(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】撮像装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
H04N 25/78 20230101AFI20250107BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20250107BHJP
H04N 25/772 20230101ALI20250107BHJP
【FI】
H04N25/78
H04N25/76
H04N25/772
(21)【出願番号】P 2022511980
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2021011921
(87)【国際公開番号】W WO2021200386
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020062174
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊矢
(72)【発明者】
【氏名】松本 功
【審査官】奥田 雄介
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134230(JP,A)
【文献】特開2020-48066(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136448(WO,A1)
【文献】特開2007-82063(JP,A)
【文献】特開2007-129602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/78
H04N 25/76
H04N 25/772
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光した光に応じて光電変換により電荷を発生させる受光素子と、
前記受光素子から前記電荷を読み出して、該電荷に応じたアナログ信号を出力する画素回路と、
前記アナログ信号と、電圧が時間に応じて変化する参照信号とを比較し、比較結果に応じた、単位時間毎に値が更新される時刻コードに基づき該アナログ信号をデジタル信号である画素データに変換する変換回路と、
をそれぞれ含む画素が行列状の配列で配置される画素アレイと、
前記時刻コードを発生する時刻コード発生部と、
前記画素データに対して信号処理を実行する信号処理部と、
少なくとも前記時刻コード発生部において前記時刻コードが発生されるタイミングを制御するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記時刻コードを前記画素それぞれに転送し、前記画素データを前記信号処理部に転送する、ための複数の転送部と、
を備え、
前記時刻コード発生部が前記画素アレイの第1辺の側に設けられ、
前記信号処理部が前記画素アレイに対して前記第1辺の反対側の第2辺の側に設けられ、
前記タイミング信号生成部が前記画素アレイに対して前記第2辺の側に設けられ、
前記複数の転送部が、それぞれ、前記第1辺の側から前記第2辺の側に、前記画素アレイを通じて配置され、
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記時刻コード発生部に転送するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部のそれぞれに設けられる、
撮像装置。
【請求項2】
前記第1辺は、前記配列における行の方向に沿った辺であり、
前記複数の転送部は、それぞれ前記配列における列の方向に沿って設けられる、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記画素回路に送信するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部にさらに設けられる、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記参照信号を生成する参照信号生成回路をさらに備え、
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記参照信号生成回路に送信するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部にさらに設けられる、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部のうち2以上の転送部それぞれに設けられる前記制御線のそれぞれで送信される前記タイミング信号の、該制御線それぞれの間での遅延を調整する遅延調整部を含む、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部のうち2以上の転送部に設けられる前記制御線のそれぞれにより、共通の前記タイミング信号を送信する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部から所定の転送部を間引いた残りの転送部に設けられる前記制御線のそれぞれにより、前記タイミング信号を送信する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部から、前記タイミング信号に転送先において要求される精度に応じて間引いた残りの転送部に設けられる前記制御線のそれぞれにより、前記タイミング信号を送信する、
請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記画素アレイを前記第1辺の方向に分割した分割画素アレイと、
前記分割画素アレイの前記第1辺の側に設けられる、前記分割画素アレイに対する前記時刻コードを発生する前記時刻コード発生部と、
該分割画素アレイの前記第2辺の側に設けられる、前記分割画素アレイから出力される前記画素データに対して前記信号処理を実行する前記信号処理部と、
少なくとも前記時刻コード発生部において前記時刻コードが発生されるタイミングを制御するタイミング信号を前記分割画素アレイに対して生成するタイミング信号生成部と、
前記分割画素アレイの前記第1辺の側から前記第2辺の側に通じて配置される1以上の転送部と、
を含むユニットが複数配置される、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記受光素子と、前記画素回路と、前記変換回路の一部と、が配置される第1の基板と、該第1の基板に設けられる第1の配線層と、を含む第1のチップと、
前記変換回路の他の一部と、前記信号処理部と、前記タイミング信号生成部と、が配置される第2の基板と、該第2の基板に設けられ、前記制御線を含む第2の配線層と、を含み、該第2の配線層の該第2の基板の反対側の面が、前記第1の配線層の前記第1の基板の反対側の面と貼り合わされる第2のチップと、
を有し、
前記第1のチップと前記第2のチップとが貼り合わされる貼り合わせ面と、前記制御線と、の間にシールド層が設けられた、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
受光した光に応じて光電変換により電荷を発生させる受光素子と、
前記受光素子から前記電荷を読み出して、該電荷に応じたアナログ信号を出力する画素回路と、
前記アナログ信号と、電圧が時間に応じて変化する参照信号とを比較し、比較結果に応じた、単位時間毎に値が更新される時刻コードに基づき該アナログ信号をデジタル信号である画素データに変換する変換回路と、
をそれぞれ含む画素が行列状の配列で配置される画素アレイと、
前記時刻コードを発生する時刻コード発生部と、
前記画素データに対して信号処理を実行する信号処理部と、
少なくとも前記時刻コード発生部において前記時刻コードが発生されるタイミングを制御するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記時刻コードを前記画素それぞれに転送し、前記画素データを前記信号処理部に転送するための複数の転送部と、
を有する撮像部と、
入射光を集光して前記受光素子に導く光学部と、
前記信号処理部で前記信号処理された前記画素データを記憶する記憶部と、
を備え、
前記撮像部は、
前記時刻コード発生部が前記画素アレイの第1辺の側に設けられ、
前記信号処理部が前記画素アレイに対して前記第1辺の反対側の第2辺の側に設けられ、
前記タイミング信号生成部が前記画素アレイに対して前記第2辺の側に設けられ、
前記複数の転送部が、それぞれ、前記第1辺の側から前記第2辺の側に、前記画素アレイを通じて配置され、
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記時刻コード発生部に転送するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部のそれぞれに設けられる、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
画素内に、アナログ信号による画素信号をデジタル信号に変換するADC(Analog to Digital Converter)を備える、画素内ADCアーキテクチャを用いた撮像素子が知られている。この画素内ADCアーキテクチャでは、ADCや時刻コード発生器などの画素制御を行うための回路ブロックに対して、回路を制御する制御信号線を、画素アレイの水平方向の両端側に配置されたタイミング生成回路から配線していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、特定の方向の動きを検出するリニアセンサが知られている。このリニアセンサを撮像装置を用いて構成する場合、撮像素子は、例えば画素信号が転送される垂直方向と比較して、各画素への制御信号が転送される水平方向に画素数の多い構造となる。このような撮像装置に対して上述した画素内ADCアーキテクチャを適用した場合、タイミング生成回路から配線される制御信号線が長くなり、制御信号線の負荷が増大する。これに伴い、制御信号線において撮像素子の水平方向に対して伝搬遅延が生じることになる。
【0005】
この伝搬遅延による遅延時間は、タイミング生成回路から遠くなるほど大きくなる。そのため、制御信号線に伝搬される制御信号のタイミングに、タイミング生成回路からの距離に応じて遠近差が発生し、この遠近差が撮像画像のシェーディングに繋がる。また、遅延時間そのものが大きくなるため、高速応答性が悪くなり、フレームレートの高速化が難しくなる。
【0006】
本開示は、画素の水平方向の位置に応じた制御信号の遅延を抑制可能な撮像装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る撮像装置は、受光した光に応じて光電変換により電荷を発生させる受光素子と、受光素子から電荷を読み出して、電荷に応じたアナログ信号を出力する画素回路と、アナログ信号と、電圧が時間に応じて変化する参照信号とを比較し、比較結果に応じた、単位時間毎に値が更新される時刻コードに基づきアナログ信号をデジタル信号である画素データに変換する変換回路と、をそれぞれ含む画素が行列状の配列で配置される画素アレイと、時刻コードを発生する時刻コード発生部と、画素データに対して信号処理を実行する信号処理部と、少なくとも時刻コード発生部において時刻コードが発生されるタイミングを制御するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、時刻コードを画素それぞれに転送し、画素データを信号処理部に転送する、ための複数の転送部と、を備え、時刻コード発生部が画素アレイの第1辺の側に設けられ、信号処理部が画素アレイに対して第1辺の反対側の第2辺の側に設けられ、タイミング生成回路が画素アレイに対して第2辺の側に設けられ、複数の転送部が、それぞれ、第1辺の側から第2の辺の側に、画素アレイを通じて配置され、タイミング信号生成部で生成されたタイミング信号を時刻コード発生部に転送するための制御線が、複数の転送部のうち2以上の転送部のそれぞれに設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態に適用可能な電子機器の一例の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施形態に適用可能な電子機器の利用例を説明するための模式図である。
【
図3】実施形態に適用可能な撮像装置としての固体撮像素子の積層構造の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に適用可能な画素の一例の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る固体撮像素子の一例のレイアウトを示す模式図である。
【
図6】実施形態に係る固体撮像素子の一例の構成を示す模式図である。
【
図7】実施形態に係るタイミング生成回路の一例の構成をより具体的に示すブロック図である。
【
図8】実施形態に係る、遅延を調整する遅延量調整部を含むタイミング生成回路の一例の構成を示すブロック図である。
【
図9】実施形態に適用可能な転送回路の一例の構成を示す回路図である。
【
図10A】実施形態に適用可能な転送回路による、画素アレイ部に対するアクセスの例を示す模式図である。
【
図10B】時刻コードの書き込みの様子を示す模式図である。
【
図11A】時刻コードの読み出しの様子を示す模式図である。
【
図11B】時刻コードの読み出しに係るタイミングを示す一例のタイミングチャートである。
【
図12】実施形態に係る各制御線のレイアウトの例を示す模式図である。
【
図13】実施形態に係る、転送回路110内に配置される制御線130に対するシールドの例を示す模式図である。
【
図14A】既存技術による固体撮像素子のレイアウトの例を示す図である。
【
図14B】実施形態に係る固体撮像素子のレイアウトの例を示す図である。
【
図15】実施形態の第1の変形例に係る固体撮像素子の一例の構成を示す模式図である。
【
図16A】実施形態の第2の変形例に係る固体撮像素子の一例の構成を示す模式図である。
【
図16B】実施形態の第2の変形例に係る、各ユニットのうち任意のユニットの構成をより具体的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより、重複する説明を省略する。
【0010】
以下、本開示の実施形態について、下記の順序に従って説明する。
1.実施形態に適用可能な構成
2.実施形態に係る構成
2-1.タイミング生成回路
2-2.転送回路
2-3.シールド構造
2-4.実施形態に係る効果
3.実施形態の第1の変形例
4.実施形態の第2の変形例
【0011】
[1.実施形態に適用可能な構成]
先ず、本開示の実施形態に適用可能な構成について説明する。
図1は、本開示の実施形態に適用可能な電子機器1000の一例の構成を示すブロック図である。この電子機器1000は、画像データを撮像する装置であり、光学部2000、固体撮像素子10、記憶部2001、制御部2002および通信部2003を備える。
【0012】
光学部2000は、入射光を集光して固体撮像素子10に導くものである。固体撮像素子10は、入射された光に応じて画素信号を出力する画素が行列状の配列で配置された画素アレイを含み、入射光に応じて撮像を行い画像データを出力する。この固体撮像素子10は、撮像出力の画像データを信号線2005を介して記憶部2001に供給する。
【0013】
記憶部2001は、固体撮像素子10から供給される画像データを記憶することができる。制御部2002は、固体撮像素子10を制御して撮像処理を実行させる。制御部2002は、例えば、信号線2004を介して、撮像タイミングなどを制御する各種同期信号を固体撮像素子10に供給する。
【0014】
通信部2003は、電子機器1000と外部の装置との通信を行うもので、例えば記憶部2001から読み出された画像データを外部に送信することができる。
【0015】
図2は、実施形態に適用可能な電子機器1000の利用例を説明するための模式図である。
図2に例示するように、電子機器1000は、ベルトコンベア510が設けられた工場などで利用することができる。
【0016】
ベルトコンベア510は、一定の速度で、被写体511を所定の方向に移動させる。電子機器1000は、ベルトコンベア510の近傍に固定され、この被写体511を撮像して画像データを生成する。画像データは、例えば、欠陥の有無などの検査に用いられる。これにより、FA(Factory Automation)が実現される。
【0017】
なお、
図2では、電子機器1000が一定速度で移動する被写体511を撮像する例について説明したが、電子機器1000の利用例は、この例に限定されるものではない。例えば、空撮など、被写体に対して電子機器1000が一定速度で移動して撮像する構成であってもよい。
【0018】
図3は、実施形態に適用可能な撮像装置としての固体撮像素子10の積層構造の一例を示す図である。固体撮像素子10は、回路チップ301と、その回路チップ301に貼り合わされて積層された受光チップ300とを備える。これらの受光チップ300および回路チップ301は、ビアなどの接続部を介して電気的に接続される。なお、ビアの他、Cu-Cu接合やバンプにより、受光チップ300および回路チップ301の電気的な接続を実現することができる。
【0019】
図4は、実施形態に適用可能な画素11の一例の構成を示すブロック図である。
図4に示されるように、画素11は、画素回路100とADC(Analog to Digital Converter)102とを含む。
【0020】
画素回路100は、受光した光量に応じた電荷信号をアナログの画素信号SIGとしてADC102に出力する。画素回路100は、受光素子としてのフォトダイオードと、信号OFGに応じてフォトダイオードに蓄積された電荷を放出して露光時間を調整する排出トランジスタと、信号TRGに応じてフォトダイオードに蓄積された電荷を浮遊拡散層(FD)に転送させる転送トランジスタと、信号RSTに応じてFDをリセットするリセットトランジスタと、を含む。
【0021】
画素回路100において、信号OFGにより排出トランジスタをオン状態としてフォトダイオードに蓄積された電荷を排出することで、露光が開始される。信号RSTによりリセットトランジスタをオン状態としてFDをリセットした後、信号TRGにより転送トランジスタをオン状態とし、露光によりフォトダイオードに蓄積された電荷をFDに転送し、蓄積する。FDに蓄積された電荷は、FDから読み出されることにより電圧に変換され、アナログの画素信号SIGとして、画素回路100から出力される。
【0022】
ADC102は、画素回路100から供給されたアナログの画素信号SIGをデジタル信号に変換する。ADC102は、比較回路51とデータ記憶部52とを含む。比較回路51は、DAC(Digital to Analog Converter)101から供給される参照信号REFと画素信号SIGとを比較し、比較結果を表す比較結果信号として、出力信号VCOを出力する。比較回路51は、参照信号REFと画素信号SIGが同一(の電圧)になったとき、出力信号VCOを反転させる。
【0023】
比較回路51は、差動入力回路61、電圧変換回路62および正帰還回路63を含む。差動入力回路61は、画素11内の画素回路100から出力された画素信号SIGと、DAC101から出力された参照信号 REFとを比較し、画素信号SIGが参照信号REFよりも高いときに所定の信号(電流)を出力する。電圧変換回路62は、差動入力回路61から出力された信号の電流を、電圧による信号に変換する。電圧変換回路62から出力された信号に基づき、画素信号SIGが参照信号REFより高い場合に反転する比較結果信号を出力する。この正帰還回路63の出力が、上述した出力信号VCOとして、データ記憶部52に供給される。
【0024】
データ記憶部52には、比較回路51から出力信号VCOが入力される他、
図5を用いて後述する画素駆動回路103から、画素信号の書き込み動作であることを表す信号WR、画素信号の読み出し動作であることを表す信号RD、および、画素信号の読み出し動作中における画素11の読み出しタイミングを制御する信号WORDが供給される。また、時刻コード転送部23を介して、
図5を用いて後述する時刻コード発生器104で発生された時刻コードも供給される。
【0025】
データ記憶部52は、信号WRおよび信号RDに基づいて、時刻コードの書き込み動作と読み出し動作を制御するラッチ制御回路71と、時刻コードを記憶するラッチ記憶部72と、を含む。
【0026】
ラッチ制御回路71は、時刻コードの書き込み動作においては、比較回路51から ハイ(High)状態の出力信号VCOが入力されている間、時刻コード転送部23から供給される、単位時間毎に更新される時刻コードをラッチ記憶部72に記憶させる。ラッチ制御回路71は、参照信号REFと画素信号SIGとが同一(の電圧)になり、比較回路51から供給される出力信号VCOがロー(Low)状態に反転されたとき、供給される時刻コードの書き込み(更新)を中止し、最後にラッチ記憶部72に記憶された時刻コードをラッチ記憶部72に保持させる。ラッチ記憶部72に記憶された時刻コードは、画素信号SIGと参照信号REFとが等しくなった時刻を表しており、画素信号SIGがその時刻の基準電圧であったことを示すデータ、即ち、デジタル化された光量値を表す。
【0027】
参照信号REFの掃引が終了し、画素アレイ内の全ての画素11のラッチ記憶部72に時刻コードが記憶された後、画素11の動作が、書き込み動作から読み出し動作に変更される。
【0028】
ラッチ制御回路71は、時刻コードの読み出し動作においては、読み出しタイミングを制御する信号WORDに基づいて、画素11が自身の読み出しタイミングとなったときに、ラッチ記憶部72に記憶されている時刻コード(デジタルの画素信号SIG)を、時刻コード転送部23に出力する。時刻コード転送部23は、供給された時刻コードを、列方向(垂直方向)に順次転送し、
図5を用いて後述する信号処理回路105に供給する。
【0029】
なお、
図4の構成において、画素11に含まれる構成のうち、アナログ信号に係る部分、すなわち画素回路100と、ADC102の一部(例えば差動入力回路61の一部)は、
図3に示す受光チップ300に設けられる。また、画素11に含まれるデジタル信号に係る部分、例えば差動入力回路61の他の部分を含む比較回路51の他の一部と、DAC101と、時刻コード転送部23は、
図3に示す回路チップ301に設けられる。
【0030】
図5は、実施形態に係る固体撮像素子10の一例のレイアウトを示す模式図である。より具体的には、
図5は、固体撮像素子10の回路チップ301のレイアウト例を示している。なお、
図5および以降の同様の図面において、図面の左右方向を水平方向、上下方向を垂直方向とする。
【0031】
図5の例では、回路チップ301において、下端部から上方向に向けて出力インタフェース106、信号処理回路105およびタイミング生成回路120が配置される。また、上端部から下方向に向けて、DAC101、画素駆動回路103および時刻コード発生器104が配置される。タイミング生成回路120と時刻コード発生器104との間に、画素アレイ部150が配置される。
【0032】
画素アレイ部150は、行列状の配列で配置される複数の画素11を含む。このとき、回路チップ301上には、上述したように、画素11におけるADC102の、例えば受光チップ300上に配置される、差動入力回路61の一部を除いた部分が配置される。そのため、
図5では、
図4のADC102においてこの受光チップ300上に配置される差動入力回路61の一部を除いた構成を、ADC102として示している。これは、以降の同様の図面においても共通である。
【0033】
画素アレイ部150に対し、画素アレイ部150の上端側(第1辺の側)から下端側(第2辺の側)に向けて、水平方向において所定の間隔で、複数の転送回路110が配置される。すなわち、画素アレイ部150において水平方向のADC102(画素11)の並びを行、垂直方向のADC(画素11)の並びを列、とすると、各転送回路110は、画素アレイ部150に対して列方向に沿って配置される。
【0034】
図5の例では、各転送回路110は、各行において、左右に1つずつのADC102が接続される構成となっている。すなわち、
図5の例では、画素アレイ部150は、転送回路110の個数は、「行方向の画素数/2」[個]となる。
【0035】
各転送回路110は、上述した時刻コード転送部23を含む。また、各転送回路110は、画素アレイ部150の各画素11から出力された画像データが、信号処理回路105に転送される経路にもなっている。
【0036】
また、実施形態に係る画素アレイ部150は、例えば行方向に数千画素、列方向に数十画素の、水平方向に極めて細長い形状とされている。すなわち、画素アレイ部150は、サイズの縦横比が極めて大きい。
【0037】
なお、
図5および以降の同様の図面の例では、各転送回路110が、2つのADC102の間に配置されるように示しているが、これは説明のためのものである。実際には、各ADC102(画素11)は、等間隔の格子状に配置され、各転送回路110は、各ADC102とは異なる層に配置される。すなわち、各転送回路110は、各ADC102(画素11)と、積層構造における層方向に重複する部分を持って配置される。
【0038】
(2.実施形態に係る構成)
次に、本開示の実施形態に係る構成について説明する。
図6は、実施形態に係る固体撮像素子10の一例の構成を示す模式図である。
図6に示すように、実施形態では、各転送回路110に対して制御線130がそれぞれ配置され、各制御線130により、タイミング生成回路120と、当該タイミング生成回路120に対して画素アレイ部150の反対側に配置される構成と、が接続される。タイミング生成回路120は、当該固体撮像素子10を駆動するための種々のタイミング信号を生成する。タイミング生成回路120は、少なくとも時刻コード発生器104が時刻コードを発生するタイミングを制御するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部としての機能を有する。
【0039】
より具体的には、制御線130は、複数の制御線130a、130b、130cおよび130dを含む。タイミング生成回路120は、制御線130a、130b、130cおよび130dに対して、それぞれ異なるタイミング信号を出力することが可能である。
【0040】
図6の例では、制御線130aは、タイミング生成回路120により生成されたタイミング信号を画素駆動回路103に供給するための制御線である。画素駆動回路103は、制御線130aを介して供給されたタイミング信号に基づき、画素回路100において各画素11を駆動するための駆動信号(例えば上述した信号OFG、信号TRGおよび信号RST)を生成する。画素駆動回路103は、生成した各駆動信号を、転送回路110を介して各画素11に供給する。
【0041】
制御線130bは、タイミング生成回路120により生成されたタイミング信号を時刻コード発生器104に供給するための制御線である。時刻コード発生器104は、制御線130bを介して供給されたタイミング信号に基づき、単位時間毎に値が更新される時刻コードを発生する。時刻コード発生器104は、発生した時刻コードを、転送回路110を介して各画素11に供給する。
【0042】
制御線130cは、タイミング生成回路120により生成されたタイミング信号を各ADC102に対して供給するための制御線である。タイミング信号は、例えば上述した信号WR、信号RDおよび信号WORDを含み、ADC102は、このタイミング信号により駆動される。
【0043】
また、制御線130dは、タイミング生成回路120により生成されたタイミング信号をDAC101に供給するための制御線である。DAC101は、このタイミング信号に応じて例えば参照信号REFの掃引を開始する。
【0044】
実施形態では、タイミング生成回路120は、各転送回路110に配置される各制御線130a、130b、130cおよび130dに対してそれぞれ出力される各タイミング信号における、各転送回路110間での遅延を抑制可能に構成される。
【0045】
なお、以下、制御線130a、130b、130cおよび130dを特に区別する必要の無い場合には、これら制御線130a、130b、130cおよび130dを制御線130として纏めて説明を行う。
【0046】
(2-1.タイミング生成回路)
次に、実施形態に係るタイミング生成回路120について、より詳細に説明する。
【0047】
図7は、実施形態に係るタイミング生成回路120の一例の構成をより具体的に示すブロック図である。
図7において、タイミング生成回路120は、複数のタイミング生成回路120
1、120
2、…、120
Nを含む。
図7の例では、各タイミング生成回路120
1、120
2、…、120
Nは、それぞれ2つの転送回路110の各制御線130に対して共通にタイミング信号を供給している。制御線130間での遅延が特性に与える影響を無視できる場合、このように、1つのタイミング生成回路120
1から複数の制御線130に対してタイミング信号を供給することが可能となる。
【0048】
ここで、
図7に示されるように、複数のタイミング生成回路120
1、120
2、…、120
Nのうち、例えば端部のタイミング生成回路120
1の側から、タイミング信号の基準となる外部同期信号が入力される場合について考える。
【0049】
タイミング生成回路1201は、入力された外部同期信号に基づきタイミング信号を生成して制御線130に出力すると共に、外部同期信号に基づく同期信号1211を次段のタイミング生成回路1202に送信する。タイミング生成回路1202は、入力された同期信号1211に基づきタイミング信号を生成して制御線130に出力すると共に、同期信号1211を同期信号1212として次のタイミング生成回路に送信する。このようにして、外部同期信号に基づく同期信号1211、1212、…が、順次、次のタイミング生成回路に送信される。
【0050】
この場合、例えば
図7において左端のタイミング生成回路120
1からタイミング生成回路120
2に送信される同期信号121
1と、右端のタイミング生成回路120
Nに送信される同期信号とでは、遅延の影響で同期にずれが発生する。
【0051】
各タイミング生成回路1201、1202、…、120Nにおいて、供給される同期信号の同期がずれると、タイミング生成回路1201、1202、…、120Nに接続される各制御線130により伝搬されるタイミング信号のタイミングに、同期のずれに応じで遠近差が発生し、この遠近差が撮像画像のシェーディングに繋がる。
【0052】
そのため、実施形態では、各タイミング生成回路1201、1202、…は、入力された同期信号1211、1212、…に基づき生成される各タイミング信号に対して、それぞれ所定の遅延を与える。
【0053】
図8は、実施形態に係る、遅延を調整する遅延量調整部を含むタイミング生成回路の一例の構成を示すブロック図である。
図8において、タイミング生成回路120
1は、タイミング生成部122
1と、遅延量調整部123
1と、を含む。各タイミング生成回路120
2、…、120
Nも同様に、それぞれタイミング生成部122
2、…、122
Nと、遅延量調整部123
2、…、123
Nと、を含む。
【0054】
ここで、左端に配置されるタイミング生成回路1201において、遅延量調整部1231に対して外部同期信号が入力されるものとする。この場合、単純に水平方向の距離で考えると、外部同期信号が入力される左端のタイミング生成回路1201の遅延が略ゼロとされる一方、外部同期信号の入力位置から遠い右端に配置されるタイミング生成回路120Nの遅延が最大となる。したがって、各タイミング生成回路1201、1202、…、120Nに与える遅延量を、基準となる外部同期信号が供給される左端のタイミング生成回路1201において最大とし、当該外部同期信号が供給される位置から最も遠い右端のタイミング生成回路120Nでは最小とする。
【0055】
図8の例では、外部同期信号が左端のタイミング生成回路120
1に供給され、遅延量調整部123
1に入力される。遅延量調整部123
1は、入力された外部同期信号に基づく同期信号を次段のタイミング生成回路120
2に供給すると共に、当該外部同期信号に対して所定の遅延量を与えて遅延させた同期信号を、タイミング生成部122
1に供給する。ここで、遅延量調整部123
1により与えられる遅延量は、タイミング生成回路120に含まれる各タイミング生成回路120
1、1202
、…、120
Nにおいてそれぞれ与えられる遅延量の中で最大の遅延量となる。
【0056】
タイミング生成部1221は、遅延量調整部1231で遅延を与えられた同期信号に基づき、タイミング信号を生成し、制御線130に出力する。
【0057】
タイミング生成回路1202において、遅延量調整部1232は、入力された同期信号1211を同期信号1212としてさらに次段のタイミング生成回路(図示しない)に供給すると共に、当該同期信号1211に対して所定の遅延量を与えて遅延させた同期信号を、タイミング生成部1222に供給する。ここで、タイミング生成回路1202は、タイミング生成回路1201よりも外部同期信号が供給される位置から遠い。そのため、タイミング生成回路1202において遅延量調整部1232により与えられる遅延量は、前段のタイミング生成回路1201において遅延量調整部1231により与えられる遅延量より小さなものとなる。
【0058】
さらに、外部同期信号が供給される位置から最も遠い、タイミング生成回路120Nにおいて遅延量調整部123Nにより与えられる遅延量は、各タイミング生成回路1201、1202、…、120Nのうち最も小さなものとなる。
【0059】
このように、各タイミング生成回路1201、1202、…、120Nにおいて、出力するタイミング信号に対して外部同期信号が供給される位置からの距離に応じた遅延量を与えることで、各タイミング生成回路1201、1202、…、120Nから出力される各タイミング信号の遅延量が均一化される。これにより、同期のずれによる遠近差の発生が抑制され、撮像画像におけるシェーディングの発生を防ぐことができる。
【0060】
(2-2.転送回路)
次に、実施形態に係る転送回路110について、より詳細に説明する。
【0061】
図9は、実施形態に適用可能な転送回路110の一例の構成を示す回路図である。実施形態に適用可能な転送回路110は、D-FF(フリップフロップ)1110を核とするシフトレジスタであり、MCKクロック転送部1101と、FFデータ転送部1102と、REN(リードイネーブル)信号転送部1103と、を含む。REN信号転送部1103は、図の左側のリードイネーブル信号RENLと、右側のリードイネーブル信号RENRと、を転送するために、転送回路110の左右側にそれぞれ設けられる。
【0062】
それぞれD-FF1110の1段分の回路ブロック11001、11002、…、1100Mにおいて、D-FF1110の出力に接続されるFF出力段データ線(以下、MBL)に対し、読み出し書き込み双方向バッファ1111Lおよび1111R(以下、双方向バッファ1111L、1111R)が左右に設けられ、MBLの初期化およびローレベル固定のためのREPINI(転送回路イニシャライズ)用のnMOS(n-Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ1112が接続される。
【0063】
また、
図9の例では、転送回路110は、ビット毎の転送回路110
1、110
2、…、110
n-1を含み、ビットを通じてM個の回路ブロック1100
1、1100
2、…、1100
Mを有している。画素アレイ部150に含まれる各画素11は、所定数の画素11を含む、クラスタと呼ばれる単位で、回路ブロック1100
1~1100
M毎に画素読み出しのアクセスが制御される。
【0064】
信号MCKは、D-FF1110の動作クロック信号である。D-FF1110は、回路ブロック11001のビットライン毎、すなわち、ビット毎の転送回路1101、1102、…、110n-1にそれぞれ配置される。双方向バッファ1111Lおよび1111Rは、書き込みイネーブル信号WENと、読み出しイネーブル信号RENとにより制御することで、各回路ブロック11001~1100Mにおいて、MBLからローカルビットライン(以下、LBL)へ書き込む際のバッファ、または、LBLからMBLへの読み出す際のバッファとして動作する。
【0065】
信号WENは、転送回路110が書き込み用の転送回路として用いられる場合にハイレベルに、読み出し用の転送回路として用いられる場合にローレベルに固定される。この回路構成とすることによって、転送回路110を書き込み用と読み出し用転送回路とで共通化することができる。
【0066】
双方向バッファ1111Lおよび1111Rを含めて、MBLの左右にLBL-LとLBL-Rとを設けることによって、信号WORDによるデータ読み出しの信号遷移を、D-FF1110を動作させるタイミングに隠蔽することができる。これに伴い、リードイネーブル信号RENも、MBLに対して左右に、リードイネーブル信号REN-LおよびREN-Rとして入力される。
【0067】
図10Aは、実施形態に適用可能な転送回路110による、画素アレイ部150に対するアクセスの例を示す模式図である。画素アレイ部150をそれぞれ所定数の画素11を含むクラスタ140と呼ばれる単位に分割し、各クラスタ140のそれぞれに対して1対1に、転送回路110の各回路ブロック1100
1、1100
2、…、1100
Mがそれぞれ対応付けられる。
【0068】
例えば、
図10Aの右側に例示されるように、クラスタ140が水平4画素×垂直16画素の64画素を含むものとし、転送回路110がクラスタ140の行方向の中央部110’に沿って配置される。転送回路110の1つの回路ブロック(例えば回路ブロック1100
1は、この64画素に対して、中央部110’の左右の画素11に対し、例えば図中において各画素11に示される番号の順に画素11が指定されて、時刻コードの転送(書き込み)、および、画素データの転送(読み出し)が行われる。
【0069】
なお、
図10Aでは、説明のため、画素アレイ部150の右端のクラスタ140の列に対して転送回路110が配置されるように示しているが、実際には、画素アレイ部150に含まれる各クラスタ140の列に対して、それぞれ転送回路110が配置される。
【0070】
図10Bは、時刻コードの書き込みの様子を示す模式図である。時刻コード発生器104で発生された時刻コードが、各回路ブロック1100
1、1100
2、…、1100
Mからなるシフトレジスタを介して、それぞれ対応するクラスタ140の各画素11に伝搬される。
【0071】
図11Aは、時刻コードの読み出しの様子を示す模式図である。また、
図11Bは、時刻コードの読み出しに係るタイミングを示す一例のタイミングチャートである。所定の読み出し画素選択信号により、クラスタ140に含まれる画素11から読み出しを行う読み出し画素を選択し、選択された読み出し画素のラッチ記憶部72に記憶される時刻コードを読み出し、信号処理回路105に転送する。
【0072】
例えば、読み出し画素選択信号により番号「0」の画素11を指定する場合、この番号「0」の画素11はクラスタ140の左側の画素であるので、左側の読み出しイネーブル信号RENLをハイ状態とし、クロックMCKを、例えば
図11Bに枠Bで示すように4クロック打つことで、転送回路110をシフトレジスタ動作させる。番号「0」の画素11から読み出された時刻コードは、双方向バッファ1111Lを介してMBLに渡され、信号処理回路105に転送される。
【0073】
読み出し画素選択信号により番号「1」の画素11を指定する場合も同様である。この番号「1」の画素11はクラスタ140の右側の画素であるので、右側の読み出しイネーブル信号RENRをハイ状態とし、クロックMCKを例えば4クロック打つことで、転送回路110をシフトレジスタ動作させる。番号「1」の画素11から読み出された時刻コードは、双方向バッファ1111Rを介してMBLに渡され。信号処理回路105に転送される。
【0074】
実施形態では、このような動作を行う転送回路110内に、各制御線130a~130dを配置するレイアウトとしている。
図12は、実施形態に係る各制御線130a~130dのレイアウトの例を示す模式図である。
図12の例では、制御線130aが図の左側のREN信号転送部1103に対して内側に配置され、制御線130bがMCKクロック転送部1101に対して内側に配置されている。また、制御線130dが図の右側のREN信号転送部1103に対して内側に配置されている。さらに、制御線130cが、制御線130dに対してさらに内側に配置されている。
【0075】
各制御線130a~130dのうち、制御線130a、130bおよび130dは、それぞれタイミング生成回路120で生成されたタイミング信号を、画素アレイ部150の外部に配置される画素駆動回路103、時刻コード発生器104およびDAC101に供給するため、転送回路110を貫通する。一方、タイミング信号を各ADC102に供給するための制御線130cは、例えば転送回路110の領域内で、左右に分岐する。
【0076】
(2-3.シールド構造)
次に、実施形態に係る、制御線130に対するシールド構造について説明する。転送回路110内、すなわち、転送回路110に対して積層の層方向に重複する部分を有して制御線130が配置される場合、制御線130により送信されるデジタル信号と、画素回路100や差動入力回路61内で扱われるアナログ信号との干渉に考慮する必要がある。実施形態では、転送回路110内に配置される制御線130を、低抵抗の配線(例えば電源配線)を用いてシールドする。これにより、制御線130により送信されるデジタル信号の、画素回路100や差動入力回路61の出力といったアナログ信号に対する干渉を抑制することが可能である。
【0077】
図13は、実施形態に係る、転送回路110内に配置される制御線130に対するシールドの例を示す模式図である。
図13のセクション(a)は、
図13のセクション(b)に示すA-A’断面図の例である。
【0078】
受光チップ300は、第1基板13と、第1基板13上に設けられる配線層14と、を含む。受光チップ300において、第1基板13は、画素回路100と、ADC102における差動入力回路61の一部と、が配置される。配線層14は、各配線17が設けられる。
【0079】
回路チップ301は、受光チップ300と同様に、第2基板15と、第2基板上に設けられる配線層16と、を含む。回路チップ301において、第2基板15は、各素子19が設けられ、ADC102における差動入力回路61の他の一部と、データ記憶部52と、電圧変換回路62と、正帰還回路63と、が配置される。配線層16は、各配線17が設けられると共に、制御線130が設けられる。
【0080】
受光チップ300と、回路チップ301とは、配線層14の表面と、配線層16の表面とにより貼り合わされる。より詳細には、受光チップ300と、回路チップ301とは、配線層14における第1基板13と反対側の面と、配線層16における第2基板15と反対側の面と、を貼り合わせ面として貼り合わされて、固体撮像素子10が構成される。
【0081】
このとき、受光チップ300と、回路チップ301とは、配線層14および16の配線17を通じて、Cu-Cu接合などによる接合部18を介して電気的に接続される。
【0082】
ここで、実施形態に係る固体撮像素子10では、回路チップ301において、制御線130と貼り合わせ面との間に、シールド1200が設けられる。シールド1200は、上述したように、電源配線などの低抵抗の配線を用いて構成され、所定の電位が印加される。この制御線130と貼り合わせ面との間のシールド1200により、制御線130に送信されるデジタル信号の、受光チップ300におけるアナログ信号に対する干渉を抑制することができる。
【0083】
また、この制御線130と貼り合わせ面との間のシールド1200は、回路チップ301における第2基板15からの発光を遮光する遮光膜としても機能する。
【0084】
さらに、
図13の例では、制御線130の両側にも、シールド1200が設けられている。これにより、制御線130に送信されるデジタル信号の、回路チップ301における各配線17に対する干渉を抑制することができる。
【0085】
(2-4.実施形態に係る効果)
次に、実施形態に係る構成による効果について、
図14Aおよび
図14Bを用いて説明する。例として、転送回路110内に制御線130を通すことで、画素制御信号の遅延をどの程度抑えられるかを示す。
【0086】
前提として、
図14Bを参照し、画素アレイ部150の水平方向の画素領域の長さを10[cm]、垂直方向の長さを500[μm]とする。また、時刻コード発生器104の垂直方向の長さを200[μm]、転送回路110の垂直方向の長さ300[μm]とし、1[cm]当たりの遅延時間を遅延時間ΔTとする。
【0087】
図14Aは、既存技術による固体撮像素子10のレイアウトの例を示す。
図14Aの例では、画素アレイ部150の左右すなわち水平方向の両端に、タイミング生成回路120aおよび120bをそれぞれ配置し、画素アレイ部150の水平方向に平行に配置された制御線132aおよび132bに対して、それぞれタイミング信号を出力している。
【0088】
このように、既存技術では、左右の2つのタイミング生成回路120aおよび120bから制御線132aおよび132bを配線しているので、左のタイミング生成回路120aでは、画素アレイ部150の左半分を制御し、右のタイミング生成回路120bでは画素アレイ部150の右半分を制御することとなる。つまり、左右の遅延時間差としては、1[cm]当たりの遅延時間が遅延時間ΔTなので、「5×ΔT」となる。この遅延時間差は、シェーディングとなる。また、サイズの縦横比が非常に大きな画素アレイ部150の長い辺に沿ってタイミング信号を送信するため、遅延時間そのものが大きいことで、高フレームレートを実現することが難しくなる。
【0089】
図14Bは、実施形態に係る固体撮像素子10のレイアウトの例を示す。実施形態では、タイミング生成回路120から画素駆動回路103までの制御線130の長さは、転送回路110と時刻コード発生器104との垂直方向の長さの和となるので、300[μm]+200[μm]=500[μm]となる。この距離は、画素アレイ部150内の位置によってばらつかず、制御線130により送信されるタイミング信号における遠近差が発生しない。また、タイミング信号の遅延時間は、(500[μm]/1[cm])×ΔT=0.05×ΔTとなり、既存技術の例と比べて1/100となる。これにより、高速な応答が可能となり、高フレームレートが実現できる。
【0090】
また、既存技術では、水平方向の長さが長くなるほど、制御線132aおよび132bが長くなり、遅延時間が大きくなる。一方、実施形態の構成では、制御線130の長さは、上述した転送回路110と時刻コード発生器104との垂直方向の長さの和であり、一定である。つまり、水平方向の長さが長いほど、既存技術に対する遅延時間の改善効果が大きくなる。
【0091】
(3.実施形態の第1の変形例)
次に、実施形態の第1の変形例について説明する。実施形態の第1の変形例は、転送回路110に対して配置する制御線130あるいは制御線130により送信されるタイミング信号の構成を、制御線130に含まれる各制御線130a~130dがタイミング信号を供給する供給先の機能に応じて異ならせる例である。
【0092】
以下では、転送回路110に対して配置する制御線130の構成を異ならせる場合について説明する。
【0093】
図15は、実施形態の第1の変形例に係る固体撮像素子10の一例の構成を示す模式図である。例えば、画素駆動回路103は、各列に設けられる。また、ADC102は、画素11毎に設けられる。そのため、画素駆動回路103およびADC102は、高速動作が必要であるため、画素駆動回路103にタイミング信号を供給する制御線130aと、各ADC102にタイミング信号を供給する制御線130cと、を全ての転送回路110に配置する。
【0094】
これに対して、時刻コード発生器104は、画素駆動回路103や、各ADC102と比較すると、それほど高速動作は要求されない。そのため、時刻コード発生器104は、例えば複数列毎に設けることができる。
図15の例では、時刻コード発生器104にタイミング信号を供給する制御線130dは、1つずつ転送回路110を間引いて、1つおきに転送回路110に配置される。
【0095】
DAC101は、例えば画素アレイ部150に1つあるいは2つを設ければよい。DAC101を1つだけ設けた場合は、画素アレイ部150の全画素11で1つの参照信号REFを共通で用いる。DAC101を2つ設けた場合は、2つのDAC101で生成された各参照信号REFをマージしてもよいし、画素アレイ部150において領域を分けて、2つのDAC101で生成された参照信号REFを、それぞれの領域に供給してもよい。
【0096】
このように、DAC101は、さらに高速動作が要求されない。
図15は、画素アレイ部150に2つのDAC101が設けられる場合の例であって、DAC101にタイミング信号を供給する制御線130bは、3つずつ転送回路110を間引いて、3つおきに転送回路110に配置される。
【0097】
このように、転送回路110に対して配置する制御線130の構成を異ならせることで、消費電力の低減化や、制御線130により送信されるタイミング信号によるノイズの発生の抑制などの効果が期待できる。
【0098】
(4.実施形態の第2の変形例)
次に、実施形態の第2の変形例について説明する。実施形態の第2の変形例は、画素アレイ部150の画素領域を分割し、分割した各分割領域毎にタイミング信号の送信を行うユニット構成を取る。換言すれば、ユニットは、画素アレイ部150の画素領域を分割した分割画素アレイ部である。
【0099】
図16Aは、実施形態の第2の変形例に係る固体撮像素子10の一例の構成を示す模式図である。
図16Aにおいて、固体撮像素子10は、複数のユニット200
1、200
2、…、200
Nを含み、各ユニット200
1、200
2、…、200
Nは、画素アレイ部150をユニット200
1~200
Nの数に応じて分割した分割画素アレイ部152
1~152
Nを含む。なお、
図16Aでは、各ユニット200
1、200
2、…、200
Nは、それぞれユニット#1、ユニット#2、…、ユニット#Nとしても示されている。
【0100】
各ユニット2001~200Nのそれぞれは、DAC1011~101N、画素駆動回路1031~103N、時刻コード発生器1041~104N、タイミング生成回路12010~1201N、信号処理回路1051~105Nのそれぞれを1対1で含む。なお、出力インタフェース106は、各ユニット2001~200Nに対して共通に設けられる。
【0101】
図16Bは、実施形態の第2の変形例に係る、各ユニット200
1~200
Nのうち任意のユニット200
X(ユニット#X)の構成をより具体的に示すブロック図である。
図16Bに示されるように、ユニット200
Xは、DAC101
Xと、画素駆動回路103
Xと、分割画素アレイ部152
Xと、タイミング生成回路120
Xと、信号処理回路105
Xと、を含む。また、
図16Bの例では、ユニット200
Xは、4つの転送回路110
11、110
12、110
13および110
14が配置されている。
【0102】
タイミング生成回路120Xは、例えば左隣のユニット#(X-1)から同期信号121X-1を受け取り、当該同期信号121X-1に基づきタイミング信号を生成して出力すると共に、同期信号121X-1を同期信号121Xとして、例えば右隣のユニット#(X+1)に渡す。
【0103】
タイミング生成回路120Xで生成されたタイミング信号は、制御線130に対して送信される。制御線130は、4つの制御線1301、1302、1303および1304に分岐され、それぞれ各転送回路11011、11012、11013および11014に1対1に配置される。各制御線1301、1302、1303および1304は、それぞれ図示しない制御線130a、130b、130cおよび130dを含む。
【0104】
タイミング信号は、これら制御線1301、1302、1303および1304を介して、DAC101X、画素駆動回路103Xおよび時刻コード発生器104Xにそれぞれ供給される。このとき、実施形態の第1の変形例で説明したように、各転送回路11011、11012、11013および11014において、制御線130a~130dにより送信される各タイミング信号を、適宜に間引くことができる。
【0105】
各画素11から読み出された各画素データは、それぞれ対応する転送回路11011、11012、11013および11014を介して信号処理回路105Xに供給される。
【0106】
このように、タイミング信号の生成および送信をユニット毎に行う構成とすることで、例えば画素アレイ部150における有効画素数が増減した場合であっても、ユニット単位での増減で対応でき、製品の派生展開が容易となる。
【0107】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また他の効果があってもよい。
【0108】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
受光した光に応じて光電変換により電荷を発生させる受光素子と、
前記受光素子から前記電荷を読み出して、該電荷に応じたアナログ信号を出力する画素回路と、
前記アナログ信号と、電圧が時間に応じて変化する参照信号とを比較し、比較結果に応じた、単位時間毎に値が更新される時刻コードに基づき該アナログ信号をデジタル信号である画素データに変換する変換回路と、
をそれぞれ含む画素が行列状の配列で配置される画素アレイと、
前記時刻コードを発生する時刻コード発生部と、
前記画素データに対して信号処理を実行する信号処理部と、
少なくとも前記時刻コード発生部において前記時刻コードが発生されるタイミングを制御するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記時刻コードを前記画素それぞれに転送し、前記画素データを前記信号処理部に転送する、ための複数の転送部と、
を備え、
前記時刻コード発生部が前記画素アレイの第1辺の側に設けられ、
前記信号処理部が前記画素アレイに対して前記第1辺の反対側の第2辺の側に設けられ、
前記タイミング生成回路が前記画素アレイに対して前記第2辺の側に設けられ、
前記複数の転送部が、それぞれ、前記第1辺の側から前記第2の辺の側に、前記画素アレイを通じて配置され、
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記時刻コード発生部に転送するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部のそれぞれに設けられる、
撮像装置。
(2)
前記第1辺は、前記配列における行の方向に沿った辺であり、
前記複数の転送部は、それぞれ前記配列における列の方向に沿って設けられる、
前記(1)に記載の撮像装置。
(3)
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記画素回路に送信するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部にさらに設けられる、
前記(1)または(2)に記載の撮像装置。
(4)
前記参照信号を生成する参照信号生成回路をさらに備え、
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記参照信号生成回路に送信するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部にさらに設けられる、
前記(1)乃至(3)の何れかに記載の撮像装置。
(5)
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部のうち2以上の転送部それぞれに設けられる前記制御線のそれぞれで送信される前記タイミング信号の、該制御線それぞれの間での遅延を調整する遅延調整部を含む、
前記(1)乃至(4)の何れかに記載の撮像装置。
(6)
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部のうち2以上の転送部に設けられる前記制御線のそれぞれにより、共通の前記タイミング信号を送信する、
前記(1)乃至(5)の何れかに記載の撮像装置。
(7)
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部から所定の転送部を間引いた残りの転送部に設けられる前記制御線のそれぞれにより、前記タイミング信号を送信する、
前記(1)乃至(6)の何れかに記載の撮像装置。
(8)
前記タイミング信号生成部は、
前記複数の転送部から、前記タイミング信号に転送先において要求される精度に応じて間引いた残りの転送部に設けられる前記制御線のそれぞれにより、前記タイミング信号を送信する、
前記(7)に記載の撮像装置。
(9)
前記画素アレイを前記第1辺の方向に分割した分割画素アレイと、
前記分割画素アレイの前記第1辺の側に設けられる、前記分割画素アレイに対する前記時刻コードを発生する前記時刻コード発生部と、
該分割画素アレイの前記第2辺の側に設けられる、前記分割画素アレイから出力される前記画素データに対して前記信号処理を実行する前記信号処理部と、
少なくとも前記時刻コード発生部において前記時刻コードが発生されるタイミングを制御するタイミング信号を前記分割画素アレイに対して生成するタイミング信号生成部と、
前記分割画素アレイの前記第1辺の側から前記第2辺の側に通じて配置される1以上の転送部と、
を含むユニットが複数配置される、
前記(1)乃至(8)の何れかに記載の撮像装置。
(10)
前記受光素子と、前記画素回路と、前記変換回路の一部と、が配置される第1の基板と、該第1の基板に設けられる第1の配線層と、を含む第1のチップと、
前記変換回路の他の一部と、前記信号処理部と、前記タイミング生成回路と、が配置される第2の基板と、該第2の基板に設けられ、前記制御線を含む第2の配線層と、を含み、該第2の配線層の該第2の基板の反対側の面が、前記第1の配線層の前記第1の基板の反対側の面と貼り合わされる第2のチップと、
を有し、
前記第1のチップと前記第2のチップとが貼り合わされる貼り合わせ面と、前記制御線と、の間にシールド層が設けられた、
前記(1)乃至(9)の何れかに記載の撮像装置。
(11)
受光した光に応じて光電変換により電荷を発生させる受光素子と、
前記受光素子から前記電荷を読み出して、該電荷に応じたアナログ信号を出力する画素回路と、
前記アナログ信号と、電圧が時間に応じて変化する参照信号とを比較し、比較結果に応じた、単位時間毎に値が更新される時刻コードに基づき該アナログ信号をデジタル信号である画素データに変換する変換回路と、
をそれぞれ含む画素が行列状の配列で配置される画素アレイと、
前記時刻コードを発生する時刻コード発生部と、
前記画素データに対して信号処理を実行する信号処理部と、
少なくとも前記時刻コード発生部において前記時刻コードが発生されるタイミングを制御するタイミング信号を生成するタイミング信号生成部と、
前記時刻コードを前記画素それぞれに転送し、前記画素データを前記信号処理部に転送するための複数の転送部と、
を有する撮像部と、
入射光を集光して前記受光素子に導く光学部と、
前記信号処理部で前記信号処理された前記画素データを記憶する記憶部と、
を備え、
前記撮像部は、
前記時刻コード発生部が前記画素アレイの第1辺の側に設けられ、
前記信号処理部が前記画素アレイに対して前記第1辺の反対側の第2辺の側に設けられ、
前記タイミング生成回路が前記画素アレイに対して前記第2辺の側に設けられ、
前記複数の転送部が、それぞれ、前記第1辺の側から前記第2の辺の側に、前記画素アレイを通じて配置され、
前記タイミング信号生成部で生成された前記タイミング信号を前記時刻コード発生部に転送するための制御線が、前記複数の転送部のうち2以上の転送部のそれぞれに設けられる、
電子機器。
【符号の説明】
【0109】
10 固体撮像素子
11 画素
13 第1基板
14,16 配線層
15 第2基板
17 配線
61 差動入力回路
100 画素回路
101,1011,101N DAC
102 ADC
103,1031,103N 画素駆動回路
104,1041,104N 時刻コード発生器
105,1051,105N 信号処理回路
106 出力インタフェース
110,1101,1102,110n-1 転送回路
120,1201,1202,120N,12010,1201N,120a,120b タイミング生成回路
1221,1222,122N タイミング生成部
1231,1232,123N 遅延量調整部
130,1301,1302,1303,1304,130a,130b,130c,130d 制御線
140 クラスタ
150 画素アレイ部
1521,152N,152X 分割画素アレイ部
2001,2002,200N ユニット
300 受光チップ
301 回路チップ
1000 電子機器
1101 MCKクロック転送部
1102 FFデータ転送部
1103 REN信号転送部
1200 シールド