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特許7614178面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20250107BHJP
   H01S 5/42 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/42
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022509369
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2021004764
(87)【国際公開番号】W WO2021192672
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020057521
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】立川 佳照
(72)【発明者】
【氏名】我妻 新一
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅人
(72)【発明者】
【氏名】土門 大志
(72)【発明者】
【氏名】大石 正人
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-221492(JP,A)
【文献】特開2009-194102(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0041010(US,A1)
【文献】特開平06-314854(JP,A)
【文献】特開2003-124570(JP,A)
【文献】特開2011-135029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の多層膜反射鏡と、
第2の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間に配置された活性層と、
を備え、
前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域が厚さ方向に部分的に設けられており、
前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、
第1の層と、
前記高濃度不純物領域が設けられた第2の層と、
を含み、
前記第1の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、
前記第2の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、
前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きい、面発光レーザ。
【請求項2】
前記高濃度不純物領域は、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の面内方向に部分的に設けられている、請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項3】
前記高濃度不純物領域は、少なくとも、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層に設けられている、請求項1又は2に記載の面発光レーザ。
【請求項4】
前記高濃度不純物領域は、少なくとも、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から近い方の表層には設けられていない、請求項1~3のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項5】
前記第1の層は相対的に前記活性層から近く、且つ、前記第2の層は相対的に前記活性層から遠い、請求項1~4のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項6】
前記第2の層と前記活性層との間に、1ペア以上のアンドープもしくは1x1018cm-3以下の低濃度ドープの屈折率層又はアンドープもしくは1x1018cm-3以下の低濃度ドープのGaAs層が配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項7】
前記屈折率層又は前記GaAs層は、前記第2の層と前記第1の層との間に配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項8】
前記第1の層の前記ペアを構成する前記屈折率層の光学厚さの合計と、前記第2の層の前記ペアを構成する前記屈折率層の光学厚さの合計とが略同一である、請求項1~7のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項9】
第1の多層膜反射鏡と、
第2の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間に配置された活性層と、
を備え、
前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域が厚さ方向に部分的に設けられており、
前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、
第1の層と、
前記高濃度不純物領域が設けられた第2の層と、
を含み、
前記第2の層と前記第1の層との間に配置された定在波調整層を更に備える、面発光レーザ。
【請求項10】
前記定在波調整層は、Alを組成に含む層を有し、
前記Alを組成に含む層の光学厚さは、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも厚く、且つ、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも薄い、請求項に記載の面発光レーザ。
【請求項11】
前記定在波調整層は、Alを組成に含む層を有し、
前記Alを組成に含む層の光学厚さは、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも薄く、且つ、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも厚い、請求項9又は10に記載の面発光レーザ。
【請求項12】
発振波長が900nm以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の面発光レーザ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の面発光レーザが2次元配列されている面発光レーザアレイ。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の面発光レーザを備える電子機器。
【請求項15】
少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体の前記第2の多層膜反射鏡に対して前記活性層側とは反対側に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜をエッチングして開口を形成する工程と、
前記開口を介して前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層を含む一部の層に不純物を拡散させる工程と、
を含み、
前記積層体を生成する工程では、前記活性層上に前記第2の多層膜反射鏡の全てを積層する前に、前記活性層上に前記不純物の拡散を抑制する拡散抑制層を積層する、面発光レーザの製造方法。
【請求項16】
少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体の前記第2の多層膜反射鏡に対して前記活性層側とは反対側に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜をエッチングして開口を形成する工程と、
前記開口を介して前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層を含む一部の層に不純物を拡散させる工程と、
を含み、
前記第2の多層膜反射鏡は、第1の層と、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域が設けられた第2の層と、を含み、
前記第1の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、
前記第2の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、
前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きく、
前記積層体を生成する工程では、前記活性層上に前記第1の層を積層し、該第1の層上に定在波調整層を積層し、該定在波調整層上に前記第2の層を積層する、面発光レーザの製造方法。
【請求項17】
前記拡散させる工程では、少なくとも、前記第2の多層膜反射鏡の相対的に前記活性層に近い方の表層には前記不純物を拡散させない、請求項15又は16に記載の面発光レーザの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示に係る技術(以下「本技術」とも呼ぶ)は、面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下部多層膜反射鏡及び上部多層膜反射鏡の間に活性層が配置された面発光レーザが知られている。
従来の面発光レーザの中には、上部多層膜反射鏡の厚さ方向の全域に不純物濃度が高い領域を有したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-68227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の面発光レーザでは、製造効率の低下を抑制しつつ低抵抗化を図ることに関して改善の余地があった。
【0005】
そこで、本技術は、製造効率の低下を抑制しつつ低抵抗化を図ることができる面発光レーザ、該面発光レーザを備える面発光レーザアレイ、該面発光レーザアレイを備える電子機器及び該面発光レーザの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術は、
第1の多層膜反射鏡と、
第2の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間に配置された活性層と、
を備え、
前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域が厚さ方向に部分的に設けられている、面発光レーザを提供する。
前記高濃度不純物領域は、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の面内方向に部分的に設けられていることが好ましい。
前記高濃度不純物領域は、少なくとも、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層に設けられていてもよい。
前記高濃度不純物領域は、少なくとも、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から近い方の表層には設けられていないことが好ましい。
前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、第1の層と、前記高濃度不純物領域が設けられた第2の層と、を含んでいてもよい。
前記第1の層は相対的に前記活性層から近く、且つ、前記第2の層は相対的に前記活性層から遠いことが好ましい。
前記第2の層と前記活性層との間に、1ペア以上のアンドープもしくは1x1018cm-3以下の低濃度ドープの屈折率層又はアンドープもしくは1x1018cm-3以下の低濃度ドープのGaAs層が配置されていてもよい。
前記屈折率層又は前記GaAs層は、前記第2の層と前記第1の層との間に配置されていてもよい。
前記第1の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、前記第2の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きいことが好ましい。
前記第1の層の前記ペアを構成する前記屈折率層の光学厚さの合計と、前記第2の層の前記ペアを構成する前記屈折率層の光学厚さの合計とが等しいことが好ましい。
前記第2の層と前記第1の層との間に配置された定在波調整層を更に備えていてもよい。
前記定在波調整層は、Alを組成に含む層を有し、前記Alを組成に含む層の光学厚さは、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも厚く、且つ、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも薄いことが好ましい。
前記定在波調整層は、Alを組成に含む層を有し、前記Alを組成に含む層の光学厚さは、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも薄く、且つ、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも厚いことが好ましい。
前記面発光レーザは、発振波長が900nm以上であってもよい。
本技術は、前記面発光レーザが2次元配列されている面発光レーザアレイも提供する。
本技術は、前記面発光レーザを備える電子機器も提供する。
本技術は、少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体の前記第2の多層膜反射鏡に対して前記活性層側とは反対側に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜をエッチングして開口を形成する工程と、
前記開口を介して前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層を含む一部の層に不純物を拡散させる工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法も提供する。
前記拡散させる工程では、少なくとも、前記第2の多層膜反射鏡の相対的に前記活性層に近い方の表層には前記不純物を拡散させないことが好ましい。
前記積層体を生成する工程では、前記活性層上に前記第2の多層膜反射鏡の全てを積層する前に、前記活性層上に前記不純物の拡散を抑制する拡散抑制層を積層してもよい。
前記第2の多層膜反射鏡は、第1の層と、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域が設けられた第2の層と、を含み、前記第1の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、前記第2の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きく、前記積層体を生成する工程では、前記活性層上に前記第1の層を積層し、該第1の層上に定在波調整層を積層し、該定在波調整層上に前記第2の層を積層してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図2】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図3】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法における積層体生成工程を説明するためのフローチャートである。
図4】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その1)である。
図5】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その2)である。
図6】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その3)である。
図7】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その4)である。
図8】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その5)である。
図9】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その6)である。
図10】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その7)である。
図11】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その8)である。
図12】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その9)である。
図13】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その10)である。
図14】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その11)である。
図15】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その12)である。
図16】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その13)である。
図17】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その14)である。
図18】本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法の工程毎の断面図(その15)である。
図19】本技術の第1の実施形態の変形例1に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図20】本技術の第1の実施形態の変形例2に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図21】本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図22】本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザの製造方法における積層体生成工程を説明するためのフローチャートである。
図23】本技術の第3の実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図24】本技術の第3の実施形態に係る面発光レーザの製造方法における積層体生成工程を説明するためのフローチャートである。
図25】本技術の第4の実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図26】本技術の第4の実施形態に係る面発光レーザの製造方法における積層体生成工程を説明するためのフローチャートである。
図27】本技術の第5の実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図28】本技術の第6の実施形態に係る面発光レーザの構成を示す断面図である。
図29】定在波調整層の機能を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照しながら、本技術の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。本明細書において、本技術に係る面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法の各々が複数の効果を奏することが記載される場合でも、本技術に係る面発光レーザ、面発光レーザアレイ、電子機器及び面発光レーザの製造方法の各々は、少なくとも1つの効果を奏すればよい。本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0009】
また、以下の順序で説明を行う。
1.本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザ
(1)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの構成
(2)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法
(3)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの作用
(4)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの効果
2.本技術の第1の実施形態の変形例1に係る面発光レーザ
3.本技術の第1の実施形態の変形例2に係る面発光レーザ
4.本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザ
5.本技術の第3の実施形態に係る面発光レーザ
6.本技術の第4の実施形態に係る面発光レーザ
7.本技術の第5の実施形態に係る面発光レーザ
8.本技術の第6の実施形態に係る面発光レーザ
9.本技術の変形例
10.本技術を適用した面発光レーザの使用例
電子機器への応用例
【0010】
1.<本技術の第1実施形態に係る面発光レーザ>
(1)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの構成
図1は、本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザ10の構成を示す断面図である。以下では、便宜上、図1等の断面図における上方を上、下方を下として説明する。
以下では、複数の面発光レーザ10が2次元配列された面発光レーザアレイを構成している場合を例にとって説明する。図1には、当該面発光レーザアレイの1つの面発光レーザ10が抜き出して示されている。
【0011】
(全体構成)
面発光レーザ10は、図1に示すように、基板100上に、第1の多層膜反射鏡200、活性層300及び第2の多層膜反射鏡500がこの順に積層された積層構造を有している。
すなわち、面発光レーザ10では、第1の多層膜反射鏡200と第2の多層膜反射鏡500との間に活性層300が配置されている。
【0012】
本技術に係る面発光レーザは、発振波長が900nm以上であることが好ましい。
本実施形態では、面発光レーザ10の発振波長が例えば940nmである。
なお、本技術に係る面発光レーザは、発振波長が900nm未満であってもよい。
【0013】
基板100は、一例として、第1導電型(例えばn型)のGaAs基板である。
基板100の第1の多層膜反射鏡200側の面(上面)と第1の多層膜反射鏡200との間には、バッファ層150が配置されている。
基板100の第1の多層膜反射鏡200側とは反対側の面(下面)には、第1導電型(例えばn型)のカソード電極900が設けられている。
【0014】
カソード電極900は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
カソード電極900は、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Ni、Ti、V、W、Cr、Al、Cu、Zn、Sn及びInからなる群から選択された少なくとも1種類の金属(合金を含む)によって構成されている。
カソード電極900が積層構造である場合は、例えばTi/Au、Ti/Al、Ti/Al/Au、Ti/Pt/Au、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Pt、Pd/Pt、Ag/Pd等の材料で構成される。
【0015】
第1の多層膜反射鏡200は、一例として、半導体多層膜反射鏡である。多層膜反射鏡は、分布型ブラッグ反射鏡(Distributed Bragg Reflector)とも呼ばれる。多層膜反射鏡(分布型ブラッグ反射鏡)の一種である半導体多層膜反射鏡は、光吸収が少なく、高反射率及び導電性を有する。第1の多層膜反射鏡200は、下部DBRとも呼ばれる。
【0016】
第1の多層膜反射鏡200は、一例として、第1導電型(例えばn型)の半導体多層膜反射鏡であり、屈折率が互いに異なる複数種類(例えば2種類)の半導体層(屈折率層)が発振波長λの1/4(λ/4)の光学厚さで交互に積層された構造を有する。第1の多層膜反射鏡200の各屈折率層は、第1導電型(例えばn型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。
【0017】
活性層300は、例えばAlGaAs系化合物半導体からなる障壁層及び量子井戸層を含む量子井戸構造を有する。この量子井戸構造は、単一量子井戸構造(QW構造)であってもよいし、多重量子井戸構造(MQW構造)であってもよい。
【0018】
第1の多層膜反射鏡200と活性層300との間には、第1のスペーサ層250(下部スペーサ層)が配置されている。第1のスペーサ層250は、第1導電型(例えばn型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。「スペーサ層」は「クラッド層」とも呼ばれる。
【0019】
第2の多層膜反射鏡500は、一例として、第2導電型(例えばp型もしくはn型)の半導体多層膜反射鏡であり、屈折率が互いに異なる複数種類(例えば2種類)の半導体層(屈折率層)が発振波長の1/4波長の光学厚さで交互に積層された構造を有する。第2の多層膜反射鏡200の各屈折率層は、第2導電型(例えばp型もしくはn型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。後に、第2の多層膜反射鏡500についてさらに詳細に説明する。
【0020】
第2の多層膜反射鏡500の内部には、電流狭窄層400が配置されている。
電流狭窄層400は、一例として、AlAsからなる非酸化領域400aと、その周囲を取り囲むAlAsの酸化物(例えばAl)からなる酸化領域400bとを有する。
【0021】
第2の多層膜反射鏡500と活性層300との間には、第2のスペーサ層350(上部スペーサ層)が配置されている。第2のスペーサ層350は、第2導電型(例えばp型)のAlGaAs系化合物半導体からなる。「スペーサ層」は「クラッド層」とも呼ばれる。
【0022】
第2の多層膜反射鏡500上には、コンタクト層600が配置されている。コンタクト層600は、第2導電型(例えばp型)のGaAs系化合物半導体からなる。
【0023】
ここで、第1の多層膜反射鏡200の一部(下部)上に、面発光レーザ10のレーザ共振器として機能するメサ構造MSが形成されている。
すなわち、メサ構造MSは、一例として、第1の多層膜反射鏡200の他部(上部)、第1のスペーサ層250、活性層300、第2のスペーサ層350、電流狭窄層400、第2の多層膜反射鏡500及びコンタクト層600を含んで構成されている。
カソード電極900、基板100、バッファ層150及び第1の多層膜反射鏡の一部(下部)は、複数の面発光レーザ10で共有されている。
メサ構造MSは、平面視において、例えば略円柱形状であるが、例えば略楕円柱形状、多角柱形状等の他の柱形状であってもよい。
【0024】
メサ構造MS及びその周囲部は、絶縁膜650で覆われている。絶縁膜650は、例えばSiO、SiN、SiON等からなる。
メサ構造MSの頂部を覆う絶縁膜650には、電極引き出し用のコンタクトホールCHが形成されている。
【0025】
コンタクトホールCHは、例えば、メサ構造MSの高さ方向から見て、電流狭窄層400の非酸化領域400aを取り囲むように(例えば環状)形成されている。
コンタクトホールCH内には、第2導電型(例えばp型)のアノード電極700が配置されている。アノード電極700は、例えば、メサ構造MSの高さ方向から見て、コンタクトホールCHと略同一の形状(例えば環状)を有している。アノード電極700のコンタクト層600側の面(下面)は、コンタクト層600に接触している。
【0026】
アノード電極700は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
アノード電極700は、例えばAu、Ag、Pd、Pt、Ni、Ti、V、W、Cr、Al、Cu、Zn、Sn及びInからなる群から選択された少なくとも1種類の金属(合金を含む)によって構成されている。
アノード電極700が積層構造である場合は、例えばTi/Au、Ti/Al、Ti/Al/Au、Ti/Pt/Au、Ni/Au、Ni/Au/Pt、Ni/Pt、Pd/Pt、Ag/Pd等の材料で構成される。
【0027】
絶縁膜650は、メサ構造MSの頂部の中央を覆う部分を除いて配線層800で覆われている。配線層800は、例えば金メッキからなる。
すなわち、配線層800には、メサ構造MSの頂部に対応する位置に開口が形成され、該開口が面発光レーザ10の出射口となっている。
配線層800は、面発光レーザアレイの周辺に配置された電極パッド(不図示)と接続されている。
ここで、コンタクト層600は、レーザ共振器を構成するメサ構造MSの出射側に位置する。このため、コンタクト層600の厚さは、例えば1μm以下であることが好ましい。コンタクト層600の厚さが1μm以下であることにより、コンタクト層600での光吸収を低減でき、ひいては光出力の低下を抑制できる。
【0028】
[第2の多層膜反射鏡の構成]
第2の多層膜反射鏡500は、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域Ir(図1における灰色部分)が厚さ方向に部分的に設けられている。
上記「他の領域」は、第2の多層膜反射鏡500における高濃度不純物領域Ir以外の領域を意味する。
具体的には、高濃度不純物領域Irは、少なくとも、第2の多層膜反射鏡500の活性層300から遠い方の表層に設けられている。
さらに、高濃度不純物領域Irは、少なくとも、第2の多層膜反射鏡の活性層300から近い方の表層には設けられていない。
【0029】
詳述すると、第2の多層膜反射鏡500は、第1の層500aと、高濃度不純物領域Irが設けられた第2の層500bとを含む。
第1の層500aと第2の層500bとは、積層されている。第1の層500aと第2の層500bとの積層方向は、第1及び第2の多層膜反射鏡200、500と活性層300との並び方向(上下方向)に一致する。
第1の層500aは相対的に活性層300から近く、且つ、第2の層500bは相対的に活性層300から遠い。
【0030】
(高濃度不純物領域)
高濃度不純物領域Irは、第2の層500bの厚さ方向の少なくとも一部に設けられることが好ましい。本実施形態では、高濃度不純物領域Irが第2の層500bの厚さ方向の全域に設けられている。
一方、本実施形態では、第1の層500aには、高濃度不純物領域Irが設けられていない。
高濃度不純物領域Irは、例えばZn(亜鉛)、B(ホウ素)、Si(シリコン)、ベリリウムイオン等のイオンを含んで構成される。
【0031】
高濃度不純物領域Irの不純物濃度は、該高濃度不純物領域Irの全域に亘って、ほぼ均一であることが好ましいが、多少ばらつきがあってもよい。
【0032】
本実施形態では、第2の層500bの光学厚さ(全厚)は、第1の層500aの光学厚さ(全厚)よりも薄い。
なお、第2の層500bの光学厚さは、第1の層500aの光学厚さよりも厚くてもよいし、第1の層500aの光学厚さと同等であってもよい。
【0033】
高濃度不純物領域Irは、第2の多層膜反射鏡500の面内方向に部分的に設けられている。
具体的には、高濃度不純物領域Irは、メサ構造MSの光導波路が形成される中央部の周囲部に設けられている。
詳述すると、高濃度不純物領域Irは、メサ構造MSの高さ方向から見て、電流狭窄層400の非酸化領域400aを取り囲むように例えば環状に設けられている。
高濃度不純物領域Irの外径と内径との差は、1μm以上であることが好ましい。
【0034】
高濃度不純物領域Irは、第2の層500b内に位置する部分Ir1と、該部分Ir1に連続し、第2の層500bから第1の層500a側とは反対側に突出する突出部Ir2を有する。突出部Ir2は、少なくとも一部がコンタクト層600内に配置されている。
すなわち、高濃度不純物領域Irは、コンタクト層600と第2の多層膜反射鏡500とに跨るように設けられている。
高濃度不純物領域Irは、メサ構造MSの高さ方向から見て、例えばアノード電極700と略同径・同大である。
突出部Ir2は、アノード電極700に接触している。
すなわち、突出部Ir2は、コンタクト層600におけるアノード電極700と接触する領域(コンタクト領域)に形成されている。
以上の説明から分かるように、高濃度不純物領域Irは、アノード電極700と活性層300との間の電流経路上に設けられている。
部分Ir1は、第2の層500bにおける高濃度不純物領域Irが設けられていない部分に比べて、電気的に低抵抗である(導電性に優れる)。
突出部Ir2は、コンタクト層600における高濃度不純物領域Irが設けられていない部分に比べて、電気的に低抵抗である(導電性に優れる)。
【0035】
(第1の層の構成)
第1の層500aは、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有する。当該ペアの各屈折率層は、屈折率が互いに異なる。当該ペアの各屈折率層は、例えばAlGaAs系化合物半導体からなる。
【0036】
第1の層500aのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層(低屈折率層)のAl組成は、0.7(70%)以上であることが好ましく、0.8(80%)以上であることがより好ましく、0.9(90%)以上であることがより一層好ましい。当該Al組成は、0.99以下であることが好ましい。
ここでは、当該Alの組成は、例えば0.9~0.93、0.93~0.96、0.96~0.99のいずれかの範囲内にある。なお、当該Alの組成は、0.7(70%)未満であってもよい。
【0037】
第1の層500aのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層(高屈折率層)のAl組成は、0.03(3%)以上であることが好ましく、0.05(5%)以上であることがより好ましく、0.1(10%)以上であることがより一層好ましく、0.3(30%)以上であることがさらにより一層好ましい。当該Al組成は、0.4(40%)以下であることが好ましい。
ここでは、当該Alの組成は、例えば0.1~0.2、0.2~0.3、0.3~0.4のいずれかの範囲内にある。なお、当該Alの組成は、0.03未満であってもよい。
ここで、第1の層500aのペアの各屈折率層のAlの組成が高いほど放熱性が向上し、第1の層500aのペアの屈折率層間の屈折率差が高いほど(Al組成の差が大きいほど)反射率が向上するので、目標とする放熱性と反射率とのバランスを考慮して、第1の層500aのペアの各屈折率層のAlの組成を決定することが好ましい。
【0038】
第1の層500aのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層(低屈折率層)の光学厚さOta-Hは、例えば56.9nmである。
第1の層500aのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層(高屈折率層)の光学厚さOta-Lは、例えば51.2nmである。
【0039】
(第2の層の構成)
第2の層500bは、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有する。当該ペアの各屈折率層は、屈折率が互いに異なる。当該ペアの各屈折率層は、例えばAlGaAs系化合物半導体からなる。
【0040】
第2の層500bのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層(低屈折率層)のAl組成は、0.7(70%)以上であることが好ましく、0.8(80%)以上であることがより好ましく、0.9(90%)以上であることがより一層好ましい。当該Al組成は、0.99以下であることが好ましい。
ここでは、当該Alの組成は、例えば0.9~0.93、0.93~0.96、0.96~0.99のいずれかの範囲内にある。なお、当該Alの組成は、0.7(70%)未満であってもよい。
【0041】
第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層(高屈折率層)のAl組成は、0.03(3%)以上であることが好ましく、0.05(5%)以上であることがより好ましく、0.1(10%)以上であることがより一層好ましく、0.3(30%)以上であることがさらにより一層好ましい。当該Al組成は、0.4(40%)以下であることが好ましい。
ここでは、当該Alの組成は、例えば0.1~0.2、0.2~0.3、0.3~0.4のいずれかの範囲内にある。なお、当該Alの組成は、0.03未満であってもよい。
ここで、第2の層500bのペアの各屈折率層のAlの組成が高いほど放熱性が向上し、第2の層500bのペアの屈折率層間の屈折率差が高いほど(Al組成の差が大きいほど)反射率が向上するので、目標とする放熱性と反射率とのバランスを考慮して、第2の層500bのペアの各屈折率層のAlの組成を決定することが好ましい。
【0042】
第2の層500bのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層(低屈折率層)の光学厚さOtb-Hは、例えば69.3nmである。
第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層(高屈折率層)の光学厚さOtb-Lは、例えば39.1nmである。
第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さOtb-Lに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さOtb-Hの比率Rb-HLは、例えば69.3/39.1≒1.77である。
一方、第1の層500aのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さOta-Lに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さOta-Hの比率Ra-HLは、例えば56.9/51.2≒1.11である。
すなわち、Rb-HL>Ra-HLが成立する。
【0043】
第1の層500aのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さOta-Hに対する、第2の層500bのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さOtb-Hの比率Rab-HHは、1.2以上であることが好ましい。
本実施形態では、比率Rab-HHは、例えば69.3/56.9≒1.23である。
【0044】
第1の層500aのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さOta-Lに対する、第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さOtb-Lの比率Rab-LLは、0.8以下であることが好ましい。
本実施形態では、比率Rab-HHは、例えば39.1/51.2≒0.77である。
【0045】
第1の層500aのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計(Ota-H+Ota-L)は、例えば56.9nm+51.2=108.1である。
第2の層500bのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計(Otb-H+Otb-L)は、例えば69.3+39.1=108.4である。
第1の層500aのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計(Ota-H+Ota-L)と、第2の層500bのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計(Otb-H+Otb-L)とは、略同一である。
なお、第1の層500aのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計と、第2の層500bのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計とは、多少異なっていてもよい。
【0046】
(2)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの製造方法
以下、図2図18を参照して、第1の実施形態に係る面発光レーザ10の製造方法について説明する。図2は、面発光レーザ10の製造方法を説明するためのフローチャートである。図3は、面発光レーザ10の製造方法における積層体生成工程を説明するためのフローチャートである。図4図18は、面発光レーザ10の製造方法の工程毎の断面図(工程断面図)である。ここでは、一例として、半導体製造方法により、基板100の基材である1枚のウェハ上に複数の面発光レーザアレイを同時に生成する(この際、各面発光レーザアレイの複数の面発光レーザ10も同時に生成される)。次いで、一連一体の複数の面発光レーザアレイを互いに分離して、チップ状の複数の面発光レーザアレイ(面発光レーザアレイチップ)を得る。
【0047】
最初のステップS1では、積層体生成工程を実施する。この積層体生成工程では、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法を用いて積層体5000を生成する。
積層体生成工程では、図3に示されるステップS1.1~S1.4を実行する。
ステップS1.1では、基板100上にバッファ層150、第1の多層膜反射鏡200、第1のスペーサ層250、活性層300、第2のスペーサ層350をこの順に積層する。
ステップS1.2では、第2の多層膜反射鏡500の第1の層500aを、被選択酸化層400’を内部に含むように形成する。
ステップS1.3では、第1の層500a上に、第2の多層膜反射鏡500の第2の層500bを形成する。
ステップS1.4では、第2の層500b上にコンタクト層600を積層する。
この結果、図4に示す積層体5000が生成される。
【0048】
次のステップS2では、図5に示すように、積層体5000上に絶縁膜630を成膜する。絶縁膜630は、例えばSiNからなる。
【0049】
次のステップS3では、図6に示すように、絶縁膜630上にフォトリソグラフィにより、高濃度不純物領域Irが形成される領域に対応する領域が開口するレジストパターンRP1を形成する。
【0050】
次のステップS4では、図7に示すように、レジストパターンRP1をマスクとして、例えばフッ酸系のエッチャントを用いて絶縁膜630を選択的にエッチングして開口OPを形成する。その後、図8に示すように、レジストパターンRP1を除去する。
【0051】
次のステップS5では、図9に示すように、絶縁膜630をマスクとして、開口OPから不純物を拡散させて高濃度不純物領域Irを形成する。
具体的には、開口OPからコンタクト層600を介して気相もしくは固相拡散等の手法により、例えばZn等の不純物を注入し、拡散させる。例えば、高濃度不純物領域Irが、第2の多層膜反射鏡500の表層を含む一部の層まで拡散するように不純物の注入量、注入速度及び注入時間を調整する。ここでは、第2の層500bの厚さ方向の全域に不純物を拡散させている。この際、絶縁膜630が不純物拡散時のマスクとなる。
【0052】
次のステップS6では、図10に示すように、絶縁膜630を除去する。
【0053】
次のステップS7では、高濃度不純物領域Irが設けられた積層体をエッチングしてメサ構造MSを形成する。
具体的には、図11に示すように、高濃度不純物領域Irが形成された積層体のコンタクト層600上にメサ形成用のレジストパターンRP2を形成する。次いで、図12に示すように、例えば硫酸系のエッチャントを用いて積層体を選択的にエッチング(例えばウェットエッチング)してメサ構造MSを形成する。ここでは、エッチング底面が第1の多層膜反射鏡200内に位置するようにエッチングを行う。その後、図13に示すように、レジストパターンRP2を除去する。
【0054】
次のステップS8では、図14に示すように、被選択酸化層400’(図13参照)の周囲部を酸化して電流狭窄層400を生成する。
具体的には、メサ構造MSを水蒸気雰囲気中にさらし、被選択酸化層400’を側面から酸化(選択酸化)して、非酸化領域400aの周りが酸化領域400bに取り囲まれた電流狭窄層400を形成する。
【0055】
次のステップS9では、図15に示すように、メサ構造MS上に高濃度不純物領域Irに接触するようにアノード電極700を形成する。
具体的には、例えば、EB蒸着法により、高濃度不純物領域Ir上に例えばAu/Ti膜を成膜し、レジスト及びレジスト上の例えばAu/Tiをリフトオフすることにより、高濃度不純物領域Ir上にアノード電極700を形成する。
【0056】
次のステップS10では、図16に示すように、積層体上に絶縁膜650を形成した後、アノード電極700上のみ開口したレジストパターンを用いて、例えばフッ酸系のエッチャントを用いたエッチングによりアノード電極700上の絶縁膜650を除去する。
【0057】
次のステップS11では、図17に示すように、絶縁膜650上にアノード電極700に接触するように配線層800を形成する。
【0058】
最後のステップS12では、図18に示すように、基板100の裏面にカソード電極900を形成する。その後、アニール、ウェハの裏面を研磨することによる薄膜化、ウェハの裏面に対する無反射コート等の処理がなされ、1枚のウェハ上に複数の面発光レーザ10が2次元配列された面発光レーザアレイが複数形成される。その後、ダイシングにより、複数の面発光レーザアレイチップに分離される。
【0059】
(3)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの作用
面発光レーザ10では、面発光レーザアレイの周辺に配置された電極パッドから配線層800を介して、アノード電極700に電流が注入される。アノード電極700に注入された電流は、コンタクト層600及び第2の多層膜反射鏡500の第2の層500bに跨って形成された低抵抗な高濃度不純物領域Ir、第1の層500a、電流狭窄層400及び第2のスペーサ層350を介して活性層300に注入される。これにより、活性層300が発光し、その光が第1及び第2の多層膜反射鏡200、500間で繰り返し反射しながら増幅されて発振条件を満たしたときに、メサ構造MSの頂部からレーザ光として出射される。
【0060】
(4)本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの効果
第1の実施形態に係る面発光レーザ10は、
第1の多層膜反射鏡200と、
第2の多層膜反射鏡500と、
第1の多層膜反射鏡と第2の多層膜反射鏡との間に配置された活性層300と、
を備え、
第2の多層膜反射鏡500は、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域Irが厚さ方向に部分的に設けられている、面発光レーザである。
この場合、面発光レーザ10を製造する際に、例えば高濃度不純物領域が第2の多層膜反射鏡500の厚さ方向の全域に設けられる場合に比べて、同一条件下で不純物の注入を行う場合に、高濃度不純物領域を形成するために不純物を注入する時間を短縮できる。
この結果、面発光レーザ10によれば、製造効率の低下を抑制しつつ低抵抗化を図ることができる面発光レーザを提供できる。
また、面発光レーザ10によれば、不純物が拡散する時間が短くなることにより、表面異常などの不具合の発生を抑制することができ、品質低下の抑制、歩留まりの向上に貢献する。
さらに、面発光レーザ10によれば、第2の多層膜反射鏡500側から電流を注入したときに、第2の多層膜反射鏡500は高濃度不純物領域Irにおいて低抵抗化が図られているので、活性層300に効率良く電流を流すことができる。これにより、低電圧駆動が可能となる。
【0061】
高濃度不純物領域Irは、第2の多層膜反射鏡500の面内方向に部分的に設けられている。これにより、例えば高濃度不純物領域Irを面発光レーザ10内の光導波路(レーザ共振器の中央部)上に形成しないようにすることができる。これにより、上記光導波路における光吸収(光損失)を抑制することができる。
具体的には、第1の多層膜反射鏡200の少なくとも一部、活性層300及び第2の多層膜反射鏡500を含んでメサ構造MSが形成され、高濃度不純物領域Irは、メサ構造MSの周囲部に設けられている。
より詳細には、第2の多層膜反射鏡500内に、酸化領域400bが非酸化領域400aを取り囲む電流狭窄層400が配置され、高濃度不純物領域Irは、メサ構造MSの高さ方向から見て、非酸化領域400aを取り囲むように設けられている。
【0062】
高濃度不純物領域Irの外径と内径との差は、1μm以上である。これにより、面発光レーザ10内の光導波路の径を高濃度不純物領域が形成されていない領域内で確保することができる。
【0063】
面発光レーザ10は、高濃度不純物領域Irに接触するアノード電極700を更に備える。これにより、アノード電極700とコンタクト層600との間の接触抵抗(コンタクト抵抗)の低減を図ることができる。
【0064】
高濃度不純物領域Irは、少なくとも、第2の多層膜反射鏡500の活性層300から遠い方の表層に設けられている。これにより、例えば第2の多層膜反射鏡500側から電流を注入する際に、少なくとも電流注入時の接触抵抗(コンタクト抵抗)を低減することができる。
【0065】
高濃度不純物領域Irは、少なくとも、第2の多層膜反射鏡500の活性層300から近い方の表層には設けられていない。これにより、活性層300へ不純物が流入するのを抑制することができ、余剰ドーパントによる欠陥の発生やフリーキャリア発生を抑制することができる。
【0066】
第2の多層膜反射鏡500は、第1の層500aと、高濃度不純物領域Irが設けられた第2の層500bとを含む。
【0067】
第1の層500aは相対的に活性層300から近く、且つ、第2の層500bは相対的に活性層300から遠い。これにより、活性層300へ不純物が流入するのを抑制することができ、余剰ドーパントによる欠陥の発生やフリーキャリア発生を抑制することができる。
【0068】
高濃度不純物領域Irは、第2の層500bの厚さ方向の全域に設けられている。これにより、不純物の拡散に要する時間が長くなることを抑制しつつ、できるだけ低抵抗化を図ることができる。
【0069】
第1の層500aには、高濃度不純物領域Irが設けられていない。これにより、不純物の拡散に要する時間が長くなることを要する時間が長くなることを抑制でき、且つ、不純物が活性層に流入するのを抑制できる。
【0070】
第2の層500bの光学厚さは、第1の層500aの光学厚さよりも薄い。これにより、面発光レーザ10の製造の際、仮に第2の多層膜反射鏡500の厚さ方向の全域に高濃度不純物領域を形成する場合に比べて、不純物を注入する時間を十分に短くすることができる。
【0071】
第1の層500aは、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、第2の層500bは、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、第1の層500aのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きい。
これにより、面発光レーザ10の製造時において高濃度不純物領域Irを形成する際に、不純物の拡散を促進することができ、さらに製造効率を向上することができる。
【0072】
第1の層500aのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計と、第2の層500bのペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計とが略同一である。これにより、第2の層500bの光学厚さの増加を抑制しつつ不純物の拡散を促進できる。
【0073】
ところで、高濃度不純物領域Irは、第2の多層膜反射鏡500に不純物を注入し拡散させることにより形成される。この際、第2の多層膜反射鏡500の各屈折率層のAlの組成が高いほど、不純物の拡散が促進する。不純物の拡散が促進すると、高濃度不純物領域Irをより短時間に形成することができる。
ここで、不純物の拡散性のみを考慮した場合は、ペアを構成する高屈折率層及び低屈折率層のAlの組成を一律に上げればよいが、そうすると高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が小さくなる。高屈折率層と低屈折率層との屈折率差が小さくなると反射率が低下するため、所望の反射率を得るためにはペア数を増加させる必要がある。しかし、ペア数の増加(第2の多層膜反射鏡500の光学厚さの増加)は直列抵抗の増加につながってしまう。
そこで、ペアの各屈折率層のAlの組成及びペアを構成する屈折率層の光学厚さの合計が一定の条件下で、ペアにおいて、Alの組成が低い屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い屈折率層の光学厚さの比率を高くすることにより、直列抵抗の増加及び反射率の低下を抑制しつつ、不純物の拡散を促進することができる。
【0074】
ところで、面発光レーザ10の発振波長λが長波長であればあるほど、高屈折率層と低屈折率層とがλ/4の光学厚さで交互に形成される第2の多層膜反射鏡も厚くなるため、高濃度不純物領域Irを形成するための不純物の拡散に要する時間が長くなってしまう。
そこで、面発光レーザ10の発振波長λが長波長側の場合、例えば発振波長λが900nm以上である場合には、第2の多層膜反射鏡500の第1及び第2の層500a、500bを含む層構成が特に有効である。
【0075】
高濃度不純物領域Irは、第2の層500bから第1の層500a側とは反対側に突出する突出部Ir2を有する。第2の多層膜反射鏡500に対して活性層300側とは反対側にコンタクト層600が配置され、突出部Ir2の少なくとも一部がコンタクト層600内に配置される。これにより、コンタクト層600におけるアノード電極700と接触する領域の低抵抗化を図ることができる。
【0076】
面発光レーザ10が2次元配列されている面発光レーザアレイによれば、各面発光レーザ10の低抵抗化が図られているので、低消費電力の面発光レーザアレイを提供できる。
【0077】
本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザ10の製造方法は、少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体5000を生成する工程と、積層体5000の第2の多層膜反射鏡500に対して活性層300側とは反対側に絶縁膜650を形成する工程と、絶縁膜650をエッチングして開口OPを形成する工程と、開口OPを介して、第2の多層膜反射鏡500の活性層300から遠い方の表層を含む一部の層に不純物を拡散させる工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法である。
この場合、面発光レーザ10を製造する際に、例えば高濃度不純物領域が第2の多層膜反射鏡500の厚さ方向の全域に設けられる場合に比べて、高濃度不純物領域Irを形成するために不純物を注入、拡散させる時間を短縮できる。
この結果、第1の実施形態に係る面発光レーザ10の製造方法によれば、低抵抗化を図ることができる面発光レーザを製造効率の低下を抑制しつつ製造できる。
【0078】
上記拡散させる工程では、少なくとも、第2の多層膜反射鏡500の相対的に活性層300に近い方の表層には不純物を拡散させない。これにより、活性層300へ不純物が流入するのを抑制することができ、余剰ドーパントによる欠陥の発生やフリーキャリア発生を抑制することができる。
【0079】
上記積層体5000を生成する工程では、さらに第2の多層膜反射鏡500に対して活性層300側とは反対側にコンタクト層600を積層し、上記拡散させる工程では、不純物をコンタクト層600及び第2の多層膜反射鏡500の活性層300から遠い方の表層を含む一部の層に拡散させる。
【0080】
以下、本技術の第1の実施形態に係る面発光レーザの変形例、他の実施形態の面発光レーザについて説明するが、以下の変形例、他の実施形態では、主に第1の実施形態と異なる点について説明する。
【0081】
ところで、面発光レーザの製造時に高濃度不純物領域を形成する際の不純物の注入速度、注入量及び注入時間を調整することにより、高濃度不純物領域の底面の位置、すなわち高濃度不純物領域の厚さを調整することができる。
【0082】
2.<本技術の第1の実施形態の変形例1に係る面発光レーザ>
図19は、変形例1に係る面発光レーザ10’の構成を示す断面図である。
変形例1に係る面発光レーザ10’では、図19に示すように、高濃度不純物領域Ir’が第2の多層膜反射鏡500の第2の層500bの一部(例えば上部)にのみに設けられている。
変形例1に係る面発光レーザ10’によれば、上記第1の実施形態に係る面発光レーザ10と比べて、低抵抗化には劣るが製造効率には優れる。
【0083】
3.<本技術の第1の実施形態の変形例2に係る面発光レーザ>
図20は、変形例2に係る面発光レーザ10’’の構成を示す断面図である。
変形例2に係る面発光レーザ10’’では、図20に示すように、高濃度不純物領域Ir’’が第2の多層膜反射鏡500の第2の層500bの厚さ方向の全域及び第1の層500aの一部(例えば上部)にのみ設けられている。
変形例2に係る面発光レーザ10’’によれば、上記第1の実施形態に係る面発光レーザ10と比べて、製造効率には劣るが低抵抗化には優れる。
【0084】
4.<本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザ>
図21は、第2の実施形態に係る面発光レーザ20の構成を示す断面図である。
本技術の第2の実施形態に係る面発光レーザ20では、図21に示すように、第2の層500bと活性層300との間に、拡散抑制層1000としての1ペア以上のアンドープもしくは低濃度ドープの屈折率層又はアンドープもしくは低濃度ドープのGaAs層が配置されている。当該屈折率層は、例えばAlGaAs系化合物半導体、AlGaInP系化合物半導体、AlGaN系化合物半導体等からなる。
【0085】
拡散抑制層1000は、例えば、第2の層500bと第1の層500aとの間に配置されている。
拡散抑制層1000は、面発光レーザ20の製造時に高濃度不純物領域Irを形成する際の不純物の拡散を抑制する層として機能する。
【0086】
拡散抑制層1000に1ペア以上のアンドープもしくは低濃度ドープの屈折率層を用いる場合には、該ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層は、第2の層500bのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層よりもAlの組成が低いことが好ましい。
拡散抑制層1000に1ペア以上のアンドープもしくは低濃度ドープの屈折率層を用いる場合には、該ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層は、第1の層500aのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層よりもAlの組成が低いことが好ましい。
拡散抑制層1000に1ペア以上のアンドープもしくは低濃度ドープの屈折率層を用いる場合には、該ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層は、第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層よりもAlの組成が低いことが好ましい。
拡散抑制層1000に1ペア以上のアンドープもしくは低濃度ドープの屈折率層を用いる場合には、該ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層は、第1の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層よりもAlの組成が低いことが好ましい。
拡散抑制層1000に1ペア以上のアンドープもしくは低濃度ドープの屈折率層を用いる場合には、該ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率が、第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも低いことが好ましい。
拡散抑制層1000に1ペア以上の低濃度ドープの屈折率層を用いる場合には、該屈折率層のドープ濃度を1x1018cm-3以下とすることが好ましい。
【0087】
拡散抑制層に低濃度ドープのGaAs層を用いる場合には、該GaAsのドープ濃度を1x1018cm-3以下とすることが好ましい。
【0088】
拡散抑制層1000に拡散抑制機能に加えて、後述する定在波調整機能を持たせることも可能である。
【0089】
以下に、第2の実施形態に係る面発光レーザ20の製造方法における積層体生成工程について、図22のフローチャートを参照して説明する。当該積層体生成工程では、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法を用いる。
当該積層体生成工程では、図22に示されるステップS1.1~S1.4を実行する。
最初のステップS1.1では、基板100上にバッファ層150、第1の多層膜反射鏡200、第1のスペーサ層250、活性層300、第2のスペーサ層350をこの順に積層する。
次のステップS1.2では、第2の多層膜反射鏡500の第1の層500aを、被選択酸化層400’を内部に含むように形成する。
次のステップS1.25では、第1の層500a上に、拡散抑制層1000を形成する。
次のステップS1.3では、拡散抑制層1000上に、第2の多層膜反射鏡500の第2の層500bを形成する。
最後のステップS1.4では、第2の多層膜反射鏡500b上に、コンタクト層600を積層する。
【0090】
第2の実施形態に係る面発光レーザ20によれば、第2の層500bと活性層300との間に拡散抑制層1000が配置されるため、高濃度不純物領域Irを形成する際に第2の層500bへ不純物を注入したときの活性層300への不純物の流入を抑制することができる。拡散抑制層1000により活性層300への不純物の流入が抑制されることから、不純物注入時において、注入量、注入速度、注入時間等に精密な制御が要求されない。
さらに、第2の実施形態に係る面発光レーザ20によれば、例えば第1の層500aと第2の層500bとの間に拡散抑制層1000が配置されるため、高濃度不純物領域Irを形成する際に第2の層500bへ不純物を注入したときの第1の層500aへの不純物の拡散を抑制することができる。これにより、活性層300への不純物の流入をより確実に抑制することができる。
上記積層体生成工程(積層体を生成する工程)では、活性層300上に第2の多層膜反射鏡500の全てを積層する前に、活性層300上に不純物の拡散を抑制する拡散抑制層1000を積層する。これにより、活性層300への不純物の流入をより確実に抑制することができる。
【0091】
なお、第2の実施形態に係る面発光レーザ20では、拡散抑制層1000が第1の層500aと第2の層500bとの間に配置されているが、これに限らず、例えば、第1の層500a内に配置されてもよいし、第2の層500b内に配置されてもよい。
【0092】
5.<本技術の第3の実施形態に係る面発光レーザ>
図23は、第3の実施形態に係る面発光レーザ30の構成を示す断面図である。
第3の実施形態に係る面発光レーザ30は、第2の多層膜反射鏡500において、第1の層500aと第2の層500bとの間に配置された定在波調整層2000を備える。
【0093】
定在波調整層2000は、例えば1ペア以上のアンドープもしくは低濃度ドープの屈折率層からなる。当該屈折率層は、例えばAlを組成に含む層であり、例えばAlGaAs系化合物半導体、AlGaInP系化合物半導体、AlGaN系化合物半導体等からなる。
【0094】
ところで、例えば図29に示すように、第1の層500aと第2の層500bとの間でのペアにおける屈折率層の光学厚さの比(膜厚比)の違いによって、第1の層500aにおける定在波と第2の層における定在波との間にずれが生じる。
定在波調整層2000は、この定在波間のずれを抑制する機能を有する。
例えば、定在波調整層2000のペアにおける各屈折率層の光学厚さは、第1の層500aの対応する屈折率層の光学厚さと、第2の層500bの対応する屈折率層の光学厚さとの間の光学厚さであることが好ましい。
例えば、定在波調整層2000のペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さは、第1の層500aのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも厚く、且つ、第2の層500bのペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも薄いことが好ましい。
例えば、定在波調整層2000のペアのうちAlを組成が低い方の屈折率層の光学厚さは、第1の層500aのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも厚く、且つ、第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも薄いことが好ましい。
【0095】
定在波調整層2000に1ペア以上の低濃度ドープの屈折率層を用いる場合には、該屈折率層のドープ濃度を第2の多層膜反射鏡500の高濃度不純物領域以外の領域を構成する例えばp型もしくはn型の化合物半導体のドープ濃度以下とすることが好ましい。
【0096】
定在波調整層2000に、上述した拡散抑制層1000の要素を導入して、不純物の拡散抑制機能を持たせることも可能である。
【0097】
以下に、第3の実施形態に係る面発光レーザ30の製造方法における積層体生成工程について、図24のフローチャートを参照して説明する。当該積層体生成工程では、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法が用いられる。
当該積層体生成工程では、図24に示されるステップS1.1~S1.4を実行する。
最初のステップS1.1では、基板100上にバッファ層150、第1の多層膜反射鏡200、第1のスペーサ層250、活性層300、第2のスペーサ層350をこの順に積層する。
次のステップS1.2では、第2の多層膜反射鏡500の第1の層500aを、被選択酸化層400’を内部に含むように形成する。
次のステップS1.26では、第1の層500a上に、定在波調整層2000を形成する。
次のステップS1.3では、定在波調整層2000上に、第2の多層膜反射鏡500の第2の層500bを形成する。
最後のステップS1.4では、第2の層500b上に、コンタクト層600を積層する。
【0098】
第3の実施形態に係る面発光レーザ30によれば、第1の層500aと第2の層500bとの間に定在波調整層2000が設けられるため、第1の層500aと第2の層500bとの間でのペアの屈折率層の光学厚さの比(膜厚比)の違いによる定在波のずれを調整することができる。
【0099】
第3の実施形態に係る面発光レーザ30の製造方法は、第2の層500bのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、第1の層500aのペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きく、積層体5000を生成する工程では、活性層300上に第1の層500aを積層し、該第1の層500a上に定在波調整層2000を積層し、該定在波調整層2000上に第2の層500bを積層する。
【0100】
6.<本技術の第4の実施形態に係る面発光レーザ>
図25は、第4の実施形態に係る面発光レーザ40の構成を示す断面図である。
第4の実施形態に係る面発光レーザ40は、図25に示すように、第2の多層膜反射鏡500内に拡散抑制層1000及び定在波調整層2000が設けられている。
具体的には、第2の多層膜反射鏡500において、第1の層500a内に拡散抑制層1000が配置され、且つ、第1の層500aと第2の層500bとの間に定在波調整層2000が配置されている。
詳述すると、定在波調整層2000が第1の層500aと第2の層500bとの間に配置され、拡散抑制層1000が第1の層500aにおける電流狭窄層400と定在波調整層2000との間に位置に配置されている。
ここでは、定在波調整層2000に上述した拡散抑制機能は持たせておらず、不純物が第1の層500a内まで流入している。
すなわち、面発光レーザ40では、例えば高濃度不純物領域Ir4が第1の層500aと第2の層500bとの間に跨るように設けられている。この高濃度不純物領域Ir4の底面が拡散抑制層1000上に位置している。
【0101】
以下に、第4の実施形態に係る面発光レーザ40の製造方法における積層体生成工程について、図26のフローチャートを参照して説明する。当該積層体生成工程では、化学気層成長(CVD)法、例えば有機金属気層成長(MOCVD)法を用いる。
当該積層体生成工程では、図26に示されるステップS1.1~S1.4を実行する。
最初のステップS1.1では、基板100上にバッファ層150、第1の多層膜反射鏡200、第1のスペーサ層250、活性層300、第2のスペーサ層350をこの順に積層する。
次のステップS1.21では、第2の多層膜反射鏡500の第1の層500aを、被選択酸化層400’及び拡散抑制層1000を内部に含むように形成する。
次のステップS1.26では、第1の層500a上に、定在波調整層2000を形成する。
次のステップS1.3では、定在波調整層2000上に、第2の多層膜反射鏡500の第2の層500bを形成する。
最後のステップS1.4では、第2の層500b上に、コンタクト層600を積層する。
【0102】
第4の実施形態に係る面発光レーザ40によれば、第1及び第2の層500a、500b間のペアの光学厚さの比(膜厚比)の違いによる定在波のずれを抑制でき、且つ、第3実施形態に比べて、製造効率には劣るものの低抵抗化及び拡散制御性には優れる。
【0103】
7.<本技術の第5の実施形態に係る面発光レーザ>
図27は、第5の実施形態に係る面発光レーザ50の構成を示す断面図である。
第5の実施形態に係る面発光レーザ50では、図27に示すように、第2の多層膜反射鏡500’のペアの屈折率層の光学厚さの比が該ペア間で同一となっている。
したがって、第2の多層膜反射鏡500’では、上記各実施形態及び各変形例のような第1及び第2の層の区別がない。
この場合であっても、第2の多層膜反射鏡500’のペアの各屈折率層のAlの組成、光学厚さの比、不純物の注入量、注入速度、注入時間等を制御することにより、第2の多層膜反射鏡500’に図27に示すように部分的に高濃度不純物領域Ir5を形成することが可能である。
【0104】
8.<本技術の第6の実施形態に係る面発光レーザ>
図28は、第6の実施形態に係る面発光レーザ60の構成を示す断面図である。
第6の実施形態に係る面発光レーザ60は、図28に示すように、上記第5の実施形態と同様の構成の第2の多層膜反射鏡500’を有するとともに、第2の多層膜反射鏡500’内に拡散抑制層1000を有する。
詳述すると、拡散抑制層1000は、第2の多層膜反射鏡500’内におけるコンタクト層600と電流狭窄層400との間に配置されている。
第6の実施形態に係る面発光レーザ60によれば、高濃度不純物領域Ir6を形成する際に、拡散抑制層1000で不純物の拡散を抑制できるので、上記第5の実施形態に比べ、拡散抑制層1000を形成する必要があるものの、第2の多層膜反射鏡500’のペアの設計(例えばAl組成、膜厚比等)の自由度を向上でき、且つ、不純物注入時の制御が簡単である。
【0105】
9.<本技術の変形例>
本技術は、上記各実施形態及び各変形例に限定されることなく、種々の変形が可能である。
【0106】
上記各実施形態及び各変形例では、アノード電極700と活性層300との間の電流経路上にある第2の多層膜反射鏡に高濃度不純物領域を設けているが、これに代えて、例えば、カソード電極900と活性層300との間の電流経路上にある第1の多層膜反射鏡に高濃度不純物領域を設けてもよい。この場合にも、上記各実施形態及び各変形例と同様の効果を得ることができる。
【0107】
上記各実施形態及び各変形例では、アノード電極700と活性層300との間の電流経路上にある第2の多層膜反射鏡に高濃度不純物領域を設けているが、これに加えて、例えば、カソード電極900と活性層300との間の電流経路上にある第1の多層膜反射鏡に高濃度不純物領域を設けてもよい。この場合にも、上記各実施形態及び各変形例と比べて、製造効率は劣るもののアノード電極700とカソード電極900との間の電流経路がより低抵抗化されるので、活性層300により効率的に電流を注入することができ、ひいてはさらなる低消費電力化を図ることができる。
【0108】
上記各実施形態及び各変形例に係る面発光レーザでは、主にAlGaAs系化合物半導体が材料に用いられているが、これに限らず、例えばAlGaInP系化合物半導体、AlGaN系化合物半導体等の他の化合物半導体を材料に用いてもよい。
【0109】
上記各実施形態及び各変形例に係る面発光レーザでは、発振波長が900nm以上の長波長のものに特に有効であると説明したが、無論、発振波長が900nm未満の中波長、短波長の面発光レーザにも本技術は適用可能であり、有効である。
【0110】
上記各実施形態及び各変形例では、第1及び第2の多層膜反射鏡200、500のいずれも半導体多層膜反射鏡であるが、これに限らない。
例えば、第1の多層膜反射鏡200が半導体多層膜反射鏡であり、且つ、第2の多層膜反射鏡500が誘電体多層膜反射鏡であってもよい。誘電体多層膜反射鏡も、分布型ブラッグ反射鏡の一種である。
例えば、第1の多層膜反射鏡200が誘電体多層膜反射鏡であり、且つ、第2の多層膜反射鏡500が半導体多層膜反射鏡であってもよい。
例えば、第1及び第2の多層膜反射鏡200、500のいずれも誘電体多層膜反射鏡であってもよい。
半導体多層膜反射鏡は、光吸収が少なく、且つ、導電性を有する。この観点からは、半導体多層膜反射鏡は、出射側にあり、且つ、アノード電極700から活性層300までの電流経路上にある第2の多層膜反射鏡500に好適である。
一方、誘電体多層膜反射鏡は、光吸収が極めて少ない。この観点からは、誘電体多層膜反射鏡は、出射側にある第2の多層膜反射鏡500に好適である。
【0111】
上記各実施形態及び各変形例では、メサ構造MSの頂部からレーザ光を出射する面発光レーザ(表面出射型の面発光レーザ)を例にとって説明したが、本技術は、基板の裏面側からレーザ光を出射する裏面出射型の面発光レーザにも適用可能である。
この場合には、基板に出射光の波長(発振波長)に対して透明又は半透明な基板を用いるか、基板に光を出射する出射窓を設ける必要がある。
【0112】
本技術に係る面発光レーザにおいて、第1及び第2のスペーサ層250、350は、必ずしも設けられていなくてもよい。
本技術に係る面発光レーザにおいて、電流狭窄層400は、第1の多層膜反射鏡500の内部に配置されてもよい。
本技術に係る面発光レーザにおいて、電流狭窄層400は、必ずしも設けられていなくてもよい。
本技術に係る面発光レーザにおいて、バッファ層150は、必ずしも設けられていなくてもよい。
本技術に係る面発光レーザにおいて、コンタクト層600は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0113】
上記各実施形態及び各変形例では、面発光レーザ10が2次元配列された面発光レーザアレイを例にとって説明したが、これに限らない。本技術は、面発光レーザ10が1次元配列された面発光レーザアレイ、単一の面発光レーザ10等にも適用可能である。
【0114】
10.<本技術を適用した面発光レーザの使用例>
本技術の上記各実施形態及び上記各変形例に係る面発光レーザは、例えば、TOF(Time Of Flight)センサなど、レーザ光を出射する電子機器へ適用することができる。TOFセンサへ適用する場合は、例えば、直接TOF計測法による距離画像センサ、間接TOF計測法による距離画像センサへ適用することが可能である。直接TOF計測法による距離画像センサでは、フォトンの到来タイミングを各画素において直接時間領域で求めるため、短いパルス幅の光パルスを光源から送信し、受光素子で電気的パルスを生成する。その際の光源に本開示を適用することができる。また、間接TOF法では、光で発生したキャリアーの検出と蓄積量が、光の到来タイミングに依存して変化する半導体素子構造を利用して光の飛行時間を計測する。本開示は、そのような間接TFO法を用いる場合の光源としても適用することが可能である。
【0115】
本技術に係る面発光レーザは、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される上記TOFセンサの光源として実現されてもよい。
【0116】
本技術に係る面発光レーザは、レーザ光により画像を形成又は表示する機器(例えばレーザプリンタ、レーザ複写機、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ、ヘッドアップディスプレイ等)の光源として実現されてもよい。
【0117】
以上説明したような面発光レーザを備える電子機器によれば、面発光レーザ10を備えるので、低消費電力化を図ることができる。
【0118】
以上説明した各実施形態及び各変形例は、相互に矛盾しない範囲内で組合せることが可能である。
【0119】
以上説明した各実施形態及び各変形例において、記載した具体的な数値、形状、材料(組成を含む)等は、一例であって、これらに限定されるものではない。
【0120】
また、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
(1)第1の多層膜反射鏡と、
第2の多層膜反射鏡と、
前記第1の多層膜反射鏡と前記第2の多層膜反射鏡との間に配置された活性層と、
を備え、
前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域が厚さ方向に部分的に設けられている、面発光レーザ。
(2)前記高濃度不純物領域は、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の面内方向に部分的に設けられている、(1)に記載の面発光レーザ。
(3)前記高濃度不純物領域は、少なくとも、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層に設けられている、(1)又は(2)に記載の面発光レーザ。
(4)前記高濃度不純物領域は、少なくとも、前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から近い方の表層には設けられていない、(1)~(3)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(5)前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、第1の層と、前記高濃度不純物領域が設けられた第2の層と、を含む、(1)~(4)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(6)前記第1の層と前記第2の層とが積層されている、(5)に記載の面発光レーザ。
(7)前記第1の層と前記第2の層との積層方向は、前記第1及び第2の多層膜反射鏡と前記活性層との並び方向に一致する、(6)に記載の面発光レーザ。
(8)前記第1の層は相対的に前記活性層から近く、且つ、前記第2の層は相対的に前記活性層から遠い、(5)~(7)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(9)前記高濃度不純物領域は、前記第2の層の厚さ方向の全域に設けられている、(5)~(8)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(10)前記第1の層には、高濃度不純物領域が設けられていない、(5)~(9)のいずれか1つに記載に面発光レーザ。
(11)前記第2の層の光学厚さは、前記第1の層の光学厚さよりも薄い、(5)~(10)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(12)前記第2の層と前記活性層との間に、1ペア以上のアンドープもしくは1x1018cm-3以下の低濃度ドープの屈折率層又はアンドープもしくは1x1018cm-3以下の低濃度ドープのGaAs層が配置されている、(5)~(11)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(13)前記屈折率層又は前記GaAs層は、前記第2の層と前記第1の層との間に配置されている、(12)に記載の面発光レーザ。
(14)前記第1の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、前記第2の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、Alの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きい、(5)~(13)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(15)前記第1の層の前記ペアを構成する前記屈折率層の光学厚さの合計と、前記第2の層の前記ペアを構成する前記屈折率層の光学厚さの合計とが等しい、(14)に記載の面発光レーザ。
(16)前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さに対する、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、1.2以上である、(5)~(15)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(17)前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対する、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さの比率は、0.8以下である、(5)~(16)に記載の面発光レーザ。
(18)前記第2の層と前記第1の層との間に配置された定在波調整層を更に備える、(14)~(17)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(19)前記定在波調整層は、Alを組成に含む層を有し、前記Alを組成に含む層の光学厚さは、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも厚く、且つ、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さよりも薄い、(18)に記載の面発光レーザ。
(20)前記定在波調整層は、Alを組成に含む層を有し、前記Alを組成に含む層の光学厚さは、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも薄く、且つ、前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さよりも厚い、(18)又は(19)に記載の面発光レーザ。
(21)前記第2の層のAlの組成が高い方の前記屈折率層は、Alの組成が90%以上である、(14)~(20)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(22)前記第2の層のAlの組成が低い方の前記屈折率層は、Alの組成が3%以上である、(14)~(21)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(23)前記第1の多層膜反射鏡及び/又は前記第2の多層膜反射鏡は、AlGaAs系化合物半導体、AlGaInP系化合物半導体又はAlGaN系化合物半導体を含む、(1)~(22)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(24)発振波長が900nm以上である、(1)~(23)に記載の面発光レーザ。
(25)前記高濃度不純物領域は、前記第2の層から前記第1の層側とは反対側に突出する突出部を有する、(8)に記載の面発光レーザ。
(26)前記第2の多層膜反射鏡に対して前記活性層側とは反対側にコンタクト層が配置され、前記突出部の少なくとも一部が前記コンタクト層内に配置される、(25)に記載の面発光レーザ。
(27)前記第1の多層膜反射鏡の少なくとも一部、前記活性層及び前記第2の多層膜反射鏡を含んでメサ構造が形成され、前記高濃度不純物領域は、前記メサ構造の周囲部に設けられている、(1)~(26)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(28)前記第2の多層膜反射鏡内に、酸化領域が非酸化領域を取り囲む電流狭窄層が配置され、前記高濃度不純物領域は、前記メサ構造の高さ方向から見て、前記非酸化領域を取り囲むように設けられている、(27)に記載の面発光レーザ。
(29)前記高濃度不純物領域の外径と内径との差は、1μm以上である、(28)に記載の面発光レーザ。
(30)前記高濃度不純物領域に接触する電極を更に備える、(1)~(29)のいずれか1つに記載の面発光レーザ。
(31)(1)~(30)のいずれか1つに記載の面発光レーザが2次元配列されている面発光レーザアレイ。
(32)(1)~(31)のいずれか1つに記載の面発光レーザを備える電子機器。
(33)少なくとも第1の多層膜反射鏡、活性層及び第2の多層膜反射鏡をこの順に積層して積層体を生成する工程と、
前記積層体の前記第2の多層膜反射鏡に対して前記活性層側とは反対側に絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜をエッチングして開口を形成する工程と、
前記開口を介して前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層を含む一部の層に不純物を拡散させる工程と、
を含む、面発光レーザの製造方法。
(34)前記拡散させる工程では、少なくとも、前記第2の多層膜反射鏡の相対的に前記活性層に近い方の表層には前記不純物を拡散させない、(33)に記載の面発光レーザの製造方法。
(35)前記積層体を生成する工程では、前記活性層上に前記第2の多層膜反射鏡の全てを積層する前に、前記活性層上に前記不純物の拡散を抑制する拡散抑制層を積層する、(33)又は(34)に記載の面発光レーザの製造方法。
(36)前記積層体を生成する工程では、さらに前記第2の多層膜反射鏡に対して前記活性層側とは反対側にコンタクト層を積層し、
前記拡散させる工程では、前記不純物を前記コンタクト層及び前記第2の多層膜反射鏡の前記活性層から遠い方の表層を含む一部の層に不純物を拡散させる、(33)~(35)のいずれか1つに記載の面発光レーザの製造方法。
(37)前記第2の多層膜反射鏡は、第1の層と、他の領域よりも不純物濃度の高い高濃度不純物領域が設けられた第2の層と、を含み、
前記第1の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、
前記第2の層は、少なくとも一方がAlを組成に含む屈折率層のペアを1ペア以上有し、
前記第2の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率は、前記第1の層の前記ペアのうちAlの組成が低い方の屈折率層の光学厚さに対するAlの組成が高い方の屈折率層の光学厚さの比率よりも大きく、
前記積層体を生成する工程では、前記活性層上に前記第1の層を積層し、該第1の層上に定在波調整層を積層し、該定在波調整層上に前記第2の層を積層する、(33)~(36)のいずれか1つに記載の面発光レーザの製造方法。
【符号の説明】
【0121】
10、10’、10’’、20、30、40、50、60:面発光レーザ、100:基板、200:第1の多層膜反射鏡、300:活性層、400:電流狭窄層、500、500’:第2の多層膜反射鏡、500a:第1の層、500b:第2の層、600:コンタクト層、650:絶縁膜、700:アノード電極(電極)、Ir:高濃度不純物領域。
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