にラミネートされ、次いで、ガラススライドにラミネートされた。
【0039】
比較例C1及び実施例1~3の各積層体からの2つのサンプルは、105℃に設定されたオーブン内に225時間入れられ、105℃における30分間から-40℃における30分間への20サイクルで熱サイクルオーブン内に入れられた。各オーブン条件の後に、比較例1は、マイクロリンクルを有し、実施例1~3は、マイクロリンクルを有さなかった。
【0040】
比較例C1及び実施例4~8の各積層体からの2つのサンプルは、105℃に設定されたオーブン内に24時間入れられた。24時間後に、オーブンから取り出されて、室温まで放冷され、マイクロリンクルに関して検査された。比較例1は、マイクロリンクルを有し、実施例4~8は、マイクロリンクルを有さなかった。
【0041】
反射偏光子と吸収偏光子との間の接着剤の効果を試験するために、様々な接着剤が、比較例C1の反射偏光子とSanritz 5518吸収偏光子との間に使用された。Sanritz偏光子上の接着剤は、光学積層体をガラススライドにラミネートするために使用された。サンプルは、良好な結合を確実にするために、50℃及び0.5MPaのオートクレーブ内に20分間置かれた。結合されたサンプルは、105℃に設定されたオーブン内に24時間置かれた。次いで、サンプルは、オーブンから取り出され、室温まで放冷され、マイクロリンクルに関して検査された。結果は、以下の表に報告されている。接着剤は、3M Company(St.Paul,MN)より入手された。弾性率は、DMAを使用して、105℃において決定された。
【表2】
【0042】
「約(about)」などの用語は、これらが本明細書で使用及び説明されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す数量に適用される際の「約」の使用が、これが本明細書で使用及び説明されている文脈において、当業者にとって明確ではない場合、「約」は、指定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す数量の差に適用される際の「約」の使用が、これが本明細書で使用及び説明されている文脈において、当業者にとって明確ではない場合、差に適用される際の「約」は、より小さい大きさを有する数量の10パーセント以内を意味すると理解されよう。例えば、0.275の値を有する数量と0.3の値を有する数量との差に適用される際の「約ゼロ」が、これが本明細書で使用及び説明されている文脈において、当業者にとって明確ではない場合、差は、0.275の10パーセント未満でゼロと異なるため、差は約ゼロである。約指定の値として与えられている数量は、正確に指定の値であり得る。例えば、それが本明細書で使用及び説明されている文脈において、当業者にとって明確ではない場合、約1の値を有する数量は、当該数量が0.9~1.1の値を有することを意味し、当該値が1であり得ることを意味する。
【0043】
上記で参照された全ての参照文献、特許、又は特許出願は、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれている参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先される。
【0044】
図中の要素に関する説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されると理解されたい。特定の実施形態が本明細書において例示及び説明されているが、例示及び説明されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は均等の実施態様によって置き換えられ得る点が、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例又は変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。以下、例示的な実施形態を挙げる。
[項目1]
直線吸収偏光子と、
前記直線吸収偏光子上に配置され、前記直線吸収偏光子に結合されている反射偏光子と、を備え、
実質的な垂直入射光に対して、かつ約420nm~約650nmにわたる可視波長範囲の少なくとも第1の波長に対して、
前記反射偏光子が、第1の偏光状態に対する少なくとも60%の光反射率と、直交する第2の偏光状態に対する少なくとも60%の光透過率とを有し、
前記直線吸収偏光子が、前記第1の偏光状態に対する少なくとも60%の光吸収率と、前記第2の偏光状態に対する少なくとも60%の光透過率とを有し、
摂氏105度で15分間加熱された場合、前記第1の偏光状態及び前記第2の偏光状態に沿った、前記反射偏光子と前記直線吸収偏光子との収縮率の差が、それぞれ、約ゼロ超及び約0.2%超であり、
前記反射偏光子が、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層を含み、少なくとも前記第1の波長に対して、前記第1のポリマー層が、前記第2のポリマー層よりも小さい平均面内屈折率を有し、前記第1のポリマー層が、少なくとも摂氏107度のガラス転移温度を有する、光学積層体。
[項目2]
前記第1のポリマー層が、少なくとも摂氏109度のガラス転移温度を有する、項目1に記載の光学積層体。
[項目3]
前記第1のポリマー層が、少なくとも摂氏115度のガラス転移温度を有する、項目1に記載の光学積層体。
[項目4]
前記第1のポリマー層及び前記第2のポリマー層内の各層が、厚さ約500nm未満である、項目1~3のいずれか一項に記載の光学積層体。
[項目5]
前記反射偏光子の前記複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層が、前記反射偏光子の互いに反対側にある2個の最外層の間に配置されており、各最外層が、約0.5ミクロン~約5ミクロンの厚さを有する、項目4に記載の光学積層体。
[項目6]
少なくとも前記第2のポリマー層が、実質的に一軸配向されている、項目1~5のいずれか一項に記載の光学積層体。
[項目7]
実質的な垂直入射光に対して、かつ少なくとも前記第1の波長に対して、前記複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層が、前記第1の偏光状態に対する約80%超の光反射率と、前記第2の偏光状態に対する約85%超の光透過率と、前記第1の偏光状態に対する約0.1%未満の光透過率とを有する、項目1~6のいずれか一項に記載の光学積層体。
[項目8]
前記反射偏光子と前記直線吸収偏光子とが、接着剤で一体に結合されており、前記接着剤が、約10kPa未満の、摂氏105度における貯蔵弾性率G’と、摂氏105度における損失弾性率G”であって、前記貯蔵弾性率G’に対する前記損失弾性率G”の比が、少なくとも約0.5であるような、損失弾性率G”とを有する、項目1~7のいずれか一項に記載の光学積層体。
[項目9]
互いに反対側にある2個の最外ポリマー層の間に配置されている、合計で少なくとも50個の、複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層を備える、一体的に形成された光学フィルムであって、第1のポリマー層及び第2のポリマー層のそれぞれが、厚さ約400nm未満であり、各最外ポリマー層が、厚さ約500nm超であり、前記第1のポリマー層が、少なくとも摂氏107度のガラス転移温度を有し、前記第2のポリマー層よりも小さい平均面内屈折率を有し、前記一体形成された光学フィルムの2つの部分間の最小平均剥離強度が、約0.4N/cm超であり、前記2つの部分のそれぞれが、前記最外ポリマー層のうちの一方を含む、一体形成された光学フィルム。
[項目10]
前記最小平均剥離強度が、約0.6N/cm超、又は約0.8N/cm超である、項目9に記載の光学フィルム。
[項目11]
各最外ポリマー層が、厚さ約2マイクロメートル未満である、項目9又は10に記載の光学フィルム。
[項目12]
実質的な垂直入射光に対して、かつ約420nm~約650nmにわたる可視波長範囲の少なくとも第1の波長に対して、前記複数の交互する第1のポリマー層及び第2のポリマー層が、第1の偏光状態に対する約80%超の光反射率と、直交する第2の偏光状態に対する約85%超の光透過率と、前記第1の偏光状態に対する約0.1%未満の光透過率とを有する、項目9~11のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[項目13]
直線吸収偏光子と、
前記直線吸収偏光子上に配置され、前記直線吸収偏光子に結合されている、項目9~12のいずれか一項に記載の光学フィルムと、
を備える、光学積層体。
[項目14]
前記光学フィルムが、前記直線吸収偏光子の通過軸と実質的に整列している通過軸を有する、反射偏光子を含む、項目13に記載の光学積層体。
[項目15]
前記光学フィルムと前記直線吸収偏光子とが、接着剤で一体に結合されており、前記接着剤が、約10kPa未満の、摂氏105度における貯蔵弾性率G’と、摂氏105度における損失弾性率G”であって、前記貯蔵弾性率G’に対する前記損失弾性率G”の比が、少なくとも約0.5であるような、損失弾性率G”とを有する、項目13又は14に記載の光学積層体。