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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】バスバーおよび電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/503 20210101AFI20250107BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20250107BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20250107BHJP
   H01M 50/569 20210101ALI20250107BHJP
   H01M 50/571 20210101ALI20250107BHJP
   H01M 50/209 20210101ALN20250107BHJP
【FI】
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/522
H01M50/569
H01M50/571
H01M50/209
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022505750
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039440
(87)【国際公開番号】W WO2021181740
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2020041621
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】森下 大樹
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524289(JP,A)
【文献】特開2006-344572(JP,A)
【文献】特開2015-133394(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168982(WO,A1)
【文献】特開2014-127229(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180270(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0197330(US,A1)
【文献】特開2015-097205(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012716(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/502-50/522
H01M 50/569
H01M 50/571
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧検出線の導線の先端部が接合される接合面と、
前記接合面の周囲の少なくとも一部に設けられて、前記接合面を被覆する腐食防止剤の広がりを規制する位置規制部と、
前記接合面から連続する載置面を有し、前記先端部に近接する前記導線の首部を前記載置面で支持する支持部と、
前記接合面と前記載置面との間に設けられる、前記位置規制部の非形成領域と、
を備えるバスバー。
【請求項2】
前記位置規制部は、前記接合面よりも凹んだ凹部で構成される請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記位置規制部は、前記接合面よりも突出した凸部で構成される請求項1に記載のバスバー。
【請求項4】
前記線は、銅であり
前記バスバーは、アルミニウム製である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバスバー。
【請求項5】
複数の電池と、
前記複数の電池を電気的に接続する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のバスバーと、
前記バスバーに接合されて前記複数の電池の電圧を検出する電圧検出線と、
を備える電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバーおよび電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が電気的に接続された電池モジュールが知られている。電池モジュールにおいて、隣り合う電池はバスバーを介して電気的に接続されていた。また、例えば特許文献1に開示されるように、各バスバーには電圧検出線が取り付けられ、各電池間の電圧が検出されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-27831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池モジュールの安全性を高めるためには、各電池間の電圧を精度よく検出することが求められる。したがって、電圧検出線とバスバーとの接続信頼性を高めることが望ましい。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、電圧検出線とバスバーとの接続信頼性を高める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、バスバーである。このバスバーは、電圧検出線が接合される接合面と、接合面の周囲の少なくとも一部に設けられて、接合面を被覆する腐食防止剤の広がりを規制する位置規制部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様は、電池モジュールである。この電池モジュールは、複数の電池と、複数の電池を電気的に接続する上記態様のバスバーと、バスバーに接合されて複数の電池の電圧を検出する電圧検出線と、を備える。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電圧検出線とバスバーとの接続信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る電池モジュールの平面図である。
図2】電池積層体の一部分の斜視図である。
図3】実施の形態に係るバスバーの斜視図である。
図4図4(A)は、バスバーの接合面を含む領域を拡大して示す斜視図である。図4(B)は、電圧検出線が接合されたバスバーの断面模式図である。
図5図5(A)は、変形例1に係るバスバーの接合面を含む領域を拡大して示す斜視図である。図5(B)は、電圧検出線が接合されたバスバーの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
図1は、実施の形態に係る電池モジュールの平面図である。図2は、電池積層体の一部分の斜視図である。なお、図1では、電池積層体について一部の電池のみを破線で図示している。また、図1および図2では、出力端子およびバスバーの形状を模式的に図示している。
【0013】
電池モジュール1は、電池積層体2と、ダクトプレート4と、電圧検出線6と、を備える。電池積層体2は、配列された複数の電池8と、各電池8を電気的に接続する複数のバスバー10と、を有する。各電池8は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。各電池8は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶12を有する。外装缶12の一面には略長方形状の開口(図示せず)が設けられ、この開口を介して外装缶12に電極体や電解液等が収容される。外装缶12の開口には、開口を塞ぐ略長方形状の封口板14が嵌め合わされる。
【0014】
封口板14には、一対の出力端子16が配置される。具体的には、長手方向の一端寄りに正極端子16aが配置され、他端寄りに負極端子16bが配置される。以下では、一対の出力端子16の極性を区別する必要がない場合、正極端子16aと負極端子16bとをまとめて出力端子16と称する。
【0015】
外装缶12、封口板14および出力端子16は導電体であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス等の金属で構成される。外装缶12と封口板14とは、例えばレーザー溶接により接合される。各出力端子16は、封口板14に形成された貫通孔に挿通される。各出力端子16と各貫通孔との間には、絶縁性のシール部材が介在する。外装缶12は、シュリンクチューブ等の図示しない絶縁フィルムで被覆されてもよい。また、外装缶12および封口板14は、絶縁性の樹脂で構成されてもよい。
【0016】
各電池8は、封口板14に弁部18を有する。弁部18は、封口板14における一対の出力端子16の間に配置される。弁部18は、安全弁とも呼ばれ、電池8の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、電池8の内部のガスを放出できるように構成される。弁部18は、例えば、封口板14の一部に設けられる他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、電池8の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで弁部18が開弁する。各電池8の弁部18は、後述するガスダクト20に接続され、電池内部のガスは弁部18からガスダクト20に排出される。
【0017】
本実施の形態の説明では、便宜上、封口板14を電池8の上面、封口板14と対向する外装缶12の底面を電池8の下面とする。また、電池8は、上面および下面をつなぐ4つの側面を有する。4つの側面のうち2つは、封口板14の対向する2つの長辺に接続される一対の長側面である。各長側面は、電池8が有する面のうち面積の最も大きい面、すなわち主表面である。2つの長側面を除いた残り2つの側面は、封口板14の短辺に接続される一対の短側面である。
【0018】
また、便宜上、電池積層体2において電池8の上面側の面を電池積層体2の上面とし、電池8の下面側の面を電池積層体2の下面とし、電池8の短側面が集合した面を電池積層体2の長側面とし、電池8の長側面側の面を電池積層体2の短側面とする。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本発明において上面と規定された部分は、下面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0019】
複数の電池8は、隣り合う電池8の主表面どうしが対向するようにして所定の間隔で配列される。本実施の形態では、電池8は水平方向に配列されている。以下では適宜、電池8が配列される方向を第1方向Xとし、第1方向Xと交わる水平方向を第2方向Yとし、第1方向Xおよび第2方向Yと交わる鉛直方向を第3方向Zとする。本実施の形態では、第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zは互いに直交する。
【0020】
各電池8は、出力端子16が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態の各電池8は、出力端子16が鉛直方向上方を向くように配置される。また、各電池8は、隣接する電池8を直列に接続する場合、一方の電池8の正極端子16aと他方の電池8の負極端子16bとが隣り合うように配列される。また、隣接する電池8を並列に接続する場合、一方の電池8の正極端子16aと他方の電池8の正極端子16aとが隣り合うように配列される。
【0021】
隣接する2つの電池8の間には、図示しないセパレータが配置される。これにより、当該2つの電池8間が電気的に絶縁される。セパレータは、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有する樹脂シートからなる。セパレータを構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の樹脂が例示される。
【0022】
複数の電池8は、図示しない一対のエンドプレートで第1方向Xに挟まれる。一対のエンドプレートは、第1方向Xの両端に位置する電池8とセパレータを介して隣り合う。各エンドプレートは、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属で構成される金属板である。
【0023】
複数の電池8は、図示しない一対の拘束部材によって第1方向Xに拘束される。一対の拘束部材は、バインドバーとも呼ばれ、第1方向Xに長い長尺状の部材である。一対の拘束部材は、例えば第2方向Yに配列される。各拘束部材は、例えば鉄やステンレス鋼等の金属で構成される。
【0024】
複数の電池8は、複数のセパレータと交互に配列された状態で、一対のエンドプレートで第1方向Xに挟まれる。一対の拘束部材は、複数の電池8、複数のセパレータおよび一対のエンドプレートを第2方向Yに挟むように配置され、各拘束部材の両端が一対のエンドプレートに固定される。例えば、拘束部材は第1方向Xの両端に、エンドプレートの主表面と重なる折曲部を有し、この折曲部がエンドプレートにねじ止め等により固定される。複数の電池8は、一対の拘束部材によって第1方向Xに拘束されて、第1方向Xに位置決めされる。セパレータ、エンドプレートおよび拘束部材は公知の構造を有するため、図示および詳細な説明を省略する。
【0025】
隣り合う電池8の出力端子16どうしは、バスバー10によって電気的に接続される。バスバー10は、おおよそ帯状の金属部材である。本実施の形態のバスバー10は、アルミニウム製である。バスバー10の一方の端部は、隣接する2つの電池8のうち一方の電池8の正極端子16aに接続され、他方の端部は他方の電池8の負極端子16bに接続される。なお、バスバー10は、隣接する複数個の電池8における同極性の出力端子16どうしを並列接続して電池ブロックを形成し、さらに電池ブロックどうしを直列接続してもよい。また、第1方向Xにおける最外側の電池8の出力端子16には、外部接続端子22が取り付けられる。外部接続端子22は、図示しない外部負荷に接続される。
【0026】
電池積層体2の上面には、ダクトプレート4が載置される。ダクトプレート4は、電池積層体2の上面、つまり各電池8の弁部18が配置される面を覆う板状の部材である。ダクトプレート4は、ベース板24と、複数の開口部26と、ガスダクト20と、を有する。ベース板24は、電池積層体2の上面に沿って拡がる。複数の開口部26およびガスダクト20は、ベース板24に設けられる。
【0027】
複数の開口部26は、第3方向Zで各電池8の出力端子16と重なる位置に設けられ、出力端子16を露出させる。各開口部26には、バスバー10が載置される。複数のバスバー10は、ダクトプレート4によって支持される。したがって、ダクトプレート4は、いわゆるバスバープレートとしても機能する。
【0028】
ガスダクト20は、各電池8から噴出するガスが流れ込む流路である。ベース板24は、各電池8の弁部18に対応する位置に、弁部18を露出させる図示しない複数の開口を有する。ガスダクト20は、第1方向Xに延びて、第3方向Zで各弁部18と重なる。各弁部18は、ベース板24に設けられた開口を介してガスダクト20に連通される。
【0029】
本実施の形態のダクトプレート4は、ガスダクト20における各弁部18と対向する天面を除いてポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の樹脂で構成される。ガスダクト20の天面は、鉄やアルミニウム等の金属板で構成される。
【0030】
ダクトプレート4には、電圧検出線6が載置される。したがって、ダクトプレート4は、電圧検出線6を支持する支持プレートとしても機能する。電圧検出線6は、複数の電池8の電圧を検出するための部材である。電圧検出線6は、複数の導線28が集合した構造を有する。本実施の形態の導線28は、銅製である。
【0031】
各導線28は、一端側がコネクタ30に接続され、他端側が対応するバスバー10に接合される。これにより、各バスバー10とコネクタ30とが電気的に接続される。また、一部の導線28は、外部接続端子22とコネクタ30とを電気的に接続する。コネクタ30は、外部の電池ECU等に接続される。電池ECUは、各電池8の電圧等の検知、各電池8の充放電等を制御する。
【0032】
図3は、実施の形態に係るバスバー10の斜視図である。図4(A)は、バスバー10の接合面を含む領域を拡大して示す斜視図である。図4(B)は、電圧検出線6が接合されたバスバー10の断面模式図である。バスバー10は、第1接続部32と、第2接続部34と、連結部36と、接合面38と、支持部40と、クリップ部42と、位置規制部44と、を備える。
【0033】
第1接続部32は、帯状であるバスバー10の一端側に位置し、隣り合う2つの電池8のうち、一方の電池8の出力端子16に電気的に接続される。第2接続部34は、バスバー10の他端側に位置し、他方の電池8の出力端子16に電気的に接続される。第1接続部32および第2接続部34は、例えばレーザー溶接や超音波接合によって出力端子16に接合される。
【0034】
連結部36は、第1接続部32と第2接続部34とを連結する。本実施の形態の連結部36は、第3方向Zに突出する湾曲形状を有する。よって、連結部36は、第2方向Yから見て略U字形状を有する。連結部36は、第1接続部32が接続される電池8と第2接続部34が接続される電池8との相対的な変位に応じて弾性変形する。これにより、2つの電池8の相対的な変位を吸収することができる。
【0035】
接合面38は、電圧検出線6の導線28が接合される面である。本実施の形態の接合面38は、一例として第1接続部32に隣接する位置に設けられている。接合面38は、電池積層体2とは反対側を向く平坦面である。導線28の先端部が接合面38に載置された状態で超音波接合等の処理が施されることで、導線28が接合面38に接合される。
【0036】
支持部40は、導線28における先端部に近接する首部を支持する。支持部40は、接合面38から連続する載置面46を有する。載置面46は、接合面38と面一に設けられる。これにより、少なくとも導線28の先端部と首部とが直線状に延びた状態を作り出すことができる。
【0037】
クリップ部42は、アーチ状の部材であり、載置面46を覆うように配置される。クリップ部42は、一端が支持部40に連結される。クリップ部42は、当該一端を支点に回動して載置面46に対し接近、離間することができる。クリップ部42の他端は、クリップ部42が載置面46に接近した状態で、支持部40と嵌合する。これにより、クリップ部42の回動が規制される。クリップ部42の他端が支持部40に嵌合した状態で、載置面46とクリップ部42の内側面とによって導線28の首部が挟まれる。これにより、導線28が固定される。
【0038】
導線28の先端部が接合された接合面38は、腐食防止剤48によって被覆される。腐食防止剤48としては、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を溶媒に分散させた液状防蝕剤が例示される。腐食防止剤48は、所定の硬化処理が施されて腐食防止層となる。
【0039】
本実施の形態では、バスバー10はアルミニウムで構成され、導線28は銅で構成される。このため、接合面38と導線28との接合は、異種金属接合となる。この場合、接合部に水が付着すると、異種金属接触腐食(電蝕)が生じてバスバー10と導線28との間の抵抗が増加したり、導線28がバスバー10から脱離したりするおそれがある。特に、電池モジュール1を搭載した車両が沿岸部を走行した場合等は、接合部に海水が付着するおそれがあり、電蝕がより発生しやすい。これに対し、腐食防止剤48を接合面38に塗布(ポッティング)して接合部を被覆することで、接合面38と導線28との接合部で電蝕が発生することを抑制できる。
【0040】
位置規制部44は、接合面38の周囲の少なくとも一部に設けられて、接合面38を被覆する腐食防止剤48の広がりを規制する。本実施の形態の位置規制部44は、バスバー10の厚み方向(本実施の形態では第3方向Z)で接合面38よりも凹んだ凹部で構成される。接合面38の周囲に位置規制部44が設けられていない場合、腐食防止剤48を接合面38に塗布した際、腐食防止剤48が過度に広がって十分な塗布厚が得られなかったり、塗布厚が不均一になったりするおそれがある。この場合、腐食防止剤48で構成される腐食防止層の強度が少なくとも一部において不十分となり、電池モジュール1の使用中に振動等によって腐食防止層にクラックが生じたり、腐食防止層が接合面38から脱離したりするおそれがある。また、腐食防止剤48の塗布厚が十分にないと、導線28の一部が露出してしまい、腐食防止層の防食機能が損なわれるおそれもある。
【0041】
これに対し、接合面38の周囲に位置規制部44としての凹部を設けることで、接合面38に塗布した腐食防止剤48が凹部よりも外側に広がることを規制できる。この結果、接合面38と導線28との接合部を十分な量の腐食防止剤48で被覆することが可能となる。
【0042】
本実施の形態のバスバー10は、接合面38と載置面46との間に、位置規制部44の非形成領域50を有する。非形成領域50を設けることで、載置面46から接合面38にかけて面一な表面を得ることができる。そして、この表面に導線28を載置することで、導線28の首部から先端部にかけて直線の状態を保つことができ、導線28と接合面38との接続信頼性を高めることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係るバスバー10は、電圧検出線6が接合される接合面38と、接合面38の周囲の少なくとも一部に設けられて、接合面38を被覆する腐食防止剤48の広がりを規制する位置規制部44と、を備える。接合面38の周囲を位置規制部44で囲むことで、接合面38と電圧検出線6との接合部を腐食防止剤48でより安定的に保護することができる。よって、電圧検出線6とバスバー10との接続信頼性を高めることができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る電池モジュール1は、複数の電池8と、複数の電池8を電気的に接続するバスバー10と、バスバー10に接合されて複数の電池8の電圧を検出する電圧検出線6と、を備える。これにより、電池モジュール1の安全性を高めることができる。
【0045】
また、本実施の形態の位置規制部44は、バスバー10の厚み方向で接合面38よりも凹んだ凹部で構成される。位置規制部44を凹部で構成することで、金属板のプレス加工等によって簡単に位置規制部44を形成することができる。
【0046】
また、本実施の形態の電圧検出線6は、接合面38に接合される銅製の導線28を有し、バスバー10は、アルミニウム製である。したがって、導線28および接合面38の接合は異種金属接合であり、電蝕が発生して腐食しやすい。これに対し、接合面38を腐食防止剤48で被覆して接合部を保護することで、電圧検出線6とバスバー10との接続信頼性をより高めることができる。また、バスバー10をアルミニウム製とすることで、バスバー10ひいては電池モジュール1の軽量化および低コスト化を図ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。
【0048】
(変形例1)
図5(A)は、変形例1に係るバスバー10の接合面38を含む領域を拡大して示す斜視図である。図5(B)は、電圧検出線6が接合されたバスバー10の断面模式図である。実施の形態の位置規制部44は凹部で構成されているが、本変形例の位置規制部44は、バスバー10の厚み方向で接合面38よりも突出した凸部で構成される。
【0049】
接合面38の周囲に位置規制部44としての凸部を設けることで、接合面38に塗布した腐食防止剤48が凸部よりも外側に広がることを規制できる。また、位置規制部44を凸部で構成することで、腐食防止剤48の塗布厚をより大きくすることができる。よって、より厚い腐食保護層で接合面38と導線28との接合部を保護することができ、電圧検出線6とバスバー10との接続信頼性をより高めることができる。あるいは、腐食防止剤48の塗布量を減らしながら、電圧検出線6とバスバー10との接続信頼性を高めることができる。
【0050】
(その他の変形例)
電池モジュール1が備える電池8の数は特に限定されない。複数の電池8の拘束構造等を含む、電池積層体2の各部の構造は特に限定されない。電池8は、円筒状等であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 電池モジュール、 6 電圧検出線、 8 電池、 10 バスバー、 28 導線、 38 接合面、 44 位置規制部、 48 腐食防止剤。
図1
図2
図3
図4
図5