(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-06
(45)【発行日】2025-01-15
(54)【発明の名称】医療デバイスにおけるバッテリのパッシベーション補償のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250107BHJP
A61B 5/1468 20060101ALI20250107BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20250107BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250107BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20250107BHJP
G01R 19/00 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
H02J7/00 S
A61B5/1468
A61B5/00 N
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
H02H7/18
G01R19/00 B
(21)【出願番号】P 2022537806
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 US2020064433
(87)【国際公開番号】W WO2021126678
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-28
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロックリッジ、ラリー、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】フリッドリー、デュアン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】クレム、カート、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】ブラックバーン、マイケル、ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】マンラブ、ネイサン、ユージン
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、スティーヴン、ケント
(72)【発明者】
【氏名】パーカー、マーシャル、エム
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0179126(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0338181(US,A1)
【文献】特表2014-519679(JP,A)
【文献】特表2013-529787(JP,A)
【文献】特開2010-160967(JP,A)
【文献】特開2018-014283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
A61B 5/1468
A61B 5/00
H01M 10/48
H02H 7/18
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイスを作動させるための方法であって、
前記医療デバイスにおけるプロセッサであって、前記医療デバイスに電気的に接続されたバッテリから電力を受ける前記プロセッサを、低電力作動モードにて起動させることと、
前記プロセッサを用いて、前記バッテリの第1の電圧レベルを測定することと、
前記プロセッサを用いて、前記バッテリの前記第1の電圧レベルが、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低いことに応答して、少なくとも1つの放電パルスを前記バッテリに印加することと、
前記プロセッサを用いて、前記少なくとも1つの放電パルスの後に前記バッテリの第2の電圧レベルを測定することと、
前記第2の電圧レベルが、所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいことであって、前記所定の作動電圧閾値が、前記所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、前記所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しいことのみに応答して、前記医療デバイスにおける前記プロセッサを高電力作動モードにて作動させ、前記医療デバイスの作動を続けることと、
を含む、医療デバイスを作動させるための方法。
【請求項2】
前記バッテリの前記第2の電圧レベルが、前記所定の作動電圧閾値より低く、所定の最低電圧閾値より高いことであって、前記所定の最低電圧閾値が、前記パッシベーション最低電圧閾値より高い、又はこれに等しいことに応答して、前記低電力作動モードにて前記プロセッサを作動させることを続け、メモリに保存されるエラーコードを生成することと、
前記プロセッサを用いて、前記医療デバイスを停止させることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセッサを用いて、前記バッテリの前記第2の電圧レベルが前記所定の最低電圧閾値より低いことに応答して、前記医療デバイスを停止させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロセッサを用いて、前記バッテリの前記第1の電圧レベルが前記所定のパッシベーション最低電圧閾値より低いことに応答して、前記医療デバイスを停止させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの放電パルスを印加することは、
前記プロセッサのクロック速度を上げ、前記高電力作動モードにて所定の期間にわたって前記プロセッサを作動させ、電流を前記バッテリから引き込むことと、
前記所定の期間の後に、前記プロセッサの前記クロック速度を下げ、前記低電力作動モードにて前記プロセッサを作動させることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの放電パルスを印加することは、
前記プロセッサを用いて、前記医療デバイスにおける少なくとも1つの周辺デバイスを所定の期間にわたって起動させ、電流を前記バッテリから引き込むことと、
前記プロセッサを用いて、前記所定の期間の後に、前記少なくとも1つの周辺デバイスを停止させることと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの周辺デバイスは、ワイヤレスデータトランシーバと、ディスプレイスクリーンと、電気機械式アクチュエータと、の1つ又は複数である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセッサは、2つの放電パルスの後に、前記バッテリの前記第2の電圧レベルを測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記医療デバイスにおける前記プロセッサを、前記高電力作動モードにて作動させ、前記医療デバイスの作動を続け、血糖測定値を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
医療デバイスを作動させるための方法であって、
前記医療デバイスにおけるプロセッサであって、前記医療デバイスに電気的に接続されたプライマリバッテリから電力を受ける前記プロセッサを、低電力作動モードにて起動させることと、
前記プロセッサを用いて、前記プライマリバッテリの第1の電圧レベルを測定することと、
前記プロセッサを用いて、前記医療デバイスにおける少なくとも1つの周辺デバイスに電力を提供する、前記医療デバイスに電気的に接続されたセカンダリバッテリの第2の電圧レベルを受信することと、
前記プライマリバッテリの前記第1の電圧レベルが、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低いことに応答して、前記プロセッサのクロック速度を上げ、前記プライマリバッテリに少なくとも1つの放電パルスを印加することと、
前記プロセッサを用いて、前記セカンダリバッテリの前記第2の電圧レベルが、前記所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、前記所定のパッシベーション最高電圧閾値より低いことに応答して、前記医療デバイスにおける前記少なくとも1つの周辺デバイスを起動させ、前記セカンダリバッテリに少なくとも1つの放電パルスを印加することと、
前記プロセッサを用いて、前記プライマリバッテリに印加された前記少なくとも1つの放電パルスの後に、前記プライマリバッテリの第3の電圧レベルを測定することと、
前記プロセッサを用いて、前記セカンダリバッテリに印加された前記少なくとも1つの放電パルスの後に、前記セカンダリバッテリの第4の電圧レベルを測定することと、
前記第3の電圧レベルが、第1の所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいことであって、前記第1の所定の作動電圧閾値が、前記所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、前記所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しいこと、および、前記第4の電圧レベルが、第2の所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいことであって、前記第2の所定の作動電圧閾値が、前記所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、前記所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しいことのみに応答して、前記医療デバイスにおける前記プロセッサを、高電力作動モードにて作動させ、前記少なくとも1つの周辺
デバイスを起動させ、前記医療デバイスの作動を続けることと、
を含む、医療デバイスを作動させるための方法。
【請求項11】
前記プライマリバッテリの前記第3の電圧レベルが、前記第1の所定の作動電圧閾値より低く、第1の所定の最低電圧閾値より高いこと、および、前記セカンダリバッテリの前記第4の電圧レベルが、前記第2の所定の作動電圧閾値より低く、第2の所定の最低電圧閾値より高いことに応答して、前記プロセッサを、前記低電力作動モードにて作動させることを続け、メモリに保存されるエラーコードを生成することと、
前記プロセッサを用いて、前記医療デバイスを停止させることと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プライマリバッテリに前記少なくとも1つの放電パルスを印加することは、前記セカンダリバッテリに前記少なくとも1つの放電パルスを印加することの前に行なわれる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記プライマリバッテリに前記少なくとも1つの放電パルスを印加することは、前記セカンダリバッテリに前記少なくとも1つの放電パルスを印加することと同時に行なわれる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の所定の最低電圧閾値は、前記第2の所定の最低電圧閾値に等しく、
前記第1の所定の作動電圧閾値は、前記第2の所定の作動電圧閾値に等しい、
請求項11に記載の方法。
【請求項15】
電力管理集積回路(PMIC)は、前記セカンダリバッテリの前記第2の電圧レベルを測定し、前記第2の電圧レベルを、前記プロセッサに提供する、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの周辺デバイスは、ワイヤレスデータトランシーバである、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの周辺デバイスは、ディスプレイデバイスである、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記プロセッサは、2つの放電パルスを前記プライマリバッテリに印加した後に、前記プライマリバッテリの前記第3の電圧レベルを測定する、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記プロセッサは、3つの放電パルスを前記セカンダリバッテリに印加した後に、前記セカンダリバッテリの前記第4の電圧レベルを測定する、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記医療デバイスにおける前記プロセッサを、前記高電力作動モードにて作動させることと、
前記医療デバイスにおける前記少なくとも1つの周辺
デバイスを起動させ、前記医療デバイスの作動を続け、血糖測定値を生成することと、
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2019年12月19日に出願された「APPARATUS AND METHOD FOR BATTERY PASSIVATION COMPENSATION IN A MEDICAL DEVICE」と題する米国出願第16/720,273号の優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般的に、バッテリを電源とする医療デバイスの分野に関し、より具体的には、血糖検査計を含む、バッテリのパッシベーションに影響されやすい、バッテリを電源とする医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
当該技術分野で知られている分析物試験計は、ユーザによって提供された体液試料の分析が、電子装置および1つ以上の電気化学反応を使用してユーザの体内の1つ以上の分析物のレベルを識別することを可能にする。これらの分析物計は、個々のユーザの流体試料(すなわち、生物学的または環境的)中の分析物の正確な測定に大きな利点を提供する。分析物計は、試薬と流体試料との組み合わせに電気信号を印加し、印加された電気信号に対する応答を記録し、分析物試験計内の電子ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせは、電気信号に対する記録された応答に基づいてユーザの体内の分析物のレベルを検出する検出エンジンを実装する。例えば、糖尿病の人は、血液または別の体液の流体試料を、血糖計(BGM)に電気的に接続された電気化学検査ストリップ上に形成された試薬に提供することによって、グルコースを測定することから利益を得ることができる。BGMは、ユーザの血糖値の測定を提供し、多くのBGM装置は、各血糖測定後に廃棄される使い捨て電気化学検査ストリップを使用する。分析物試験計はまた、他の分析物の中でも、コレステロールおよびトリグリセリドの測定値を提供することによって、心疾患のリスクがあるユーザに利益を提供することができる。しかしながら、これらは、生物学的試料中の分析物を測定する利点のほんの数例である。医療科学の進歩は、流体試料中で電気化学的に分析されることができる分析物の数の増加を特定している。
【0004】
多くの既存の分析物検査計は、バッテリをエネルギ源として使用し、電力を分析物計の電子コンポーネントに供給し、糖尿病の人(PwD)又は他の医療ユーザが自ら携帯する、コンパクトでポータブルな検査計を提供する。典型的な使用では、検査計は、使用のために、通常は1分以下などの比較的短い期間にわたって起動され、血糖測定値を取得する。この期間中、1つ又はそれ以上のバッテリが電流を提供し、検査計におけるコンポーネントを作動させる。検査計は、比較的長い期間、停止したモード、又は、「休止状態」モードとなる。ここでは、検査計は不活性化されており、検査計におけるバッテリは、検査計に、少量の電流を提供する、又は、電流をまったく提供しない。例えば、PwDが、自身の血糖の検査を1日に10回行うような、使用頻度の高いシナリオであっても、血糖計は、その日の大半を停止したモードにて費やしており、多くの血糖計は、より長い不活性の期間を作り出す、より低い頻度の使用を経る。例えば、PwDの何人かは、1日に3回のみ、血糖を検査し、連続グルコースモニタ(CGM)を採用しているPwDの何人かは、ポータブル血糖計をたまに(例えば、数日に一度、又は、さらには、数週/数か月に一度)のみ使用し、CGMからのデータを検証して補完する。
【0005】
パッシベーションは、バッテリが負荷を駆動するために、少量の電流を生成する、又は、電流をまったく生成しない長い不活性の期間中に、既存のバッテリに影響を与える1つの課題である。1つの非限定例として、パッシベーションは、再充電が可能でないリチウムバッテリにおいて、塩化リチウムのパッシベーション層が、バッテリのアノードにおいて、リチウムの表面上に形成されると生じる。パッシベーション層は、バッテリの公称電圧レベルを下げる。これは、低電圧レベルまでバッテリを実際に放電させる効果を模倣する。しかし、パッシベーションプロセスは、バッテリを実質的に放電させず、事実、パッシベーションプロセスは、バッテリの「自己放電」を抑制する場合がある。パッシベーションは、バッテリが相当量の電流を放電しない期間にわたって生じ、バッテリの周囲の環境における大きな温度変化が、パッシベーションプロセスを促す。ユーザは典型的には、血糖モニタ及び他のバッテリを電源とする医療デバイスを、種々の気象条件において自ら携帯し、これらのデバイスを、大きな高及び低温度の変動を経る車両又は他の場所に置いたままにすることがあるため、パッシベーションは、これらのデバイスにおいて使用されるバッテリに起こり得る。
【0006】
上述するように、パッシベーションは、バッテリの公称電圧レベルを下げる。いくつかの状況においては、医療デバイスは、医療デバイスを作動させることにバッテリが使用できないポイントまでバッテリが放電されていることを、誤って識別する。なぜなら、パッシベーションによる電圧降下は、バッテリが放電されるとともに生じる電圧降下と同様だからである。多くのデバイスにおいて、パッシベーション化し得る又は放電され得る同バッテリがまた、そのバッテリが、医療デバイスの通常の作動を可能にするために十分充電されているかを判定する電圧測定デバイス及び他の電子コンポーネントを作動させるための単一のエネルギ源でもあるため、この問題は悪化することとなる。その結果として、バッテリのパッシベーションを検出して補償する、血糖計及び他のバッテリを電源とする医療デバイスに対する改善が有益となるであろう。
【発明の概要】
【0007】
1つの実施形態では、バッテリのパッシベーションを補償するための、医療デバイスを作動させるための方法が開発されている。この方法は、医療デバイスにおけるプロセッサであって、電力を、医療デバイスに電気的に接続されたバッテリから受けるプロセッシングを、低電力作動モードにて起動させることと、プロセッサを用いて、バッテリの第1の電圧レベルを測定することと、プロセッサを用いて、少なくとも1つの放電パルスを、バッテリに、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、バッテリの第1の電圧レベルに応えて印加することと、プロセッサを用いて、バッテリの第2の電圧レベルを、少なくとも1つの放電パルスの後に測定することと、医療デバイスにおけるプロセッサを、所定の作動電圧閾値であって、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しい所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しい第2の電圧レベルにのみ応えて、高電力作動モードにて作動させ、医療デバイスの作動を続けることと、を含む。
【0008】
別の実施形態では、バッテリのパッシベーションを補償するための、医療デバイスを作動させるための方法が開発されている。この方法は、医療デバイスにおけるプロセッサであって、電力を、医療デバイスに電気的に接続されたプライマリバッテリから受けるプロセッシングを、低電力作動モードにて起動させることと、プロセッサを用いて、プライマリバッテリの第1の電圧レベルを測定することと、プロセッサを用いて、電力を、医療デバイスにおける少なくとも1つの周辺デバイスに提供する、医療デバイスに電気的に接続されたセカンダリバッテリの第2の電圧レベルを受信することと、プロセッサのクロック速度を上げ、少なくとも1つの放電パルスを、プライマリバッテリに、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高閾値より低い、プライマリバッテリの第1の電圧レベルに応えて印加することと、プロセッサを用いて、医療デバイスにおける少なくとも1つの周辺デバイスを起動させ、少なくとも1つの放電パルスを、セカンダリバッテリに、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高閾値より低い、セカンダリバッテリの第2の電圧レベルに応えて印加することと、プロセッサを用いて、プライマリバッテリの第3の電圧レベルを、プライマリバッテリに印加された少なくとも1つの放電パルスの後に測定することと、プロセッサを用いて、セカンダリバッテリの第4の電圧レベルを、セカンダリバッテリに印加された少なくとも1つの放電パルスの後に測定することと、医療デバイスにおけるプロセッサを、高電力作動モードにて作動させることと、第1の所定の作動電圧閾値であって、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しい第1の所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しい第3の電圧レベルと、第2の所定の作動電圧閾値であって、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しい第2の所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しい第4の電圧レベルと、にのみ応えて、少なくとも1つの周辺機器を起動させ、医療デバイスの作動を続けることと、を含む。
【0009】
別の実施形態では、バッテリのパッシベーションを補償するよう構成されている医療デバイスが開発されている。この医療デバイスは、バッテリに接続され、そのバッテリから電力を受けるよう構成されているプロセッサを含む。このプロセッサは、低電力作動モードにて起動し、バッテリの第1の電圧レベルを測定し、少なくとも1つの放電パルスを、バッテリに、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、バッテリの第1の電圧レベルに応えて印加し、バッテリの第2の電圧レベルを、少なくとも1つの放電パルスの後に測定し、プロセッサを、所定の作動電圧閾値であって、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しい所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しい第2の電圧レベルにのみ応えて、高電力作動モードにて作動させ、医療デバイスの作動を続けるよう構成されている。
【0010】
別の実施形態では、バッテリのパッシベーションを補償するよう構成されている医療デバイスが開発されている。この医療デバイスは、その医療デバイスに電気的に接続されたプライマリバッテリから電力を受けるよう構成されているプロセッサと、そのプロセッサに作動可能に接続され、医療デバイスに電気的に接続されたセカンダリバッテリから電力を受けるよう構成されている、医療デバイスにおける少なくとも1つの周辺デバイスと、を含む。このプロセッサは、低電力作動モードにて起動し、プライマリバッテリの第1の電圧レベルを測定し、セカンダリバッテリの第2の電圧レベルを受信し、プロセッサのクロック速度を上げ、少なくとも1つの放電パルスを、プライマリバッテリに、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高閾値より低い、プライマリバッテリの第1の電圧レベルに応えて印加し、医療デバイスにおける少なくとも1つの周辺デバイスを起動させ、少なくとも1つの放電パルスを、セカンダリバッテリに、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高閾値より低い、セカンダリバッテリの第2の電圧レベルに応えて印加し、プライマリバッテリの第3の電圧レベルを、プライマリバッテリに印加された少なくとも1つの放電パルスの後に測定し、セカンダリバッテリの第4の電圧レベルを、セカンダリバッテリに印加された少なくとも1つの放電パルスの後に測定し、医療デバイスにおけるプロセッサを、高電力作動モードにて作動させ、第1の所定の作動電圧閾値であって、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しい第1の所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しい第3の電圧レベルと、第2の所定の作動電圧閾値であって、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い、又はこれに等しい第2の所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しい第4の電圧レベルと、にのみ応えて、少なくとも1つの周辺機器を起動させ、医療デバイスの作動を続けるよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記以外の利点、効果、特徴および目的は、以下の詳細な説明を考慮すると、より容易に明らかになるであろう。そのような詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【0012】
【
図1】バッテリを電源とする医療デバイスの模式図であり、これは、単一のバッテリを使用して作動する血糖モニタとしてさらに描かれている。
【
図2】バッテリを電源とする医療デバイスの模式図であり、これは、2つのバッテリを使用して作動する血糖モニタとしてさらに描かれている。
【
図3】
図1の血糖計のバッテリと、
図2の血糖計のプライマリバッテリと、を含む、バッテリを電源とする医療デバイスのバッテリにおける、パッシベーションを検出して補償するためのプロセスのブロック図である。
【
図4】
図2の血糖計のセカンダリバッテリを含む、バッテリを電源とする医療デバイスのセカンダリバッテリにおける、パッシベーションを検出して補償するためのプロセスのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これらおよび他の利点、効果、特徴および目的は、以下の説明からよりよく理解される。説明では、本明細書の一部を形成し、限定ではなく例示として本発明の概念の実施形態が示されている添付の図面を参照する。対応する参照符号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【0014】
本発明の概念は、様々な変更および代替形態の影響を受けやすいが、その例示的な実施形態は、図面に例として示されており、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、以下の例示的な実施形態の説明は、本発明の概念を開示された特定の形態に限定することを意図するものではなく、それどころか、その意図は、本明細書に記載された実施形態および以下の特許請求の範囲によって定義されるその趣旨および範囲内に含まれる全ての利点、効果、および特徴を網羅することであることを理解されたい。したがって、本発明の概念の範囲を解釈するために、本明細書に記載の実施形態および以下の特許請求の範囲が参照されるべきである。したがって、本明細書に記載の実施形態は、他の課題を解決するのに有用な利点、効果、および特徴を有することができることに留意されたい。
【0015】
ここで、本発明の概念の全てではないが一部の実施形態が示されている添付の図面を参照して、装置、システム、および方法が以下により完全に説明される。実際に、装置、システム、および方法は、多くの異なる形態で具現化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。
【0016】
同様に、本明細書に記載の装置、システム、および方法の多くの変更および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する本開示が関係する当業者に思い浮かぶであろう。したがって、装置、システム、および方法は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更および他の実施形態が特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。特定の用語が本明細書で使用されるが、特定の用語は、一般的かつ記述的な意味でのみ使用され、制限のために使用されない。
【0017】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示に関する当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で述べるものと同様のまたはそれと同等の任意の方法および材料を、方法の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が本明細書で述べられる。
【0018】
さらに、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」による要素に対する参照は、1つでかつ1つだけの要素が存在することを文脈が明確に要求しない限り、2つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。そのため、不定冠詞「1つの(a)」または「1つの(an)」は、通常、「少なくとも1つ(at least one)」を意味する。同様に、用語「有する(have)」、「備える(comprise)」、または「含む(include)」、あるいはその任意の文法的変形は、非排他的な方法で使用される。したがって、これらの用語は、ともに、これらの用語により導入される特徴に加えて、このコンテキストにおいて説明されるエンティティにおいてさらなる特徴が存在しない状況と、1つまたはそれ以上のさらなる特徴が存在する状況と、を指す場合がある。例えば、表現「AはBを有する(A has B)」、「AはBを備える(A comprises B)」、および「AはBを含む(A includes B)」は、ともに、B以外に、他の要素がA内に存在しない状況(すなわち、Aが、唯一且つ排他的にBからなる状況)、または、B以外に、要素C、要素CおよびD、またはさらなる要素などの1つ以上のさらなる要素がA内に存在する状況を指すことができる。
【0019】
図1は、バッテリのパッシベーションを補償するよう構成されている、バッテリを電源とする医療デバイス100の模式図を描く。医療デバイス100におけるハウジング50は、医療デバイス100に電気的に接続された交換可能なバッテリ128のためのレセプタクルを含み、医療デバイス100の他のコンポーネントを収めている。医療デバイス100は、バッテリ128から供給される電力を使用して作動し、プロセッサ104と、メモリ116と、ユーザ入力/出力(I/O)周辺機器140と、ワイヤレストランシーバ144周辺デバイスと、を作動させる。
図1の実例となる実施形態では、バッテリ128は、バッテリが完全充電された状態において、公称3V電圧レベルのCR2032コインセルバッテリとして市販されている、単一のリチウムバッテリである。しかし、代替的な実施形態では、バッテリ128は、パッシベーションを経る場合があり得る、異なるタイプのバッテリである。さらに、代替的な実施形態では、単一のバッテリ128と呼ばれるものは、直列、並列、又は直列並列構成に電気的に接続され、医療デバイスにおけるコンポーネントのための電源として作用する複数のバッテリセルをさらに含む。
図1の実例となる例では、医療デバイス100は、検査ストリップポート136を含む血糖計である。検査ストリップポート136は、電気化学検査ストリップの一部位を受容し、検査ストリップにおける電極とプロセッサ104との間の電気的接続を提供し、プロセッサ104が信号を電気的検査シーケンスにおいて印加し、応答信号を検査ストリップから受信することを可能にし、検査ストリップ136に適用された血液サンプルにおけるグルコースレベルの測定を可能にする。血糖測定又は他の形態の電気化学分析物測定を行わない、他の医療デバイスの実施形態は、検査ストリップポート136を含まない。
【0020】
医療デバイス100において、プロセッサ104は、デジタルロジック機能を実施し、バッテリのパッシベーション補償のための作動を行う、医療デバイス100の作動のための、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、又は、いずれの他の単一の電子デバイス若しくは複数の電子デバイスなどの、1つ又はそれ以上のデジタルロジックデバイスを含む。ここにはさらに詳細に描いてはいないが、プロセッサ104はまた、プロセッサ104が、電気化学検査ストリップにおける電極に、検査ストリップポート136を通して印加される電気的検査シーケンスを生成するために必要であり、プロセッサ104が、電気的応答信号を、電気化学検査ストリップから、電気的検査シーケンスに応えて検出するために必要な、デジタルからアナログへのコンバータ、駆動信号ジェネレータ、信号測定回路、及びアナログからデジタルへのコンバータ、並びに、いずれの他の電子コンポーネントを組み込んでいる、又はこれらに作動可能に接続されている。さらに詳細に描いてはいないが、プロセッサ104はまた、プロセッサ104を、I/O周辺機器140と、ワイヤレストランシーバ144と、メモリ116と、に作動可能に接続する入力/出力(I/O)ハードウェアを含む。
【0021】
医療デバイス100において、プロセッサ104は、クロックジェネレータ106を組み込んでいる、又はこれに作動可能に接続されている。クロックジェネレータ106は、プロセッサ104の作動の実行を同期させるクロック信号を生成するための、当業者に一般的に既知の、発振器と、他の電子コンポーネントと、を含む。クロックジェネレータ106は、プロセッサ104における命令の実行の速度を調整し、次いで、より高い周波数のクロック速度よりも、より低い電力レベルを引き込む、より低い周波数のクロック速度での作動中のプロセッサ104の電力消費のレベルに影響する、少なくとも2つの異なる周波数のクロック信号を生成する。1つの構成では、プロセッサ104は、低電力作動モードにて、1MHzのクロック信号を生成するクロックジェネレータ106を作動させ、プロセッサ104は、高電力作動モードにて、16MHzのクロック信号を生成するクロックジェネレータ106を作動させる。もちろん、代替的なプロセッサ構成は、異なる特定のクロック周波数を生成するクロックジェネレータ、及び、3つ又はそれ以上の異なる周波数でのクロック信号も同様に生成するよう構成可能なクロックジェネレータを採用する。
【0022】
医療デバイス100において、プロセッサ104は、バッテリ128の電圧に対応するデジタルデータをプロセッサ104に提供する、アナログ電圧測定デバイスと、アナログからデジタルへのコンバータと、を含む電圧センサ108を組み込んでいる、又はこれに作動可能に接続されている。電圧センサ108は、バッテリ128と、切り替え可能なバッテリ検査レジスタ132と、に作動可能に接続されている。電圧センサ108は、バッテリ128への負荷が最小限である際と、バッテリ128が切り替え可能なバッテリ検査レジスタ132に接続されている際と、の双方に、バッテリ128の端子にわたる電圧を検出する。切り替え可能なバッテリ検査レジスタ132は、高インピーダンスの負荷をバッテリ128の端子にわたって印加する、所定の抵抗レベル(例えば、820オーム)のレジスタを含む。高インピーダンスの負荷は、最小電流をバッテリ128から引き込むが、電圧センサ108が、開回路と、バッテリ128の負荷のかかった電圧レベルと、の双方を測定することを可能にする。プロセッサ104は、ソリッドステートのスイッチングトランジスタ又はリレーなどのスイッチを作動させ、レジスタをバッテリ128に接続し、電圧センサ108がバッテリ128の電圧を所定の負荷の下で測定し、電圧の測定の後に、バッテリ検査レジスタ132をバッテリ128から切り離すことを可能にする。
【0023】
医療デバイス100において、メモリ116は、バッテリ128からの電力がなくとも、保存されたデジタルデータを保持する、EEPROM、NAND、若しくはNORフラッシュ、相変化メモリ、又は他の好適なデータストレージデバイスなどの、少なくとも1つの不揮発性データストレージデバイスを含むデジタルデータストレージデバイスである。メモリ116は、プロセッサ104に統合されている、又は、個別のメモリデバイスとして具現化されている、のいずれかのスタティック又はダイナミックランダムアクセスメモリ(RAM)を含む、1つ又はそれ以上の揮発性メモリデバイスをさらに含む。メモリ116は、プロセッサ104が実行し、ここに説明する、バッテリのパッシベーション補償動作と、医療デバイスの他の機能と、を行うための、1セットの、バッテリ電圧閾値118と、記録されたエラーコードデータ120と、保存されたプログラム命令122と、を保持する。
【0024】
バッテリ電圧閾値118は、潜在的なバッテリのパッシベーション(高バッテリ電圧閾値)に関わらず、医療デバイス100の作動を可能にするのに十分なバッテリ電圧のレベルと、医療デバイス100が潜在的に、バッテリのパッシベーションを補償し、作動電圧(作動電圧閾値)に到達するのに必要な、医療デバイスの作動を可能にする最低作動電圧レベルと、それ以下では、バッテリ128が、パッシベーションにより影響を受けた場合に、医療デバイス100が作動を続けられない最低電圧レベル(最低電圧閾値)と、を示す所定のデータを含む。表1は、3Vの公称電圧レベルのリチウムバッテリ128を使用して作動する血糖計における電圧閾値の実例となる例を描くが、正確な電圧閾値は、異なる医療デバイスにおける電子コンポーネントのバッテリ構成及び電圧要件に基づいて異なる場合がある。
【0025】
【0026】
表1では、パッシベーション最高電圧閾値は、医療デバイス100が、パッシベーション補償プロセスを行い、バッテリ内のパッシベーションを減らそう又は無くそうと試みる最高電圧に対応する。バッテリ電圧がこの閾値を超えると、医療デバイス100の標準的な作動に対して、パッシベーション補償はその後必要でなくなる。パッシベーション最低電圧閾値は、潜在的なパッシベーションに対する補償のために医療デバイス100が必要とする、バッテリにおける最低電圧レベルに対応する。バッテリの電圧レベルが、パッシベーション最低電圧閾値より低ければ、医療デバイス100は続いて、バッテリのパッシベーションに対する補償を試みることなく停止する。
【0027】
高バッテリ電圧閾値と、作動電圧閾値と、最低電圧閾値と、は、パッシベーション補償動作の完了後の医療デバイス100の作動に影響するバッテリ電圧レベルを指す。高バッテリ電圧閾値は、それ以上では、医療デバイス100が、バッテリ128のいずれのさらなる検査なく、標準的な作動を行うことができる電圧を示す。高バッテリ電圧閾値は一般的に、完全充電されたバッテリの公称電圧レベル(医療デバイス100の例では3V)未満に設定される。作動電圧閾値は、医療デバイス100が作動を続けることができるものの、医療デバイス100は任意に、バッテリの充電のレベルが、バッテリの交換を必要とするポイントに近づいていることをユーザに知らせる出力を生成する最低電圧レベルを表す。例えば、1つの実施形態では、プロセッサ104は、電圧レベルが、所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいが、所定の高バッテリ電圧閾値未満であれば、バッテリ128をもうすぐ交換すべきであることの出力を、例えば、ディスプレイデバイス又はインジケータライトを介して生成する。しかし、医療デバイス100は、バッテリ電圧が、所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいのであれば、作動を続ける。最低電圧閾値を超え、作動電圧閾値未満の電圧範囲は、医療デバイス100が、低バッテリ電圧により、許容できない機能不全のリスクなく、標準的な作動を完了できない電圧レベルを示す。しかし、この電圧範囲では、プロセッサ104は依然として作動可能であり、バッテリ128の交換が必要であることをユーザに警告するエラーメッセージ出力を生成する。最低電圧閾値は、医療デバイスが、許容できない機能不全のリスクなく、作動を続けることができず、バッテリエラーメッセージを発することもできないレベルを示す。そして、この閾値未満では、プロセッサ104は、デバイスシャットダウン動作を、潜在的なバッテリの補償に対する補償を試みることなく行う。当業者であれば、最低電圧閾値は、完全に放電されたバッテリを示すものではないことに気づくであろう。なぜなら、バッテリ128は依然として、バッテリ電圧を検査するための、プロセッサ104の最小作動を少なくとも可能にするのに十分な、いくらかの充電を保持するからである。当業者に一般的に知られるように、バッテリの放電が過度であると、又は、バッテリがなければ、プロセッサ104の起動がまず第一に阻まれることとなる。
【0028】
ここに説明する実施形態は、医療デバイス100が、バッテリ128の電圧を下げるバッテリのパッシベーションを補償することを、パッシベーション最高電圧閾値と、パッシベーション最低電圧閾値と、の間の電圧範囲において可能にする。バッテリ128がパッシベーションを経ると、ここに説明する補償プロセスが、バッテリ128の電圧を、少なくともいくつかの状況において、作動電圧閾値又は高バッテリ閾値を超えて上げることができる。パッシベーション補償は、バッテリ128の交換が必要であることを示す誤ったエラーメッセージ、又は、バッテリ128を用いて作動する医療デバイス100の早期故障を減らす又は無くす。上に描く例が、高バッテリ電圧閾値より高いパッシベーション高電圧閾値と、最低電圧閾値より低いパッシベーション最低電圧閾値と、を含む一方で、別の構成では、パッシベーション高電圧閾値が、高バッテリ電圧閾値に等しい、及び、パッシベーション最低電圧閾値が、最低電圧閾値に等しい、の少なくとも1つである。さらに、いくつかの実施形態では、作動電圧閾値は、表1に描くような、高バッテリ電圧閾値及びパッシベーション最高電圧閾値より低い代わりに、高バッテリ電圧閾値、パッシベーション最高電圧閾値、又は、これらの閾値の双方と同じ電圧レベルを有する。
【0029】
図1を再度参照すると、ユーザI/O周辺機器140は、ユーザが医療デバイス100とやりとりすることを可能にする入力デバイス及び出力デバイスを含む。入力デバイスの例としては、タッチパッド及びタッチスクリーン入力、ボタン、スイッチ、ダイアル、並びに同様のものが含まれる。少なくともいくつかのタイプの入力デバイスは、電力をバッテリ128から、直接、又は、プロセッサ104における駆動回路を介して、のいずれかにより受ける。出力デバイスは、LCD又はOLEDディスプレイスクリーンなどのディスプレイデバイス、インジケータライト、オーディオ出力スピーカ、触覚フィードバックデバイスのための電気機械式アクチュエータ、及び同様のものを含み、これらの出力デバイスもまた、電力をバッテリ128から直接、又は、プロセッサ104における駆動回路を介して引き込む。
【0030】
ワイヤレストランシーバ144は、例えば、医療デバイス100が、スマートフォン、パーソナルコンピュータ(PC)、及びデータネットワークを介してのネットワークサービスを含むがこれらに限定されない外部コンピューティングデバイスとのワイヤレス通信を行うことを可能にする、ブルートゥース、ブルートゥースローエネルギ(BLE)、IEEE802.11「Wi-Fi」、近距離無線通信(NFC)、セルラー、又は他のワイヤレストランシーバである。1つの非限定の実施形態では、ワイヤレストランシーバ144は、BLEトランシーバとして、ハウジング50内に含まれるアンテナと共に実装される。ワイヤレストランシーバ144は、電力をバッテリ128から、直接、又は、プロセッサ104における駆動回路を介して、のいずれかにより受ける。いくつかの医療デバイスの実施形態では、ワイヤレストランシーバ144は、相当なレベルの電力をバッテリ128から、作動中、特に、無線送信動作中に引き込む。ワイヤレストランシーバ144は、医療デバイスのすべての実施形態に含まれる必要がない、任意のコンポーネントである。なぜなら、いくつかの医療デバイスは、外部コンピューティングデバイスとのワイヤレス通信のために構成されていないからである。
【0031】
図2は、バッテリを電源とする別の医療デバイス200の模式図を描く。医療デバイス200は、ハウジング50と、プロセッサ104と、メモリ116と、ユーザI/O周辺機器140と、ワイヤレストランシーバ144と、を含む、医療デバイス100に共通のいくつかのエレメントを含む。医療デバイス200は、検査ストリップポート136を含む血糖計としても描かれている。医療デバイス100とは異なり、医療デバイス200は、2つの異なる交換可能なバッテリのためのレセプタクルを含む。これらは、双方とも医療デバイス200に電気的に接続されたプライマリバッテリ228及びセカンダリバッテリ254として描かれている。
図2の構成では、プライマリバッテリ228は、電力を、検査ストリップポート136に対して電気的検査信号を生成するコンポーネントを含むプロセッサ104と、メモリ116と、に提供する。セカンダリバッテリ254は、ワイヤレストランシーバ144と、ユーザI/O周辺機器140と、に電力を提供してこれらを駆動する。医療デバイス200において、プロセッサ104は、電圧センサ108と、切り替え可能なバッテリ検査レジスタ132と、を使用し、
図1に関して上述するものと同様に、プライマリバッテリ228の電圧レベルを測定する一方で、個別の電力管理集積回路(PMIC)250が、セカンダリバッテリ254の電圧測定値をプロセッサ104に提供する。
図2の実例となる例では、プライマリバッテリ228とセカンダリバッテリ254との双方は、バッテリが完全充電された状態において、公称3V電圧レベルのCR2032コインセルバッテリとして市販されているリチウムバッテリである。
【0032】
図2の実施形態では、プライマリバッテリ228及びセカンダリバッテリ254のいずれか又は双方がパッシベーションを経る場合があり、これら2つのバッテリは、医療デバイス200の作動の途中に、異なる電圧レベルを生成する場合がある。メモリ116は、医療デバイス100におけるバッテリ閾値118と同様のバッテリ電圧閾値218を保存するが、任意に、プライマリバッテリ228及びセカンダリバッテリ254に対する個別のセットの電圧閾値を含む。しかし、いくつかの実施形態では、プライマリバッテリ228及びセカンダリバッテリ254の双方は、同じ電圧閾値を使用する。表2は、3V公称電圧レベルの2つのリチウムバッテリを使用して作動する血糖計における電圧閾値の実例となる例を描くが、正確な電圧閾値は、異なる医療デバイスにおける電子コンポーネントのバッテリ構成及び電圧要件に基づいて異なる場合がある。
【0033】
【0034】
図2の実施形態では、医療デバイス200におけるプロセッサ104は、同じパッシベーション最高電圧閾値及びパッシベーション最低電圧閾値を、プライマリバッテリ128/228及びセカンダリバッテリ254の双方に対して使用するが、代替的な構成は、異なるパッシベーション最高及び最低電圧閾値を、プライマリ及びセカンダリバッテリに対して採用してよい。プロセッサ104は、プライマリ高バッテリ電圧閾値と、プライマリ作動電圧閾値と、プライマリ最低電圧閾値と、を、医療デバイス100において対応する電圧閾値に対して上述するものと実質的に同様に使用する。セカンダリ高バッテリ電圧閾値と、セカンダリ作動電圧閾値と、セカンダリ最低電圧閾値と、は、上述する、対応する閾値と同様の機能を有する。なぜなら、プロセッサ104は、セカンダリバッテリ254内の潜在的なパッシベーションを補償し、ワイヤレストランシーバ144の作動を、セカンダリバッテリ254からの電力を使用して可能にするからである。医療デバイス100及び200の作動の追加的な詳細を、
図3及び
図4のプロセスを参照して以下に提供する。
【0035】
図3は、バッテリを電源とする医療デバイスを起動させ、医療デバイスにおけるバッテリ内のパッシベーションを補償するプロセス300のブロック図を描く。特に、プロセス300は、単一のバッテリ128を使用する医療デバイス100と、医療デバイス200におけるプライマリバッテリ228と、に適用可能である。これらのバッテリは、ここで特に説明しない限り、プロセス300のコンテキストにおいて互いに交換可能に参照される。以下の説明において、機能又は作用を行うプロセス300について言及することは、保存されたプログラム命令を実行し、医療デバイスの他のコンポーネントに関連する機能又は作用を行うプロセッサの作動を指す。
【0036】
プロセス300は、プロセッサ104の低電力作動モードでの起動から始まる(ブロック304)。
図1及び
図2の実施形態では、プロセッサ104は、電気化学検査ストリップの検査ストリップポート136への挿入に応えて、又は、I/Oデバイス140における電源ボタン、スイッチ、又は他の入力デバイスを通して起動する。上述するように、低電力作動モードでは、クロックジェネレータ106が、低い周波数のクロック信号(例えば、1MHz)を生成し、プロセッサ104の作動を、医療デバイスのスタートアップ中に、より低い性能レベルであるものの、さらなるバッテリ電圧測定及びバッテリ128/228のパッシベーションに対する補償を可能にする、対応して低い電力消費レベルと共に可能にする。
【0037】
プロセス300は、プロセッサ104がバッテリ128/228の電圧を測定することに続く(ブロック308)。メータ100及び200において、プロセッサ104は初期的に、電圧コンパレータを使用し、スタートアップ後のバッテリ128/228における電圧のおおよそのレベルを識別する。バッテリ128/228のおおよその電圧レベルが、パッシベーション最低電圧閾値以上であれば、プロセッサ104は続いて、電圧センサ108を使用し、双方が開回路構成にあるバッテリ128/228の端子にわたる電圧を測定し、バッテリ128/228に接続された、切り替え可能なバッテリ検査レジスタ132を用いて、所定の負荷を提供する。プロセッサ104は続いて、測定されたバッテリ電圧が、メモリ116に保存されたパッシベーション最低電圧閾値より低い、又はこれに等しいかを判定し(ブロック312)、プロセッサ104は続いて、それ自体と、いずれの他の起動されたコンポーネントと、を停止させ、医療デバイス100/200の作動を止める(ブロック316)。上述するように、バッテリ128/228に対するパッシベーション最低電圧閾値より低い、又はこれに等しいバッテリ電圧は、医療デバイス100/200の安定した作動を可能とせず、プロセッサ104は、シャットダウン動作を行い、リセットループ又は他の不安定な作動を防ぐ。上述するように、測定された電圧が、所定のパッシベーション最低電圧閾値より低いのであれば、続いて、バッテリのパッシベーションが生じても、そのパッシベーションに対する補償からの電圧における潜在的な上昇は、そのバッテリを、最低作動電圧閾値に戻す可能性が低いものとなり、パッシベーション補償プロセスが、医療デバイスの作動を不安定にさせる場合がある。
【0038】
プロセス300中、測定された電圧レベルが、メモリ116に保存された、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く(ブロック312)、追加的に、所定のパッシベーション最高電圧閾値より高い、又はこれに等しいのであれば(ブロック320)、プロセッサ104は続いて、休止状態又はデバイスリセット動作からの標準的な起動を続け、医療デバイス100/200の標準的な作動を開始する(ブロック324)。パッシベーション最高電圧閾値より高い、又はこれに等しい電圧レベルについて、バッテリ128/228は、パッシベーションを経ない、又は、パッシベーションからの影響を無視できる、のいずれかとなる。なぜなら、バッテリの電圧レベルが、医療デバイスの通常の作動に対して十分だからである。
図1及び
図2の実施形態では、医療デバイス100/200が、前の作動を良好に完了し、低電力休止状態に入り、続いて、前の作動中と同じバッテリ128/228を使用して、休止状態から作動に戻った後に、休止状態プロセスからの起動が生じる。リセットプロセスは、バッテリ128/228が交換された後の、医療デバイス100/200の最初の起動中に生じる。これは、プロセッサ104により行われる追加的な処理ステップを必然的に伴い、医療デバイス100/200を作動に戻す。双方の場合において、クロックジェネレータ106は、クロック周波数を上げ、プロセッサ104を、高電力作動モードにて作動させる。プロセッサ104は、メモリ116と、ユーザI/O周辺機器140と、ワイヤレストランシーバ144と、を、必要に応じて作動させ、医療デバイス100/200を、バッテリ128/228から受けた電力を使用して作動させる。
図1及び
図2の具体的な構成では、血糖計医療デバイス100/200におけるプロセッサ104は、高電力作動モードにて作動し、医療デバイスの作動を続け、電気化学検査ストリップに、検査ストリップポート136を介して印加される1つのシーケンスの電気的検査信号を生成することにより、血糖測定値を生成する。プロセッサ104は、検査ストリップ上の血液サンプルにおけるグルコースのレベルに対応する出力を測定して生成する。
【0039】
上述するように、プロセス300中、測定されたバッテリ電圧が、所定のパッシベーション最低電圧閾値より低い、若しくはこれに等しい、又は、所定のパッシベーション最高電圧閾値より高い、若しくはこれに等しい、のいずれかの状況では、プロセッサ104は、バッテリのパッシベーションを直接補償しない。しかし、測定されたバッテリ電圧が、所定のパッシベーション最低バッテリ電圧閾値より高く(ブロック312)、所定のパッシベーション最高電圧閾値より低い(ブロック320)、の双方であれば、プロセッサ104は続いて、少なくとも1つの放電パルスのバッテリ128/228への印加を制御し、バッテリにおける潜在的なパッシベーションを補償する。
【0040】
放電パルスは、電流をバッテリから所定の時間にわたって引き込み、バッテリ内に、パッシベーション層における断絶を生成する負荷の、バッテリ128/228への接続を指す。放電パルスに使用される負荷は、典型的には、大量の電流をバッテリ128/228から引き込む。これは、バッテリの化学物質の内部に変化を生成し、パッシベーション層を減らし、又は、これを無くし、バッテリ128/228の電圧レベルにおける上昇をもたらす。所定の時間後、プロセッサ104は、別の所定のアイドル期間を待機することにより放電パルスを完了し、バッテリ128/228を静止状態に戻すことを可能にする。プロセッサ104はこれに続き、別の電圧測定を行い、バッテリ128/228の電圧レベルを、放電パルスの印加後に識別する。バッテリ128/228がパッシベーションを経ると、バッテリ128/228の電圧は続いて、放電パルス後に、放電パルスの前のバッテリ128/228の電圧より高くなる。医療デバイス100/200の具体的な構成では、プロセッサ104は、複数の放電パルスを印加し、バッテリのパッシベーションのより高いレベルとより低いレベルとの双方に対する補償を可能にする。バッテリ128/228がパッシベーションを経ると、放電パルスが続いて、そのパッシベーションを補償し、バッテリ128/228を、医療デバイス100/200の作動を可能にする、より高い電圧レベルに戻す。医療デバイス100/200における放電パルスの具体例を、以下にさらに詳細に説明する。
【0041】
1つの構成では、クロックジェネレータ106が周波数を上げると共に、プロセッサ104は、放電パルスをバッテリ128/228に直接印加し、プロセッサ104は、高電力作動モードにおいて、高クロック周波数(例えば、16MHz)にて作動する。放電パルス中、プロセッサ104は任意に、プロセッサ104の電流の引き込みを増やすものの、医療デバイス100/200の標準的な作動を行うことにはさもなければ必要のないビジーループ又は他の作動を行う。ここに説明する非限定の実施形態では、プロセッサ104は、高電力作動モードにおいて、高周波数のクロック速度にて、300ミリ秒にわたって作動する。その時間中、クロックジェネレータ106はクロック周波数を下げ、プロセッサ104を、低電力作動モードに、2ミリ秒のアイドル期間だけ戻す。その後、電圧センサ108は、バッテリ128/228の別の電圧測定値を生成する。もちろん、代替的な実施形態は、放電パルス中に異なるアクティブなアイドル期間を使用できる。
【0042】
図1の医療デバイス100の実施形態では、プロセッサ104は任意に、放電パルスをバッテリ128に、電流をバッテリ128から所定の時間にわたって引き込む周辺デバイスを起動させることにより、間接的に印加する。例えば、1つの構成では、プロセッサ104は、ワイヤレストランシーバ144を起動させ、電流をバッテリ128から引き込む。ワイヤレストランシーバ144は、電流をバッテリ128から所定の期間(例えば、300ミリ秒又は別の所定の期間)にわたって引き込む。その後、プロセッサ104は、ワイヤレストランシーバを停止させ、バッテリ128の電圧レベルを測定する前に、所定のアイドル期間だけ待機する。放電パルス中、ワイヤレストランシーバ144は任意に、電流をバッテリ128から引き込むビーコン信号又は同様の信号を送信する。しかしこれは、医療デバイス100の通常の作動中に医療データを送信することの一部ではない。別の構成では、プロセッサ104は、十分な電流をバッテリ128から引き込むディスプレイデバイス又は他のユーザI/O周辺デバイス140を起動させ、放電パルス動作を行う。さらに、プロセッサ104は任意に、ワイヤレストランシーバ144と、ディスプレイデバイス又は他のユーザI/O周辺機器140と、の双方などの複数の周辺デバイスを起動させ、複数の周辺機器が電流をバッテリ128から引き込むことを可能にする。
図4において、以下にさらに詳細に説明するように、プライマリバッテリ228と、セカンダリバッテリ254と、を含む医療デバイス200において、周辺デバイスが使用され、放電パルスをセカンダリバッテリ228に印加する。なぜなら、プロセッサ104は、相当な電力をセカンダリバッテリ228から引き込まないためである。もちろん、当業者は、プロセッサ104を高周波数のクロック速度にて作動させる一方で、ワイヤレストランシーバ144と、I/Oデバイス140の1つ又はそれ以上と、を同時に起動させること、又は、これらのコンポーネントのすべてを同時に作動させることにより、放電パルスを印加することを含み、プロセッサ104と、I/Oデバイス140と、ワイヤレストランシーバ144と、の組み合わせを使用して、放電パルスを印加できることをさらに認識するであろう。
【0043】
図3を再度参照すると、上述するように、プロセッサ104は、最大数の放電パルスがバッテリ128/228に印加されたかを識別する(ブロック328)。最大数に到達していなければ、プロセッサ104は続いて、放電パルスを上述するように印加する(ブロック332)。プロセッサ104は続いて、別の電圧測定を行う(ブロック308)。プロセス300は、ブロック308から332の処理を参照して上述するようなループにて、測定された電圧が下がり、所定のパッシベーション最低電圧閾値より低くなる、又はこれに等しくなる(ブロック312及び316)、測定された電圧が上がり、所定のパッシベーション最高電圧閾値を超える(ブロック320及び324)、又は、最大数の放電パルスを行った後に、測定された電圧が、これらの閾値の間にとどまる(ブロック328)、のいずれかまで続く。医療デバイス100/200の1つの実施形態では、プロセッサ104は、最大で2つの放電パルスを印加するが、代替的な構成は、1つの放電パルス、又は、2つを超える放電パルスを使用する。
【0044】
最大数の放電パルスに到達後、プロセッサ104は、ごく最近に測定された電圧レベルが、所定の高バッテリ電圧レベル又は所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいか識別する(ブロック336)。バッテリ128/228の電圧レベルが所定の高バッテリ電圧閾値又は所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいのであれば、医療デバイス100/200は続いて、作動のために、デバイスの起動又はリセットプロセスに続く(ブロック324)。いくつかの構成では、バッテリ128/228の電圧レベルが、作動に対して十分であるものの(≧所定の作動電圧閾値)、所定の高バッテリ電圧閾値より低い場合に生じる追加的な動作中、プロセッサ104は、デバイスの起動又はリセットプロセスに続くことの一部として、低バッテリインジケータメッセージを、出力周辺機器140の1つ又はそれ以上を使用して生成する。低バッテリインジケータメッセージは、例えば、ユーザに、医療デバイス100/200が、現在のバッテリ電圧レベルにて作動を続けるものの、バッテリの低充電レベルに対する必要性と、バッテリ128/228を近い将来に交換する必要性と、警告する、グラフィカルアイコン、インジケータライト、又は可聴アラームである。上述するように、医療デバイス100及び200の実施形態では、プロセッサ104は、高電力作動モードにて、クロックジェネレータ106からの高クロック周波数を使用して作動し、医療デバイスの他のコンポーネントの作動を続け、血糖測定値を生成する。
【0045】
プロセス300中、最大数の放電パルスに到達した後のごく最近に測定された電圧レベルが、所定の作動電圧閾値より低いのであれば(ブロック336)、プロセッサ104は続いて、バッテリ128/228の測定された電圧レベルが、所定の最低電圧閾値より低いかさらに判定する(ブロック340)。測定された電圧レベルが、所定の最低電圧閾値より高い、又はこれに等しいのであれば、プロセッサ104は続いて、バッテリ128/228に関するエラーコードを発行する(ブロック344)。そして医療デバイス100/200は、標準的な作動を止める(ブロック316)。
図1及び
図2の構成では、プロセッサ104は、エラーコードを、エラーコードデータ120と共に、メモリ116の不揮発性部位に保存する。この作動モードでは、プロセッサ104は任意に、休止状態に入る。ここでは、バッテリ128/228が、医療デバイス100/200の標準的な作動を可能とするために十分な電力を提供できず、作動を続ける前に交換が必要であることを示す出力を、ディスプレイデバイス又は他の出力周辺機器140が生成する。この作動モードは、医療デバイス100が、ユーザに、バッテリ交換の必要性を警告する機会を提供する一方で、バッテリ128/228の電圧レベルは、所定の最低電圧閾値を超えたままとなる。バッテリ交換に伴う後続のスタートアッププロセス中、プロセッサ104は、保存されたエラーコードデータ120を使用し、リセット作動モードに入る必要性を識別し、医療デバイス100/200の標準的な作動を可能にするのに十分な電圧を有する新たなバッテリを使用しての作動を再開する。しかし、測定された電圧レベルが、所定の最低電圧閾値未満のままであれば(ブロック340)、プロセッサ104は続いて、医療デバイス100/200の作動を直ぐに止める(ブロック316)。なぜなら、バッテリ128/228が、プロセッサ104の作動を信頼できる状態で続けることを可能にするのに十分な充電を欠いているからである。
【0046】
上述するように、プロセス300は、医療デバイス100/200が、バッテリ128/228内の潜在的なバッテリのパッシベーションを補償する放電パルスを印加する一方で、同じバッテリを、デバイスのスタートアップ動作中に、医療デバイス100/200の作動のために使用することを可能にする。パッシベーション補償プロセスは、医療デバイス100/200が、ユーザに、低バッテリ状況を誤って警告する誤ったアラーム状況を、医療デバイス100/200が減らす又は無くすことを可能にし(パッシベーション補償が、バッテリ電圧を、≧所定の高バッテリ電圧閾値に戻す場合)、医療デバイス100/200の標準的な作動を防ぐ正しくないバッテリ交換のエラーを防ぐ(パッシベーション補償が、バッテリ電圧を、≧所定の作動電圧閾値に戻す場合)、又は、少なくとも、医療デバイス100/200が、エラーコードを生成し、エラーメッセージを表示し、ユーザに、バッテリの交換が必要であることを警告することを可能にする(パッシベーション補償が、バッテリ電圧を、≧所定の最低電圧閾値に戻す場合)。
【0047】
図4は、医療デバイスにおけるセカンダリバッテリ内のパッシベーションを補償するプロセス400のブロック図を描く。特に、医療デバイス200におけるプロセッサ104は、プロセス400を行い、プライマリバッテリ228内のパッシベーションを補償するプロセス300を行うことと併せて、セカンダリバッテリ254内のパッシベーションを補償する。以下の説明において、機能又は作用を行うプロセス400について言及することは、保存されたプログラム命令を実行し、医療デバイスの他のコンポーネントに関する機能又は作用を行うプロセッサの作動を指す。
【0048】
プロセス400は、プロセッサ104がセカンダリバッテリ228に対する電圧測定値を受信するとともに始まる(ブロック408)。
図2の実施形態では、PMIC250が、セカンダリバッテリ228の電圧レベルを測定し、電圧レベルをデジタル的に表すものをプロセッサ104に提供する。しかし、代替的な実施形態では、プロセッサ104が、電圧センサを使用し、セカンダリバッテリ228の電圧を直接測定する。
図4に示すように、プロセス400の実例となる実施形態は、プロセス300が始まり、プライマリバッテリ228の電圧が、少なくとも、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高いことを、プロセッサ104がブロック312にて識別した後に始まる。これは、プロセス300及び400が同時に行われることを可能にする。特に、プロセス300及び400は、プロセス300及び400を行ういくつかの医療デバイスにおいて少なくともいくらかの放電パルスが同時に生じることを可能にする。別の構成では、プロセッサ104は、プロセス300が、ブロック324の連続作動状態に到達した後に、プロセス400を行う。ここでは、プロセス400は、医療デバイス200における、休止状態からの連続起動又はリセットプロセスの一部である。
【0049】
プロセス400は、プロセッサ104が、セカンダリバッテリ254の測定された電圧レベルが、所定のパッシベーション最低電圧閾値より低い、又はこれに等しいかを識別する(ブロック412)と共に続き、その電圧レベルが、所定のパッシベーション最低電圧閾値より低いのであれば、プロセッサ104は続いて、医療デバイス200の作動を止める(ブロック418)。上記の表2に記すように、セカンダリバッテリ254に関連付けられたメモリ116に保存された所定のパッシベーション最低電圧閾値は、プライマリバッテリ228の対応するパッシベーション最低電圧閾値とは異なってよく、もちろん、2つのバッテリ228及び254は、医療デバイス200の作動中に異なる電圧レベルを示してよい。
【0050】
プロセス400中、セカンダリバッテリ254の測定された電圧が、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定のパッシベーション最高電圧閾値より高い、又はこれに等しいのであれば(ブロック420)、プロセッサ104は続いて、医療デバイス200の作動を、標準的な起動と共に続け、セカンダリバッテリ254から電力を受ける単一の周辺デバイス又は複数の周辺デバイスを使用する(ブロック424)。例えば、医療デバイス200において、プロセッサ104が、作動中に、通常通りに、周辺デバイス140を起動させ、ワイヤレストランシーバ144を作動させ、外部コンピューティングデバイスにデータを送信し、それらからデータを受信する。なぜなら、セカンダリバッテリ254の電圧レベルが、セカンダリバッテリ254に対する所定のパッシベーション最高電圧閾値より高いからである。プライマリバッテリ228と同様に、セカンダリバッテリ254の測定された電圧レベルが、所定の最低電圧閾値より低い、若しくはこれに等しい、又は、所定の高バッテリ電圧閾値より高い、若しくはこれに等しいのであれば、プロセッサ104は、セカンダリバッテリ254内の潜在的なパッシベーションを補償しない。医療デバイス200において、十分に充電されたセカンダリバッテリ254に応えて生じる、周辺機器の起動と、他の作動と、はまた、ブロック324を参照して上述するように、プロセス300の完了後に付随し、起動又はリセットプロセスを続ける。
【0051】
プロセス400中、セカンダリバッテリ254の測定された電圧レベルが、所定のパッシベーション最低電圧閾値より高く、所定の最高パッシベーション電圧閾値より低いのであれば、プロセッサ104は続いて、1つ又はそれ以上の周辺デバイスを起動させ、少なくとも1つの放電パルスを、セカンダリバッテリ254に、所定の最大数の放電パルスまで印加する(ブロック428及び432)。プロセッサ104は、ワイヤレストランシーバ144などの1つ又はそれ以上の周辺デバイスを、所定の期間にわたって起動させ、電流をセカンダリバッテリ254から引き込み、セカンダリバッテリ内のパッシベーション層を減らす又は無くす。この後、アイドル期間が続き、セカンダリバッテリ254が静止状態に戻ることを可能にする。別の構成では、ワイヤレストランシーバ144の作動の代わりに、又はこれに加えて、プロセッサ104は、LCD、OLED、又は他のディスプレイデバイス(ユーザI/O周辺機器140)におけるバックライト又は他の電力を消費するコンポーネントを起動させ、放電パルスを印加する。プロセス400は続いて、ブロック408の処理に戻り、プロセッサ104が、セカンダリバッテリ254の別の電圧測定を受信することを可能にする。セカンダリバッテリ254に対する、各放電パルスの期間と、放電パルスの最大数と、は、各バッテリに接続された負荷における差により、プライマリバッテリ228に対するそれらと異なる場合がある。例えば、医療デバイス200において、プロセッサ104は、プロセス300において、最大で2つの放電パルスをプライマリバッテリ228に印加するよう構成されている一方で、プロセッサ104は、プロセス400において、最大で3つの放電パルスをセカンダリバッテリ254に印加するよう構成されているが、放電パルスの正確な最大数は、他の実施形態について異なってよい。
図3に関して上述する、プライマリバッテリ228内のパッシベーションに対する補償と同様に、放電パルスは、セカンダリバッテリ254内の潜在的なパッシベーションを補償する。
【0052】
プロセス400中、セカンダリバッテリ254の測定された電圧レベルが下がり、所定のパッシベーション最低電圧閾値より低い、又はこれに等しいものとなる(ブロック412及び418)、これが上がり、所定のパッシベーション最高電圧閾値より高い、又はこれに等しいものとなる(ブロック420から424)、又は、上記の2つの条件のいずれかが満たされることなく、プロセッサ104が、最大数の放電パルスに到達する(ブロック428)、のいずれかまで、プロセッサ104は、上記のブロック408から432に関して説明する作動のループを行う。最大数の放電パルスの完了後、セカンダリバッテリ254の測定された電圧レベルが、所定の高バッテリ電圧閾値、又は、所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいのであれば(ブロック436)、プロセッサ104は続いて、セカンダリバッテリ254から電力を受ける、単一の周辺デバイス又は複数の周辺デバイスの作動を続ける(ブロック424)。プロセッサ104は任意に、セカンダリバッテリ254の電圧が、所定の作動電圧閾値より高い、又はこれに等しいものの、所定の高バッテリ電圧閾値未満のままであれば、出力デバイス140を用いて警告メッセージを生成し、セカンダリバッテリ254についての低バッテリ状況を示す。
【0053】
最大数の放電パルスの完了後、セカンダリバッテリ254の電圧レベルが、所定の作動電圧閾値未満のままであれば(ブロック436)、プロセッサ104は続いて、セカンダリバッテリ254に対して測定された電圧が、セカンダリバッテリ254に対する所定の最低電圧閾値より高い、又はこれに等しいか識別する(ブロック440)。セカンダリバッテリの電圧が、所定の最低電圧閾値より高いのであれば、プロセッサ104は続いて、セカンダリバッテリ254を交換すべきことを示すエラーコードを生成し(ブロック416)、医療デバイス200の作動を止める(ブロック418)。プロセッサ104は、セカンダリバッテリ254についてのエラーコードも、メモリ116のエラーコードデータ120に保存する。医療デバイス200が作動を続けない一方で、いくつかの構成では、プロセッサ104は、I/Oデバイス140の1つ又はそれ以上を使用して出力を生成し、ユーザに、セカンダリバッテリ254の交換が必要であることを警告し、セカンダリバッテリ254の電圧レベルが、最低電圧閾値より高い、又はこれに等しいのであれば、医療デバイス200が作動を再開することを可能にする。セカンダリバッテリ254の電圧レベルが、所定の最低電圧閾値より低いのであれば、プロセッサ104は続いて、医療デバイス200の作動を直ぐに止める(ブロック418)。
【0054】
上述するように、プロセス400は、医療デバイス200が、デバイスのスタートアップ動作中に、セカンダリバッテリ254内の潜在的なバッテリのパッシベーションを補償する放電パルスを印加することを可能にする。パッシベーション補償プロセスは、医療デバイス200が、ユーザに、セカンダリバッテリ254の低バッテリ状況を誤って警告する、誤ったアラーム状況を医療デバイス200が減らす又は無くすこと(パッシベーション補償が、バッテリ電圧を、≧所定の高バッテリ電圧閾値に戻す場合)、又は、医療デバイス200における周辺機器の標準的な作動を防ぐ、正しくないバッテリ交換のエラーを防ぐこと(パッシベーション補償が、バッテリ電圧を、≧所定の作動電圧閾値に戻す場合)を可能にする。
【0055】
上記の例示的な、バッテリを電源とする医療デバイスが、血糖計である一方で、当業者は、ここに説明するデバイス及び方法は、バッテリのパッシベーションを経る、バッテリにより作動する幅広い医療デバイスに等しく適用可能であることを理解するであろう。特に、起動後に、連続して作動する、又は、高いデューティサイクルにて作動する医療デバイスであっても、起動される前の出荷及び保管中に、バッテリがパッシベーションを経る場合がある。そのようなデバイスの例としては、制御された投薬量のインスリン又は他の薬剤をユーザに長期間にわたって供給するポンプ、及び、連続グルコースモニタが含まれるが、それらに限定されない。
【0056】
本開示は、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関連して説明される。しかしながら、これらの実施形態は、例示として提示されており、本開示は、開示された実施形態に限定されることを意図していない。したがって、当業者は、本開示が、本開示の精神および範囲内で、且つ以下の特許請求の範囲に記載される全ての変更および代替構成を包含することを理解するであろう。